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映画は細部に宿る 髙山文彦

映画マニアとしてアニメ業界に名高い髙山文彦監督に「映画の細部」を聞こうという本連載。「細部」が話題だけに、話題もあっちこっちの寄り道ほうだい。今回も果たしてどこまで行くのやら。

最終回 髙山監督が選ぶDVD化してほしい10作とは

―では、最終回は髙山監督が選ぶ「この映画のDVDを出してほしい!」です。いちおう順不同で挙げていくという感じでいいですかね?

髙山 うん、特に順位はつけてない。

―じゃあ、まず1本目から行きましょうか。

髙山 1本目は『ハロルドとモード 少年は虹を渡る』('71)、映画は見ていなくても、舞台の方で知っている人の方が多いかもしれない。日本でも何度か上演されているみたいだから。

―戯曲が原作なんですか?

髙山 じゃなくてね、映画を原作にして舞台が作られ、そちらの方がヒットしたの。戯曲をもとに映画が作られる事は多いけど、その逆のケースは割と少ないと思う。監督がハル・アシュビーで『帰郷』('78)とか『チャンス』('79)の人。

―『チャンス』は、俗世を知らない庭師が祭り上げられていくというかなり寓話っぽい内容の映画でしたよね。

髙山 うん。『少年は虹を渡る』もその路線。この映画の評価が高かったから、『チャンス』を作ることになったんじゃないかな。物語はね……金持ちの家に生まれた19歳の少年が主人公なんだけれど、彼は人生に絶望していて狂言自殺ばっかりするのね。母親は彼を「まとも」にしようと、ガールフレンドをあてがってみたり、親戚の軍人に鍛えてもらおうとしたり、カウンセリングを受けさせたりしてみるんだけど、いっこうにらちがあかない。そんな彼の趣味は、知らない人の葬式に参列することなの(笑)。

―(笑)。

髙山 すると葬式でいつも会うおばあさんがいて、ある時、彼に話しかけてくる。この79才のおばあさんが、「80歳になったら死ぬつもりだけど、それまでは生を謳歌するの」というエネルギッシュな人物で、趣味のひとつが自動車泥棒という(笑)。出会いの場面で、おばあさんが少年に声をかけた後、車で去っていくと、「あれは私の車だ!」と男が叫んで追いかけたりする。少年がおばあさんの家を訪れると、部屋には彼女のヌードの油絵が飾ってあったりして、世間一般の老人像とはかけ離れたキャラクターなの。枯れかけた街路樹を森に移植するおばあさんを手伝って、警官に追いかけられたりして、今までと違った体験を重ねているうちに、少年がおばあさんに恋をしてしまうわけ。19歳の少年と79歳の老女が恋に落ちる。

―ああ、そうなるんですか!

髙山 アニメならまだしも、それが実写でちゃんと成立しているのがすごいんだよ。コメディタッチでやっているから、成り立っているんだろうけれど、ところどころにあるほろ苦い描写が効いていて、甘いだけのファンタジーに終わっていない。さりげなく1カットでおばあさんの過去を示す場面とかがすごくいいの。脚本を書いたのは『ファール・プレイ』('78)の監督・脚本のコリン・ヒギンズ。おもしろいエピソードをラフにつないでいく構成で、場面と場面の間を歌で……登場人物が唄う歌やレコードから流れる音楽で繋いだりしてるんだけど、この構成のゆるさが妙に作品に合っている。『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲』('01)とかとも近い味わいがあるから、原恵一監督の映画が好きな人とかはこの映画が気に入るかもしれない。

―でもDVDは出ていない、と。

髙山 アメリカでは出ているんだけどね。この映画、カルト的な人気があって『あの頃ペニーレインと』('00)のキャメロン・クロウもファンの一人。『少年は虹を渡る』の音楽は、キャット・スティーブンスという個性的なフォークシンガーが音楽監督してるんだけど、ちゃんとしたサントラが発売されたことがないの。それで、キャメロン・クロウは自分で会社をつくって、限定3000枚ぐらいで完全版サントラをリリースしたそうで。舞台は日本でも人気があるみたいだから、DVD出せばそこそこ売れるんじゃないかと思うんだけどね。

―確かにかなり、おもしろそうですけどね。じゃあ2本目に行きましょうか。

髙山 で、その少年ハロルドを演じたバッド・コートが主演の映画が2本目のロバート・アルトマン監督の『バード・シット BIRD★SHIT』('70)。原題は、Brewster McLoudで主人公の名前。

―おお、第2回「東映時代劇と『ダンディー少佐』と命名法」でも触れた「米の小説だと架空の登場人物をタイトルにした作品って結構多い」の法則ですね。

髙山 うん。このブルースターという主人公は、羽ばたき飛行機を作っているの。要は自由にあこがれている青年の奮闘と挫折が描かれるんだけど、ストーリーの合間に、「鳥はいかにして飛ぶようになったか」という学者の講義がインサートされる。なんか押井さんの『御先祖様万々歳』('89)を彷彿とさせるんだよ。

―ああ、確かに『御先祖様万々歳』って冒頭に鳥の生態についての蘊蓄があって、それが内容にリンクするという仕掛けでした。

髙山 映画の内容は、そのけがれなき自由を求めるブルースターという少年が、ついにクライマックスで飛ぶんですよ。その羽ばたき飛行機で。でも、それはアストロドームっていうテキサスにあるドーム球場の中で、出口がないドームの中をえんえん、ぐるぐる飛ぶという……。

―皮肉っぽいですね。

髙山 で、最後に彼はついに力尽きて墜落死してしまう。彼の死体を前に、これまでの登場人物が勢揃いして楽器を演奏して、それがエンドロールになるんだけど、演奏を途中でトチっちゃって、「もう一度やりなおし」みたいなノリで、非常にブラックな味わいがある。少し鬱屈した気分になるんだけど、俺は大好きな映画なんだよね。これはアメリカでもLDすら出てないみたいで、検索すると中古のVHSビデオがかなり高値で取引されている。アルトマンは『ウェディング』('78)『ナッシュビル』('75)『ポパイ』('80)など、出して欲しいものが他にもたくさんあるんだけど。

―2本、アメリカ映画のニューシネマ系が続きましたが、日本映画もあるんですよね。

髙山 あるよ。じゃあ3本目は『関の弥太ッぺ』('63)にしよう。長谷川伸の同名小説の映画化作品。山下耕作が監督デビューして3本目の作品。これは見るとハラハラと泣いてしまうようないい映画なんだ。やっぱりカルト的人気があるのか、これもVHSビデオの中古が2万円近い値段で売られてる(笑)。

―長谷川伸というと、やはり人情話っぽいんでしょうか。

髙山 そう。俺は原作は読んだことがないんだけどね。股旅の弥太ッぺ -中村錦之介ね- は、生き別れた妹のために貯めた50両を懐に、妹を捜す旅をしているの。そのそばにいるのが、木村功演じる渡世人、箱田の森介。あるところでこの50両がすられ、その犯人を血の気の多い森介が斬り殺してしまう。その男は、娘を彼女の祖母にあたる女性の実家である旅籠まで届けてくれといって息を引き取る。旅籠にいくと、主人は、財産目当ての狂言だと疑って、かつて誘拐された娘が生んだ孫だと認めようとしない。そこで弥太ッぺっは、虎の子の50両を出して、関係ない女の子であっても育ててやってくれと、言い残して去る。その後、女の子が歌う子守歌がきっかけで、本当の孫だと分かるが、その時、弥太ッぺの姿を探してもすでにいない、と。

―ああ、いい話ですね。

髙山 いや、これで終わりじゃないんだ。続きがある。じゃあ、弥太ッぺの妹はどうなっていたかというと、既に死んでいた。妹の墓前で、50両は使ってしまったけど、いい気持ちだ、という弥太ッぺを描くと、ポンと10年ぐらい時間を飛ばしちゃうの。今や、腕の立つ渡世人になった弥太ッぺが、旅籠を再訪することになるんだけれど、そこには箱田の森介が、五十両の恩人だと称して旅籠に転がり込んでいる。弥太ッぺがやった事を自分がやった事にして、美しく成長した孫娘に結婚しろと迫り、皆から疎まれているわけ。娘もその家族も、違和感を感じつつも、恩人を疑うこともできずで困っている。弥太ッぺは森介を呼び出し、姿を消せと言うんだけれど、恋に狂った森介は拒絶して斬り合いになってしまう。森介を斬り殺した弥太ッぺが、娘の所に行って「森介は旅に出た」と嘘を言った後、「人生どんなつらいことがあっても、忘れて日が暮れれば明日になる」と言い残して旅籠を去っていく……果し合いの約束をしていて、そこに向かうんだけどね……そこで始めて、弥太ッぺが本物の恩人だと気付いて、娘は後を追うけど間に合わない。ラストがかっこよくてね、三度笠を投げ捨て刀を抜く五、六人の敵に、弥太ッぺが後姿で向かっていくロングショットで終わるの。

―ああ、それはグットとくる感じの盛り上がり方ですよね。

髙山 物語はベタなメロドラマなんだけれど、脚本も演出もクールなのがいいんだよね。日本的ハードボイルドの極致といってもいい傑作なのに、なぜかDVDが出ていない。中村錦之介BOXにも入ってなかった。

―そういえば泣けるといえば、以前髙山さんが言及していた『ユンボギの日記』もDVDになってないみたいですね。

髙山 そうなんだよね。今回のリストには入れていないけど、俺の催涙物件なんだ(笑)。あれって朝鮮戦争で妹と生き別れた韓国の少年が書いた日記が原作で、大島渚が韓国で撮影したスチルと原作の朗読を組み合わせて作った、低予算作品なの。原作の朗読をするのが女性で、これがベタ甘な調子で演技過剰気味なんで、最初に見た時は「ちょっと耐えられないなぁ」と思ったんだけど、ラスト間際でナレーションが小松方正に代わるんですよ。こちらは原作ではなく、映画用に書き下ろされた文章が朗読されるの。小松方正がぶっきらぼうな口調で「ユンボギ、君は青い麦。踏まれても次の春に芽を出す青い麦」とか言い始めると、突然状況が冷静に対象化されてね、なんかそこでわーっとなって、やられちゃったんだよね(苦笑)。

―なんか、日本映画は“泣ける”映画が続きますね。

髙山 じゃあ、5本目は加藤泰監督の『真田風雲録』('63)で。これは福田善之の戯曲を脚色した映画で、タイトルの通り豊臣方と徳川家の戦いの中の、真田十勇士を描いている。特徴的なのは戦いが60年安保の置き換えになってるところ。当然、危機に瀕している豊臣側が反体制側で、その中で起きる四分五裂が描かれているの。これって普通に描くと陰惨な話になりそうなのに、そうはならないのはコメディミュージカル仕立てだから。

―え、ミュージカルなんですか?

髙山 あの有名な能『敦盛』の「人生わずか五十年〜」の歌詞に今風のメロディがつけられていてるんだけど、最後に「かっこよく死にてえなぁ」なんて歌詞が付け加えられていて、それをミッキー・カーチスがギター持って歌っている(笑)。映画全体が黒いユーモアにあふれていて、千秋実演じる真田幸村の最期なんて、つまづいて槍の上に倒れて、「あ、かっこわるい」なんて呟きながら死ぬ。幸村のライバルだった佐藤慶の大野修理亮治長の最期もみっともないんだ。「俺のことを一番理解してくれたのは幸村だったかも」と回想にふけるんだけど、おりしも落城中で城が燃えているんで、回想の合間に「なんだか熱いな」とか呟いている。最後に「熱い!」って飛び上がったところでストップモーションになって、それがライバル最後の姿(笑)。

―(笑)なんかアナーキーな映画ですね。

髙山 実は『オーガス02』で王様が死ぬときにストップモーションにしたのは、ここが元ネタ(笑)。意外なのは、中村錦之介の猿飛佐助がSF的な設定で、山に落ちた隕石の側に残されていた赤ん坊で、人の心を読むことができる超能力を持ってるの。

―あー、それなんか『ドラゴンボール』の孫悟空みたいな設定ですね。

髙山 あれよりはずっと前の作品だけどね。正直、演出がやや重厚すぎるし、錦之助もミスキャストだと思う……加藤泰・中村錦之介コンビの作品としてはこれよりすぐれたものがあるけど、好きな作品だからこれでいいのだ(笑)。音楽も舞台版と同じく林光で、サウンドトラックだけでも出して欲しいんだけどね。この作品、加藤泰BOXが出た時収録されなかったんだ……プログラムピクチャーで量産していた監督って本数が多いから、BOXに収録する作品も選定に苦労するんだろうけど。アーティスティックなマイナーな作品は意外とDVDが出てるんだけど、「よくできたプログラムピクチャー」は出ていないものが多い気がする。二本立てで何気なく見て、得したと思えるようなのが意外に出ていない。

―それはわかりますね。

髙山 そんな感じの1本から選ぶと『ヤングゼネレーション』('79、ピーター・イエーツ監督)かな。日本でメジャー公開された映画の中では珍しくちゃんと自転車レースを扱った映画なの。有名スターは出ていないけれど、アカデミー脚本賞をもらってて、典型的な「低予算だけどおもしろいアメリカ映画」なんだよ。さすがに本国ではDVD化されているけれど、日本だと興行がいまいちだったからなのか、出てないんだよね。

―これはどのあたりがおもしろいんですか?

髙山 アメリカの地方都市を舞台にした青春物で、主人公はその町で生まれ育った、自転車好きの高校生。自転車レースはイタリアが強いから、主人公はイタリアかぶれなの。イタリアオペラを浪々と歌いながら、風呂場で主人公がレーサーの真似をしてすね毛を剃ると、父親は……中古車ディーラーの営業マンかなんかだったかな……息子の行動が理解不能で「息子がオカマになった!」って嘆くという(笑)。そんな地方の少年たちの友情と恋愛模様、それにグループ間の対立が本筋で映画は進んでいくんだけど、途中に1回、主人公がロードレースに出場するシーンがあって、イタリアからの招待選手と対戦したりするんだけど、このイタリア人が実に卑怯なヤツで、主人公の幻想が木っ端微塵になる。ラストも、仲間と一緒に出場した自転車レースで、ライバルの大学生チームと競るんだよ。

―ストレートな青春ものですね。

髙山 うん。題材が題材だからリアリズムで撮ることもできるんだけれど、この映画は、ちょっとエキセントリックなキャラクターを配したりして、コメディタッチで作っていて、後味もいい。その一方で、地方都市で生活しているの若者の鬱屈した気分もちゃんと出ているんだよね。主人公たちが石切場跡の水たまりをプール代わりにしているんだけど、その立地が行き場の無い閉塞感を鮮やかに表現していて、百万の言葉よりロケーションが雄弁であることの見本になっている。脚本を書いたのはスティーヴ・テシックっていって、彼には気になることがあってさ。

―それはどのあたりが?

髙山 スティーブ・テシックって、14歳の時にユーゴスラビアから親に連れられてアメリカに移民してきたんだよ。きっと当時は英語もそれほどわかんなかっただろうから、カートゥーンをずっと見てたんじゃないかなと思うんだよね。随所にカートゥーンへの言及があるの。たとえば『ヤングゼネレーション』だと、主人公が落ち込んだときに「アニメの登場人物のように、壁に頭をぶつけてバラバラになれればいいのに」とつぶやく場面があったり、シャワーの時に唄うのが『セビリアの理髪師』の中のアリアなんだけど、これはテックス・アベリーの「へんてこなオペラ」で使われていた曲だったりとかね。その後脚本を書いた『ガープの世界』でも、主人公の見ている絵本がいつのまにかアニメになっているシーンがあるんだけど、それもテシックのアイデアなんじゃないかなぁと。





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