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映画は細部に宿る 髙山文彦
映画マニアとしてアニメ業界に名高い髙山文彦監督に「映画の細部」を聞こうという本連載。「細部」が話題だけに、話題もあっちこっちの寄り道ほうだい。今回も果たしてどこまで行くのやら。
第7回 『光と水のダフネ』と死体、それからちょっと市川崑
―前回、サム・ライミがいかにカートゥーン好きか、という話でしたが、高山さん自身はカートゥーンにオマージュを捧げたりとかはないんですか?
髙山 『光と水のダフネ』('04年、池端隆史監督)っていうのがあるんだけれどさ。そこで脚本をやった「大波動」「大波動2」っていう前後編は、俺なりに『トムとジェリー』にオマージュを捧げたんだけれど。
―『ダフネ』で高山さんは「企画協力」としてクレジットされていましたよね。
髙山 うん。企画がうまく動いていないところに途中から投入されてアレコレやったりしたんだけれど、あとはもっぱらギャグ担当(笑)。
―その「大波動」2部作はどんな内容だったんですか?
髙山 物語の発端は、小学生の男の子の家出なの。家出の理由は、好きな女の子に告白しようとしたんだけど言い出せなくて、女の子に「うじうじした人は大嫌い!」って言われたショック。家出して外国まで行った男の子を追って、なんでも屋の主人公たちが捜しに行き、何とか見つけて保護をする。ところが、帰りの便で『ダイハード2』('90)みたいなハイジャックに巻き込まれてしまうわけ。
―だから「大波動」なわけですね(笑)。そういえば『ダフネ』はサブタイトルが全部映画のパロディでした。
髙山 (笑)その一方で主人公の上司に昔振られた男が出てくる。彼は腹いせにいろいろ妨害をするんだけれど、 改心して、最後はそのハイジャック事件の解決に協力するわけ。で、総てが終わった後に、その男は上司に「またやり直さないか」という。で、そこでパッとカメラはハイジャックの絶体絶命を体験した男の子に切り替わる。男の子は、改めて勇気を出して女の子に告白するわけ。でも「いいお友達でいましょ」ってバンと振られちゃう。で、次のシーンは、振られた男の子が再び飛行機で家出をすると、座席の横に上司に振られた男も座ってる・・・という場面で終わるわけ(笑)。
―ひどい話ですね(笑)。で、どのあたりがオマージュなんですか?
髙山 『トムとジェリー』の「悲しい悲しい物語」('56)っていうのがあるの。シリーズ末期の作品で予算が少ないせいか、あまり絵がよくないんだけれど、ギャグのキレがすごくよくて。時制のつかいたかが面白いんだよ。冒頭でトムが鉄道線路に座り込んでいるんですよ。自殺をしようとしているわけね。ジェリーはそれを心配そうに見ている。で、そこから回想に入って、なんでトムが自殺を決心したかが明かされる。そもそもはトムが、きれいな女の子――まあネコなんだけどね――に恋をしたことが始まり。そこに恋のライバルが出現して、こいつがものすごく金持ち。トムが一生懸命働いてお金を儲けてダイヤモンドを貢いでも、女の子は「フン」とか言って、わざわざ虫眼鏡を持ち出してそのダイヤモンドを見たりして。一方、ライバルのダイヤを見るときは、溶接用のサングラスが必要になるの・・・ダイヤが大きくて余りにも光り輝くんで(笑)。と、まあ、そんな感じで貧乏ネタ、金持ちネタのギャグの応酬があって、結局は恋の戦いに敗れるわけ。女の子とライバルが「JUST MARRIED」と書かれた車に乗って去っていくのを見て、トムが絶望すると、時制が戻って・・・。
―で、冒頭の鉄橋ですね。
髙山 そう。それで、ジェリーは、そんなトムを見ながら写真を撮りだして「トムは失恋したけれど、僕にはこんなにかわいい彼女がいる」ってやっていると……。車がさっと通りすぎて、そこにはジェリーの彼女と金持ち風の男が乗っていて「JUST MARRIED」と書かれている(笑)。で、ジェリーもすごすごとトムの横に並んでしゃがみこむと、向こうから列車の警笛が聞こえてきて、アイリスアウト……というわけ。
―いやー、ブラックな落ちですね(笑)。
髙山 自殺オチだからね(笑)。初めて見た当時も、子供向けでこんなとんでもないことやっていいの!?て思ったからね。
―で、二つの失恋が交錯するあたりが「大波動」に反映していると。これはかなりマニアックなオマージュですね(笑)。
髙山 ラスト、失恋した二人が並んでいるところなんか、ほとんどパクっています(笑)。で、いまも気になっているのが、この話の時制処理。冒頭で現在進行形の事件が描かれ、その結末は一旦宙吊りにされて回想シーンが入り、最後に全ての結末が明かされる・・・昔はフラッシュバック形式とか呼んでいたらしいんだけど、ギャグアニメでこんなことやるのは、すごく珍しいんじゃないかと思う・・・実写だと時々見るやり方で、例えば、ダグラス・サークの『風と共に散る』('56)が全く同じ時制処理なんだけど、これ、同じ年に作られているの。こうした物語の語り方が50年代の半ばに流行していたのかもしれない。
―カートゥーンのキャラは何があっても死にませんが、死ぬ、といえばアニメは死体の表現は鬼門ですよね。。
髙山 そう。止めと区別がつかないからね。『よみがえる空―RESCUE WINGS―』('06年)のときは、死体を写しているカットについては、顔を避けてもらったり、1カットを長めにまわしてもらうように演出のほうにお願いしたりして、死体っぽさを強調してもらったんだけど。……実写だと黒澤(明)が言ってたんだけど――『影武者』か『乱』のときだったと思うけれど――死体は人形使った方がいいんだ、と。なぜかというと生きた人間が演じていると、違和感のあるポーズにならないから。人形だと腕がねじれたりしてものすごく変なポーズになるので、そっちのほうが死体らしく見えるんだって言ってた。ただ、画面見た限りでは、いうほど人形の効果がある感じでもなかったんだけれど。
―実写で印象的な死体ってありますか?
髙山 あれ、ジョン・ブアマンの『脱出』('72年)。都会の男たちが、週末に南部の田舎に出かけて、カヌーで川下りをする映画なんだけれど、これに出てくる死体はリアルというか、ポーズに強烈に違和感があって、すごいと思った。カヌーで下る仲間のひとりが転覆で死ぬんですよ。その死体がしばらくして見つかるんだけれど、腕が曲がりきって肘が頭の後ろのほうになった状態で、岩の間に挟まっているの。その腕の感じがすごく変で、実際の人間には出ない雰囲気が出ていて、素晴らしかった。ダミーの腕を使っているのか、あるいは別の人間が下に入って腕だけ出しているのかもしれない。これなんかアニメで描いても、ちょっと変なポーズを描いたっておもわれちゃうから、狙ったような効果が出ないんだよね。
―そういえば『風とともに去りぬ』('39年)に、駅に南北戦争の負傷者が並んでいるシーンで、寄りからクレーンショットでものすごい引いた画面になるところがあるんです。そこにはすごい数の負傷兵が並んでいて動いている。それは確か、腕とかが動く人形を用意して、側に横たわる役者がその腕を操作することで、少ない人数で大量の負傷兵がうごいているようにいるように見せてるんだとか。
髙山 そういう例はあるよね。マキノ雅弘が『映画渡世』(平凡社刊)で語っていたけど、『阿片戦争』('43年)でそんな事をやったらしい。この映画、戦時中に作られたいわゆる戦意高揚映画で、ストーリーはグリフィスの『嵐の孤児』の翻案らしいんだけど、大勢の中国人が行進するシーンがあるんだって。でも、エキストラの数が全然足りない。それでエキストラに笠をかぶせて、さらに天秤棒みたいな棒を持たせたの。その天秤棒の両はじに笠をそれぞれのっけて、胴体にあたる部分にはマントみたいなものをかぶせて、それでひとりを3人に増量して、行進のロングショットを俯瞰で撮影したんだって。
―へ〜え。
髙山 そもそも東映の時代劇で、捕り方が「ご用だ!」って持っている提灯があるでしょう。あの提灯も、ひとりが6つとか9つとか提灯がくっついたものがあったとか言うし。灯りしか見えないから、少ない人間でいかにも大勢の捕り方が追っているように見えるという仕掛けなわけ。おそらくそのあたりをヒントにしたんじゃないかと思うんだよね。こういう映画の嘘のつきかたのエピソード集とか作ったらおもしろいだろうね。
―まあ、この連載の狙いの半分はそのあたりにもあるんですが(笑)。逆に死体描写でこれはつらい、と思ったことはありますか?
髙山 それなら『サイコ』('60年、アルフレッド・ヒッチコック監督)かな。あの有名なシャワー殺人の後、排水溝に水が流れていく渦にオーバーラップして、死体の眼のアップからずっとカメラがトラックバックするカットがあるんですよ。ところがその女の死体の瞳孔が開いてないんだよね。カメラが寄っていて、ライトもガンガン照らしているから、どうしても瞳孔が縮んでしまう。映画そのものは大傑作で、重箱の隅をつつくイチャモンに過ぎないんだけれど、やっぱり惜しいな、と。今だったら、CGを使って細工も出来るはずだけど、何しろもう50年近く前の作品だから。
―嘘をつこうと思っても、身体の反射まではコントロールできませんからね。
髙山 嘘といえば……鈴木眞哉という在野の研究家が合戦史を調べて書いた本があるんですよ、『謎とき日本合戦史―日本人はどう戦ってきたか』 (講談社)というタイトルなんだけど。昔の武者絵で合戦の時に馬上で刀を振るっている絵があるけれど、あれは本当なのか、って著者は疑問に思う。で、武将が死んだ原因や、地侍がお寺に残した文書なんかを丹念に調べていくんだけれど、合戦では刀による死者ってすごく少ないらしいんですよ。
―へぇ。すると……
髙山 死因はほとんど槍か弓矢なんだって。そこから日本の合戦というのは、刀による白兵戦ではなくて遠戦志向である、と、論理立てて証明している。なるほど、『七人の侍』('54年)では、主人公の侍が死ぬときって、みんな鉄砲で撃たれている。あれはちょっと異様といえば異様なんだけれど、理にかなっているといえば理にかなっているんだなぁ、と。そういえば、この前くだらないことでハッと気がついたことがあって。『七人の侍』と『荒野の七人』('60年、ジョン・スタージェス監督)ってどちらも、死んだ役者と生き残った役者がいるわけですよ、映画の中で。で、その生き残った役者のほうから早死にしてるの。『荒野の七人』でいくとユル・ブリンナーとスティーブ・マックイーン、『七人の侍』だと、加東大介と志村喬と木村功が、現実には先に亡くなっている。
―ああ、そういえば亡くなるといえば、前回収録時に市川崑の話題もちょっとしましたけど、そしたらその翌日、亡くなってましたね〜。
髙山 あれは驚いたね。市川崑って、印象的な絵面を作る才能は突出しているなぁと思う。それこそ『犬神家の一族』('76)の、湖面から突き出した二本足みたいなね。あれは、「決め」の絵面の構図を先に作って、その絵がひきたつように前後のショットを撮っているんじゃないかという気がする。ショットの連鎖がアニメ的というよりは漫画的な印象が強い・・・見開きでバーンと大ゴマ使う時の気分で、決めのショットを入れてるように見える。ブッちゃん(出渕裕)とか庵野(秀明)とかはそういう部分が好きみたいんなんだけど、俺は、ああしたやり方には少し違和感がある。市川作品で一番好きなのは、ドキュメンタリーの『東京オリンピック』('65年)だし・・・。でもいざ亡くなると、やっぱり「時代の終わり」めいたものを感じるね。これで戦時中に成人年齢に達していて、未だ現役に近い日本の映画監督って、新藤兼人と鈴木清順の2人くらいじゃないかな。
―じゃあ、今回はここで一旦締めくくりましょうか。
構成・文:藤津亮太
次回予告
映画と死のいろいろな関係。たとえば死体が語りはじめることから始まる映画もある。というわけで、次回ももうちょっと死と映画をめぐるアレコレが続きます。
※内容が予告通りとは限りません。
髙山文彦 プロフィール
アニメ制作スタジオのトップクラフト、アートランドを経てフリーに。1989年『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』で監督デビュー。現在公開中の『ストレンヂア 無皇刃譚』では脚本を務めている。代表作は『WXIII 機動警察パトレイバー』(総監督)、『ガンパレード・マーチ 〜新たなる行軍歌〜』(監修・シリーズ構成・脚本)など多数。
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