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ストライクウィッチーズ
映画は細部に宿る 髙山文彦
映画マニアとしてアニメ業界に名高い髙山文彦監督に「映画の細部」を聞こうという本連載。「細部」が話題だけに、話題もあっちこっちの寄り道ほうだい。今回も果たしてどこまで行くのやら。
第1回『ストレンヂア』と徳利とシャツ
―というわけで「映画の細部」について髙山文彦監督と話をしよう、という連載のスタートです。よろしくお願いします。
髙山 まあ、最近はあまり監督してないけどね(苦笑)。で、どうするつもりなの。
―じゃあ、第1回は最新作で、脚本を担当された『ストレンヂア 無皇刃譚』を入口に、チャンバラの話から始めませんか。
髙山 じゃあ、そうしましょうか……。『ストレンヂア』にはいくつかボツちゃったアイデアがあるの。ひとつのは、監督の安藤(真裕)君も乗り気だったんだけどね。
―それはどんなアイデアなんですか?
髙山 宿場町に運河があって、そこに船が行き来していると。それで、追われた一方が橋から飛び降りて、船の上を飛び渡りながら、相手と斬り合うというもの。そういうアクションって実写では不可能だから、やろうかなと思ったんだけれど、そこにもっていくシチュエーションが難しくて、考えつかなくて。それで結局やめちゃったんだよね。船とかそういうものを使って移動しながら戦うというのはおもしろいと思ったんだけれど。
―敵方が明の武芸者で、変わった得物ばかりというのもおもしろいですよね。
髙山 そのあたりは安藤君のアイデア。やっぱり戦いの時に変化がつけやすいだろうと。一番最初に映画をライバルキャラの羅狼(らろう)から始めようというのも、安藤くんだったかな。
―最初にライバルキャラの強さを見せちゃうのは、アクション映画として手際がいいなと思いましたが。
髙山 冒頭は脚本を書いているときは、サム・ペキンパーの『ダンディー少佐』(1964年 監督/サム・ペキンパー)と似ている、というかそれと似た効果を狙って書いていたんだよね。『ダンディー少佐』の冒頭は、出だしがインディアンに襲われた農場からから始まるんだけど、農場を守っていたらしい騎兵隊隊員が、半死半生の状態で吊るされている。そいつに向かってインディアンの頭目が、「次は誰を送って来るんだ」というセリフを吐くと、タイトルがドンッと「ダンディー少佐、MAJOR DUNDEE」って出て、次に送られる主役の名前が出るという。
―それが『ストレンヂア』の脚本では……。
髙山 羅狼が、襲撃してくる野武士たちを退けて「この国にはこの程度のヤツらしかおらんのか」というと、ドンと『ストレンヂア』というタイトルが出てくるという(笑)。実際は安藤君が順番をちょっと入れ替えて、タイトルが先で、セリフが後になっているんだけど。
―へぇ、『ダンディー少佐』ですか。でもそうした語り口を含め、強いやつをどう見せていくかは、アクション映画の重要なポイントですよね。
髙山 日本の時代劇でいうとやっぱり、黒澤(明)で変わったんだよね。それまでは『新吾十番勝負』(1959年 監督/松田定次)とか近衛十四郎とか、ものすごい殺陣はあるんだけれど、あくまで勧善懲悪が基本で。黒澤みたいに悪役の強さや頭の良さを明確に描いて、こいつに対抗できるのが主人公だ、というドラマ作りにはなっていなかったような気がする。黒澤って、時代劇とはいっても、元を辿るとダシール・ハメットだったりするし。そういう意味では、それまでの時代劇とは違う構造のものだったと思う。『座頭市』(「座頭市物語」1962年 監督/三隅研次)が後半に行くにしたがって、どんどん剣技を見せるというアクロバティックな方向にエスカレートしていくのも、原因は黒澤時代劇への対抗意識だったんじゃないかな。
―髙山さん的に、印象的だった時代劇、チャンバラものってありますか?
髙山 『酔いどれ八萬騎』(1951年 監督/マキノ雅弘)かな。この映画の話は、一度したいと思っているんだけれど。マキノ雅弘が監督した『浪人街』(1928年 監督/マキノ雅広[当時・正博])のセルフリメイクなんだよね。
―どこがすごいんですか。
髙山 まず驚いたのは、夜に刀でコレ(斬り合う仕草)やるときに、刀から火花が散るの。
―え、それだけ激しく演じてるってことですか?
髙山 いや、後で知ったんだけれど、刀に電気を通しているんだって(笑)。それで触れるとバチッってなるという。『ブラックレイン』(1989年 監督/リドリー・スコット)で松田優作が、バイクに乗りながら、日本刀の切っ先で火花を散らすでしょう。あれの先取りというか。
―それは確かにすごい工夫だ。
髙山 もちろんそれだけじゃなくって。赤牛弥五右衛門という槍使いが出てくるんだけれど、オリジナルの『浪人街』でも同じ役を演じた河津清三郎が、20年後にまた演じている。その赤牛は、浪人で仕官したいんだけれど、ある日、仕官の見込みがあるので試験をしたいというようなことを言われて出かけていくの。で、出かけていって、次のカットは、画面一杯の徳利。
―徳利?
髙山 徳利がふわ〜ん、ふわ〜んととても頼りなく揺れているいて歌声が低〜く聞こえてる。カメラがだんだん引いていくと、その徳利は槍の先に結わえられて揺れているんですよ。さらにカメラを引くと、槍を肩に担いだ赤牛が酔っぱらった足取りで歩きながら唄っていて、あ、失敗したんだなと判る。その徳利の揺れている感じが、本当に仕官の適わなかった赤牛の気分を出していて、本当に素晴らしかった。うわ、かっこいい!っていう。
―今回の連載は、映画の細部の話を聞こうという趣旨なんですけど、やっぱり髙山さんってそういう細部に注目して映画を見ているんですか?
髙山 まあ、物語はそんなにパターンがあるわけじゃない。基本的に人間も変わるわけじゃないから、観客が興味をもつ部分はそんなに変わらないし。そうすると作り手の存在感みたいなものは細部に出るんじゃないかと思うんですよ。たとえば宮崎(駿)さんの作品を見ていると、「閉じこめられた後、窓から脱出することはほとんどない」っていう細部、デティールが気になるじゃない?
―え? 窓ですか?ああ! そういわれれば、窓から脱出している例は少ないですね。
髙山 普通は入口がふさがっているから、窓から脱出する、といきそうなのに、そうはならないんだよね。そういうところを見るのがおもしろいと思うんだけれど。……そういえば、宮崎さんじゃないけど、シャツの話ってしたっけ?
―シャツですか?
髙山 そうシャツの裾。押井さんの『機動警察パトレイバー2theMovie』(1993年 監督/押井守)で、松井という刑事が出てくるでしょう。彼が潜入捜査をして捉えられてしまう。それで昏倒から気付いた後、脱出して後藤に連絡をとろうとする。押井さんの指示なのか、作画がやったかわからないんだけれど、要するに昏倒してほうほうの体で脱出したという、乱れた感じを表現するために、シャツの裾の片方だけズボンの外に出してるの。これって実は映画の中で伝統的によく使われている手法で。
―そうなんですか。
髙山 一番最初に見たのはジョン・フォードの『シャイアン』(1964年 監督/ジョン・フォード)で、カール・マルデンという騎兵隊の駐屯地の司令官が出てくるんです。彼の任務は、ネイティブアメリカンのシャイアン族を、別の居留地まで移動させること。要は白人がその土地が欲しいんで、悪辣非道な追い立てをしているわけ。彼にも良心があるので、自分のやっていることはヒドイことだというのは百も承知だし、部下にも責められたりする。それで移動させるシャイアンを移動させるまで閉じこめておくんだけれど、その夜は酔っぱらって寝てしまう。ところがその間に、シャイアンは脱走してしまって、それであわてて起きてきた時には、紺に黄色のラインのある騎兵隊のズボンの上に、白いシャツが片方だけでているの。で、次に見たのはジョン・ミリアスの『デリンジャー』(1973年 監督/ジョン・ミリアス)。プリティーボーイ・フロイドというアメリカの有名なギャングがFBIに追われて、荒野を走って、ポツンと一軒ある農場に入って、老夫婦にコーヒーかなんかを出してもらう場面。そこでも、ヘロヘロになって家のドアを開ける時に、こうパッと片側だけ……。
―出ているんだ。
髙山 それで一番最近見たのが、クリント・イーストウッドの『父親たちの星条旗』(2006年 監督/クリント・イーストウッド)。あれで英雄と呼ばれるのが嫌でアル中になるネイティブアメリカンが出てくるでしょう。そいつが酔っ払って乱暴したせいで地元の警察に収監された後、署から出てくるときに、やっぱりネルのシャツが……。
―へぇ。それはおもしろいですね。なんか演出家たちが、脈々とそのバトンを渡し続けているみたいで。
髙山 だから『パトレイバー2』を見たときは、多分押井さんがやったことだろうと思ったし、やっぱり押井さんはよく映画見ているな〜って思ったんだよ。キャラクターを視覚的にどう見せるかっていう演出は、サイレント経験のある優れた監督の映画を見るとわかりやすいし、盗めるものが多い。ジョン・フォードなんかも、サイレントの経験長いから、ある状況を端的に効率よく見せるかをわかっていると思うんだよね。映画のルーツがサイレント・・・絵・・・だとすると、テレビのルーツはラジオ・・・音・・・なんだよね。そこは似ているようで全然違う部分だと思う、ただ、1950年代から1960年代あたりにかけて、その構図がグチャグチャになって現在に至るわけだけれど。
―ふむ。で今日話を聞いて改めて思ったんですが、、髙山さん、ずいぶんと映画に詳しいわけですけれど、子供の頃からずっと映画が好きだったんですか? そのあたりをちょっと聞かせてくださいよ。
髙山 うーん、じゃあ、それは次回あたりの話ということでどう。
構成・文:藤津亮太
次回予告
九州で生まれの映画育ち。小学校の通学路にあった三番館の思い出と、運命を変えた映画『ダンディー少佐』。次回は、髙山監督の映画体験を辿ります。
※内容が予告通りとは限りません。
髙山文彦 プロフィール
アニメ制作スタジオのトップクラフト、アートランドを経てフリーに。1989年『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』で監督デビュー。現在公開中の『ストレンヂア 無皇刃譚』では脚本を務めている。代表作は『WXIII 機動警察パトレイバー』(総監督)、『ガンパレード・マーチ 〜新たなる行軍歌〜』(監修・シリーズ構成・脚本)など多数。
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