インターネット社会に衝撃が走った。サイト運営会社が元暴力団組長に乗っ取られていたのだ。乗っ取られたのは同窓会サイト「この指とまれ!」を運営する「ゆびとま」(長崎市)。
乗っ取ったのは指定暴力団山口組弘道会系組長だった下村好男容疑者(45)と出版社社長の前田大作容疑者(51)。2人は倒産した大証ヘラクレス上場の「アドテックス」の社長、副社長に就き、同社の資産を不正に処分したとして逮捕された。逮捕を機に、巨大サイトの乗っ取りが発覚した。 「乗っ取り」の手口は、巧妙に仕組まれたものだった。 |
県知事選たけなわの1月に「ゆびとま」は乗っ取られ、小久保氏は放逐された。
小久保氏は長崎県生まれ。地元高校を卒業すると、東京の情報処理専門学校でコンピューターを学んだ。卒業後はUターン、システムエンジニア(SE)として就職。10年後に退社。1990年にたった1人で有限会社アドベンチャーを設立した。
たまたま、同窓会の通知がきたとき、パソコン通信ならすぐに連絡がとれると考え、自らシステムを考案。96年5月、同窓会サイト「この指とまれ!」を、学生ボランティアの協力で、NPO(非営利団体)組織として立ち上げ。2000年2月NPOを解消して「株式会社ゆびとま」を設立。翌年「日経ウーマンオブザイヤー2001」を受賞した。
「この指とまれ!」は、大規模な「同窓生名簿」を提供するサイト。小学校、高校、大学、専門学校まで全国6万校が、国公立、私立を問わず網羅。現在、357万人が会員として登録している。
同窓会サイトの会員は爆発的に増えたが、「ゆびとま」の業績は惨憺たるもの。「ゆびとま」は小久保氏ら創業メンバーと5億円の第三者割当増資を引き受けたベンチャーキャピタルやネット企業6社が株主となり2億6013万円の資本金でスタート。
しかし、売り上げは、インターネット広告収入の1億円程度。毎年5~6,000万円の赤字を計上し、累積赤字は4億円を超えた。このままでは、資本勘定を食い潰すのは時間の問題。そこで資金調達を図る。これが「乗っ取り屋」に食い込まれるきっかけになった。
(つづく)