自社株処理は時間をかけゆっくりと 東映は新会社法施行に伴い子会社が保有する東映株式の処理を開始。第1弾は東映興業不動産が持つ株を売却。11・3%を取得したテレビ朝日が筆頭株主に。東映はテレビ朝日の株を16%持ち両社の提携関係はどう強化されていくのか
■テレビ朝日筆頭株主に 子会社が親会社の株式を持つことを禁じた新会社法が昨年5月1日に施行されたのに伴い、東映は子会社が保有する自社株式の処理を開始した。その第1弾として、昨年11月28日付で特定子会社の東映興業不動産(株)を吸収合併し、東映興業不動産(株)が保有していた東映株式25・1%のうち東映の持分である1970万6000株を第三者割当で売却した。総額129億円をテレビ朝日(従来の保有分を含め発行済株式の11・3%)、三井住友銀行(3・69%)、東北新社(1%)、朝日放送(0・5%)、伊藤園(0・5%)の5社に譲渡。これによりテレビ朝日が東映の筆頭株主になった。岡田裕介東映社長に、テレビ朝日が筆頭株主になった今後の東映の経営はどうなるのか、映画戦略や2月9日にグランドオープンする「新宿バルト9」を始めとした今後のシネコン開発等について聞いた。
―― 一昨年から準備を進めていたと思いますが、いよいよ子会社が保有する東映株式の処理を開始されましたね。岡田 僕はもともとこの新会社法自体には批判的ですが、法が施行されたわけであり第1段階として東映興業不動産から始めたわけです。これを機に、東映と子会社との関係を含め株を移動することによって東映グループとしてすっきりした形にしていこうということもあります。
――これまでグループ全体で30数パーセントの東映株を持っていましたね。岡田 33%です。東映興業不動産が25・1%、東映ラボ・テックが5・2%、東映アニメーションが1・6%、東映ビデオが0・64%、東映京都スタジオが0・08%を保有していましたが、東映興業不動産は東映100%出資の子会社ではないのです。東映と東映ラボ・テックがそれぞれ25%、三映印刷が13・3%、東映京都スタジオが11・6%、東映アニメーションが11・6%、東映ビデオが10%、東映シーエムが3・3%持っていて、くもの巣状態になっていたものを株の処理と合わせてひとつずつ解いていこうと考えています。
■第2段階は東映ラボを――東映と東映ラボ・テックは、昨年12月13日開催のそれぞれの取締役会で株式交換により東映が東京証券取引所2部上場企業の東映ラボ・テックを完全子会社化することを決めましたが、これも株処理の一環ということですね。岡田 2月14日開催予定の東映ラボ・テックの臨時株主総会の承認を得て完全子会社化が決定します。
――東映ラボ・テックは東映興業不動産の持分を含めて5・2%から7・7%に増えたわけですが、これを処理するのは結構大変でしょうね。岡田 そうですね。それをすぐにパッと動かしていくわけにも行かないし、2年くらい余裕もありそうなので、ゆっくり時間をかけて処理して行こうかと思っています。
――そして、その次は東映アニメーションですか。岡田 東映アニメーションはジャスダック市場に上場されているし、そのスタンスで置いておかなければ駄目だろうね。今回は東映ラボ・テックの上場を3月27日付で廃止させてもらって、ひとつすっきりした形を取って行ければと思っています。
――その次は東映ビデオですか。岡田 どういう具合にしていくかはわからないけど、次には東映ビデオの問題もあります。併せて東映グループをどう形成していくのかもね。
――東映ビデオを本社に吸収合併するという噂を聞いたのですが。岡田 それはあくまでも噂だね。東映ビデオ本体とともに、それぞれのビデオ販社があり、今後の展開を含めて考えていかなければなりません。株の問題というよりも、今後のビデオ、DVD産業全体の業績見通しということから割り出していかなければならないでしょうね。
――先程“2年くらい余裕もありそう”というお話をされていましたが、この株の処理に当って期限はないわけですか。岡田 当初は今年の3月までと言っていたものが、処理をする姿勢が見られればここ数年の間という具合に法律も変わったらしいのです。この新会社法制定に携わった学者や関係者が、相当大変だと言うことに初めて気づいたんでしょうね。
――東映だけでなく、様々な企業にこの様なケースはあるでしょうからね。岡田 沢山の会社がこの問題で凄く大変な思いをしています。僕ほどオープンにしているところは少ないけれども、水面下では大変な問題になっているわけです。東映は水面上でやっているので目立っていますけどもね。
――株の売却に伴う利益の税法上の優遇処置はないんですか。岡田 ないんだね。この新会社法は期間を含めて曖昧なんだが、一番大きな問題は商法上と税法上で子会社の定義が違うことなのです。それぐらいはあらかじめ直しておいて欲しいもので、要するに不備なんです。そして何を目指している法律なのかわからないことなのです。元々の発想は株が沢山動くようにということ。一つの子会社が株を持ち続けていることが日本経済が停滞している原因だというのが当時経済企画庁長官だった竹中さんを始め学者さん達の論法。ITによって株の個人投資家も注目をあびたわけですが、現在は個人投資家も株に興味を失って、新会社法が施行されたにもかかわらず日経平均の株価は上がって来ないし、ただ、法律だけが残ったということですね。