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トップインタビュー/角川春樹・角川春樹事務所特別顧問
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   「神様のパズル」は宇宙創生がテーマのSFファンタジー
     「時をかける〜」念頭に、獄中で原作を読み映画化
     直感でヒロインは谷村に、ハルキ〜ファンド設立


 角川春樹プロデューサーは「神様のパズル」で、10代20代の秋葉原系の若者を観客ターゲットに絞り込み“絶望に効く薬”をキャッチコピーにモバイルやインターネットを使ってコア層の引きこもりの若者にアプローチを図るという。

 「男たちの大和/YAMATO」(05・12)で映画界に復帰した角川春樹プロデューサーが、「蒼き狼 地果て海尽きるまで」(07・3)「椿三十郎」(07・12)に次いで、三池崇史監督、市原隼人、谷村美月主演の東映配給「神様のパズル」(08年6月7日公開)を製作した。落ちこぼれ大学生と天才少女が“宇宙創生”に挑むSFファンタジーラブ・コメディだ。製作の狙い等について角川プロデューサーに聞いた。



「時をかける〜」念頭に

 ――角川プロデューサーはこれまでSFファンタジー映画としては「ねらわれた学園」(81)「時をかける少女」(83)を製作していますが、今回の「神様のパズル」はどういう狙いで映画化されたのですか。

角川 ええ、その2本が念頭にありました。2本ともジュブナイル小説の映画化でどうにでも細工ができたのですが、今回は“宇宙を創る”というまったく前例のない映画なので、大変難しい製作となりました。“宇宙創生”というテーマははずせないわけですから、どう映像化したらよいか不安を抱えながらのシナリオ作成だったのです。狙いとしては、先程の私がかつて製作した学園SFファンタジー映画と同じ層を観客層としているわけですが、はたして10代、20代の若者がどこまでこれにのめり込んでくれるのかわからないのですね。しかし、とにかくこの10代、20代を観客ターゲットに絞り込んで映画を作りました。

 ――第3回小松左京賞を受賞した機本伸治さんの同名原作(ハルキ文庫刊)は、やはり若者に支持されているわけですか。

角川 そうですね。これは神田の三省堂で、半年間ベストセラー1位を続けて、年間で神田三省堂の第3位だったわけです。1位は「ハリー・ポッター」シリーズで、単行本としてよく売れたんですね。特に大学生がかなり読んでいて、それが文庫になりさらに加速しているわけです。映画についてはあまり知らないが、原作を読んでいるという人がかなりいます。

 ――累計で今どのくらいになっているのですか。

角川 今は文庫本で14万部ですね。今、本が売れない時代に文庫本で14万部というのはかなり大きいのですよ。

 ――そうですね。特にある一定の層に支持されているというのは、ベースとして強いですね。

角川 そうですね。ハードSFではなく、ライト・ノベルという分野なのですが、これはファンタジーとSFの中間ぐらいに位置するのですが、10代から20代の層に強く支持され、ライト・ノベルとしてはかなり売れたのです。


獄中で原作を読み映画化

 ――いつぐらいから映画化を考えていたのですか。

角川 映画をやりたいなと思ったのは獄中だったのです。その時には、はたして自分が映画に復帰できるのかどうかも明確ではありませんでしたし、姉(辺見じゅん)を通して、東映の坂上順くん(常務取締役)が「男たちの大和/YAMATO」を製作したいという意向をもらしていて、出所したら一緒にやりたいなという程度だったのです。ですから「神様のパズル」も映画化したいと考えてはいました。

 ――何年前になりますか。

角川 5年以上前です。私が獄中にいる時に単行本が出版されて読んでからですから。

 ――もうその時には、具体的な映画化の構想はあったのですか。

角川 いやいや、ぜんぜん考えていませんでしたね。映画化したいなというだけでしたね。やれるものかどうかもまったく判断できませんでしたし。実際に映画化が決まって動き出したのは、監督を交えてのシナリオは一昨年、撮影は昨年になります。

 ――これまで「大和」の佐藤純弥監督、「蒼き狼」の澤井信一郎監督、「椿」の森田芳光監督も角川さんとは以前から付き合いのある監督で今回、三池崇史監督を初めて起用されたわけです。何か作品をご覧になっていたのですか。

角川 とても人気があり、彼の作品は見ていましたが、最初は別な作品で彼を考えていたのです。それがいろんな話し合いの中で「神様のパズル」をやってみないかということで、シナリオライターにNAKA雅MURAを決めて脚本を作りはじめたのですが大変でした。原作で読む面白さを映像化するのに、これだけ難しいのかというぐらい難しかったです。

 ――特に前半は、宇宙物理学の言葉や観念論が多くて、一般の人がはたして理解できるのかどうかという感じを受けましたが。

角川 そのために原作を一部変えたのです。主人公を双子の兄弟にしたことです。なぜかというと、弟は頭の良い物理の学生、兄は寿司屋でアルバイトをしながらロッカーを目指している青年で、この兄がインド旅行にいった弟に代わって物理の授業に参加するという設定にしたのです。つまり観客は少なくともこの映画で市原隼人くんが演じる主人公よりも、宇宙については詳しいんじゃないかという。だから彼にはガイド役としての役割を担ってもらったのです。前半は、こんなロッカーでも宇宙について関心を持ち、物理学のディベートに参加するということですね。
(2008/06/30)
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