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アメリカよ・新ニッポン論:米大統領、核軍縮宣言 しがみつく日本

 <世の中ナビ NEWS NAVIGATOR>

 米主導の核軍縮で、同盟国・日本はどういう役割を果たすのか。オバマ米大統領のプラハ演説の翌4月6日から2日間、ワシントンで開かれたカーネギー国際平和財団主催の国際会議は、日本の特異な立場と各国の思惑が浮き彫りになった。

 ◇「米国に頼り続ける」 冷戦時代の抑止論

 初日、メーン会場の大パネルでオバマ演説が再現された。場内に明かりがともると、46カ国の800人を超える参加者から盛大な拍手が起き、会議は核軍縮歓迎のムードに包まれた。

 同財団は、100年近い歴史を持ち、会議は隔年の恒例。今年はオバマ演説にあわせて、各国の核政策を担当する政府高官や、政策決定に影響力を持つ専門家らが一堂に会し、核軍縮を巡る世界の主張が縮図となって表れた。オバマ政権も、新政策を浸透させる絶好の場と重視していた。

 全員参加の昼食会では、一人ひとりに大統領のサイン入りの「核不拡散にアメリカの政治・外交力・知性のすべてを注ぐ。皆さんの協力が必要だ」と書かれた手紙が配られた。

 「テロリストの核爆弾がニューヨークや東京でさく裂すれば、前代未聞の悲劇となり、世界の政治経済も大打撃を受けるだろう」

 スタインバーグ米国務副長官の基調演説は、核軍縮に乗り出す理由として真っ先に核テロの危険を挙げた。

 テロを防ぐには、北朝鮮やイランの核開発疑惑で揺らぐ核拡散防止条約(NPT)体制を再建しなければならない。それが核軍縮の主眼であり、同会議の約15の分科会も、テーマの大半は査察や密輸の摘発、原子力の安全な民生利用といった不拡散問題だった。

 日本は、核軍縮演説を受けて、すぐに核の傘の確認に動いたが、そうした反応は国際的には少数派だ。会議で、拡大抑止がテーマの分科会は一つだけ。

 日本の佐藤行雄元国連大使は、そこで核の傘の必要性を強調したが、北大西洋条約機構(NATO)加盟国で同じ米抑止力に頼るポーランドの出席者は「核兵器への依存は減らせる」と認めた。

 「もし日本が北朝鮮や中国と戦争になれば、米国は日本と共同して戦うのか、といった疑問は、核兵器とは関係ない」。米国の出席者の発言に、佐藤氏はすかさず「米国にとって日本は同盟国で、中国より重要だ。議論する必要もない」と反論したが、北朝鮮については「核の傘が有効か、私にも分からない」と言葉を濁した。

 対米同盟を絶対視し、中国や北朝鮮を意識して、冷戦時代の抑止論を繰り返す日本の姿は、分科会場に場違いな印象を残した。

   ■

 2日目の昼食会は、ロシアのキスリャク駐米大使と、米露新核軍縮条約交渉米側代表のゴットミューラー国務次官補が対談。「我々にはノウハウがある」「目指すゴールは一緒だ」。世界の核兵器の95%を持つ「超大国の共同歩調」をアピールする演出で、軍縮機運を盛り上げた。

 ただ、他の核保有国は「お手並み拝見」の構え。核戦力の近代化を進める中国の参加者は「中国の核はわずかだ」と主張し、フランスは「核抑止は国家主権」と、性急な軍縮から距離を置いた。

 非核保有国の言い分も、先制不使用や非核地帯宣言など一様ではない。クラスター爆弾禁止条約など独自外交で定評のあるノルウェーのストーレ外相は、日本など他の非保有国に「核のない世界での自国の安全保障のあり方を真剣に考えるべきだ」と促した。

 中国は何人もの研究者を送り込み、「日米のミサイル防衛は米中関係の不安定要素だ」などと積極的に独自の言い分を展開した。

 ◇「寸止め」開発は「5年で1兆円」 軍事技術面から検討

 「NBCR対策推進機構」の報告書にある「寸止め核開発論」は、「核(兵器)開発疑惑国の状況」という章の、技術的観点から開発過程を検討する中で提案されている。高い技術力を持つ日本の「保有できるが保有しない」状態を体現した政策だが、海外からみれば核保有と同じで、実現可能性は低い。

 製造準備から量産化までの技術的な細目が表になっており、「初核保有(核実験)」の一歩手前の段階は、「最初の数発の核弾頭の最終組み立て着手直前の段階」。さらに「部品の検査体制」「最終組み立てラインの維持」「核反応の進展、各部の作動、爆発威力などの模擬計算の精度にかなりの自信が持てる段階」などとある。また、分析として「初歩的な原爆2~3個を政治的・象徴的に開発・保有するだけなら2000億円程度で可能だが、これは無意味」で、「寸止め核開発」の段階にするには「4~5年の期間と0・5~1・0兆円の経費を要する」と計算。「最も望ましい」と結論づけている。

 同機構の井上忠雄理事長は「研究者の個人的見解で異論もあるだろう。我々は技術者が多いので、今後1年ほどかけて核保有の技術的な可否を検討・提言していきたい」と話している。

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 ◆カーネギー会議における各国参加者の主な発言

 ◇核保有国

米国:スタインバーグ国務副長官「核兵器を欲しがるテロ組織に昔ながらの抑止力は通用しない」

ロシア:キスリャク駐米大使「核削減では通常戦力の格差も問題になる。戦術核と同じ威力の通常兵器が既に登場している」

中国:楚樹龍清華大教授「中国は核など戦略兵器を含む軍の近代化が必要だ」

フランス:ブリアン外務省不拡散・軍縮部長「『核のない世界』だった1914年と39年に世界大戦は起きた。核兵器なしで平和と安全保障を守れるのか」

 ◇米国の核の傘で守られる同盟国

日本:佐藤行雄元国連大使「国民と領土を核の脅威から守ってくれる限り、米国の核抑止に頼り続ける」

ドイツ:ゴットワルト連邦政府軍縮軍備管理担当局長「アフガンや対テロの現場で『同盟国が核で守ってくれるから安心』と感じることはない。我々が直面している戦場で、今や核は役に立たない」

 ◇独自の軍縮を提言する非核保有国

ノルウェー:ストーレ外相「核が残る将来を選ぶか、着実に削減されていく将来を選ぶかは、各国指導者の意思次第だ」

アルゼンチン:フェルナンデス・モレノ原子力規制庁上級顧問「世界初の非核兵器地帯を作った経験から言えば、不拡散と軍縮は可能だ」

毎日新聞 2009年5月4日 東京朝刊

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