今回は非常にポジティブな社長メッセージとすることができ、株主の皆様のお怒りと不安を少しでも和らげることができるのでは、と考えながら、書き進めております。前回の社長メッセージにおいて、買取再販事業の準備がもう間もなく完了する、という内容を、非常に短くではありますが、お話しいたしました。今回はその買取再販事業の原資となる出資の契約締結について、業界の動向などもふまえて、ご説明申し上げます。
ご存知の方もいらっしゃるのでは、と思いますが、一般的に、1棟のマンションを開発するには、急いでも2年近くかかります。用地取得、基礎工事、建物施工、電気・ガス・水道工事、内装工事等々、さまざまな段階があります。早く終了する工程は、数日で終了するのですが、コンクリート関係の施工となりますと、十分強度を発揮するまでに1カ月かかる過程もあり(建物全体に関しては、階数プラス3か月、といわれています)、高速化したくてもなかなかできないというのが現実です。
このように現金化にまで時間がかかる事業がもたらす最大のリスクは、期間リスクです。ご存知のように、今回の不動産市場崩落においては、月単位で悪化の程度がひどくなり、現在の市況は2年前のそれと比較しますと、当時では考えられなかったほどの暴落となっております。コスト体質は2年間不変でありながら、販売価格はその間にどんどん下落したわけですから、デベロッパーの体力が蝕まれずにすむわけがありません。
「そんなこと最初からわかっていたことでしょう?」というご批判は確かにそのとおりであります。変えようにも変えられない建築過程についていつまでも嘆いたり、そのせいにしていては会社の再起はありませんので、この市況の崩落を逆にチャンスに変えることができないだろうか、という思いの下、買取再販事業の立ち上げに走り回ってきました。
当社が今回行う買取再販事業とは、他社が完成させたマンションを当社の子会社が出資金を原資に買い取り、当社が販売する、というものです。一番のメリットは、新築でありながら(完成後10カ月以上経っているものも中にはありますが)たいへんお求めやすい価格で販売できる、ということです。もちろん、完成して入居可能なものを買い取り販売するわけですから期間リスクは、当社がゼロから建築施工する場合と比較して、極めて低くなります。つまり、当社からみれば格段に低いリスクで、お客様が高額のローンを組む必要がない住宅を提供できる、ということです。
当社の子会社は、出資金をもとに買い取るわけですから、まさに、売買契約締結当日に売主に送金することも可能です。現在の不動産市況においては「買手となって事業をしたいけど資金がない」ということが最大のネックになっており、完成在庫の換金を急ぐ売主は買手側の資金難に頭を悩ませているといわれています。ゆえに、このように迅速な決済ができるのであれば、売主も大幅な値下げを快諾するケースが多いといわれており、当社の子会社は市況を大幅に下回る価格で仕入れができ、ひいては、お客様もかなり低いローン負担で広めのマンションを購入できるというわけです。
不動産市況は悪化しておりますが、価格の下落を虎視眈々と狙っている賢いお客様もたくさんいらっしゃいます。ご存知でしょうか?一部報道をご覧になった方もおられるのでは、と思いますが、シティタワー品川というマンションが去年販売された際の登録申し込み倍率は、平均で17.64倍、最高378倍に達したそうです。マンション市況が冷え込む中、お値打ち感から話題を呼び、最終登録申し込みが1万4,000件を突破した、との記述を、私自身、今でも覚えておりますが、やはり広くて安い住宅はいつの時代も人気があるんだな、と納得した次第です。(シティタワー品川は、長期の定期借地権が設定されたマンションであり、厳密には、一般的に区分所有権を売買する分譲マンションとは異なります。)
年収がそう伸びない時代となり、だれもが将来の所得に対して一抹の不安をもっている先が見えない時代となりましたが、そのような時代であるからこそ、返済不安のない住宅ローン計画で、自分の名義である、広い自宅を切望するではないでしょうか。同じ広さで毎月の返済が半分になる、と聞けば、だれもが心を揺り動かされるのではないでしょうか。
官公庁が開示するデータによりますと、11月発表分において、首都圏のマンション在庫が1万戸を大幅に上回っており、また、一部専門家の指摘によれば、いわゆる世に発表されていない未完成在庫だけでも、3万戸ぐらいあるのではないか、といわれています。この在庫は、いずれ、大幅に下げた価格で処分せざるをえないだろう、ともいわれており、当社にとっては大きなチャンスです。当社の得意とする東北だけでなく、首都圏においても、精力的に調査し、物件を取得し、収益源とする所存であります。
以上の背景は、今回出資を決めてくださったIPCの創業者ご一族、そして経営陣にもよくご説明申し上げました。IPCの創業者ご一族は今回日本に300億以上投資される、と聞いておりますが、当社が投資対象選考委員会で残れたことは光栄の極みであります。ようやくここまで来れましたので、まず、IPCの期待を裏切ることがないように、しっかりと結果を出し、営業利益の黒字化を達成し、株主の皆様が少しでも当社株で利益が出るように、がんばってまいります。
(敬称略)