社長メッセージ



代表取締役社長・小出泰啓

はじめに...

今回このような発表をするに至り、株主の皆様におかれましては、大変な失望と強いお怒りをお感じに違いなく、損切せざるをえなかった株主の皆様、含み損で株価を見るのが嫌になってしまわれている皆様に、まず、深くお詫び申し上げます。

「2月に掲載された社長メッセージからは想像もできないような決算ですね」というご批判の声は当然のことと考え、まず、いいわけのようで恐縮ですが、2月以降、当社がおかれた状況について、ご説明します。

流動化事業の深刻な低迷と健在である『本業回帰』について

今回のこの最悪決算の主な要因は、不動産流動化案件の不振と減損の適用です。2月に業績予想を行った段階において、不動産流動化案件においてはかなり踏み込んだ販売価格の引き下げを断行し、利益率の大幅な見直しを行いました。かなりの引き下げを行ったことから、不動産市況の悪化は織り込んだつもりでおりましたが、2月以降、成約確実と思われていた不動産流動化案件が立て続けに破談となり、中には最終的な書面契約を締結した後に破談となる案件が出る始末でした。破談とまではいかなくても、交渉の最終段階で買手が大幅な値引きを打診してきたことにより、当社の判断で売却を取りやめたものもあります。このようなことから、営業利益・経常利益は大幅減となりました。

市況の下落にともない、当社保有物件の想定販売価格の見直しを行いましたところ、それらについて減損することとなり、資産の評価損を計上いたしました。さらに、子会社地建の経営計画の見直しなどから当該子会社株式評価損も計上することとなり、特別損失としてさらに重くのしかかることとなりました。

業績予想には希望的観測は排除し、不動産業界の常識から判断して成約すると思われるものだけを含め、かつ、販売価格もかなり引き下げることを想定して出した業績予想がここまで下振れするとは、正直なところショックとしか言いようがありません。地合いとはいえ、ただでさえ急降下した株価で株主の皆様に大変嫌な思いをさせてしまった上、下方修正だけは避けよう、という思いで相当な下振れ要因を織り込んだつもりでしたが、それがここまでの市況下落の波をかぶることとなり、とにかく申し訳ないと思うと同時に、おそろしきはサブプライム問題と信用収縮、と、心底震え上がっております。

今後は、銀行負債に依存する形で行う流動化事業には一切、手を出しません。土砂降りの不動産業界ではありますが、幸いにして地方衛星都市に特化した当社の分譲事業は利益を維持しながら、比較的堅調な売れ行きを保っており、本業は健在です。創業の精神に立ち返り、分譲事業に専念することでグループ全体の傷を癒してまいる所存であります。

2月15日付社長メッセージに対する自己採点と近況ご報告

2月以降、社長メッセージにおいてお話しした事項について、自己採点を兼ね、御報告申し上げます。

まず「市場の地合いや外部要因のせいにしない」というお約束についてですが、地合いだけでなく、当社の業績で株価を押し下げてしまい、0点決定となってしまいました。前回の機関投資家むけ説明会において『環境悪化の中、一旦屈んで大きくジャンプするつもりです』と申し上げましたが、屈んだ瞬間に複雑骨折し入院してしまったような状態となり、あまりの恥ずかしさに穴があったら入りたいほどの気持ちです。現実を直視した経営判断として、回復には時間がかかると申し上げなければなりません。大変申し訳ありません。

「企業としての社会責任CSRに真剣に取り組みます」の部分ですが、母子家庭のお母さんを正社員として雇用し、所得の確保と法人において競争力がある資格を身に付けさせるという方針は着実に実行しております。

  • 業務面におきましては、インテリアアイテム事業の準備的業務と当社が排出している二酸化炭素の集計体制の整備をお願いしました。
  • 真の経済的自立を実現するための資格取得においては、早い段階で入社したお母さんがすでに勤務の合間を縫って中国語を勉強しております。最近入社されたお母さんに対しては、家庭と勤務状況が落ち着いた段階で英語か中国語の資格取得に向けて勉強を始めるよう指導いたします。
  • 理工系学生の支援におきましては、当社の母子家庭社員の中学生・高校生の学習指導や、新規事業・外国人投資家からの照会事項に関連した調査を学生さんにお願いしております。学生さんの経済的困窮に対して有効な解決策となる報酬が支給されるよう配慮しました。
  • 子育て支援におきましては、当社の共働き社員への保育所費用助成を制度化し、出産祝い金も増額しました。
  • 環境対策におきましては、リサイクルの徹底、当社が排出する二酸化炭素の集計を開始しました。

この分野におきましては、70点ぐらいでは、と思っております。欧米のSRI系の機関投資家に当社のこの企業努力をアピールしたいところですが、なにぶんにも業績がこのような結果となりましたので、それら機関投資家に対するIRは当面自粛します。実際に業績回復の目処が立って、IR後、それら機関投資家の保有株数が増え株価の上昇につながった時点で90点とすべき、という考え方であります。

「新規事業にチャレンジいたします」の部分ですが、出資先候補と交渉を重ねている、と申し上げることしかできません。業績が苦しいとはいえ、当社の株価のため、利益の質の向上のためには必要なことですので、他の会社のように高値掴みにならないよう留意しながら出資いたします。法規制もありますので、これ以上お話はできませんが、買収先の経営内容を向上させ70点を目指します。

「社内体制の国際化を実現します」については、60点ぐらいと考えております。まず、ウェブサイトは英語化が完了し、日本語版とほぼ同等の情報量を確保いたしました。現在細部の調整を行っており、近日中にアップする予定です。当社を知るため投資家が重要視すると思われるポイントは手間を惜しまず英語化いたしました。全てをあまねく翻訳するとなりますと、翻訳量が膨大になりますので、古い開示事項等については、日本語のままとなっておりますことに関しましてはご理解ください。

「外国人の能力を業務に活用すること」においては、主に、20代の若い中国人の方を正社員として採用し、新興国向け事業基礎調査を担当させております。最近問題となった新興国からの外国人労働者に対する差別的待遇や長時間単純労働・低賃金雇用などの問題もありましたことから、当社においては他業種他社と比較して明確に有利といえる待遇にせねば、と考え、外資系証券などの初任給なども参考にし、賃金・勤務体型整備を行いました。

外国人株主からの質問や照会は、英語でお答えする体制を整え、時間と手間をかけて対応しております。英国の年金基金などから直接当社に対して、社外取締役の選任、新興国向け新規事業の早期立ち上げの二つの課題について宿題が出されており、誠意をもって回答・フォローしております。60点となりました理由は、外国人社員の増員を抑制したことにあります。正直なところ、増員したいのですが、業績もかなり落としてしまいましたので、人件費は抑えなければならず、今後は、事業ごとにキャッシュフローの余裕が出た範囲でその事業における外国人を増員します。

「株主還元と資金調達について」の部分ですが、無配転落ということから、これはもう0点確定です。せめて、配当だけでも・・・と思っておられた株主のお怒りは、重々、承知しております。

資金調達に関してですが、当社と金融機関との関係は良好である、と以前申し上げました。しかし、金融機関内部の貸出規定の厳格化は全金融機関で起きており、当社に対してだけの現象ではなく、担保評価の大幅な下落は大きな問題であります。当然、借入の難易度は上昇しており、このように環境が厳しい中、これからも土地の買い付けを行うための資金を考えた場合、機関投資家を対象とした第三者割当による増資もやむなし、と考えた瞬間も確かにありました。

有利子負債の圧縮は粛々と進めなければならず、営業キャッシュフローだけではそのペースは緩やかなものにとどまります。場合によっては、エクイティファイナンスをすべき、という局面もあろうかと思います。2月以降、環境が激変いたしましたので、絶対にエクイティファイナンスはしない、という保障はなくなったことに関しては、ここできちんとお伝えするのが誠意ある株主対応と考えております。もし希薄化が生じた場合、利益を出してEPSを上げ、自社株買いを再開するなどしてその希薄化を解消するしかありません。

資金繰りに関して大変なご心配をかけておりますことは承知しております。『銀行に頼ってなんとかすべき』『株券を刷るなんてもってのほか』『株主をバカにしている』というお声も多いのですが、銀行は【打ち出の小槌】ではありません。セクター全体の環境が悪化すれば、当然、融資規定も変化します。銀行はその諸規定にしたがって融資するしかなく、融資契約は重視されるべきものであります。当社だから特別に緩めの規定を適用するなどということはありえません。当社はまず合理的な事業計画を策定し、それに基づいて最大限の自助努力をし、銀行の評価を維持することに集中します。当社の事業計画が各行の評価の対象になるうちは、関係は良好である、と当社は考えております。

当社は証券市場も【打ち出の小槌】とは考えていません。希薄化に対しては、業績の回復による自社株買いと復配で対処いたします。株価でご迷惑をかけた以上は株価で報いる所存であります。

まとめ

以上が自己採点と近況のご報告です。ポイントを申し上げます。

  • 本業である分譲事業は健在です
  • 本業回帰は必ず実行します
  • 流動化在庫は処分し有利子負債の圧縮につとめ、本業利益で立ち上がります

2月に表明した「社長メッセージ」で掲げた、いわゆる、サンシティ改革の旗を下ろすつもりは全くありません。達成は先送りになってしまいましたが、大風呂敷を広げたわけでもありませんし、実現可能なことだけを申し上げたつもりです。株主の含み損が解消されることはかなり先になってしまいましたが、株主の皆様と同様、私も株主です。こんなに資産が減って嬉しいはずがありません。この暑い中、がんばってくれている営業担当者と一緒になってしっかりと最後までやり遂げます。

今期は当社にとって忘れることができない期です。外資系ファンド・国内系ファンド等による契約解除、利益剰余金をここまで減らし無配転落、株価は約20分の1、と、当社・株主の皆様双方にとって、これだけ厳しい期は今期を最後にしたいと心底、反省しております。損切りしてしまった投資家の方、含み損に耐えてくださっている株主の方に深くお詫び申し上げますとともに、再起決意、獅子奮迅の決意表明を兼ね、今年2回目の社長メッセージとさせていただきます。



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