2009年6月1日
模擬臨床経験(シミュレーション)を重視した教育で学部生・研修医の腕を磨こうと、宮崎大学医学部は今年度から「臨床技術トレーニングセンター」を開設した。医療技能教育は従来、「指導医の手技を見て、自分でやってみて」といった面があり、患者側に負担を強いることも少なくなかったという。宮大医学部は「より安全性の高い医療の実現を目指す」として、シミュレーション教育の充実を図る方針だ。
宮大医学部は25日、福利棟2階の一部を改築して開いた同センターを、報道陣に公開した。救急蘇生の訓練に使う人形や、胃カメラ・腸カメラのシミュレーターなど約20種類の機材を導入。これまで保有していた約10種と合わせて使い、費用は改築費も含めて約7千万円かかったという。
シミュレーション教育を主に担当するのは、医学部医学教育改革推進センターの林克裕教授、小松弘幸・准教授、医学部付属病院卒後臨床研修センターの有村保次・助教の3人。学部生と研修医の教育を一貫したものにする目的もあるという。
小松准教授によると、シミュレーション教育の長所として、患者に危険がない▽失敗が許される▽ゆっくり研修できる▽できるようになるまで繰り返せる▽訓練と臨床問題が直結している――などがある。
学部の5年生には、採血や心音聴診などの実習を人形などを使って行わせ、研修医には、それぞれの研修現場の医療機関に出る前に、基本的な医療技術や救急蘇生などを教える。さらに看護師や専門医に対する教育や、将来的には一般住民対象の救急蘇生講習会なども実施していく考えだ。
主に肺疾患を調べる気管支鏡のシミュレーターなど最新鋭の機器もそろえており、小松准教授は「患者に接する前にシミュレーション教育をすれば安全性が高まると思う。全国トップクラスの医学教育機関を目指したい」と意欲を見せる。
産業医大(北九州市)の舟谷文男教授(医療政策学)によると、ここ10年ほど、こうしたシミュレーション教育を採り入れる大学が次第に増えてきたという。「シミュレーション用の新しい機器が開発され、臨床と同じような経験ができるようになった。今後、医学教育の現場ではシミュレーションがさらに重視されていくだろう」と話す。(神谷裕司)
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