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歩む:永沼重己さん(72)=小倉北区 パンチパーマを考案 /福岡

 ◇「髪は日々違って面白い」

 右手のヘアーアイロンを髪に当て、クルリン、クルリンとリズム良く手首を回してパーマをかけていく。髪の多い人で巻く回数は約600回。アイロンの温度は160度近く、地肌に触れればやけどで済まない。細心の注意と確かな技術が必要だ。こうして小倉発祥のきれいな「パンチパーマ」が出来上がる。

 小倉生まれの小倉育ち。実家は美容室。周囲の薦めもあって、19歳で小倉の理容師に弟子入りする。勤め先だけでなく、家業も手伝い、休みの日は先輩理容師のところに出掛けて散髪をさせてもらう修業の日々を送った。「負けたくなかった」。その気持ちは72歳になった今も胸にある。

 26歳で独立し「ヘアサロン永沼」を開業。コンクール出場に明け暮れた。その当時、パーマをかけるためのヘアーアイロンは先の棒の部分が細い円柱だった。パーマはかかりが弱かった。そこで、本体をやすりで削り、鉛筆のような六角柱にしてみた。角の立ったアイロンは髪を挟みやすく、パーマも強くかかった。実用新案登録された「エッヂアイロン」の誕生だった。

 そうして生み出されたのが黒人の髪形をヒントにした「パンチパーマ」だ。このニューモードは「画期的」と評判を呼び、北海道から沖縄まで講習に飛び回った。「これ以上はないと思ったから『チャンピオンプレス』と名付けた」にもかかわらず、いつの間にか「パンチパーマ」と呼ばれるように。「誰が最初に言ったのかは分からない」と苦笑する。

 パーマのかかりが強く、髪が傷みにくいパンチパーマ。根強い人気を誇り、小倉祇園太鼓など夏祭りの前になるとお客さんが増えるという。「男性的な強さがあるヘアスタイルだからでしょう」

 昨年大病を患い、今年に入って本格的に復帰した。アイロンを持てば、以前に変わらず卓越した集中力で髪を巻いていく。「仕事していると元気になる」と力強い。「相手も違えば、やることも違って日々面白い。まだまだ現役で続けたい」。チャンピオンはそう言ってほほ笑んだ。【佐藤敬一】

〔北九州版〕

毎日新聞 2009年6月1日 地方版

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