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教育インサイド

熊坂・宮古市長 医師不足の現状を熱く講義

2009年05月30日

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医学部1年生に医師不足について講義する熊坂義裕・宮古市長=矢巾町西徳田の岩手医大矢巾キャンパス

 医師でもある宮古市の熊坂義裕市長が25日、岩手医大(盛岡市)で医学総論の講座で、医学部1年生約110人に地域医療の医師不足について講義した。深刻な医師不足の現場を抱える自治体の首長としての経験を買われて、招請された。講義は昨年に続き2回目だが、7月2日に3期目の任期満了で退任するため、現役市長としての講義は今回が最後。医師の卵たちへ地域医療の大切さを熱く語った。

    ◇

 岩手の医師不足は深刻だ。2年ごとに行われる厚生労働省の調査(06年12月31日現在)では、県内の医師数は2569人。人口10万人当たりに換算すると、186・8人で、全国平均(217・5人)とは30・7人の差がある。

 講義は県内の医療の現状についてのDVDを見せた後、熊坂市長が学生に、「皆さんが活躍する時代に医療はもっと厳しくなっている。医者が頑張っても頑張っても環境が悪くなるのは、国の制度が間違っているから」と述べ、「これまで国は、医師は都会と田舎で偏在していると理由づけてきた。だが、皆さんの学年の定員が(昨年より20人多い)110人に増えたのは医師不足であることを認めたから」などと説明した。

 その上で熊坂市長は、「今、27兆円の医療費のサービスを27万人の医師が担っている。25年には技術の高度化などで55兆円の医療費のサービスが必要なのに33万人の医師でしかサービスができない」などとして、「社会制度そのものが変わらないと医師不足の根本的な解決はできない。だから、医師は地域の共有財産であり、住民が守っていかなければならないという考えがいる」と力説した。

 盛岡市出身で地域特別枠の白倉正博さん(18)は将来は小児科医を目指している。講義を聴いて白倉さんは、「医師不足の現場の話を聞けたので、これからある地域医療研修の準備に問題意識を持つことができた」という。

 将来は地域医療の医師を目指すという一関市出身の佐藤綾香さん(22)は「これまでは現場の厳しさや医療制度に考えが及ばなかったが、これからは目を向けて考えていきたい」と話した。

 講義を取材していた国立成育医療センター(東京都)の小児科医師で写真家の野崎英夫さん(38)は、「社会的なことや医療って何だろうとかを学ぶには、熊坂市長の現場からの話を聞くのはいい機会」という。

 講義後、熊坂市長は「生々しい厳しさを聞いて少しでも医師不足のことを考えて、岩手の医療を担ってもらいたい」とエールを送った。

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