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【社説】

失業率5% 就職支援に総力挙げよ

2009年6月1日

 雇用が急速に悪化している。失業者の増大は景気改善に重い足かせとなるばかりか、格差問題や自殺増加など社会不安の拡大につながる。政府も企業も、失業者の再就職に総力を挙げて取り組め。

 「不謹慎と言われそうだが失業率悪化は想定の範囲内。年内には過去最悪だった二〇〇三年四月の5・5%を超えることも覚悟しているから驚きはない」と厚生労働省幹部。

 政府として慌てるわけにはいかないのだろうが、国民から見れば雇用指数の悪化はひどすぎる。

 完全失業率は昨年十月の3・7%が今年四月には5・0%へ急上昇した。完全失業者数も二百五十五万人から三百四十六万人と百万人近くも増え、過去最悪だった三百八十五万人に近づいた。

 四月の有効求人倍率は〇・四六倍で、過去最低だった一九九九年五、六月の水準と並んだ。

 一番の悲劇は派遣社員や期間従業員、請負などの非正規雇用労働者だろう。六月末までに約二十一万六千人が失職するという。

 雇用問題は、時の政権の命運を左右しかねない重大課題だ。

 政府は昨年来の対策に続きこのほど成立した本年度補正予算で雇用対策を大幅に強化した。

 雇用維持の面から雇用調整助成金制度を一段と拡充。再就職支援対策では「緊急人材育成・就職支援基金」を設置して職業訓練期間中の生活費を支給するなど、総額二兆五千億円もの規模である。

 緊急対策としてはかなりの大盤振る舞いだ。まずは予算の早期執行を急いでもらいたい。さらに総選挙後になろうが年度後半の追加策も視野に入れておくべきだ。

 職員や相談員が増える公共職業安定所(ハローワーク)は失業者の再就職支援にきちんと取り組んでほしい。求職者は経歴や年齢、体力など一人一人事情が異なる。きめ細かな配慮が不可欠だ。

 企業側に再就職に向けた支援を求めたい。トヨタ自動車は今春から期間従業員を対象にフォークリフト運転やガス溶接の技能講習を始めた。資格を取得すれば再就職は有利になろう。

 雇用不安は消費にマイナスだ。景気回復が遅れるばかりか企業の発展を遅らせる可能性もある。

 昨年一年間に自殺した三万二千二百四十九人のうち、原因・動機をみると就業失敗や失業、生活苦などが目立って増えている。社会不安を解消するには、雇用問題の解決が極めて重要である。

 

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