二〇二〇年までに一九九〇年比で温室効果ガス排出量をどれだけ減らせるか。日本の中期目標を定める作業が大詰めだ。地球の危機回避をかけた大切な数値である。より強い意志を世界に示したい。
中期目標は、京都議定書に定めがない、二〇一三年以降の温室効果ガス排出削減割り当てを決める国際交渉の重要なポイントだ。
首相直轄の検討委員会が選択肢として示した六案には、一九九〇年比4%増から25%減と、大きな隔たりがある。
政府はこれらを基に、電子メールなどで国民の声を聞き終え、あとは麻生太郎首相が、六月半ばまでに最終判断を下すという。
国民の声は「環境派」が推す25%減案と「経済派」が推す4%増案の二つに割れた。外交交渉には駆け引きが付き物だから、初めから手の内はさらせないとする意見も根強い。このような国内の対立もそろそろおしまいにするべきだ。もう駆け引きに気を取られている場合ではない。
さまざまな研究機関が、温暖化がこのまま進行すれば、世界全体の損失は計り知れないと指摘する。地球全体の危機が刻一刻と迫っている。目先の損得にとらわれて、温暖化の進行を見逃してはならない。温室効果ガスを出し放題にしてきた化石燃料依存社会を根本から見直して、低炭素社会を築いていくしかない。
危機を免れるには、気温上昇を産業革命以前の二度以内に抑えるというのが、科学の判断に基づく国際社会の共通認識だ。これに照らせば、4%増案はあまりに消極的すぎて、交渉材料にはなり得ない。破滅を回避したいと願う日本の意志は、数字でしか表せないのではないか。
あとは、実現可能性を加味した上で、産業界にも支持がある7%減から25%減の間で目標を定め、世界に問うべきだ。
脱石油、石炭の低炭素社会を築く過程で、太陽光、風力などの自然エネルギーにかかわる新事業が誕生し、伸びてゆく。その恩恵を受けるためにも、より高い目標を早く掲げて、実現のための仕組みづくりを急ぐべきなのだ。
中期目標の数値以上に大切なのは、年末のコペンハーゲン会議(COP15)を成功させ、温暖化の危機回避に向けて、世界が新たな段階へ踏み出すことだ。
先進国にも途上国にも等しく危機は降り掛かる。協力し合って達成すべき、本来の目的を見失ってはならない。
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