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【主張】雇用悪化 働き方の見直しが必要だ
雇用情勢の悪化が続いている。1人につき何件の求人があるかを示す有効求人倍率は低下の一途をたどっており、4月の完全失業率は5・0%に上昇した。
政府は5月の月例経済報告で景気の基調判断を上方修正したが、雇用調整は当分続くと予想している。雇用悪化にいかに歯止めをかけ、改善に導くか。雇用保険の拡充など緊急雇用対策だけでは不十分である。中長期を見据えた働き方の見直しについても議論を深めねばならない。
政府は、昨年秋以降の急激な雇用悪化に対応するため、企業が従業員に支払った休業手当の一部を助成する雇用調整助成金の支給を拡大してきた。厚生労働省によると、前年度に比べて100倍を超える利用状況にあるという。特に中小企業の利用が圧倒的に多いのが目立つ。政府は当分、この助成措置によって雇用維持を図っていくことになろう。
そのうえで雇用創出策も必要である。今国会で成立した今年度補正予算には、地方自治体が基金をつくり、雇い止めにあった非正規労働者や中高齢者を短期的に雇用する制度の新設などが含まれる。政府はこうした対策で1年間で40万人から50万人の雇用が生まれると試算する。実効的な運用を心がけてほしい。
ただ、こうした緊急対策だけで雇用悪化の根っこが解決するわけではない。深刻なのは、雇用者の約3分の1に達している非正規労働者の問題である。自動車、電機など輸出企業を中心に非正規の雇い止めが急増し、「製造業派遣を禁止すべきだ」といった議論まで起きた。それは極論にしても、景気動向に応じて雇用の調整弁となる非正規労働者の増加は、将来の年金や生活保護とも密接に絡むだけに重要である。
現状を踏まえれば、正社員と非正規労働者の垣根を低くする工夫が必要ではないか。たとえば、雑貨大手ロフトはパートや契約社員を無期雇用に切り替え、勤務時間を自由に選択できるようにした。時間給制だが、「同一価値労働・同一賃金」とし、昇進やボーナスも支給するという。従来の正社員と非正規労働者の間を埋める働き方といえよう。
仕事を分かち合うワークシェアリングの工夫も個々の企業で始まっている。政府は、そうした多様な働き方ができる制度設計にも取り組むべきだ。