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【主張】対北核技術流出 人とモノの監視を強めよ
北朝鮮がミサイル発射に続き核実験を強行したことで、改めてチェックが必要なのは、関連技術が日本から北に流出していないかという点だ。
万景峰号が日本と北朝鮮の間を自由に行き来していたころは、核やミサイルに必要な部品類が同じ船により半ば公然と北に渡っていた。
2003(平成15)年、北朝鮮の元高官が米上院の公聴会で行った証言によると、北のミサイル部品の90%が日本からの輸入で、朝鮮総連を通じ、万景峰号で3カ月ごとに運ばれていたという。
その後、税関の検査が厳しくなり、平成18年からは、経済制裁により同船の入港も禁止された。だが、中国などを経由した不正輸出が後を絶たない。
2007年、北朝鮮の核関連施設に対して国際原子力機関(IAEA)が行った査察で、ウラン濃縮に転用された日本製の真空ポンプが見つかった。日本の捜査当局の調べで、真空ポンプは台湾経由で北に渡ったものと判明した。
今年も、核開発に転用可能な磁気測定装置を東南アジア経由で北に輸出しようとした東京都内の貿易商社や、ミサイル運搬に転用可能な大型タンクローリーを中国の貿易会社を通じて北朝鮮の商社に輸出した京都府の会社が外為法違反容疑で摘発された。
こうした迂回(うかい)ルートにさらに厳しい目を光らせる必要がある。
また、日本の公安当局により、昨年10月から11月にかけ、在日朝鮮人の科学者4人がロシア・ウラジオストク経由で北朝鮮を訪問したことが確認されている。在日本朝鮮人科学技術協会(科協)の幹部や顧問らだった。
科協は、朝鮮労働党の工作機関「対外連絡部」の直轄下にあり、会員は在日の研究者約1200人にのぼる。国立大の研究機関などに所属した経験をもち、幹部級は“祖国訪問”した際に北の研究者と接触している。陸上自衛隊の最新型地対空ミサイルシステムに関する研究開発段階のデータが科協に流出したこともある。
自民党の拉致問題対策特命委員会は北の核実験への追加制裁として、在日外国人の訪朝後の再入国の原則禁止を含む3項目を政府に要請することを決めた。政府は科協幹部らの再入国禁止措置などを真剣に検討すべきだ。
北への核・ミサイル技術の流出を断つには、人とモノの両面からの徹底監視が必要である。