作家林芙美子の半生を描く舞台「放浪記」の主演二千回を達成した女優の森光子さんに国民栄誉賞が贈られることが決まった。女優の受賞は初めてだ。
長年にわたる芸能や主演記録を通じて「国民に夢と希望と潤いを与えた」と評価された。一九六一年の初演から四十八年。今月九日、八十九歳の誕生日に二千回の金字塔を打ち立てた。
決して順風満帆な歩みではなかった。下積みの新人女優時代にしゃれで作った川柳「あいつよりうまいはずだがなぜ売れぬ」は有名だ。劇作家の菊田一夫に見いだされ、初主演した時は四十一歳になっていた。
劇中のでんぐり返りこそ封印したが、今でも筋肉を鍛え、せりふは公演ごとに一から覚え直すという。観客は、逆境にめげず前向きに進む芙美子と森さんの生き方を二重映しにして感動するのだろう。
きのう、岡山市で開かれた「金婚夫婦お祝いの集い」には八百八十組が参加した。天皇・皇后両陛下ご成婚の五九(昭和三十四)年に結ばれたカップルのみなさん。その一組、一組が、人生というかけがえのない「舞台」の共演者だ。
両陛下はご結婚五十年の記者会見で、お互いに「感謝状」を贈られた。ふだんは恥ずかしくて言えなくても、機会をつくって感謝したい。さて、わが連れ合いには何の賞を贈ろうか。