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【社会】

子どものインフル、解熱剤に注意 重い脳症誘発の仕組み解明

2009年5月31日 09時35分

 インフルエンザを発症した子どもに、炎症を抑える特定の物質を含む解熱剤を使うと、合併症のインフルエンザ脳症が重症化するメカニズムを、名古屋市立大医学研究科の浅井清文教授(50)と青山峰芳助教(41)らのグループが、ラットの細胞実験で初めて解明し、米国の毒性学雑誌電子版に発表した。

 この物質はジクロフェナクナトリウム(DFS)。解熱用の座薬などに使われ、これまで厚生労働省研究班の1998−2000年の調査で、小児に使うと脳症による死亡率が、使わない場合の13−25%から、52−58%に高まることが確認されていた。このため同省は2001年に、DFSを含む薬剤を15歳未満に使わないよう通知したが、どんな仕組みで症状を引き起こすのかは未解明だった。

 インフルエンザ脳症は、体内に入ったウイルスを排除しようと、細胞が白血球などに指示を出すために分泌する一群の物質「サイトカイン」が出過ぎて過剰活性が起き、逆に脳を傷つけてしまう現象とみられている。

 グループは、神経細胞を周囲で支える「グリア細胞」が、死亡した子どもの脳で活性化していたことに着目した。生後間もないラットの脳からグリア細胞を取り出して培養。体内とほぼ同じ濃度で3種類のサイトカインを注入した後、さらにDFSを入れ、細胞を傷つける一酸化窒素を作り出す量を測定した。

 2日後、通常よりも一酸化窒素の量が、サイトカインの注入時は30%、DFS注入時は60%増えた。また、DFSだけ注入したときや、別の小児用解熱剤の成分を注入したときは、効果はみられなかった。グループでは「サイトカインとDFSが相互作用して一酸化窒素を作り、自らの細胞を傷つけている」と結論づけた。

 インフルエンザ脳症はA型インフルエンザの感染者に多く発症する。世界で流行中の新型インフルエンザもA型で、青山助教は「同じ反応が起きるかは分からないが、注意が必要」と指摘。「DFSを含む大人用解熱剤を家庭で子どもに使わないよう、気をつけてほしい」と話している。

 <インフルエンザ脳症> 主に6歳以下の子どもが発症。インフルエンザへの感染をきっかけに、脳が腫れ、けいれんや意識障害を起こす。毎年100−300人が発症し、その約15%が死亡。約25%に運動機能障害などの後遺症が残る。

(中日新聞)

 

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