オスカー子役「路上に終止符」…政府から家贈呈
◆ 「スラムドッグ$ミリオネア」出演 ◆
インド西部マハラシュトラ州政府は29日(日本時間30日)、米アカデミー賞で8部門を受賞した英映画「スラムドッグ$ミリオネア」に出演した同州ムンバイのスラム街に住む子役2人に、アパートをプレゼントすることを決めた。2人は小屋で生活していたが今月中旬、市当局が違法建築として撤去。路上生活を強いられていたが、映画同様のサクセスストーリーとして話題になっている。
◆ 1戸80万円のアパート ◆
映画で主人公の兄の幼少時代を演じたアザルディン・イスマイル君(10)と、ヒロインの幼少時代を演じたルビナ・アリちゃん(9)の2人が州政府から贈呈されるのは、それぞれムンバイ郊外のアパートで価格は1戸40万ルピー(約80万円)。映画で主人公がクイズ番組で獲得する2000万ルピー(約4000万円)には及ばないが、2人には夢のようなサクセスストーリーだ。
ムンバイはインド最大の都市の一方で貧富の差が激しく、市内には広大なスラム街が広がる。ロイター電によると人口1700万人の半数以上が家を持たずに、小屋や路上で生活。映画が同スラムを舞台にしていたことから、その悲惨な状況が注目を集める結果となっていた。そんな中、今月中旬に、市当局がイスマイル君や、映画にエキストラとして出演した子役たちが住んでいた約50の住居を「下水溝の上の違法建築物」として強制撤去。“世界一有名になった子役が路上生活”と大きなニュースとなって世界中に伝わり、各地で非難の声があがった。
アリちゃんも、家族がアラブの富豪を装った英紙記者に20万ポンド(約2900万円)での養子縁組を持ち掛けるなど、映画の成功からは考えられない状況下にあった。心配した監督のダニー・ボイル氏(52)が数日前にムンバイを訪問し、子役たちを見舞ったことも州政府を後押ししたもようだ。
州政府は2人への贈呈は「特例」と強調。子どもたちには願ってもないご褒美だが、今回の決定の裏には、6月に新政権が発足する同国のイメージ回復という“大人の事情”もあるようだ。
[ 2009年5月31日付 ]
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