(cache) 山陰中央新報 - 北朝鮮の四苦八苦

明窓 : 北朝鮮の四苦八苦

　イソップ物語のカエルと牛の寓話。牛の大きさを知らない母ガエルが、実物を見た子ガエルに尋ねる。腹を膨らませて「こんな大きさだったかい？」「もっと大きかった」。母ガエルの腹はどんどん膨らみ、破裂してしまう▼国際社会の批判も顧みず、核実験を強行した北朝鮮の行動と重なり合う。ミサイルをどんなに撃っても肝心の米国に見向きもされない。「それでは」と切ったのが核カード。母ガエルよろしく、精いっぱいの虚像を膨らませた▼知られているように北朝鮮の国力は極めて貧弱。早稲田大の重村智計教授によれば、二〇〇四年の国民総所得は二兆円。日本の二百八十分の一、韓国の四十分の一にすぎない。国家予算にしてもわずか三千六百億円、島根県以下である▼最貧国の一つに数えられる国が、ばく大な費用をかけて核開発を推進し、ミサイルを発射し続ければ、どうなるか。火を見るより明らか。経済は今以上に疲弊し、やがて国家そのものが破綻の瀬戸際に追い込まれるに違いない▼そうまでして危険なゲームに血道を上げるのはなぜか。背景には小出しの危機では米国の動揺を誘えず、直接対話に引き込めないとの判断があるからだろう。何としても米国に振り向いてほしいのだ▼仏教でいう四苦八苦のうち、求めても得られない苦しみのことを特に求不得苦という。核爆弾という業火を振り回したって国際社会から相手にされなければ何にもならない。北朝鮮の振る舞いは、もがき苦しむ人間の業を見る思いがする。（三）

('09/05/30 無断転載禁止)

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