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北朝鮮で「富裕層たたき」が本格化(下)

 北朝鮮では極度の経済難に加え、外国からの援助も途絶え、食糧難は最悪の状況に陥っている。このため、体制に不満を持つ人々が増えており、これをなだめすかす手段として、ぜいたくな生活を送り一般住民たちの怒りを買っている富裕層をいけにえにした。金正日(キム・ジョンイル)政権に対する住民たちの恨みつらみを、富を独占する富裕層に向けさせようとしているというわけだ。

 2000年代に入り、中朝国境が封鎖されて以降、国家機関が中国との貿易を独占するようになり、国家権力とのパイプを持つ幹部や商人らが莫大な利益を得、これによって億万長者が続々と誕生した。貿易権を持つ軍隊や保衛部、労働党などの権力機関で貿易業務に携わる人たちが、中国との正式な貿易や密貿易を通じてたやすく金を稼いだのだ。

 一部の関係者たちは麻薬の密輸で大金を稼いだ。脱北者たちによると、かつては海外に多くの資産を持つ親せきがいる人たちが「富裕層」とされたが、最近は権力を持ち、海外との貿易に携わる人やその親せきが「富裕層」として急浮上している。

 元軍人の脱北者は「清津で保衛部が把握した富裕層のうち、100万ドル(約9500万円)を稼いだ人は約10人、10万-50万ドル(約950万-4700万円)を稼いだ人は約100人に達する。ごく少数の人が富を独占している」と話した。平壌ではそこそこの高級幹部が億万長者とされ、たとえ権力があっても金がなければ尊敬されないほどだという。

 北朝鮮のある経済官僚は、「金総書記が“対外業務を行う機関のメンバーによる、外貨稼ぎを口実とした不正行為が限度を超えている”という保衛部の報告を受け、外貨稼ぎを担当するすべての機関のメンバーによる不正行為について調査するよう指示した。今回の措置により、中国に常駐しているほとんどの機関の関係者らが北朝鮮へ帰国させられ、取り調べを受けている」と話した。

 一方、高級幹部だった脱北者たちは、北朝鮮当局によるこのような措置に対しても、「“不透明な体制の下で生き残るためには、結局カネに頼るしかない”という幹部たちの考えが変わらない限り、このような不正行為は続くとしか考えられない」と主張した。このような「富裕層たたき」は、特権階級を倒すことになり、その結果さらに体制を弱体化させる要因になるものと考えられる。

姜哲煥(カン・チョルファン)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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