さいたま市長選で、清水勇人氏(47)は次点の現職、相川宗一氏(66)に6万票近くの差を付けて圧勝した。合併した旧市間の対立感情から、各候補の出身地域が得票状況に大きく影響するとささやかれたが、結果からは対立感情は薄れつつあるといえそうだ。一方、「自民、公明対民主」の対決を経て、今度は政党間の対立が生まれ、清水氏には難しい議会運営が予想される。【稲田佳代】
合併直後の01年市長選は、旧浦和市長だった相川氏と旧大宮市長が激しく火花を散らした。以来、相川氏には「浦和を優遇している」との批判がつきまとった。
確かに、毎日新聞が実施した出口調査では、相川氏の得票率は旧大宮市地域では清水氏の4分の1にとどまったが、清水氏は旧大宮市出身にもかかわらず旧浦和市地域で相川氏を上回った。「合併前旧市の地域事情」を投票の基準に挙げた人は、全体の8%に過ぎなかった。
清水氏は当選証書を受け取った25日、地域間対立について、「市長が旧浦和の人というイメージだけで対立があった。相川氏はもっと市民と率直に対話すべきだったのでは。私は現場から公平、公正な市政をアピールしたい」と語った。
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「素晴らしい。さいたまの方が早く政権交代できましたね」。清水氏は26日、民主党本部を訪れ、鳩山由紀夫代表から当選を祝福された。清水氏は「ぜひ国も」と返し、同席した小沢一郎、菅直人両代表代行らは満足そうな笑みを浮かべた。
民主市議団の神崎功団長は「選挙は支援したが、市政は議会が市長の行政をチェックする二元代表制。今後は是々非々で」と話すが、選挙戦を通じて付いた「民主の市長」のイメージは強い。
自民県連と公明県本部が推薦した相川氏の敗北で、ある自民市議は「おれたちは野党になる。徹底的にやり合っていく」と対決姿勢をむき出しにする。市議会は野党が与党を十人以上、上回ることになりそうだ。
清水氏は「就任後すぐに取り組むこと」として、▽自身の任期を最長3期までとする多選自粛条例の制定▽市長直轄の行財政改革チーム設置▽サッカープラザ建設計画白紙撤回--を挙げる。サッカープラザ建設は既に議会の承認を経ており、反発は必至だ。他の二つの実現も議会の理解が必要だ。
26日、副市長の2人が辞職した。清水氏は民間人を含めた3人体制を目指すが、「選挙直後で自公に感情的なものが残っている」と、6月議会では提案を見送るという。市長をサポートする重職は、9月以降まで空席が続く。
毎日新聞 2009年5月27日 地方版