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朝日新聞の「財界悪玉論」
けさの朝日新聞の1面トップに「CO2目標 縛る産業界」という記事が出ている（ウェブで公開されているのは一部）。政府の温暖化ガス削減中期目標についての企画だが、最近まれにみるひどい記事だ。「多くの生物が絶滅し、干ばつや洪水が広がり、食糧不足に陥る」といったセンセーショナルな話もさることながら、最大の問題はこの見出しにみられるように財界を槍玉にあげる古いレトリックだ。
この小林敦司と石井徹という編集委員は、例によって「欧米は積極的に排出削減枠を設定しているのに日本は・・・」と書くが、欧州がいまだに1990年比で大幅な削減幅を提案しているのは、東欧の編入によってCO2の排出量が大幅に上がった時点を政治的に利用するもので、アメリカが大幅な削減量を出したのは、今まで何もしてないのだから当たり前だ。同様に国内で家庭の削減量が多いのも、今まで何もしてないので、限界削減コストが低いからだ。
当ブログで何度も書いているように、問題は温暖化ガス排出量を最小化することではなく、削減コストとその便益のトレードオフの中で社会的に最善の組み合わせを見つけることだ。したがって絶対的基準を決めて一律に排出を規制するのではなく、削減コストの低い（削減しやすい）部門が多く削減し、削減コストの大きい部門がその削減枠を買うのが排出権取引の考え方である。そんな初歩的な論理も理解してない記者が、目標の数値だけを比べて「産業界の削減量は少なすぎる」などと批判するのはあきれた話だ。彼らは業界が経産省に圧力をかけて削減枠を減らした例をあげて、こうしめくくる：
企業が過大な温暖化ガス削減を義務づけられると、そのコストは価格に転嫁されて消費者の負担になるか、雇用の削減によって労働者の負担になるか、利潤が減って株主の負担になる。マクロ的には成長率が低下して、全国民がコストを負担する。斉藤環境相は削減枠についての財界の「90年比4％増」という主張を「世界の笑いもの」と罵倒したが、それさえ本気で実現しようと思えば、ガソリン代の大幅値上げや店舗の夜間営業禁止などの統制経済が必要になる。
民主党などが主張する最大限の「90年比25％減」（2005年比30％減）をとった場合には、その直接コストだけでGDPは1％以上低下する。排出権取引が導入されたら、現行の枠組でも家計のエネルギー支出は低所得層で11％増えるという試算もある。他方、世論調査によれば国民が負担してもいいと思う環境コストは、「月1000円以下」が60％以上を占める。
このように資源配分の問題を階級対立にすりかえ、相手を悪玉に仕立て上げて正義の味方の顔をするのが万年野党の古い手口だ。社会的コストを考えるべきだという意見には「財界寄りだ」といったレッテルを貼って問題を利害対立に仕立て、合理的に解決できる問題を政治的なゼロサムゲームにしてしまう。きのうのシンポジウムでも、多くの参加者から雇用問題について「弱者」を英雄に仕立てるメディアの情緒的な報道を批判する声が出た。
自省をこめていうと、報道の現場にいると事実をもれなくフォローしなければならないというプレッシャーが強い一方、理論は専門家のコメントにまかせればいいので自前で勉強しない。しかしすべての事実は理論負荷的なので、特に環境のような経済問題について、経済学の初歩も理解しないで直感でものをいうのは間違いのもとだ。それによって恥をかくのは小林氏や石井氏ではなく、朝日新聞である。
この小林敦司と石井徹という編集委員は、例によって「欧米は積極的に排出削減枠を設定しているのに日本は・・・」と書くが、欧州がいまだに1990年比で大幅な削減幅を提案しているのは、東欧の編入によってCO2の排出量が大幅に上がった時点を政治的に利用するもので、アメリカが大幅な削減量を出したのは、今まで何もしてないのだから当たり前だ。同様に国内で家庭の削減量が多いのも、今まで何もしてないので、限界削減コストが低いからだ。
当ブログで何度も書いているように、問題は温暖化ガス排出量を最小化することではなく、削減コストとその便益のトレードオフの中で社会的に最善の組み合わせを見つけることだ。したがって絶対的基準を決めて一律に排出を規制するのではなく、削減コストの低い（削減しやすい）部門が多く削減し、削減コストの大きい部門がその削減枠を買うのが排出権取引の考え方である。そんな初歩的な論理も理解してない記者が、目標の数値だけを比べて「産業界の削減量は少なすぎる」などと批判するのはあきれた話だ。彼らは業界が経産省に圧力をかけて削減枠を減らした例をあげて、こうしめくくる：
産業界はまず自分たちの生産量や省エネ努力で削減できる量を固め、それを政府の意思決定に反映させる。[・・・]産業界はすでに防波堤を築きつつある。日本経団連の関係者はこう話した。「決まった前提を変えるようなことはさせない。こちらにも手練手管がある」最後のいかにも悪意に満ちた匿名コメントが笑いを誘うが、要するに財界＝悪玉が役所を使って負担を家庭＝被害者に押しつけているという図式だ。これは昔の「大資本が労働者を搾取する」という階級闘争史観の偽装だが、最終的に環境保護のコストを負担するのは企業ではない。誰が負担するかは複雑な議論が必要だが、間違いないのはコストを負担するのは人間だということである。
企業が過大な温暖化ガス削減を義務づけられると、そのコストは価格に転嫁されて消費者の負担になるか、雇用の削減によって労働者の負担になるか、利潤が減って株主の負担になる。マクロ的には成長率が低下して、全国民がコストを負担する。斉藤環境相は削減枠についての財界の「90年比4％増」という主張を「世界の笑いもの」と罵倒したが、それさえ本気で実現しようと思えば、ガソリン代の大幅値上げや店舗の夜間営業禁止などの統制経済が必要になる。
民主党などが主張する最大限の「90年比25％減」（2005年比30％減）をとった場合には、その直接コストだけでGDPは1％以上低下する。排出権取引が導入されたら、現行の枠組でも家計のエネルギー支出は低所得層で11％増えるという試算もある。他方、世論調査によれば国民が負担してもいいと思う環境コストは、「月1000円以下」が60％以上を占める。
このように資源配分の問題を階級対立にすりかえ、相手を悪玉に仕立て上げて正義の味方の顔をするのが万年野党の古い手口だ。社会的コストを考えるべきだという意見には「財界寄りだ」といったレッテルを貼って問題を利害対立に仕立て、合理的に解決できる問題を政治的なゼロサムゲームにしてしまう。きのうのシンポジウムでも、多くの参加者から雇用問題について「弱者」を英雄に仕立てるメディアの情緒的な報道を批判する声が出た。
自省をこめていうと、報道の現場にいると事実をもれなくフォローしなければならないというプレッシャーが強い一方、理論は専門家のコメントにまかせればいいので自前で勉強しない。しかしすべての事実は理論負荷的なので、特に環境のような経済問題について、経済学の初歩も理解しないで直感でものをいうのは間違いのもとだ。それによって恥をかくのは小林氏や石井氏ではなく、朝日新聞である。
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デフレから日本経済を脱却させたいのは山々だが、銀行が貸し出しを増加しない状況ではインフレにはできない。
インフレ・ターゲットとして２％を日銀が発表するべきだというのも、炭酸ガス削減目標に似ていないだろうか。
原因でなければ削減したとて、温暖化は変わらない。
インタゲの場合は日本のデフレ脱却には無効の可能性が高いようだ。
クルーグマンさんは、日本でのデフレ対応の仔細を知りながら、与謝野さんにインタゲを勧めていた。
ここまでくるとレーニンが言ったとか言うように、偽札で日銀券の信用を破壊する方法でも勧めているのだろうか。
温暖化炭酸ガス説、クルーグマンのいずれもがノーベル賞対象ではある。
もっとも金融工学のノーベル賞受賞者が投資会社をつぶしたり、失敗例は珍しくないか。
＞すべての事実は理論負荷的なので、特に環境のような経済問題について、経済学の初歩も理解しないで直感でものをいうのは間違いのもとだ。
感覚値でのコメントになりますが、私の所属する金融界に関する記事で言えば、調査報道の精度はかなり正確な事例でも７割程度と認識しています。
また、存在自体の問題は横に置くとして、記者クラブへの記事の投込みとその後の質問受付を募ったような場合でも、報道機関・記者による質問内容・水準の差異は、保有知識の絶対量よりもイデオロギーが占める割合が大きいと感じます。
事情をよく知らぬ者としては、個々人それぞれが取れる時間は有限であることから、こんなときにはなるべく多くの記者の機能をポートフォリオ的に組み合わせて…と思うのですが、こうした結果が御用報道を生んでいる気がしてならないですね。
ボーナスの減少は消費の減少に繋がり
地球温暖化防止に役立つ。
会社自体が潰れればもっと資源の浪費
防止に役立つとの自覚のもとかどうか
知らないがもっか邁進中。
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