障害者団体向け割引制度を悪用した郵便不正事件で、厚生労働省障害保健福祉部企画課係長、上村(かみむら)勉容疑者(39)の上司だった同部の元部長が、障害者団体「凜(りん)の会」(解散)側の要望を受けていたことが厚労省関係者への取材で分かった。同会と厚労省キャリア幹部(当時)の接点が明らかになったのは初めて。大阪地検特捜部が元部長を任意で事情聴取したことも判明。元部長は「議員案件」の窓口だったといい、特捜部は厚労省の組織的関与の有無を捜査している模様だ。
元部長については特捜部が28日、現在の職場である独立行政法人(東京都港区)を家宅捜索。29日に事情を聴いたとみられる。
上村容疑者は凜の会の証明書発行の手続きが進んでいることを示す、偽の稟議書を作成したとされる。厚労省関係者によると、同会の関係者が04年2月ごろ、証明書発行について相談するため、企画課を訪問。発行や審査を直接、所管する企画課の社会参加推進室に移動し、企画課幹部ら数人と協議したという。
今回、元部長が同時期に凜の会側の要望を受け、その内容を担当者らに伝えたことが新たに分かった。元部長は政治家の要望など「議員案件」に対処する窓口の役割を果たしていたという。
凜の会代表、倉沢邦夫容疑者(73)は特捜部に「証明書は厚労省幹部から受け取った」と話しているという。これに対し、上村容疑者は「自分の責任で証明書を作成し渡した」としており、供述に食い違いが出ている。
凜の会の証明書発行については、企画課内で「議員案件」とされていたとの証言もあり、特捜部は、不正が厚労省内で組織的に把握されていた可能性がなかったか、慎重に裏づけ捜査を進めている。
元部長は厚労省政策統括官を最後に退官し、06年12月から独立行政法人の理事。
元部長は毎日新聞の取材に対し、「一切、話をできない。ノーコメント」としている。
毎日新聞 2009年5月31日 2時30分