「……私の気持ちが揺るがなかったら?」
「俺は最後まであきらめないかな。せっかく巡り合ったひろみちゃんを失いたくないからね。俺の夢は、ひろみちゃんを立派な女優にすることだから」
私は、初めて榎本の夢を聞いた。
「……榎本さんにとって、私ってなんなの?」
「……わからない。でも、ひとつ言えるのは、大切な存在だってことだよ。ひろみちゃんが何か壁にぶつかったとき、俺は一緒に戦っていきたい。何でも俺に話してほしい。ひろみちゃんがこの仕事をやめたあとでも、その関係は切りたくない。そんな存在、かな」
二人の心が交じり合い、車内は温かな空気で満たされた。
新潟から上京して、ひょんなことからスカウトされ……。見ず知らずの人と、ここまでの関係を築けたことが、何にも代えがたい宝物のように感じた。
夜は明けきり、太陽の光がまぶしい。あと三十分もしたら、さやかの家にたどり着く。
<つづく>
ななみ :
2009年5月28日 at 9:47 PM
あつい!!
アイス :
2009年5月30日 at 12:11 PM
榎本さんのすごい優しさに、泣きそうになったよ。
みひろちゃんと一緒に、榎本さんも走り続けてきたんだね。
えいちゃんも、すごい男らしい。
2人ともすごく心のやさしい人。
本当にそう思ったよ。