さやかの身体はどんどん小さくなり、見えなくなった。
頭はさえているはずなのに、そんな幻覚が浮かんで消えた。
「やだ……」
車窓の外は、ぼんやりと青白くなってきていた。夜が明けていく。長いトンネルをいくつも通り抜け、景色が様変わりした。
榎本は眠いはずなのに、休むことなくひたすら運転をし続けていた。
(なんでそこまで優しくなれるの? なんで自分のことより、人のことを気遣ってるの……? マネージャーって、そこまでするの?)
「……あと一時間くらいで着くかな」
「ねぇ、なんで?」
「んっ? 何が?」
「なんでここまでするの?」
「…………」
外の景色は次第に、見慣れた町並みになり、少し開いている窓から土と肥料の入り交じったにおいが漂ってきた。懐かしかった。
「ひろみちゃんにやめてほしくないからだよ。ほんの少しでも可能性があるんだったら、俺はどんなことだってするつもりだよ。それでひろみちゃんがまた仕事する気になってくれるんだったら」
榎本は、続ける。
「ひろみちゃん、女優という夢のために、俺たちを信じてAVに出ることを決意してくれたよね。大切な将来を、この仕事に賭けて。俺はすごくうれしくて、ひろみちゃんの夢を少しでも早くかなえてあげられるように、様々なチャンスをパスしてきたつもりだよ。どんな強引なパスも、なんとか乗り越えて頑張ってくれたから感謝してるんだ。一緒に一つの目標に向かって頑張ってきたのに、まだまだこれからなのに、やめてしまうなんて、俺は悔しくてしょうがないよ」
ななみ :
2009年5月28日 at 9:47 PM
あつい!!
アイス :
2009年5月30日 at 12:11 PM
榎本さんのすごい優しさに、泣きそうになったよ。
みひろちゃんと一緒に、榎本さんも走り続けてきたんだね。
えいちゃんも、すごい男らしい。
2人ともすごく心のやさしい人。
本当にそう思ったよ。