「ひろみちゃん、本当にそれでいいの?」
「ごめんなさい。わがままを許してください」
榎本は、何度も小さくうなずくと席を立った。そのうしろ姿を目で追うと、何度も顔を手でぬぐっているように見えた。時計の針は夜中の三時を指していた。
トイレから戻ってきた榎本は、すっきりとした顔をしていた。
「ひろみちゃん、今から新潟に行こう! さやかちゃんに会ってきなよ、俺が車で送るから。絶対今すぐに話したほうがいいと思う」
「えっ? 今から?」
「そう、俺は納得できない。さやかちゃんと話し合ってから決断しようよ。今のままじゃ、きっと後悔するから」
「えっ、だって、明日も仕事だよ」
「午後からでしょ。今から出れば大丈夫。行こう!」
榎本は会計をすませると車に向かった。私は慌ててあとを追い、いつも座っている後部座席に乗り込んだ。
車内は終始無言だった。
朝早くからAVという重労働をし、疲れているはずなのに、目はさえていた。
(さぁちゃん……)
さやかが私の目の前に立っている。その表情はぼやけているが、口が動いているのがわかった。私に向かって何か言っている。声が聞こえず、何を言っているのかわからない。さやかの身体が私から遠ざかり始めた。
「待って!」
呼び止めて追いかけようとするが、身体が動かない。
「行かないで! 行かないで!」
ななみ :
2009年5月28日 at 9:47 PM
あつい!!
アイス :
2009年5月30日 at 12:11 PM
榎本さんのすごい優しさに、泣きそうになったよ。
みひろちゃんと一緒に、榎本さんも走り続けてきたんだね。
えいちゃんも、すごい男らしい。
2人ともすごく心のやさしい人。
本当にそう思ったよ。