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きょうの社説 2009年5月31日
◎台湾便就航1年 交流の熱気を大切にしたい
小松−台北便が就航から丸一年の節目を迎える。この一年間の搭乗率は約七割に達し、
同時に就航した「ライバル」の宮崎−台北便にも水を空けている。国際定期便としては、十分に合格点をつけられる数字と言ってよい。就航を契機とした石川と台湾の交流の盛り上がりが、観光利用などとともに「好成績」を支える原動力になったのは間違いないだろう。もともと、石川と台湾には「台湾のダムの父」と呼ばれる八田與一技師の縁で長く交流 を続けてきた歴史がある。その土台の上に両者を直結する新たな太いパイプができたことによって、交流熱が一気に高まった感がある。定期便就航の「祝賀ムード」が冷める二年目以降も、この熱気は大切にしていきたい。 就航一年目を振り返って特筆したいのは、青少年の活発な交流が目立った点だ。先日は 八田技師夫妻の墓前祭に技師の母校である金沢市花園小の児童たちが参加し、馬英九総統の前で歌声を披露。それに先立って、中学生派遣団の初訪台も実現した。修学旅行先に台湾を選んだ金沢学院東高には、今度は台湾の修学旅行生が訪ねてくることになり、双方向交流の芽も育ち始めている。 親日の台湾を支えてきた日本統治時代を知る人々、いわゆる「日本語世代」は既に老境 を迎え、その数は確実に減少している。日台の良好な隣人関係を今後も維持していくためにも、次世代の関係構築は重要である。 その意味でも、昨年来の積極的な取り組みを、単なる「就航記念行事」に終わらせてし まうのはもったいない。むしろ、石川が次世代交流の先頭に立つくらいの気構えを持ち、これからも子どもや若者の行き来をさらに盛んにしていきたいものだ。もちろん、文化やスポーツなどを通じた付き合いも深めていく必要があろう。 県は、小松―台北便の二年目について、滑りだしの環境は厳しいとみている。世界同時 不況や新型インフルエンザの影響が懸念されるからである。幅広い交流は、そうした逆風の中でも搭乗率を力強く下支えしてくれよう。
◎GM破産法申請へ 「ものづくりの心」どこへ
自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)の破産法適用申請が秒読みに入った。債権者
の多くが破産によって保険金を受け取れるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)に加入しているため、破産法回避の合意が得られそうもない。オバマ大統領は明日にも声明を発表し、四月末のクライスラーの破産法申請のときと同じように、追加金融支援を軸としたGM再建を全面支援する方針を表明することになろう。GMが苦境に陥った原因を一言でいえば、製造業が忘れてはならない「ものづくりの心 」を失ったからだろう。一九七〇年代、日本車の輸出ラッシュで、商品力の無さを痛感させられたにもかかわらず、貿易摩擦の激化を恐れた日本メーカーが輸出を自主規制すると、その機に乗じて値上げを行い、小型車や低燃費車など売れる商品の開発を怠った。巨大企業にありがちな官僚的体質が組織をむしばみ、ロボットの導入など生産性向上の取り組みにも遅れを取った。 近年は財務担当役員が幅を利かせ、米国内の消費ブームにのって、金融子会社のローン で利幅の大きい大型車を所得の少ない消費者にまで売りさばく安易な手法で利益を上げ、高額の役員報酬を手にしていた。「百年に一度」の経済危機に陥った今、稼ぎ頭だった金融子会社は巨額の損失を抱え、倒産への備えであった金融派生商品CDSは皮肉にも自主再建の道を閉ざす決定打になりそうである。 GMはこれから「事前調整型」の破綻手続きを進め、米政府は五百億ドルの追加融資の 見返りに新GMの普通株式の約72・5%を取得する方針という。事実上の国有化である。さらに全米自動車労組(UAW)が17・5%の新株を持つ第二位の大株主になる。この株主構成だけ見ても、GMの再建は前途多難というほかない。 ビッグスリーは、米国内だけで数十万人を雇用し、百万人近い退職者を医療費や年金の かたちで支えている。経営再建に失敗すれば、世界経済への影響は極めて大きいだろう。だが、失われた「ものづくりの心」がそう簡単に取り戻せるとは思えない。
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