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きょうのコラム「時鐘」 2009年5月31日
「卑弥呼(ひみこ)はどんな顔をしていたか」。ある考古学者に飛躍した質問をしたことがある。「女優で言えば、由紀さおりさん」と明快な答えが返ってきて驚いた記憶がある
山口県西端に弥生時代の人骨が多数発掘された遺跡がある。そこから人類学的に弥生人の顔や姿が推論されるのだと言う。一重まぶたの日本人らしさで、由紀さんの「卑弥呼似説」は意外に説得力があった 先に公開された映画「まぼろしの邪馬台国(やまたいこく)」に、由紀さんが準主役級で出ていた。主役の吉永小百合さんと絡む役だった。不思議な配役だが「卑弥呼=由紀さおり似説」が深く浸透しているのを痛感した 卑弥呼の墓との説もあった奈良県の箸墓(はしはか)古墳の築造年代が、卑弥呼の没年に近いと科学的に判定された記事が紙面を飾った。科学的解明には説得力がある。「空想から科学へ」が学問の常道であり、邪馬台国論争は一歩前進かもしれない が、素人考古学はいつも「空想から空想へ」である。仮に科学で証明しても信じない者は信じない。「卑弥呼=由紀さおり似説」を楽しむ余地を残しておいてほしい。邪馬台国は幻のままがいい。 |