以下は10月29日(日)の朝日新聞の一面記事の抜粋です。
◇郵政公社、トヨタ式に混乱 指導社員「上辺のみ改善」
日本郵政公社が07年の民営化に向けて3年前から導入したトヨタ自動車の生産方式をめぐって混乱している。秒刻みでムダを排した「1兆円企業」から伝授された仕事の「カイゼン」。公社は表向きその効果を強調しているが、全国の郵便局を「査察」したお目付け役のトヨタ社員は「81%がデタラメ局」「うその報告をあげている」などと厳しい内部報告書を作成。一方、現場からは「作業が混乱し、効率は低下した」「年賀状配達も遅れるのでは」と批判が相次いでいる。
郵政民営化について、小泉前首相は「サービスは低下しない」と繰り返したが、現場からは早くも来年の年賀状配達を心配する声が出ている。
http://www.asahi.com/business/update/1029/006.html?ref=rss
年賀状の遅配くらいなら何ら問題はないと思われますが、大きな問題点は「職員のモチベーションの低下」です。
そもそも、郵政改革にトヨタ方式が導入された背景には、今後他の輸送業者や金融機関などとの厳しい競争に打ち勝っていかなくてはいけないという事情があります。だからこそ、民営化される郵政公社には、職員をやる気にさせ、職員に「素晴らしい仕事」をしてもらうということが重要課題であったのです。
私は以前のブログにこう書きました。
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◇生産現場へのトヨタ方式の導入はきわめて効果的であるが、サービス産業への導入効果は依然「未知数」。
◇サービス産業の生産性向上に対してはディズニー方式の方が数段階上をいっていると考えられる。
誤解を恐れずに書きますと、トヨタ方式とは、
「モノが中心であり、ヒトがどのようにそのビジネスに関わっていくのか」
「商品であるモノの生産や物流に対して、ヒトをどのように働かせることがベストか」を追求するものと考えます。
一方ディズニー方式の得意分野はソフトウエアの生産に関する分野です。世界に名高いディズニーのソフトウエアについては説明を必要としないでしょう。
テーマパークも同じです。前述したようにディズニー・テーマパークで提供しているものは「卓越したサービス」というソフトウエアです。
ディズニー方式とは、
「ヒトが中心であり、ヒトがどのようにそのビジネスに関わっていくのか」
「保存のできない商品であるサービスの提供に対して、ヒトをどのように働かせることがベストか」を追求することです。
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郵政事業は「サービス業」です。そして、窓口業務や配達業務は「接客業」です。
この「サービス業」「接客業」の現場には絶対的な「鉄則」があります。今日はそれを教えてしまいましょう。
それは「サービス業の現場では、指示や命令では人(スタッフや接客担当者)は絶対に動かない」ということです。
残念ながら、トヨタ自動車の社員にはこの鉄則が理解されていないようです。
確かに私はこのような報道記事や、インターネット上の情報しか知らず、トヨタ方式の現場を見たことはありません。それでも、この鉄則が守られていないことは、以下のようなことから容易に推察できます。
◇郵政公社内で行われている教育が「こうしろ!」的な研修であること
◇郵政職員の能力レベルをバッチで格付けしていること
◇レクサス販売店も含め、トヨタ系列の販売店のサービスへの評判は、決して「一流」ではないこと
朝日新聞のレポートも含め、これらは何を物語っているのでしょうか。
そう、教育ができていないということです。というよりも、確固たる教育理念と体系化された教育制度がトヨタ自動車には存在しない、ということなのです。
はっきり申し上げて、郵政職員の再教育というミッション(使命)は、自動車メーカーであるトヨタ自動車には荷が重たかったということです。
日本は今、高校の履修偽装問題やいじめ問題をあげるまでもなく、教育現場の荒廃が大きな政治的テーマになっています。
教育基本法の改正に関して議論が交わされていますが、法律を変えても100%「教育現場」は変わりません。
いじめ問題も解決しませんし、先生の不祥事も減らないでしょう。そう断言できます。
なぜ、そう断言できるのでしょうか。それは前述したように、人は(法律や通達による)指示や命令では決して動かないからです。そのことを郵政公社とトヨタ自動車は見事に証明してくれました。
それでは、どうすれば日本の教育は「再生」することができるのでしょうか。
実に簡単なことです。学校現場や日本社会に通用する「教育理念」と「教育制度」を民間に学べばよいだけです。
そして、その民間企業とは・・・過去に数十万人を教育してきた実績を持つ「ディズニー」しかありません。
「ディズニー」が学校教育に関われば、教育サービスを受けた生徒は「ディズニーのキャスト」のように変わります。
「ディズニー」が広い意味での社会教育に関われば、日本社会は「ディズニーの社会(テーマパーク)」のように変わるのです。
最後に、
私は、トヨタ方式がディズニー方式より劣っているといっていっているのではありません。一貫して「それぞれに得意分野がある」と申し上げているのです。
どうでしょう、日本全国何でもトヨタ方式ではなく、そろそろ「日本の教育再生」「日本の生活安全の再生」は、トヨタ方式からディズニー方式にバトンタッチするべきではありませんか。
それこそが荒廃した日本社会を再生させる唯一の「道」である、私はそう信じて疑いません。
ディズニー方式とトヨタ方式に関する過去のブログ
◆トヨタ方式 ディズニー方式 おもてなしとホスピタリティ @
◆トヨタ方式 ディズニー方式 おもてなしとホスピタリティ A
◆郵政職員「バッチで格付け」は逆効果