エレベーター死亡事故と安全の維持管理A
この間、このブログで事故原因や防止対策の途中経過について書きたいと思っていたのですが、入手した情報量があまりにも少ないために、今でも「何も書けない」状況が続いています。
その理由は、事故機が外国のメーカー製であり、裁判を意識した対応なのか、事故機に関する情報(プログラムやメカニック的構造など)を開示しないことにあります。事故の原因を知りたい私たちエレベーター利用者にとって、このシンドラー社の対応はまったく納得できないものです。
私は、ディズニーランドでスペース・マウンテンやビッグ・サンダー・マウンテンの安全管理を担当してきましたが、その経験から、シンドラー社及び保守点検を請け負っていたSEC社の今回の事故への対応は、今後の日本社会に大きな影響を与えるものと考えています。
この「今後への影響」を述べる前に、このエレベーター事故と対比される、六本木ヒルズ回転扉死亡事故の裁判の結果について簡単に説明します。
六本木ヒルズ回転扉死亡事故の裁判では、メーカーである三和タジマと運営会社である森ビルの担当役員の業務上過失致死罪が確定しています(禁固十月、執行猶予三年)つまり、メーカーと運営会社の両社の責任が問われたということです。
しかしながら、前ブログに書いたように、救急車で運ばれるという傷害事故が多発していたにもかかわらず、運営本部長であった森ビルの社長は「事故を予見できなかった」と立件さえもされませんでした。
話をエレベーター事故に戻しますが、報道されているようにシンドラー社のエレベーターでは、過去、海外において死亡事故が何件も発生しています。また、扉が開いたまま昇降するという重大トラブルも数多く発生しています。
私が言いたいのはこういうことです。
◇過去の事故やトラブルに対し、十分な再発防止対策を講じてこなかった会社のトップが「無罪放免」になることは、業界全体のモラルハザード(倫理破壊)につながる。仮に遊園地などのジェットコースターで死亡事故が発生しても「事故を予見できなかった」ということになり社長は「無罪放免」になってしまう。
(JR西日本の脱線事故の際、「社長辞めろ」の大合唱が巻き起こりましたが、はたしてJRの社長は事故を予見できたのでしょうか?)
◇すべて裁判で白黒の決着をつけようと考えることは、情報を公開する姿勢(アカウンタビリティ)とは逆行し、企業の隠蔽主義を助長させることになる。
◇これらは結果的に消費者や利用者の「安全性の向上」には決してつながらない。
アメリカ産牛肉問題もそうですが、私たちは安全な食物や安全な乗り物だけを選択する権利を有しています。どの牛肉が安全なのか、どのエレベーターが安全なのかなどと考えながら生活したくはありません。
私には、今回のエレベーター死亡事故が、さらに日本社会を悪い方へ向かわせる「一つのきっかけ」になりそうな気がしてなりません。
最後に、私が訴え続けていることを再度書かせていただきます。
ホスピタリティをつきつめると「しあわせづくり」なのです。安全、安心ではなくて「しあわせ」とはいえないように、安全、安心なくしてホスピタリティではないのです。
そして、その安全性を軽視する経営者は「人」を大切だとは思っていないということです。「人」を「しあわせ」にしようなどとは考えていない経営者なのです。
今後も、このエレベーター死亡事故の展開を見守っていきたいと思います
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