ホスピタリティと「成果主義」について考えるA
先日、こんな問いかけをさせていただきました。
今日は、先日に引き続いて成果主義における評価の着眼点について書いてみたいと思います。
結論から言いますと
「しあわせをどれだけ創造したか」がその答えになる、私はそのように考えています。
当たり前のことです。ディズニーランドがゲストに提供している製品、商品は「ハピネス」つまり「しあわせ」なのですから。
確かにディズニーランドにはさまざまな職種があります。
商品店舗やレストランの仕事、ジャングルクルーズの船長さんや呪われた館の執事たち、清掃係に警備担当者、植栽を管理する仕事や、機械を整備する人、ナースもいれば無線局で働くキャストもいます。
それでも、スタッフは全員「ゲストをしあわせにする仕事」に従事しているのであり、(商品)物販業や飲食業に従事しているのではありません。
ここが、ディズニーランドのユニークなところであり、多くの人をひきつけてやまない理由の一つであると私は思っています。
ウォルト・ディズニーはかつてこう主張していました。
「顧客にとって従業員一人ひとりが会社だ」※
もう一歩踏み込んで言うと「ゲストにとってキャスト一人ひとりがディズニーランドだ」ということになります。
一人ひとりのキャストにウォルト・ディズニーの理念(ハピネスの創造)が擦り込まれており、そのキャストの総力でゲストにハピネスを提供する、それがディズニーランドであるということなのです。
このことは、言葉で説明してもなかなかご理解いただけないとは思いますが、ディズニーランドのオンステージで働いたことのある人は間違いなく「その通りだ」と実感したことでしょう。
「お客様にとってスタッフ一人ひとりが会社だ」「患者さんにとってはスタッフ一人ひとりが病院だ」
さて、みなさんの職場では?
成果主義の着眼点について考えてみます。
サッカーを考えてみればお分かりになると思います。サッカーもディズニーランド同様にチームプレイです。
ゴールを決めた選手ももちろん評価されますが、得点に貢献するアシスト(助ける)をした選手、反対に敵のゴールをキープした(守る)選手も、得点を決めた選手以上に評価されます。
そして、チームを指揮する監督は選手のサッカーに対する情熱の強さ、取り組み方、他の選手へのリーダーシップなども評価の対象にすることでしょう。
ディズニーランドの仕事の成果の着眼点もサッカーの監督と同じです。
先日も申し上げたように、一人ではゲストにハピネスを提供することはできません。チームワークが必要です。
チームワークに関して社会学者のアルフィー・コーンは
「すぐれた業務推敲能力を発揮するには、競争は必要ではなく、むしろ競争の欠如が必要なくらいである」
と結論づけています。※
つまり、「競争」ではなく「協力」の方が、より高い業績をあげることができる、ということなのです。
実はディズニーランドもアルフィー・コーンと同じ考え方で運営されています。知っていましたか。
冒頭の問いに戻ります。
ディズニーランドは、働く人の何を「成果」として評価すべきでしょうか?
その答えは「しあわせをどれだけ創造したか」です。そして、その「しあわせ」はキャスト一人では決して創造できません。
つまり、キャストが「しあわせをどれだけ創造したか」の中身には
どれだけ、そのキャストが他の人をアシストしたか、サポートしたか
どれだけ、そのキャストが他の人と力を合わせたか
どれだけ、そのキャストが他の人を育てたか
これらの事柄も含まれるということです。
成果主義というと、どうしても得点や売り上げなどの「数字に表される事項」ばかりに目がいってしまいますが、これは明らかに間違っています。
ここに記したような「数値化しにくい事項」にも着眼しないと、間違いなく組織全体のモチベーションは低下してしまうでしょう。
とくに、ホスピタリティに関わる方々にとって、このことはとても重要です。
最後に、一言
ホスピタリティとは、何かを助けたいという思考基盤(心根)である、そんな風に考えてみるとホスピタリティの持つ意味が理解できるのではないでしょうか。
ゴールデン・ウイーク中にさまざまな場所でホスピタリティを実感する人も多いと思います。そんな時、今日の「最後に一言」のことを思い出していただけたら望外の幸せです。
※「ディズニー方式が会社を変える」ビル・カポダグリ リン・ジャクソン著 PHP研究所刊