2006年02月09日

トヨタ方式 ディズニー方式 おもてなしとホスピタリティA

10月17日にトヨタ方式とディズニー方式のおもてなし、ホスピタリティの違いについて書きました。

このログの中で
◇後日、トヨタのレクサス販売に関する「おもてなし」について述べてみたいと考えています。「高級車にふさわしい質の高いもてなしの提供」が販売戦略だそうですが、はたしてうまくいくのでしょうか・・・?

このように書きました。今日はこのレクサス販売とおもてなしについて書いてみたいとおもいます。

まず、昨年の3月にプレスリリースされた時の新聞記事をご覧ください。

「トヨタ レクサス8月に導入 高級車販売競争激化へ」

トヨタ自動車が高級車専門の新しい販売系列「レクサス」を8月に導入するのをきっかけに、「高級車にふさわしい質の高いもてなし」を競う販売合戦が激化しそうだ。トヨタは接客技術の向上を目指して、販売会社の従業員を研修中。(毎日新聞) - 3月25日

私はこの時からトヨタのこの販売戦略に大きな疑問を持っていました。それは、

1、「高級車にふさわしい質の高いもてなし」について
2、「接客技術の向上を目指した従業員研修」について

以上の2点に大別されます。


1、「高級車にふさわしい質の高いもてなし」について

確かに日本社会において上位4分の1の「お金持ち」の資産合計が、残り4分の3の人の資産合計とほぼ同じである事を考えれば、トヨタが上位富裕層をターゲットにした販売戦略に転換していきたい事は容易に推察できます。

しかしながら、この戦略には高いリスクも存在することを提言したいと思います。

理由は3つあります。

第一に、「おもてなしビジネスの基本は顧客の視点から事業をみること」という大原則に反しています。

「高級車にふさわしい質の高いおもてなしを提供」、このことを強調することは、逆に「大衆車には大衆車にふさわしいおもてなしを提供」と公言しているようなものです。

「おもてなし」とは世代や経済的状況を超え、すべての顧客を対象に提供すべき「絶対的価値」であり、「高級」「高価格」とは結びつけてはいけない概念である、私はそう考えます。

全てのゲストがVIP(とても大切な人)と考えるディズニー方式とこのトヨタ方式、この点では180度違っているようですね。


第二に、「維持してきたトヨタファンの期待にそむく」ということです。

「いつかはクラウン」を夢見ていたトヨタファンは、一抹のむなしさを感じてしまうのではないでしょうか。

日本社会において、経済の二極化(中間層が減少、富裕層と貧困層への二極化、勝ち組と負け組への二分化)が進む中、「レクサス店」は一部富裕層の店として位置付けられ、高級車の販売店を「別格化」することは、結果的に「クラウン」クラスの高級車のステータスを落とすことになりかねません

第三に、「おもてなしビジネスの基本、『従業員も顧客である』」と考えないと失敗してしまいます。

顧客から見た場合「レクサス店」も「トヨタ店」も「カローラ店」も同じトヨタです。

トヨタ本社は、系列店の全社員を「レクサス店」のスタッフ同様に「大切な販売スタッフである」と考えないといけません。そうでなければ、レクサス店以外の社員の販売モチベーションは確実に低下してしまいます。

本来、トヨタグループ全体の顧客満足度を高めていくためには、「レクサス店」だけではなく、系列全社の経営理念を「おもてなし志向経営」に変革していくべきなのです。

100円のハンバーガーでも、高級レストランを彷彿する「最上の環境、最高のサービス」の中で食べれば顧客の満足度は上がるものです。
「カローラ店」のような「大衆店」であればあるほど、お客様に対しては「最上のおもてなし」を提供すべきである、私はそのように考えます。

2、「接客技術の向上を目指した従業員研修」について

接客を技術(テクニック)の観点から捉える時代はすでに終わっています。
確かに商品である自動車の良さ、他車との違いなどをお客様に分かりやすく説明するテクニックは必要です。

しかしながら「レクサス店」のセールスポイントは「高級車にふさわしい質の高いもてなしの提供」のはずです。

「おもてなし」とは、接客技術というテクニックでは決して相手に伝わるものではないということです。

今日の成熟したお客様は、商品やサービスそのものだけでなく、「お客様自身が心から満足する体験」に対してお金を払うという時代へと変化しました。
そうであるからこそ、新生ダイエー、新生そごうなど、販売現場を持つ多くの企業が「おもてなし」や「ホスピタリティ」の高さを競い合うようになってきたのです。

結論を言います。
「レクサス店」の従業員教育は、接客技術を教える研修ではなく「おもてなし」を提供するための「マインド、こころ」を教える研修が中心でなくてはならなかったということです。

お客様と販売スタッフ間の良いコミュニケーションこそが、「質の高いおもてなし」や「最上のホスピタリティ」をつくりあげます。
良いコミュニケーションとは、商品やサービスを提供する側と提供される側の「心の対話」にほかならないのです。

それではどうしたら良いコミュニケーションを生み出すことができるのでしょうか。

それは、ディズニーランドや一流のホテルなどから、最高のサービスや最上のホスピタリティを学び取ることです。
最高のものは普通のものよりずっと良いことを教えてくれる、この言葉の通りであると私は考えます。

最後に「レクサス店」に一言!
年末年始の休業日、あるレクサス店の入り口チェーンに沿って乗用車が横付けされていました。それも乗用車はレクサスではなくマークUです。

何のために?

マークUを、侵入者を防ぐための「バリケード」代わりに使用していたのです。(そのようにしか考えられない状態でした)

これはいけません。

クルマを売る人がクルマをバリケードの代用品にする、ディズニーランドの元スーパーバイザーである私には到底理解できるものではありません。

何故いけないのか?

どうしてこのような現象が発生してしまうのか?

トヨタ方式の弱点とは?

いつの日か、私の「見方」を書いてみたいと考えております。