台風対策にもマニュアルが活躍
日本の南方海上には、今現在も台風が1つ熱帯低気圧が2つ発生しています。
アメリカ南部に大きな被害をもたらした「カトリーナ」や、九州に上陸し多くの土砂災害や水害をもたらした「台風14号」も記憶に新しいところです。
多くの人々の命や財産を奪ってしまう台風。台風はもちろん自然災害ですが、地震のように突然やってくるものではありません。
国や自治体が事前の対策を怠ったり、避難命令発令時期などの判断を誤ったりすると自然災害も「人災」に変わってしまいます。
アメリカ、ニューオリンズ市の台風対策の多くは後手であったと非難されています。
今夏九州地方を直撃した台風14号は、30人もの尊い人命を奪いました。
この災害に対し、新聞などのメディアは「自治体の対応は適切であったのか」という疑問を投げかけています。
しかしながらメディアは「適切な対応とはこうだ」とは語りません。「適切であった自治体と、そうでなかった自治体がある」としか報道していません。
なぜでしょう。
メディア各社は台風対策における「適切な対応」を全く知らないからなのです。
そこでディズニーランド出身の私が考える「適切な自治体の台風対策」を以下に述べてみたいと思います。
自然災害を人災にしないためのポイントは3つです。
1、危機管理マニュアルを作成しておくこと。
2、最悪の事態を想定すること。
3、情報が住民全員に伝わること。(伝えただけではダメ、100%伝わったのかを確認)
簡易的なものですが、自治体もメディアもぜひ参考にしてみてください。
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架空の街、ホスピタリティマインドあふれる「おもてな市」の台風対策を紹介します。
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おもてな市の最大のテーマは「市民の安全確保」です。
おもてな市の職員は公的奉仕者(パブリック・サーバント)としての使命「市民の安全確保」を常に最優先と考え行動します。市長が強いリーダーシップを発揮し、職員全員で準備してきた台風対策をすべて実行に移します。
一日目 台風発生
◇情報収集を行います。担当部署の「防災課」の課長が、気象庁などの関係機関から必要な情報を得ます。
◇おもてな市「非常事態対応マニュアル」を確認します。台風がおもてな市にとり、最悪のコースをたどった場合にとるべき防災対策の確認を行います。
二日目 台風接近
◇おもてな市「非常事態対応マニュアル」に基づき、市役所内に「非常事態対応センター」が開設されます。市長をトップとし防災課長がマネージメントを担当します。
◇用意されている「ハザードマップ」に基づき、最悪の状況を想定します。台風の直撃を受け、市内を流れる「おもて川」の氾濫や「おもて山」の土砂くずれ、停電などあらゆる被害を想定します。
◇注意報レベル1を発令します。
台風の来襲まで48時間、「非常事態対応センター」が開設されたこと、レベル1の注意報が発令されたことを市民全員に伝え警戒を呼びかけます。市内の防災放送、自治会ネットワークの緊急回覧板、ローカルラジオ局、小学校や中学校、市役所や警察、郵便局などあらゆる公共機関を通じて広報活動に勤めます。
内容は「事前に各家庭に配布してある『防災手引き書』台風−注意報レベル1の指示事項に従って下さい。分からないことがあれば市役所までご連絡ください」
それだけです。
◇12時間ごとに「非常事態対応センター」の対策会議が開催されます。36時間前の会議からは、警察の担当課長、消防の担当課長及びおもてな市各課の課長も全員招集され、「市民の安全確保」への役割再確認と被災後の救助、復旧対策について検討されます。
三日目以降 24時間前から
◇注意報レベル2が発せられます。
台風がさらに接近し、大きな影響が予想されると非常事態センターが判断した場合、準備段階から行動段階へ移行します。避難場所の確保や物資の確認など市の「非常事態対応マニュアル」に基づいた行動がとられます。
重要なポイントは、おもてな市に320箇所ある土砂災害危険箇所に指定された地域の住民全員に対し、被災の可能性を確実に伝えることです。そして、市の全公務員が避難場所への移動をお手伝いする準備ができていることも確実に伝えます。
◇注意報レベル3が発せられます。
台風の接近速度から計算し、台風来襲約12時間前に最高レベルの警戒態勢に移行、避難命令を含む「非常事態対策」を実行します。
非常事態センターの指揮命令のもと、すべての公務員が最大限の対応策を実行します。
特に重要なポイントは、一人暮らしの高齢者などに情報が正しく伝わっており、最大の使命である市民全員の安全確保が完了していることを確実に把握することです。
台風最接近から通過
◇「非常事態センター」に情報を集めます。あらかじめ想定していた範囲の被害状況であるのか、想定外の事態が発生しているのかを知ります。必要に応じ、速やかに県や自衛隊の支援を受けることができるよう準備をします。
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このように、マニュアル活用主義のおもてな市では、防災の観点からあらゆる災害を想定し、Taxpayer(納税者)である市民の安全を確保するための準備を怠っていません。
「非常事態対応センター」も「非常事態対応マニュアル」に基づき設置されます。このマニュアルには、各課の担当者の役割と職責、指揮命令系統が明確にされた「組織図」も掲載されています。
「非常事態対応マニュアル」をはじめとする各種マニュアルは、市民の安全を確保することが最大の使命である公務員にとっては良き教科書であり、なくてはならない「知」の集合体なのです。
当然ですが、ディズニーランドの台風対策にもマニュアルは不可欠なものです。
「マニュアルなくして安全なし、マニュアルなくして防災なし」なのです。