自画自賛することを「手前味噌(みそ)」という。昔は各家庭で味噌を作るのが一般的で、それぞれ手前(自分)の家の物が一番うまいと自慢し合ったのが語源とされる。
手前味噌な話で誠に恐縮だが、わが家の家庭菜園で取れた野菜が実においしい。今はブロッコリー、カブ、ニンジンなどが収穫期に入り、毎日のように食卓をにぎわせる。
形や色はスーパーなどに並ぶ品とは見劣りするが、味や鮮度は抜群だ。ただ、味に関してはかなり思い入れも影響しているだろう。種や苗から手間暇かけて育ててきた分、おいしく感じるのは間違いない。手前味噌の心境がよく分かる。
本紙の作州ワイド版に「山里の食卓」という企画記事が連載されている。美作地方で山や清流などの恵みを生かしてきた各家庭の暮らしぶりを、食卓という切り口でリポートする。
過疎や高齢化などで伝統食が廃れつつある中、連載は今年初めからスタートした。冬編では味噌はもちろん豆腐、ヤマドリ、野ウサギ、ユズ料理などが紹介された。
最近の春編では、花の天ぷらに食欲がそそられた。木の芽、ヨモギ、ワサビ料理など盛りだくさんだ。登場する人は、自ら育てたり集めた食材を消費する充実感を口にする。労力はかかるが、やめられない。手前味噌的な生活は豊かさを感じさせる。