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最近のマスコミ報道(07/09/30) 22万の瞳にこたえよ/視点 人の波 怒り秘め/真実は譲らない
日時:2007930
07/09/30 沖縄タイムス
22万の瞳にこたえよ/視点
 強い日差しの中、時折心地よい風が吹いた。会場に入りきれない人々は、公園や隣の建物、小道、雑木林の中に座り、遠くで聞こえるマイクの声にじっと聞き入った。ステージが遠くても、見えなくても、そこに集まった二十二万の瞳は、検定撤回を求めるスピーチが続く舞台を静かに見詰め続けていた。 
 けれども、あなたはそこにはいなかった。 
 内間敏子さん=当時(19)。りんとしたまなざし、ピンクのブラウスがよく似合ったあなたは、座間味国民学校の教師。音楽が好きで、あなたがオルガンで奏でた重厚なハーモニーに感動し、戦後音楽の道へ進んだ教え子もいた。そのことをあなたは知らない。一九四五年三月二十六日、座間味村の「集団自決(強制集団死)」で亡くなった。 
 自ら手にかけなければならない子どもたちをぎゅっと抱きしめ、「こんなに大きくなったのに。生まれてこなければよかったね。ごめんね」と号泣した宮里盛秀さん=当時(33)。戦時下、座間味村助役兼兵事主任だったあなたは、「集団自決」の軍命を伝えることで、軍と住民の板挟みになり苦しんだ。「父が生きていれば、自分が見識がもっと広く、大局的な見方ができたらと悔やんでいたと思う」。一人残された娘の山城美枝子さん(66)は、あなたに代わって会場に立った。 
 なぜ、あなたたちは死に追い詰められたのか。残された人々が、私たちに語ってくれたことで、真実が伝えられた。 
 魂の底から震えるように、軍の命令で家族が手をかけ合った「集団自決」を話した。戦後、片時も忘れることができない体験。請われて語ることで自らも傷ついた。それでも、「集団自決」が、沖縄戦のようなことが再び起こらないように、奮い立ってくれた。 
 しかし、軍強制を削除した教科書検定は、「集団自決」の真実と、残された人々の心痛をも全て消し去った。 
 検定に連なる背景には、日本軍の加害を「自虐的」とし、名誉回復を目指す歴史修正主義の動きがある。「集団自決」は標的にされたのだ。 
 軍の名誉を守るために「集団自決」の真実を否定し、苦しさを乗り越え語る人々の心を踏みにじる。沖縄と、そこに生きる人々を踏みつけなければ、回復できない名誉とは、なんと狭量で、薄っぺらであることか。 
 時代が違えば、「集団自決」に追い込まれたのは、今、沖縄に生きる私たちだった。 
 沖縄戦を胸に刻んできた体験者、沖縄戦を考えることが心に芽吹いた若者たち。「集団自決」で死んで行ったあなたを、残された人々を、決して一人では立たせないとの思いで結集した。 
 十一万六千人もの人々が共に立ち、誓った。私たちの生きてきた歴史を奪うことは許さない。「集団自決」の事実を、沖縄戦の歴史を歪めることは許さない。舞台を静かに見据えた瞳はそう語っていた。 
 政府は、この二十二万の瞳にこたえよ。(編集委員・謝花直美)

07/09/30 沖縄タイムス
人の波 怒り秘め/真実は譲らない
 私たちの歴史は変えさせない。二十九日、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」が開かれた宜野湾海浜公園には、主催者の予想をはるかに上回る十一万人が集まった。県民の十人に一人近くが参加し、復帰後最大の規模に膨れ上がった。「たとえ醜くても、真実を伝えたい」。沖縄戦で体験した地獄を語る勇気と、受け継ぐ覚悟。静かな会場に、世代を超えた県民の決意が満ちた。検定の標的にされた「集団自決(強制集団死)」の体験者は、失った家族に向けて涙ながらに成功を報告した。宮古、八重山の会場にも合わせて六千人が結集した。すべての視線が、文部科学省に向けられた。 
 午後三時に大会が始まってからも、会場を目指す人の波は続いた。車いすのお年寄りと、乳児を乗せたベビーカーが、並んで進む。うるま市の山城真理子さん(54)は「大人から子どもまで、本当に県民こぞっての集まり」と、感激の面持ちを浮かべた。 
 会場の広大な芝生は人で埋め尽くされ、周辺の敷地にも参加者があふれ返った。あらゆる木陰や車の陰に人、また人。 
 「一九九五年の大会ではこの辺りまではいなかった。きょうは二倍いるんじゃないか」と驚く沖縄市の照屋哲さん(68)。ステージは遠く見えないものの、私語はほとんどない。訴えにじっと耳を傾け拍手を送った。 
 家族連れや若い世代の姿も目立った。浦添市の下地正也さん(42)は、十二歳と八歳の息子の手を引いて参加。「まだ大会の意義は分からないと思うが、参加した記憶が残れば。これをきっかけに将来、自分で学んでほしい」と願いを込めた。 
 球陽高校三年の真壁科子さん(17)は、チビチリガマがある読谷村から来た。一緒に参加した両親などから、「集団自決」への軍関与を聞かされて育った。「夢は教員。でも教科書が書き換えられてしまったら、悲劇をどう生徒に伝えればいいの」と、心配顔になった。 
 体調が悪く、不参加を決めていた豊見城市の金城範子さん(64)は、朝起きてすぐに意を決し、足を運んだ。「私の後ろには、参加したくてもできない戦没者やお年寄りがたくさんいる。責任に押された」。最前列に一人で座り、「日本兵を恨みはしない。ただ、自分の名誉のために歴史全体を曲げることだけはしないでほしい」と訴えた。 
 「きょうはうれしい一日だよ」。「集団自決」を体験した座間味村出身の宮城恒彦さん(73)は、帰路に就く人々を見詰めながら語った。「普段おとなしい県民のマグマが噴火した。何度踏みにじられても、沖縄の命運が懸かった問題では十万以上の人が動いた。戦争を体験していない世代が頼もしく見える」と、目を細めた。

07/09/30 沖縄タイムス
沖縄戦事実 否定に怒り/解説
 十一万六千人。人口百三十七万人の沖縄県でこれだけの県民が集まった。東京都で考えれば、百八万人の集会に相当する。その意思表示を文部科学省はどう考えるのか。今後の対応を注視する。 
 そもそも、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」の開催は、沖縄からの民意や反論に文科省が真剣に対応してこなかったことが背景にある。 
 「『集団自決』で日本軍の強制があったことを否定されれば、ガマからの追い出し、食料の強奪、スパイ容疑での虐殺など、そのほかの沖縄戦の住民被害を否定されたのと同じになる」。平良長政・大会実行委員会幹事が大会後に述べたように、県民は今回の教科書検定で、体験、記憶、学習を通じて共有してきた「沖縄戦の事実」が否定されたと感じたのだろう。 
 県議会と全四十一市町村議会で検定意見撤回を求める意見書が採択されたのは、その民意の表れだ。 
 「集団自決」に対する日本軍の強制があったことを証明するこれまでの研究に、体験者による新たな証言がいくつも加えられ、検定結果への反証として示されてきた。 
 県議会、市町村議会、副知事、教育長、市民団体。沖縄は、こうした民意と反証を基に、何度も文科相に説明と対応を求めてきた。そのたびに文科省は、「審議会による学術的な審議に基づく決定で覆せない」と、事実と異なる「官僚答弁」に終始してきた。 
 対応に当たるのは、検定の内実を詳しく知る課長でもなければ、決裁権を持ち、責任が問われる立場の局長や文科相でもない、中間管理職の審議官だった。 
 六月、伊吹文明文科相(当時)は「検定結果について沖縄の皆さんの気持ちに沿わないようなことがあるんだろうと思う」と発言した。ここにボタンの掛け違いがある。 
 県民はあいまいな感情で怒っているのではない。「事実を否定された」から怒り、その論拠も示している。 
 渡海紀三朗・現文科相は県民大会について、「どういう大会になるのか、どういう意見が出るのかを見極めて、対応したい」と発言した。期待したい。行政が過ちを認めないとき、それをただすのは政治の役割だ。 
 文科省は県民大会であらためて示された事実と、事実歪曲への怒りを素直に受け止めるべきだ。(社会部・吉田啓)

07/09/30 琉球新報
11万人結集 抗議/検定撤回 9・29県民大会
 私たちは真実を学びたい。次世代の子どもたちに真実を伝えたい―。高校歴史教科書の検定で、文部科学省が沖縄戦「集団自決(強制集団死)」から日本軍強制の記述を削除したことに抗議する「教科書検定意見撤回を求める県民大会」(主催・同実行委員会)が二十九日午後、宜野湾市の宜野湾海浜公園で開かれた。大会参加者は当初予想を上回る十一万人(主催者発表)。宮古、八重山を含めると十一万六千人に達し、復帰後最大の“島ぐるみ”大会になった。大会では日本軍の命令、強制、誘導などの記述を削除した文科省に対し、検定意見撤回と記述回復を求める決議を採択した。 
 戦争を体験した高齢者から子どもまで幅広い年代が参加、会場は静かな怒りに包まれた。県外でも東京、神奈川、愛媛などで集会が開かれ、検定意見撤回と記述回復を求める県民の切実な願いは全国に広がった。 
 大会実行委員長の仲里利信県議会議長は「軍命による『集団自決』だったのか、あるいは文科省が言う『自ら進んで死を選択した』とする殉国美談を認めるかが問われている。全県民が立ち上がり、教科書から軍隊による強制集団死の削除に断固として『ノー』と叫ぼう」と訴えた。 
 仲井真弘多県知事は「日本軍の関与は、当時の教育を含む時代状況の総合的な背景。手榴弾が配られるなどの証言から覆い隠すことのできない事実」とし、検定意見撤回と記述復活を強く求めた。 
 「集団自決」体験者、高校生、女性、子ども会、青年代表なども登壇。検定撤回に応じず、戦争体験を否定する文科省への怒りや平和への思いを訴えた。 
 渡嘉敷村の体験者、吉川嘉勝さん(68)は「沖縄はまたも国の踏み台、捨て石になっている。県民をはじめ多くの国民が国の将来に危機を感じたからこそ、ここに集まった。為政者はこの思いをきちっと受け止めるべきだ」とぶつけた。 
 体験文を寄せた座間味村の宮平春子さん(82)=宮里芳和さん代読=は、助役兼兵事主任をしていた兄が「玉砕する。軍から命令があった」と話していたことを証言した。 
 読谷高校三年の津嘉山拡大君は「うそを真実と言わないで」、照屋奈津実さんは「あの醜い戦争を美化しないで」とそれぞれ訴えた。 
 会場の十一万人は体験者の思いを共有し、沖縄戦の史実が改ざんされようとする現状に危機感を募らせた。宮古、八重山の郡民大会に参加した五市町村長を含み、大会には全四十一市町村長が参加した。 
 実行委は十月十五、十六日に二百人規模の代表団で上京し、首相官邸や文科省、国会などに検定意見の撤回と記述回復を要請する。 
 仲里実行委員長は「県民の約十人に一人が参加したことになる。県民の総意を国も看過できないだろう」と、記述回復を期待した。 
検定見直し国会決議も/超党派視野民主が検討 
 民主党の菅直人代表代行は二十九日、政府や文部科学省に「集団自決(強制集団死)」で軍強制を削除した検定のやり直しを求め、応じない場合は超党派で国会決議案提出を検討する意向を示した。また、国会の委員会審議の参考人として「集団自決」体験者を招き、証言を直接聴取する考えも明らかにした。 
 教科書検定撤回を求める県民大会に出席した後、記者団の取材に応じた菅代表代行は「臨時国会の代表質問や予算委員会審議で取り上げ、文科省の調査官のコントロールでねじ曲げられた検定のやり直しを求める」と強調。「検定の見直しや規則を変えることに応じなければ、国会の意思を問う」とした。野党共闘を軸に、与党にも働き掛け、超党派で提出する考えを示した。 
 大会に出席した共産党の市田忠義書記局長は「県民大会の決議の趣旨であれば賛同する」、社民党の照屋寛徳副党首も「検定撤回を求め、国会の意思を示すべきだ」と賛同。国民新党の亀井久興幹事長も「決議に賛成したい」とし、野党各党とも国会決議案提出に賛成する意向だ。 
 一方、与党側は、参加した公明党の遠山清彦宣伝局長が「撤回を求めるのは同じだが、国会決議で個別の検定を見直すことは今後の政治介入を許す危険性もあり、慎重に対応したい」との考え。自民党の県選出・出身でつくる「五ノ日の会」の仲村正治衆院議員は「今回の大会決議で要請することが先だ。今後の対応は党の協議次第だ」と述べるにとどまった。

07/09/30 琉球新報
書き換え「許さず」/超党派で撤回要求
 沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」で軍強制を削除した高校歴史教科書検定問題に対し、二十九日、宜野湾海浜公園で開かれた県民大会には、各政党の本部幹部らが多数参加した。十一万人が結集した大会の意義をそれぞれが高く評価、沖縄戦の史実をねじ曲げる検定の撤回を求めた。 
 民主党の菅直人代表代行は「『集団自決』で軍関与を否定した動きを許さないという県民の思いを強く感じた」との感想を述べた。大会の意義については「戦争を風化させ、ねじ曲げようとする一部の動きに、当事者が苦しい体験を勇気を出して発言した。多くの人々が集まったことは歴史的な意義があり、歴史の歪曲を止めるきっかけになる」と話した。 
 遠山清彦公明党宣伝局長は「県民が怒るのは、文科省が学問的、客観的に運用した検定制度と、戦争体験者の体験がずれているからだ」と指摘した。文科省には、同党県本部が四月に求めた県民参加による「沖縄戦共同研究機関」の創設を強く要望。沖縄戦の公正、客観的な検証を求めた。県民からの直接ヒアリングなど、検定制度の見直しも必要との認識を示した。 
 市田忠義共産党書記局長は「これまで日本政府も軍関与を認めていた。それを覆すのは許されない歴史の書き換えだ」として、国政の場で検定意見撤回に向けて働き掛けていく考えを示した。大会について「県民の平和へのエネルギーが一層伝わった。国民全体の問題として、党派を超えて、歴史の偽造は許されないという思いをますます強くした」と述べた。 
 社民党の保坂展人平和市民委員長は「教科書問題は住民虐殺や慰安婦問題などと同様に、戦争を客観的に見られるのかという歴史観全体の問題だ」と指摘。「県民の大きな声を、福田政権がどう受け止めるのか、週明けの所信表明に注目したい」とした上で、「他の野党と連携し、渡海紀三朗文科相への質問で、全面撤回の契機となる見解、発言を引き出す努力をする」と述べた。 
県民の不満が「爆発寸前に」
知事、政府に配慮求める 
 仲井真弘多知事は二十九日の県民大会終了後、記者団の取材に応じ「私が初めて見たほど大勢の県民が集まった。ある種のマグマというかエネルギーというか、何かが爆発寸前にあるのではないかと予感させた大会だった」と述べ、沖縄戦の実相と異なる文部科学省の検定意見に対し、県民の不満が限界点にあるとの認識を示した。その上で検定意見の撤回に全力で取り組む意向をあらためて表明するとともに、「地方の意見に耳を傾ける、理解に努めるという、中央におられる人々の感性をもう一回磨いて、精妙にしていただく必要があるのではないかと思う」と指摘。政府に対し、県民感情に配慮するよう求めた。

2007年9月30日(日)「しんぶん赤旗」
“輝け9条”の願い世界に広げよう―
「宗教者九条の和」がアピール
名古屋
 宗教・宗派の違いを超えて憲法九条の擁護を呼びかけている「宗教者九条の和」は二十九日、名古屋市で「第三回シンポジウムと平和巡礼in名古屋」を開き、「『輝かせたい憲法第九条』の願いを、日本に、世界に、広げましょう」とのアピールを発表しました。
 宗教者九条の和呼びかけ人世話役の村中祐生・天台宗慈照院住職は「新しく福田康夫首相が誕生し、日本の方向性がどのようになるかわかりませんが、憲法九条を守ろうという歩みをますます強めなければなりません」と開会のあいさつ。
 南山大学准教授のマイケル・シーゲル氏が基調講演し、日本の憲法改定論議が「アジアの国に大きな脅威を与えている」と指摘。「冷戦では、抑止論のもとでの軍拡が相手国に恐怖感を与え、エスカレートした。『改憲派』の“北朝鮮や中国が攻撃してきたらどうするのか”という主張はまさに抑止論の考え方。周りの国に脅威を与えないことが大事」と話し、「二十一世紀は、日本は憲法を維持して、九条の平和条項を世界に広めないといけない」と強く語りました。
 平川宗信名古屋大学名誉教授と橋本克巳・天理教愛針分教会前会長が意見発表し、「憲法九条を守ろう」と訴えました。
 シンポジウムの後、参加者は平和巡礼に出発。小雨の中、「輝かせたい憲法第九条」と書いた横断幕を掲げ、市内を歩きました。

2007年9月30日(日)「しんぶん赤旗」
勇気出して憲法語ろう
「九条の会」がセミナー
盛岡
 第四回「九条の会」憲法セミナー「戦争をする国にさせない」が二十九日、盛岡市内で開かれ、会場いっぱいの三百十四人が東北各地から集まり、熱心に聞き入りました。
 翻訳家の池田香代子さん、「九条の会」呼びかけ人で憲法研究者の奥平康弘さんが講演し、共感の拍手や笑い声が何度も起きました。
 池田さんは、自衛隊員から「イラクに行くのが国益になるのか悩んでいる」とつづられた手紙を受け取ったと紹介。自民党、公明党の支持者の講演会に招かれた際も自分は同じ話をしているとのべ、参加者らに「勇気を出して、周りに憲法のことを語ってほしい」と呼びかけました。
 奥平さんは、保守層の中にも、自衛隊は合憲だが、国が憲法九条を変えて集団的自衛権を行使するのには反対だという人たちが、かなりいると強調。改憲勢力が「ボールをこちらに強くけってきている」ときには、改憲に疑問を抱く国民を数多く結集し、策動をつぶすことが重要だと訴えました。
 耳を傾けた六十五歳の男性=住職=は「九条は政治的なものではないと思う。私も宗教者としての歩みを始めたい」と力を込め、二十六歳の女性=団体職員=は「自分で壁をつくっていた。話し方次第で新しい人に声がかけられると感じた」と決意していました。

2007年9月30日(日)「しんぶん赤旗」
戦争中は「非国民」扱い
障害者・患者9条の会が集い
東京
 障害者・患者9条の会は二十九日、東京都豊島区で結成二周年企画「映画と交流の集い」を開き平和憲法を守りぬく決意をあらたにしました。
 ドキュメンタリー映画『シリーズ憲法と共に歩む』(第一編 戦争をしない国 日本)が上映され、プロデューサーの山本洋さんが「映画人として映像で平和を語りついでいきたい」とあいさつしました。
 ハンセン病患者の女性(73)=東京都東村山市=は、小学校三年生ごろから手足の末しょう神経がおかされ始めました。「竹やり訓練でわら人形に突っ込む前にやりが落ちてしまい、憲兵と教師に『非国民』とどなられ、竹のむちでたたかれました」と話し、「戦争を知らない子どもたちに戦争の怖さを伝えていきたい」と訴え拍手につつまれました。
 呼びかけ人の吉本哲夫さんは、障害者自立支援法見直しのたたかいに触れ、「テレビのキャスターも、福祉の財源について『軍事費に目を向けないといけない』と発言している。税金のつかいかたが、国民に分かりやすい状況にある」と語りました。車いすの太田修平さん(50)は映画の感想を「戦争の悲惨さと命の尊さが非常に印象に残り感動しました。何があっても戦争をしてはいけない」と話しました。


最近のマスコミ報道(07/09/28) テロ特措法 “報復戦争支援法”こそ正体
日時:2007928
(2007年9月28日(金)「しんぶん赤旗」)
テロ特措法
“報復戦争支援法”こそ正体
志位委員長が記者会見
 日本共産党の志位和夫委員長は二十七日、国会内で記者会見し、臨時国会の焦点となっているインド洋への海上自衛隊派兵継続問題 援にほかならないこと、戦争ではテロはなくせないという二点が重要になっていると表明しました。
 志位氏は、石破茂防衛相が同日の民放テレビで、テロ特措法にもとづくインド洋での自衛隊の活動を「海上阻止活動への支援」とのべ、あたかも警察的活動への協力のようにごまかしていることを批判。海自の補給艦「ましゅう」が補給した米軍の強襲揚陸艦「イオウジマ」から飛び立った攻撃機ハリアーが、アフガニスタンへの空爆をおこなった事実などを指摘したうえで、「その空爆のもとで亡くなっているのは、女性であり、子どもであり、お年寄りです。(テロ特措法は)“報復戦争支援法”こそがその正体だということを広く明らかにしていくことが大事です」とのべました。
 さらに、「報復戦争ではテロはなくならないということがもう一つのポイントです」と強調。無辜(むこ)の民間人を殺害することによって、逆にテロの温床・土壌が広がり、アルカイダはつかまらず、タリバンが復活している事実を示し、「テロの根源にある貧困、干ばつ、飢餓、教育の欠如などの解決、中東問題など地域紛争を平和的・外交的に解決する努力こそが必要です」と指摘しました。
 志位氏は、政府が、自衛隊の活動は戦争と関係ないかのようにごまかし、「テロとのたたかい」という「大義名分」をふりかざすなかでの日本共産党のとりくみについて、「自衛隊がまさに戦争支援をおこなっていること、その報復戦争ではテロはなくならないという二点を広く国民のみなさんに知らせる論戦や活動に大いに取り組みたい」と強調しました。

(2007年9月28日(金)「しんぶん赤旗」)
主張
海自の米艦給油
素直に脱法行為の事実認めよ
 福田康夫首相は、アメリカのアフガニスタン「報復戦争」にたいする自衛隊の給油支援を継続するための新しい法案を、この臨時国会に提出すると言明しています。
 テロ特措法にもとづくインド洋での米軍艦船などへの給油支援は、アメリカのアフガニスタン「報復戦争」の支援に限定されています。それ自体憲法違反の戦争支援ですが、それにとどまらず、日本の油がイラク軍事作戦で使われているのではないかという疑いも重大です。それを裏付ける事実が政府説明とアメリカの資料であきらかになりました。
イラク作戦への流用
 防衛省がこのほど、二〇〇三年二月二十五日にオマーン湾で自衛隊が米補給艦ペコスを経由して米空母キティホークに給油した量が二十万ガロンでなく八十万ガロンだったと訂正したのはその一例です。この訂正は、イラク作戦への流用を否定した政府の当時の説明がごまかしであったことを政府みずから示すものです。
 当時、キティホークがアフガニスタン作戦とイラク作戦の二つの任務を併せ持っていたことは米海軍ニュースでも明記されていたことです。米海軍軍事海上輸送軍団の機関誌『シーリフト』も、「『イラクの自由作戦』の期間中、ペルシャ湾で燃料を受け取る」と書いています。
 キティホークがイラク作戦を実施していたことは明白であり、日本の給油が即イラク作戦支援となるのはあきらかでした。
 このイラク作戦への流用を隠すためにもちだしたのが、給油の量は八十万ガロンではなく二十万ガロンという説明です。キティホーク艦長が日本から受け取ったのは八十万ガロンだといっているのに、日本政府は二十万ガロンだといい続けたのは、少量なので空母がペルシャ湾に移動しイラク作戦をおこなうことにはならないという筋書きにするためです。
 この詭弁(きべん)を主導したのが当時、テロ特措法案の主務大臣であった福田康夫官房長官(現首相)です。福田氏は、二十万ガロンはキティホークが「ほとんど瞬間的に消費してしまう」ので「イラク関係に使われることはあり得ない」とまでいいました。
 給油量が八十万ガロンだったと防衛省が認めたことは、同空母のイラク作戦への給油の流用を認めたのと同じです。
 しかも、市民団体ピースデポが入手した米海軍の航海日誌には、海上自衛隊から八十万ガロンを受け取ったキティホークが、給油直後にペルシャ湾に入り、イラク作戦を実施していたと明記しています。
 自衛隊の脱法行為はあきらかであり、法案の主務大臣として国会と国民をだましてきた福田首相の責任は重大です。事実隠しをやめて、事実を政府は説明すべきです。
インド洋から撤退せよ
 インド洋での自衛隊の給油活動は、国連憲章の精神をふみにじった米国の「報復戦争」にたいする憲法違反の戦争支援活動です。日本の給油がテロ特措法さえふみにじってイラク作戦にまで使われていたとなればなおさらです。
 昨年三月自衛隊の補給艦「ときわ」が給油した米駆逐艦「ディケイター」は、空母「エンタープライズ」とともにイラク作戦を実施中だったと米海軍ニュースが伝えたように、流用はいまも続いています。徹底解明することが国会に求められています。
 同時に給油継続のための新たな法案を阻止し、自衛隊をインド洋から撤退させることが必要です。

(2007年9月27日(木)「しんぶん赤旗」)
テロ特措法
軍事介入は信頼崩す
党対策チームにNGO代表
 日本共産党国会議員団は二十六日、テロ特措法問題の対策チームの会合を国会内で開き、医療NGO(非政府組織)・ぺシャワール会の福元満治事務局長代行を招き、アフガニスタンの現状などを聞きました。
 ぺシャワール会は、パキスタンとアフガニスタンで活動しているNGO。ハンセン病などの患者の診察とともに、二〇〇〇年以降、大干ばつに見舞われる中、地元住民とともに井戸掘りや用水路の建設を行っています。
 福元氏は、これまで千五百本の井戸を掘り、砂漠地帯が麦畑になったことを写真も交えて紹介しました。
 また、仕事がないと難民になるか軍閥に雇われるしかなくなり、治安も悪くなると語り、現地住民を雇用した用水路建設で、家族をあわせて約五千人から一万人が生活できるようになった経験を述べ、NGOによる民生支援が治安にも役立つことを指摘しました。
 インド洋での海上自衛隊派兵が現地で知られていないことを紹介しながら、「現地では、日本がこれまで軍事介入してこなかったことに信頼感がある。これを崩してしまうと、われわれが(攻撃される)ターゲットになってしまう。(テロ特措法は)速やかに消滅させてほしい」と語りました。
 福元氏から現地の実情について聞いた後、参加した国会議員は、アフガニスタン支援のあり方などについて質疑を行いました。

(2007/09/28  産経新聞)
福田内閣支持率は55・3% 産経・FNN合同世論調査 
 福田内閣発足を受け、産経新聞社がFNN(フジニュースネットワーク)と合同で26、27の両日実施した「政治に関する世論調査」で、内閣支持率は55・3%だった。発足直後としては安倍内閣より8・6ポイント低いものの、不支持率は28・7%にとどまり、「調整型」の福田康夫首相による政権運営への期待感が示されたといえそうだ。
 ただ、福田政権がどれくらい続くかとの問いには、52・9%が「次期衆院選前後まで」と回答。次期衆院選の時期については「来年前半」38・5%、「来年後半」22・3%となった。
 新内閣について「前政権より期待できる」としたのは43・6%で、「期待できない」(37・6%)を上回ったが、派閥領袖がそろった自民党役員については「期待できない」が41・1%、「期待できる」は33・9%だった。最も期待する政策課題は「年金問題」が31・1%と依然高く、「経済格差の是正」21・8%、「政治とカネの問題」13・1%が続いた。
 また、海上自衛隊によるインド洋での補給活動延長については「賛成」が51・0%と半数を超え、反対(39・7%)との差は、今月15、16両日に実施した前回調査の9・6ポイントから11・3ポイントに広がった。
 政党支持率は自民党33・9%(前回30・5%)、民主党28・1%(25・9%)だった。


最近のマスコミ報道(07/09/27) 福田内閣の支持率5割台後半 
日時:2007927
(07/09/27 毎日新聞)
<福田内閣>支持57%、安定感を評価 本社世論調査
 毎日新聞は25、26の両日、福田康夫内閣の発足に合わせて緊急の全国世論調査(電話)を実施した。内閣支持率は57%で、発足時としては1949年に同様の調査を開始して以降、歴代5位になった。支持理由のトップは「首相に安定感を感じるから」の58%だった。首相が行った閣僚と自民党役員の人事に対しては「評価する」が49%で、「評価しない」の39%を10ポイント上回った。
 福田内閣を「支持しない」は25%、「関心がない」は16%だった。男女別の支持率は、女性が59%、男性が52%だった。57%の支持率は父の福田赳夫元首相の就任後初の調査(77年6月)の27%を大幅に上回った。
 支持理由は安定感のほか、「自民党の首相だから」が13%、「首相の指導力に期待できるから」「首相の政策に期待できるから」が各12%。不支持理由は(1)「首相の政策に期待できないから」35%(2)「首相の指導力に期待できないから」21%(3)「自民党の首相だから」「首相に清新なイメージがないから」各20%――の順だった。
 首相が自民党総裁選で8派の領袖から支持を得たことへの評価は、「挙党態勢をつくるため、派閥に頼るのはやむを得ない」38%、「派閥の協力は必要で、問題はない」20%で、約6割が肯定的にとらえた。対立候補の麻生太郎前幹事長が訴えた「派閥政治の復活であり、良くない」との回答は36%だった。
 憲法改正などを掲げた安倍政権の路線を引き継ぐべきかどうかは「引き継ぐべきだと思わない」が58%で、過半数が路線転換を求めた。政党支持率は自民32%、民主26%など。今年6月の調査以来3カ月ぶり(調査では5回ぶり)に自民党が民主党を上回った。【西田進一郎】 

(07/09/27 日経新聞)
福田内閣支持率59%・日経世論調査 
 福田政権の発足を受けて日本経済新聞社が25―26日に実施した緊急世論調査で、内閣支持率は59%と安倍前内閣での8月末の前回調査と比べて18ポイント上昇した。発足時としては小泉(80%)、安倍(71%)、細川(70%)の各内閣に次ぐ4番目の高さ。不支持率は13ポイント低下の27%だった。臨時国会の審議再開を来週に控え、政権運営に一定の追い風となりそうだ。
 内閣支持率は男性は54%、女性は62%。年齢別では全年代で5割を超え、特に70歳以上は71%と高い。自民と公明支持層では7割を超えたほか、民主支持層でも支持42%、不支持47%と比較的支持が厚い。 

(2007年09月27日 朝日新聞)
福田内閣支持53% 「古い自民」56% 本社世論調査
 福田康夫首相の組閣を受けて、朝日新聞社が25日夜から26日夜にかけておこなった緊急の全国世論調査(電話)によると、内閣支持率は53%、不支持率は27%だった。新内閣の最初の支持率としては、小泉内閣の78%、安倍内閣の63%には及ばないが、森内閣や小渕内閣を上回り、比較的高い水準だ。ただ、組閣までの経緯をみて「古い自民党に戻ってきている」と思う人が56%にのぼり、「そうは思わない」の29%を大きく上回った。自民党総裁選で福田氏優位の流れが派閥主導で決まったことや、派閥のトップを軒並み党幹部や閣僚として処遇したことが、こうした見方につながっているようだ。 
 安倍内閣の最終の支持率は、内閣改造直後(8月27、28日調査)の33%だった。今回の福田首相への交代で、支持率をかなり上乗せした。すべての年代で支持が不支持を上回り、女性の支持は57%と男性の49%より高かった。 
 福田首相に対する評価では、「バランス感覚がある」と答えた人が58%にのぼった。「実行力がある」は46%で、「そうは思わない」の32%より多かった。これに対し「国民の感覚に近い」は38%、「そうは思わない」は41%で見方が分かれた。小泉内閣発足時は71%が小泉首相を「国民の感覚に近い」とみていたのとは対照的だ。 
 福田内閣の政策課題をめぐっては、「年金問題」への取り組みに期待する人が67%。「外交問題」は55%が期待すると答えた。「経済格差問題」については「期待する」が49%に対し、「期待しない」が41%にのぼった。参院選での自民党の惨敗と安倍政権の行き詰まりの大きな原因となった年金問題に対する期待が目立つ。 
 福田首相のもとで自民党が「よくなる」と答えた人は22%、「悪くなる」が6%で、「変わらない」が65%を占めた。自民支持層でも「変わらない」が半数を超え、党への信頼回復については厳しい見方が示されたといえそうだ。 
 政党支持率は自民33%、民主25%、公明4%、共産3%、社民1%などだった。 
 《調査方法》 25日夜の閣僚名簿発表後から26日夜にかけて、全国の有権者を対象にコンピューターで無作為に電話番号を作る「朝日RDD」方式で調査した。対象者の選び方は無作為3段抽出法。有効回答は908人、回答率は55%。 

(2007年9月26日 東京新聞)
福田内閣支持率は57% 最優先課題は年金
 福田内閣発足を受けて共同通信社が25、26両日実施した全国緊急電話世論調査の結果、内閣支持率は57・8%だった。発足直後としては1991年の宮沢内閣以降、小泉、細川、安倍、橋本各内閣に次ぐ5番目の高さだった。最優先すべき課題としては「年金など社会保障」が43・3%を占め、依然高い関心を集めている。
 派閥領袖を多く起用した福田首相の自民党や閣僚の人事に対しては「期待できる」が39・8%、「期待できない」が39・4%と拮抗。新内閣の顔触れに対しては「重厚で安定感がある」との評価も17・9%あったが、「派閥順送りで改革のイメージがない」との回答が28・6%と最も多く、次いで「代わり映えしない」の27・7%だった。
 インド洋での海上自衛隊の給油活動に関しては「延長すべきだ」が49・6%と「延長すべきではない」の39・5%を上回った。(共同)

(2007年9月27日  読売新聞)
福田内閣支持率57・5%、発足直後で4位…読売世論調査
 福田内閣の発足を受け、読売新聞社は25日夜から26日にかけて、緊急全国世論調査(電話方式)を実施した。
 新内閣の支持率は57・5%で、不支持率は27・3%だった。支持理由では「安定感」を挙げる人が最も多かった。
 新内閣が当面する最大の課題となるインド洋での海上自衛隊の給油活動継続については、「賛成」が47%で、「反対」の40%を上回った。調査で浮かび上がった民意は、民主党が参院第1党となった「ねじれ国会」での与野党攻防に影響を与えそうだ。
 福田内閣の支持率は、発足直後の調査(1978年発足の大平内閣以降)では、小泉内閣の87・1%(電話方式)、細川内閣の71・9%(面接方式)、安倍内閣の70・3%(電話方式)に次いで4番目の高さとなった。
 支持政党別に見ると、自民支持層は83・0%、公明支持層は約7割に上った。支持政党がない無党派層も支持(42・2%)が不支持(32・0%)を上回った。
 支持する理由(一つ選択)では、「首相に安定感がある」(50%)が「政策に期待できる」(13%)、「自民党と公明党の連立政権だから」(12%)などを引き離した。「お友達内閣」と言われ、若さや未熟さを指摘された安倍前内閣の反動もあり、福田首相の安定感が支持率に結び付いたようだ。
 新内閣では、安倍改造内閣の閣僚の大半が再任されたが、この首相の判断を「適切だった」と思う人は67%で、「そうは思わない」は21%だった。自民党4役にいずれも派閥の領袖(りょうしゅう)が起用されたことについては「好ましくない」(56%)が、「好ましい」(30%)を上回った。
 海自の給油活動の継続については、「賛成」(47%)が多数派となった。調査方法や質問が違うため、単純には比較できないが、9月8、9日に実施した全国世論調査(面接方式)では「反対」(39%)が「賛成」(29%)を上回っており、活動継続の必要性が国民に浸透しつつあることがうかがえた。
 この問題では国連安全保障理事会が対テロ作戦への「謝意」決議を採択したが、民主党は海自の給油活動を認める根拠にはならないとして、活動継続に反対している。こうした民主党の対応については「納得できない」(47%)が「納得できる」(38%)を上回った。
 衆院の解散・総選挙の時期については「できるだけ早く行う」は35%で、「急ぐ必要はない」は58%。9月15、16日に行った自民党総裁選告示直後の調査(電話方式)に比べて「できるだけ早く」は16ポイント減少した。


最近のマスコミ報道(07/09/24) 主要紙の社説 自民党新総裁に福田康夫氏 
日時:2007924
(2007年9月24日(月)「しんぶん赤旗」)
自民党総裁選挙
「後継」福田氏が矛盾広げる
 先の参院選挙で大敗し、異常な形で政権を投げ出した安倍晋三氏に代わる自民党の新しい総裁に、元官房長官の福田康夫氏が選ばれました。自民党の九つの派閥のうち八つから支持された福田氏は、国会議員の投票では六割以上、都道府県連代表の投票でも過半数を獲得し、対立候補の麻生太郎幹事長を下しました。
 福田氏は総裁選中の発言でも、小泉・安倍政権の「構造改革」路線を支持し、アメリカに約束したインド洋での海上自衛隊の給油活動の継続も目指す対米追随のタカ派です。福田氏が後継総裁に選ばれたことは、国民との矛盾を広げることにしかなりません。
反省も路線の転換もない
 今回辞任することになった安倍氏が、麻生氏や谷垣禎一氏を破って自民党の新総裁に選ばれたのは、ちょうど一年前の九月二十日でした。その翌日付の「しんぶん赤旗」は、「安倍氏『翼賛』が矛盾広げる」との主張を載せましたが、この一年間の安倍政権の足取りは、文字通りそれをうきぼりにしました。福田氏の就任にあたっても同じような見出しを掲げなければならないのは、自民党政治の深刻な危機を示すものです。
 安倍氏が小泉純一郎前政権から引き継いだ「構造改革」路線は、大企業・大資産家をうるおしただけで国民に福祉の切り捨てと高負担を押し付け、貧困と格差の拡大が重大な社会問題となっています。安倍氏が推し進めた、侵略戦争肯定の「靖国」派勢力を先頭に立てた改憲タカ派路線は、国内はもちろん中国、韓国やアメリカなど海外からも、強い反発を招きました。
 自民党が先の参院選で大敗し、居座りを図った安倍氏もついに辞任しなければならなくなった根本には、年金や「政治とカネ」の問題での政治不信にとどまらず、弱肉強食の「構造改革」路線や改憲タカ派路線と国民との矛盾が広がっていることがあります。
 にもかかわらず総裁選の論戦を通じ、福田氏からも麻生氏からも、これまでの政治への反省も、路線を転換する発言もついに聞けませんでした。確かに福田氏は、安倍首相は参院選で大敗したとき辞任すべきだったなどとはいいましたが、路線については多少の手直しだけで変えるとはいわなかったのです。これでは福田氏に代わっても国民との矛盾が解消できるはずがありません。
 ことは誰が総裁かという次元にとどまりません。安倍氏を総裁に選び、参院選で大敗したあとも退陣論を抑え、安倍氏の続投を認めたのは自民党です。安倍氏の政権投げ出しでおこなわれた総裁選も、これまでの路線を継承する二人の候補の争いでした。自民党自体に、もはや誰が総裁になろうともこれまでの政治を反省し、路線を切り替える力がなくなっているのです。文字通り自民党そのものの政治的衰退のきわみです。その自民党と連立を組み助けている公明党の責任が、改めて問われることになっているのも当然です。
解散・総選挙しかない
 自民党の総裁選挙が示したのは、この自民党に任せておいては、国民が求める政治の転換がありえないことです。こうなれば、主権者・国民の手で審判を下し、新しい政治を切り開いていくしかありません。
 福田氏は近く政権を発足させることでしょう。しかしその政権もやがて行き詰まるのは必至です。衆院の解散・総選挙に追い込み、自公政治に代わる新しい政治を探求していくことがますます求められます。

(07/09/24 朝日新聞)
自民党福田新総裁―「荒々しい政治」からの転換
 自民党の総裁選は福田康夫氏の大勝に終わった。週明けには新首相に就任する予定だ。53歳の安倍氏から71歳の福田氏へ、理念突出型から手堅い調整型へと、日本のリーダーが大きく変わる。 
 参院選の歴史的惨敗、安倍首相の突然の政権投げ出し……。いまの自民党は「政権交代前夜」ともいうべき瀬戸際の危機にある。 
 この重大なピンチのなかで、福田氏を自民党のトップに押し上げたものは何なのか。 
●小泉・安倍時代に幕 
 個性や主張が対照的なリーダーにすげかえて、いわゆる「疑似政権交代」で世論を納得させる。自民党が得意としてきた政権延命への知恵が働いたのは間違いないだろう。 
 安倍氏と福田氏は、同じ小泉内閣で官房長官をつとめたが、政治スタイルも政策的な力点も大きく異なっている。 
 安倍氏は国家主義的な理念を掲げ、強引な国会運営も辞さずに政策の実現に突き進もうとした。「私の内閣」「私の指示で」と連発し、リーダーシップを強調したのも安倍氏だった。 
 一方の福田氏は、首相の靖国参拝に眉をひそめ、中国や韓国との関係修復に腐心する。対北朝鮮でも強硬策一本やりには批判的だ。歴代最長の官房長官時代の調整力には定評がある。リーダーシップを振りかざすわけでもない。 
 安倍氏の挫折のあとだから、次は福田氏で――。党内の大勢がそう流れたのは不思議ではない。 
 同時にこの選択の底流には、小泉―安倍と続いた一つの時代に区切りをつけたいという、政治の大きな潮目があるのではないか。 
 小泉政権が幕をあけた今世紀初めの日本は、経済危機のまっただ中にあった。「失われた10年」の後遺症が深刻化し、金融機関が揺らぎ、大企業の倒産が相次いだ時代だ。 
●協調型に期待と不安 
 ここから脱するにはかなりの荒療治が必要だ。そんな社会の気分に、「自民党をぶっ壊す」と叫んで登場した小泉氏はすっぽりとはまった。 
 公共事業の大幅削減など歴代政権が手をつけられなかった施策に切り込んだ。党内の反発を「抵抗勢力」と呼んで対決を演出し、高い支持率を得た。 
 安倍首相も、基本的にこの路線の継続でいけると踏んだところに大きな誤算があったのではないか。 
 小泉路線は、地方経済の疲弊や福祉の切り下げ、雇用の不安定化などの「痛み」を生んだ。参院選の結果は、そうしたところに真剣な手当てが求められていることを示したといえる。 
 さらに、小泉流の「強いリーダーシップ」も、安倍時代に入ってからは憲法改正や集団的自衛権の解釈変更といったテーマに広がり、いささか暴走の様相を呈していた。 
 派手な劇場型政治、感情的なナショナリズムをあおるような政治、お友だちで固めた身内政治。そんな小泉―安倍時代の「荒々しい政治」への疲労と不安が確実に強まっていたということだろう。 
 朝日新聞の世論調査では、62%の人が次の首相に「協調型」を望み、「決断型」の31%を大きく引き離した。時代が政治の基調の転換を求めたからだろう。福田氏という選択には、そうした社会の変化が読み取れる。 
 今回の総裁選では、東京や大阪などで行われた街頭演説に多くの人々が集まり、予想外の関心の高さとなった。参院選後も安倍首相が居座るという肩すかしが続いたなかで、政治がようやく動いたからかもしれない。 
 そのなかで麻生太郎氏の人気が目を引いた。投票結果は大差となったが、地方の予備投票では福田氏を上回る勢いだった。メリハリの利いた語り口、北朝鮮政策での強硬論など、分かりやすさと保守路線が支持を集めたようだ。 
 小泉―安倍路線の名残でもあったのか。福田氏の掲げる政策のあいまいさや指導力に、物足りなさを感じる党員も少なくないということだろう。 
●小沢民主とどう対決 
 それだけに、「協調型」の福田流で問われるのは、政治をどう前に進めていくかという実行力だ。 
 総裁選後の記者会見で、福田氏は勝因について「あんまり変なことはしないだろうという安心感かな」と語った。だが、荒々しかった小泉―安倍時代からとりあえずひと休み、というわけにはいかない。 
 格差是正の掛け声のもと、ばらまき予算への期待が盛り上がっている。解散・総選挙が近いとなればなおさらだ。その一方で、財政再建や年金・福祉の立て直しなど、早急に答えを出さねばならない難題は山積している。 
 そして、なによりも小沢民主党の攻勢にどう向かい合うか。政権をかけた戦いが待ち受けている。 
 福田新総裁はいずれ遠からず、衆院の解散・総選挙に踏み切ることになる。参院選での惨敗で安倍政権は国民の信を失った。あとを継いだ新政権として審判を受けない限り、自信をもって政局を運営していくことはできないからだ。 
 民主党など野党との話し合いを強調する福田氏だが、政権交代をめざす民主党はあらゆる局面で対決を迫ってくるだろう。その攻勢をかわしつつ、ある時点で総選挙を決断する。「協調型」だけで済まないのは明白だ。 
 そのかじ取りを誤れば、政権を民主党に渡すという不名誉な役回りを、福田氏が演じることになりかねない。 

(2007/09/24  読売新聞)
福田自民党総裁 政治の再生へ着実に踏み出せ
 自民党総裁選は、下馬評通り福田康夫・元官房長官が大勝した。福田赳夫元首相の長男として、初の親子2代の総裁の誕生である。
 だが、直面する課題と職責の重さ、今後の多難な政治運営を考えれば、とても、そんな感慨や喜びに浸っている余裕はあるまい。
 福田新総裁は、党三役人事や公明党との連立合意の上、25日には国会で首相指名を受け、福田内閣を発足させる。
 ◆国会審議を軌道に◆
 安倍首相の突然の辞任による総裁選の結果、10日余の政治空白が生じた。国会日程のずれ込みは、インド洋での海上自衛隊の給油活動継続のための法案処理などに大きな影響を与えている。会期の大幅延長も避けられない情勢だ。
 最小限の空白にとどまったとはいえ、早急に国会審議を軌道に乗せねばならない。福田新総裁は、衆参ねじれの下で、重要政策の円滑な遂行のために、参院第1党の民主党との協議の重要性を強調している。そうした関係を構築するためにも国会論戦を深める必要がある。
 今回の総裁選の課題は、何よりも先の参院選で惨敗した党勢を立て直すとともに、唐突な首相辞任で大きく揺れた政権態勢の再構築にあった。
 福田新総裁が、「党の再生を期す」と決意表明したのは、無論、そうした危機認識に立つものだ。
 今回の総裁選では、党内9派閥のうち8派が「福田支持」を表明し、福田元長官の大勝は当然視されていた。だが、麻生太郎幹事長は、国会議員の3分の1以上、地方票の半数近くの票を獲得した。全体の4割近い得票は、予想を上回る善戦と言っていい。
 派閥選挙という見方もあったが、派閥の締め付けが効くような時代ではないことを改めて示した結果でもある。
 福田新総裁の勝利はやはり、官房長官時代に示した調整能力やバランス感覚、安定感といった重厚な「資質」を重視しての期待感の表れだろう。
 参院選惨敗の原因として、自民党は、「年金記録漏れ」や「政治とカネ」「閣僚の失言」などの問題で、有権者が、安倍首相の指導力、統治能力に疑問を持った、と総括している。政策の優先順位にも「民意とのずれ」を指摘している。
 こうした観点から、党内の大勢は、混迷を深めた安倍政治の転換を求めたのだろう。参院選直後、いち早く安倍首相続投を支持した「麻生総裁」では安倍政治の延長になる、という懸念も一部にあったようだ。
 新政権が取り組むべき課題は、総裁選の論戦で既に明らかになっている。
 ◆まずは信頼回復だ◆
 当面の臨時国会の最大の課題は、国際平和協力活動の柱である海自の給油活動継続問題だ。福田新総裁は、給油活動継続のための新法案を今国会中に提出し、成立を期す意向を表明している。
 福田新政権にとっても、今後の政権運営を占う最大の試金石となる。
 自民党内では、小泉政権以来の構造改革路線が、結果として都市と地方の格差を生み、これが参院選での惨敗の一因となった、との見方が多い。自民党にとって、構造改革の“負”の部分の修正が、次期衆院選を視野に、予算編成とも関連する当面の重要課題となっている。
 社会保障制度の改革と財源としての消費税率引き上げを含む税財政改革、財政再建、対北朝鮮政策などにも、国民生活の安定や日本の国益のために、着実に取り組み、前進させねばならない。
 一連の重要政策を推進する上で肝要なのは、福田新総裁が総裁選中に繰り返したように、政治への信頼の回復だ。
 政治資金規正法を改正し、1円以上のすべての支出に領収書を添付するかどうかなどが論点となっている「政治とカネ」の問題に、誠実に対応する必要がある。
 年金記録漏れ問題の処理も急がねばならない。閣僚などの不祥事が起きないよう、内閣・党の危機管理に万全を期すのも当然のことだ。
 変化の激しい時代にあって、困難で多様な課題を処理するには、調整能力やバランス感覚だけで済むものではない。
 福田新総裁には、調整に留意しつつも、政策の正しい方向性をゆるがせにすることのないよう、しっかりと指導力を発揮してもらいたい。
 そのためにも、重要なのは、挙党態勢を構築し、福田新総裁の求心力を確立することだ。
 ◆挙党態勢の確立を◆
 福田新総裁は、総裁選中、「国会開会中で、閣僚を大きく代えるのは難しい」と語っていた。所信表明演説、代表質問、衆参両院の予算委員会審議と続く国会日程などを考慮してのことだろう。
 閣僚については、おおむねそうだとしても、可能な限り、党、内閣を通じた挙党態勢を固めることに尽力すべきだ。それには、麻生幹事長が総裁選で一定の得票を得たことにも、何らかの配慮をする必要があるかもしれない。
 ただ、派閥が前面に出て、順送りや総裁選の論功行賞がまかり通るようなことがあっては、信頼回復を妨げるだけだ。これも、福田新総裁の国益第一に立脚した指導力が試されるところだ。
 新総裁を先頭に、党を挙げて立て直しに取り組む気概がなければ、「新生自民党」は、おぼつかない。

(2007/09/24 毎日新聞)
福田新総裁 早くまともな政治に戻せ
 福田康夫元官房長官が23日、自民党新総裁に選出された。25日、国会での首相指名選挙を経て、福田新内閣が発足する見通しだ。だが、首相が交代しても参院の与野党逆転という状況は何ら変わらない。しかも、あまりに未熟で無責任だった安倍晋三首相の辞任表明の後を受ける内閣だ。瀬戸際の状況が続く中での多難なスタートである。
 福田氏330票、麻生太郎幹事長197票。麻生氏の善戦が目立つ結果だったが、勝敗は最初から見えていた。福田氏の名前が浮上した瞬間、麻生派を除く自民党内の8派閥が雪崩を打つように福田氏支持に傾いたからである。
 若さを露呈した安倍首相の後だけに、福田氏の「安定感」に期待するというのも理解できないわけではない。しかし、「ともかく勝ち馬に乗りたい」という雪崩現象は、「国民的人気がありそうだ」との理由で早々と安倍氏支持で党内の大勢が固まった昨秋の総裁選とまったく同じではなかったか。
脱「安倍路線」は評価する 麻生氏が党員票の実数で上回るだけでなく、予想を上回る議員票を獲得したのは、昨秋以上に派閥が前面に出たことへの批判が大きかったからでもあろう。街頭演説での聴衆の反応を見て、福田氏で次の衆院選に勝てるのかとの不安があったのかもしれない。だが、ならば、どうして「第三の候補」を立てる動きが出なかったのか。
 若手の間では小泉純一郎前首相の再登板を期待する声もあったが、小泉氏本人の不出馬宣言で一気にしぼんだ。いったん出馬を表明した額賀福志郎財務相も、福田氏が優勢と見るや取りやめた。
 かつてのような派閥の形は崩れ、影響力が小さくなったのは福田氏が指摘した通りだ。だが、それに代わる新しい仕組みが依然、見つからず、多様な論戦を展開する活力も失われている。そんな現状を示す総裁選でもあった。
 「自民党をぶっ壊す」と豪語して小泉氏が首相に就任したのは01年4月。福田氏は「自民党の再生」を強調したが、多くの国民は「再び古い自民党に戻るのか」と疑っていることを忘れてはいけない。その意味で党役員人事や組閣が大きなポイントとなる。また、新閣僚に「政治とカネ」の問題が浮上すれば、たちまち国民の支持は離れていくだろう。
 改めて指摘しておくが、今回は安倍首相の唐突な辞任表明を受けた総裁選だ。所信表明演説で続投の意欲を示しながら、なぜ、代表質問直前に辞めると言い出したのか。そもそも7月の参院選後に辞任していれば済む話ではなかったか。なぜ、もっと早く首相の体調の異変に気づかなかったのか。
 2カ月近くにわたる政治空白を生み出した自民党の政権担当能力が疑われているのだ。福田、麻生両氏が地方行脚のパフォーマンスを繰り返すのもいいが、議員全員で長時間、反省討論会を開くくらいの危機感が必要だった。
 福田氏は政治がここまで異常な事態に至ったことを国民に謝るところから始めるべきだろう。そして一刻も早く、国会を正常化し、まともな政治に戻すことだ。
 突然の総裁選だったが、「福田政治」とは何か、明らかになった点はいくつかある。
 一つは「戦後レジームからの脱却」といった安倍路線の否定だ。安倍首相が最大の目標に掲げていた憲法改正の発議について福田氏は今の参院の状況を踏まえ慎重な姿勢を示した。小泉、安倍政権と比べ、アジア重視の外交も進めていくことになるだろう。靖国神社への参拝も否定している。
 とかく偏狭なナショナリズムに陥る危うさがあった安倍政治に、毎日新聞は再三疑問を呈してきた。参院選でもその路線は大きな支持を得られなかった。福田氏が転換を図ることは評価したい。
 ところが、内政ではあいまいさが目立つ。総じて言えば、福田氏は小泉政権の構造改革路線は堅持しながら、地方対策などを手厚くしていく姿勢なのだろう。バラマキ型公共事業の復活も否定している。だが、それに代わる策はあるのか。福田氏は「知恵を出す」と繰り返しているが、今後は早急に具体策が求められる。
 福田氏の強みは長い官房長官時代に培った中央官庁とのパイプだろう。安倍内閣は官僚と対決することで政権浮揚を狙ったが効果は上がらなかった。確かに対決するだけが政治主導ではない。必要なのは、政治がどう官僚組織を使うかである。
「官僚お友達内閣」では… 公務員制度改革や行政改革は緊急課題だ。これにどう取り組み、官邸と霞が関との関係を再構築するのか。「官僚お友達内閣」と評されるようなことになっては国民の支持は得られない。
 国会の当面の焦点はテロ対策特別措置法の延長問題だ。福田氏は海上自衛隊のインド洋での給油活動を継続させるため新法を臨時国会で成立させる意向を示しているが、民主党が賛成する見込みは薄い。会期を大幅延長し、参院で否決、衆院で再可決という局面も予想される。対する民主党の小沢一郎代表は政権を追い込み、早期の衆院解散に持ち込む構えだ。
 「私を信じてついてきてください」。福田氏は総裁選中、こう語った。だが、国民に白紙委任を求められる状況でないのは承知だろう。今の衆院の巨大与党勢力は小泉政権下で獲得した議席だ。やはり、ここは早く総選挙を行い、有権者の信を問うべきだ。
 福田氏は来春の予算成立後を念頭に野党とも協議したうえで総選挙に臨む「話し合い解散」に言及している。時期はともかくこれも一案だろう。次の衆院選は自公政権の継続か、民主党政権か、文字通り有権者が政権を選択する選挙となる。政治に国民の信頼を取り戻すにはそれが近道である。

(07/9/24 日経新聞)
社説 福田政権の青写真を示し「さあ働こう」
自民党の第22代総裁に福田康夫元官房長官が選ばれた。25日の首相指名選挙を経て福田内閣を発足させる。安倍晋三首相の突然の辞任表明を受けて、自民党は手堅い行政手腕を持つ71歳の福田氏に党の再生を託した。
 新総裁に決まった福田氏は23日の両院議員総会で「国民の信頼を取り返し、着実に政策を実行する政党に生まれ変わらせたい」とあいさつした。福田氏は政権の基本理念や政策などの青写真を明確にしたうえで、速やかに始動して、国政の遅れを取り戻す必要がある。
改革後退は許されない
 総裁選は福田氏と麻生太郎幹事長との一騎打ちとなった。投票の結果、福田氏は議員票387票のうち254票、地方票141票のうち76票を獲得した。福田氏の得票率は62.6%で、事前の予想に比べ麻生氏が善戦した。
 今国会は10日に召集されたが、衆院での各党代表質問の直前に安倍首相が辞任表明したため、最初から仕切り直しとなる。康夫氏の父の福田赳夫元首相は自らの内閣を「さあ働こう内閣」と命名した。康夫氏もこの精神を継承してもらいたい。
 本人も認めているように、急な総裁選出馬で福田陣営の準備不足は否めなかった。「希望と安心のくにづくり」と題した公約は具体性に欠け、麻生氏との討論でも政策の中身が深まったとは言い難い。政権運営の指針となる所信表明演説では、新内閣が打ち出す政策をていねいに説明する姿勢が不可欠だ。
 総裁選を通じ、福田氏は消費税率の引き上げに前向きな考えをにじませた。安倍首相は10日の所信表明演説で、消費税を含む税制の抜本改革について、今秋以降、本格的な議論に入る方針を示しただけで、結論を出す時期には触れなかった。福田氏は今後どのような段取りで進めるつもりなのか。税財政改革に取り組む基本姿勢をぜひ聞きたい。
 福田内閣がまず取り組まなければならない課題は、インド洋での自衛隊による給油活動を継続するためのテロ対策特別措置法の延長問題である。特措法は11月1日に期限切れとなるため、福田氏はこれに代わる新法案を提出して今国会で成立を期す考えを明らかにしている。
 福田氏は給油活動の継続に反対している民主党との協議に柔軟に臨む方針だが、新法案が参院で可決されなかった場合には、衆院で3分の2以上の賛成で再議決することも視野に入れているとみられる。
 安倍首相は給油継続のめどが立てられなかったため、政権を投げ出した。福田氏は民主党の小沢一郎代表と渡り合う、したたかな国会運営が求められている。国会対策の司令塔となる幹事長の人選も重要だ。
 給油継続問題とともに、来年度の予算編成作業も正念場を迎える。福田氏は2011年度に財政の基礎的収支(プライマリーバランス)を黒字化する財政健全化目標を堅持する考えを示している。改革の手を緩める余裕はなく、当然のことだ。
 しかし参院選での大敗を受け、党内では「地方への配慮」などを名目とした歳出増の圧力が強まってきた。福田氏支持勢力の中には、小泉政権以来の構造改革路線の大幅な転換を求める議員も少なくない。福田氏が強い指導力を示さなければ、改革路線はすぐ後退しかねない。
 福田氏の公約にも(1)高齢者医療費負担増の凍結の検討(2)障害者自立支援法の抜本的な見直し――などの歳出増につながる可能性が高い政策が盛り込まれている。その財源をどうするのか。福田氏は「財源がない中で工夫してやっていかねばならない」と述べるにとどめている。こうした政策の見直しに踏み込むなら、きちんとした財源の手当てが要る。
早期の衆院解散が筋だ
 福田氏は民主党との「話し合い解散」の可能性にも言及している。解散権は首相の最大の武器であり、就任前から口にするのは極めて異例だ。この背景には、衆参両院で多数派が異なり、民主党の協力がなければ参院での法案審議が円滑に進まないという国会状況の変化がある。
 安倍首相は衆院選の審判を受けぬまま退陣し、自民党内の都合で福田氏が後を継ぐ。早期に衆院を解散して、信を問うのが筋である。
 福田氏は「予算が成立したら解散という話も一般的に言うが、ほかに大事なやつがあれば、それを仕上げてから解散ということもある」と指摘している。来年春の予算成立後の解散を模索しているようにも見える。民主党との話し合いで重要法案を成立させたうえで、衆院解散に踏み切るのは有力な選択肢といえる。
 福田内閣は「選挙管理内閣」の性格を帯びて出発せざるを得ない。党総裁としての福田氏は参院選の敗因を徹底的に分析し、国民の声をつかみ、それにこたえる対策を練る重大な使命も負っている。 



最近のマスコミ報道(07/09/23) 改憲促進へ6億円 国民投票PR 総務省が予算要求 全国50紙に全面広告3回
日時:2007923
(2007年9月23日(日)「しんぶん赤旗」)
改憲促進へ6億円
国民投票PR 総務省が予算要求
全国50紙に全面広告3回
 今年五月に成立した改憲手続き法(国民投票法)を国民に周知徹底するために、政府が約六億円を投じて新聞全面広告などを使った広報計画を準備していることが分かりました。総務省が来年度予算案に新規項目として概算要求しました。改憲世論を盛り上げることを意図したものです。
 総務省が八月末にまとめた概算要求には「国民投票制度の周知及び執行体制の確立に必要な経費」として六億三千万円を要求しました。内訳を説明した総務省国民投票係によれば、新聞全面広告に四億円(全国紙五紙、ブロック紙三紙、地方紙四十二紙の計五十紙に三回にわたって掲載する)、雑誌広告に七千万円などを盛り込みました。
 広報費用関係だけで五億八千九百二十万円になります(詳細は表)。このほか「執行体制の検討・研究」の費用として四千万円を要求しました。
 改憲手続き法は自民・公明の与党が、憲法九条改悪を狙って強行成立させたものですが、国民投票法部分の施行は三年後。同法成立(五月)に際しては、参院憲法調査特別委員会で「十八項目」にものぼる付帯決議がつけられ、(1)投票年齢を十八歳以上とするための法令整備(2)最低投票率の是非の検討(3)在外投票の保障問題(4)公務員・教員の地位利用にかんする基準の検討(5)有料広告規制の検討など、法案の根幹にかかわる問題を検討課題としました。
 この問題の検討も始まらないうちに、巨額な費用を使って法律の広報活動ばかり先行させるやり方は重大です。
 総務省は「法律に検討課題が残されてはいるが、準備は必要だ。国民の大多数にかかわる新しい制度なので、あまねく周知する」と説明します。

改憲手続き法の広報計画と費用
・新聞全面広告(50紙に各3回づつ掲載)     4億円
・雑誌広告(一般週刊誌5誌、女性週刊誌2誌)    7000万円
・インターネットのホームページ作成・運営   5000万円
・携帯電話のサイト作成・運営         2500万円
・ポスター(A2、B2版の2種類、39万枚)       900万円
・ポスター・リーフレットのデザイン料      300万円
・国際線旅客機で流すビデオCM(30秒もの)    220万円
  合計                    5億8920万円
(総務省説明から作成)

(07/09/22 中国新聞)
2候補発言要旨 公開討論会
▽両候補による討論 
 【拉致問題】 
 麻生太郎幹事長 北朝鮮ときちんと対話をするためには圧力が必要だ。 
 福田康夫元官房長官 交渉の過程においては対話一本やりではない。対話と圧力のバランスは外交交渉上の問題だ。 
 ▽質疑応答 
 【首相の辞任】 
 福田氏 決断の時期を間違えた。参院選の敗退時が決断の時期ではなかったか。 
 麻生氏 所信表明演説の前ならともかく、テロ対策特別措置法が終わってからだと安倍晋三首相に申し上げた。10日に辞意を聞き、ずっと外に漏らさず最後まで説得しようとした。 
 【小沢民主党代表評】 
 福田氏 わたしが当選1回のころの自民党幹事長。権威があったし偉い人だという印象を持った。最近は非常に民主的にやられている。 
 麻生氏 今、頑張っていろいろ努力をされているが、仲良くなると別れるのがあの人の歴史だ。 
 【衆院解散時期】 
 福田氏 2008年度予算が成立したら解散だと一般的に言うが、ほかにも大事なものがあった場合はそれを仕上げてからの解散もある。 
 麻生氏 首相が代わるたびに国民が総選挙を期待するのかどうかも判断に入れないといけない。 
 【給油活動継続】 
 福田氏 テロ対策特別措置法の延長は時間的な制約がだんだん強くなっている。延長が難しいなら新法もやむを得ない。新法案を出すことになれば臨時国会に出す。 
 麻生氏 早急に成立させてしかるべきだ。延長が無理なら新法をできるだけ早く行うのが責務だ。臨時国会で成立を図れるようにすべきだ。 
 【政治とカネ】 
 福田氏 すべて公開したら、政治活動すべてが洗いざらいになる。政治活動の自由は必要。第3者機関が1円からチェックして問題がなければ公表しないようにすれば、政治家も安心して真実を伝えることができる。 
 麻生氏 政党助成金という税金が投入されている部分は公表すべきだ。自分で集めた浄財で行う政治活動については、政治活動の自由は憲法上保障されており、区別しなければいけない。 
 【財政再建】 
 福田氏 (公明党の連立政権協議に臨む基本姿勢には)2011年度に国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化する目標の先送りはない。既に決まっていることを実現する考えだと理解している。 
 麻生氏 11年度という目標を持ってスタートしている。税収が伸びているから簡単に「先送りしよう」と今の段階でする話ではない。 
 【都市と地方の格差】 
 福田氏 財源がない中で工夫が必要だ。ばらまきはできない。政策の組み合わせが必要だ。 
 麻生氏 市場経済原理主義は必ずひずみを生む。道路がないとか携帯電話が通じない地方に企業はいかない。仕事がないから若者は出て行く。 
 【年金問題】 
 福田氏 人口減など、これからの社会情勢に合わせてどういう年金がいいのか柔軟に考えていい。与野党で一生懸命にやるのも1つの方法だ。(税方式も)含めてだ。 
 麻生氏 国民のための話だから、与野党協議は賛成だ。 
 【消費税】 
 福田氏 将来的には消費税で社会福祉を担う考え方はやむを得ない。 
 麻生氏 年金や福祉に限定した福祉目的税みたいなものだ。 
 【国立追悼施設】 
 福田氏 多くの国民に理解される国立追悼施設になってほしいが、靖国神社に代替する施設ではない。石を投げるような人がいる状況でつくっていいとは思っていない。 
 【皇室典範改正】 
 福田氏 放置していい問題ではない。時間的制約があり、早く一定の方向を出さなければいけない。ただ、国論が分かれてはいけない。 
 麻生氏 皇室典範を安易に政治家が触るべきものかというのが率直な実感。しゃにむに論議して結論を出すほど切羽詰まった話ではない。 
 【憲法問題】 
 福田氏 憲法は国会が認めることで、そこを考えなければいけない。集団的自衛権の行使については、今行われている議論の事例が適切かどうかも含め考えたらいい。 
 麻生氏 (憲法改正と集団的自衛権行使の容認を進めるかどうかは)両方ともイエスです。

(9月21日 北海道新聞・社説)
海上給油活動 国連使い世論対策とは
 自衛隊の海上給油活動に反対する世論を説得するため、国連で感謝の意を表明してほしい。 
 政府のそんな働きかけに応える言葉を盛り込んだ決議が安全保障理事会で採択された。 
 今国会の争点の一つは、給油活動の根拠となっているテロ対策特別措置法の延長問題だった。憲法と自衛隊の関係、日本の国際貢献のあり方など、論じなければならないことは多い。 
 ところがだ。 
 安倍晋三首相の政権放り投げと自民党総裁選による国会空白でその論議ができないでいる間に、外国の力を借りて国内政治を動かそうとする。 
 野党の言葉を借りれば「茶番」である。こんな姑息(こそく)な世論対策に走るのではなく、国民にきちんと語らなければならないことが政府にはあるはずだ。 
 給油は本当に日本でなければできないのか。イラクでの作戦に油が流用されていることはないのか。いくつもの疑問や疑惑がある。まず必要なのは丁寧な説明と情報開示だ。 
 そもそも今回の決議は、アフガニスタンでの国際治安支援部隊(ISAF)の活動の期間延長が目的だ。しかも「謝意」は決議の本文ではなく前文に書き添えられただけにすぎない。 
 給油活動はあくまで米軍主導の海上阻止行動の後方支援であって、ISAFのような国連の活動ではない。 
 この決議をもって給油活動に国連のお墨付きが得られたといい募るのは、まさに国民をあざむくものだ。 
 採決を棄権したロシアの大使は「加盟国の内政上の動機が優先された」などと決議に不快感を示した。 
 国際社会は一枚岩だという政府の説明が、かえってぐらつくことになったのは皮肉な結果といえる。 
 政府はこれまで、テロ特措法は「9・11テロ」直後の国連安保理決議を踏まえていると主張してきた。この決議は、米国の自衛権を認め、テロと戦うために安保理が必要な手段をとるとうたっている。 
 ただ、米国の武力行使を国連が直接容認しているかどうかなど、決議の解釈をめぐっては、専門家の間でもさまざまな議論がある。ここは憲法に立ち返って考えるべきだろう。 
 憲法は海外での武力行使を禁じ、集団的自衛権の行使も政府見解として認めていない。素直に考えれば、後方支援といえども米国などの武力行使と一体化したもので、憲法に抵触する恐れがあるといわざるを得ない。 
 参院の与野党勢力が逆転し、テロ特措法の延長が事実上、困難になっているなかで、政府・与党は給油活動に目的を絞った新法も検討している。自衛隊の海外活動に必要な国会の承認を省くためだという。 
 このうえ文民統制までないがしろにするなど、絶対に許されない。

(07/09/20 中国新聞)
「戦争協力」除外を可決 本願寺派が宗制を改正
浄土真宗本願寺派(本山・西本願寺、京都市下京区)は二十日、議会にあたる臨時宗会を開き、最高法規「宗制」の初の改正案を採決、賛成多数で可決した。
 改正の主な狙いは、宗派の戦争責任問題の解決。案には、戦時中に当時の門主が戦争協力を呼び掛けた通達「消息」を、聖典に準ずる位置付けから除外する内容を盛り込んでいた。
 宗制は教義や規範を規定し、国家の憲法に相当。日本国憲法と同じ一九四六年に発布、四七年に施行された。
 改正案は臨時宗会初日の十三日に提案。一部議員から反論があり、会期を延長して審議し、十九日に部分的な修正案が提出された。二十日も改正案に対する異論が出され、宗会開会は大幅に遅れた。
 浄土真宗本願寺派は門信徒約一千万人。宗会の歴史は古く、帝国議会(当時)より九年早い一八八一年に開設された。

(2007/09/22 産経新聞)
「保守」めぐり自民二分も 
 安倍晋三首相の退陣を契機に、構造改革路線をめぐる政策転換の是非にとどまらず、保守勢力としての基本的立場を問われるような自民党内の路線対立が先鋭化する可能性が出てきた。
 新総裁、次期首相選出が確実視される福田康夫元官房長官は、安倍首相が掲げた「戦後レジームからの脱却」路線には否定的で、憲法改正にも慎重な姿勢を見せる。保守として推進すべき政策、路線が後退する代わりに、夫婦別姓や人権擁護法案、定住外国人への地方参政権付与といったリベラル色の強い政策や法案の実現を求める勢力が勢いづきそうな情勢にあるためだ。
 福田氏は憲法改正は党是と認めながらも「自民、公明両党だけで決めていいものか考えないといけない」との立場をとる。安倍首相が検討していた集団的自衛権の行使をめぐる憲法解釈の変更についても「憲法に抵触するかどうかを慎重に考えたほうがいい」と否定的な見解を示している。
 福田氏は安倍首相が力を入れていた教育再生にも言及せず、教育再生会議は12月の最終報告を前に頓挫しかねない。
 また、次期幹事長への就任が有力視される古賀誠元幹事長は、人権擁護法案の旗振り役で、福田氏支持派には夫婦別姓論者も多い。
 連立内で独自色を強めたい公明党は、離婚後300日以内に生まれた子が前夫の子とみなされる問題で民法改正を強く求めている。定住外国人の地方参政権付与についても「福田政権」の期間に一気に進めたい考えだ。
 これらのリベラル色の強い政策、法案は安倍首相自身が封印してきたわけだが、中川昭一前政調会長や島村宜伸元農水相ら同じスタンスをとってきた勢力の多くが、今回の総裁選では麻生太郎幹事長の支持に回った。新体制下で発言力が低下することは否めない。
 ただ、思想信条に直結しており、「足して二で割る」妥協案がとりにくいテーマだけに、リベラル色の強い政策に否定的な議員らの多くは「保守政党の看板を降ろすわけにはいかない」(中堅)と徹底して反対する構えを見せる。福田氏が独自色を示そうとこれらに着手すれば、自民党を二分する路線対立につながる可能性は高い。(酒井充)

(2007/09/21 産経新聞)
【検証 安倍政権の1年】憲法 国民投票法制定 改憲論議、進まず 
 安倍首相は昨年10月、首相在任中の憲法改正を目指すことを表明した。鳩山一郎首相以来、半世紀ぶりの現職首相の挑戦だった。実現こそしなかったが、第1段階として今年5月、憲法改正手続きを定めた国民投票法を成立させた。憲政史上、画期的な意義を持つことは間違いない。
 ただ、残念ながら、憲法改正を旗印にした首相の憲法問題への取り組みは、十分だったとはいえない。
 もともと国民投票法は、「小泉内閣でも成立できたが、次の内閣の実績にするため、あえて残された節がある」(閣僚経験者)と自民党内でささやかれていたほどで、成立は、小泉内閣からの既定路線だった。
 国民投票法の中身については成立直前まで与野党協議が続いたが、首相サイドが目を配っていたとはいえず、民主、公明両党に妥協する形で(1)施行凍結は原案の2年間から3年間へ延長(2)公務員の運動規制を選挙よりも緩める−ことになった。
 一方、自民党内の憲法議論は進まなかった。政権発足時に鳴り物入りで調査会から格上げされた憲法審議会は、今年6月に会長ポストが決まるまで休業状態。7月の参院選では、自民党のマニフェスト(公約)の筆頭に「新憲法制定の推進」を掲げ、「平成22年の国会において憲法改正案の発議をめざし」と時期的目標を設定したものの、肝心の改正内容は記されなかった。
 参院選では憲法論議が広がらず、首相は「憲法を政党間で議論することが、あまりできなかった」と認めざるを得なかった。
 国民投票法によって法的には8月の臨時国会から衆参両院に設置された「憲法審査会」も、野党の抵抗で定数や議決要件が決まらず、事実上未設置のままだ。次期首相は審査会をスタートさせる課題も担うことになる。(榊原智)
                   ◇
 「戦後レジーム(体制)からの脱却」を掲げた安倍晋三首相は昨年9月の就任以来、教育基本法改正、憲法改正手続きを定めた国民投票法制定など、「10年分ぐらいのことは仕上げた」(森喜朗元首相)といわれる。一方、参院選大敗の一因となった年金問題をはじめ、積み残された課題もある。1年足らずで終わることになった安倍政権の取り組みを検証した。

(07/09/23 京都新聞)
首相退陣後の憲法どうなる
中京で総評の集会
京都総評が主催する「京都労働者憲法交流集会」が22日、京都市中京区のウィングス京都であり、関西大大学院の木下智史教授が安倍晋三首相退陣後の憲法改正の行方について講演した。 
 集会は、国会で国民投票法が成立したのを受け、憲法改正に反対する立場から憲法について学習するために企画。木下教授が「改憲手続法の制定、安倍政権の退陣−憲法はどうなるのか」をテーマに話した。 
 木下教授は、改憲に向けた国民投票までの流れを説明した後、憲法改正を推し進めてきた安倍首相の辞任について「安倍流の古い改憲論は国民に受け入れられなかった。ただ改憲論全体が挫折したわけではない」と指摘した。 
 改憲が強硬に進められる背景について「安倍首相は米国に協力するために憲法九条をどうしても変えたいと思っており、財界も国際的発言力を強化するために後押ししている」と強調。憲法に対する姿勢について「最高法規の憲法を国家機関が守っていない状況がたくさんある。それらの状況を国民が厳しく監視していくことが必要」と締めくくった。

(2007年9月22日(土)「しんぶん赤旗」)
参院選惨敗し安倍氏退陣
改憲派 ダブルショック
“日程表が紙くず”
 改憲派陣営が自民党の参院選惨敗に続く安倍晋三首相の退陣表明のダブルショックで沈んでいます。現在繰り広げられている安倍氏の後継を選ぶ自民党総裁選でも福田康夫、麻生太郎両候補とも総裁選公約に憲法のケの字も入れないほど改憲問題を避けています。一方で改憲推進派には巻き返しをはかる動きもあります。
 改憲推進派の「新しい憲法をつくる国民会議」(自主憲法制定国民会議)が十九日昼、国会内で会合を開きました。参院選結果と安倍退陣を受け一転、厳しさが増した改憲運動の再構築をはかる目的でした。
 会合には自民党の中山太郎憲法審議会長が出席して、国会における憲法改定作業の現状と見通しを語る予定でしたが、欠席。自民党総裁選のため多忙というのが理由でしたが、改憲への日程を語れる状況でなくなった事情が指摘されました。
 同国民会議役員は「安倍内閣ができてわれわれに追い風が吹いていたが、参院選、安倍首相の退陣表明で、にわかに逆方向へ風向きが変わってしまった」と、ことば少なです。
 自民党が描いた改憲スケジュールは大幅に狂いが生じています。本紙五月一日付は、「二〇一一年夏発議、秋の国民投票」のスケジュールを示し自民党総務会に提出された「改憲日程表」を明るみに出しました。改憲日程表に沿って自民党は参院選で「三年後の改憲発議」を公約しました。
 問題の「改憲日程表」を作成した当事者は「いまや、あの改憲日程表は紙くず同然ですよ」と語ります。
 中山憲法審議会長は、改憲手続き法にもとづいて衆議院に設置されることになる憲法審査会について、この臨時国会では設置せず、来年の通常国会へ先送りする意向を関係方面に伝えています。
 しかし、改憲推進派は沈んでいるばかりではありません。
“置き土産”手に執念
 自民党新憲法草案(改憲案)の起草責任者の一人である舛添要一厚労相は十八日夜の自民党衆院議員のパーティーの席上で改憲への決意をあらためて示しました。「参院選に負け、内閣改造、そして総理退陣という政局になったが、憲法改正するという熱意は忘れていない。憲法改正という大きな目標に向かって努力したい」
 改憲派の中核・日本会議と同国会議員懇談会は十月六日に東京で開く設立十周年大会で改憲運動へテコ入れをはかる構えです。
 安倍首相もまた、退陣表明直前まで改憲への執念をいささかも弱めてはいませんでした。
 安倍首相は世論から「改憲ノー」の回答をつきつけられた参院選後、自民党国家戦略本部を舞台に改憲態勢の立て直しをはかる手だてを講じていました。同本部の国家ビジョン策定委員会の再開を指示し、九月から改憲を主軸にした安倍ビジョンの再構築にむけ本格的活動に入る運びでした。
 辞意表明二日前の所信表明演説(十日)では「憲法については、国民投票法の成立により、改正に関する議論を深める環境が整いました」と国会での改憲議論の活発化を訴えていました。
 自民党の改憲派議員は「改憲手続き法はいわば安倍首相の置き土産。安倍内閣が退陣しても改憲作業を進める法的根拠は残した。ここを足場に巻き直しですよ」となお息巻きます。
 しかし、自民党改憲派議員のブレーンの一人さえ「憲法改正論が九条改正とか具体論に入れば入るほど世論の改憲消極論が増える傾向がある。安倍首相は在任中の改憲実現を課題に掲げたが、次の新しい内閣が改憲をテーマに掲げられる政治状況ではなくなった」と冷めた見方をしています。

(2007年9月22日 東京新聞)
憲法映画『日本の青空』晴れぬ空? 後援拒否の自治体次々
 憲法の制定過程を描いた映画「日本の青空」の上映会に対し、主催の住民団体の後援申請を自治体が拒む事例が東京都内などで相次いでいる。判断のポイントは、「政治的中立を保つ」という視点だ。安倍政権で成立した国民投票法で改正への手続きが整った憲法。その在り方を考えさせる映画への自治体の姿勢は、政権の顔色をうかがって憲法改正問題を敬遠しているようにも映る。 
  (松村裕子)
 この映画は、憲法学者鈴木安蔵氏(一九〇四−八三年)を中心とする民間人グループ「憲法研究会」の物語。同会の案を参考に、連合国軍総司令部(GHQ)が憲法草案を作ったという史実を、雑誌社の女性社員が取材を通じて明らかにする。主権在民や法の下の平等の考え方は鈴木氏らの案にもあり、「米国に押しつけられたものだから」という改憲論の根拠を覆す意味合いも持つ。都内で映画の配給をする共同映画(渋谷区)の藤野戸護社長は「今の政治に対し、憲法を守るべきだという考えを強く押し出した」と語る。
 都内の上映会のうち、あきる野、東大和、狛江や清瀬市は「改憲の賛否に関係なく、憲法について考えるきっかけにするという開催趣旨に賛同した」などとして後援をした。一方、国分寺市と同市教委は「映画制作の趣旨が改憲反対に偏っている」として、後援申請を拒否。調布市や中野、練馬、大田、目黒各区なども「改憲論議がなされている中で、政治的中立を保つ」として後援をしなかった。
 都道府県レベルも同様だ。宮崎県教委は「教育の中立性」を理由に後援を拒んだが、鈴木氏が地元大学の教授を務めた静岡県教委は「憲法学習の一教材になる」と優良推奨映画に指定。判断は二つに分かれる。
 丸山重威・関東学院大教授(マスコミュニケーション論)は「憲法を守ることは平和を守ることや戦争に反対することと同じで、政治的な行為ではない」と指摘。「公務員は憲法を守る義務があり、自治体が後援を拒否するのはおかしい」と説明する。一方、「21世紀の日本と憲法」有識者懇談会の事務局長を務める百地章・日大教授(憲法学)は「上映会は明らかな改憲反対のための政治運動。中立性の確保から、自治体が一方の運動だけを後援するのは好ましくない」との見方だ。「自治体が後援するなら、議論の参考となるようバランスをとって改憲への賛成、反対の両方とも応援すべきだ」と話す。
 今月十五日の国分寺市の上映会では行列ができ、三百七十人収容のホールがほぼ満ぱいに。従軍経験者という杉並区の元男性教員(81)は「押しつけ憲法と言われていたが、日本人の考え方も入っていると分かった」。町田市の男子大学生(19)は「勉強になる映画だった。九条だけあっても平和が守れるわけでなく、憲法を変えることがあってもいい」。映画への関心は高く、普段意識をしない憲法を自分で考えるいい機会になっていると言える。
 「政治的中立」について、自治体から納得できる説明はない。改憲についてさまざまな意見はあるが、政治的中立を掲げて憲法論議に背を向ける自治体の姿勢は、本当に正しいのだろうか。




最近のマスコミ報道(07/09/21) 「報復戦争」支援 安保理決議で正当化できない
日時:2007921
(2007年9月21日(金)「しんぶん赤旗」)
主張
「報復戦争」支援
安保理決議で正当化できない
 国連安全保障理事会は、アメリカのアフガニスタン「報復戦争」にたいする日本を含む各国の貢献に「謝意を表明」する決議を採択しました。アフガニスタンで活動中の国際治安支援部隊の任期を一年延長する決定に便乗してもりこまれました。「報復戦争」も日本の支援も決議で正当化することはできません。
アメリカの戦争
 決議は、自衛隊がインド洋でおこなっている米軍艦艇などへの給油活動をなんとしても継続させたい日米両政府が画策したものです。野党が参議院の多数をにぎり、憲法違反のテロ特措法の延長を許さない国会状況になったのは、国民の審判によるものです。国連を使って参議院選挙で示された民意をふみにじるのは認められることではありません。
 自衛隊の給油活動は、二〇〇一年の「9・11」テロにたいするアメリカのアフガニスタン「報復戦争」への支援です。テロ根絶といいながら、戦争を禁止した国連憲章の精神に違反して「報復戦争」に訴えることも、それへの軍事支援も許されるべきことではありません。
 アメリカは個別的自衛権の発動だといって国連と無関係に「報復戦争」をはじめました。テロ直後の安保理決議一三六八は、「9・11」テロを「国際の平和及び安全に対する脅威」と認定しましたが、アメリカの「報復戦争」にお墨付きを与えたわけではありません。それどころかこの決議は、「テロ攻撃の実行者、組織者及び支援者を法に照らして裁く」ことを国連加盟国に求めています。「法の裁き」でテロ勢力をおいつめることを要請されているにもかかわらず、アメリカはこれを無視し、あだ討ちのための「報復戦争」に訴えたのです。一九七〇年に国連総会が採択した、「復仇(ふっきゅう)行為(=あだ討ち)」禁止の「友好関係宣言」に違反しています。
 NATO(北大西洋条約機構)諸国が集団的自衛権を発動して、アメリカの戦争に参戦したことも、米軍やNATOの部隊に自衛隊が給油支援することも、安保理決議や国連憲章の精神に反していることは明白です。新しい決議をしたからといって、「報復戦争」とその支援を正当化できると思ったら大間違いです。間違ったことをしてもあとで追認されるのでは国際正義も秩序も成り立ちません。日本政府が今回の安保理をばねにテロ特措法の延長や新法をおしつけるのは、誤りを重ねるだけです。
 「対外公約」だといって自衛隊の給油支援活動の継続を押し付ける議論も重大です。自民党総裁選挙で候補者の福田康夫元内閣官房長官は「対外公約になっているのでその約束を果たす」といっています。同じく麻生太郎自民党幹事長も「義務と責任がある」といっています。
 二人とも憲法や日本としての主体性をどう考えているのかと見識を疑いたくなります。日本は国連に加盟するとき、憲法が許す範囲で国際社会に貢献すると宣言をし、それが認められて加盟しました。アメリカやNATO諸国の一部から軍事貢献を求められても堂々と拒否することこそ求められる態度です。アメリカいいなりで、主体性のない態度では国の針路のかじ取りはできません。
6年間を直視せよ
 戦争でテロをなくせないことは「報復戦争」の六年間が証明しています。テロ特措法の延長もテロ対策立法もテロ行為と武力報復の悪循環を助長するだけです。
 戦争でなく、「法の裁き」でテロを追い詰めていくことが不可欠です。

(2007年9月21日(金)「しんぶん赤旗」)
志位委員長の記者会見 (要旨)
 日本共産党の志位和夫委員長が二十日、国会内でおこなった定例記者会見の要旨は次のとおりです。
国連安保理決議と報復戦争支援問題での対応について
 ――国連安保理が十九日、海上自衛隊が参加する「不朽の自由作戦」(OEF)の海上阻止行動への「謝意」を盛り込んだ決議を採択したことをどうみますか。
 志位 採択された決議は、アフガニスタンに展開する国際治安支援部隊(ISAF)の活動を継続することを主題とした決議の前文に、米軍中心の「不朽の自由作戦」――報復戦争への「謝意」を書き入れたというものですが、もともと前文は法的拘束力をもたないものであり、そこに「謝意」を書き入れたことをもって、国連が米国などに対して、報復戦争を遂行する権限を与えたことには、とうていなりません。日本政府が「謝意」を書き込むために奔走したようですが、姑息(こそく)で見苦しい小細工です。
 国連安保理は、本来、国際社会の平和と安定のための活動をする場です。そこに自民党政権の延命という党略を持ち込み、利用しようというのは、国際社会で批判されるべき恥ずかしい行為です。ロシアは決議案に棄権し、「今回の決議案は日本というある特定の国の国内事情のためである。国際社会全体の課題を協議する安保理の性格にそぐわない」と、強い不満を表明しました。中国は決議案に賛成しましたが、「こうした採択のしかたが悪(あ)しき前例にならないよう期待する」と表明しました。当然の声だと思います。
 アフガン戦争にさいしても、イラク戦争にさいしても、国連安保理にたいして国連憲章を守るためのまともな働きかけは何一つしてこなかった日本政府が、政権の延命のためにだけ安保理を熱心に利用しようというのは、国際的なひんしゅくをかう行為です。
 ――安保理決議は、共産党の立場に影響しますか。
 志位 日本共産党が、報復戦争への支援の継続に強く反対している最大の理由は、テロにたいして報復戦争という手段で対応したことが、根本から間違っているということにあります。それはこの六年間のアフガンでの情勢悪化で証明されています。戦争でテロはなくせない。この事実は、あれこれの文章の小細工によって消しさったり、ごまかしたりすることはできません。この事実のうえにたって、わが党は報復戦争支援の活動の中止を求めているのです。
 いま一つの理由は、海外での米軍の戦争を支援することは、日本国憲法に違反しているからです。国連の決議があるものであれ、国連の決議がないものであれ、海外での武力行使の支援に日本が参加することは憲法違反であり、許されません。
 ですから、今回の安保理決議が、わが党の対応に、いささかなりとも影響を与えることはありません。
自民党総裁選――自民党の政治的衰退を象徴
 ――自民党総裁選をどうご覧になっていますか。
 志位 一言でいって、自民党の政治的衰退を象徴する選挙になっていると思います。
 まず反省がありません。あれだけ参院選で国民の厳しい「自公政治ノー」の審判が下ったわけですから、この審判をどう受けとめるかが真剣に議論されてしかるべきなのに、それがまったくありません。双方の候補者ともに国民の声をどう受け止めるかという立場もなければ、反省もありません。安倍首相の「続投」をいったん自民党全体で認め、前代未聞の政権投げ出しという事態となり、国会が大空転に陥り、国民に大変な被害を与えていることへの反省もない。反省が全く論じられないというのは、驚くべき政治的衰退というほかありません。
 もう一つは、政策的選択肢がなくなってしまっているということです。貧困と格差を広げた「構造改革」「新自由主義」の路線を継続するという点でも、アメリカいいなりにアフガンやイラクへの派兵を続けるという点でも、双方の候補者の間に政策的違いはありません。多少のパフォーマンスの違いがあるくらいで、政策の違いがない。従来の政策に代わる多少なりとも別の政策的選択肢がなくなってしまっているところにも、自民党政治の政治的衰退が深刻な形であらわれています。
 たとえば、これまでの自民党は、経済政策をみても、一定の政策的選択の幅をもって、政権の延命をはかってきました。橋本内閣が「構造改革」路線で国民負担増と社会保障切り捨てで日本経済を大不況に突き落とすと、代わって登場した小渕内閣は一定の「手直し」をやって、減税や公共事業のバラマキをおこなうというように。大まかにみて中曽根内閣以降の時代は、ケインズ主義的政策と「新自由主義」的な政策を使い分けて、また並存させながら、自民党は延命をはかってきました。ところがいまや取りうる政策手段は、「構造改革」「新自由主義」しかなくなっている。政策的選択の幅がなくなり、「新自由主義」という貧困と格差を広げ、破綻(はたん)が明りょうになった細い行き詰まった道をすすむしかない。ここにも衰退の深刻さがあらわれています。
 アメリカとの関係でも、日米安保条約という条約で定められた権利、義務の枠組みさえ無視して、「世界のなかの日米同盟」といって海外での米国の戦争支援にどこまでもつきしたがう。それがどこでも破綻している。ここでも政治的節度を失い、政策的選択の幅もなくなってしまっています。
 もう一点、小泉・安倍政権が残した「靖国」派政治の負の遺産――靖国参拝問題、「従軍慰安婦」問題、沖縄戦「集団自決」の教科書検定問題などを、清算できるのかどうかが、どちらが首相になっても問われてきます。
 全体として、どちらが首相になろうと、こういう政権が早晩、政治的に行き詰まり、解散・総選挙に追い込まれることは必定です。わが党は、そのために大いに力をつくすとともに、自公政治に代わる新たな政治はいかにあるべきかについて大いに明らかにしていきたいと思います。
首相指名選挙への対応について
 ――二十五日の首相指名選挙で、日本共産党は、参院で決選投票になった場合、民主党の小沢一郎代表に投票すると決めたが、一九九八年には、当時の菅直人代表に一回目から投票した経過がありますが、当時の対応は間違いだったということですか。
 志位 当時の民主党と、今日の民主党には違いがあります。当時の民主党は、たとえば憲法改定をすすめるという立場も、消費税増税をすすめるという立場も、表明していませんでした。九八年の場合は、そうしたもとでの対応として、適切だったと思っています。現在は、そうした路線上の問題で、双方に大きな違いがあります。
 ですから、今回の場合の首相指名選挙では、参院において第一回の投票では、わが党独自の立場で対応します。すなわち日本共産党に投じます。首相指名は、政権協力にかかわる問題であり、現状においては民主党との間で政権協力をおこなう条件はありません。そうしたもとで独自の対応をとります。
 ただし参院で決選投票になった場合には、反自公という立場の意思表示として、民主党の代表に投票します。参院選では、「自公政治ノー」という国民の圧倒的な審判が下りました。その審判もふまえて、自公政治に反対する意思表示として、首相指名選挙が決選投票となったさいには、いまのべた対応をとることを決めました。
新しい総選挙方針について
 ――日本共産党は、五中総で、次期総選挙にむけた方針として、すべての小選挙区での擁立をめざすとしていた従来の方針の見直しを決めましたが、これは民主党との協力という一面もあるのですか。
 志位 それはありません。私たちが第五回中央委員会総会で、「すべての小選挙区での候補者擁立を目指す」という従来の方針を見直し、一定の条件のもとで擁立することを決めたのは、何よりもわが党の現在の力量をリアルに判断し、そのうえにたって比例代表での得票と議席をのばすために、いかにして党のもつ力を効率的、効果的、積極的に生かすかという見地から決めたことです。
 すなわち、何らかの政局的な狙いをもってこの方針を決めたとか、民主党を考慮して決めたというものでは、いっさいありません。国会内での野党間の共闘の問題とか、今回の首相指名での対応の問題なども、総選挙の新しい方針とはまったく別の問題です。
 ――民主党の側からの何らかの協力要請はあったのでしょうか。
 志位 ありません。

(2007年9月21日(金)「しんぶん赤旗」)
米大統領支持率最低 29%
世論調査 外交・経済政策に不満
 【ワシントン=鎌塚由美】米世論調査会社のゾグビーとロイター通信が共同で行った世論調査で、ブッシュ大統領とともに米議会も過去最低の支持率になっていることが明らかになりました。
 十九日に公表された調査結果では、ブッシュ大統領の支持率は29%。ゾグビー社の調査のなかでは過去最低となりました。前回三月より1ポイント減。また、米議会への支持率は、わずか11%となり過去最低を記録。前回六月の調査より3ポイント減少しました。
 米国の外交、経済政策に対しても国民の不満が表れる結果になった今回の調査結果。米政府の経済政策にかんしては、「非常に良い」または「良い」と回答した国民が29%、外交政策では24%にしか達していません。
 調査期間は、十三―十六日で、千十一人の有権者に対して実施されました。この間に、イラク戦争での現地司令官ペトレアス氏の議会証言と、ブッシュ大統領の国民向け演説がありました。ブッシュ大統領は同演説で、一部撤退には言及しながらも大規模な駐留の継続を表明していました。
 ロイター通信に対し、ゾグビー社のジョン・ゾグビー氏は「イラクについての不確かさの継続が社会的な雰囲気を悪くし、ブッシュ大統領と民主党が多数の議会への支持率を押し下げた」と分析しました。

(2007年9月21日  読売新聞)
国連「謝意」決議、テロ新法案に明記へ
 政府は20日、海上自衛隊が参加している海上阻止活動への謝意を記した国連安全保障理事会決議の採択を受け、今国会に提出予定のテロ対策特別措置法新法案に、同決議を明記する方針を決めた。
 新法案は、現行のテロ特措法が11月1日に期限切れを迎えるため、同法に代わって、インド洋での海上自衛隊の給油・給水活動を規定する内容。政府筋は20日、「今回の決議は、海上阻止活動などの国際的な努力を継続する必要性に言及しており、新法の根拠の一つとして、法案に明記する」と語った。


最近のマスコミ報道(07/09/19) 自民党総裁選 違い出すほどの活力もないか
日時:2007919
(2007年9月19日(水)「しんぶん赤旗」)
主張
自民党総裁選
違い出すほどの活力もないか
 自民党の総裁選挙に立候補した、福田康夫元官房長官と、麻生太郎自民党幹事長との、論戦が本格化しています。しかし、発表された政権構想を見ても、記者会見や演説会での発言を聞いても、二人がこれまでの小泉純一郎氏や安倍晋三氏の政治をどう変えようとしているのか、二人の政策や主張はどこがどう違うのか、いっこうに見えてきません。
 自民党総裁選は事実上首相の座を争う選挙です。政権を争う場で違いを出すほどの活力も、いまの自民党には失われています。
破たんした路線どうする
 ことは自民党という同じ枠内での争いだからという理由であいまいにすませられることではありません。
 今回、突然総裁選がおこなわれることになったのは、参院選で自民党が大敗し、それにもかかわらず政権に居座り続けた安倍首相が臨時国会の運営に見通しが立たないなどで、ついに投げ出したためです。参院選での自民党の大敗は、小泉・安倍の二代にわたった自公政権の弱肉強食の「構造改革」路線と、とくに安倍首相が加速した改憲路線が破たんし、年金問題や「政治とカネ」の問題でも国民の不信を買ったのが原因です。総裁選に立候補する以上、小泉・安倍政権の路線をどうするかを国民に示すことは最低限の責任です。
 その点で福田・麻生両氏にまず欠けているのは、参院選での大敗や安倍首相がなぜ政権を投げ出したのかについて、真剣に向き合う態度です。参院選での大敗後も安倍首相の居座りを支持してきた麻生氏が後継候補に名乗りを上げたことは自民党内でも疑問の声が上がりましたが、福田氏にしても立会演説会での発言で参院選挙の大敗に「おわび」の一言があったぐらいで、まともに反省する態度はありません。
 だいたい福田氏自身、小泉氏や安倍氏と同じ派閥で、立候補に当たっては主流・非主流を問わず麻生派以外のすべての派閥から推薦を受けるありさまです。国会議員の中では圧倒的に福田優勢といわれる異常な「翼賛」状況そのものが、いまの自民党には参院選の大敗にも安倍首相の政権投げ出しにも向き合う姿勢がないことを浮き彫りにしています。
 そうした反省がない以上、福田・麻生両氏の総裁選での公約が、小泉・安倍政権とも、二人の間でも、大差のないものになるのは当然です。「構造改革」では二人とも継承を前提に、福田氏はこれまで生じた問題には丁寧に対処する、麻生氏は「影」の部分にも配慮するといっているだけです。消費税増税では、福田・麻生両氏とも検討を明言しました。
 外交、とくに当面の焦点となっているアメリカの「テロ戦争」支援の問題でも、福田・麻生両氏の対米公約重視の態度は変わりません。せいぜい福田氏が、民主党との協議を繰り返し発言しているぐらいです。
 福田氏からも麻生氏からも、自民党政治の行き詰まりを打開する道がみえてこないのもあたりまえです。
新しい政治の探求こそ
 少なくともかつての自民党なら、岸信介首相が「六〇年安保」で倒れたあとの池田勇人首相、田中角栄首相が金権で倒れたあとの三木武夫首相というふうに、政権延命のために多少の路線の見直しがありました。その活力さえないいまの自民党は、文字通り政権末期の衰退現象です。
 福田氏であれ麻生氏であれ、誰が政権を引き継いでも国民との矛盾は解消しません。自民党総裁選は、自公の政権にかわる新しい政治の探求こそが必要なことを示しています。

(2007年9月19日(水)「しんぶん赤旗」)
“あるじ”不在で官邸機能不全
肝いり会合 中止・延期
 安倍晋三首相が、臨時国会での代表質問直前に政権を投げ出してから一週間。首相は辞意表明後、機能性胃腸症と診断され、いまも都内の病院に入院中です。官邸は“あるじ”不在で機能不全に陥り、首相肝いりの会議や懇談会なども中止や延期が相次いでいます。
■閣議開かれず
 首相の入院は当初三、四日とされ、十八日の閣議には出席すると見られていました。しかし、「容体に変化がない」(担当医)として入院が延び、十八日の閣議は閣僚懇談会に切り替えられました。体調が回復せず、テレビや新聞にもほとんど接することができない状況だと伝えられる首相が、閣議案件を入院先の病院で決裁しているという異例の事態です。
 内閣法第九条では、首相に事故のあるときや首相が欠けたときは、あらかじめ首相が指定する国務大臣が、首相の代わりに職務を行うことを定めています。しかし、与謝野馨官房長官は「現在の状況は、まだ内閣法の総理大臣に事故あるとき、欠けたときというケースには当たらないと判断している」(十八日)と述べ、臨時代理は置かれていません。
 内閣府では、今月三十日に、タウンミーティングを衣替えした「政策ライブトーク」の第二回が、さいたま市で予定されていましたが、先週金曜に延期を決定。担当者は連休明けの十八日から参加者への連絡に追われました。
 今後の開催予定について担当者は、「新しい内閣が発足してから大臣の日程調整を行い、参加者も改めて募集するので、早くても十月下旬となるのではないか」と語りました。
■教育再生会議
 安倍首相主導でできた教育再生会議も激震に見舞われています。同会議が、参院選後初の合同分科会を開こうとしていた、まさにその日に、首相が辞意表明。会議では、年内にまとめる予定だった第三次報告に向けて、今後の議論の優先順位を話し合う予定でしたが、できませんでした。
 「一カ月近く動けないし、今後のことは、新内閣が決まるまでは、なんともいえない」と事務方は当惑気味です。第三次報告を年内に出すことも「どうなるか分からない」。今後の日程も白紙です。
 しかし、安倍内閣のもとで教育基本法は改悪され、教育再生会議の二次にわたる報告を受けて、教員免許更新制度、全国学力テストなどがすでに導入されています。さらに現在、中央教育審議会で、授業時間の一割増、道徳の教科化など、教育再生会議の提言が具体化されようとしています。
 今後の検討課題だった、教育バウチャー制度、学校の統廃合、六・三・三制の見直しなどは、安倍内閣以前からある流れであり、安倍退陣後も、国民的監視は欠かせません。
■自衛権議論も
 集団的自衛権の行使を検討する安倍首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(座長・柳井俊二前駐米大使)は十四日の第六回会合を中止しました。
 懇談会は憲法上、禁じられている集団的自衛権を限定的に行使することで憲法改悪の道筋をつくるとともに、首相の政策判断で憲法解釈の変更を可能にすることが狙いでした。参院選大敗で政府解釈の変更は困難になりましたが、報告書については「粛々と作業を進めていく」(懇談会関係者)計画でした。
 しかし、首相の突然の辞意表明で報告書の作成すら不透明な状況になりました。懇談会の存続は新首相が判断します。
 米大統領を補佐する国家安全保障会議(NSC)をモデルとした日本版NSCも行き詰まっています。政府は四月にNSC法案を提出しましたが、通常国会では審議されないまま継続扱いに。臨時国会でも審議するめどは立っていません。
 また、安全保障担当補佐官だった小池百合子氏が防衛相に転出して以降は官邸に同様のポストは置かれていません。


読書の秋にお薦めの本  「集団的自衛権」
日時:2007918
読書の秋にお薦めの本 「集団的自衛権」 
最近、テロ特措法とか、集団的自衛権についての議論が盛んに行われています。
そして、自衛隊を海外に派兵することが、あたかも、「国際貢献」であり、インド洋やイラクから撤退することが「テロとのたたかいを放棄」するかのごとくの報道が行われています。
しかし、どんな特別措置法をつくろうが、集団的自衛権行使の解釈を変更しようが自衛隊を海外に派兵することは、日本国憲法第9条に違反することは明らかです。
自民党、公明党はアメリカと財界の要求に応えて、明文改憲と解釈改憲の二方面から憲法を変えて日本の自衛隊=軍隊がアメリカと一緒に「戦争する国」にしようとしています。
「集団的自衛権とは何か?」「憲法と集団的自衛権の関係」「自衛隊とは?」・・・について、じっくり学習できる書籍を紹介します。
秋の夜長に1冊でも2冊でも通読し、現在と将来の日本のありようについて考えて見たいものです。
http://www.kyodo-center.jp/
http://www.kyodo-center.jp/shirou/book/book.htm


◆ちょっと待った 集団的自衛権って?
  
川村 俊夫 学習の友社 1143円
http://www.jah.ne.jp/~gakusyu/tomosya.html
書籍名 ちょっと待った集団的自衛権って?
著者名 川村俊夫/著 
出版社名 学習の友社
発行年月 2007年5月
価格(税込) 1,200円
ページ数/版型127P 21cm
 
◆集団的自衛権と日本国憲法
(集英社新書) 浅井 基文 (著)  735 円
http://books.shueisha.co.jp/CGI/search/syousai_put.cgi?isbn_cd=4-08-720128-7&jya_flg=3
著者:浅井 基文  
ISBNコード: 4-08-720128-7
判型/総ページ数: 新書判/256ページ
定価: 735円(税込)
発売年月日: 2002年2月15日
 
◆集団的自衛権とは何か 
岩波新書 豊下 楢彦著 819円
http://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/sin_kkn/kkn0707/sin_k362.html
新赤版 1081
体裁=新書判・並製・254頁
定価 819円(本体 780円 + 税5%)
■2007年7月20日
 
◆自衛隊
岩波新書 前田 哲男著 777円
http://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/sin_kkn/kkn0707/sin_k363.html
新赤版 1082
体裁=新書判・並製・238頁
定価 777円(本体 740円 + 税5%)
2007年7月20日
ISBN978-4-00-431082-2 C0231



最近のマスコミ報道(07/09/18) マスコミの世論調査 
日時:2007918
(2007/09/16-14:29 時事通信)
給油継続、賛成・容認が半数=反対は35%−時事世論調査
 時事通信社が16日まとめた世論調査結果によると、海上自衛隊のインド洋での給油活動の根拠法であるテロ対策特別措置法について「延長すべきだ」とする人は13.0%で、「延長はやむを得ない」36.1%と合わせた賛成・容認派が半数近くに達した。「延長に反対」は35.3%。安倍晋三首相がこだわった給油活動の継続に、一定の理解が進んでいると言えそうだ。
 賛成・容認派にその理由をたずねたところ、延長しなかった場合の「日米関係の悪化」を懸念する意見が36.8%で最も多く、「国際社会の要請だから」が35.7%だった。「海自の活動を支持している」とした人は4.8%にとどまった。
 一方、反対の理由は、海自の活動が「国連決議に基づくものではない」ことを指摘する人が27.8%、海自の派遣に「憲法上の疑義があるから」が26.1%、活動実態や費用などの「情報公開が不十分だから」が18.8%だった。

(07/09/15 中日新聞)
福田氏28%、麻生氏18% 次期首相で全国世論調査
◆「早期解散を」69%
 共同通信社は安倍晋三首相の退陣表明に伴い、十三、十四両日、全国緊急電話世論調査を実施した。「次の首相にふさわしい」人は福田康夫元官房長官が28・1%でトップとなり、二位の麻生太郎自民党幹事長の18・7%を引き離した。自民党内の派閥横断的な支持拡大で優位に立つ福田氏を世論も後押しする格好となった。
 テロ対策特別措置法によるインド洋での海上自衛隊の給油活動を「延長すべきだ」は47・9%で、「延長すべきではない」(42・5%)を上回った。前回(八月二十七、二十八両日)調査では「延長すべきではない」が多数で、逆転した。
 衆院解散・総選挙のタイミングに関しては「年内」が33・0%、「来年前半までに」36・0%で、計69・0%が早期衆院解散を求めている。これは前回調査に比べると10・3ポイント高くなった。「来年後半までに」12・9%、「再来年」11・2%だった。政権選択をめぐっては、前回に続き「自民党中心」(43・5%)が「民主党中心」(42・7%)を上回った。
 次期政権の最優先課題は「年金など社会保障」が44・5%でトップ。次いで「政治とカネ」(12・0%)、「格差問題」(9・6%)と、参院選での与党惨敗につながった要因が上位に並んだ。次期首相に望む資質(二つまで回答)も「国民への説明能力」(48・2%)や「リーダーシップ」(36・2%)、「政治倫理・清潔さ」(26・2%)の順で、安倍首相自身や政府、与党の対応への不満がにじんだ。
 首相の退陣表明に対する評価は「辞めて当然だ」(45・5%)と「辞めるべきではなかった」(46・6%)がほぼ拮抗(きっこう)。安倍内閣の一年間に対しては60・7%が「評価しない」と答えた。

(07/09/16 東京新聞)
年金『信頼せず』46% 全国世論調査 消費税上げ62%反対
 厚生年金、国民年金などの公的年金制度について「信頼している」「ある程度信頼している」と感じている人が合わせて53%であるのに対し、「信頼していない」「あまり信頼していない」人も46%に上ることが、本社加盟の日本世論調査会が九月八、九の両日に実施した面接による全国世論調査で分かった。
 信頼していないと答えた人のうち、最多の48%が「社会保険庁の記録管理などがあまりにもずさんだから」を理由に挙げており、一連の記録不備問題が不信感を招いていることが浮き彫りになった。二十代では68%、三十代では62%が信頼しておらず、若年層で不信感が強い。将来の年金記録漏れなどを防止するため政府が導入を打ち出した社会保障カードについては、導入に「賛成」が78%で、「反対」は16%。
 一方、年金、介護、医療などの社会保障の財源を確保するために消費税を引き上げるべきだとの考えに「反対」は62%、「賛成」35%だった。
 年金を信頼できない理由としては、記録管理のずさんさのほか「自分が支払う保険料に見合う給付が受けられないと思うから」が22%、「年金の財政は立ちゆかなくなるから」の14%が続いた。社保カードに賛成する人の55%は「自分の記録の確認が容易にできるようになるから」を理由に挙げた。反対理由のうち最多の55%は「管理の不備による個人情報の漏えいなどが心配だから」だった。
 国会で継続審議となっているサラリーマンの厚生年金と公務員らの共済年金を一元化する政府法案に賛成の人は17%、民主党が参院選の公約で掲げた国民年金も含むすべての公的年金を統合する案に賛成の人は29%。ただ「どちらともいえない」との回答も51%あった。
 消費税をめぐっては、女性は「反対」69%、「賛成」27%、男性は「反対」54%、「賛成」44%と、女性の反対が目立つ。
 【注】小数点一位を四捨五入した。
 ▽調査の方法=層化二段無作為抽出法により、1億人余の有権者の縮図となるように全国250地点から20歳以上の男女3000人を調査対象者に選び、8、9の両日、調査員がそれぞれ直接面接して答えてもらった。転居、旅行などで会えなかった人を除き1818人から回答を得た。回収率は60・6%で、回答者の内訳は男性48・1%、女性51・9%。


(2007年9月13日  読売新聞)
「安倍内閣1年」読売新聞社世論調査
実績「評価しない」70%
 読売新聞社は安倍首相が退陣表明する前の8、9の両日、「安倍内閣1年」に関する全国世論調査(面接方式)を実施した。この1年間の実績を「評価しない」という人は「あまり」と「全く」を合わせて70%に上った。「評価する」は、「大いに」と「多少は」を合わせて27%だった。70・3%と高い内閣支持率(政権発足直後の緊急電話調査)でスタートした安倍内閣だったが、年金や政治とカネの問題などがクローズアップされたことで、厳しい見方をする人が多かった。
 実績や対応で評価できるもの(複数回答)については、「年金問題への取り組み」(17%)「地球温暖化の防止など環境問題への取り組み」(14%)「北朝鮮問題への取り組み」(13%)――などの順だった。ただ、上位項目も1割台で、「とくにない」が47%と半数近くを占めた。
 一方、評価できないもの(同)は、「閣僚の失言などへの対応」が44%で最も多く、「年金問題への取り組み」(42%)「事務所費など『政治とカネ』の問題への対応」(41%)などが続いた。
 安倍首相の印象については、「明確な政治理念や目標」「国民に説明する能力」「指導力」の三つの面があるかどうかを聞いた。
 「国民に説明する能力」は、「あまり」「全く」を合わせた「ない」が77%だった。「非常に」と「多少は」を合わせた「ある」は21%だった。不祥事や失言による閣僚の辞任が相次いだが、こうした問題などでの首相の説明を不満と思っている人が多かったと見られる。
 「指導力」も「ない」計79%が「ある」計19%を大きく上回った。内閣発足1年後の時点で同様の調査を行った過去の首相と比べると、指導力が「ある」という印象を持った人は、宮沢首相(16%)より多かったが、中曽根、竹下、海部、小渕、小泉の各首相(30〜50%台)より低かった。
 ただ、「明確な政治理念や目標」は、「ある」と「ない」が、ともに49%で並んだ。「戦後レジームからの脱却」を掲げ、国民投票法の成立や教育基本法の改正を実現させた点を評価する人も多かったようだ。
民主、今後の役割「自民に対抗」57%
 民主党が今後、どのような役割を果たすことを期待するかを聞いたところ、自民党に対抗する「野党の役割を果たすこと」が57%で、自民党と連携して「政権に加わること」32%を上回った。民主支持層に限ってみると、「野党の役割を果たすこと」が61%だった。
 民主党が政権を担当する能力があると思うかどうかでは、「ある」は32%で、「ない」は55%だった。同じ質問をした2006年11月の調査と比べて、「ある」は1ポイント増え、「ない」が3ポイント減った。同じ質問は02年8月調査以降、6回行っているが、政権担当能力が「ある」と答えた人の割合は、今回が最も多かった。(世論調査部 塩見尚之)

首相にふさわしい人 麻生氏1位
 国会議員の中で、誰が首相に最もふさわしいと思うかを、与野党幹部などの中から挙げてもらったところ、1位は自民党の麻生幹事長=似顔=の15%。これに、小泉前首相、小沢・民主党代表が各12%で続いた。安倍首相は7%で4位だった。年代別で見ると、麻生幹事長は70歳以上で20%など比較的高齢者層での人気が高かった。小泉前首相は20歳代で17%なのに対し、年齢層が上がるほど挙げる人が減り、70歳以上では9%だった。

(2007年09月17日 朝日新聞)
次の首相、福田氏53%、麻生氏21% 本社世論調査
 自民党総裁選が始まったのを受けて、朝日新聞社は15日午後から16日にかけて全国緊急世論調査(電話)を実施した。次の首相に福田康夫元官房長官と麻生太郎幹事長のどちらがふさわしいかを聞くと、福田氏が53%で麻生氏の21%を大きく上回った。自民支持層では福田氏56%、麻生氏27%だった。次の首相のタイプでは「協調型」がよいという人が62%にのぼり、「決断型」は31%。福田氏を挙げた人では協調型が71%に達した。「決断型」の小泉前首相や後継の安倍首相とは異なるタイプのリーダーを求める世論が、福田氏を後押ししているようだ。 
 総裁選への関心が「ある」は69%。 
 次の首相に一番力を入れて取り組んでほしい政策(四つから選択)では「年金」が32%と最も多く、以下、「経済格差」30%、「財政再建」19%、「外交や安全保障」16%の順。「格差」を挙げた人では、福田氏57%対麻生氏17%と差がやや開くのに対し、「外交・安保」を選んだ人は46%対40%と接近しているのが特徴だ。 
 安倍政権の憲法改正への積極姿勢を次の首相も「受け継いでほしい」と考える人は45%、「そうは思わない」も45%と意見が割れた。福田氏を挙げた人は「受け継いでほしい」44%、「そうは思わない」49%だったのに対し、麻生氏を挙げた人は56%対39%だった。 
 小泉前首相から続いてきた経済成長や競争重視の改革路線については、「受け継いでほしい」が54%で、「そうは思わない」の36%を上回った。福田氏を挙げた人は53%対40%、麻生氏を挙げた人は63%対27%。総じて麻生氏のほうが安倍政権の継承色が強いと受け止められているようだ。 

(2007年9月16日(日)「しんぶん赤旗」)
総裁選 何を争う
テロ特措法・「構造改革」・政治とカネ
顔変えても路線同じ
自民党 共同会見
 「だいたい似たようなところ」「基本は同じ」―自民党総裁選に立候補した麻生太郎幹事長、福田康夫元官房長官が十五日に行った共同会見では、そんな言葉が何度も出てきました。
 次期総裁として、自民党内で雪崩を打つように福田氏に支持が集まった背景には、国民に見放された安倍首相と二人三脚だった麻生氏ではなく、安倍氏と距離を置いてきた福田氏を立てることで、路線転換のイメージを印象づけたいという思いが見てとれます。
 しかし、共同会見で語った今後の政治の基本方向は、二人ともまったく変わらないばかりか、安倍首相の基本路線とも、なんら変わらないものでした。
 テロ特措法への対応で、麻生氏が「テロとのたたかいに参加する義務と責任」だとして、新法を含めて考えるとのべたのに対し、福田氏も「国際社会に対する責任」だとして「法律延長に、ぜひ理解をえねばならない」と、ともに自衛隊の給油活動継続に固執しました。
 貧困と格差を拡大した「構造改革」については、そろって、「大きな財産」「大きな成果をあげた」と高く評価。「構造改革を継続しつつ、ひずみといわれる部分に手当てする」(麻生氏)、「諸問題には丁寧に対応して、改革の方向性は変わらない」(福田氏)といいつつ、打開の具体策はまったく示しませんでした。これでは安倍首相が辞意表明直前の所信表明演説で「改革を進める一方、改革の影の部分に光を当てる」といっていたのと変わりません。
 消費税増税についても、麻生氏が、年金財源などのために「十分検討すべき」というのに対し、福田氏も「行政経費節減で及ばないなら、消費税を含めた方法が当然、必要」と、安倍首相の方向と同じです。
 「政治とカネ」の問題で問われている、一円以上の領収書添付を義務づける政治資金規正法改正でも、否定的な姿勢は同じでした。
 両氏とも、安倍首相の突然の辞任が混乱を招いたことには謝罪しましたが、安倍退陣に追い込んだ自公政治ノーの国民の審判には、まったく反省がないことが見てとれます。
 アメリカいいなり、大企業中心という自民党政治の基本路線のなかでは、いかに総理・総裁の顔を変えても、とりえる政策の選択の幅は、いまやほとんどないことのあらわれでしょう。破たんした路線にしがみつくしかない自民党政治の行き詰まりが表れています。(西沢亨子)


最近のマスコミ報道(07/09/14) マスメディア時評 給油継続にこだわり続ける愚
日時:2007914
2007年9月14日(金)「しんぶん赤旗」
マスメディア時評
給油継続にこだわり続ける愚
 安倍首相の突然の辞意表明を受け、東京で発行されている翌十三日付の新聞各紙はそろって大型の社説をかかげ、事態の重大さを浮き彫りにしています。
 これらの社説が、参院選での審判に反して居座りを続け、代表質問直前になって辞意を表明した首相の態度を、そろって無責任と批判しているのは当然です。「朝日」社説が「辞任に追い込まれた真の理由は、七月の参院選で歴史的な惨敗を喫し、明確な『ノー』の民意をつきつけられたにもかかわらず、政権にとどまったことにある」と指摘し、「毎日」などとともに解散・総選挙を求め、「東京」が自民党に政権から下野するか解散・総選挙しかないと迫っているのも注目されます。
「国際公約」だと
 そうしたなかで見過ごせないのは、「読売」社説が「安定した政治体制を構築せよ」と、誰が後継の首相となっても「国際公約」を守って、インド洋での米艦などへの給油活動を継続するよう求め、「産経」主張(社説)も「国際公約果たす態勢を」と同じように給油活動の継続を求めていることです。
 いったい「読売」や「産経」は、「国際公約」なら、首相が辞任しても、従来どおりの政治を続けることが当然だというのでしょうか。確かに安倍首相は、「テロ対策」を口実にインド洋での米艦などへの給油を続けることをブッシュ米大統領などに約束し、そのために「職を賭す」とのべ、結局その実現が国民や野党の反対で困難と見ると、自らの辞任で打開を図ると称して辞任しました。それは「国際公約」どころかアメリカとの約束です。辞任はその実行が行き詰まった結果であり、文字通りアメリカ言いなり政治の破たんです。
 そうである以上、いまやるべきは安倍首相の行き詰まった政治を国民の立場で見直し、どう改めるかの議論を起こすことではないのか。それを何が何でも「国際公約」だから実行せよと迫る「読売」や「産経」の論調は、民主主義にふさわしい言論機関の態度とはとてもいえません。
 だいたい国際的に求められるテロ根絶の課題にとって、現にアフガニスタンなどでの戦争に参加している軍艦にインド洋で給油し続けることが事態をいよいよ悪化させるものになっていることは、アメリカが攻撃を開始して以来六年の現実を見れば明らかです。アフガニスタンでは、テロの実行犯や支援者を逮捕することもできず、テロがなくなるどころかテロ勢力が力を盛り返し、ますます泥沼に落ち込んでいます。
 ここでも求められるのは「戦争ではテロはなくせない」という原点に立ち返って戦争への支援をやめ、日本がやるべき平和的なテロ対策への貢献に踏み出すことです。それを「国際公約」だから給油活動を継続せよと繰り返すだけでは、それこそ思考停止のそしりを免れることはできません。
激動期を迎えて
 日本の政治はいま大きな激動期を迎えています。それだからこそマスメディアに求められるのは現実に深く切り込んで問題を明らかにするとともに、国民の立場に立って、どう進むべきかの方向を探求する情報と議論の場を提供することです。国民に真実を伝えず、権力の横暴も監視しないで、ただただ政府の政策を支持しもてはやすだけなら、そのメディアはもはやジャーナリズムとしての役割を果たしているといえません。(宮坂一男)

2007年9月14日(金)「しんぶん赤旗」
湾岸諸国・アジアで変化
米依存脱却を模索
英 国際戦略研究所の報告
 【ロンドン=岡崎衆史】英国の有力シンクタンク、国際戦略研究所(IISS)は十二日、年次報告「二〇〇七年版戦略概観」を発表しました。同報告は、イラク戦略の破たんで米国の国際的地位が失墜するなか、湾岸諸国やアジアで、米国にのみ頼らない外交関係や安全保障の仕組みづくりの模索が進むなど、世界政治に変化が起きていると分析しました。
 報告は、「イラク侵略以来米国の著しい権威の失墜の影響が世界で感じられている」と指摘。特に、湾岸諸国が「主要同盟国であり、安全の保証人である米国の明瞭(めいりょう)な弱体化とイランの台頭に直面」し、「将来の自衛策を講じている」と述べ、例として、サウジアラビアが中国とロシアとの関係強化に動いていることを挙げました。
 また、東アジア、東南アジアについて、米国との関係を重視しながらも、「新たな安全保障関係や地域メカニズムを追求しつつあり、それには、米国が含まれないものもある」と述べ、注目しました。
 報告は、米国のイラク戦略について「これまでのすべてが間違った仮定に基づいており、成功を勝ち得ないのはあまりにも明瞭となった」と述べ破たんを強調しました。
 アフガニスタンについても「成功するかどうかで悲観的な見方が広がっている」「自爆攻撃が急増し、武装勢力や過激主義が、これまで平和的だった地域に広がっている」として、情勢の悪化を指摘。また、民間人死者を増大させる米軍の作戦は「逆効果だ」と、欧州諸国は「遺憾に思ってきた」と述べ、同盟諸国の間でも、米軍の軍事作戦に反発が広がっていることを記しました。
 一方、戦略概観は、地球温暖化を「国家と集団安全保障の中心問題」として取り上げました。気候変動がもたらす問題として、資源減少や経済悪化、紛争激化、貧富の差拡大などを挙げ、温暖化防止のための対策を急ぐよう訴えました。

2007年9月14日(金)「しんぶん赤旗」
イラク増派“成果”は演出
米司令官証言 シーハンさんが批判

 【ワシントン=鎌塚由美】イラク戦争で息子が戦死して以来、反戦活動を続けてきたシンディ・シーハンさんは十二日、ワシントンで記者会見し、駐留米軍の現地司令官が米議会で行った証言は「ホワイトハウスの書いたものにすぎない」と述べ、「米国民はもうだまされない」と批判しました。
 「ANSWER(戦争停止と人種差別停止を今こそ)」など反戦団体は十五日にワシントンで大規模な反戦行動を予定。デモを前に反戦活動家が会見しました。
 シーハンさんは、「米議会は今こそ、ブッシュ政権に正面から立ち向かえ」と強調。マスコミが「ブッシュ大統領、ペトレアス司令官のプランを支持へ」などと報じていることに言及し、ブッシュ大統領が十三日予定のテレビ演説で、増派作戦の「成果」を主張するペトレアス報告に基づきイラク戦争継続を訴える流れは、あまりにも見え透いた演出だと指摘しました。
 また「宗派間暴力は低下している」などとの証言は、「増加」を指摘する政府監査院(GAO)の報告と矛盾していると指摘。「駐留米軍および米軍の雇い兵は今すぐ完全に引き揚げよ」と訴えました。
 「イラク反戦帰還兵の会」(IVAW)のアダム・コケッシュさんも、ペトレアス証言は「政治的策略・宣伝以外の何物でもない」と批判。「一部撤退」提案は、「そもそも帰還が予定されていた部隊にすぎず、撤退を迫られたものと演出しようとしているのであれば、ばかげている」と語りました。
 ホワイトハウスから米議会までを行進する十五日のデモでは、米議会で大規模なダイインが計画されています。

2007年9月12日(水)「しんぶん赤旗」
アフガンの6年
外交官「外歩けぬ」
戦争でテロなくせない
 二〇〇一年の9・11対米同時テロ事件への報復として始まったアフガニスタン「対テロ」戦争は、現地に大混乱をもたらし、テロを拡散させています。政府は、テロ特措法に代わる新法など、この米軍主導の戦争への支援を継続することを狙っていますが、米軍支援はテロ根絶とは無縁です。(坂口明)
■勢力一掃失敗
 「カブールの日本大使館員は、移動する場合は防弾車両を使い、公務以外は外出禁止です。外を歩くことは認められていません」―二年間のアフガン勤務を終えて帰国したばかりの元大使館員が七月に都内で開かれた会合で語ると、会場から驚きの声が上がりました。
 9・11テロの首謀者とされる国際テロ組織アルカイダをかくまってきたとして、武装勢力タリバンの政権が米軍の攻撃で打倒された後、国連も仲介してカルザイ政権がつくられました。その後さまざまな復興支援が実施されてきたのに、一番安全であるはずの首都の治安が、このありさまです。それは「対テロ」戦争が完全に破たんしているからです。
 同国では、アルカイダとタリバンを掃討する米軍主導の戦争が開始された後、新政権下の治安確保のため国際治安支援部隊(ISAF)が組織されました。ところが六年間戦争を続けても、アルカイダもタリバンも一掃されていません。
 アルカイダについて、米政府の情報機関を結集した国家情報会議(NIC)は七月、「アルカイダは米本土攻撃能力の主要要素を保持・再生し、地域的テロ集団との協力を強め、能力を向上させている」「アルカイダは依然として米本土にとって最も深刻な脅威となっている」とする報告書を提出しました。
 これは、9・11以降の対アルカイダ報復戦争が、米国の観点からみても「成果」を挙げられなかったと自認したに等しいものです。指導者のビンラディンやザワヒリは、つかまらないままです。
■復活タリバン
 一度は政権から追放されたタリバンも同国南部や東部を中心に復活を遂げ、テロを繰り広げています。八月に国連薬物犯罪事務所(UNODC)が発表した報告は、同国で急増するアヘン栽培が、タリバンなど反政府武装勢力の資金源になっていると警告しています。
 外国軍の誤爆で一般市民の犠牲が増えるもと、それへの怒りに乗じて、イラク型の自爆テロが増えています。一九七九年のソ連侵攻から三十年近く戦争の続く同国ですが、自爆テロはこれまで見られませんでした。それが〇六年には百三十回を超え、前年の六倍となりました。
 今年六月には、イラクで装甲車を破壊するために使われてきた成型さく裂爆弾(EFP)の使用が初めて確認されました。
■深刻さ認める
 「問題の深刻さと必要とされる時間を過小評価していた。貧困・雇用問題が未解決のまま、治安問題、麻薬、汚職で、これまでにない挑戦に直面している」―米国に支えられるカルザイ政権自身が、一月の支援国会議に提出した文書で、事態の深刻さを認めています。
 経済は破たん状態で、平均寿命は四十五歳と世界最低水準。戦争とテロの悪循環や干ばつで生活できないため、推定人口三千万人の国で、パキスタンとイランに逃れる難民は三百五十万人。推定十三万人が国内避難民となっています。
 国連事務総長が三月に発表したアフガン情勢に関する報告は、政府が不適切な人物を任命する、部族など支配的な社会・政治集団に属さない人々が無視されるなど「国民の疎外」が起き、それが「反政府勢力の再活性化の背景になっている」と指摘しています。
 アフガンの現実は、アフガン「対テロ」戦争がテロ根絶と無縁であることを、何よりも雄弁に証明しています。
日本共産党各国に書簡
「法の裁き」で解決を
 9・11事件が起きると、テロ問題には戦争でなく法的手段で対処せよとの声が世界中で起こりました。日本共産党は世界各国政府に対し二度にわたって書簡を送り、報復戦争に訴えれば事態の悪化しかもたらさないと訴えました。
 最初の書簡は、テロ根絶には軍事力による報復ではなく「法にもとづく裁き」が求められていると訴えました。第二の書簡は、テロ勢力とのたたかいを、一部の国による戦争拡大の道から、国際社会の責任による「裁き」の道に転換すべきだと提案しました。
 アフガンの混乱は、法的・警察的に対処すべきだったテロ問題に、軍事力で対処したために引き起こされました。いま国会で大問題になっているテロ特措法・新法問題では、こんな間違った戦争に日本が加担し続けるのかどうかが問われているのです。
■アフガン戦争関連年表
1979年
  12月 ソ連軍がアフガニスタンに侵攻し、カルマル政権樹立
1989年
  2月 アフガニスタンに駐留していたソ連軍が撤退完了
1998年
  9月 タリバンがほぼ全土を支配下におく
2001年
  9月11日 対米同時テロ
    16日 米国が自衛隊の後方支援活動を要請
    17日 日本共産党が各国政府首脳あてに書簡
  10月5日 テロ特措法案を提出
     7日 米軍がアフガニスタン空爆を開始
    11日 日本共産党が各国政府首脳あてに第2の書簡
    29日 テロ特措法成立
  11月9日 海上自衛隊の艦船3隻がインド洋に向け出航
  12月7日 タリバンが最後の拠点カンダハルを撤退し、政権崩壊
    22日 暫定行政機構が発足し、カルザイ議長が就任
2006年
   5月 タリバンが攻勢に出始め、アフガニスタン南部や東部で米軍などを攻撃
  11月1日 テロ特措法が3度目の延長

2007年9月12日(水)「しんぶん赤旗」
海自派兵新法
米軍支援、手段選ばず
 海上自衛隊によるインド洋での「対テロ報復戦争」支援を継続するために政府・与党が狙う新法案は、米国の要求に応えるためであれば手段を選ばぬ安倍・自公政権の異常さを示しています。(田中一郎)
■ 派兵の継続を狙う
 テロ特措法は、海自による米軍などへの給油活動の根拠法です。期限が定められた時限立法のため、二〇〇一年に成立して以来、法「改正」による延長を三回、繰り返してきました。
 十一月一日に四度目の期限切れを迎えるため、政府・与党は、再び法「改正」で期限を延長しようと模索していました。
 ところが、七月の参院選で与党が惨敗し、同法の延長に反対の野党が参院で過半数を占めたため、情勢は一変。野党が反対を貫けば、十一月一日までに「改正」案を成立させられない可能性が生まれたのです。
 期限切れになれば、「改正」するはずのテロ特措法そのものが失効し、「改正」案の国会審議も不可能になり、海自艦隊も撤退することになります。危機感を抱いた政府・与党が、こうした事態の回避のため狙っているのが、新法案です。
 新法案では、国会審議が継続できるため、参院で否決されても、憲法上の特別の規定により、与党が多数を占める衆院で三分の二以上の賛成で再議決すれば、成立させることができます。そうすれば、いったん撤退した海自に再び活動を継続させることができるというわけです。
 しかし、再議決は七月に示されたばかりの国民の意思=参院の反対を封じ込めるものです。
■ 文民統制から逸脱
 新法案では、現行のテロ特措法に定められている国会事後承認規定も外す方向で政府・与党は調整を進めています。
 承認規定を盛り込めば、新法案の成立にこぎつけても、参院で野党が反対すれば否決されてしまい、海自の活動を継続できなくなるからです。国会承認規定は、イラク特措法でも定められている規定です。それさえ投げ捨てるのは、政府が掲げる文民統制(シビリアンコントロール)からも逸脱するものです。
■ 背景に米国の要求
 政府・与党が、海自の派兵継続に固執する背景には、米国の強い圧力があります。
 米国は参院選後、ブッシュ米大統領をはじめ、政府高官が再三、派兵延長を求めてきました。
 保守系の米シンクタンク・ヘリテージ財団のホームページに掲載された論評は「(派兵延長は米国の)対テロ世界戦争の継続にとって死活的であり、日本の対米関係の試金石だとみなしている」と“脅し”めいた主張までしています。
 新法案の政府方針が一斉に報じられたのも、ブッシュ大統領から派兵継続を求められた首脳会談(八日)後のこと。安倍首相は直後の記者会見で「(派兵延長は)国際的な公約」と力説し、「職を賭して取り組む」と表明しました。

2007年9月12日(水)「しんぶん赤旗」
米艦補給 継続へ新法案
海自派兵に固執
政府が下旬提出 国会承認規定外す
 政府・与党は、テロ特措法の延長法案の提出に代えて、海上自衛隊による補給活動継続のための新法案を臨時国会に提出する方針を固めました。与謝野馨官房長官は十一日の記者会見で、衆参両院の予算委員会質疑が終わる九月下旬にも新法案を提出すべく準備をすすめていることを明らかにしました。
 新法案は、自衛隊の活動内容を給油と給水に限定し、テロ特措法で定める派兵命令後二十日以内の国会事後承認の規定を外す方向です。
 海上自衛隊の補給艦や護衛艦によるインド洋での米英軍などへの支援の根拠法となっているテロ特措法は、十一月一日に期限切れとなり、失効後は国会審議が続けられません。
 安倍晋三首相は豪州訪問中の九日、自衛隊の活動継続をブッシュ米大統領らに約束し、それを「国際的な公約」だとして「職を賭して」とりくむ姿勢を表明。これを受けて政府・与党は、参院で与野党の議席が逆転したもとで、期限切れ前の成立が困難となっているテロ特措法の延長法案に代えて新法案提出の方針に転換したものです。また、国会承認の規定を残せば、参院で承認を得られず、補給活動は中止に追い込まれかねません。このため、同規定を外し、国会の意思を無視しようというねらいがあります。
 十一日の閣議後の会見で閣僚らは、新法案から国会承認規定を排除することについて、「シビリアンコントロール(文民統制)上まったく問題はない」(高村正彦防衛相)、「法案の審議と賛否そのものが、事前、事後の承認を包括したものだ」(町村信孝外相)などと正当化しています。
 新法案提出の動きは、何がなんでも海自の米軍支援継続を図ろうという姿勢を示すものです。政府・与党は、新法案が参院で否決されても、衆院で三分の二の賛成による再議決を強行しようとねらっています。
 与党は、安倍首相がニューヨークで開かれる国連総会に出発する前の二十一日に新法案を閣議決定。十月第一週までに衆院審議入り、第二週には衆院通過―参院審議入りとのスケジュールを描いています。
 インド洋への自衛隊派兵の延長には日本共産党のほか民主、社民両党も反対しています。
「戦争支援」変わらず
解説
テロ特措法は、給油・給水以外に、修理・整備や医療などの活動も定めていますが、政府・与党は、新法案に盛り込む活動について、海自が継続している給油・給水に限定する方向です。それでも、「対テロ報復戦争」への軍事支援というテロ特措法の本質が変わるわけではありません。
 世論調査でも、海自の活動継続に対し、反対(39%)が賛成(29%)を上回っています(「読売」十一日付)。
 米軍主導の「対テロ報復戦争」は、テロ問題を解決するどころか、逆に国際テロリズムの温床を拡大してしまいました。新法案は、「戦争でテロはなくせない」という、この六年間が示した現実から目を背けるものでしかありません。(田中一郎)

2007年09月14日01時17分 朝日新聞
首相辞任「無責任」70% 本社緊急世論調査
 安倍首相の辞任表明を受け、朝日新聞社が13日におこなった全国緊急世論調査(電話)によると、臨時国会で所信表明をしたばかりの時期に辞任を明らかにしたことに対し、「無責任だ」と思う人が70%に達した。衆院の解散・総選挙の時期を巡っては「早く実施すべきだ」が50%で、「急ぐ必要はない」の43%を上回った。参院選直後の7月末の調査では39%対54%だったが、逆転した。参院選の自民大敗で生じた行き詰まりのなか、首相が政権を投げ出すという事態を受け、改めて民意を問うべきだとの世論が高まっているようだ。 
 安倍首相の辞任を「よかった」と受け止める人は51%と半数で、「そうは思わない」は29%。辞任表明に「驚いた」は67%だった。ほぼ1年間の安倍政権の実績について、「大いに評価する」が4%、「ある程度評価する」が33%に対し、「あまり評価しない」は45%、「まったく評価しない」は15%で、厳しい見方が多い。 
 首相は辞任の理由として、テロ対策特別措置法の期限が11月1日に切れるのを控え、民主が反対姿勢を崩さないなか、インド洋で自衛隊が給油などの活動を続けるため、「局面の打開が必要だと判断した」と説明した。この説明に「納得できる」は11%どまりで、「納得できない」が75%を占めた。自衛隊の活動継続そのものへの賛否では反対が45%と、賛成の35%を上回った。 
 次の首相には誰がよいと思うかを聞くと(自由回答)、麻生太郎自民党幹事長が14%、福田康夫元官房長官が13%と拮抗(きっこう)した。以下、小泉純一郎前首相が11%、小沢一郎民主党代表6%の順だった。 
 望ましい政権の形については、「民主中心」41%、「自民中心」33%で、参院選公示前からの民主優位の情勢が続いている。 
 政党支持率は自民30%、民主28%、公明3%、共産2%、社民1%だった。参院選直後から民主が自民を上回っていたが、自民が8月末の前回の25%から伸ばして逆転した。 


最近のマスコミ報道(07/09/13) 安倍退陣に対する各紙の社説・主張
日時:2007913
安倍首相辞任―あきれた政権放り出し 解散で政権選択を問え(朝日 9/13)
 
なんとも驚くべきタイミングで、安倍首相が辞任を表明した。文字通り、政権を投げ出したとしかいいようがない。前代未聞のことである。 
 内閣を改造し、政権第2幕に向けて国会で所信表明演説をし、国民に決意と覚悟を語ったばかりである。その演説に対する各党の代表質問を受ける当日に、舞台から降りてしまった。国の最高指導者として考えられない無責任さだ。 
 首相は記者会見で、辞任の理由として、11月1日に期限が切れるテロ特措法の延長が困難になったことをあげた。海上自衛隊によるインド洋での給油活動を継続することに「職を賭す」と発言していた。 
 ■路線の破綻は明白だ 
 そのために民主党の小沢代表に党首会談を申し入れたが、それを断られたため、「テロとの戦いを継続させるには、むしろ局面を転換しなければならない。私がいることがマイナスになっている」と、身を引くことを決めたという。 
 だが、それほど給油活動が大事だというなら、方法はほかにも考えられたろう。実際、政府・与党は新法による打開を画策していた。その成立に全力をあげるというなら分かるが、辞任することで道を開くという理屈は理解に苦しむ。 
 辞任に追い込まれた真の理由は、7月の参院選で歴史的な惨敗を喫し、明確な「ノー」の民意をつきつけられたにもかかわらず、政権にとどまったことにある。 
 内閣改造で出直そうとしたけれど、すぐに遠藤農水相らが辞任。他の閣僚たちにも政治資金にまつわる不祥事が次々と噴き出し、ついに政権の求心力を回復することができなかった。 
 新内閣で首相を側近として支えた与謝野官房長官は、辞任の理由として健康問題を指摘した。盟友の麻生太郎自民党幹事長も「迫力、覇気がなえ、しんどいのかなと思った」と述べた。 
 精神的に首相職の重圧に耐えられない状態になっていたのだろう。そう考えれば、今回の異常なタイミングでの辞任表明も分からなくはない。民意にさからう続投という判断そのものが誤りだった。 
 だが、つまずいたのは参院選後の政権運営だけではない。その前からすでに、基本的な安倍政治の路線は幾重にも破綻(はたん)をきたしていた。 
 小泉改革の継承をうたいながら、郵政造反議員を続々と復党させた。参院選で大敗すると「改革の影に光をあてる」と路線転換の構えを見せるしかなかった。 
 首相の一枚看板だった対北朝鮮の強硬路線も、米国が北朝鮮との対話路線にハンドルを切り、行き詰まった。従軍慰安婦についての首相発言は、米議会の謝罪要求決議を促す結果になった。せっかく中国と関係を修復しながら、「歴史」をめぐる首相の姿勢は米側の不信を呼び起こし、日米関係に影を落としていた。 
 そして、宿願だった憲法改正が有権者にほとんど見向きもされず、実現の見通しも立たなくなった。選挙後、「美しい国」「戦後レジームからの脱却」という安倍カラーが影をひそめざるを得なかったところに、安倍政治の破綻が象徴されていた。もはや、それを繕いきれなくなったということだろう。 
 戦後生まれの52歳で当選5回、閣僚経験は小泉内閣での官房長官のみ。この若さは武器にもなるけれど、日本という大国のリーダーとしては不安でもある。ベテラン議員を多く起用した改造内閣で、首相の姿がいかに小さく見えたことか。 
 1年前、安倍氏が自民党総裁につくにあたって、私たちは「不安いっぱいの船出」と題した社説を掲げ、安倍氏の経験や準備不足に懸念を表明した。その不安がはしなくも的中した。 
 ■自民党の衰弱あらわ 
 深刻なのは、そうした安倍氏を総裁に選び、首相の座につけた自民党の判断力の衰えである。 
 昨年の自民党総裁選には安倍氏を含め3人の候補者が立ったが、優位が予想された安倍氏に雪崩をうって党内の支持が集まった。ベテラン議員らも露骨な「勝ち馬に乗る」思惑からはせ参じた。 
 政治家としての本当の見識や経験、政策は二の次三の次で、選挙で勝てる「顔」にふさわしいかどうかだけで党首を選ぶ。そんな自民党の見識と活力のなさこそが、今回の突然の政権放り出しを招いた要因ではなかったか。 
 その意味で、安倍氏を重用することで後継者の位置に押し上げた小泉前首相の責任は重い。参院選後、安倍続投に動いて幹事長におさまった麻生氏も責任は免れまい。続投の流れに乗った有力者や連立与党の公明党もまたしかりだ。 
 首相は政治空白を最小限にとどめたいと語ったが、遅きに失した退陣表明で参院選後の1カ月半を空費してしまったのは首相自身だ。 
 政治空白が長引くのは困るが、どたばたで後継総裁、新首相を決めてしまうのでは、参院選の惨敗を踏まえた党の出直しにならないのではないか。きちんと候補者を立て、開かれた党内論議を徹底的に行うべきだ。 
 次の総裁、新首相は有権者の支持を得られなかった安倍首相の後継だ。新たな政権は自らを「選挙管理内閣」と位置づけ、可能な限り速やかに衆院を解散し、総選挙をする必要がある。 
 今回の政権放り出しは、民主党を第1党にした参院選がもたらした結果でもある。自民党政権がこれだけ混迷してしまった以上、総選挙で有権者にきちんと政権選択を問うべきだ。国民の信頼に基づく政治を取り戻すにはそれしかない。 

安倍首相辞任 国民不在の政権放り投げだ(毎日)

 早期に衆院を解散して民意を問え−−。次期首相にはあえてこう言いたい。今、混乱を収拾し国政に民意を反映させるためには解散が最も建設的な道だと考える。
 12日の安倍晋三首相の辞任表明は全く唐突であり、多くの国民が耳を疑ったに違いない。
 首相は海上自衛隊のインド洋での補給活動について「国際公約だ」と宣言し、活動継続について「職を賭す」とまで言い切った。
 補給活動の賛否は別にしても、首相は退路を断って、最後の力を振り絞るのだろうと感じた国民も少なくないはずだ。首相は国民に向かって所信表明演説も行った。それなのに、代表質問を直前にしての辞任表明だ。国会軽視もはなはだしい。これは政権の放り投げであり、全く無責任な態度としか言いようがない。こういう首相がわが国のトップリーダーであったことを恥ずかしく思う。
 政治の焦点は自民党総裁選に移るが、安倍政治に対する評価も含めて積極的な政策論争を展開してほしい。そして次期首相は早期に解散すべきだ。
 ◇政治空白を恐れるな
 それでは政治空白を生み、11月1日に期限がくる補給活動の根拠法であるテロ対策特別措置法などについて、十分な国会審議ができないという指摘も出てこよう。
 しかし首相が交代しても、補給活動について民主党の反対姿勢は変わらないだろう。ねじれ国会のマイナス面を少しでも解消するには、政権選択選挙である衆院選挙で、政権を自民党に任せるか民主党に任せるか、はっきり国民に聞いた方がすっきりする。
 いったんインド洋派遣が中断したとしても、衆院選でテロ対策全般について自民、民主両党が競い合い、国民がどちらかを選択する方が賢明なやり方である。
 また年金や格差是正、政治とカネなどについても、双方がマニフェストを充実させ、改めて国民に示したらいい。国民はそれを望んでいるはずだ。政治空白を恐れるべきではない。
 さて、辞めていく安倍首相のことである。自民党が参院選で惨敗した際に、この民意を受けて首相は辞めるべきだった。しかし参院選は政権選択選挙ではなく、改革路線は否定されていないと強弁し居座ってしまった。
 内閣改造でベテラン閣僚を起用し支持率はいったんは上がったが、すぐさま遠藤武彦前農相の辞任でその効果は帳消しになってしまった。改めて首相の任命責任は問われた。臨時国会ではテロ対策をはじめ「政治とカネ」の問題、格差是正、年金問題など重要な課題が山積していた。何より参院で与野党が逆転し、これまで経験したことがない歴史的な国会が始まったばかりである。
 突然の退陣表明は、首相がこだわった補給活動をはじめ国会審議に多大な影響を与え、国政が停滞することは必至だ。
 さらにシドニーで開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)に出席した際、ブッシュ米大統領やハワード豪首相に補給活動について直接約束したのはわずか4日前のことである。これでは国際的にも、日本の首相は信用できないということにならないか。
 首相は退陣の記者会見をしたが理由が納得できない。首相は「小沢一郎・民主党代表との会談を断られたのは残念だった」とした上で、補給活動の継続を挙げて「自らけじめをつけることによって局面を打開したい」と語った。
 小沢代表との党首会談が実現できないことは、辞任の理由にはなり得ない。民主党は補給活動について明確に反対の立場で、新首相になったからといって局面が簡単に変わるとは思えない。
 辞任の理由として「テロとの戦い」に言及したのは苦しい逃げ口上であり、政権運営での行き詰まりを感じ、責任を放棄したと見られても仕方がないだろう。
 与謝野馨官房長官は記者会見で退陣の理由について、首相の健康状態を挙げた。確かに最近の首相は元気がなく精彩を欠いていた。
 しかしそれが事実なら、首相の口から明らかにすべきであり、このままでは国民は何がなんだか分からない。
 自民党が安倍首相をリーダーに選んだ大きな理由は、若さを売り物にして、「選挙の顔」にしようとしたからだ。一方でリーダーとして、未熟ではないかという指摘もあった。
 ◇テロ対策は逃げ口上だ
 この1年間を振り返るとその懸念が的中したと言えるだろう。首相は総裁選で支援を受けた仲間で「お友達内閣」を作ってしまった。「政治とカネ」の問題を甘く見て、問題を起こした閣僚をかばう首相の姿は国民の政治不信を増すだけだった。
 年金記録漏れ問題に対する反応も鈍かった。首相は就任直後から「戦後レジームからの脱却」を前面に掲げて教育基本法の改正や国民投票法の成立を急いだ。しかしその政治姿勢は、生活テーマに期待を寄せた国民の気持ちと明らかに乖離(かいり)があったのだ。惨敗した参院選後もそのギャップを認めようとしなかった。
 国民生活を軽視し、政策の優先順位を間違えた安倍政治を許したのには、自民党にも大きな責任がある。
 小選挙区制と政党助成金の導入で公認権を持つ執行部の力が強まった。自民党の自浄作用がなくなった大きな要因だ。首相に強く続投を勧めた麻生太郎幹事長の責任も問われる。
 これで政権担当能力があるのかとさえ疑わせる事態を招いた責任は、安倍首相のみならず自民党にもある。もはや衆院の解散・総選挙で混乱を収拾するしかない。民主党に政権をいったん渡し、その選挙管理内閣のもとで解散をしてもいいほどの体たらくだ。

突然の首相退陣、政局混迷を憂慮する(日経 9/13) 

 安倍晋三首相が突然、退陣を表明した。臨時国会で所信表明演説を行い、代表質問に入る直前の退陣表明は極めて異様である。7月の参院選で惨敗しても続投を決断した首相は政権・国会運営の厳しさを十分に覚悟していたはずだが、首相の体力・気力はすでに限界に達していたのだろう。突然の退陣表明は無責任な政権投げ出しと言われても仕方ない。国会は当面、休会状態になり、インド洋における海上自衛隊の給油継続問題も宙に浮く形となった。政局の混迷を深く憂慮せざるをえない。
 無責任な政権投げ出し
 安倍首相は記者会見で退陣の理由について、海自の給油継続問題を打開するため小沢一郎民主党代表に党首会談を申し入れたが断られ、テロとの戦いを継続するには自分が辞めることによって局面打開を図った方がよいと判断した、と説明した。しかし、この説明に説得力はない。
 政府与党内では、テロ対策特措法の延長問題について海自の給油継続に絞った新法を国会に提出し、民主党の理解が得られない場合は参院で否決されても衆院の3分の2の多数で再議決する方向が有力になっていた。安倍首相に強い気持ちがあれば、こうした方法で一時中断はあっても国際公約である海自の給油継続は可能だったはずである。
 与謝野馨官房長官は首相退陣について「首相は仕事と健康の両立について深い苦悩の中にあった。(8月下旬の)アジア訪問から健康状態は大変厳しいものがあった」と語り、健康状態が退陣の一因であることを明らかにした。最近、安倍首相に会った人は首相に精彩がなく、健康状態がよくないのではないかとの印象を持つ人が多かったのは間違いない。健康状態の悪化ならやむをえないが、結果としては最悪のタイミングでの退陣となった。
 7月の参院選で惨敗して野党に参院の過半数を握られた安倍政権は苦境のさなかにあった。首相は苦境から脱出するため、8月末に内閣改造を断行し、内閣支持率も上昇に転じたが、直後に農相に起用した遠藤武彦氏の補助金不正受給問題が発覚して辞任に追い込まれ、出直しは不発に終わった。政権運営の行き詰まりと健康状態の悪化が重なった上での突然の辞任劇と言えよう。
 安倍首相の退陣表明を受けて自民党は総裁選挙を14日に告示し、19日に国会議員と都道府県連代表による投票で行う方向で調整に入った。国会開会中であり、政治の空白の長期化は好ましくない。早期に次期首相を選出する必要があり、国会議員中心の総裁選になるのはやむをえないが、次期首相をめざす人は税財政改革や年金改革などの政策ビジョンを明確に打ち出してほしい。
 首相の交代が混迷政局の局面打開になるかどうかは疑わしい。参院で野党が過半数を握っている状況は変わらないから、誰が次期首相になっても政権運営は困難を極めるだろう。小沢民主党代表は「自民党の交代劇でわれわれの考えが変わることはあり得ない」と述べ、インド洋における給油継続に反対する方針に変わりがないことを強調した。
 また、小沢代表は衆院解散・総選挙の時期について「できるだけ早期にというのは全く変わっていない」と語り、引き続き早期の解散・総選挙を求めていく姿勢を示した。次期政権がこうした野党の解散要求をいつまでもかわし続けるのはもはや困難だろう。
 早期解散視野に収拾を
 次期首相は政局収拾のために小沢民主党代表と率直に話し合うべきである。小沢氏も次期首相と話し合うことを否定しているわけではない。場合によっては衆院解散の時期と絡めて必要な法案は成立させるという妥協があってもいい。自民党も民主党も謙虚な姿勢で話し合い、政局の混迷を最小限にとどめるために全力を尽くすべきである。
 政局の混迷を根本的に打開する方法は早期に衆院を解散し、総選挙で示された民意に基づいて新しい安定した政治体制を構築することが望ましいとわたしたちは考える。日本経済は着実に回復軌道を歩んでいるが、政局の混迷の長期化は企業経営者や投資家、消費者の心理に悪い影響を及ぼしかねない。
 少子高齢化に直面する日本が引き続き経済成長を維持して国民生活を安定させるには、税財政改革や年金制度の安定化などの改革に全力を挙げて取り組まなければならない。政局の混迷を理由にこうした課題が先送りされるのは国民にとっても極めて不幸なことである。
 次期衆院選では与野党が税財政改革や年金改革から逃げることなく、堂々と国民の前で政策を競い合い、選挙後はその実行のためにどうすればよいかを真剣に考えてもらいたい。場合によっては政策実行のための大連立という選択肢もありうるのではないか。 

安倍首相退陣 安定した政治体制を構築せよ(9月13日付・読売社説)

 極めて異例、異常な突然の安倍首相の退陣表明だ。
 所信表明演説を終え、各党代表質問が始まる直前のことだった。「無責任」と言われても仕方ないタイミングである。
 後継の首相を選出し、改めて所信表明演説をしなければならない。それまでの間、政治空白が生じる。
 こんなことなら、参院選直後に、惨敗の責任を取って辞任すべきだったのではないか、という声が、与党内からでさえ出るのも無理はない。
 ◆不可解な突然の辞任
 自民党は直ちに14日告示の日程で総裁選実施の準備に入った。政治空白を最小限にとどめるために、早急に新政権を発足させなければならない。
 安倍政権発足後、1年にもならない。基本的には、参院で与野党が逆転し、参院第1党の民主党が主導権を握るという、衆参ねじれの新たな政治構造が生まれたからこその退陣劇だろう。
 安倍首相は、教育基本法改正や国民投票法成立、防衛庁の省昇格などの実績を上げたが、参院選惨敗で、憲法改正など「戦後レジームからの脱却」という安倍路線の後退を余儀なくされた。
 再スタートを期した改造内閣でも農相が辞任し、政治とカネの問題もくすぶるなど、混乱の火種を抱えていた。内閣支持率も低迷し、政権の求心力の回復もままならない。
 これでは、厳しい国会を乗り切り、政策を遂行していくのは、極めて困難だ。そうした判断が、政権の“投げ出し”にも等しい、唐突な退陣表明の背景にあったのだろう。
 それでも、辞任を決意した直接の理由は何だったのか。健康問題もあったというが、何とも分かりにくい。
 安倍首相自身は記者会見で、辞任の理由として、インド洋での海上自衛隊の他国艦船に対する給油活動の継続について、民主党の小沢代表が党首会談に応じなかったことを挙げた。
 「自分が首相でいることが障害となって党首会談が実現しない」以上、「新しい首相の下で局面転換を図るために、辞任を決意した」というのである。
 だが、給油活動の継続をめぐる本格論戦が始まろうとする入り口の段階で、党首会談が実現しないからといって、辞任するというのは説得力に欠ける。
 ◆果たすべき「国際公約」
 確かに、安倍首相は、先のブッシュ米大統領との会談後、記者会見で、「国際公約」と位置づけた海自の給油活動継続に「職を賭(と)して」取り組み、それが出来なければ「職にしがみつくことはない」と言明していた。
 しかし、小沢代表は、「自民党内の政権交代劇で、我々の意見が変わることはない」と明言している。安倍首相が退陣しても、給油活動継続に対する民主党の反対姿勢が、そう簡単に変わるものではあるまい。
 ただ、小沢代表は、今後、「新首相が話し合いたいと言うなら、いつでも応じる」としている。
 「テロとの戦い」である海自の給油活動継続は、与野党を超えた幅広い合意で決めることが望ましい。小沢代表も、「反対」に固執するのではなく、民主党の立場から、「局面の転換」を図る努力をしてもらいたい。
 仮に、そうした方向に進めば、安倍首相の辞任にも一定の意味があったと言えるかもしれない。
 民主党が給油活動継続にあくまで反対するのなら、テロ対策特別措置法に代わる新法で対処するしかあるまい。
 政局の動向に左右されることなく、政府・与党は、衆院での3分の2以上の賛成による再可決も視野に、新法案の準備を粛々と進めるべきだ。
 だれが新首相になるにせよ、後継政権にとっても、海自の給油活動継続の実現は、最大の課題だ。安倍首相が退陣したからといって「国際公約」でなくなるわけではない。
 首相が交代しても、政府・与党にとって、衆参ねじれという厳しい政治の現実には何の変化もない。
 ◆衆参ねじれの克服を
 次期衆院選に向け、小沢代表は、先の参院選で民主党の公約に掲げた政策の実現に全力を挙げると言う。それには、法案化し、与党が圧倒的多数を占める衆院でも可決しなければ成立しない。
 安倍後継政権としては、給油活動継続は無論、年金などの社会保障制度の改革、財政再建、消費税率引き上げ問題を含む税制改革など、国の存立や国民生活の基本にかかわる重要政策に取り組まなければならない。
 そのためには、政策の内容には当面、違いがあるとしても、与野党の利害を超えて衆参ねじれの状況を克服し、必要な政策の実現のために、大連立も視野に入れるべきではないか。

首相辞任表明 国際公約果たす態勢を (2007/09/13 産経新聞 )

 ■稚拙な政権運営をただせ
 衆院代表質問の直前という唐突なタイミングでの安倍晋三首相の辞任表明は、政策的行き詰まりと首相職の重圧に耐えかね、政権を放り出したと言える。極めて遺憾である。
 国民や与党にも「無責任極まりない」との声が強いが、政治空白を生じさせることは許されない。
 昨年9月の政権発足以来、首相が進めてきた新しい国づくりに向けた骨格作りは、教育基本法改正や防衛省昇格など、これまでの戦後の歴代政権が果たせなかった成果を生み出した。こうした基本的な方向は、次期政権も踏襲すべきだろう。
 首相はブッシュ米大統領ら各国の首脳に対し、インド洋での海上自衛隊による給油活動の継続方針を説明してきた。この国際公約を何としても果たせる態勢の構築が急務となる。
 インド洋での海上自衛隊による給油活動の継続は、テロとの戦いに参加する日本の国際的な地位と信用を維持する上で不可欠である。首相もその認識に立って、給油活動の継続に職を賭す覚悟を示したばかりだった。
 民主党の小沢一郎代表との党首会談が実現できず、給油継続に民主党の同意を得られないことを首相は辞任の理由に挙げた。
 ≪給油活動継続は不可欠≫
 しかし、政府・与党は新法案提出を検討し、仮に参院で否決されれば、衆院の3分の2の多数での再議決も想定して準備に入っていた。
 それを考えると、この時点での首相の辞任表明は不可解であり、政権維持への気力がうせたものと受け取らざるを得ない。
 安倍政権では閣僚の不祥事による辞任が相次ぎ、その対応をめぐる官邸の危機管理能力の欠如や首相の政治判断のミスが指摘されてきた。
 参院選大敗の直後には、党内の批判を浴びながらも続投を決意した。今になって辞任を表明するというのは、人事をめぐって繰り返された混乱の集大成のような話である。
 問題は、首相が給油活動の延長問題について、自らの辞任により「局面を変える」ことを期待した点である。
 職と引き換えに民主党に方針転換を求めたと言いたいところだろうが、小沢代表は首相の辞任表明が党の見解に影響を与えることはあり得ないと、早々と突き放した。
 首相がどこまで本気で党首会談を通じて小沢代表を説得しようとしていたのか、疑問は残るが、重要な外交・安保政策をめぐる政党間協議の道が、中途半端な形で閉ざされていいのか。
 ≪新体制は課題明確に≫
 自民党は次期総裁選びに向けた作業を開始し、今月下旬に新首相が選出されるはこびだ。
 緊急事態を受けた総裁選となるだけに、十分な準備をしていた総裁候補はおらず、日程的な制約から政策論争の時間もあまりとれそうにない。
 それでも、構造改革路線を後戻りさせないことや、給油活動の延長問題をどのように実現していくかという点について、明確な方針を導き出していかなければならない。
 とくに給油活動の延長問題では、新政権発足後、新法案の準備と並行して民主党との協議の具体化を図る周到な作業が求められる。国際公約実現のため、一定の時期には協議に見切りをつけ、衆院再議決を含めた法案処理を果断に進める判断も重要となる。
 国会攻防が始まらないうちに自滅した与党を前にしても、民主党が政府・与党攻撃の手を緩めることはなかろう。しかし、新首相との間で党首会談に応じ、給油活動の継続だけでなく、今後の国会運営について話し合う余地は残しておくべきである。
 自民党が参院選大敗のショックを今もひきずっているのは明白であり、そのなかで首相の辞任劇も生じた。
 安倍政権の中枢にいた麻生太郎幹事長や与謝野馨官房長官は、次期政権でも主要な地位を占める可能性が高いとみられる人物である。その両氏は、首相の辞意について事前にその兆候をつかんでいたことを説明している。
 国民の政治不信を増幅しかねない首相の行動を、止められなかったのだろうか。危機管理面の問題を残したともいえる。政権運営への不安を払拭(ふっしょく)することも急務である。

安倍首相、退陣へ 下野か衆院解散か、だ(東京 2007年9月13日)

 理由はなんであれ、無責任のそしりは免れまい。安倍晋三首相が唐突に退陣を表明した。参院選の歴史的惨敗にも続投させた自民と公明の政権与党の責任は重大だ。
 「職場放棄」「無責任極まりない幼稚な判断」と非難の声があがっている。確かに衝撃ではあっても、語るべき言葉をさがすのに苦労する。
 今週月曜日に召集されたこの国会の冒頭で首相は所信を述べた。「美しい国」「戦後レジーム(体制)脱却」の自前の用語を入れて、続投へのこだわりをみせたばかりだった。
 そして十二日、衆院本会議で各党代表質問が行われる直前、自民党幹部らに電話ではっきり辞意を伝えた。前代未聞のことだ。
 理屈の立たぬ退陣理由
 論点の多い国会である。十一月一日で効力の消えるテロ対策特別措置法をどうするか、政治とカネ、年金記録漏れの対応策、もう放置できない財政再建論議など、野党の質問者も論戦準備に余念がなかったと推測する。私たちも身構えていた。
 それが首相の辞意表明で国会の日程は急きょ白紙になった。誰もが納得する不測の事態があるならともかく、これまでのところ国会は“肩すかし”にあった印象が強い。首相には十分な説明責任が求められた。
 辞意の一報からほぼ一時間後、官邸の記者会見場にうつろな目で現れた首相は、みんなが理解に苦しむような退陣理由を繰り返した。
 終始こんな調子で。
 インド洋での海上自衛隊の給油活動を中断させずに継続する。これは大切な国際公約だ。だから民主党の小沢一郎代表に党首会談を申し入れたが断られた。したがって辞める。新たな首相のもとで局面を転換し、テロとの戦いを続けてほしい−。
 党首会談を拒んだと名指しされた小沢氏は、事実関係が違う、イエスともノーとも言う機会はなかった、と記者会見で不快感を示している。首相はこの反論にどう答えるか。
 政治空白を長引かすな
 先週末にシドニーで行われた日米首脳会談などで、ブッシュ大統領らに給油活動を継続することに全力を挙げると「国際公約」したのは、首相自身であった。
 続く同行記者団との懇談や記者会見で首相は「職を賭して取り組む」と大見えも切っている。与党も野党も、恐らく大多数の国民も、首相はなすべきことをして、それがかなわなければ退陣する覚悟なのだろう、と受け止めた。
 なのに小沢氏との党首会談ができそうにないからといって、政権を投げ出すのは理屈が立たない。その支離滅裂にはあきれるばかりだ。
 野党の反対で期限延長の難しいテロ対策特措法に代え、政府と与党は新たな法案の詰めを急いでいる。
 是非の議論はあるものの、参院で否決されたら、三分の二以上の勢力を与党が占める衆院で再可決する道も模索されている。首相の「国際公約」が、給油活動継続への賛成派にとっても、反対派へも、重い。
 ともにテロと戦う国際社会への貢献のあり方は、急ぎ結論を得ねばならない逆転国会の重大テーマだ。首相の退陣騒ぎが招いた政治空白を長引かせるわけにはいかない。
 自民は十四日告示、十九日投票の日程で後継を決める総裁選を行う方向だ。政治の最高責任者を欠いた国会はその間、機能停止を余儀なくされる。蚊帳の外の国民が待ちぼうけでは、日本はくしゃくしゃになる。
 後継総裁には麻生太郎幹事長らの名が取りざたされているという。麻生氏は惨敗参院選の結果にも、首相に続投を強く勧めた責任があろう。
 二年前の郵政総選挙で続々当選した自民の一年生グループには、前任首相・小泉純一郎氏の再登板を促す動きがあるのだという。
 忘れてはいけない。小泉氏は安倍氏を後継首相に事実上指名した責任者である。
 政府関係者によれば、最近の安倍首相には気力の衰えが目についたという。辞意表明をめぐって健康上の理由を口にする政府高官や党幹部もいる。たとえそれが本当でも、ほぼ一年前の就任から、首相は状況を読めないのではないか、と思えるような不手際を繰り返した。
 首相は、相次いで表面化した閣僚の不祥事に素早く手を打つこともなく、心機一転のはずの改造内閣でも補助金不正で農相が辞任、その後も鴨下一郎環境相らの政治とカネの問題が依然尾を引いている。
 資質すら疑問視された首相に諫言(かんげん)することもなく、続投させた自民の責任は極めて大きい。問われているのはまさに「政権担当能力」だ。後継選びに手間取って混乱するようならば、野党に政権を譲る。それが憲政の常道というものだろう。
 民心の離反を自覚せよ
 参院の第一党を民主党に奪われた自民党は、民心が甚だしく離反していることを自覚した方がいい。
 けじめが要る。このまま後継の総理総裁を選んでは、安倍氏同様、政権選択の審判を受けない自公政権が続いてしまう。潔く下野するか、衆院解散・総選挙で出直す。選択すべき道は二つに一つである。

安倍首相辞任  最後まで反省がなかった(2007年9月13日(木)「しんぶん赤旗」)
 
 安倍晋三首相が突然、辞任を表明しました。首相の所信表明演説に対する代表質問が始まる直前伝えられた辞意表明に、日本中が大きく揺り動かされました。
 もともとは参院選挙の大敗で、国民から辞任が求められていた首相です。首相は居座りを続けたあげく、辞任の会見でも、ブッシュ米大統領らに約束したインド洋での給油活動の継続が困難になったことをあげ、辞任を局面の打開につなげたいと語っただけです。追い詰められた辞任と引き換えに、国民が望まない政治を押し付けるとは言語道断です。首相には最後まで反省がありません。
政治的衰退の果てに
 それにしても、政権に居座って内閣を改造し、国会を開いて所信表明演説をおこない、さあこれから代表質問が始まるというその直前に辞任を表明するなどというのは、前代未聞です。安倍首相がどんなにいいわけしようとも、政権の一方的な投げ出しそのもので、国政を担当する首相として無責任のきわみです。
 安倍首相が参院選で大敗し、退陣を求められ続けてきたのは、首相が年金問題や「政治とカネ」の問題で国民の信を失っただけでなく、弱肉強食の「構造改革」や「戦後レジームからの脱却」を掲げた改憲の押し付けに、国民が「ノー」の審判を突きつけたためです。首相の辞任の根本には、自民・公明による政治の枠組みそのものの根本的破たんがあります。
 かつての自民党なら、国民からきびしい審判を受ければ、首相を交代させたり、多少なりとも路線の見直しをおこなって、政権の延命を図ったものです。それもおこなわず、ついには首相が政権を投げ出すというのは、文字通り政治的衰退のきわまった、自民党の末期症状の表れというほかありません。
 国民の審判に逆らって政権に居座り続けたあげく、今度は自分の思い通り行かないから政権を投げ出すとは、まったく手前勝手な論理で、通用するものではありません。辞任会見で首相が口にした、アメリカの戦争を支援するインド洋での給油活動の継続が国民の反対で困難になったから、辞任で局面を打開したいというのは、参院選での国民の審判に逆らうものではあっても、反省するものではありません。
 首相は所信表明演説で、国民の批判に開き直って、「構造改革」と「戦後レジームからの脱却」を続けるために、政権に居座り続けることを明らかにしました。演説に先立つブッシュ米大統領との会談ではインド洋での給油の継続を約束し、その後の記者会見ではそのためには「職を賭す」とまで発言してきました。
 国民の審判にたいしては一言も反省せず、対米公約にしばられて、その実行へ局面を打開するために辞任の道を選んだというなら、それこそ安倍首相は国民に責任を負わないことを認めたことになります。
政治を根本からただせ
 首相の辞任表明を受け、自民党は後継総裁が決まり次第、国会で新しい首相を選び、組閣をやり直す段取りです。しかし、安倍首相が辞任を拒否したあげく、これまでの政治の枠組みはそのままで政権をたらいまわしするというのでは、二重三重に国民の審判にそむくことです。
 弱肉強食の「構造改革」、「戦後レジームからの脱却」を掲げた改憲押し付けの自公政治そのものを根本から転換することが求められます。国民の声にこたえた新しい政治への探求が、いよいよ大切です。



安倍首相が辞意表明 記者会見全文掲載(毎日新聞)
日時:2007912
毎日新聞 2007年9月12日 14時33分 (最終更新時間9月12日 15時22分)
安倍首相辞任:緊急会見で話した内容の全文掲載
 安倍晋三首相は12日午後2時から首相官邸で緊急に記者会見し、辞意を表明した。安倍首相は会見の中で、民主党の小沢一郎代表に党首会談を断られたことが辞意を固めたきっかけのひとつであることを明らかにした。安倍首相が話した内容は、以下の通り。
 ◇ ◇ ◇
 本日、総理の職を辞するべきと決意をいたしました。
 7月の29日、参議院の選挙が、結果が出たわけですが、大変厳しい結果でございました。しかし厳しい結果を受けて、この改革を止めてはならない、また戦後レジームからの脱却、その方向性を変えてはならないとの決意で続投を決意をしたわけであります。今日まで全力で取り組んできたところであります。
 そしてまた先般、シドニーにおきまして、テロとの戦い、国際社会から期待されているこの活動を、そして高い評価をされているこの活動を中断することがあってはならない、なんとしても継続をしていかなければならないと、このように申しあげました。国際社会への貢献、これは私が申し上げている、主張する外交の中核でございます。この政策は何としてもやり遂げていく責任が私にはある、この思いの中で、私は、中断しないために全力を尽くしていく、職を賭していく、というお話をいたしました。そして、私は、職に決してしがみつくものでもない、と申し上げたわけであります。そしてそのためには、あらゆる努力をしなければいけない。環境づくりについても、努力をしなければいけない、一身を投げ打つ覚悟で、全力で努力すべきだと考えてまいりました。
 本日、小沢党首に党首会談を申し入れ、私の率直な思いと考えを伝えようと。残念ながら、党首会談については実質的に断られてしまったわけであります。先般、小沢代表は民意を受けていないと、このような批判もしたわけでございますが、大変残念でございました。今後、このテロとの戦いを継続させる上において、私はどうすべきか、むしろこれは局面を転換しなければならない。新たな総理のもとで、テロとの戦いを継続をしていく、それを目指すべきではないだろうか。きたる国連総会にも、新しい総理が行くことが、むしろ局面を変えていくためにはいいのではないか。
 また、改革を進めていく、その決意で続投し、そして内閣改造を行ったわけでございますが、今の状況でなかなか、国民の支持、信頼の上において力強く政策を前に進めていくことは困難な状況であると。ここは自らがけじめをつけることによって、局面を打開をしなければいけない。そう判断するに至ったわけでございます。
 先ほど、党の五役に対しまして私の考え、決意をお伝えをいたしました。そしてこのうえは、政治の空白を生まないように、なるべく早く次の総裁を決めてもらいたい、本日からその作業に入ってもらいたいと指示をいたしました。私としましても、私自身の決断が先に伸びることによってですね、今国会において、困難が大きくなると。その判断から、決断はなるべく早く行わなければならないと、そう判断したところでございます。
 私からは以上であります。

安倍首相辞任:国民の信頼得られなかった……一問一答全文
 安倍晋三首相が12日、首相官邸で行った記者会見の一問一答は以下の通り。
 −−参院選直後ではなく、なぜ今、辞任を決断したのか。
 参院選は厳しい結果でありました。そこで反省すべきはしながら、今進めている改革を止めてはならないと思い、私が進めている国づくりは止めてはならないと思い、所信を述べさせて頂きました。しかし、テロとの戦いを継続していくことは極めて重要なことであり、それは私の約束でもありますし、国際公約でもあります。それを果たしていくためには、むしろ私が職を辞することによって、局面を転換した方が、その方がむしろいいだろうと判断致しました。
 −−辞めることで、どのような自衛隊活動につながるのか。
 私がなんとしても改革を進めなくてはいけないとの思いで全力を尽くしてまいりましたが、残念ながら私が総理であることによって、野党党首との話し合いも難しい状況が生まれています。そして、党において、今の状況においては新しいエネルギーを生み出して、そのエネルギーで状況を打開し、新しいリーダーの下で状況を打開し、新法を新しいリーダーの下で推し進めていくことの方がいいのではないかと考えました。
 −−公約を途中で投げ出すのは無責任では。
 もちろん、私はそのために全力を尽くさなければいけないと考えておりました。しかし、むしろ公約を果たしていくうえで、どういう環境を作ることが必要かと考えたとき、私が職を辞することでその環境ができるのではないか。私が職に就いていることで、成立することにマイナスになると考えました。
 −−後継の総裁についてはどう考えているか。
 今日はまだ、そうした決断をしたばかりでございます。まだ、日程的なものを決めているわけではございませんが、なるべく早い段階で、後継の総裁を決めてもらいたいと思っています。後継の総裁については、私がとやかく申し上げることは適切ではないと思いますが、いずれにしても新しいリーダーとして与党を率いて、力強く政策を前に進めていっていただきたいと思います。
 −−総理の辞任で、戦後レジームからの脱却などの政策が停滞してしまうとは考えなかったのか。
 続投するに当たって、新しい国づくりを進めていかなければいけない。その中には、戦後の原点にさかのぼって見直しをしてという、戦後レジームからの脱却も果たしていかなければいけないという思いでございます。今まで、教育基本法の改正や、公務員制度の改革等々の、いわば戦後の出来上がった仕組みを変えていく、そういう挑戦をしてまいりましたし、成果も上げてきたと思います。しかし、現在の状況においては、新たな局面の打開を図って、新たなエネルギーで前に進めていかなければ、そうした政策の実践も難しいという状況であろうと判断しましたが、その方向で是非、進んでいってもらいたいと思います。
 −−辞任の理由についてテロとの戦いを第一に挙げたが、総理の職責は外交面ではなく、国民生活を背負っている面がある。そういう状況で、月曜日(10日)に続投を決意する所信表明をして、各党の質問を受ける直前に総理の職を辞するのは、国民から見ると逃げていると思われても仕方ないのでは。どのように責任をお考えか。
 総理の職責は大変、重たいものがあると考えています。そして私も所信において思うところを述べたこところであります。しかし、述べたことを実行していく責任が私にはあるわけではございますが、なかなか困難な状況です。この中において、それを果たしていくことが出来ないのであれば、それは政治的な困難を最小限にする、という観点からなるべく早く判断すべきだという決断に至りました。
 −−政策を前に進めにくい状況は参院選で大敗した後も変わっていないと思うが、なぜ所信表明後に辞意を表明する決断をしたのか最大の理由と、最終的に決断したタイミングはいつか。
 総理としては常に職責を果たしていかなければいけないということは、常に考えているわけでございます。そして私が、ここは職を辞することによって、局面を変えていかなければいけないと判断いたしましたのはですね、今日、残念ながら党首会談も実現もしないという状況の中で、私の約束をしたことが出来ない、むしろ、私が残ることが障害になっていると、こう判断したからです。
 −−政策を実行するのに非常に困難な状況になったというが、困難な状況に陥ってしまった原因などについて、どう分析しているか。そこに至らしめた自らの責任について、反省点など伺いたい。
 もちろん、反省点は多々ございます。前の内閣、また新しい内閣においてですね、安倍内閣として国民の信頼を得ることが出来なかった。これは私の責任であろうと思います。それを原動力に政策を前に進めていくということが残念ながら出来なかったということです。
 −−党首会談を理由に挙げたが、今後国会の流れの中で、党首会談が出来るという見通しはなかったのか。また、党首が代われば党首会談が出来るという見通しなのか。
 私が民意を受けていないということが理由の一つとして挙がっているわけでございます。この選挙結果は、やはり大きなものがございます。もちろん、そのうえに立って決意をしたわけでございますが、新しい自民党のリーダーとの間においてですね、率直な党首同士の話し合いがなされると、私はそのように期待しています。
 −−総理の強調するテロとの戦いを継続するためには衆議院の再議決をもってすれば党首会談がなくても突破できたという見立てが我々の間では主流だと思うが、それでも党首会談が出来ないとなると、多くの支持があって総理になったのに、説明としては不十分ではないか。本当の心境、あるいは何がこの決断に至ったのかを、総理として最後にぜひ、伺いたい。
 私は、いわばこのテロとの戦いにおいては、中断されてはならないと考えて、先般シドニーで職を賭すという話をしたわけでございます。新法で継続を図っていくという考え方もあるわけでございますが、日程的な関係で、新法ですと、一時的に中断という可能性は高いわけでございまして、そうであるならば、事実上そういう状況が出てくるわけでございまして、そう判断せざるを得ないと考えました。そこで、その時に判断するよりも、むしろ今、判断した方が、党が新たにスタートするうえにおいては、むしろその方がいいだろうと。国民のみなさまに対しましてもですね、混乱を招かないうえにおいては、なるべく早い判断の方が良かったと、決断がいいだろうというふうに判断いたしました。

毎日新聞 2007年9月12日 14時22分
安倍首相:辞任の意向表明 「局面を転換」理由に
 安倍晋三首相は12日午後2時から首相官邸で緊急に記者会見し、「本日、総理の職を辞するべきと決意した。局面を転換して、新たな首相のもとでテロとの戦いの継続を目指すべきだ」と述べ、辞任の意向を表明した。首相は参院選惨敗後、内閣改造による政権立て直しを図っていたが、臨時国会でテロ対策特措法の延長問題の展望が開けないうえ、「政治とカネ」の問題をめぐり激しい攻勢にさらされることが確実なことなどから、政権の維持は困難と判断したとみられる。政権が昨年9月に発足して以来1年をたたずに辞任に追い込まれたことで、後継総裁問題は混迷が予想される。
 安倍首相は記者会見で、辞任を決意した理由について「(参院選後も)改革を進めていくとの決意で続投し、内閣改造を行ったが、今の状況ではなかなか国民に支持、信頼され、力強く政策を前に進めていくことはできない。ここは自らがけじめをつけることで局面を打開しなければならないと判断した」と説明。
 また「私がいることによって、残念ながらマイナスになっている。私が首相であることで野党党首との会談もできない状況が生まれている」と語った。さらに「なるべく早く、本日から次の自民党総裁を決めて欲しい」と述べた。


安倍首相辞意:与野党とも「全く無責任」と強い批判
 安倍晋三首相が与党幹部に辞任の意向を伝えた。所信表明演説を終え、代表質問直前の辞意表明であり、与野党ともに「全く無責任だ」との強い批判が上がっている。
 野党側からは「この段階で辞めるのは無責任だ。辞めるのならもっと早く辞めるべきだ」(鳩山由紀夫民主党幹事長)、「放り出すのは無責任だ。参院選直後にやめるべきだ」(福島瑞穂・社民党党首)の声が出ている。
 また自民党の閣僚経験者は「続投自体に問題があった。政権は完全に行き詰まってしまい、政権を投げ出したとしかいいようがない」と語った。
 また中堅議員は「ポスト安倍で混乱するだろう。国政への影響ははかりしれない。国家の危機的な状況だ」と首相を批判している。
 自民党は今後「ポスト安倍」選びで混乱することも予想される。
 このためインド洋での海上自衛隊の活動の根拠になるテロ特別対策措置法や新法などの審議について大きな影響が出ることは必至だ。
 首相は7月29日の参院選で惨敗したのにかかわらず、続投を表明した。続投に関しては与党内からも批判も浴びたが、参院選は政権選択選挙ではなく、安倍政治そのものが否定されたわけではないという理由で退陣論を突っぱねた。
 安倍首相は内閣改造では派閥の長を中心にしたベテラン閣僚を起用し、求心力の回復を図った。いったんは支持率が回復したが遠藤武彦前農相の辞任で首相の任命責任が問われ批判を浴びていた。この時点で首相の命運は尽きていたという指摘もある。


安倍首相辞意:不祥事続いたお友だち内閣
 安倍首相は06年9月20日、自民党総裁選で麻生太郎幹事長と谷垣禎一元財務相を破って第21代総裁に就任した。第1次安倍内閣は同26日に発足したが、親しい仲間を多く集めたことから「お友だち内閣」などとも呼ばれた。
 安倍内閣は、相次ぐ閣僚の不祥事に悩まされた。同12月に、佐田玄一郎行政改革担当相(当時)政治資金問題で辞任。今年1月に故松岡利勝農相(当時)の事務所費問題が浮上し、5月に松岡氏が自殺した。7月には久間章生防衛相(当時)が、原爆投下について「しょうがない」と発言し辞任に追い込まれた。さらに、参院選直前の同月、赤城徳彦農相(当時)が事務所費問題が浮上したことなどから自民党は歴史的な大敗。8月になって赤城氏を更迭した。
 第2次安倍内閣では、閣僚などの相次ぐ政治資金の問題が発覚し、混乱を極めていた。
 赤城元農相の度重なる事務所費問題など閣僚の不祥事で傷ついた安倍内閣は、「身体検査」を終了したはずの参院選後も、やはり政治とカネの問題にまみれた。
 今月1日に遠藤武彦前農相が組合長を務める農業共済組合が、99年に国の補助金115万円を不正受給していた事実が発覚し、出鼻をくじかれたほか、額賀福志郎財務相や玉沢徳一郎元農相などの事務所や政治資金を巡る不祥事も相次いだ。


安倍首相辞意:衝撃の一報…列島中に驚きの声広がる
 「本日総理の職を辞するべきと決意致しました」。海上自衛隊の給油活動継続を「職を賭して」と表明してから、わずか3日。安倍晋三首相は12日、緊急会見で辞意を表明した。「本会議の時間が決まらない」と朝から国会内がざわつく中で、突然飛び込んできた衝撃の一報。参院選の惨敗、相次ぐ閣僚らの辞任……。内閣支持率が低迷し続け、退陣を求める声も強まる中、何が引き金となったのか。唐突な「決断」に、列島中に驚きの声が広がった。
 国会では本会議で代表質問が行われる場合、開会時間など日程は早めに決まる。だが、この日は違った。衆院議員の間では、開会の時間がなかなか決まらないことをいぶかる声が高まっていた。
 「おい、まだ(開会の)予鈴は鳴らないかな」
 12日正午過ぎ、スーツを着込み、議員会館の自室で本会議出席に備えていたある議員は秘書に呼びかけた。
 「1時の開会は無理だと議運は言ってるそうです」
 「何だろうな」
 議員が首をかしげた瞬間、テレビのテロップに「安倍首相、辞意を伝える」の速報が流れた。議員は食い入るように画面を見つめ、早速情報収集のため、あちこちに電話をかけ始めた。
 ◇東京・霞ケ関にも衝撃
 東京・霞ケ関でも衝撃が走った。厚生労働省幹部は午後1時前にテレビに流れた「安倍首相辞意」のテロップに「えっ」と絶句した。その後「内閣総辞職となれば、また、大臣が変わるのか。やっと、年金などの課題がスムーズに動きだしているところなのに……。とにかく情報が本当かどうか知りたい」と話した。
 国交省幹部も「内閣改造したばかりなのに、また変わるのか」とつぶやいた。幹部らは「なぜ辞任するのか」などと慌しく情報収集に走った。
 農水省幹部はテレビの速報で知り、「えっ本当にそうなのか。所信表明をしたばかりなのに。農水の一連の不祥事が直接の原因とは思わないが、異例のことだ」と半信半疑の表情を見せた。
 テロ特措法の国会論戦を控える防衛省・自衛隊では、14日から全国各地でインド洋の自衛隊の補給活動をアピールする一般向けセミナーも予定されており、唐突な辞意表明に驚きと困惑の声が漏れた。
 同省では、ある自衛隊幹部は「安倍さんほど自衛隊の現場を訪ね、士気を気遣ってくれた総理はいなかった。本当だとしたら誠に残念だ」とやるせない表情。別の同省幹部は「小池(前防衛相)さんが内閣に留まらないと言い出した時も驚いたが、まさか安倍さんまでとは。もう政治家は信じられなくなりそうだ」と情報収集に追われていた。
 自民党東京都連の幹部は、テレビのニュース速報で安倍首相辞任の一報を聞き、「びっくりしている。大変残念だ。新しい歴史を作れなかったのは残念だ。応援した以上は頑張ってほしいという期待しかなかった」と話した。東京都千代田区の衆院第1議員会館にある安倍首相の事務所では、首相が与党幹部に辞意を漏らしたというテレビのニュース速報について「分かりません。情報源に確認して下さい」と短く答えるにとどまった。
 「辞める人に代表質問ができる訳がない。どうするのか」。衆院本会議の代表質問を控え、衆議院内の民主党国対役員室で同僚議員と打ち合わせをしていた山井和則衆院議員は「前代未聞だ」と驚きの声を上げた。ニュースが流れた瞬間、部屋は議員のどよめきの声に包まれたという。「(直後に控えた)鳩山さん(由起夫・同党幹事長)らの質問に答えられないと思ったのか。こんなことは国会史上ない」と戸惑いを隠せなかった。
 ◇居座りは無理
 ▽政治評論家・森田実氏の話 来るべきものが来ただけで当然と受け止めている。参院選で国民から事実上の不信任を突きつけられ、国民が信任しない政権が「衆院じゃないから」という理屈で居座るのはもともと無理だった。どんな独裁政権でも国民の信任が得られないと長持ちしない。衆院解散のエネルギーは首相自身にも政権にも残っていないことが、首相の最近の表情から読み取れた。臨時国会前から既に安倍首相には辞めるという選択肢しか残っておらず、後は時期の問題だと考えていたので全く驚きはない。
 ◇遅すぎるぐらい
 ▽評論家、室伏哲郎さんの話 辞任は当然だ。むしろ遅すぎるくらいだ。7月の参院選で、安倍晋三首相は「私と民主党の小沢一郎代表のどちらを首相に選ぶのか」と国民に迫った。国民は選挙結果を通じてその意思を示したのに、首相は前言を翻し、何もなかったかのように居座り続けた。安倍政権は実質的に何もしていない。零点だ。後継に選んだ小泉純一郎前首相の責任も大きい。
 ◇逆風が多すぎた
 ▽漫画家、弘兼憲史さんの話 国会の期間中で本当にびっくりした。自民党が崩壊する、あるいは次の選挙で勝てないと自ら考えたのか、自民党の長老から説得されたのか。いずれにしろ断腸の思いで決断したのだろう。この1年間で、防衛庁を省へ昇格させたり、憲法改正への道筋をつけたことは評価したい。ただ、消えた年金の問題や政治とカネなど、あまりにも自分と関係のないところで逆風が吹いた。ご苦労様と言いたい。
 ◇根拠なかった続投
 ▽評論家の樋口恵子さんの話 辞意表明は遅きに失した。安倍さんは参院選で自民党が大敗しても、「基本的な政策は支持されている」と言っていたが、何の根拠もなかった。よくぞここまで居座ったという感じだ。安倍さんは、国民が何を望んでいるのかが理解できなかったのが致命的だ。国民が腹をすかせているのに、それを理解せず、国を愛すことを強いた。次の首相には聞き上手な人がなるべきだ。
毎日新聞 2007年9月12日 13時17分 (最終更新時間 9月12日 14時11分)



最近のマスコミ報道(07/09/11) 首相の所信表明演説にたいする各紙社説・主張
日時:2007911
(07/09/11 朝日新聞)
首相の決意―理解に苦しむ論理だ
 安倍首相はなぜ政権にとどまるのか。その正当性は何か。参院選後、初の本格的な論戦の舞台である臨時国会で、首相がまず語るべきはそこにあったはずだ。 
 国会冒頭の所信表明演説で、首相はこう訴えた。 
 「改革を止めてはならない」との一心で私は続投を決意した。だが、改革にはどうしても痛みが伴う。改革の影に光を当て、優しさとぬくもりを感じられる政策に全力で取り組んでいく―― 
 迫力にも具体性にも乏しい印象だったが、とにもかくにも「改革継続」が続投を正当化する首相なりの論理であるということだろう。 
 ところが、首相は前日まで訪問していた豪州から、まったく違うメッセージを国民に送ってきた。 
 9・11テロ後のアフガニスタン攻撃に絡んで、日本はインド洋に海上自衛隊を送り、米国などの艦艇に給油してきた。そのためのテロ対策特別措置法が11月1日で期限切れとなる。首相は活動の継続について次のように語ったのだ。 
 「国際公約となった以上、職を賭して取り組む」「あらゆる力を振り絞って職責を果たしていく」「(継続できなければ)職責にしがみつくことはない」 
 給油活動を継続できなければ退陣する、という趣旨と受け止めて当然だろう。重要な政策課題をめぐって首相が決意を述べるのは珍しくないが、いきなり退陣に言及するとはただならない。政権の死活を賭けた最重要課題ということのようだ。 
 では、国会で語った「改革継続」への覚悟とはいったい何なのか。改革の影に光をあてる政策はどうするつもりなのか。そのために続投するのだと国民の理解を求めておきながら、それとは違う問題で「職を賭す」というのでは、まったく一貫性がない。 
 給油活動の継続を「国際公約」と位置づけたのも納得できない。 
 テロ特措法の期限が切れる11月1日までの活動は、国会の多数が賛成したことであり、日本の国際公約と言えなくもない。だが、首相自身がブッシュ米大統領らに「継続に最大限努力する」と誓ったからといって、それを「国際公約だ」と言いつのるのは手前勝手というものだ。 
 テロとの戦いに日本としてどうかかわっていくか。これは国民の合意のもとで考えることであり、自分の国際公約を押しつけるようなものではない。首相は思い違いをしているのではないか。 
 それに、なぜ国会の演説ではそれを語らなかったのか。テロ特措法の問題は、最後の方でおざなりに触れられているにすぎない。 
 不退転の決意を示したかったのだろうが、その支えが「退陣」であるかのような発言は理解に苦しむ。続投を批判し、テロ特措法の延長に反対する野党は、もとより退陣に異存はなかろう。首相の決意と覚悟は混乱している。 

(2007年9月11日  読売新聞)
所信表明演説 海自の活動継続は国際責任だ
 衆参ねじれ国会の下、インド洋で国際テロの海上阻止行動にあたっている他国艦船に対する海上自衛隊の給油活動の継続実現が、安倍首相にとって政権の命運を賭けた課題になった。
 首相は、シドニーでの記者会見で、海自活動の継続について、「国際的公約だ」と明言した。これに「職を賭(と)して」取り組み、果たせなかった場合は、「職責にしがみつくことはない」と言う。
 内閣総辞職もあり得るという姿勢を示すことで、何としても活動を継続させる決意を示したものだ。
 首相は、10日の所信表明演説で、「世界の平和と安定なくして、日本の安全と繁栄はない」と述べた。通商国家である日本として当然である。日本の国益の観点からも、国際テロとの戦いの継続という「国際社会における責任」を放棄することはできない。
 首相は、「政策実行内閣」として、「野党と建設的な議論を深め、一つ一つ丁寧に答えを出していくことに最善を尽くす」と強調した。それには、参院第1党の民主党の協力がいる。
 首相はすでに、海自の給油活動継続のため、反対姿勢を強めている民主党の小沢代表に対し、党首会談を早期に開催するよう提唱している。
 小沢代表は、今日と同じような1990年の衆参ねじれ現象の国会の下、自民党幹事長として、政府間で合意した“対外公約”を「『国会で野党の反対にあってできませんでした』では、国際社会で通用しない」と発言している。
 2国間どころか、40か国以上も参加する「テロとの戦い」の支援という国際公約ともなればなおさらだ。
 小沢代表は、党首会談の呼びかけに応じ、国際平和協力活動のあり方について話し合ってはどうか。民主党はアフガニスタンに対する人道復興支援などを主張しているが、その具体策についても説明してもらいたい。
 政府は、民主党の主張も聞きながら新法案を提出する準備を進めている。
 テロ対策特別措置法が11月1日で切れると、海自は、いったん、活動の停止を余儀なくされるが、新法案が成立すれば給油活動は再開できる。活動継続のためには、会期を延長し、衆院で新法案を再可決すればよい。
 与謝野官房長官も記者会見で、衆院の3分の2以上の賛成による再可決に関する憲法の規定について、「大げさに考える必要はない。普通のこととして使ってよろしい」と述べている。
 官房長官の言う通り、憲法の規定に従い粛々と新法案の成立を図るべきだ。

(2007年9月11日 毎日新聞)
安倍首相 退陣含みの国会が始まった
 激動の臨時国会が10日始まった。安倍晋三首相は衆参両院での所信表明演説に先立ち、今国会最大の焦点となるテロ対策特別措置法の延長について、インド洋での海上自衛隊の給油活動が継続できないのなら退陣する意向を表明した。国会審議前に自ら進退に言及するのは異例のことだ。それだけ首相が手詰まり状況にあることを示していよう。
 「職責にしがみつくということはない」。9日の首相発言に対し、自民党内にも「戦略なき暴走だ」と当惑する声がある。実際、退路を断つというより、自らを窮地に追い込んでしまったのではなかろうか。首相が退陣に言及することは最大の武器である衆院解散権を手放すようなものだからだ。
 裏返せば、そこまで首相は追い込まれているということだ。参院選で大敗しながら続投を決定。内閣改造で持ち直した支持率も、遠藤武彦前農相の辞任で効果は帳消しとなった。自民、公明両党内では早期の解散・総選挙には反対する意見が大勢で、確かに首相が解散をしたくても容易ではないのが現状である。
 首相の苦しさは10日の所信表明演説でもうかがえた。首相は「退陣すべきだとの意見も十分承知している」と語り、「深い反省」を強調した。しかし、「戦後レジームからの脱却がどうしても必要で、改革を止めてはならないとの一心で続投を決意した」との言葉に違和感を持った人は少なくないだろう。参院選大敗は、首相の「戦後レジームからの脱却」路線が有権者の支持を集められなかったことを意味し、続投の理由として説得力に乏しいからだ。
 「美しい国」「憲法改正」といった安倍カラーも後退した。選挙での審判を受け路線を転換するのは一向に差し支えないと考える。だが、それに代わる新しい「旗」は何か、演説からは伝わらなかった。これでは「安倍首相でなくても構わない」と与党内の首相交代論を加速させることになろう。
 テロ特措法に関しても、首相の今回の発言に民主党が「宣戦布告だ」と反発しているように、民主党はますます妥協はできなくなったのではないか。テロ特措法の期限切れを想定し、政府・与党で検討している新法も柱は海自の給油活動だ。給油活動を休止し、アフガニスタンでの人道支援をという民主党との隔たりは大きく、歩み寄りは難しいと思われる。
 もちろん、民主党の責任が重くなったのも事実だ。民主党はテロ特措法になぜ反対するのか。小沢一郎代表が考える日米関係、国連への協力とはどんなものなのか。民主党は首相と小沢氏との国会での党首討論を申し入れるというが、12日から始まる各党代表質問は、それを説明する絶好の機会だ。やはり、代表質問から小沢氏が登壇すべきではないだろうか。
 今国会のテーマはテロ特措法だけではない。首相退陣の可能性をはらむ緊迫した状況下で、政治とカネ、年金など与野党の論戦が続くことになる。論戦の中身を従来に増して注視していきたい。

(07/09/11 日経新聞)
社説1 退路を断って臨時国会に臨んだ安倍首相(9/11) 
 テロ対策特別措置法の延長問題が最大の焦点となる第168臨時国会が召集された。安倍晋三首相は9日のシドニー市内での記者会見で「野党の理解を得るため、職を賭して取り組んでいく。職責にしがみつくことはない」と述べ、インド洋での給油活動が継続できなければ、内閣総辞職する意向を示唆した。首相自ら退路を断ったもので、政権の命運がかかる緊迫した展開となる。
 今国会は衆参両院の多数派がねじれた状態で、初の本格的な論戦の場となる。首相は10日の所信表明演説で自衛隊の給油活動について「ここで撤退し、国際社会における責任を放棄して、本当にいいのか。引き続き活動が継続できるよう、ぜひともご理解いただきたい」と訴えた。
 首相は既に民主党の小沢一郎代表に党首会談を呼びかける考えを示している。小沢氏は延長に反対する姿勢を崩していないが、責任野党の党首として首相との会談に応じ、胸襟を開いて話し合ってもらいたい。
 現行のテロ特措法は11月1日に期限切れとなる。政府は国会審議が長引く場合を想定して、自衛隊の活動内容を米英艦船などへの燃料や真水の補給に限定した新法案を提出することを検討している。
 新法案なら参院で否決、または衆院通過後60日以内に議決がなかった場合は、衆院で3分の2以上の賛成で再議決することができる。自ら退陣の可能性に触れたことで、首相は今国会中に給油継続を実現するという目標を課したといえる。
 7月の参院選での惨敗を踏まえ、首相は演説で「深い反省の上に立って、今後、国政に当たっていきたい」と強調した。安倍政権のキーワードである「戦後レジームからの脱却」や「美しい国」という言葉を使ったのは、それぞれ1回だけだった。看板は残しつつ、政策の力点を地域経済の活性化などに軌道修正した格好である。
 首相は「ばらまき」や「護送船団」などの政治手法に戻ることは絶対に許されないとも力説したが、「優しさとぬくもりを感じられる政策」という心地よい響きの政策の中身を具体的に説明する必要があろう。
 テロ特措法に限らず、野党が反対する法案を成立させることは極めて難しくなった。消費税を含む税制の抜本改革に関しても、首相は秋以降に本格的な議論に入る方針は踏襲したものの、実現する目標時期を明示することはできなかった。
 政権を取り巻く状況は一段と厳しい。首相は捨て身の覚悟で政策を遂行する責務を負っている。 

(07/09/11 東京新聞)
安倍演説 言葉が軽すぎないか
 臨時国会が開幕し、安倍首相が所信を表明した。テロ特措法延長へ自らの退路を断ったはずにしては、代わり映えせず、国民は肩すかしを食らった格好だ。一国の首相として言葉が軽すぎないか。
 安倍晋三首相は週末、シドニーで大いに語った。ブッシュ米大統領との会談で、インド洋上での海上自衛隊の給油活動継続に全力を挙げる決意を表明した。十一月一日に期限切れとなるテロ対策特別措置法の延長に「職を賭して取り組む」とも記者団に明言した。
 退陣も辞さない決意を示すことで、延長反対の野党や世論の協力を得たい。こんな計算もあるのかもしれないが、シドニーから帰国直後、首相を待ち受けていたのは、参院での与野党逆転の厳しい現実だった。
 参院本会議場で演説に立った首相を、野党議員の冷たい視線が容赦なく突き刺す。その雰囲気にのまれてか、原稿を一部読み飛ばす場面もあった。内容も期待はずれだった。
 特措法問題では、海外であれだけ大見えを切ったにもかかわらず、国内では「ここで撤退し、国際社会における責任を放棄して、本当にいいのでしょうか」と、継続に理解を求めた程度。わずか一分だ。
 自ら国際公約し、退路を断つ考えを示す以上は、その真意を国民に十分説明すべきである。帰国後に演説原稿を直す時間もあったはずだ。積極的に語ろうとしない姿勢は国会軽視のそしりを免れまい。
 首相は演説冒頭で、自らの政権運営を深く反省した。その上で「改革を止めてはならないとの一心で続投を決意した」と語ったが、年金、格差、教育、政治とカネなどの課題については、新味のない項目の羅列だった。反省を生かすならば、選挙の民意を踏まえ、従来の路線の修正点を具体的に示し、政策に優先順位をつけるべきではなかったか。
 私たちはバッシングを受けながらも、なお政権にとどまる理由を知りたかった。しかし、納得できる答えはなかった。そもそも、続投を宣言しながら、テロ特措法が延長できなければ退陣するとの発言は整合性を欠き、理解に苦しむ。少し混乱しているのではないか。首相としての資質にかかわる問題ともいえる。
 今国会は、首相の進退とともに、政治とカネをめぐる鴨下一郎環境相らの問題もある。参院での問責決議案の提出が焦点の一つとなろう。
 ただ、その攻防の一方で、国政調査権などを駆使した深みのある議論を与野党に期待したい。そうでないと、せっかくの「逆転国会」もドタバタ劇になってしまう。

(2007年9月11日(火)「しんぶん赤旗」)
安倍首相演説
反省の意味が分かっていない
 臨時国会が始まり、参院選で大敗した安倍晋三首相の、選挙後初の所信表明演説を聞きました。
 首相は、国民の思いや怒りにこたえていなかったこと、政治や行政に不信を招いたことへの「深い反省」に立って国政にあたっていきたいと切り出しました。しかしそのあとがひどすぎます。退陣要求に逆らって政権の座に居座り続けることを「改革を止めてはならない」ためと合理化し、消費税増税や改憲についても、これまでの方針を繰り返したのです。安倍首相は、「反省」という言葉の意味が分かっていません。
審判への開き直り
 参院選挙で自民・公明の与党を大敗に追い込んだ国民の審判は、「消えた年金」、「政治とカネ」、閣僚の暴言などの問題で国民が不信をつのらせたためだけではありません。小泉・安倍の二代の政権の弱肉強食の「構造改革」と、「戦後レジームからの脱却」や「美しい国」を掲げた安倍首相の改憲押し付けに、国民が「ノー」の審判を突きつけたものです。
 選挙後も安倍首相の退陣を求める声が消えないのも、国民が安倍政治そのものを続けさせるわけにいかないと思っているからです。安倍首相が本当に参院選の結果を受け止めるなら、いの一番にやるべきなのは自らの退陣なのに、「改革」を口実に居座り続けるとは、首相には「反省」どころか、国民の審判への開き直りしかありません。
 たしかに安倍首相の所信表明演説も、ちょうど一年前の就任直後の演説やことし一月の施政方針演説とくらべると、「戦後レジーム」の枕詞(まくらことば)に「憲法を頂点とした」という言葉がなくなったり、消費税増税に「十九年度を目途に」という目標がなくなったりと、言葉を空回りさせただけで具体化を避けた面は否めません。それは参院選の結果思うようにはいかなくなっていることの反映ですが、だからといって、国民の審判に向き合う態度はありません。
 選挙後の内閣改造からわずか一週間余りで閣僚の一人が辞任した「政治とカネ」の問題でさえ、わずか一言で済ませてしまう驚くべき態度です。
 思わず耳をそばだてたのは、安倍首相が居座り、「構造改革」や「戦後レジームからの脱却」を続けていく理由を、「わが国の将来のため、子どもたちのため」とまでいったことです。国民の審判に逆らって、国民が「ノー」を突きつけた政治を進めることがなぜ日本のため、子どもたちのためか。「構造改革」による貧困と格差の拡大が国民を苦しめ、過去の侵略戦争を正当化する「靖国」派が先頭に立った改憲が日本を世界から孤立させるのは明らかです。首相の態度は、国民の意思などまったく意に介さない、むき出しの挑戦そのものです。
居直りへの反撃こそ
 安倍首相は、所信表明演説に先立つ八日の日米首脳会談でブッシュ米大統領にインド洋での給油の継続を約束し、その後の記者会見では、そのためのテロ特措法の延長に、「職を賭して取り組んでいく」とまで発言しました。とんでもないことです。参院選挙での国民の審判には開き直って居座り続けるが、アメリカとの約束が実現できなければ退陣するというのでは、いったいどこの国の首相か。安倍首相が政権に居座り続けるのはブッシュ大統領のためだということを認めたのも同然です。
 安倍首相に政権をゆだねられないことはいよいよ明らかになりました。臨時国会の論戦で追い詰め、解散・総選挙に追い込むことが大切です。


最近のマスコミ報道(07/09/11) テロ特措法延長反対39%、賛成29%(読売)
日時:2007911
(2007年9月10日  読売新聞)
海自給油活動延長に賛成29%、反対39%…読売世論調査
 読売新聞社が8、9日の両日実施した全国世論調査(面接方式)で、テロ対策特別措置法によって海上自衛隊のインド洋派遣を延長し、給油活動を継続することの是非については、「賛成」29%、「反対」39%だった。
 「どちらとも言えない」も29%に上り、今後の国会審議などを見極めて判断したいとの考えの人も多いようだ。支持政党別に見ると、自民支持層は「賛成」が52%、民主支持層は「反対」が59%だった。公明支持層は「賛成」が「反対」を上回った。
 男女別では、男性が「賛成」「反対」各37%だったが、女性は「賛成」23%、「反対」40%だった。

(07/09/10 NHK調査)
内閣支持率34% テロ特措法延長賛成27%
NHKが行った世論調査によりますと、安倍内閣を「支持する」と答えた人は先月より5ポイント上がって34%だったのに対し、「支持しない」と答えた人は3ポイント下がって55%となりました。一方、臨時国会でインド洋での海上自衛隊の給油活動を継続するための措置を延長することに「賛成」27%、「反対」27%、「どちらともいえない」38%となりました。
NHKが行った世論調査によりますと、各党の支持率は、▽自民党が先月と横ばいの27.4%、▽民主党が1ポイント余り下がって24.5%、▽公明党が1ポイント近く下がって2.6%、▽共産党が1ポイント余り下がって2.6%、▽社民党が1ポイント下がって1.3%となりました。

(2007年9月10日  読売新聞)
内閣支持率29%、改造の期待感しぼむ…読売世論調査
 読売新聞社が8、9の両日に実施した全国世論調査(面接方式)で、安倍内閣の支持率は29・0%、不支持率は60・7%だった。参院選後の8月初めの前月調査(同)と比べ、支持率は1・8ポイント増え、不支持率は3・0ポイント減ったが、支持率は2か月連続で3割を切る低水準となった。
 安倍首相は8月末の内閣改造で、派閥の長などを入閣させる重厚な布陣を敷いた。改造直後の電話による世論調査では、こうした点への期待感から、支持率は44・2%と不支持率(36・1%)を上回った。調査方法が異なるため、直接比較はできないが、今月調査では遠藤武彦・前農相の辞任・交代などが影響して改造による期待感が急速にしぼんだと見られる。
 支持しない理由(複数回答)では、「安定感がない」を挙げた人が45%で最も多く、前月と比べても11ポイント増えた。内閣に優先的に取り組んでほしい課題(同)では、「年金や医療など社会保障制度改革」63%、「景気・雇用対策」47%に次いで、「政治とカネの問題」40%が多かった。
 遠藤・前農相の辞任・交代が政権に与えた印象については、「悪くなった」、「変わらない」が各47%、「良くなった」は3%だった。
 ただ、政党支持率は、自民党が29・3%(8月調査比3・5ポイント増)で、民主党が20・9%(同6・0ポイント減)となった。前回調査では初めて民主党が自民党を上回ったが、今回は自民党の支持が回復した。

(2007年09月11日 朝日新聞)
米艦載機移転、岩国市民「反対」59% 賛成との差縮小
 在日米軍再編に伴う岩国基地(山口県岩国市)への空母艦載機部隊の移転計画をめぐり、朝日新聞社は8、9の両日、岩国市の有権者を対象に電話による世論調査を実施した。艦載機移転に「反対」は59%と半数を超え、「賛成」の25%を大きく上回った。しかし、06年4月の岩国市長選前に実施した世論調査では「反対」69%、「賛成」12%だったのに比べると、その差は縮まった。 
 周辺7町村と合併する前の旧岩国市では、06年3月に移転をめぐる住民投票が行われ、87%が反対票を投じた。その後、移転反対を訴えた井原勝介旧市長が当選。しかし、それから1年半たち、国は、市の移転反対姿勢を理由に建設中の市庁舎への補助金支出を見送り、市が長年望んできた岩国基地での民間空港の再開も移転容認を前提にするなど「アメとムチ」の手法で受け入れを迫ってきた。 
 こうした状況の中、移転に賛成する理由として「地域振興が期待できる」が全回答の13%で、前回の5%から増えたのが目立つ。反対の理由としての「騒音や事故などの被害の可能性が増える」は全回答の40%で、こちらは前回の50%から減少した。 
 住民投票の結果を「尊重すべきだ」と答えた人は60%で、「尊重する必要はない」の27%を大きく上回った。だが、前回「市長は尊重すべきか」と聞いた時は、「尊重」派は75%だった。 
 一方、国が市庁舎の補助金支出を見送った対応については、「納得できない」が73%と、「納得できる」の18%を上回った。艦載機移転に「賛成」の人の中でも、「納得できない」が43%。移転の賛否にかかわらず、国の対応に不満を抱く人が少なくないことがうかがえる。 


最近のマスコミ報道(07/09/10) 「護憲」は「政治的」か メディアの責任を問う
日時:2007910
(07/09/08 日本農業協同組合新聞)
「護憲」は「政治的」か メディアの責任を問う
関東学院大学法学部教授 丸山重威氏に聞く
聞き手:原田康本紙論説委員

 安倍晋三首相は参院選惨敗後も「憲法改正」に意欲を見せている。だが新聞などの世論調査では改憲賛成は減少。「これは安倍さんの功績だ」と丸山教授は皮肉る。安倍さんは国民に暴走の懸念を抱かせたのではないかというわけだ。確かに自民党内にも「優先順位を取り違えている」との声がある。これまで改憲ムードをあおってきたメディアの責任は重いと、丸山氏は数々の事例を挙げて新聞批判を展開。「憲法でものを考える」立ち位置を強調した。また新自由主義の考え方に立つ「小泉改革」に異議を唱えなかったメディアの責任などにも議論を発展させた。聞き手は原田康本紙論説委員。

◆自衛隊員の命守る 
 ――アフガニスタンでの「対テロ戦争」を支援するテロ対策特別措置法の延長に民主党は反対で、秋の臨時国会での争点です。この問題をどうみていますか。
 「テロ特措法は時限立法ですから延長するならそのつど、きちんとした総括が必要です。ところが、それをほとんどしないで、すでに3度も延長されました。今度こそ元へ戻って十分に議論されるべきです」
 「テロ特措法の後、イラク特措法ができました。今の憲法の下でも措置法をつくれば『派兵』でなく『派遣』だとして自衛隊を海外へ出すことができたわけです。一方、隊員に被害が出なかったのは憲法が『戦争はしない』と交戦権を否定しているからです。イラクのサマワでは基地に着弾しても反撃しませんでした」
 ――憲法があったから隊員たちの命が守られたわけですね。
 「そうです。だからその1つをみても憲法は変えるべきではありません。自衛隊が海外で戦えるようにしてはだめです」
 「しかし、今の自衛隊は限りなく違憲に近いと私は思います。世界3、4位の装備を持つ実力部隊です。でも、私は違憲だからすぐ自衛隊を解散しろという主張には反対です。災害出動などでは国民に支持されていますし、解散して失業した隊員をどう生活させるかなどの問題も出てきます。結局大切なのは、兵力削減で、装備や出動範囲を憲法の枠内にとどめるのです」
 
  ――軍縮ですね。
 「憲法が目指しているのは、世界中の軍備がなくなることです。どこの国でも軍備を減らせば民政にお金を回せます。日本でも、日米同盟という言葉の下で米国に従属して国民の血税がどんどん使われているのを止める軍縮は、財政危機の中で非常に重要です」
◆本音隠した改憲論
 「『同盟』には普通『仮装敵』があります。日米同盟の『敵』はどこなのか。戦闘機やイージス艦や戦車を持たないと北朝鮮が攻めてくるのですか。そもそも日本が敵を持つことはあり得ないのです」
 ――しかし改憲派は憲法9条2項を変えて交戦権を持ち敵基地を攻撃できるようにしようとしています。
  「そうです。米国は日本が一緒に戦ってくれることを求め、集団的自衛権行使のためには改憲が必要だとしています。日本の改憲派はそれに協力しているわけです。参院選で安倍首相は憲法改正を掲げましたが、何をどう変えるのかは言いません。本音は隠して『国を守るのは当然のこと』などといって改憲ムードをあおっています」
 ――新聞も改憲の裏の米国の圧力を問題にせず、ムード論に流れています。
  「読売とサンケイの主張は完全に改憲派です。朝日は9条を変えるのはマイナスが多過ぎるという論調ですが、テロ特措法延長については、まだ論評していないようです。毎日は延長が必要な理由をはっきりさせよという論調です」
 「私はこの際、テロ特措法をやめて日本独自の安全保障政策を打ち出すべきではないかと思います。そんなことは、外国ではどこもやっています。英国でさえ、ブレア首相が退陣しイラクからの撤兵が論じられています。すべて米国に同調する必要はありません」
 「新聞はそういった本質的な問題提起をこそすべきですが、相も変わらず現状肯定論にどっぷりつかっています」
 ――メディアは、法案の中身もわからないまま世論調査をして、その結果におもねるような論説を書いたりもしています。
 「世論調査には警戒が必要です。どこをどう変えるかを抜きに回答を求めるのはおかしいでしょう。それで、『改憲論が多い』とはムード作りに過ぎません」
◆憲法で考える立場
 「世論調査では、例えば9条を変えて交戦権などをもっと厳しく禁止すべきだ、という意見を改憲論に分類してしまうケースがありました。ひどい話です」
 「それはとにかく、このところどの世論調査でも改憲賛成が減っているのが目立っています。安倍首相に任せておくと危ない、という国民の懸念の反映だと思います。これは逆説的ですが安倍さんの功績です」 
 ――それからメディアの政府批判は、国民に対する説明努力の不足などを指摘するだけで法案の中身が良いか悪いかには余り触れません。自分の主張をはっきり出さないのです。
 「例えば岩国基地の住民投票の時です。朝日、毎日も地元が反対するのは、住民への説得の仕方が悪いからだと書きました。それでは、説得がうまくいけばそれで良いのかということです。しかし、基地は嫌だというのはどこでも同じですから、基地の国内移転はもう無理だ、と書くべきです」
 「北朝鮮のミサイル発射の時には敵基地攻撃論が出ました。これを受けた各紙の社説は『それは米国の仕事だ』としました。では米軍ならやっていいのか、ということです。『米軍であれ自衛隊であれ、とにかく日本の基地から攻撃してはならない』と、なぜ書けないのかと思いました」
 ――大新聞は広告収入に依存していますから、兵糧攻めを恐れて、言論への圧力を先取りしてしまっているという感じがします。
 「ジャーナリズムはそれではいけません。あくまで憲法の精神で考える立場を貫いてほしいと思います」
 「1例を挙げますと『消えた年金』問題で社会保険庁の職員にボーナスを返上させました。『民営化の際、採用採否の条件にする』と官房長官が言いました。だが新聞は『筋が違う』と書いただけです。労働基本権に照らし『そんなことはすべきでない』と書くべきでしょう。第一、返上分の税金は控除されるんですか? 恐らく返した分まで所得税を納めるのです」
 ――市民的自由の危機
 「また自衛隊の情報保全隊が住民運動を調査していることが発覚しました。憲法意識からするとこれは不気味です。軍事組織が市民運動を監視しているのですからね。これをやめさせる規制法が必要かもしれないくらいです。しかし読売・サンケイ・日経3紙は、2―3段程度に小さく紙面の隅扱っただけでした」
 ――憲法でものをみる立場が全く欠けています。
 「こんな話もあります。東京・調布市の市民サークルが『日本の青空』という記録映画を自主上映するため市に後援を申請したところ断られました。製作者の呼びかけ文に『改憲反対の世論を獲得する』とあったのが『政治的に中立とはいえない』というのです。『憲法を変えろ』というのは『政治的偏向』かもしれないけれど、『護ろう』というのは政治的ではありません。市民的自由を脅かす風潮が広がっています」
 ――メディアがそういうムードをつくってきました。護憲が政治的なら平和を守ろうという運動も政治的になります。
 「小泉前政権による『構造改革』もムードづくりの例です。食料自給率の向上なら、それは真の改革ですが、そんな改革ではなく、競争原理の徹底です。地域を壊し人心を荒廃させ、子殺しや親殺しなどの悲惨な事件が増え、ワーキングプア(働く貧困層)や格差の増大をもたらしました」
 「これが『新自由主義改革』の実態です。新聞は経済優先、市場原理主義ですべてよしとする考え方に、事実を基に、きちんと異議を申し立てるべきです」
 ――メディアはその責任を果たしていません。読者としてはそこをよくわきまえて新聞を読まなくてはいけませんね。

インタビューを終えて 
 内閣法制局が知恵を絞って自衛隊も、現在の海外活動、派兵も憲法に違反していないと解釈をしている。それならば何故憲法の改正を急ぐのか。大ぴらに戦争に参加できないということ以外に理由がない。自主憲法という論もあるが戦後60年かけて作り上げた現在の日本で、憲法を変えないと日常の生活に差し支える、不自由であるということはない。関係をする法律や規則、仕組みを時代に合わせることで十分間に合う。
 丸山先生は著書「新聞は憲法を捨てていいのか」で新聞は憲法に定められた基本的な理念、人権、表現の自由などの立場に立って「おかしなことは おかしいと言おう」と主張されている。
 新聞を始め、メディアの作るムードに踊らされないよう用心が必要な時代である。(原田)(2007.9.6)

まるやま・しげたけ
1941年浜松市生まれ。早稲田大学法学部卒。共同通信社編集局次長、情報システム局長などを経て関東学院大学法学部教授。
 著書に「新聞は憲法を捨てていいのか」(新日本出版社)など。論文に「『憲法改正』問題とジャーナリズム」など。


最近のマスコミ報道(07/09/10) 「給油継続」だめなら内閣辞職も、首相が示唆
日時:2007910
(2007年9月10日  読売新聞)
「給油継続」だめなら内閣総辞職も、首相が示唆
 【シドニー=望月公一】安倍首相は9日夕(日本時間9日夕)、シドニー市内のホテルで記者会見し、インド洋での海上自衛隊の給油活動の継続に関し、「国際的な公約となった以上、私には大変大きな責任がある。あらゆる努力を払わなければならない。民主党を始め、野党にご理解をいただくため、職を賭(と)して取り組んでいく」と、強い決意を示した。
 その上で、「私のすべての力を振り絞って職責を果たしていかなければならない。職責にしがみつくことはない」と強調し、テロ対策特別措置法の期限が切れる11月1日以降も、海上自衛隊の活動を継続させる措置を講じることができなければ、総辞職する可能性に言及した。
 一方、首相は、「(海上自衛隊の)補給活動を継続する法案をこの(臨時)国会に提出しなければならない。特に民主党の理解を得るために最大限の努力を払わなければならない」と述べ、テロ特措法改正案ではなく、民主党の主張を取り込んだ新たな法案の提出も検討する意向を表明した。また、民主党の小沢代表に、この問題で党首会談を呼びかける考えを示した。
           ◇
 安倍首相はアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の日程を終え、10日朝、政府専用機で羽田空港に到着した。

(07/09/10 日経新聞)
安倍首相、「職を賭す」発言は気持ちそのまま 
 安倍晋三首相は10日夕、テロ対策特別措置法の延長問題を巡り、9日のシドニーでの会見で「野党の理解を得るため職を賭して取り組んでいく。職責にしがみつくことはない」と述べた真意について「職を賭して全力で取り組んでいきたいという気持ちで申し上げた」と説明した。インド洋上での海上自衛隊による給油支援活動が継続できない場合、内閣総辞職を示唆したとする報道については、「最後まで全力を尽くしていきたいと考えている。言葉通りに受け取っていただきたい」と語った。 
 アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議開催地のシドニーで、テロ特措法延長への強い決意を表明した背景については「国際会議(アジア太平洋経済協力会議・首脳会議)の場において、日米豪の3カ国首脳会議、日米首脳会談を通して、日本として継続していく意思を表明した、そのことを踏まえて申し上げた」と述べ、国際社会への配慮を強調した。 首相官邸で記者団の質問に答えた。〔NQN〕(19:21)

(2007年9月9日(日)「しんぶん赤旗」)
改憲派の巻き返し許さない
憲法会議が学習会 東京
渡辺・吉田・笠井各氏が講演
 臨時国会召集を目前にした八日、「憲法をめぐる新たな局面と改憲阻止の展望」をテーマにした学習討論集会が東京都内で開かれました。中央憲法会議と首都圏の四つの憲法会議の主催です。参院選での大敗で安倍内閣の改憲スケジュールが狂うもとで、巻き返しを許さないたたかいを草の根からくりひろげようと、会場を満席にした約三百人が講師の話に聞き入りました。
 全教の米浦正委員長が開会あいさつ。渡辺治・一橋大学教授、吉田裕・一橋大学教授、日本共産党の笠井亮衆院議員の三氏がそれぞれ一時間半にわたり、講演と会場との質疑とをおこないました。
 渡辺氏は、明文改憲と解釈改憲の二本建ての戦略をたててきた安倍政権が参院選後の情勢のなかで解釈改憲を前面にたててきていると指摘。国民世論とアメリカの要求との間で解釈改憲と明文改憲の動きが対抗してきた一九九〇年代以来の動きにふれ、ブッシュ米政権の戦略のもと、安倍政権下で集団的自衛権の問題が浮上してきたことを解明しました。参院選後、秋から年明けにかけての運動の重要性を強調しました。
 安倍政権を支える「靖国」派の戦争や憲法観について講演した吉田氏は、一九八〇年以来、歴代政府がアジア諸国との関係から歴史認識を修正せざるを得なくなっていることを指摘。安倍首相が政府の基本路線を引き継ぎながら、一方で歴史認識を変えていないことを説明し、民意との矛盾、支持基盤の動揺、「慰安婦」問題などアメリカとの矛盾を深めていることを解明しました。
 笠井氏は、「参議院選挙後の政局と改憲阻止の展望」について講演。運動が、安倍政権の改憲スケジュールを狂わせていることに確信をもとうと訴えるとともに、同政権が改憲推進シフトを変えていないことを指摘。テロ特措法延長反対問題、憲法審査会の始動、改憲案策定を許さないたたかいをすすめ、草の根からのたたかいをまきおこそうと呼びかけました。

(2007年9月9日(日)「しんぶん赤旗」)
達人「9条」をうたう
東京でコンサート
 音楽・九条の会のコンサート「達人たちの歌」が八日、東京・アールズ・アートコートで開かれ、会場いっぱいの二百三十人の聴衆がつめかけました。
 俳優で歌手の上條恒彦さん、フォーク歌手の高石ともやさん、笠木透さんの「達人」三人が姿を現すと会場は歓声と拍手に包まれました。
 笠木さんが「この三人で舞台に立つとフォークソング、うたごえの歌を地域で広げようと走りまわった四十年前を思い出します」と語ると、会場はわきました。
 コンサートははじめに、三人が順にステージをつとめ、それぞれ反戦の歌を披露しました。上條さんは、広島の原爆を題材にした「この橋の上で」や、「さとうきび畑」を情感たっぷりに歌い、高石さんは、「人を殺したくない」と徴兵拒否をするフランスの青年の歌「拝啓大統領殿」をアコーディオンの伴奏で語るように歌いました。
 「憲法九条は、私たちが生きていける、すばらしい保証」と話す笠木さんは、「あの日の先生は輝いて見えた…」で始まる「あの日の授業」を演奏。終戦後、憲法九条を誇らしげに伝える教師の様子を再現した歌に共感の拍手が続きました。
 東京都練馬区の女性(59)は「九条や戦争を知らない人にも音楽を通して、その大切さが伝えられると実感しました」と語っていました。

(07/09/10 北海道新聞)
9月9日9時9分、各地で「九条守れ」 九月九日午前九時九分に憲法九条を守る行動をしようとのイベントが、全国の市民団体によって一斉に行われた。「九条連だこ」や「平和の鐘」など、それぞれの形で護憲への思いを込めた。戦争をしないための選択・9条を考える道南の会(函館、前田健三代表)の呼び掛けに、全国の千を超す団体が賛同して実現した。 
 同会では午前九時九分、函館・五稜郭公園で花火九発を打ち上げた後、約百人の参加者が憲法前文と九条を朗読。プラカードを手に、市内を練り歩いた。空き店舗に「憲法カフェ」も出店し、市民らが午後九時九分まで、尺八などの生演奏を聴きながら、九条のあり方を語り合った。 
 札幌市中央区の大光寺でも、くらしの九条の会(深沢敦子代表)などの二十五人が、黙とうに続いて一人ずつ境内の鐘を突いた。小学三年の娘と訪れた同市北区の主婦佐藤京子さん(44)は「この子が大人になっても、平和が続くようにとの願いを込めた」と話した。道内では帯広や小樽でも署名活動などが行われた。 
 埼玉県越谷市の元荒川土手では、越谷九条の会が「憲法九条は日本の誇り世界の宝」と書いた連だこを揚げた。五十センチ四方、三十枚続きで地元の名人の指導で作った。 
 午前九時九分にゆったりと舞い上がると、集まった約四十人から歓声が起きた。 
 道南の会の森越清彦事務局長は「個人でも気軽に参加し、九条を考えられる機会となるよう、来年も続けたい」と話していた。 

(2007年09月09日 朝日新聞)
暮らし「不安」、過去最高7割 内閣府世論調査
 日常生活で悩みや不安を感じていると答えた人が69.5%と過去最高だったことが、内閣府が8日付で発表した「国民生活に関する世論調査」でわかった。去年より生活が「向上している」と感じる人が1.4ポイント減り、「低下している」と感じる人が2.4ポイント増えた。内閣府は「高齢化や年金問題から、将来への不安が増えたのではないか」と分析している。 
 現在の生活に「満足」だという回答は3.8ポイント減の62.7%、「不満」は3.5ポイント増の36%だった。また、生活水準は「中の中」と感じている人が53.8%と最も多く、「中の下」が26.2%で続いた。「下」は1.2ポイント増の7.2%で、最近では05年の7.3%に続く高い比率なのに対し、「中の上」は1.3ポイント減の9.7%だった。 
 調査は今年7月に全国の成人1万人を対象に面接方式で行い、回答率は60.9%だった。 

(2007年9月8日 中日新聞)
69%が生活に「不安」 内閣府の国民生活調査
 内閣府が8日付で発表した「国民生活に関する世論調査」で、「日常生活で悩みや不安」を感じている人が69・5%に上り、昨年10−11月実施の前回調査を1・9ポイント上回って過去最高を更新した。具体的な悩みや不安の内容(複数回答)でみると、「老後の生活設計」が53・7%と半数を超えて最も多く、「自分の健康」の48・3%を上回った。
 内閣府は「少子高齢化社会が進む中で、年金記録不備問題などが影響して不安が増えたのではないか」と分析。7月の参院選で年金問題が争点になったことも背景にありそうだ。
 政府に対する要望(複数回答)では、「医療・年金などの社会保障構造改革」が72・4%とトップで、「高齢社会対策」が55・8%で続く。「景気対策」は49・6%で3番目だった。
 調査は1958年から行われ、今回は今年7月5日から22日にかけて全国の成人男女計1万人を対象に実施し、回収率は60・9%。
(共同)



最近のマスコミ報道(07/09/07) 安倍改造内閣 不人気『遠藤問題』前から
日時:200797
(07/09/07 中日新聞)
安倍改造内閣  不人気『遠藤問題』前から
 本紙は6日、「政治ネットモニター」を対象にした意識調査結果をまとめた。遠藤武彦前農相の補助金不正受給問題とは関係なく、安倍首相が先に行った内閣改造・自民党役員人事が厳しく評価されていることや、首相がこだわる「美しい国づくり」への冷ややかな視線が浮き彫りになった。
 安倍人事への評価を聞いたところ「大いに期待できる」「まあまあ期待できる」との好意的な評価は計25・7%。「あまり期待できない」「まったく期待できない」との批判的評価は計68・1%に達した。
 この設問に関し、遠藤氏の問題が発覚する以前の先月二十九日時点での中間集計を調べたところ、好意的評価は25・2%、批判的評価は69・9%と、最終集計とほとんど変わらなかった。
 安倍人事については「当初ある程度評価されていたが、遠藤氏の問題で帳消しになった」との見方もあった。しかし、モニターの回答を見る限り、遠藤氏の問題と関係なく根本的に安倍人事は評価されていないようだ。
 安倍人事の印象を六つの設問に分けて聞いたところ「手堅さ」については「ある」が「ない」を上回った。半面、「清新さ」「重量感」などほかの五設問では「ない」など否定的な意見が多数派。特に「華があるかどうか」については「ある」と答えたのは、わずか1・5%だった。
 首相が改造内閣発足時の記者会見でも触れた「美しい国づくり」について、どう思うか聞いたところ「国民感覚から離れており、もはや捨てるべきだ」との回答が58・4%に達した。「しばらく見合わせて国民の反応を見るべきだ」(21・0%)と合わせ、約八割がストップをかけた格好。「首相でいる限り、掲げ続けるべきだ」(13・1%)「いましばらく掲げて国民の反応を見るべきだ」(7・4%)は少なかった。
 自民党支持層の中で見ても、過半数がストップ派だった。
 改造内閣の最優先課題については「年金問題など国民生活に密着した政策」(62・9%)との回答が最多。「憲法改正、集団的自衛権行使問題など『戦後レジーム(体制)』見直し」(5・9%)などを大きく上回った。
 このほか、法案をめぐる与野党協議については「国会審議の中ならいいが、水面下の与野党間の調整は避けるべきだ」(49・5%)と「政策実現のために積極的に進めるべきだ」(36・1%)に意見が多少分かれた。
 内閣支持率は「支持する」「どちらかというと支持する」が計25・5%と、前回調査から8ポイントほど回復したが、依然低水準。「どちらかというと支持しない」「支持しない」は計74・5%だった。
 政治ネットモニターの分析、執筆は政治部・高山晶一、原田悟と東京本社選挙調査室・須藤英治が担当しました。
 政治ネットモニターは、インターネットで募集した500人のモニターに対し、政治に関する質問を送り、匿名を前提にパソコンで回答していただく制度です。電話や対面で行う世論調査とは異なります。今回の調査は8月下旬から今月上旬にかけて実施し、404人が回答(回答率80.8%)しました。

(9月5日3時2分配信 毎日新聞)
<自民党>衆院憲法審会長、中山太郎氏に
 自民党は4日、国民投票法の成立を受けて設置した衆院憲法審査会の会長に中山太郎・自民党憲法審議会長を充てる人事を内定した。後任の同審議会長には中川昭一前政調会長を起用する。衆参両院の憲法審査会は憲法改正原案の審査や提出を行う国会の常設機関だが、野党は「首相が代わらない限り、参加しない」としている。


(2007年8月8日 社会新報)
主張 自民党大敗
安倍首相は改憲策動を中止すべき
 赤城農水相の更迭劇の何とも言えない間の悪さ。安倍政権は完全に末期症状だ。主観的願望を「国民への約束」にすり替え、民意を操作の対象としか見ていなかったごう慢さが今回、民意による強烈なしっぺ返しを受けたことに、まだ気がつかないのだろうか。
 忘れるわけにはいかない。自民党はマニフェストの筆頭に「10年の改憲発議」を掲げたことを。安倍首相は年頭、在任中の改憲を公言し、憲法問題を参院選の争点にすると宣言したのだ。しかし首相は、具体的な改憲の中身を説明し、信を問うことがついにできなかった。ここに至る間、米国の突き上げに引きずられて解釈改憲による集団的自衛権行使容認の方向性を示唆し、与党内に不協和音を引き起こした。国民投票法制定を急いで三権分立を無視する国会介入を繰り返し、民主党の離反を招いた。そして、選挙で年金や政治とカネの逆風を受け改憲の訴えを封印。首相の改憲戦略は方向を見失い、政治的に完全に敗北したのだ。
 その上で、自民は大敗した。でも、首相らは「美しい国づくり」は否定されていないと強弁し、せいぜいが「改革」の痛みへの配慮をほのめかすにとどまっている。だが、「戦後レジーム脱却」路線はひとまとめで拒否されたことを認め、その責任を取るべきだ。
 新自由主義的経済改革と首相の反動・強権・安保強化路線が、まさに首相が頂点に座る国家の仕事として結び付き、一体で進められるべきことを、財界はよく理解している。財界は規制緩和推進を求めるだけでなく、すでにかなり前から集団的自衛権行使の解禁を柱とする改憲要求を公然と掲げるようになっている。
 今回、民主党は憲法の争点化を避け、「生活第一」を標ぼうして党内不一致をカバーする作戦が奏功した。改憲を公約しなかったのだから、9条を変えることを望まない国民の多数世論に従い、与党と改憲内容のすり合わせを行なおうという路線を清算すべきだ。原発震災問題での無反応に見られるように、この党は「国策」という土俵を持ち出されると弱く、そこに乗らなければ2大政党ではないと思い込むという危うさを持っている。憲法審査会への対応は注目に値するだろう。少なくとも改憲案作りの3年間凍結条項は厳密に守られなければならない。

 首相の責任の取り方は明らかだ。速やかに内閣総辞職し、一切の改憲の企だてから手を引くしかない。

(2007年7月30日 社会新報)
第21回参議院議員選挙の結果について(声明)
社会民主党
 昨日、第21回参議院議員選挙が施行された。社民党は、今回の選挙を10ヵ月に及ぶ安倍政権に不信任を突きつける選挙と位置づけて、「9条と年金があぶない 今回は社民党へ」と全国各地で訴えた。あらゆる地域で安倍政権への激しい批判と不信が噴出した選挙となったが、その批判票は民主党に集中した。わが党は比例代表で2名の当選に留まった。選挙区での推薦候補は5名当選したが、全体としてはたいへん厳しい結果となった。社民党の政策を支持し投票していただいた方には、心から感謝を申し上げるとともに、ご期待に十分に沿えなかったことをお詫びしたい。
 安倍政権は批判に耳を貸すことなく、早々と続投すると公言している。しかし、国民から厳しい批判が突きつけられた以上は、早期に退陣をすべきである。「政治とカネ」をめぐる問題も何らけじめをつけることなく、このまま居直って、国民生活を脅かす労働関係法の改悪や消費税率の引き上げをはかることは絶対に許されない。
 秋からは憲法審査会で改憲発議に向けての論議が、本格的に開始される。参議院選挙では重要な争点とはならなかったが、平和憲法をなくそうという動きに警戒しなければならない。国会内での攻防は大変厳しいものになることが予測されるが、社民党は現在の状況に危機感を持っている人々とともに、国民生活の擁護と改憲阻止のために、全力で奮闘する決意である。 
以上

(07/09/5 山陽新聞)
憲法が劇映画になった
 日本国憲法を劇映画にという発想自体そうそう浮かぶものではないのに、それを実現させてしまったのだから、並の力ではないだろう。岡山県でも実行委員会により上映運動が行われている「日本の青空」(大澤豊監督)は、映画の企画・製作などを手がける会社インディーズの経営者でもある小室皓充さんのひらめきがきっかけだった。
 小室さんといえば、山田洋次監督の「学校」シリーズや岡山発で不登校問題を描いた「あかね色の空を見たよ」(中山節夫監督)など社会派映画を世に問うてきたことで知られるが、その延長線上で憲法問題をとらえつつ、製作協力券の販売に、自己資金も投入して製作した。
 作品は試写会ですでに見せてもらった。高橋和也演じる硬骨の憲法学者鈴木安蔵(一九〇四〜八三年)を中心にした七人の学者が民間の立場で作り上げて、敗戦の一九四五年暮れにGHQ(連合国軍総司令部)に提出した「憲法草案要綱」が、実際の草案作りに大きな影響を与えたという説を、謎解き風に掘り起こしていくストーリーだ。
 つまり、安倍首相ら改憲論者の有力な根拠になっている「外国押し付け論」に、反証を挑んでいるわけで、紛れもなく護憲の立場の映画ではあるが、史実を下敷きにしているから説得力があるし、憲法の成り立ちを考える上で、大きな一石を投じる作品であることは間違いなかろう。
 上映会(山陽新聞など後援)は十月二十日、岡山市古京町の三木記念ホールを皮切りに始まる。問い合わせは、中国共同映画(電話086―223―0904)。
 (特別編集委員・横田賢一)

(07/09/03 福井新聞)
「9条」考える契機に 30日、福井で平和フェスタ 9月3日午前10時56分 
 憲法九条をテーマにした「市民がつくる福井平和フェスタ2007」が30日、福井市のアオッサで開かれる。「平和憲法」が歴史的な岐路に立つなか、市民による未来への主張や戦争体験の発表、討論会、映画上映など多彩な企画を通して、県民に憲法問題を考える契機にしてもらう。
 先の国会で憲法改正手続きを定めた国民投票法が成立。「平和主義」をはじめ、戦後日本の羅針盤の役目を果たしてきた憲法の改正が政治スケジュールの中に盛り込まれつつあるなか、「支持政党や所属団体の枠を超え、平和を守るという1点で結集しよう」と、県内のNGO(非政府組織)で活動する市民や弁護士、大学教員らが呼び掛け人となり実行委を組織、企画した。
 実行委事務局の水上賢市さん(54)=坂井市=らが、1月からビラやラジオで参加を募り、集まった市民グループや個人が15の企画を立てた。
 福井市の会社員、林照翁さん(50)は「平和」「地球環境」「人権」「家族」「命」をテーマに自作の歌や漫才、演劇、詩の朗読などでそれぞれ自分の考えを表現してもらう「未来への主張」を企画。林さんは「単に九条を守るというだけでなく、さまざまな思いの人に集まってもらいたい」と話し、高校生以上の参加を募っている。
 福井市九条の会は、会員が戦争体験の語り部となり平和の尊さを訴える。弁護士が改憲論議のポイントを議論する「徹底討論!9条改憲」、福井空襲で投下された焼夷(しょうい)弾の実物や焼け跡の写真の展示、長崎の被爆者の講演、紙芝居朗読、子ども映画の上映、フリーマーケットなどもある。
 また、「憲法と”こころ”の関係を考える」と題し大阪の帝塚山学院大教授の精神科医、香山リカさんが特別講演。15日から21日にはプレ企画として、朝鮮戦争をテーマにした韓国映画「トンマッコルへようこそ」を福井市のメトロ劇場で上映する。
問い合わせは、実行委の林さん=電話0776(21)5321。 

(2007年9月4日(火)「しんぶん赤旗」)
中小商工業全国交流集会が閉会
憲法を力に地域から
 「ふみ出そう、憲法を力に。地域から発信しよう、中小商工業の輝きを」をテーマに一日から静岡市内で開かれていた第十五回中小商工業全国交流・研究集会は三日、全体会をおこない、閉会しました。全体会では、一、二日目に開催されたパネルディスカッションと分科会からの報告があり、まとめと講評がおこなわれました。
 吉田喜一・東京都立産業技術高専教授がパネルディスカッション「極める―技術・商売」と分科会「新製品・新分野の開拓と産学連携」の内容を報告しました。
 山本義彦・静岡大学副学長が、公的創業支援施設「SOHOしずおか」の事業から学ぶ分科会「SOHOしずおかの挑戦」の報告をしました。
 三井逸友・横浜国立大学教授がまとめと講評をしました。
 集会が「憲法を力に。地域から発信しよう」のテーマを掲げた意義は大きいと強調。この憲法を変え、国が国民の生活、生存を守らないように改悪する動きがあり、国民の不安、怒りがわいていると指摘しました。
 こうしたもとでどの分科会でも、中小業者が新しい反撃にでようとしていることが示された、とのべました。
 三井氏は、分科会などを通じて浮き彫りになった次の点を示しました。
 (1)自立と自律―積極的に立ちあがり行動しよう、経営を守り発展させよう、自分たちで新しい仕組みやルールをつくっていこうという動き(2)運動を通じて学習、成長、それによる人間力の形成、だまっていてもよくならない、なにもしなくては成長できないこと(3)行政に対して改めて積極的に働きかけることが大切。その際、行政とともに成長していく観点をもつこと―などです。
 これに先立ち、脚本家の小山内美江子さんが「地球市民として共に生きる」と題して記念講演をしました。


最近のマスコミ報道(07/09/03) 安倍内閣不支持過半数超
日時:200793
2007年 9月 3日 (月) テレビ東京世論調査
安倍内閣不支持が過半数超

 安倍内閣の人気低迷に歯止めがかかっていない現状が明らかになりました。テレビ東京が先週末行った世論調査によりますと、安倍内閣を「支持する」と答えた人は3割ほどで、「支持しない」と答えた人は過半数を超えました。これは、全国の20歳以上の1,000人を対象に実施した電話世論調査の結果です。安倍内閣を「支持する」と答えた人は33.7%で2ヵ月前の調査に比べてあまり変化がなかったものの、「支持しない」という答えが51.4%に達しました。支持しない理由として一番多かったのは「安倍総理の指導力に問題がある」で27.4%に上りました。また、改造内閣のなかで期待できる大臣を挙げてもらったところ、舛添厚生労働大臣が最も多くなりました。また最近の「政治とカネの問題」をめぐり「政治家を信頼できますか」と聞いたところ、「信頼できない」と答えた人が実に91%に上りました。

(07/09/03 11:35 TBSTV)  
内閣支持率15ポイント上昇、JNN調査
 調査は、この土日に行いました。
 安倍内閣を支持する人は42.2%で、先月、参院選後の調査に比べ、15ポイント余り上がりました。
 一方、支持しない人は55.6%で、依然、半数以上を占めています。
 調査を行なった時点では、遠藤大臣の進退など問題の行方ははっきりしておらず、内閣の顔ぶれについては、52%が評価できると答えていました。
 しかし、一連の人事で安倍総理がリーダーシップを発揮できたと思う人は3割にも満たず、また、7割近い人が、人心一新が達成されたとは思わないと答えています。
 また、各政党への支持は、自民党は先月より上がり28.3%、民主党は先月より下がって32.4%でしたが、初めて2か月連続で民主が自民を上回りました。

(2007年9月3日(月)「しんぶん赤旗」)
ゆうPress
折り鶴50万羽
命の重さリアルに感じた
 「21万人の命を忘れない。それが、広島・長崎を忘れないこと」。8月に行われた原水爆禁止世界大会に、全国の青年たちが折り鶴を集めて持ち寄りました。その数は目標をはるかに超える50万羽におよびました。 平井真帆 宮下 進
 「ここまで集まるとは予想してませんでした」。前川史郎さん(世界青年のつどい準備委員会事務局長)たちが、21万羽の折り鶴を集めるプロジェクトを立ち上げたのは、今年の6月。21万は、原爆によって広島・長崎で亡くなった人の数です。折り鶴の目標を持って取り組むのは初めて。2カ月間で目標を大きく超えました。
 準備委員会委員長の小林秀一さんは、「一部の活動家が必死に折っても50万は集まりません。命の重さをリアルに感じようと、全国各地で行われたさまざまな運動の結集です。ここまで広がったのは、誰でも賛同でき、誰でも気軽にできる運動だったからでしょう」と話します。
 鶴を折っている間に、「なんで21万なの?」「長崎で何があるの?」。自然に平和の話ができます。「折り紙を折りながら、平和について、友人や親子で話をする。こうしたことが全国的に行われたんです」と前川さんは振り返ります。「来年もさらに運動を広げたい」と、青年たちは力強く宣言しました。
8月9日に生まれ
京都
 京都では、憲法9条にちなんで9999羽集めることを決め、高校生たちが中心になり、約1万4000羽を大会に持ち寄りました。
 1600羽集まった高校では、最初、男子高校生2人が教室で折っていました。すると、女子生徒が「何で折ってんねん」。プロジェクトのことを聞くと、「平和やから、毎日過ごせる。絶対に戦争イヤや」と共感。「いいことだから私も手伝う」と、あっという間にクラスの3分の2以上が協力。さらに他のクラスまで飛び火し、保健室にも置くと学年を越えて広がりました。
 火付け役となった高校生は、「自身の誕生日が奇しくも八月九日。この日はどういう日やったのか、どれだけの人が亡くなったのか、思いながら一生懸命折った」といいます。長崎から帰って、みんなに世界大会の報告をすると、「ぜひ来年は私も行きたい」という人も。「そういうことは知らんかった」「一瞬で何万人の人が亡くなり、街が灰になった。こわい」という声も寄せられました。
みんな分かってる
東京
 東京では「長崎で亡くなった7万人の被爆者の命を知ろう」と、高校生らが「7万羽折り鶴プロジェクト」を立ち上げました。目標には届かなかったものの、3万羽を集め、全国の運動に火を付けました。
 「7万人って聞いても、ピンとこない。その数を実感したかった」という実行委員長の森戸裕一さん。「『〇〇を守ろう』とか『ナントカに反対!』だと引いちゃう人にも、『鶴、折って』っていうのは軽いノリで、呼びかけやすかった」
 ブログを開設し、約二十人ほどのメンバーが学校の友人に頼んだり、渋谷の街頭で「折り鶴宣伝」を行いました。
 チラシを受け取った若い女性から、「高校生たちの運動にすごく感動しました。未来に希望が持てました」などと書かれた手紙と一緒に、3000羽の折り鶴が送られてきたことも。
 森戸さんは「最後の1カ月で、びっくりするくらい集まった。戦争はだめだ、憲法は変えちゃいけないって、多くの高校生はわかっていると実感した」といいます。
折り方教室も
姫路
 2000羽を集め、長崎大会に7人の代表を送った兵庫県姫路市の「若者9条の会たけのこ」。小学4年生から90歳までの幅広い「若者」で、2年前に結成されました。
 集めた折り鶴は、中高生や20代が中心となって、美術大1年の女性がレイアウトした模造紙4枚に張りつけ「折り鶴アート」にしました。世界遺産の姫路城と、憲法9条を世界の文化遺産に、との願いをかけて、大きな9の字とともに描きました。そして“たけのこ”のイメージをあしらい、平和のメッセージができあがりました。
 折り鶴は、友人に協力を求めるだけでなく、土曜日にはJR姫路駅前で「9条を守ろう」という署名とともに「長崎へ折り鶴を持っていきます」と訴えました。メンバーの女性(31)は「折り方を知らない青年もいて、即席の折り紙教室になっちゃったんです。折ったあと『平和にいいことさせてもらった』といわれ、心が温かくなりました。原爆なくそうという思いと9条への思いがいっそう大きくなりました」といいます。
チャリで長崎へ
福岡
 福岡市博多区の千鳥橋病院では、青年たちが「反核平和チャリンコ隊」を結成し、約1万羽を長崎にとどけました。
 チャリンコ隊は十四人。三組に分かれ、交代で自転車をこぎました。先導車には「博多―長崎間を走ってます」との横断幕。途中激しくふる夕立やパンクに見舞われ、急な坂道や峠越えもものともせず無事走破。
 折り鶴を集めたのは、勤務して1年目、2年目の青年が中心。職員はもちろん、患者や見舞いに来た家族にも協力を呼びかけました。若者でにぎわう天神公園では、925人分の「ピース・メッセージ」も集めました。メッセージは、1メートル四方のタペストリー10枚ほどにして、折り鶴と一緒にとどけました。
 医療ソーシャルワーカーの中原芙季子さん(26)は、「とにかく、みんなに声をかけようと、ダンスをしている若者など、片っ端から集めました。訴えてみると、けっこう平和の問題で一致。小中学生たちも『自分たちも書きたい』と喜んでいってくるんです」と振り返ります。
お悩みHunter
高卒で働く派遣社員 大学に行った方が…
 Q 派遣社員ですが、ブライダル産業で働き始めて1年半になります。仕事はそれなりにおもしろいし、上司にも他の社員より期待されている気がします。でも、高卒では、将来が不安です。今からでも大学に行ったほうがいいか、迷っています。(23歳、女性。東京都)
自分の仕事に向き合って
 A 派遣社員にも派遣先に直接雇用を求めることができる場合があることをご存じですか。
 派遣受け入れ期間の制限がある業務では、派遣期間を超えて派遣労働者を使用しようとする場合、派遣可能期間に違反する日の前日までに、派遣労働者が雇用を希望する等の条件が整えば、派遣先は雇用契約の申し込みをしなければなりません(労働者派遣法40条の4)。専門性の高い26業務で、3年を超えて同一の派遣労働者を受け入れている場合、派遣先が当該業務に直接雇用の労働者を受け入れる場合には、派遣先はこの派遣労働者に雇用契約の申し込みをしなければなりません(同法40条の5)。あなたの場合、上記規定を適用できるか労働組合の相談窓口で確認してください。そのうえで考えてみてはどうでしょう。
 ところで、あなたは高卒ということで、将来に不安を感じているようですが、大学に行けば、その不安が解消するのでしょうか。
 私自身、時代が大きく変化するなか、将来に対して不安になることがあります。ただ、その不安は目の前の仕事に誠実に取り組むことでしか解消できない気がしています。自分の仕事にせいいっぱい向き合うことが、自分の能力や可能性を切り開き、時代を見定める最も確実な方法だと思うからです。その過程でこそ、人はそのときに必要な高度で幅広い専門知識を得ることが迫られるのではないでしょうか。
弁護士 岸 松江さん
 東京弁護士会所属、東京法律事務所勤務。日本弁護士連合会両性の平等に関する委員会委員。好きな言葉は「真実の力」。

(07/08/30中国新聞)
元大統領の「原爆必要」に反論せず 日本大使館が黙殺 
 広島、長崎への原爆投下を命じたトルーマン米大統領が引退後の一九五八年、原爆投下は必要だったとする広島市議会議長あての書簡を公表した際、元連合国軍総司令部(GHQ)のボナー・フェラーズ准将が反論するよう勧めたにもかかわらず、在米日本大使館は事実上「黙殺」していたことが、三十日付で公開された外交文書で明らかになった。
 久間章生元防衛相の「しょうがない」発言などで原爆投下に対する認識があらためて問われる中、第二次大戦を早期に終結させ犠牲者を最小限にとどめたとして原爆投下を正当化する米側の主張に、当時から直接反論してこなかった日本政府の対応ぶりをあらためて浮き彫りにしている。
 トルーマン氏は五八年二月に米テレビで、原爆投下に「良心のとがめを感じなかった」と発言。同三月には、抗議する広島市議会声明に反論する当時の任都栗司議長あての書簡を公表し、無条件降伏を求める四五年七月のポツダム宣言を日本がすぐに受け入れなかったと批判した。その上で、原爆投下により、連合国側と日本側双方で計百五十万人が死や身体障害者となることを免れたと主張、投下は「必要だった」と強調した。
 当時の朝海浩一郎駐米大使から藤山愛一郎外相あての三月二十日付の「極秘」公電によると、GHQで天皇制存続に尽力し、その後、帰米したフェラーズ准将が同十七日に朝海大使を訪問。昭和天皇は原爆投下の数カ月前に降伏を決めていたと述べてトルーマン氏の主張を「事実に反する」とし、「何等(なんら)かの処置に出てはどうか」と勧めた。准将は、当時の大統領が原爆投下に批判的なアイゼンハワーだったことから、トルーマン発言に抗議しても日米関係が損なわれる恐れはないとも指摘した。
 これに対し、朝海大使は「好意的勧告としてアプリシエート(感謝)する旨答えておいた」と報告。聞き置くにとどめ、具体的対応はしなかった。
 日本政府は米国の原爆投下について、交戦中の一九四五年八月十日、スイス政府を通じて米国政府に抗議文を提出したことはあるが、戦後は一度も抗議していない。

(07/08/30中国新聞)
「原爆必要」反論せず 「被爆者報われぬ」広島に怒りと失意 
 「原爆投下は必要だった」とするトルーマン米大統領に対し、元連合国軍総司令部の准将から「事実に反する」として反論するよう勧められたのに、日本政府は黙殺。三十日付で公開された外交文書で明らかになった四十九年前の政府の姿勢に、広島の被爆者や市民は、閣僚から原爆投下肯定論などが飛び出す現状とだぶらせ、怒りと失意をあらわにした。
 「人間の痛みより国家を重視する政府の一貫した態度。原爆を落とした側の米国人から反論を勧められても正さないなんて二重に許せない」と語気を強めるのは、広島被爆者団体連絡会議の末宗明登事務局長(81)。
 広島県被団協の坪井直理事長(82)は「米国の機嫌を取り、ものを言わない姿勢は現在まで尾を引いている。本当に情けない」。もう一つの県被団協の金子一士理事長(82)も「米国の言い分を黙認し言わせ続けた結果が核軍縮に逆行する今の米国の政策だ」と憤慨する。
 広島市出身で米国に被爆の実情を伝えるネバーアゲインキャンペーンの元大使、野上由美子さん(34)=川崎市=は「原爆投下を肯定する人が多い半面、占領軍として実情を知り、人間として率直に原爆を否定する退役軍人もいた。そんな人の良心や声が被爆国の政府に消されたのは悲しいし、被爆者の苦しみは報われない」と話す。
 広島修道大の菱木一美教授(国際政治)は、ビキニ被災で日本国内で反核世論が高まっていた▽当時のアイゼンハワー米大統領は対ソ戦略で核を拡散させた一方、核使用には否定的だった―など当時の国際情勢を分析。「再軍備をもくろみ、新しい日米安保の枠組みを目指していた当時の岸内閣にとって、国内世論に火を付けるような反論は受け入れられなかったのだろう」と指摘する。

(2007年09月02日 朝日新聞)
ひと・流行・話題
「ガラスのうさぎ」作者が新著 病床で執筆
 自らの戦争体験をつづった「ガラスのうさぎ」の作者、高木敏子さん(75)が、このほど「ラストメッセージ ガラスのうさぎとともに生きて」(メディアパル)を出版した。最近は体調がすぐれず、医師に制止されつつも書きあげた。「私の遺言」というこの本に込めた思いを高木さんに聞いた。
 高木さんは、東京・両国出身。東京大空襲で母と妹2人を、終戦10日前には米軍機の機銃掃射を受け、一緒にいた父を亡くした。戦中戦後の過酷な体験を記した「ガラスのうさぎ」は、戦争放棄をうたう「憲法第2章第9条」を「太陽の文面」と表現した。「ラストメッセージ」は、戦中の話に加え、本の出版経緯や反響、平和を願う輪の広がりを描いている。
 「ガラスのうさぎ」は子ども向けに書きましたが、「ラストメッセージ」は高校生以上向け。戦争を知らない大人が増えたこともありますが、最近の風潮に危機感を感じるからです。 
 過去にも、スパイ防止法賛成の署名を集める女性に取り囲まれ、徴兵制を唱える改憲派の老人とバスの中で大激論を交わしたことがありました。でも、今ほどの恐怖ではありません。
 60年戦争をしなかった日本が、イラク戦争で自衛隊を派遣しました。「お手伝い戦争」が起きてもおかしくなかった。そうなれば、9条はなし崩しです。
 「ガラス――」を書いた後に勉強して知ったことも多いのですが、戦争は1941年に突然始まったわけではなかった。その前から言論や芸術、宗教弾圧が行われていたのです。「国防婦人会」(岩波新書)を読み、市川房枝さんら知識層の女性が戦意高揚に協力してしまっていたのにも驚きました。そんな人もあらがえない勢いだったのです。
 教育基本法改正や国民投票法が次々と通り、防衛庁が省になって発言権を増した今、当時と同じような空気を感じます。それを許しているのは、大人です。
 「ガラス――」は、青少年読書感想文全国コンクール課題図書に選ばれるなどして子どもに読み継がれてきた。世界でも9カ国語に翻訳された。
 「攻撃されたらどうする」という人がいますが、話し合いで解決すればいい。「ガラス――」の感想文で総理大臣賞をとった中学生は、平和の使徒を目指し外務省に入りました。タイでは、「争いを話し合いで解決しようと思えるように」との国王の願いから、翻訳本500冊が宗教対立の激しい地域の学校に配られたそうです。
 米国と戦争した事実さえ知らない若者が増えたことに驚き、高木さんは電車で乗り合わせた女子高生らに話しかけるようにしている。
 下町だけで10万人が亡くなった東京に、戦争資料館はありません。戦時中の苦労を展示する施設はありますが、原因からその道のりまで被害・加害を超えた視点で学べる場が欲しい。声をかけた若者はみな、「なぜ止められなかったのか」を知りたがります。平和祈念館を、ぜひ実現してほしいのです。
 この数年、持病などが悪化し、昨年から講演活動ができなくなった。「信念だけでは生きられなくなった」と高木さん。入退院を繰り返しながら1年かけて本にまとめた。
 今回の参院選で、国民は自民党にNOを言うことができた。今度は「平和を守る」目線で選挙をしてみてください。その1票で、流れを止めることができるのです。 
 戦争を起こそうとするのは、人の心です。戦争を起こさせないようにするのも、人の心です。その心の輪を世界に広げてください。


最近のマスコミ報道(07/08/31) 「3年後に改憲案発議」 首相、方針変えず
日時:2007831
(07/08/30 NHK)
憲法改正目指す姿勢変わらず
憲法改正をめぐって、自民党は、さきの参議院選挙の公約に、憲法改正案が提出できるようになる3年後の平成22年の国会で憲法改正案の発議を目指すと明記しました。これに関連して、安倍総理大臣は、記者団に対し「憲法改正の手続きを定めた国民投票法が成立したので、この3年間で、国民とともに新しい憲法について広く深い議論をしていかなければならないという考えに変わりはない」と述べ、参議院選挙での大敗を受けても憲法改正を目指す姿勢に変わりがないことを強調しました。

(2007年8月31日  読売新聞)
首相「憲法改正」方針変わらず、態勢立て直しに手応えか
 安倍首相は30日、2010年の国会で憲法改正案の発議を目指すとした自民党の参院選公約に関し、「(憲法改正の手続きを定めた)国民投票法が成立した。この3年間、国民と共に新しい憲法について広く、深い議論をしていかねばならないとの考えは変わらない」と述べ、公約を堅持する意向を表明した。
 首相官邸で記者団の質問に答えた。
 首相は政権発足後、党総裁を最長2期6年務めることを視野に、在任中に憲法改正を目指す意向を表明していた。
 しかし、参院選の惨敗で、国民投票法が施行される3年後の憲法改正案の発議は困難になったとの見方が強まり、首相も参院選後は、憲法改正にほとんど言及していなかった。
 首相が今回、憲法改正の公約堅持の意向を表明したのは、改造内閣発足後に内閣支持率が上昇し、態勢立て直しに手応えを得たためと見られる。
 首相は30日配信の「安倍内閣メールマガジン」にも、「戦後つくられた、憲法を頂点とする様々な仕組みについて、原点にさかのぼって大胆に見直していくとの方針は、今も変わっていない」と明記した。

(2007年8月31日(金)「しんぶん赤旗」)
「3年後に改憲案発議」
首相、方針変えず
 安倍晋三首相は三十日昼、自民党が先の参院選の政権公約(マニフェスト)に二○一○年の憲法改定案発議を目指すと盛り込んでいたことに関し「(改憲手続きを定めた)国民投票法が先の(通常)国会で成立した。この三年間、国民とともに新しい憲法について広く深い議論をしていかなければいけないという考えに変わりない」と述べ、参院選惨敗により公約を見直す考えはないと強調しました。首相官邸で記者団に語りました。
 七月の参院選では、安倍首相が憲法改定を中心とする「戦後レジーム(体制)からの脱却」を掲げたことに国民から強い危ぐと批判の声があがり、自民党の歴史的惨敗につながりました。投票直前のTBS系テレビネットワークの世論調査でも、「憲法改正に共感できるか」との質問に61・9%が「できない」と答えています。首相の発言は、こうした国民世論に真っ向から挑戦するものです。

(2007年8月31日(金)「しんぶん赤旗」)
集団的自衛権
後方支援拡大求める
政府懇談会 10月以降に「報告書」
 政府は三十日、集団的自衛権行使の個別事例を検討する「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(座長・柳井俊二前駐米大使)の第五回会合を首相官邸で開き、戦地での米軍などへの後方支援について議論しました。
 自衛隊が海外で米軍などに補給・輸送などの後方支援を行う際、憲法が禁じる集団的自衛権の行使とみなされないために、それらの活動が「武力行使と一体化しない」ことが条件となっています。このためイラク特措法やテロ特措法では、自衛隊の活動は「非戦闘地域」に限るとしています。
 これに対して安倍晋三首相は会合の冒頭、「武力行使と一体化しないという条件が課された後方支援の在り方が、これまで通りでいいのか、重要な検討課題だ」と述べ、従来のあり方を見直すよう検討を求めました。
 委員からは「『一体化』論は日本特有の考え方で国際的に通用しない」「国際平和活動では結束が重要だ。『一体化』の論理はそれに逆行する」などの意見が相次ぎ、後方支援の拡大を求める声が相次ぎました。
 首相が提示した集団的自衛権の行使に関する「四類型」の議論については今回で一巡しました。これまでの会合で検討されたどの事例についても、集団的自衛権の行使に反対する意見は皆無でした。
 今後、引き続いて議論する予定ですが、九月中の開催は委員の日程上難しく、報告書の提出は十月以降になります。柳井座長は「今秋に作成したい」との意向を示しています。

(07/08/31 日経新聞)
憲法解釈の見直し大勢、後方支援活動で安保法制懇談会
 政府の「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(座長、柳井俊二前駐米大使)は30日の会合で、国連平和維持活動(PKO)などでの自衛隊による他国軍への後方支援のあり方について論議した。「他国の武力行使と一体化しない場合に限って後方支援できる」としている現行の憲法解釈を見直し、後方支援を積極的に展開できるようにすべきだとの意見が大勢を占めた。
 日本が直接武力行使しなくても、他国の武力行使と一体化しているとみなされれば武力行使を禁ずる憲法9条に抵触するというのが現行の解釈。安倍晋三首相は会合で「後方支援のあり方がこれまで通りでいいのか」と述べ、見直しが必要との認識を示した。
 出席者からは「一体化は日本特有の考え方で国際的に通用しない」「現行解釈は日本の平和活動を阻害している」などの意見が大勢を占めた。ただ「いかなる活動でもできるということではなく、歯止めが必要だ」として、後方支援に参加するための基準作りが必要との意見もあった。 

(2007年8月31日(金)「しんぶん赤旗」)
58年 米元大統領の原爆正当化発言
日本政府、黙認していた
外交文書で判明
 広島、長崎への原爆投下を正当化した一九五八年のトルーマン元米大統領の発言に対して、在米日本大使館が黙殺していたことが、三十日付で公開された外交文書で明らかになりました。
 この文書は、同年三月二十日付の朝海浩一郎駐米大使から藤山愛一郎外相あての「極秘」公電です。
 同年二月、トルーマン氏は米テレビで、原爆投下に「良心の呵責(かしゃく)を感ぜず」、「今後も万一の場合水爆を使う」と発言。広島市議会は二月十三日、発言に抗議し撤回を求める決議を可決しました。
 これに対しトルーマン氏は、任都栗司市議会議長あての書簡(三月十二日付)を送り、原爆投下が「日本及び連合国の将来の福祉のために緊急にして必要であった」と反論。同書簡を公表しました。
 「極秘」公電は、このトルーマン書簡に関するものです。同書簡が三月十五日付の米各紙で報じられたことや、元連合国軍総司令部(GHQ)のボナー・フェラーズ准将が大使館を訪問し、トルーマン書簡は事実に反するので「何等かの処置」をとってはどうかと助言したことを報告しています。
 当時のアイゼンハワー大統領が原爆投下に批判的だったことから、同准将は、日本側が態度表明しても両国が「気拙(まず)い関係になることは考えられず」と述べたといいます。
 これに対し大使館側は「好意的勧告としてアプリシエート(高く評価)する」と答えただけで、事実上、黙殺しました。
 一方、広島市議会の任都栗議長は三月二十日、原爆投下を「合法化」するトルーマン氏に再び抗議する書簡を送りました。
 なおフェラーズ准将は、「日本は天皇の英断により、米国の原爆投下の数ヶ月前の四月、既に降伏の決定を為(な)していた」として、トルーマン書簡を批判しました。しかし四五年四月時点で、天皇側近は講和を助言していましたが、天皇自身は戦争を継続する立場をとっていました。

(2007年08月31日 朝日新聞)
「国民は戦後レジームの発展選んだ」江田議長、首相牽制
 「参院を強力にして戦後レジーム(体制)を発展させるという選択を国民はした」。民主党出身の江田五月参院議長は30日、日本記者クラブで記者会見し、野党が過半数を占めた参院選結果をこう論評して「戦後レジームからの脱却」を掲げる安倍首相を牽制(けんせい)した。 
 江田氏は「参院は戦後レジームの象徴。戦後いろんな改革があり、新憲法下でスタートした」と指摘。平和主義など憲法の理念を強調し、「脱却を何としても食い止めねばならない」と力説した。 
 首相がこだわる憲法改正についても、自民党が大勝した05年の郵政総選挙を踏まえ、「郵政だけで得た民意で憲法も全部やってしまおうとなると、いろんなことを言わないといけない」とくぎを刺した。 
 一方、矛先は身内の小沢代表にも及んだ。小沢氏の国会運営について「政権担当能力はあるか、民主党はまだお試し期間だ」と注文。「物わかりがよくなれと言ってるわけではないが、数にものを言わせて議長の意向をねじ伏せることにはならないと思う」 
 参院の運営については「江田5原則」を提示。「情報面で与野党が同じ土俵に」「テーブルの下で手を握らない」などと説明し、衆院の7割が目安とされてきた審議時間についても「参院がじゃまだからこういう慣例を作ったのだろう。もうないでしょ」。 
 中立を重んじる議長は政治的な発言を極力控えるのが通例だ。江田氏は「議長の立場を離れて言うが」などと前置きはしたが、こうした奔放な発言は、激しい攻防が予想される臨時国会の波乱要因のひとつになりそうだ。 


最近のマスコミ報道(07/08/30) テロ特措法 延長反対48%(西日本新聞)
日時:2007830
(2007/08/29 西日本新聞) 
テロ特措法 延長反対が48% 世論調査賛成を10ポイント上回る
 秋の臨時国会では11月1日に期限切れとなるテロ対策特別措置法の延長問題が与野党攻防の最大の焦点だが、共同通信の電話世論調査で、「延長すべきではない」が48.2%と、「延長すべきだ」の38.6%を上回った。
 自民党支持層の60.8%、公明党支持層の60.6%が「延長すべきだ」と答えた。これに対し野党各党支持層で「延長すべきではない」と答えたのは民主党70.1%、共産党88.9%、社民党86.5%、国民新80.7%、新党日本71.0%で、与野党の支持層で賛否が大きく分かれた。「支持政党なし」の無党派層では延長賛成が26.8%で、反対が47.4%だった。
 男女別でみると、男性は延長賛成46.1%、反対44.1%と延長派が若干上回ったが、女性は賛成31.7%、反対51.9%と半数以上が延長に難色を示した。
 年代別では、20代の延長賛成が22.1%だったのを除き、30代以上は全年代で40%以上が賛成。しかし、賛成が反対を上回ったのは70歳以上だけで、他の年代はすべて延長反対が多数を占めた。


最近のマスコミ報道(07/08/30) 主要各紙の世論調査 改造内閣 不支持53%
日時:2007830
(2007年08月29日 朝日新聞)
改造内閣支持33%、不支持なお53% 本社世論調査
 安倍内閣の改造を受けて朝日新聞社が27日夜から28日夜にかけておこなった全国緊急世論調査(電話)によると、内閣支持率は33%で、過去最低だった参院選直後の前回(7月30、31日)の26%から上がったが、不支持は53%(前回60%)と引き続き半数を超えた。改造によって支持をやや持ち直したものの、依然として低水準だ。改造に伴って首相の評価が「よくなった」は18%どまり。「悪くなった」は9%で、66%は「変わらない」と答えた。秋の臨時国会で最大の焦点となるテロ対策特別措置法の延長に「反対」は53%と過半数を占め、「賛成」の35%を上回った。 
 改造内閣は自民党各派閥の会長らベテランを多く取り込んだ布陣だが、「人材がそろっている」との見方は30%で、「そうは思わない」が39%と評価は必ずしも高くない。ただ、個々の閣僚には期待感もある。厚労相に起用された舛添要一参院議員に「期待する」人は73%に達した。地方対策の目玉として総務相に就いた増田寛也・前岩手県知事に対しても「期待する」が41%と、「期待しない」の30%を上回った。 
 新しい内閣で一番力を入れてほしいことは「年金問題」39%、「地域格差の問題」20%、「財政再建」19%、「経済成長政策」17%の順だった。 
 安倍首相の自民党総裁の任期は残り2年。任期切れまで首相を続けてよいと思うかを聞くと、「続けてよい」は41%、「そうは思わない」は47%だった。「続けてよい」と思う人のうち、72%は「ほかにふさわしい人がいない」を理由に挙げ、消極的な賛成が目立つ。一方、「そうは思わない」人の56%は「国民の感覚とずれている」を理由に挙げた。 
 衆院で与党、参院で野党が多数を占める状況になったことを受けて、与野党の議論が進んで「よりよい法律ができるようになる」と肯定的に見る人は44%、「そうは思わない」と否定的に見る人も43%と割れた。与党支持層では否定的な見方が、野党支持層では肯定的な見方がやや多い。 
 政党支持率は自民25%(前回21%)に対し、民主が32%(同34%)と、前回に続いて民主が自民を上回っている。その他の政党は公明3%

 (2007/08/29 16:53 産経新聞)
内閣支持率38%に回復 産経・FNN世論調査 
 産経新聞社はFNN(フジニュースネットワーク)と合同で安倍改造内閣発足直後の27、28の両日、「政治に関する世論調査」を実施した。安倍内閣の支持率は38.0%で、参院選直後の7月31日から今月1日にかけて実施したFNN調査の22.0%から16ポイント上昇した。不支持は42.9%と21.9ポイント減少したが、なお支持率を上回っている。
 調査によると、今回の内閣改造・自民党役員人事について「評価する」との回答が41.5%で「評価しない」(37.7%)を上回った。もっとも期待する閣僚としては、舛添要一厚生労働相を挙げた人が45.5%に達し、増田寛也総務相(3.7%)、町村信孝外相、与謝野馨官房長官(各2.0%)が続いた。また、自民党幹事長に就任した麻生太郎氏に期待する意見が60.9%に上った。
 ただ、今回の人事で安倍晋三首相が掲げた「人心一新」が実現したとの回答は17.9%にとどまり、「そうは思わない」が66.9%。改造内閣の顔ぶれについても「変わりばえしない」(26.7%)、「バランスに配慮した」(26.1%)が上位を占め、安倍首相の独自色が出せたと考えている人は24.3%にとどまっている。

(08月29日 15:10 日経新聞)
 (8/29)安倍内閣支持率41%、首相続投「反対」49%・日経世論調査 
 安倍改造内閣の発足を受けて日本経済新聞社が27―28日に実施した緊急世論調査で、内閣支持率は41%となり7月末の前回調査から13ポイント上昇した。不支持率は23ポイント低下の40%。失言や政治資金問題で批判を浴びた閣僚らの入れ替えが一定の評価を得た格好だが、参院選の惨敗後も続投した安倍晋三首相の判断には厳しい見方も根強い。
 内閣支持率が4割台を回復するのは5月下旬の調査以来。参院選後に首相が続投した判断に関しては「反対だ」が49%にのぼり、「賛成だ」の40%をなお上回っている。首相の政権運営に対する有権者の厳しい視線が変わったわけではなく、目前に迫った臨時国会などでの成果が今後の支持率の行方を大きく左右しそうだ。

(2007年8月29日 毎日新聞)
毎日新聞世論調査:内閣支持33%、不支持52%
 
安倍内閣支持率の推移
 毎日新聞は27、28両日、電話による全国世論調査を実施した。27日に発足した安倍改造内閣の支持率は33%で、政権発足以来最低だった前回調査(4、5両日実施)から11ポイント回復、参院選前の水準に戻った。ただ、不支持率が52%と依然半数を超えているほか、安倍晋三首相の指導力不足も指摘されており、世論の厳しい見方に変わりはないことを示した。内閣改造・自民党役員人事への評価は、「評価する」43%、「評価しない」47%とほぼ二分された。
 昨年9月の発足から下落が続いた内閣支持率は春先に持ち直したが、5月調査で再び急落、支持率32%、不支持率44%となった。参院選直前の7月調査は支持率31%、不支持率53%だった。
 今回は、参院選直後の前回調査の支持率22%、不支持率65%という最悪の数字からは脱した。しかし、参院選の自民惨敗という結果につながった状況に戻しただけで、首相が政権浮揚を狙って行った人事が、あまり効果を上げたとは言いがたい結果となった。
 人事を「評価する」と答えた理由を四つの選択肢で尋ねたところ、「実力者を起用した」「改革を継続する意欲が見られる」がともに39%で最多。「人心一新になった」の18%が続き、「首相が指導力を発揮した」は3%にとどまった。
 内閣不支持の理由でも「首相の指導力に期待できない」が55%と群を抜いており、世論が首相の指導力に対して厳しい評価をしていることがうかがえる。
 人事を「評価しない」と答えた理由も四つの選択肢で質問。(1)「派閥均衡人事に戻った」31%(2)「改革を継続する意欲が見られない」26%(3)「首相が指導力を発揮しなかった」21%(4)「人心一新になっていない」19%−−の順。自民党の派閥領袖クラスを据えた布陣が批判的にとらえられていることが浮かんだ。
 首相がいつまで政権を担当すべきかを尋ねたところ、「今すぐ辞めるべきだ」23%、「年内いっぱいで辞めるべきだ」25%、「1年くらいで辞めるべきだ」23%、「できるだけ長く続けるべきだ」25%。7割の人が長期政権を望んでいないことが分かった。
 政党支持率は自民、民主両党がともに26%。前回、自民は17%まで落ち込んだが9ポイント回復。逆に民主は7ポイント減だった。【川上克己】

(2007年8月28日21時27分  読売新聞)
改造内閣支持率44・2%、参院選後比12・5ポイント増
 安倍改造内閣の発足を受け、読売新聞社は27日夜から28日にかけて、緊急全国世論調査(電話方式)を実施した。
 改造内閣の支持率は44・2%で、参院選直後の7月30、31日に行った緊急世論調査(同)の31・7%と比べて12・5ポイント増加した。不支持率は36・1%で、23・8ポイントも減少した。
 改造前の内閣に比べて、新内閣は「期待できる」と答えた人は55%で、「期待できない」の28%を大きく上回った。
 参院選での自民党大敗の一因が閣僚の不祥事や失言にあったことから、今回の内閣改造は派閥の長など経験豊かな議員を起用する重厚な布陣となった。こうした点での期待感が支持率の回復に結び付いたと見られる。
 閣僚の顔ぶれへの印象のうち、「実力や経験のある人が多く起用されたと思うかどうか」では62%が「そう思う」と答えた。「そうは思わない」は23%だった。
 「首相と親しい人が多く起用されたと思うかどうか」では、「そうは思わない」(48%)が「そう思う」(30%)を上回った。改造前は「お友達内閣」などと揶揄(やゆ)された印象は薄くなったようだ。
 ただ、内閣改造や自民党役員人事で、「安倍首相の政治手法がこれまでと変わった」という印象を持ったか否かでは、「持たなかった」が計48%で、「持った」の計39%を上回った。
 内閣に優先して取り組んでほしい課題(複数回答)では、「年金問題」の88%が最多で、「景気や雇用」82%、「政治とカネ」73%などが多かった。参院選で争点となった年金や政治とカネの問題で、改造内閣が成果をあげるかどうかを国民も注目しているようだ。
 政党支持率は、自民党が31・8%、民主党が30・9%だった。参院選直後の調査と比べて、自民党は0・5ポイント増え、民主党は0・5ポイント減ったが、依然自民党への有権者の視線は厳しいままだった。無党派層は、1・1ポイント増の25・2%だった。

(2007/08/30 共同通信)
改造内閣支持率40・5%  11.5ポイント上昇 
 共同通信社は安倍改造内閣の発足に伴い、27日夜から28日にかけて全国緊急電話世論調査を実施した。内閣支持率は40・5%と、参院選直後の前回調査(7月30、31両日)に比べ、11・5ポイント上昇した。不支持率は45・5%で13・5ポイント減少。内閣支持率が40%台となったのは、今年5月中旬の調査以来。
 支持理由では「ほかに適当な人がいない」が34・3%と最多で、「首相を信頼」の25・0%、「政治改革に期待」の9・4%などを大きく上回った。「首相に指導力がある」も2・2%しかなかった。
 改造内閣の顔触れについては「最初から期待していない」が52・4%を占め、期待感の薄さを浮き彫りにした。「期待通り」は26・3%、「期待外れ」は12・5%だった。

(08/30 07:55 北海道新聞)
内閣支持率、各紙で大差 専門家「あくまで目安」 論調の影響も
 二十九日に新聞各紙が報道した安倍改造内閣の支持率は、二紙が30%台前半、三紙が40%台前半と傾向が二手に分かれた。各社とも調査方法はほぼ同じだが、最高値と最低値が11ポイントも開く珍しい結果に。なぜ大きな差がついたのか−。 
 支持率は朝日新聞と毎日新聞がそれぞれ33%と最も低く、最も高いのは読売新聞で44%。北海道新聞が掲載した共同通信の調査結果は40%。各社とも電話による調査で、回答者数は千人程度だった。 
 今回の結果について、統計調査に詳しい新潟大法学部の田村秀(しげる)教授(行政学)は「ここまで差が開くのは珍しい」と見る。ただ、「質問の言い回しなどが微妙にでも違えば、結果に大きく影響する」とし、「嫌いな新聞社からの調査は回答を断るケースが多いので、その新聞社の論調が結果に反映されやすい」と分析する。 
 各社とも七月の参院選直後に行った調査に比べると、内閣支持率は7−13ポイント上昇。田村教授は「安倍内閣の支持率が少し持ち直したことが読み取れる」としつつ、「内閣支持率の数値は目安に過ぎず、全体的な傾向をつかむものと認識すべきだ」と話している。


最近のマスコミ報道(07/08/28) 安倍改造内閣 新聞各紙の社説・主張 
日時:2007828
(070828 朝日新聞)
 改造内閣発足―「脱安倍色」で、さて何をする
 安倍改造内閣がようやく発足した。参院選挙での歴史的惨敗から1カ月。退陣を求める民意や自民党内の批判を押し切っての出直しである。 
 外相、財務相、防衛相などの主要な閣僚や党三役に、派閥の会長をはじめ経験豊かなベテランを多く配した。挙党態勢づくりに腐心したとも言えるが、何よりも首相の続投に対する党内の批判を封じ、出直し安倍政権の船出をスムーズにするのが目的だったのだろう。 
 来年の洞爺湖サミットの準備などに当たる外相には町村元外相、財政再建の重荷を背負う財務相に額賀元防衛庁長官、テロ特措法の延長などを抱える防衛相には高村元外相をそれぞれあてた。 
●薄れる首相の存在感 
 昨秋の党総裁選で対立した谷垣禎一元財務相の派閥からは、今回も入閣者はゼロだった。だが、それ以外の派閥からはまんべんなく起用した。選挙後、首相の続投を批判した舛添要一参院政審会長を厚生労働相に起用したのも、党内融和への配慮と見られる。 
 一方で、前内閣から留任した閣僚は甘利経産相ら5人もいる。「人心を一新したい」と大見えを切ったわりに、新鮮味を欠くのは否めない。 
 党内外の批判を浴びた「お友だち」からの起用は、党幹事長代理から登用した石原伸晃政調会長と、留任した渡辺行政改革担当相くらいにとどめた。 
 「美しい国」「戦後レジームからの脱却」をはじめ、首相と同じ思想信条で結ばれた中川昭一政調会長や高市沖縄・北方相らは、はずれることになった。官房長官、政務の副長官、首相補佐官らの官邸スタッフも一部を残して入れ替わり、売りものにしてきた「チーム安倍」は解体された。 
 党の実力者を結集したことで、首相自らの存在感が薄れるのは避けられない。だが、現在の窮地から脱して出直し政権を軌道に乗せるには、プライドや安倍カラーなどにこだわっている場合ではない。そんな危機感が、閣僚や党役員の顔ぶれからくっきりと浮かび上がる。 
 教育再生と公務員制度改革で担当閣僚を留任させたことで、なんとか「安倍色」継続への思いをにじませた。 
●新しい目標を語れ 
 とはいえ、「第2幕」を迎えた安倍内閣が反転攻勢のチャンスをつかみたいなら、内向きに首をすくめるだけでは世論の支持は期待できまい。 
 首相にとって大切なのは、この人事の先にある「次の一歩」である。 
 選挙の惨敗を受けて、首相は「反省すべきは反省する」と語った。ならば「反省」の中身は何なのか。安倍カラーを脱するのは賢明だが、ではこの改造内閣で目指す新しい政策目標は何なのか。首相はそこを明確に語らなければならない。 
 その意味で、増田寛也・前岩手県知事を民間から総務相に起用したことに注目したい。地方分権や都市と地方の格差是正などを担当する特命相も兼ねる。 
 増田氏は「改革派知事」として補助金廃止や自治体への税源移譲を求める旗を振り、安倍政権でも地方分権改革推進委員会の委員長代理などを務めてきた。 
 分権改革には霞が関の役所の抵抗が強い。増田氏が補助金の半減、地方交付税の抜本改革といった持論を貫こうとすれば、政府内での衝突は必至だろう。公共事業や地方への補助金の削減に反対が強い自民党ともぶつかるに違いない。これをだれが支え、政権の新たな看板にしていくのか。 
 内閣の要である官房長官にベテランの与謝野元経済財政相をあてたのは、「少年官邸団」などと揶揄(やゆ)された首相官邸スタッフの強化が一つの狙いだろう。 
 だが与謝野氏は、首相と中川秀直前幹事長が主導してきた経済成長重視の「上げ潮戦略」に財政再建を頼ることには懐疑的だった。与謝野氏が霞が関、とりわけ財務官僚の厚い支持を得てきたのはそうした面もあってのことだ。 
 与謝野氏の起用は、安倍政権の経済政策の路線を変えることにつながるのか。秋からの税制改革論議では、消費税の税率アップ問題が焦点になると予想される。額賀財務相ら経済閣僚を含め、どこが司令塔になるのか。 
●民主党との総力戦 
 首相の経験不足や求心力の乏しさを補うのが、今回起用されたベテラン組に求められる役割だろう。懸案のテロ特措法の延長をはじめ、こうした政策課題をめぐって、新陣容の総力が試されることになる。 
 首相はきのうの記者会見で、「政治とカネ」の問題で閣僚らに疑惑が発覚した場合、「十分な説明ができなければ去っていただく」と述べた。当然のことであり、記憶にとどめておく。 
 これからの国会は民主党など野党との折衝が死活的な重要性を持つ。これまでのように、与党の数の力を頼んでの強引な政治はやりたくてもできない。 
 その最前線に立つのは麻生太郎幹事長、石原政調会長、二階俊博総務会長ら党側の幹部たちだ。参院選後、いち早く首相の続投を支持した面々でもある。 
 だが、新三役はいずれもこれまで内閣や党の要職にいた人を、いわば「席替え」したに過ぎない。これで、先の通常国会での乱暴な国会運営を「反省」したことになるのか。これでは、民主党など野党側も態度を硬くせざるを得まい。 
 民主党は31日に役員人事を行い、小沢代表を支える執行部体制を手直しする予定だ。対するは、ベテランを動員して総力戦の陣容で臨む安倍政権。いよいよ2大政党ががっぷり四つに組む舞台の幕が開く。 

(2007年8月28日  読売新聞)
安倍改造内閣 必要な政策の遂行に邁進せよ(8月28日付・読売社説)
 新体制の下での、安倍政権の再出発である。安倍首相にすれば、視界不良の荒波の中を、改めて航海に出る思いだろう。前途は、多難だ。
 安倍改造内閣の狙いは、明白だ。次期衆院選に向けて、先の参院選での歴史的大敗で大きく揺らいだ政権を立て直し、求心力を回復する。与党が過半数割れした参院で第1党となった民主党との政策の主導権争いに対処する……。その態勢の構築だ。
 自民党の要である幹事長に就任した麻生前外相は、安倍首相と政治理念や基本政策が共通し、参院選大敗後、いち早く首相続投を支持した。自民党内になお安倍首相への不満がくすぶる中、信頼する麻生前外相の幹事長起用は、政府・党一体の態勢を作る狙いだろう。
 今後、民主党との政策調整の責任者となる石原伸晃政調会長は、1998年秋の臨時国会で民主党とも協調して金融危機に対処し、「政策新人類」と言われた。二階俊博総務会長は、かつて小沢民主党代表と長く政治行動を共にし、民主党内にも太いパイプを持つ。
 衆参ねじれという新たな政治構図の下で政策を推進するには、出来る限り、民主党の協力を得る必要がある。自民党執行部の主要人事は、民主党との調整も重視した布陣と言える。
 政権を担当する以上、政治状況がどうあれ、必要な政策は着実に遂行しなければならない。
 ◆重要な民主党との調整◆
 改造内閣では、「お友達内閣」「論功行賞内閣」などと揶揄(やゆ)された陣容は、大きく変貌(へんぼう)した。挙党体制作りにも一定の配慮をしつつ、派閥領袖(りょうしゅう)を含め、実績、能力のある人材を起用したことに、政策に取り組む「仕事師内閣」として邁進(まいしん)することを目指す意図は見える。
 内閣の要の官房長官に起用された与謝野馨・元経済財政相は、党内有数の政策通だ。内閣のスポークスマンとしてだけでなく、政府内や政府・与党間の政策調整に中心的な役割を果たすことへの期待がうかがえる。
 外交・安全保障では、北朝鮮の核をはじめ日本の安全保障環境の悪化に対処するために、日米同盟を強化しなければならない。
 国際社会の責任ある一員として、国際平和協力活動に積極的な役割を果たす上で、11月1日で期限切れとなるテロ対策特別措置法の延長は、秋の臨時国会の焦点ともなる、当面の最重要課題だ。
 いずれも派閥領袖である町村信孝・元外相を外相に、高村正彦・元外相を防衛相に、それぞれ起用したのも、そうした課題の重要性を踏まえたものだろう。
 ◆強化すべき危機管理◆
 安倍首相は、「改革や新経済成長戦略は引き続き進めていかねばならない」と言う。甘利明経済産業相や大田弘子経済財政相の留任は、政策継続の意思を示すものだ。経済力が日本の国力の基盤である以上、当然である。
 自民党内には、地域格差や雇用格差など、小泉前首相の構造改革の負の側面が参院選大敗の一因だったとし、その修正を求める声がある。今後、来年度予算編成に向け、地方への予算配分増など、自民党内の圧力が強まる可能性がある。
 格差是正も担当する総務相に増田寛也・前岩手県知事を起用したことに、地方分権などと併せ、地方対策を強化する狙いもうかがえる。次期衆院選に向けた対策という側面もあるのだろう。
 だが、行き過ぎた構造改革の一定の「修正」は必要だとしても、それが「迎合」になってはなるまい。改革の停滞や後退、ましてバラマキになるようなことがあってはならない。
 先の自民党の参院選総括では、前内閣で相次いだ閣僚の事務所費問題や失言に対する安倍首相の対応の甘さを指摘し、今後の内閣に、危機管理能力の強化を求めている。
 安倍改造内閣として、当然、留意すべきことだ。だが、今後の危機管理は、単に個別の閣僚の「管理」にとどまるものではあるまい。厳しい政権運営、政策対応を余儀なくされる状況の下では、政権運営イコール危機管理という意識で臨むことが必要になる。
 ◆混乱すれば大連立も◆
 今後、改造内閣が順調に動き出し、安倍首相の自民党内での求心力が回復しても、さらに次期衆院選で与党が過半数を確保して政権を継続しても、展望が開けるわけではない。参院での与党過半数割れ、民主党第1党という構図には、何の変化もないからだ。
 しかも、こうした状況は、6年後の次々期参院選以降、10年近くもの間、続く可能性がある。
 この間、自民、民主両党の競合、対立によって、国政の停滞と混乱が続くようなことになれば、日本の国益が大きく損なわれかねない。国民生活にも重大な影響を与える。
 外交・安全保障は無論、国内政策では、財政再建、年金をはじめとする社会保障制度の再構築、財源としての消費税率引き上げを中心とする税制改革など、緊急に取り組むべき課題が山積している。
 自民党内には、こうした課題に対処するために大連立も必要ではないか、とする声もある。国政運営が混乱したりすれば、そうした声が一層、強まることもありうるのではないか。
 (2007年8月28日 毎日新聞)
内閣改造 ぼやけてきた安倍カラー
 安倍改造内閣が27日発足し、合わせて自民党三役も入れ替えとなった。参院選で大敗しながら安倍晋三首相が早々と続投を表明してから約1カ月。今回の人事で失敗すれば後がないことは首相自身が十分承知だろう。しかも、「衆参ねじれ国会」の中、今後は民主党など野党との戦いが中心となる。ベテランを配置し、国会論戦に備えるという意図は明確に見える人事だ。
 だが、これで安倍政権が浮揚するかと言えば無論、未知数だ。バランス重視の結果、この政権が今後一体、何を目指していくのか、焦点がぼやけてしまった印象も強いからである。
 反省すべき点は反省する−−。参院選以来、首相はそう繰り返してきた。昨秋の政権発足時には身内を多く起用し、「お友達内閣」とやゆされ、閣僚の「政治とカネ」の問題も相次いで浮上した。自民党も先の参院選については「国民から指導力、統治能力に疑問を呈されたのではないか」と厳しい総括をしたほどだ。
「お友達」は十分反省
 そうした反省は生かされたのか。その意味では注目されていた官房長官人事で、「お友達」の代表格だった塩崎恭久氏を代え、無派閥でベテランの与謝野馨氏を起用したのは一種のサプライズだった。与謝野氏は、経済成長と歳出削減を優先し、増税は極力抑えるという安倍内閣の経済成長路線とは一線を画し、財政再建重視派とみられてきたからだ。
 首相は与謝野氏が政策に通じていることに加え、そのバランス感覚や、党内に敵が少ない点などに期待したと思われる。官房長官は首相の出身派閥・町村派からの起用も取りざたされていたが、首相は「派閥重視に逆戻りした」との批判を恐れたのだろう。
 もちろん、消費税増税をどう考えていくのかなど、目指す経済財政政策に関しては、首相と与謝野氏との間ですり合わせる必要がある。また、これまで安倍内閣は霞が関の官僚と対決している姿を演出することで、政権浮揚を図ろうとしてきたが、効果を上げたとは言えない。今回、首相補佐官を減らした点も含め、中央省庁との関係をどう再構築するかも「安倍・与謝野」官邸の課題となろう。
 塩崎氏より年長になったとはいえ、与謝野氏も党内に確たる基盤がないという問題もある。麻生太郎幹事長をはじめ、自民党の新三役も同様である。こうした事情を踏まえ、安倍首相が町村派会長である町村信孝氏を外相、高村派会長の高村正彦氏を防衛相、津島派の次期首相候補と言われる額賀福志郎氏を財務相に起用したのは、派閥への配慮があったことは否定できない。
 ただ、今回は挙党体制を整えれば済むわけではない。そこに首相の苦しさがある。
 臨時国会では、さっそく内閣の命運がかかるとさえいえるテロ対策特別措置法の延長問題が控えている。延長反対の立場を示している民主党に国会でどう対応していくか。外相経験者の高村氏を防衛相にすえたのは国会答弁で行き詰まれば、途端に内閣が瓦解するという危機感からだろう。
 参院選後、首相続投批判を繰り返した舛添要一氏を厚生労働相に起用したのも批判勢力を取り込む理由にとどまらず、引き続き大きな焦点となる年金問題などでの「答弁力」に期待したはずだ。増田寛也前岩手県知事の総務相起用は、地方分権に精通している点に加え、参院選で指摘された「地方の自民党離れ」を食い止め、地方重視の姿勢を示すためでもあろう。
 このほかにも内外の課題は山積している。
 外相再登板となる町村氏は小泉前内閣での外相当時、中国などの理解を得られず、日本の国連安保理常任理事国入り構想を進められなかった経緯がある。北朝鮮問題をめぐる6カ国協議では今、日本が置き去りになるのではとの懸念がある。核と拉致問題をどう解決していくのか。現状では道筋がまったく見えていないのが実情だ。
 事務次官人事でお粗末な内紛が起きた防衛省には、テロ特措法に加えて、沖縄の普天間飛行場移設問題も控えている。
 今回の内閣改造前に政治資金収支報告書を訂正する自民党議員が相次いだことも国民は忘れないだろう。これまでいかに、ずさんな資金管理をしてきたかの表れであり、今回の入閣組の中からも問題が浮上しないとも限らない。その場合、一気に改造内閣の評価は下がることになるだろう。
支持率次第で退陣論も
 しかし、何より最大の課題は首相自身が何を目指すのか、ということではないだろうか。
 首相は記者会見で「美しい国」「戦後レジームからの脱却」路線について、「戦後作られた仕組みを原点からさかのぼって改革していく方針に変わりはない」と語り、教育や公務員制度改革を挙げたが、憲法改正は口にしなかった。これも「生活」を前面に掲げた民主党に負けた反省なのだろう。安倍色は明らかに薄まっている。
 世論に謙虚に耳を傾け政策の優先順位を変えることは大いにあっていい。だが、それに代わる新しい「旗」を掲げているかといえばそうではない。これでは「安倍首相でなくても構わない」との声が早晩、与党内からも出てくる可能性がある。人事を経ても安倍政権が瀬戸際の状況にあるのに変わりはないというべきである。
 自民党内には次の衆院選を待たずに総裁選を行い、首相交代したうえで衆院解散・総選挙に臨むべきだとの声もくすぶっている。首相の頼りはやはり国民の支持だ。今回の人事を、そして臨時国会での与野党論戦を国民がどう評価するか。支持率が一向に回復しないようだと、退陣要求は再び強まることになるだろう。

(07/08/28 日経新聞)

後がない安倍改造内閣の活路は改革
 安倍晋三首相が改造内閣を発足させた。7月の参院選で惨敗し、与党が参院で過半数を大きく割り込む中での背水の陣である。改造内閣は挙党態勢を意識し、与党の結束を重視する布陣となった。集団的自衛権の憲法解釈変更など安倍カラーの強い政策は当面棚上げするほかない。参院で第一党となった民主党と粘り強く話し合い、財政改革や行政改革、規制緩和を着実に進めて経済の持続的成長を図ることが安倍政権の最大の使命である。
 人事能力問われた首相
 参院選での自民党の主要な敗因に安倍内閣の閣僚の相次ぐ失態が挙げられる。事務所経費問題で不明朗な点を指摘されても説明責任を果たせない閣僚や有権者の神経を逆なでする発言をする閣僚が後を絶たなかった。事務所経費問題を追及されていた松岡利勝農相(当時)の自殺は極めて衝撃的だった。
 安倍首相の任命責任が厳しく問われたのは当然である。問題は閣僚の失態が明らかになったにもかかわらず、安倍首相が閣僚をかばい続けたことで傷口を大きく広げたことである。迅速な対応を怠ったために安倍首相や首相官邸の危機管理能力にも疑問が呈されるようになった。閣僚を定期人事異動のように頻繁に変えるのは好ましくないが、不適格な閣僚を更迭することに躊躇(ちゅうちょ)してはなるまい。
 今回の改造で安倍首相は時間をかけて慎重に人選を進めた。首相就任時の組閣が総裁選での論功行賞人事に偏り、「お友達内閣」との批判もあったことを踏まえ、今回は広く党内から人材を募る挙党態勢を意識した人事となった。安倍内閣と自民党の置かれた厳しい政治状況を考えれば、党内結束を最優先するのは当然だろう。
 自民党三役人事では幹事長に麻生太郎氏を据えた。麻生氏は安倍首相と政治理念が近く、参院選開票日にいち早く首相続投支持を伝えるなど個人的にも親しい関係にある。半面、党運営の力量は未知数である。政調会長に起用された石原伸晃氏も清新さはうかがえるが、力量には不安がある。党内とりまとめや国会対策などで総務会長に昇格した二階俊博氏の調整手腕に依存するケースが増えそうである。
 内閣の要である官房長官には与謝野馨氏が起用された。とかく安定感に欠けると指摘されていた首相官邸の機能を取り戻すため政策通で調整力のあるベテラン議員の起用となった。年金問題や社会保険庁解体を担当する厚労相には舛添要一氏、テロ対策特措法の延長問題を抱える防衛相には高村正彦氏が就任した。ともにがたついた省内の立て直しが当面の課題になる。
 来年の「洞爺湖サミット」をにらんで外相には町村信孝氏、環境相には鴨下一郎氏が起用された。首相が重視する財政改革、経済成長戦略を担う財務相には額賀福志郎氏が就任し、経済産業相と経済財政担当相には甘利明氏と大田弘子氏が留任した。今回の組閣で目立つのは党内の有力ベテラン議員の起用である。

 改造の目玉は地域の活性化を重視し、総務相に民間から改革派知事として定評のあった増田寛也前岩手県知事を起用したことである。これは参院選惨敗の要因の1つに改革に取り残された地方の格差に対する強い不満があったことを踏まえたものとみられる。
 地域活性化のカギはばらまき行政ではなく、地方分権と規制改革の推進である。増田総務相には地方分権・道州制推進で閣内の議論を積極的にリードしてほしい。
 許されない改革後退
 改造人事を通じて安倍首相の今後の政権運営の意図がうかがえる。従来の安全保障、憲法改正、教育改革重視から経済成長戦略、年金対策、地域再生重視への軌道修正である。これは参院選惨敗の結果を踏まえれば当然の帰結である。大きく離れた有権者の支持を取り戻すには内政重視の姿勢を示し、自民党立て直しのために挙党態勢を演出する必要に迫られたといえよう。
 参院選で惨敗した安倍内閣にはもう後がない。内閣支持率も低迷している。参院では野党が多数派となり、テロ対策特措法の延長もメドが立たない状況である。衆院ではなお3分の2以上の多数を与党が占めているとはいえ、秋の臨時国会や来年の通常国会の運営は極めて苦しく、いばらの道が予想される。
 安倍内閣に活路があるとすれば、改革の手を緩めることなく、景気を着実に回復軌道に乗せて持続的な経済成長を実現することである。地域の再生も究極的には経済成長を通じて実現されるものである。安易なばらまきによって改革を後退させてはならない。有権者の信頼を回復するには安倍首相が改革継続へ揺るぎないメッセージを内外に示し、これを実行することである。

 (2007/08/28 産経新聞)
内閣改造 総力挙げ改革路線貫け ねじれ国会へ重厚な布陣だ 
 政権の立て直しに、派手さよりも手堅さを重視した布陣といえよう。
 改造内閣や自民党新三役の顔ぶれからは、がけっぷちの安倍晋三首相が何とか踏みとどまり、与党内に幅広く人材を求めながら、改革路線を継続していこうという決意が読み取れる。
 参院選大敗から約1カ月を経て、内閣支持率や首相の求心力に回復の兆しはまだない。人心一新をもってしても、厳しい再出発であることに変わりはない。
 ◆ベテラン起用で安定感
 首相は改造を機に、新しい国づくりを再スタートさせると述べた。参院選1人区の惨敗などを背景に、与党内では地域間格差への対応を求める圧力が強まっている。首相の基本路線に揺らぎがあってはならない。もしそうなれば、続投の意義は失われる。
 主要閣僚では、内閣の要役となる官房長官を塩崎恭久氏から与謝野馨元通産相に代えたほか、外相に町村信孝、防衛相に高村正彦の両元外相を起用し、内閣の危機管理や外交・安全保障担当にベテランを配置した。
 安倍内閣発足後、事務所経費や失言などで閣僚が辞任する度に、首相や内閣官房の対応のまずさが指摘され、参院選にも悪影響を及ぼした。
 与謝野氏は組閣後の会見で、「地味でも着実に仕事をしていく」と基本姿勢を述べたが、若い首相を支える観点からも、政策通で党務にも通じたその手腕が期待される。
 日米同盟の維持、強化を図りながら「価値の外交」「主張する外交」を継続する意味で、外相経験のある町村、高村両氏の起用は安定感を与える。秋の臨時国会では、テロ対策特別措置法の延長が焦点となるが、それを見据えた人事ともいえよう。
 政策通で「族議員」でない舛添要一氏を、年金問題などの対応が急務となる厚労相に起用したのも人事の柱の一つだ。公然と首相批判を展開していた人物を登用した意外性もある。
 全体としては、町村、高村両氏や額賀福志郎財務相の起用に象徴されるように、各派の領袖クラスを閣内に取り込むことなどで挙党態勢を図った。
 派閥の均衡うんぬんよりも、要所にベテランを置くことで、若さと稚拙さが同居していた前内閣の印象を拭(ぬぐ)うねらいがあったと受け止めたい。
 ◆力点置いた「対民主党」
 自民党三役人事では、外交政策などで首相と政治路線が重なり合う麻生太郎氏を、党再生の先頭に立つ幹事長に起用した。総務会長には、国会運営や選挙対策に通じ、かつて新進党時代に民主党の小沢一郎代表と行動を共にした二階俊博氏を充てた。政調会長には、平成10年の「金融国会」で、金融再生関連法をめぐり民主党との協議にあたった石原伸晃氏を起用した。
 3氏とも、参院第一党となった民主党との政党間協議に取り組む考えを示しており、衆参のねじれ現象に対応して政策運営にあたるシフトだ。
 もっとも、民主党の小沢代表は話し合い路線はとらず、徹底して安倍政権を弱体化させ、解散・総選挙に追い込む戦術をとるものと予想される。
 その意味で、与野党協議の態勢は組むにせよ、重要な政策、法案で政府・与党が譲れない点については、ベテラン閣僚が明確に答弁し、必要な反論を行うことが重要である。
 テロ特措法の延長に民主党が反対を表明していることについて、町村氏が就任早々、民主党は方針を転換すべきだと主張したのは適切である。
 民間人の増田寛也元岩手県知事を総務相に起用し、地方対策重視の姿勢も示した。地方分権に取り組み、改革派知事と呼ばれた人物だが、担当分野の広い重要閣僚に抜擢(ばってき)したのは注目される。問題は、地方重視を名目に、公共事業を通じた対策に与党内の関心が集まっていることだ。
 厳格な財政再建路線に立つ与謝野氏が閣内に入り、石原政調会長は従来型の公共事業による地方対策は効果が薄いと明言する。しかし、麻生幹事長や二階総務会長を含め、公共事業に一定の効果を期待する意見は多い。
 憲法改正への取り組みなど、新しい国づくりを含む構造改革路線を貫けるかどうか、参院選大敗への反省という文脈で安倍首相は進むべき道をあいまいにしてはならない。

(2007年8月28日(火)「しんぶん赤旗」)
安倍改造内閣
国民の審判受け止めていない
 「空気が読めない」から、その頭文字をとって「KY」―最近の若者言葉です。参院選での大敗にもかかわらず居座りを続ける安倍晋三首相もそう呼ばれてきました。その首相が選挙後一カ月にしておこなった内閣改造と党役員人事は、この政権が国民の審判をまともに受け止めていないことを浮き彫りにしました。
 安倍首相は参院選後、「反省すべきは反省する」と繰り返してきました。しかし、自らの居座りに加え、この人事では、安倍首相には国民が何に審判を下したのか、何を反省すべきかが、まったくわかっていません。
中枢を占める「靖国」派
 安倍政権は発足以来、内閣・党の中枢を侵略戦争肯定の「靖国」派で固め、小泉純一郎政権以来の「構造改革」路線を継承するとともに、「美しい国」づくりや「戦後レジーム(体制)からの脱却」を掲げて、改憲路線をひた走ってきました。
 参院選挙での自民惨敗も、「消えた」年金問題や閣僚の失言だけでなく、弱肉強食の「構造改革」路線と、「美しい国」を旗印にした改憲路線の押し付けに、国民が「ノー」の審判を下したためです。このことは、参院選での大敗後も安倍首相が居座っていることに、内閣支持率が下落を続けていることでも明らかです。
 国民の審判を受け止めるなら辞めてしかるべき安倍首相がおこなった改造人事ですから、そこに国民が評価できるものがないのは当然ですが、それにしても、今度の人事はひどすぎます。
 党役員人事で、辞任した中川秀直氏に代わって幹事長に就任したのは外相から横滑りした麻生太郎氏です。麻生氏や政調会長に就任した石原伸晃氏はいずれも首相の盟友で、総務会長の二階俊博氏も首相の居座りを支持してきました。自らの出身派閥である町村派会長の町村信孝氏や高村派会長の高村正彦氏、ベテランの与謝野馨氏、額賀福志郎氏なども入閣させ、文字通り「かきあつめ」と「寄せ集め」で体制を強化しました。これでどうして「人心一新」などといえるでしょうか。
 変わらないのは内閣・党の要所を改憲タカ派や「靖国」派で固めたことです。麻生幹事長は、「靖国」派の団体、日本会議国会議員懇談会の特別顧問を務める「靖国」派の代表格です。外相に就任した町村氏や防衛相に就任した高村氏も改憲タカ派です。与謝野官房長官や額賀財務相、留任した伊吹文明氏、渡辺喜美氏らも「靖国」派の議員連盟のメンバーです。まさに、国民の審判にそむいて、改憲路線を突き進むための布陣というほかありません。
 「構造改革」路線を担当する閣僚も、ほとんどが留任あるいはベテランの起用です。あきれたのは、「バカ大臣はけじめを」「安倍さんがやめないとは驚きだ」などと、選挙中からさかんに首相を批判してみせていた舛添要一参院議員まで、厚生労働相として閣内に取り込んだことです。「構造改革」路線を強行していくためのなりふり構わぬ姿です。
居座りと巻き返し許さず
 内閣改造を受け、九月からは臨時国会が始まります。焦点となるテロ特措法の延長案などの審議も始まります。「構造改革」路線の継続が焦点になる、来年度予算編成の作業も本格化します。
 安倍改造内閣とその与党に国民が期待できるものはありません。参院選挙で示された国民の審判を踏まえ、安倍首相の政権への居座りと、国民の審判に逆らった巻き返しを許さないことが、いよいよ大事です。

(2007年8月28日(火)「しんぶん赤旗」)
改憲・「構造改革」に固執
安倍改造内閣が発足
国民の審判に反省なし
 安倍晋三首相は二十七日、自民党役員人事と内閣改造を行い、安倍改造内閣が発足しました。派閥の領袖クラスを重要ポストで処遇し、党内向けには「挙党体制」に配慮する一方、改憲や「構造改革」路線など、参院選で国民の審判を受けた政策課題については、まったく反省の見られない、旧態依然の布陣となっています。
麻生自民幹事長・二階総務会長・石原政調会長
 自民党の新三役には、幹事長に麻生太郎前外相、総務会長に二階俊博前党国対委員長、政調会長に石原伸晃前党幹事長代理を任命。安倍首相に近く、続投をいち早く支持した人物で固めました。
 内閣改造では、十七人の閣僚のうち七人が初入閣。五人が再入閣で、五人が留任しました。女性閣僚は二人です。
 内閣の要となる官房長官には、「仲良し官邸団」などと批判の的になっていた塩崎恭久氏にかわり、経済財政担当相や党政調会長、官房副長官などを歴任してきた与謝野馨氏を充てました。与謝野氏は、自民党の新憲法制定推進本部事務総長として、党新憲法草案をとりまとめた“実績”があり、幹事長に起用された麻生氏とあわせ、党と内閣の中枢を改憲派が押さえた形です。
 首相が看板にしている「教育再生」についても、伊吹文明氏を文科相に、山谷えり子氏を教育再生担当首相補佐官にそれぞれ留任させ、継続姿勢を鮮明にしました。
 民間から岩手県前知事の増田寛也氏を地方都市格差是正担当として入閣させたものの、甘利明経済産業相、大田弘子経済財政担当相、渡辺喜美行革担当相は、それぞれ留任。貧困と格差をひろげ、参院選での自民党大敗の要因となった「構造改革」路線を継続する布陣を敷きました。
 町村派から町村信孝氏(外相)、高村派から高村正彦氏(防衛相)、津島派から額賀福志郎氏(財務相)ら、派閥の領袖クラスが入閣。全体として派閥均衡型の組閣となりましたが、谷垣派からの入閣はありませんでした。

(2007年8月28日(火)「しんぶん赤旗」)
内閣改造・自民党役員人事
「構造改革」推進・侵略戦争正当化
どこが「人心一新」なのか
 安倍晋三首相が二十七日に行った内閣改造・自民党役員人事は、七月の参院選惨敗を受けて「反省すべき点は反省をしながら、人心を一新せよというのが国民の声だ」という首相の身勝手な解釈が出発点でした。自らは「人心一新」に含めず早々と続投を宣言し国民に「反省」を口にしました。さぞ参院選の民意を踏まえた布陣が示されるのかと思ったら、まったく違いました。
新鮮味はなし
 十七人の閣僚中、文部科学相、経済産業相、国土交通相、行政改革相、経済財政相の五人が留任。他の閣僚も小泉政権や党幹部として弱肉強食の「構造改革」路線を推進し、社会保障を切り捨てたり、アメリカ言いなりの日米同盟を強化してきた当事者がポストを違えてまたぞろ顔をそろえたのです。新鮮味も何もありません。
 財務相、文科相、防衛相のポストには安倍首相の出身派閥・町村派と違う派閥会長ら領袖クラスが就きました。党幹事長と総務会長も同じです。昨年九月の組閣で安倍首相が自らの立場に近い人脈で閣僚を固めたことから「論功行賞人事」「お友だち内閣」と揶揄(やゆ)され続けたことを意識した布陣がありありです。
 安倍首相にとっては「挙党態勢」「重厚内閣」とすることで与党に参院選惨敗の反省をみせたつもりなのでしょうが、国民向けには何ら反省していません。
 参院選で国民が示したものは何だったのか。
 「消えた年金」問題や「政治とカネ」のスキャンダル、相次ぐ閣僚の暴言にとどまらず、小泉政権から続く「構造改革」路線による国民の暮らし破壊、貧困と格差の拡大をもたらした政治に対する深い怒りです。また、「戦後レジーム(体制)からの脱却」を旗印として、侵略戦争に無反省なまま、憲法改定を政権公約の第一に掲げた安倍政権の危うさに対する国民の強い警鐘です。自民党自身、参院選総括で「構造改革の推進でもはや地方が耐えられなくなっている」「国民意識とズレてはいなかったか」と認めています。
 ところが、「構造改革」路線推進の主要ポストである経済財政担当相、行革担当相、経済産業相を留任させたのです。大田弘子経財担当相が就任会見で「経済財政諮問会議の重要性はいささかも変わらないし、改革に停滞は許されない」と述べたことは、選挙で下された民意への無反省ぶりを象徴しています。
国民より米国
 侵略戦争を正当化する問題でも改造内閣は、安倍首相を含め十八人のうち九人が、改憲・右翼団体の日本会議と連携する日本会議国会議員懇談会(日本会議議連)に所属。同議連のもとにつくられた「教育基本法改正促進委員会」の役員も三人います。党幹事長に日本会議議連の特別顧問で前会長の麻生太郎前外相を起用したことも、改造内閣がいかに侵略戦争に無反省なのかを物語っています。
 安倍首相は、高村正彦元外相の防衛相の任命にあたって、「テロ特措法の期限延長、在日米軍再編についてしっかり取り組んでほしい」と強調しました。町村信孝外相は「日米同盟がわが国の国際関係の基軸だ。日米関係の基礎を固めていく」と語りました。
 国民の暮らしには目を向けず、改憲路線にしがみつき、アメリカのメガネでしかみない政治です。自らの悪政に「反省」もできない安倍改造内閣・自民党に未来はありません。(高柳幸雄)

(2007年8月28日(火)「しんぶん赤旗」)
安倍改造内閣が発足
市田書記局長が記者会見
 日本共産党の市田忠義書記局長は二十七日、国会内で記者会見し、同日発足した安倍改造内閣について、次のように述べました。

 「人心一新」と安倍首相自身がいいましたが、一新されるべき張本人がそのまま居座って、役員人事、閣僚人事が一新されるわけがないわけで、それ自体が根本的矛盾といえます。内閣の顔ぶれをみても旧態依然で、要所要所に右翼的、タカ派的で、憲法を変える立場にある人ばかりを寄せ集め、かき集めた内閣という気がします。
 自民党が参院選で大敗した根本には、貧困と格差をいっそう拡大した「構造改革」路線、そして「戦後レジームからの脱却」といって戦後日本の原点である憲法や平和や民主主義から「脱却」するという、自公政権の基本路線そのものへの国民の厳しい審判がありました。しかしそこへの反省がなく、「人心一新」といいながら、一新されるべき人が一新されないで居座っているのが全体の状況です。
 私たちは、参院選で示された有権者の審判に応えて、選挙でかかげた公約の実現めざして日本共産党ならではの論戦を展開し、真正面から安倍内閣と対決していきたいと思います。


最近のマスコミ報道(07/08/24) 公明ジワリ距離感 連立見直しの声、創価学会は首相に不信感
日時:2007824
(07/08/22 産経新聞)
公明ジワリ距離感 連立見直しの声、創価学会は首相に不信感
 公明党は22日、都道府県の代表者を党本部に集めて協議会を開き、参院選を総括する。平成11年に自民、公明両党が連立を組んで以来、順調に比例票を伸ばしてきた公明党にとって、大幅に得票を減らした今回の参院選は歴史的大敗といえる。支持母体の創価学会には安倍晋三首相への不信感も広がる。党内からも自公路線の見直しを求める声も上がっており、連立8年目を迎え、公明党執行部はますます難しいかじ取りを迫られそうだ。
 ≪つぶやき≫
 「安倍首相はもうちょっとやると思ったのになあ…」
 参院選のショックがさめやらぬ8月1日、東京・八王子市で開かれた創価学会の本部幹部会。池田大作名誉会長は創価学会や公明党の幹部にこうつぶやいたとされる。
 池田氏は、安倍政権を今後も支持していくことを前提にスピーチを進め、機関紙にこの「つぶやき」が掲載されることはなかったが、自公路線の“危うさ”を露呈した瞬間だった。
 9日昼、国会内で開かれた公明党衆院議員団会議でも、あるベテラン議員から衝撃発言が飛び出した。「自民党は確実に崩壊の過程にあるのではないか。是々非々の立場をはっきりさせるべきだ」。連立離脱を促したともとれる発言に室内は静まりかえったという。
 さすがにこの意見に賛同の声はなかったが、他の議員からも「参院選では与党効果が得られなかった」「一部地域をのぞいて、自公間の選挙協力はうまくいかなかった」など自民党への不満の声が相次いだ。
 参院選で、公明党は愛知、神奈川、埼玉の3選挙区でいずれも現職が落選。比例でも3年前の862万票から776万5000票に激減した。公明党の長年の目標「比例で1000万票」にはほど遠い結果だった。
 ≪「緊張的強調」≫
 公明党が、首相を支持してきた最大の理由は「選挙の顔になる」との一点に尽きる。首相の憲法改正論や外交・安全保障政策と、公明党の「平和路線」とはもともと開きが大きい。党執行部はそれを承知の上で、支持者の不満を抑えてきただけに、「選挙の顔」にならないならば、支持者の突き上げは避けられないというわけだ。
 このため、公明党はジワジワと軸足をずらしつつある。あるベテラン議員は、「これからは緊張的協調関係だ。自民党には相当の覚悟で厳しいことも言い、対峙(たいじ)する姿勢を打ち出す」と打ち明ける。太田昭宏代表も今後は首相にカウンターパートとしての立場を強く打ち出す考えだという。
 ≪両刃の剣≫
 だが、公明党にとって、政府・自民党への批判を強めることは「両刃の剣」となる。民主党が攻勢を強める中、批判のさじ加減を間違えば政局につながりかねない。政局が一気に動き、解散・総選挙となれば、もっとも困るのは、緻密(ちみつ)な「組織選挙」を得意とする公明党だからだ。
 公明党執行部の一人はこう漏らした。「次の衆院選をしくじれば、公明党は消滅する。結党以来最大の危機だ」
 
(07/08/24 朝日新聞)
「歌う住職」 2作目のCD
2007年08月24日
 シャンソンや法話を通じて命の大切さや平和を説き、「歌う住職」ともいわれる愛知県一宮市三ツ井2丁目、住職中野見夫さん(68)が、平和を訴えるCD「明日への伝言―いのちの賛歌」を自主制作した。2年前の命の大切さを訴えたCDに続く第2弾。中野さんは「憲法9条問題に危機感がある。再び核を使ってはいけない。戦争をしてはいけないという気持ちを込めた」と話す。 
 中野さんは元教師。70年4月に長男(当時3歳)を自宅近くの川で亡くした。以来、子どもの水難事故をなくすため、川や池などに柵(さく)を設ける運動を続けてきた。定年後には住職になり、6年前からは、シャンソンのレッスンを受け、歌と法話で各地で講演活動も続けている。 
 第1弾は、水難で亡くなった子どもたちを鎮魂する内容。今回のCDは、NHKのど自慢のシンセサイザー奏者片桐一篤さんがプロデュース。今ではほとんど歌われなくなった70年代の山川啓介作詞、いずみたく作曲の「明日への伝言」や、昨年の紅白歌合戦で脚光を浴びた「千の風になって」など4曲を収録、中野さん自身が歌っている。 
 講演料などを使い、計3000枚を制作した。希望者には無料(送料は別)で提供する。連絡先は中野さん(0586・77・2277)へ。 


最近のマスコミ報道(07/08/21) 改憲路線そんなに急がずとも
日時:2007821
(2007/08/18 宮崎日日新聞)
社説  憲法論議
改憲路線そんなに急がずとも
 憲法改正志向の安倍晋三首相の下でその推進役を果たしてきた自民党が参院選で惨敗し、憲法論議はすっかり冷え込んできた。
 先の通常国会では憲法改正の手続きを定めた国民投票法が成立し、改憲派は盛り上がりをみせたが、参院選の結果を受けて民主党や公明党が慎重姿勢に転じた。
 そもそも国民投票法の成立過程には与党の強引な国会運営が目立ち、十分な審議を尽くさず、広く国民の合意を得たものではなかった。
 首相は選挙で示された民意も謙虚に受け止め、強引、時に前のめりで進めてきた改憲路線を反省すべきだ。
■憲法審査会は先送り■
 国民投票法で設置が盛り込まれている衆参両院の憲法審査会は、参院選で大躍進した民主党の反対で参院選後の臨時国会での始動ができなかった。
 さらに民主党は次期臨時国会でも始動に反対する構え。党内には審査会の実質的な始動を1年程度先送りすべきだとの意見もある。
 また、選挙で惨敗した与党もまずは態勢の立て直しが急務となり、審査会始動については先送りムードが濃厚で、憲法改正に向けた日程の遅れは避けられそうにない情勢だ。
 首相が強い意欲を示す集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈の変更についても、連立政権のパートナーである公明党が反対の意思を示している。
 政権発足後、強気の姿勢で独自のカラーを打ち出した首相だが、今はお手上げの状態だ。ただ、こうなった理由ははっきりしている。
 首相自らが憲法問題を早い時期から参院選の争点にしたいと表明、自民党の公約の冒頭に「3年後の国会で憲法改正発議を目指す」と掲げて臨んだものの、「ほかに優先して取り組むべき課題ではない」との民意がはっきりと突きつけられたからだ。
■国民投票法練り直せ■
 もともと憲法改正問題は、改憲の発議に必要な衆参3分の2以上の合意形成を目指して、自民、公明、民主の与野党3党が法律の内容を慎重に検討していた。ところが、あと一歩のところで首相が参院選をにらみ強行姿勢に転じたため、合意には至らなかった。
 結果、与野党が完全に対立したまま成立したのが国民投票法だ。そして同法は、投票権者の年齢が確定していないなど内容的には不十分な状態でとても評価できるものではない。
 衆参両院の憲法審査会は3年間、改憲原案の提出・審議はできないと定められている。その審査会は現時点で始動のめどは立っていない。
 このことは改憲審議を3年後すぐにやらなくてはならないということではなく、時間はたっぷりある。そうであれば、急いで成立させた国民投票法そのものをもう一度じっくり練り直すことも考えていいのではないか。
 集団的自衛権の憲法解釈変更についても、首相の私的懇談会が行使を一部容認する方向で検討を進めているが、参院の与野党逆転が大きな壁になることは間違いない。
 まして集団的自衛権の問題は、そのときの政府の解釈変更で済まされるものではない。
 首相には3年後の改憲発議にこだわらず、これまでの姿勢を改めて出直す決断がほしい。今後、じっくり憲法九条改正の是非を論議した上で国民の判断を仰ぐべきだ。

(2007/08/17 西日本新聞社)
憲法審査会
 衆参両院に常設。国民投票法で改憲原案の提出、審査は2010年まで凍結されており、それまでの間、憲法に関連する総合的な調査を行う。与党側がまとめた規程案には委員数50人、改憲原案に関する公聴会開催の義務化−などが盛り込まれている。衆院の審査会長には自民党の中山太郎元外相の就任が有力視され、参院は第一党となった民主党からの選出が取りざたされている。
改憲論議「先送りが民意」 民主、憲法審始動に反対 秋の臨時国会 改正日程に影響も
 民主党は16日、憲法改正論議の舞台となる衆参両院の「憲法審査会」について、秋の臨時国会からの始動に反対する方針を固めた。党内には、審査会の実質的な始動を1年程度先送りすべきだとの意見もあり、憲法改正に向けた日程に影響が出そうだ。
 民主党は参院選で改憲を掲げた安倍晋三首相に勝利したことを踏まえ「論議の先送りが民意」(幹部)と判断。首相が強い意欲を持つ憲法改正を政治日程から外すことで、政権基盤の弱体化した首相をさらに追い込む狙いがある。
 憲法審査会は8月の臨時国会で設置されたが、野党は与党側が提示した運営指針などを定めた規程案の議決に反対。実質的なスタートは9月召集予定の次期臨時国会以降に先送りされた。
 民主党は、憲法改正の手続きを定める国民投票法が先の通常国会で強行採決されたことに加え、首相が参院選の争点に改憲を掲げたことに対し「与党と民主党の協調路線を破たんさせた」と反発。「安倍内閣の間は議論できない」(枝野幸男党憲法調査会長)と態度を硬化させていた。
 さらに参院選での自民党惨敗を受けて「今は改憲を議論する環境にない。時間を十分かけるべきだ」(高木義明民主党国対委員長)とし、次期臨時国会でも規程案の議決に応じない構えだ。
 憲法改正をめぐっては、共産党の志位和夫委員長が首相の改憲路線見直しを要求。社民党の福島瑞穂党首も「民主党が改憲路線にかじを切るようなら野党共闘は難しくなる」としており、民主党は当面、憲法審査会の始動に応じないことで野党の足並みをそろえ、共闘関係を再構築する狙いもある。


最近のマスコミ報道(07/08/20) <美しい国>参院選後、首相口にせず 生活密着型に修正へ
日時:2007820
 (07/08/19  毎日新聞)
<美しい国>参院選後、首相口にせず 生活密着型に修正へ 
安倍晋三首相が参院選後、政権の看板に掲げていた「美しい国づくり」を口にしなくなった。選挙中から「何を言いたいのか分からない」などと評判が悪く、結果として自民党を惨敗に導いたためだ。首相は「美しい国」のスローガン自体は降ろさず、生活密着型の政策を加える修正で局面転換を図ろうとしている。
 「美しい国」は、参院選を戦う自民候補からも「ばかにされた気がする」とまで酷評された。「生活が第一」と訴える民主党に対し、首相の訴える理念はあまりにも国民意識からずれているといういらだちでもあった。
 首相が定義する「美しい国」は(1)文化、伝統を大切にする(2)自由な社会を基本とする(3)未来へ向かって成長するエネルギーを持つ(4)世界に信頼される――ような国(昨年9月の所信表明演説)。それを踏まえ、「教育再生」諸政策や憲法改正に向けた国民投票法制定などを手がけたが、多くは野党の反対を押し切って実現させた。
 参院選で敗北しても、首相は「改革の方向性が否定されたとは思えない」と主張している。しかし、選挙結果は無視できず、自らの政治理念を通すためにも「美しい国」を生活型に修正する必要があると判断したようだ。政府の「美しい国づくりプロジェクト」担当の世耕弘成首相補佐官も「生活者の視点に立った美しい国とは何かを考えた軌道修正が必要だ」と指摘する。
 現在、首相官邸で同プロジェクトに寄せられた約3500件の提言を参考に修正が検討されており、内閣改造時などに首相が表明する方向だ。【大貫智子】 

( 07/08/18 南日本新聞)
社説 [憲法改正] 論議を急ぐ必要はない
 安倍晋三首相が最大の政治目標に位置づける憲法改正論議が停滞する見通しとなった。参院で第一党に躍進した民主党が9月召集予定の臨時国会で、改憲論議の舞台となる「憲法審査会」の実質審議入りに反対する方針を固めたためだ。
 自民党は参院選で2010年の改憲案発議を目指すと政権公約に掲げた。大敗の主因は年金や格差、「政治とカネ」の問題だったとしても、改憲に強い意欲を見せる安倍首相の姿勢にも、厳しい判断が示されたと言える。安倍首相はこうした民意を謙虚に受け止めるべきだ。
 参院選の結果を踏まえ、民主党は「論議の先送りが民意」と判断した。憲法改正手続きを定めた国民投票法の成立を受けて、衆参両院に設置された審査会の委員数や運営指針を定めた与党側の規程案の議決に応じない構えだ。ここはじっくり与野党が腰を据えて協議すればいい。民意に従い論議を急ぐ必要はない。
 参院選の全候補者アンケートで当選者を抽出した分析結果によると、九条改正に反対する議員は55.7%に上った。民主党に限れば、九条を含む改憲を容認する人は19.3%にとどまっている。安倍首相が目指す九条を含む改憲が、緊急の課題でないことは明らかだ。
 改憲の発議には衆参両院の総議員の3分の2以上の賛成が必要になる。国民投票法をめぐる協議では「自民、公明、民主」3党が3分の2以上の合意形成を目指したが、参院選をにらんだ自民、民主の思惑から合意直前で崩壊した。自民党は強行採決に踏み切り、改憲路線をひた走る姿勢が強く印象づけられた。
 しかし、成立した国民投票法は中身を十分詰め切れず、「未完の法律」とも指摘された。投票権者年齢さえ、現時点では確定していない。改憲論議はひとまず置いて、国民投票法をもう1度練り直すことも必要ではないだろうか。
 憲法の解釈変更による集団的自衛権行使を検討する政府の有識者会議は今秋、「米国を狙ったミサイル迎撃」などを容認する最終報告書をまとめる予定だ。しかし、憲法の解釈変更を急げば、野党からの抵抗が強まるのは必至だ。連立政権を組む公明党も明確に反対の意思表示をしている。国民の反発も予想される。
 集団的自衛権に関しては、解釈変更で済ませるのではなく、堂々と憲法九条の改正案を示して国民の判断を仰ぐべきだろう。安倍首相にはこれまでの政治運営の手法を見直すことが求められる。

(07/08/18 山陰中央新報)
 論説 :  憲法論議の行方/姿勢を改めて練り直せ
 改憲志向の安倍晋三首相の下、憲法施行六十年の節目を迎えて推進役を果たしてきた自民党が参院選で惨敗し、憲法論議はすっかり冷え込んでしまった。憲法改正手続きを定めた国民投票法成立で盛り上がりを見せたあの改憲派の熱気はどこへいったのか。
 国民投票法に「設置」が盛り込まれた衆参両院の憲法審査会は、参院選で躍進した民主党の反対によって臨時国会で始動できなかった。民主党は秋の次期臨時国会でも引き続き反対する方針。このため憲法改正論議の舞台となる憲法審査会の発足はしばらく宙に浮く公算が大きい。
 首相が強い意欲を示す集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈の変更についても、連立政権のパートナーである公明党が明確に反対する意思表示をしている。首相にとっては、どうにもこうにもならない状況だが、こうなった理由ははっきりしている。
 首相自らが選挙の争点にしたいと表明し、「三年後の国会で憲法改正発議を目指す」と自民党公約の冒頭に掲げて臨んだ参院選の敗北は、憲法への対応を含む政府、与党の政治運営、政策の優先付けに対して民意が「ノー」を突きつけたといえるからだ。
 参院選の結果を受け、民主党や公明党が慎重姿勢に転じたのも、こうした民意を考えれば当然のこと。首相もこの結果を謙虚に受け止め、前のめりで進めてきた改憲路線を反省すべきだろう。
 「前のめり」の好例が国民投票法の成立過程だった。
 改憲の発議に必要な衆参三分の二以上の合意形成を目指して、自民、公明、民主の与野党三党の実務者が慎重に法律の内容を検討した。あと一歩で合意できるところに来たにもかかわらず、参院選をにらんだ首相の強硬姿勢と、それに対抗する民主党の小沢一郎代表の思惑もあって、与党修正案が衆院憲法調査特別委員会で強行採決され、合意形成は幻に終わった。
 直後に民主党の枝野幸男憲法調査会長が「安倍氏が首相である限り、与党と憲法論議しない」と発言したのは記憶に新しい。こうして成立した国民投票法は、厳密に言うと投票権者年齢さえ現時点では確定していない「生煮え」の内容。とても評価できない。
 集団的自衛権の憲法解釈変更についても、首相の私的懇談会が秋に「米国を狙ったミサイル迎撃」などを容認する結論をまとめる方向だが、公明党の反対に加え、実現するには法整備が必要なため、参院の与野党逆転が大きな壁になるのは避けられそうにない。
 現在はまだ始動のめどが立たないが、衆参両院の憲法審査会は三年間、改憲原案の提出・審議はできないと定められている。三年後にすぐそれをやらなくてはならないということではなく、その意味では時間的余裕はある。
 そうなら、国民投票法をもう一度練り直すことを考えてもいいのではないか。集団的自衛権に関しても、本来は政府解釈の変更で切り抜けるような問題ではなく、堂々と憲法九条の改正案を提示して国民の判断を仰ぐのが筋だろう。
 首相、自民党は「二〇一〇年中の改憲発議」という目標をまず下ろし、これまでの姿勢を改めて出直す決断が求められている。

(2007年8月20日(月)「しんぶん赤旗」)
憲法の魅力 再確認
教研全国集会が閉幕
 広島市などを中心に開かれていた「みんなで21世紀の未来をひらく教育のつどい―教育研究全国集会2007」は十九日、四日間の日程を終えて閉幕しました。同日は、安倍政権の「教育再生」路線や子どもを取り巻く文化など、子どもと教育をめぐる八つのテーマで教育フォーラムを開きました。
 同集会は「憲法の精神にもとづき、子どもの権利条約を生かし、教育をみんなの力でつくりあげよう」などをテーマに、のべ七千人の教職員、父母、研究者、子どもたちが参加。授業や学校づくり、子育て・教育にかかわる取り組みなどについて交流と討論が行われました。
 全日本教職員組合(全教)や新日本婦人の会、現地実行委員会など二十団体・組織で構成する集会実行委員会の山口隆事務局長(全教副委員長)は同日午後の記者会見で、「子どもとともに憲法と平和について学び合う取り組みと、どの子にもわかる授業づくりが豊かに交流され、日本と世界の平和と子どもの学ぶ権利を守るために、憲法の魅力と大切さを再確認することができた」と語りました。
 小学六年生の子どもの母親(40)=広島市安佐南区=は、「広島市でも二学期制などの『改革』がどんどん進められ、不安もあるし、憤りもあります。この気持ちをどう学校や行政に届けたらいいだろうかと思っていました。地域で取り組まれている教育懇談会の話などをお聞きして、元気が出ました」と話していました。
 青森県の中学校教諭二年目の女性(26)は「教師としての考え方に大きな影響を受けました。初めて担任をもってつらいこともいっぱいあるけれど、生徒といっしょにいられることがとてもうれしい。九月から、教研で学んだことを実践に生かしていきたい」とのべました。


最近のマスコミ報道(07/08/18) 郵政「造反」組復党 改憲のためと証言 塩川元財務相
日時:2007818
(2007年8月18日(土)「しんぶん赤旗」)
郵政「造反」組復党 改憲のためと証言
塩川元財務相
 安倍晋三首相が昨年暮れ、二〇〇五年総選挙で郵政民営化法案に反対票を投じ除名された郵政「造反」議員十一人を自民党へ復党させる決定を急いだのは改憲発議のための議席を確保したいためだった――塩川正十郎元財務相が復党劇の狙いを今年五月十六日に東京都内で開かれた政治ジャーナリストの会合で語っていました。八月上旬まとまった同会合の講演録で明らかになりました。
 講演録によると塩川氏は郵政造反組の復党問題に触れて「安倍氏の考えは、憲法改正第一であり、郵政問題はとっくに済んだ話、数を増やす方が大事だった」と述べ、安倍首相が復党を承認した背景を説明しました。
 衆院の自民党勢力は復党組を加えて昨年十二月時点で三百五議席に増えました。
 塩川氏は、さらに「安倍氏は憲法(改正)をにらんでいるから、改正に必要な三分の二(以上の議席の確保)をめざす。あと無所属議員など若干引き入れると(衆院で三分の二を超す)三百二十議席に達する。となると安倍氏の手で改憲が政治日程に入ってくる」と補足しました。
 復党議員のなかには、安倍首相と親しく、改憲志向で立場を同じくする古屋圭司議員(日本会議系の新憲法制定促進委員会準備会座長)らが含まれていました。安倍首相が復党決定を党執行部へ促した理由について、当時はもっぱら今年七月の参院選向けの選挙対策と見られていました。改憲を第一の視野に入れて安倍首相が復党を急がせたとの塩川元財務相の証言は安倍首相の改憲への執念を改めて示すものです。
 ただ先の参院選で自民党は惨敗を喫し、参院第二党へ転落。同院で三分の二どころか過半数を大きく下回り、安倍首相の思惑は外れました。

(2007年08月16日木曜日 河北新報)
憲法審査会始動に反対 民主党方針、秋の臨時国会で
民主党は16日、憲法改正論議の舞台となる衆参両院の「憲法審査会」について、秋の臨時国会からの始動に反対する方針を固めた。党内には、審査会の実質的な始動を1年程度先送りすべきだとの意見もあり、憲法改正に向けた日程に影響が出そうだ。
 民主党は参院選で改憲を掲げた安倍晋三首相に勝利したことを踏まえ「論議の先送りが民意」(幹部)と判断。首相が強い意欲を持つ憲法改正を政治日程から外すことで、政権基盤の弱体化した首相をさらに追い込む狙いがある。
 憲法審査会は8月の臨時国会で設置されたが、野党は与党側が提示した運営指針などを定めた規程案の議決に反対。実質的なスタートは9月召集予定の次期臨時国会以降に先送りされた。
 民主党は、憲法改正の手続きを定める国民投票法が先の通常国会で強行採決されたことに加え、首相が参院選の争点に改憲を掲げたことに対し「与党と民主党の協調路線を破たんさせた」と反発していた。


「九条麺」が登場。国産小麦100%に8種類の穀物に白ゴマを加えた9穀=救国のカップ麺。(07/08/17)
日時:2007817
<平和のための宣伝物紹介サイト>

http://www.kikanshi.co.jp/peacegoods/
http://www.kikanshi.co.jp/peacegoods/goods/ramen/ramen.htm

このたび、「九条麺」が発売になった。人間の生きる原点である「食」することを通して、憲法、九条、平和を語り、考え、「改憲」反対の運動の広がりをつくる。ついでに財政活動にも寄与する。そんな「九条麺」の登場だ。少々高い?が、国産小麦100%に8種類の穀物に白ゴマを加えた9穀=救国のカップ麺。まずはご賞味ください。
 
名称:スナックめん/
原材料名:めん(小麦粉、食塩、発酵調味料、胚芽押麦、青玄米、はと麦、もちきび、ひえ、もちあわ、玄米胚芽、黒胡麻)、醤油、豚脂、調味料(アミノ酸等)、焼成Ca、カラメル色素、酸化防止剤(VE)、(原材料の一部に大豆を含む)
内容量:97g(めん45g)
賞味期限:枠外に記載
保存方法:直射日光を避け、常温で保存してください 

 世論にそむいて悪法の強行採決を続け、参議院選挙で大敗した安倍内閣。
 先の国会では国民投票法を強行採決し、3年後をめどに憲法改悪、特に世界の宝・第九条を変えようとの危険な動きが加速しています。
 「平和憲法を守る」ためには、国民の多数に確固たる護憲の意思を持ってもらうことがだいじです。
 特に、未来を担う若い人たちに、憲法九条の大切さを理解してもらうために、まず、九条と身近に接触して欲しい−そんな思いから「九条麺」をつくりました。
*1000個より、オリジナル蓋(印刷物)できます。
お問合わせ・ご注文は TEL 03-5534-1133 FAX 03-5534-1141
株式会社きかんし 企画営業部[九条麺」担当へhttp://www.kikanshi.co.jp/peacegoods/
http://www.kikanshi.co.jp/peacegoods/goods/ramen/ramen.htm




憲法9条 改憲に反対?  女性は82.9% 男性は56.4% (毎日新聞)
日時:2007817
毎日新聞 2007年8月17日 東京朝刊 
 (投票結果) 
憲法9条 改憲に賛成?反対? ―― 石田衣良の白黒つけます!! ―― 
◆憲法9条 改憲賛成? 反対? (有効回答3068 男性1318、女性1750)
<男性>   賛成 43.6% 反対 56.4%
<女性>   賛成 17.1% 反対 82.9%
◆投票はMSN毎日インタラクティブの「暮らし」のページで受け付けた。
(http://www.mainichi-msn.co.jp/kurashi)。
◆生活とともにある目で、もう一度考えよう
 また8月がやってきた。この季節になると全マスコミで、あの戦争とはなんだったのかという検証がおこなわれる。国民の側もしっかりと、こたえているようだ。それはこの62年間変わることはなかった。そのことを、まずぼくは誇りに思います。
 今回の白黒はすこしシリアスだし、言葉も硬くなるかもしれない。でも、細かな法律上の解釈ではなく、ぼくたちの暮らしにまっすぐつながる問題として、9条をいっしょに考えてみましょう。
 では、メールで圧倒的に少数だった、改憲賛成派からいきます。「9条2項の軍隊を保持しないというのは、現実とまったく乖離(かいり)している。自衛隊を軍隊と認めて敬い、自国を守る専守防衛に専念すべきだ」(大阪府吹田市・敬司さん)。なるほど、それは形としてはすっきりする。「改憲は必要。時は流れ、戦争自体が変わってきた。自国だけで生きているわけではないから、時代の流れに沿って細かいことも変えていくべきではないか」(愛知県阿久比町・ひまわりさん)。この人は47歳主婦。憲法が細かいことなのか、やや疑問。「賛成です。といっても、一切の拡大解釈を許さないほど厳格に軍事力を放棄する方向に改正したい。初めは防衛の名のもとに軍事行動を起こし、やがて過剰防衛から侵略につながっていくのだから」(兵庫県三田市・MOMOさん)。逆方向の改正もまた視野にいれておいていいかもしれないね。
 実は以上の3通をふくめて、賛成派のメールは両手であまる数しか届きませんでした。残りは圧倒的な反対派だった。こちらのトーンは厳しいですよ。
 「変える理由がわかりません。押しつけ憲法だからなんてのはナンセンス。押しつけられて改憲するくせに」(静岡県下田市・匿名さん)。うん、確かにどちらの場合も超大国の影がさしているね。「現在、日本の大学院で日独の戦後処理の比較研究をしています。9条が日本の国際社会への復帰、近隣国との信頼関係の構築に非常におおきな役割を果たしてきたことを強く印象づけられました。憲法改正が今なお国家関係が不安定な北東アジアで新たな緊張を呼び起こすのではないかと懸念しています」(東京都八王子市・匿名さん)。この人はドイツ人の留学生。9条の果たした客観的な働きは、これに尽きると思う。「絶対反対です。わたしは広島巡業中被爆した移動演劇隊『桜隊』メンバーの遺族です。ハタチのわたしがいうのもなんですが、戦後世代の政治家たちは戦争のほんとうのおぞましさをしらなさすぎる」(東京都台東区・まやさん)。そういえば軍艦の模型が大好きな防衛庁長官もいたよなあ。「反対です。今年男の子を出産してから、その気もちはすごく強くなりました。戦争なんかにやるために、子どもを育てる母親など皆無です」(東京都杉並区・おりっぺさん)。わかるよ、結局どんな兵士も母の子だものね。
 今回は男女で比率がまったく違っていた。女性は8割を超える人が9条改正には反対なのだ。よって今回の白黒は、またも女性陣の肩をもたせてもらいましょう。憲法改正はクロということで、とりあえずの決着です。では、最後のメールいきますよ。
 「初めてメールします。わたしは塾の講師で、中学生に社会を教えることがあります。彼らにとって太平洋戦争をしることは、平安時代や江戸時代の歴史を覚えることと同じようです。わたしをふくめ、戦争を体験していない世代が増えました。これはたいへんありがたいことだと思います。憲法9条がどのように生まれたかを伝えずに改正しようとすることには反対です。改憲に賛成反対を問うまえに、国民全体が憲法をもっとよくしる必要があると思います。言葉尻をとらえて、時代にあわないなどというのでなく、憲法の精神をしったうえで、今なぜ改憲なのか、自分の問題として考えるべきなのではないでしょうか」(北九州市・匿名さん)。そうやって考えるためにも、夏休みはいい機会かもしれないね。勇ましい言葉や賢すぎる言葉よりも、生活とともにある目で憲法をもう一度考えてみようよ。ねえ、みなさん。
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 ◇次回は「昔の男と今の男、どっちが魅力的?」=31日掲載
 次回の問いは「昔の男と今の男、どっちが魅力的?」です。ネット投票とコメントをお待ちしています。
 22日まで投票を受け付け、結果は31日の本欄で紹介します。
また携帯電話の「毎日新聞・スポニチ」サイト(<右>のQRコードを読めば直結、一部機種除く)からも投票できます。
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<有効票数>3068
 (男1318、女1750)
 ((1)は賛成、(2)は反対)
<全体>
 (1)28.5%(2)71.5%
<男女別>
男(1)43.6%(2)56.4%
女(1)17.1%(2)82.9%
<年齢、男女別>
10代以下男(1)45.0%(2)55.0%
10代以下女(1)31.4%(2)68.6%
20代男  (1)48.9%(2)51.1%
20代女  (1)17.6%(2)82.4%
30代男  (1)46.3%(2)53.7%
30代女  (1)18.8%(2)81.2%
40代男  (1)43.0%(2)57.0%
40代女  (1)15.4%(2)84.6%
50代男  (1)36.0%(2)64.0%
50代女  (1)12.6%(2)87.4%
60代男  (1)25.6%(2)74.4%
60代女  (1)10.8%(2)89.2%
70代以上男(1)18.2%(2)81.8%
70代以上女(1)16.7%(2)83.3%


最近のマスコミ報道(07/08/17) 「慰安婦」決議の米 「靖国」派の対応注視
日時:2007817
2007年8月17日(金)「しんぶん赤旗」
「慰安婦」決議採択の米
「靖国」派の対応を注視
 日本軍の「慰安婦」問題で米下院が日本政府に公式な謝罪を求める決議を七月末に採択した後も、米国ではこの問題への追及・監視が衰えていません。
 米誌『タイム』(電子版)は十五日、靖国神社を参拝しなかった安倍首相について「日本の安倍首相、神社に現れず」と題して伝えました。「故意に中国や韓国などの隣国を挑発した」前任の小泉首相よりも「個人的にはより保守である政治家」の安倍首相が参拝しなかったのは「前向きな動き」だとしながらも、靖国神社は「日本とアジア諸国の関係においてとげ」となってきたと、この問題を注視しています。
 日本の「靖国」派外交の破たんを象徴的に示したのは、米下院が七月三十日に採択した「慰安婦」問題で日本政府に公式な謝罪を求める決議でした。日本の過去の侵略戦争を正当化し続ける「靖国」派を厳しく批判し、日本政府に歴史の真実に向き合うことを求めました。
 決議採決直後の議員たちの新聞発表でもそのことが端的に語られています。
 「罪のない多くの若い女性たちが朝鮮半島から連行され、言い表せない最悪な犯罪に苦しみ、人生を破壊された。謝罪はこの痛みを元に戻すことはできないが、被害者にとってその政府が過去の誤りの責任を受け入れたと知ることは重要である」(共和党のビト・フォセラ議員)
 「慰安婦に関する歴史の事実の正確さを日本は棚上げし続けている。日本皇軍が若い女性たちを性奴隷にしたことについて、日本政府がしっかりと認め、謝罪し、歴史の責任を明確であいまいでないやり方で受け入れない限り、正義は果たされない」(共和党のクリス・スミス議員)
 ペロシ下院議長も、決議の採決を歓迎。「米下院は真実と認知を求めてたたかう慰安婦を支持する」と述べ、米議会で証言した元「慰安婦」をウソつき呼ばわりする「靖国」派の主張をけん制しました。
 本会議での採択の際、反対を表明した議員は一人もいませんでした。それどころか、外交委員長のラントス議員(民主)は「靖国」派の国会議員の米紙への意見広告に言及。「慰安婦」にされた被害女性を責める「靖国」派の主張に「吐き気を催す」との強い嫌悪感を示しました。ホロコーストの生き残りである同議員は、ナチス・ドイツの戦争犯罪を認め、後世に伝える努力を続けるドイツと比較し、日本は「歴史の健忘症を推進している」と指摘しました。
 「慰安婦」の強制はなかったという発言で国際的批判を受けてきた安倍首相は、決議採択について「二十世紀は人権が侵害された時代だった。二十一世紀は人権侵害のない、世界の人々にとって明るい時代にしていきたい」と述べました。
 決議を提出したマイク・ホンダ議員(民主)は一日、「二十世紀は戦時の人権の残虐行為で満ちている。これらの残虐行為を受け入れてこそ、われわれは今日の諸国に共有の人権基準を順守するように迫ることができる」と表明し、安倍首相に行動を迫りました。
 同議員は、「われわれがお互いに間違いを指摘し合い、教訓を共有するときに諸国間の強固な友情もまた築かれる」とも強調しました。日米同盟を重視する米国議員たちも、「靖国」派の主張を容認しないとの立場を明確にしています。(ワシントン=鎌塚由美)

2007年8月17日(金)「しんぶん赤旗」
「従軍慰安婦」問題
謝罪と補償を要求
ベルリン 日韓市民がスクラム
 【ベルリン=中村美弥子】六十二回目の日本の終戦記念日の十五日、ベルリンでは市民が、旧日本軍の元「従軍慰安婦」への公式な謝罪と補償を日本政府に要求する行動をしました。ベルリン在住の日本人団体と韓国人団体が共催したものです。
 場所は、第二次世界大戦中の空襲で破壊されたままの姿を残し、戦争の悲惨さを伝えるカイザー・ウィルフェルム記念教会の前。喪色の黒い服を着た参加者は、アジア各地の元「慰安婦」たちの写真を持ち、日本政府に謝罪を求める横断幕を掲げ、通行する人たちに向けて静かに訴えました。
 「韓国だけでなく、アジアの元『慰安婦』のために訴えている」という参加者のアン・チャジョさん(62)。「悲惨な戦争を繰り返さないために、日本人には歴史をきちんと勉強してほしい」と話し、「生きている間、ずっと運動を続ける」と強調しました。
 日本人の女性(62)は、「韓国やアジアの人たちにとって戦争はまだ終わっていない」と言い、「慰安婦」問題の解決のために公式な謝罪を日本政府に求めました。
 前を通りかかったオランダ人観光客のアニさん(56)とバートさん(57)夫妻は「歴史を振り返るこういう行動はとても大事なこと。日本の首相はただわびるだけでなく、被害者の苦しみを直視し、反省をすべきだ」と語りました。

2007年8月17日(金)「しんぶん赤旗」
靖国参拝すれば悪影響
マレーシア紙が論評
 マレーシア紙・星州日報十六日付は、安倍首相が終戦記念日の十五日に靖国神社参拝をしなかったことについて海外在住華僑向けニュースを配信する中国通信社・東京発の論評を転載しました。
 同論評は、今回、安倍首相が靖国神社を参拝しなかった背景には、参議院選挙での与党自民党の大敗や「親密な盟友・米国の下院が『慰安婦』問題で日本政府に正式の謝罪を求める決議を採択した」ことがあると指摘し、次のようにのべています。
 「安倍首相が靖国参拝をしないのは賢明だったが、もし、今後、安倍首相とその閣僚が靖国神社に参拝すれば、好転し始めたばかりの日本と中国、韓国との関係は再び行き詰まり状態に陥るだろう」「それは、日本の国際外交にとって決してためにならないばかりか、日本国内で憂慮されている北朝鮮の核問題や『日本人拉致問題』などすべての問題で良くない影響を受けるだろう」

2007年8月17日(金)「しんぶん赤旗」
イラク派兵 「駆けつけ警護」発言
市民ら違憲と質問状
佐藤正久・自民参院議員
 元陸上自衛隊イラク先遣隊長でさきの参院選で当選した自民党の佐藤正久議員が、テレビの報道番組でイラク派兵時に事実上の「駆けつけ警護を行う考えだった」と発言した問題で十六日、弁護士や市民グループが「自衛隊法に違反するばかりか、憲法九条をないがしろにするものだ」として同議員と安倍自民党総裁らへの公開質問状と要望書を提出しました。
 佐藤議員の発言は十日のTBS系報道番組で、集団的自衛権に関する政府の有識者懇談会の議論についてコメントしたもの。
 佐藤議員は自衛隊とオランダ軍が近くで活動中に、「オランダ軍が攻撃された場合、何らかの対応をやらなかったら、自衛隊への批判はものすごいと思う」とした上で、「駆けつけ警護」についてこう語りました。
 「情報収集の名目で現場に駆けつけ、あえて巻き込まれる」「巻き込まれない限りは正当防衛・緊急避難の状況は作れませんから。(略)日本の法律で裁かれるのであれば喜んで裁かれる」
 公開質問状は、発言の事実確認、同議員がイラクで予定していた「巻き込まれる」作戦を現在も肯定するのか、「巻き込まれ」は旧日本軍が中国東北地方の占領を開始する口実として実行した柳条湖事件をほうふつさせるが関東軍の暴走をどう評価するのか――の七項目。
 安倍総裁には、同議員の辞職勧告を求めています。
 公開質問状を提出した弁護士、市民グループのよびかけ人を代表して中山武敏弁護士らが同日、参院議員会館で記者会見し、「佐藤議員の発言は中国での関東軍の暴走、戦争拡大の教訓や、(海外での武力行使を禁じる)憲法、自衛隊法からも放置できない危険なもの。弁護士、市民ら百四十四人が賛同、佐藤議員に八月中に回答するよう求めている」と語りました。

(毎日新聞 2007年8月16日 22時04分)
テロ特措法:小沢流原則論に政府防戦 国連決議解釈
 秋の臨時国会では、11月1日に期限が切れるテロ対策特別措置法の延長問題が最大の焦点となるが、「延長反対」を明言している民主党の小沢一郎代表は、国連安全保障理事会の決議がないという原則論をかざし、政府に政策変更を迫る戦術に出ている。防戦に回る政府与党は、国際的な「テロとの戦い」に参加し評価を得てきた6年間の実績を国民に訴え、対抗する構え。国会論戦は原則論と実績主義のぶつかり合いになりそうだ。【須藤孝、古本陽荘】
 「直接的に(米軍などの)行動を安保理でオーソライズ(権威付け)する(国連)決議はない」
 小沢氏は今月8日、シーファー駐日米大使との会談で、日本政府が同法に基づき海上自衛隊をインド洋に派遣する根拠としている安保理決議の解釈に疑問を投げ掛けた。
 海自は01年11月から、インド洋で米海軍などに補給活動を行っている。国際的には、アフガニスタンの陸上でテロ掃討作戦にあたる米軍中心の「不朽の自由作戦」(OEF)と連動し、テロ関連物資を海上で阻止する活動という位置づけだ。
 政府は、「9・11」米同時多発テロ直後に採択された安保理決議1368が「テロ行為を防止し抑止するため一層の努力をするよう国際社会に求める」としていることを活動の根拠としてきた。
 しかし、小沢氏は同決議にOEFの活動が直接的な表現で明記されていないことを問題視し、米軍の活動も自衛隊の派遣も認められないと主張したのだ。
 これに対し、シーファー大使は今年3月に採択された安保理決議1746を持ち出して反論した。同決議は「OEF参加国の支援を受け、アフガン政府がタリバンやアルカイダとの戦いを継続すること」を求めており、OEFが明記されているからだ。
 一方で小沢氏は、01年12月の安保理決議1386に基づいて設立された治安維持のための国際治安支援部隊(ISAF)については、「国連平和維持活動(PKO)と同じ性格を付与され、オーソライズされている」と柔軟姿勢を示している。
 小沢氏はもともと、自衛隊の国際的な平和維持活動は国連活動に限られるべきだと主張してきた。だが、ISAFの活動は伝統的なPKOと異なり、治安が悪化している南部では、ほとんど戦闘活動を行っている。
 小沢氏は衆院の早期解散に向け、政府・与党との対立軸を強調する戦略を強めており、政府側に歩み寄る余地は少ない。小沢氏に近い民主党のベテラン議員は「原理原則の問題だから、小沢氏はぶれない」と語る。
 政府内からは小沢氏について「書生論で反対しているが、狙いは政権奪取。正面から反論しても意味がない」(防衛省幹部)との声も出ている。【須藤孝、古本陽荘】

(2007/08/15 秋田さきがけ)
社説:終戦記念日 重み増す「不戦の誓い」
 きょう62回目の「終戦記念日」を迎えた。あまたの犠牲者の安らかな眠りを祈らずにはいられない。
 同時に、戦前の日本が陥った愚かな過ちにいま一度思いを巡らせ、不戦の誓いをあらためて胸に刻む日としたい。
 ずっと不思議でならないことがある。終戦記念日が先祖を供養するお盆の期間と重なっていることである。
 確かに偶然に違いない。しかし、たとえ歴史のいたずらにしろ、すごく意味深いことのように思えてくる。
 なぜ私たちが戦争で死ななければならなかったのか。もっと耳と目を研ぎ澄ましなさい—。死者からのそんな問いかけが込められているような気がしてならないのである。
 「いつまでも、いつまでもお元気で 特攻隊員たちが遺した最後の言葉」(草思社)には、死に赴く直前の若者の思いが切々とつづられている。
 難しかったり、飾ったりした言葉は一切見当たらない。親兄弟や国のことを思う一方、深い悲しみをにじませる文面は、平易ながらどっしり重く響く。
 受け止め方はさまざまあるに違いない。しかし、くみ取るべきは戦争美化といったたぐいのものでは決してないはずだ。
 特攻に象徴されるおびただしい犠牲と塗炭の苦しみの上に、現在の平和と繁栄へとつながる礎が築かれた。戦争犠牲者の死に報いることとは、今後も平和を堅持し続けることである。
 終戦記念日や平和を考える際、昨今の政治状況に目を向けないわけにはいかない。安倍政権の登場によって「国家」や「愛国心」が前面に押し出されるようになったからである。
 安倍晋三首相はさらに憲法の改正を悲願とし、政府がこれまで禁じてきた集団的自衛権の行使も、容認の方向で有識者会議に検討させている。
 参院選での自民惨敗後はあまり主張しなくなったが、安倍首相の掲げる「戦後レジーム(体制)からの脱却」の本質が、この点にあるのは明白だろう。
 憲法が多大な犠牲の末にもたらされ、戦後日本の大本になってきたことは、何度強調しても過ぎることはない。特に9条は平和主義の象徴である。
 この憲法を改正しようというのなら、もっと時間をかけた丁寧な国民的議論が不可欠なことは、今更言うまでもない。
 安倍首相がどうしても在任中に成し遂げたいのであれば、憲法、中でも9条の改正を争点として明確に打ち出し、できるだけ早い時期に衆院を解散、民意を問うべきである。
 平和主義の限界がよく指摘される。暴力に非暴力で立ち向かえるのかというわけである。しかし、世界は既に核兵器に満ちている。一歩間違えば、勝ち負けなど存在しない破滅の危険性を秘めているのである。
 だからこそ、唯一の被爆国として、憲法9条に裏打ちされた不戦や平和を訴え続けることに意義がある。それは日本にしかできないことなのだ。
 戦争にいかに備えるかではなく、いかに武力行使や戦争に至らせないか。日本が世界に対して果たすべき役割は依然、極めて重要で大きい。

(スポーツ報知 07/08/15)
藤田まこと、兄の形見のハガキが心の支え
 俳優の藤田まこと(74)が62回目の終戦記念日を前に自らの戦争経験を語った。兄の眞一さん(享年17歳)を沖縄の海で亡くしており、家族あてに届いた1通のハガキを今でも大切に持ち歩いている。来年公開の映画「明日(あした)への遺言」(小泉堯史監督)では部下の責任をすべて背負いB級戦犯として処刑された岡田資(たすく)陸軍中将を演じており、「改めて戦争の悲惨さを分かってほしい」と平和の尊さを訴えた。
 大切に持ち歩いている1通のハガキがある。日付は昭和19年8月14日。兄・眞一さんが鹿児島から家族あてに出したものだ。「お父ぅさんとお母ァさんの言ふことを聞いてしっかり勉強をしてください」と特に藤田を案じている様子がうかがえる文面は、最後に「さようなら」と結ばれている。眞一さんが乗った船はその約2か月後、米軍機の爆撃に遭い沖縄の海に沈んだ。
 終戦時、小6だった藤田は平和の尊さを肌で感じて生きてきた。「(戦争の放棄などを掲げた)憲法9条はアメリカがくれたもの。だから変えてもいいじゃないかという意見もあるけど、9条は日本の平和を守っていく宝物だったんじゃないかと思います。それを、この作品で痛感しました」
 来春公開の「明日への遺言」で藤田が演じる岡田中将は1945年5月、名古屋空襲の際に捕虜とした米機搭乗兵38人を処刑した。戦後、B級戦犯として逮捕されたが、法廷では「すべての責任は自分にある」と1人で背負う一方で、米軍による無差別爆撃もまた戦争犯罪であると主張。49年9月17日に60歳で処刑された。「BC級戦犯は即決裁判などで1000人以上も処刑になっている。そのことを私もひっくるめてみんなに知ってもらいたいし、改めて戦争の悲惨さを分かってほしい」
 忘れられない主演舞台がある。藤田が50代のころ、「プロデューサーも作家も演出家も役者も、みんな勘違いして、とんでもない失敗作ができてしまったんです」。大衆演劇の大スターで師匠と尊敬する共演者の故・辰巳柳太郎さんに、こう諭された。「この芝居はどうみても負け戦だ。それを頭に立つものが分かってないと部下が迷惑する。お前はテレビの世界に戻れば傷つかないだろうけど、他の連中は舞台専門。そういう人を、きちんと送り出すのがお前の責任だ」藤田は「今回の話を頂いたとき、岡田資というのは辰巳先生に聞いた話と全く同じことをした人だと思いました」としみじみと振り返った。
 長いキャリアを誇る藤田にとって、戦争を描いた作品は特攻兵を演じた68年の映画「日本の青春」以来、40年ぶりになった。「この仕事が終わったら、沖縄に行って、兄に(こういう映画に出たと)報告してこようと思ってます」。
 ◆「明日への遺言」 1945年5月、本土防衛にあたった岡田資陸軍中将は、名古屋空襲の際に捕虜とした米機搭乗員38人を処刑した。終戦後、逮捕された岡田は部下19人とともに横浜の軍事法廷で裁かれる。責任を転嫁したりするかつての軍人も多かった中で、岡田は終始一貫、部下には責任はないと主張。その信念を曲げない姿勢は、弁護人だけでなく検事や裁判長にも感銘を与える。原作は故・大岡昇平氏。共演は富司純子、蒼井優、西村雅彦ら。


憲法会議学習討論集会(9/8) 「憲法をめぐる新たな局面と改憲阻止の展望」 
日時:2007817
憲法をめぐる新たな局面と改憲阻止の展望

日時:9月8日(土)午前11時〜午後4時30分

会場:明治大学駿河台キャンパス・リバティタワー1011教室

最寄駅:JR中央線・地下鉄丸の内線「御茶ノ水」、地下鉄千代田線
「新御茶ノ水」、地下鉄半蔵門線・新宿線・三田線「神保町」

講演:渡辺 治さん 一橋大学教授  「集団的自衛権と改憲問題」
      吉田 裕さん 一橋大学教授  「靖国派の戦争・憲法観と安倍内閣」
      市田忠義さん 日本共産党書記局長  「参議院選挙後の政局と改憲阻止の展望」

☆事前に下記ファックスまたはメールアドレスへお申込みください。先着順です
☆参加費:資料代として1000円(学生500円)を当日会場でいただきます

憲法改悪阻止各界連絡会議(中央憲法会議)
fax03−3261-5453
mail@kenpoukaigi.gr.jp

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最近のマスコミ報道(07/08/15) 終戦記念日:首相と16閣僚全員が靖国参拝見送り
日時:2007815
(2007年8月15日 11時08分毎日新聞)
終戦記念日:首相と16閣僚全員が靖国参拝見送り 
 終戦記念日の15日、安倍晋三首相と16人の閣僚全員は靖国神社への参拝を見送る。閣僚が一人も同日に参拝しないことは極めて異例。小泉純一郎首相(当時)が21年ぶりに首相の「8・15参拝」に踏み切った昨年と対照を描いた。
 首相は15日午前、首相官邸で閣議に臨んだ。この後、千鳥ケ淵戦没者墓苑での献花や政府主催の全国戦没者追悼式への参列を予定している。靖国神社参拝については14日夕「今まで申し上げてきた通りだ」と述べ、参拝するかしないかを事前に表明しない考えを改めて示したが、15日の参拝は見送るとみられる。首相は自民党幹事長時代などは「8・15参拝」を続けてきたが、官房長官だった昨年は春季例大祭前に参拝した。
 毎年この日に参拝してきたという高市早苗少子化担当相をはじめ、16人の閣僚全員も同日の参拝はしない考えをすでに表明している。参院選惨敗に伴い政権の求心力が低下していることから、参拝により内外の批判を招くことは得策ではないとの判断が働いた結果とみられる。昨年の終戦記念日には小泉氏のほか、中川昭一農相、沓掛哲男防災担当相(いずれも当時)の2閣僚が参拝した。【川上克己】

(2007/08/15 10:38 産経新聞)
靖国神社、閣僚の参拝なし この半世紀で初めて 
 終戦記念日の15日、東京・九段北の靖国神社には午前6時の開門直後から、大勢の参拝客が訪れた。だが、この日午前、安倍内閣の閣僚の姿は一人もなかった。
 参拝見送りの理由として閣僚らは、政治信条や日程上の都合を挙げているが、現職閣僚が終戦記念日に靖国神社を参拝しないのは、この半世紀で初めてという異常事態となった。
 同日午前、靖国神社を参拝した日本遺族会会長の古賀誠元自民党幹事長は、閣僚の参拝がないことについて「それぞれのご日程があるのでしょうし、一人一人の心の問題ですから」と記者団に語った。

 (8月15日9時59分配信 産経新聞)
小泉前首相が靖国参拝 報道陣の問いかけに無言
小泉純一郎前首相は15日午前、東京・九段北の靖国神社を参拝した。小泉氏は首相在任中、計6回靖国神社を参拝しており、昨年も終戦記念日に参拝した。
 モーニング姿の小泉氏は午前8時20分ごろ、靖国神社に車で到着。警護官に囲まれながら、到着殿から入り、昇殿参拝した。参拝後、「どんな気持ちで参拝したのか」との報道陣の問いかけには応じず、無言で車に乗り込んだ。
 一方、超党派の「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」(会長・島村宜伸元農水相)に所属する国会議員も15日午前、集団で参拝した。

(2007年08月15日10時41分 朝日新聞)
小泉前首相が靖国参拝 2年続けて終戦記念日に
 小泉前首相は15日午前8時20分ごろ、東京・九段北の靖国神社に参拝した。首相だった昨年に続き、小泉氏は2年連続で終戦記念日の参拝を選んだ。安倍首相や安倍内閣の閣僚による参拝は予定されていないが、この日は朝から国会議員による個人参拝や集団参拝が相次いだ。 
 小泉氏は車で靖国神社を訪れ、モーニング姿で本殿に上がった。同神社によると、肩書はつけずに「小泉純一郎」と個人名を記帳し、供花料を私費で払ったという。供花料の金額や参拝形式は「一個人の参拝について明らかにしない」としている。 
 小泉氏は参拝後、記者団の問いかけにはいっさい答えず、無言のまま境内を立ち去った。 
 また、日本遺族会会長の古賀誠・元自民党幹事長は同日朝、昇殿せずに参拝した。記者団から安倍内閣の閣僚による参拝がないことを問われると、古賀氏は「一人ひとりの心の問題だ。たまたまお一人も都合がつかなかったということもあるのだろう」と答えた。 
 このほか、超党派の国会議員でつくる「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」(会長=島村宜伸・元文相)も同日午前、集団参拝した。 

(2007年8月15日11時39分  読売新聞)
小泉前首相が靖国参拝、現職閣僚は参拝しない意向
 自民党の小泉前首相は15日午前、東京・九段北の靖国神社を参拝した。
 小泉氏が終戦の日に同神社を参拝するのは現職の首相として21年ぶりに参拝した昨年に続き2年連続。
 小泉氏は午前8時20分、私用車で神社に到着。黒色のモーニング姿で、肩書なしで名前だけ記帳した後、本殿に昇殿して参拝した。献花料も納めた。参拝後、記者団の質問には一切答えず、神妙な表情のまま、神社を後にした。
 一方、安倍内閣の閣僚は16人全員が15日の靖国神社参拝は行わない意向を明らかにしている。終戦の日に閣僚が一人も同神社の参拝をしないのは極めて異例だ。
 塩崎官房長官は同日午前の閣議後の記者会見で、閣僚が参拝しないことについて「それぞれの閣僚の判断だろう。私は自らの判断で参拝には行かない」と述べた。

(2007年8月15日 東京新聞)
終戦記念日各党談話・声明
 与野党各党は十五日の終戦記念日に当たり、それぞれ声明や党首の談話を発表した。
 【自民党】世界では今なお地域紛争や国際テロで多くの人々が犠牲となり、核・ミサイルなどの大量破壊兵器が拡散している。これらの脅威を根絶するためにも、日米関係を基軸とした国際協調による平和外交と国際貢献を積極的に展開し、使命を果たさなければならない。
 【民主党】具体的な説明もなしに「美しい国」という言葉を多用する安倍晋三首相に象徴されるように、歴史を一面的に都合よく解釈する風潮がまかり通っている。今こそ多面的な歴史の事実を冷静に受け止め、主体性を貫きつつ、緊密な国際協調の下で世界平和に貢献すべきだ。
 【公明党】北朝鮮の核開発などは核拡散という新たな問題となって暗い影を落としている。被爆国・日本は核廃絶へ強いリーダーシップを発揮していくべきだ。憲法の恒久平和主義をどこまでも堅持し、世界の平和、人類の繁栄に貢献する日本の国づくりに全力を尽くすことを改めて誓う。
 【共産党】首相は「戦後レジームからの脱却」を掲げ、憲法改定を国民に押し付けようとしたが、国民は戦前の軍国主義への回帰という危険なもくろみを鋭敏に感じ取り、参院選できっぱりと拒否回答を突き付けた。侵略戦争の反省の上につくられた憲法を守り抜くために全力を尽くす。
 【社民党】戦争の廃虚の中からようやく獲得したのが憲法だ。しかし、安倍内閣が発足してから憲法は最大の危機を迎えている。戦争のできる国に変えてはならない、戦争によって人の命が奪われることが二度とあってはならないと願う人々とともに、これからも全力を挙げることを誓う。
 【国民新党】かつてわが国は不幸な戦争を行い、諸国に対して多大な損害と苦痛を与えた。二度と政府の行為によって戦争を起こしてはならないと強く決意する。
 【新党日本】戦争の世紀と呼ばれた二十世紀の歴史を踏まえて、ありのままに現実を見詰め、人として尽くし、人として遇される地球社会の実現へ向けて全力を尽くす。

(2007年8月15日 夕刊 東京新聞)
河野議長追悼の辞 『戦後レジーム』を堅持 安倍政権を強くけん制
 「日本軍の一部による非人道的な行為」をわび、「日本国憲法に象徴される新しいレジーム」を堅持する−。全国戦没者追悼式での河野洋平衆院議長の「追悼の辞」の真意について、従軍慰安婦問題や憲法をめぐる安倍晋三政権の“タカ派姿勢”を強くけん制し、日本の恒久平和主義をあらためて内外に示した発言と識者らは受け止めている。
 河野議長の中学の先輩で政治評論家森田実さんは「非人道的な行為」とは従軍慰安婦問題とみて、「河野らしさが発揮された。彼はもともと平和主義者で安倍路線の対極にいる。衆院議長として首相をしかり飛ばしてもいいのに今までがおとなしすぎた」と喝采(かっさい)を送る。
 従軍慰安婦問題をめぐり河野議長は、宮沢喜一内閣の官房長官だった一九九三年八月、日本軍の関与を認め「おわびと反省」を表明。だが、安倍内閣になって談話の見直しを求める動きが活発化。談話を踏襲するとしながら、安倍首相は今年三月、「(日本軍が強制連行したという)強制性を裏付ける証拠はなかったのは事実だ」と述べ、談話を事実上批判した。
 河野議長の踏み込んだ発言の要因として森田さんは、米下院が七月、この問題で日本政府に公式謝罪を求めて決議したことが大きいとみる。「安倍首相の発言が米議会に火をつけた。談話の当事者としてしっかりとしたメッセージを内外に送っておきたかったのだろう。来年の追悼式までに衆院が解散する可能性もあり、最後の発言の機会だったかもしれない」
 一方、「改憲を公約に掲げた安倍首相の『戦後レジームの脱却』というスローガンを意識した言葉だったのは明らか」とみるのは、東大大学院の高橋哲哉教授(哲学)。
 強い印象を受けたのは、「日本国憲法」という言葉が中段と後段に二度繰り返し述べられたことだ。「安倍首相は、憲法も改定前の教育基本法も戦後レジームの象徴とやり玉に挙げたが、それでは戦後民主主義の否定につながる。河野さんは、憲法は戦争の惨禍を引き起こした反省に基づく正しい選択だったとあらためて肯定した」と言う。
 さらに、日本軍の「非人道的な行為」は「今春、河野談話を否定した安倍首相の態度への批判を込め、談話を出した『本人』として、あらためてアジアに対する謝罪を誠実に発信したいと考えたのではないか。追悼の辞は、日本の政治家として確信に満ちた強いメッセージとなった」と語る。
 一方、精神科医の香山リカさんは「終戦を受けて『決して過ちを繰り返さない』と誓い、戦争放棄を定めた憲法九条を選択したのは『私たち日本国民』だと明確に言い切ったところに、憲法改正を目指している安倍政権への批判が率直に表れている」と指摘する。
 さらに「過去の追悼の辞では、河野さんはアジアへの謝罪の気持ちを穏やかに表現した。しかし、今回のレトリックや比喩(ひゆ)のない表現には、憲法押し付け論などを背景に高まる改憲論議に対して『今こそ言いたい』という本音が出たような気がする」。そして「自民党も一枚岩ではないという状況が、この追悼の辞で浮き彫りになった」と言う。

(07/08/15 信濃毎日新聞社)
終戦の日 「戦後」の意味を問い直そう
「終戦の日」が今年もめぐってきた。
 「戦後」とは何なのか−。62回目の今年はこの問いがこれまでにまして、切実な形で私たちに突き付けられている。
 その理由は、安倍晋三首相の言動にある。首相は「憲法を頂点とする戦後レジーム(体制)からの脱却」を掲げて、参院選に臨んだ。そして大敗した。
 それなのに「基本路線は多くの国民の理解をいただいている」と言い張る。メールマガジンでは「私が進めつつある改革の方向性が、今回の結果によって否定されたとは思えないのです」とも言う。
 「戦後レジームからの脱却」路線をこれからも突き進む−。そんな意思表示とも読み取れる。
 こういうとき大事になるのが、国民一人一人の姿勢である。おびただしい犠牲と引き換えに、われわれは何を得たか、そして守ってきたのか。「戦後」の意味をあらためて問い直しつつ、政治に向き合いたい。
   <62年を重ねて>
 あの戦争が終わって62年が過ぎた。「戦後レジーム」は62年間、続いてきたことになる。
 日本の近現代史の中で、この62年間は国民にとり、全体としては「いい時代」だった。そのことをまず、確認したい。
 戦前、戦中と違って、政府の方針と反対のことを言っても構わない。信教の自由は保障されている。憲法の三原則、平和主義、国民主権、基本的人権の尊重は、実態面では不十分さを残しながら、考え方としては社会に定着している。
 自衛隊は海外で一度も武力行使していない。したがって、戦後日本に戦死者は一人もいない。若者が徴兵を心配することもない。
 こうした社会のレールを敷いたのは憲法だ。歴代の政権は大筋では憲法の定めるところに沿って、政治をかじ取りしてきた。「吉田ドクトリン」とも言われる軽武装、経済重視の路線が代表的だ。
 この路線を修正しようとする政治家もいた。安倍首相の祖父、故岸信介氏はその一人である。岸氏が目指したのは、九条だけでなく、天皇を元首にし、労働者の団結権や言論・出版の自由も見直す復古色の濃い改憲だった。
 その岸氏について首相は「国の将来をどうすべきか、そればかり考えていた真摯(しんし)な政治家」と著書で書いている。
   <「脱却」するものなのか>
 安倍首相がいうように、戦後体制は「脱却」すべきものなのか。日本人が戦後、憲法を踏まえて営々重ねてきた取り組みは、否定されるべきなのか。
 そうではあるまい。一人の戦死者も出さず、豊かさを享受している日本人の今のこの暮らしが、そのことを証明している。
 「武力による威嚇または武力の行使」を慎め。国連憲章は加盟国に対しそう命じている。世界人権宣言(1948年)は「すべての人間は、生れながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である」とうたう。
 戦後日本の歩みは、戦争をなくし、人間一人一人の権利が尊重される世の中をつくろうという世界の人々の願いを踏まえている。日本の憲法は決して、世界の常識から外れた“変わり者”の憲法ではない。憲法が制定され、日本社会に定着していったプロセスをたどれば、「押しつけ憲法」との見方は一面的すぎることも分かる。
 日本の戦後レジームは、第2次大戦後の世界システムと一体のものである。日本は戦後世界システムから、最も多くの恩恵を受け取ってきた国の一つだ。
 そうした中で、日本の首相が「戦後レジームからの脱却」を唱える。世界の人々から見れば、何とも理解しにくいことだろう。
 首相は、憲法の三原則は順守することを繰り返し表明してはいる。だが、憲法順守と戦後レジームへの懐疑的まなざしがどう両立し得るのか、分かりにくい。
 首相が唱える脱却論は、ひとつ間違えば、戦前回帰の危険な動きと受け取られかねない。
   <やり残したこと>
 日本を破滅に導いた戦前、戦中の超国家主義体制を批判し続けた政治学者丸山真男は、1964年、著書「現代政治の思想と行動」でこう述べている。
 「私自身の選択についていうならば、大日本帝国の『実在』よりも戦後民主主義の『虚妄』の方に賭ける」。戦後民主主義を「占領民主主義」などと攻撃し「虚妄」とおとしめる、一部論者への反論である。
 「戦後」を否定しようとする政治家は安倍首相のほかにもいる。〈この憲法ある限り 無条件降伏続くなり〉とうたう「憲法改正の歌」を作った中曽根康弘元首相も、その一人に数えていいだろう。
 戦争責任の明確化をはじめ、私たちは多くをやり残してきたと考えざるを得ない。日本社会はまだ、あの戦争を清算し切れていない。
 「戦後」とは何か、あの戦争は何だったのか−。この問題に引き続き、真剣に向き合い続けたい。
 それは、戦後民主主義を時代に合わせて強化し、新たな力を吹き込む作業になるはずだ。


終戦62年 主要マスコミの主張・社説(07/08/15)
日時:2007815
(2007年8月15日(水)「しんぶん赤旗」)
主張
終戦記念日
「靖国」派政治の転換をめざす
 戦後六十二周年の終戦記念日を、戦争を許さず平和を求める決意の新たな機会にしたいと思います。
 戦前、天皇制政府と軍部が進めた領土拡張と他国支配のための侵略戦争は、二千万人ものアジアの人々の命を奪い、三百万人を超える日本国民を犠牲にしました。しかし、戦後生まれも増え、戦争の本質や悲惨さが十分に継承されない事情につけこんで、日本を再び戦争への道に引きずり込む危険な動きが目立ち始めています。平和原則を守り抜き、戦前の暗黒政治に後戻りさせる危険なたくらみを阻止することがいまほど重要なときはありません。
懲りない侵略美化
 安倍晋三首相が「戦後レジームからの脱却」と叫び、憲法を改悪しようとしていることが国の内外で不安を大きくし、さきの参議院選挙では国民から「ノー」の審判が下されました。
 戦後レジーム(体制)というのは、憲法で明記された主権在民、恒久平和主義、基本的人権などを国の政治の基本にした体制のことです。戦後体制を変えるというのは、二度と戦争をくりかえさないという公約を破棄するといっているのと同じです。日本は再び海外で戦争する道を進むのではないかという国際社会と国民の懸念は当然です。
 安倍首相は侵略戦争を「アジア解放の正義の戦争だった」と主張する「靖国」派勢力の先頭にたっています。朝鮮や中国をはじめとした外国の女性を日本軍の「従軍慰安婦」にした問題でも、「狭義の強制はなかった」といってはばかりません。被害者の心を逆なでするばかりか、被害者が悲痛の思いで「強制された」と証言しているのに開き直っていることが、アジア諸国ばかりかアメリカでさえ怒りを呼んでいます。
 米下院本会議は、ほぼ満場一致で、日本の首相に公式の謝罪と歴史的責任の受け入れを求めた決議を採択しました。
 ほんらい、アメリカからいわれずとも日本政府が歴史的責任を受け入れ、公式に謝罪するのが筋です。安倍首相が米議会の言い分にさえ耳を貸さないのでは、日本は孤立を深めるだけです。
 安倍首相が侵略戦争の正当化に執着するのは、海外派兵を「ためらわない」とのべたように、アメリカとともに日本が海外で戦争する態勢づくりをめざしているからです。憲法九条の改悪を狙うのはまさにそのためです。侵略戦争の正当化も、自衛隊が「侵略の血筋」を受け継いでいるとみられることによって海外での戦争に支障がでるのを避けるためであり、海外での戦争の野望と結びついています。
 「戦後レジームからの脱却」は九条の問題にとどまりません。国民の戦争協力を当然とし、人権も民主主義もない、男女の共生も認めない戦前の暗黒政治に引き戻すのが「靖国」派の狙いです。戦争責任の否定、憲法九条の改定、戦前・戦中の国内体制への回帰の行き着くところは、軍国主義日本復活そのものです。日本を再び恐ろしい国にするわけにはいきません。
反戦・平和の日本共産党
 安倍首相がめざす「戦後レジームからの脱却」にノーの審判を下した国民の選択は明確です。憲法を守り抜いて「靖国」派の野望を打ち砕くのは国民の意思です。
 日本共産党は、戦前・戦中から侵略戦争反対を貫いてきた反戦・平和の党として、憲法を守り抜き、戦争への道を許さず、平和日本の建設をめざして力をつくしていきます。

(07/08/15 朝日新聞)
戦争という歴史―「千匹のハエ」を想像する
 中学、高校で歴史を学ぶ皆さんへ。 
 今日は62回目の終戦記念日です。夏の暑い盛りですが、少し頭を切りかえて、あの戦争のことを考えてみませんか。 
 唐突ですが、千匹ものハエなんて、見たことありませんよね。 
 今年95歳になった映画監督、新藤兼人さんは、それを目にした日のことを鮮明に覚えています。 
■醜さを伝える責任 
 新藤さんは31歳で召集され、翌年、兵庫県宝塚市にあった海軍航空隊で敗戦を迎えました。1年半ほどの軍隊生活でしたが、上官から理由もなくこん棒で尻を殴られる、惨めな毎日だったそうです。 
 そんなある日、命令が下りました。「本土決戦に備え、食料となるコイの稚魚を育てろ」 
 この作戦には褒美もついていました。エサになるハエを千匹捕まえたら、一晩の外出が許されたのです。妻に会いたい一心でやり遂げた仲間がいました。 
 びんにためたハエを新聞紙の上にばらまき、上官の前で1匹ずつ細い竹の先でより分けて数えていく。新藤さんは傍らで「正」の字を書いてそれを記録しました。998、999……、ついに千匹を数え上げ、外出許可をもらった時の、戦友の笑顔を新藤さんは忘れられません。 
 千匹のハエとはどんなものか。殺虫剤などの実験用に飼育する研究所で、死んだハエ千匹を実際に見せてもらいました。白い紙にばらまかれた黒い異様な群れ。これを1匹ずつ集めたのかと思うと気が遠くなりました。 
 一緒に召集された100人のうち、生き残ったのは6人だけでした。 
 戦争って、どんなものなのでしょうか。戦後の、豊かで平和な時代に生まれ育った世代には、なかなか具体像をイメージすることができません。 
 新藤さんは、戦争が勇ましく、人が死ぬことが美しく描かれている本や映画を見ると、怒りがわいてくるといいます。 
 戦争は醜い。個を破壊し、家族をめちゃめちゃにする。そのことをきちんと伝えるのが生き残った者の責任だ。そう考える新藤さんは、自らの戦争体験をもとに「陸(おか)に上(あが)った軍艦」という映画の脚本を書き、自ら証言者として出演しました。この夏、映画が公開されています。 
 特攻隊、集団自決、大量殺戮(さつりく)……。戦争のそこかしこに「狂気」があります。新藤さんが見たハエもその一つでした。 
■アジアからの視点 
 今年初め、ある中学校の授業で、一本のアニメDVDが上映されました。 
 主人公の女子高校生が、見知らぬ青年と出会い、戦死者らがまつられている靖国神社に誘われます。 
 青年はこう語りかけました。 
 「愛する自分の国を守りたい、そしてアジアの人々を白人から解放したい。日本の戦いには、いつもその気持ちが根底にあった」 
 「悪いのは日本、という教育が日本人から自信と誇りを奪っている」 
 神社で手を合わせる2人。帰り道、青年は姿を消す。その青年は、じつは戦死した女子高校生の大伯父だった――。そんな内容です。 
 「誇り」と題されたアニメは、若手経営者らの集まりである日本青年会議所が「今の歴史教育は自虐的すぎる。子どもたちが日本に誇りを持てるように」との思いから作ったそうです。 
 「日本が悪いと思っていたが、そうではなかったことがわかりました」 
 「日本に誇りを持つようになった」 
 見終わった生徒たちの感想文には、こんな言葉が並びました。 
 でも、このアニメは、新藤さんが味わったような非人間的な軍の日常や、日本が侵略などでアジアの人々を苦しめたことにはほとんど触れていません。 
 会議所の依頼でアニメを見せた先生は後日、日本の侵略の実態についても授業で補ったそうです。歴史を教える難しさを痛感した、と先生は話していました。 
■過去にせまる挑戦 
 戦争には、さまざまな「顔」があるということかもしれません。どこから見るかによって、見えてくるものががらりと変わってくる。 
 皆さんは、あの戦争について学校でどれぐらい学んでいますか。歴史教科書のかなり後ろの方にあるので、授業は駆け足になりがちです。 
 でも、戦争を学ぶための材料は、授業や教科書以外にもたくさんあります。 
 広島と長崎にある原爆の資料館を訪れれば、目を覆いたくなるような悲惨な被害を目の当たりにします。沖縄には、地上戦の裏で繰り広げられた壮絶な体験を語るひめゆり部隊の生き残りのおばあさんたちがいます。 
 それは、アジアの国々も同じです。中国や韓国には、日本の侵略や植民地統治、それに対する抵抗の歴史が刻まれた記念館などがたくさんあります。 
 私たちは、過去を体験することはできません。でも、戦争の現実につながるさまざまなことに触れたり、見たり、聞いたりすることはできる。そして、現実の戦争を想像してみることができます。その力を培うことこそが、歴史を学ぶ大きな意義だと言えないでしょうか。 
 見たくないものに目をふさげば、偏った歴史になってしまいます。一つのことばかりに目を奪われれば、全体像を見失う。いかに現実感をもって過去をとらえるか。その挑戦です。 
 62年前、家族に会うために、千匹のハエを捕まえた兵隊が確かにいたという現実がありました。 
 今日という日に、そんなことに思いをめぐらしてみてはどうでしょう。 

(2007年8月15日 読売新聞)
終戦の日 静謐な追悼の日となるように(8月15日付・読売社説)
 8月15日。国のために犠牲となった人々を追悼し、平和への思いを新たにする日である。
 今年も東京・九段の日本武道館でとり行われる全国戦没者追悼式には、天皇、皇后両陛下とともに、国家三権の長である衆参両院議長、首相、最高裁長官が参列する。
 これは、日本国としては最も厳粛な形式の行事である。
 だが、式典会場の外の状況は、これまで、必ずしも静謐(せいひつ)とは言えなかった。
 とりわけ小泉内閣時代は、日本武道館のすぐ近くにある靖国神社への首相参拝を巡り、賛否両論が渦巻いた。
 靖国論議は国内にとどまらず、中国、韓国との外交論議にも発展し、とくに中国とは、「政冷経熱」といわれるような外交的停滞を招くことにもなった。
 今年は、一転して、静かな追悼の日を迎えようとしている。
 安倍首相は、靖国参拝については「参拝する」とも「しない」とも、あるいは「参拝した」とも「していない」とも、一切明言しない「あいまい戦略」を採っている。靖国問題を政治・外交上の焦点から“ぼかして”しまおうという戦略だろう。
 結果としては、中国の国内事情、外交戦略的思惑も絡んで、日中関係は大きく改善された。
 また、今年は、安倍内閣の全閣僚が、靖国参拝を控えるようだ。
 これは、一つには、参院選での自民党大敗という状況の中で、余計な摩擦要因は作りたくない、という政治的考慮によるものだろう。
 しかし、他方では、昨年から今年にかけて、いわゆる「A級戦犯」の靖国神社合祀(ごうし)についての昭和天皇の「心」が、次々に明らかにされたということも、作用しているのではないか。
 「この年のこの日にもまた靖国のみやしろのことにうれひはふかし」
 昭和天皇が晩年に詠まれた靖国神社に関するお歌の「うれひ」とは、「A級戦犯」の合祀問題を指していたことが、最近、明らかにされた。徳川義寛侍従長の生前の証言を、歌人の岡野弘彦氏が近著で述べている。
 戦死者の魂を鎮めるという靖国神社の性格が、「A級戦犯」の合祀で変わってしまうのではないか。戦争に関連した国との間に、将来、禍根を残すことになるのではないか。
 そうした思いから、昭和天皇は、「A級戦犯」の合祀には反対のお考えだったという。
 昭和天皇が、「A級戦犯」の靖国神社への合祀に対して、強い疑念を抱いていたことが明らかにされたのは、これが初めてではない。
 昨年7月、宮内庁長官だった富田朝彦氏のメモに、昭和天皇が靖国神社参拝をやめたのは「A級戦犯」合祀が理由である、と記されていることが分かった。
 今年4月には、元侍従・卜部(うらべ)亮吾氏の日記にもこれを裏付ける記述のあることが公表されている。
 靖国神社への「A級戦犯」合祀をめぐる議論の一つの難しさは、「A級戦犯」を裁いた極東国際軍事裁判(東京裁判)が連合国による「勝者の裁き」で、日本人自身による戦争責任の究明ではなかったことにも起因するのだろう。
 東京裁判のプロセスや結果については少なからぬ疑問もつきまとう。
 例えば、重大な戦争責任があったとは思われない「A級戦犯」がいる一方、日米開戦をあおりながら、容疑者にもならなかった陸海軍の軍事官僚たちがいた。東京裁判の「A級戦犯」の概念には問題がある。
 読売新聞は、東京裁判の「戦犯」概念とは距離を置きながら、日本の政治・軍事指導者の「昭和戦争」の戦争責任について検証し、昨年8月に最終報告をまとめた。
 その結果、特定された戦争責任者の中には、昭和天皇が名指しで靖国神社に合祀されたことを批判した2人の「A級戦犯」、松岡洋右外相と白鳥敏夫駐イタリア大使も含まれる。
 2人は国際情勢を見誤り、日独伊三国同盟の締結を強力に推進し、日本と米英両国との関係を決定的に悪化させた。このことが、対米英開戦への道を開く大きな要因となった。
 東条英機首相をはじめとする「A級戦犯」の多くが、日本を無謀な戦争へと導き、日本国民に塗炭の苦しみをもたらした「A級戦争責任者」と重なることは間違いない。
 彼らの引き起こした戦争が、東アジアの人々に、様々な惨害をもたらしたことも確かだろう。
 こうした経緯を考えれば、靖国神社が天皇参拝を復活させようと望むなら「A級戦犯」を分祀するしかあるまい。
 しかし、靖国神社が神道の教学上、どうしても分祀はできないということであれば、それも宗教法人としての固有の選択である。その選択に政府が関与することは、憲法の政教分離の原則に違反することにもなろう。
 ただ、そうした靖国のあり方は、新たな国立追悼施設の建立、あるいは千鳥ヶ淵戦没者墓苑の拡充などについての議論の広がりを避けがたいものにすることになるのではないか。

(2007年8月15日 毎日新聞)
終戦記念日 暮らしの安全保障が必要だ
 今日は終戦の日。数えて62回目になる。あの日、今日の平和と繁栄を予想した人はほとんどいなかったに違いない。私たちはこの戦後の歩みの大枠を肯定する。
 安倍晋三首相は、小泉純一郎前首相の政治を継承しながらも、立ち位置を右にシフトし「戦後レジーム(体制)からの脱却」を唱えた。国家主義的心情に新自由主義的経済・社会政策を接ぎ木した政治、と言えるだろう。
 参院選で安倍首相は有権者に対し「首相選択の選挙」だと迫った。結果は自民党の大敗。安倍政治に対する「ノー」と解釈するほかない。しかし、首相は「基本路線は国民の理解をえている」として続投を表明した。明らかな民意の読み違えである。
 戦後レジームに対し、利己的な「一国平和主義」であり、安全保障に関する「思考停止」だという批判がある。聞くべき批判だと思う。私たちは、国連平和維持活動(PKO)や政府開発援助(ODA)を通じ、日本はもっと平和への国際的責任を果たしていくべきだと主張してきた。
立憲主義にそむく
 しかし「戦後レジームからの脱却」という観念的なことばで、戦後の民主主義の歩みを切り捨てることがあってはならない。この点、首相とまったく意見を異にする。
 戦後レジームからの脱却の一環として、首相が推進してきた安全保障政策の内実は、結局、米国との軍事的一体化をめざすものだ。北朝鮮の核に対し抑止力を供給できるのは米国だけであり、米国との軍事的一体化は当然という論理である。
 しかし、米国もイラクの泥沼に足をとられ、ポスト冷戦の世界戦略を持っていないことを露呈しつつある。北朝鮮を6カ国協議に引き戻す過程では、日本との亀裂も明らかになった。そうした米国にすがるだけの安全保障政策でよいのだろうか。
 米国との同盟関係は重要だが、過剰に依存すれば米国の思惑次第で右往左往することになる。日米の国益が常に一致するとは限らないからだ。もっと主体的な安全保障戦略が必要だが、安倍政権にその用意はなさそうである。国民の多くが感じる安倍政権への心もとなさは、そこに原因がある。
 集団的自衛権に関する取り組みにしても粗雑である。首相は私的懇談会を設置したが、全員が賛成論者である。「結論ありき」という批判は当然だ。
 これを根拠に憲法9条の解釈の見直しを強行し、集団的自衛権の行使に道を開けば、立憲主義にそむくものとして、その正当性を疑われることになるだろう。
 集団的自衛権の議論はタブーではない。必要だと信じるなら、国民の納得を得るまで丁寧に説得すべきなのだ。安全保障政策の見直しは、国民の分裂をあおらず国民の合意を目指すものでなければならない。
 私たちは安倍政治のすべてを否定しているわけではない。
 昨年10月の電撃的な訪中・訪韓は北東アジアの安定、つまりは日本の平和にとって大きな前進だった。政権発足直後の首相の政治決断は高く評価できる。
 首相は靖国問題でも「参拝したともしないとも言わない」あいまい戦術で、ともかくも対立の表面化を防いでいる。北朝鮮の核開発が現実的脅威となっているいま、中韓両国との関係改善の意義は大きい。
 安倍政治にはこのように柔軟な現実派の側面があった。小泉政治が市場主義に走って弱者切り捨ての批判を浴びたのを踏まえ、初期の安倍政権は「再チャレンジ」を掲げるなど軌道修正を図った。
 しかし、それは中途半端に終わり、途中から改憲という最終目標にむけ、教育基本法の改正、防衛庁の省への昇格、改憲手続きを定めた国民投票法の制定と強行採決も辞さず歩みを速めた。
 首相は信念に忠実だったのだろうが、優先課題を見誤った。参院選の結果がそれを示している。イデオロギーを優先させた結果、年金や地方の疲弊に対する手当てを怠った。
 さまざまな世論調査で、改憲を問えば「賛成」が半数を超えるのが現状だ。ただ「改憲」といっても、いつ、どの条項を、どう変えるか、については多様な考えがある。国民は結論を急いでいるわけではない。
 安全保障は幅広い概念であり、軍事的な安全保障はその一部でしかない。安倍政権は軍事以外の安全保障に関して目配りを欠いた。それが致命的な錯誤だったのだ。つまり「暮らしの安全保障」の軽視である。
こだわりを捨てて
 自民党が参院選に大敗したのは単に「失われた年金」と「政治とカネ」の不始末だけが理由ではない。首相がそのように敗因を矮小(わいしょう)化するなら、過ちを繰り返すことになるだろう。
 冷戦後のグローバリズムは「善しあし」の問題ではない。そこにある現実だ。逃げずにその力を活用するほかない。中国は脅威だと言われたが、対中輸出で日本は景気回復したのである。グローバリズムに対応するための改革は継続する必要がある。市場主義的な手法が不可欠だ。だが、単線的な改革一辺倒ではうまくない。
 いま、世界のどの国でも、グローバリズムの荒々しい力と、普通の人の暮らしの安全・安心をどう調整するかが問われている。潮流に乗り遅れても、逆に人々の暮らしを守り損なっても政権は失格の烙印(らくいん)を押される。
 首相は理念を先行させ過ぎた。「愛国心」や「伝統」を憲法に書き込めば、それで立派な国ができると錯覚したのではないか。「国のかたち」への過剰な思い入れを捨て、「民の現実」を優先しなければならない。

(07/08/15 日経新聞)
戦争の歴史を忘れずアジアと友人で(8/15) 
 戦没者を追悼し、平和への誓いを新たにする「終戦記念日」は日本人にとって、お盆とも重なり特別な日だ。だが、8月15日はアジア諸国などでは必ずしも終戦の日ではない。62年前に終わった戦争を巡る歴史認識には隔たりがあることを踏まえつつ、アジアや世界と向き合いたい。
 米英仏や当時の中華民国など連合国にとっては、9月2日が対日戦勝記念日だ。1945年のこの日、東京湾に浮かぶ米戦艦ミズーリで日本は降伏文書に公式に署名した。
 8月15日を特別の日にしているのは、日本以外では韓国の光復節、北朝鮮の解放記念日くらいだ。中国は降伏文書調印翌日の9月3日を戦勝記念日とし、東南アジアでも9月に設定している国が多い。
 今年の終戦記念日は安倍晋三首相をはじめ安倍内閣の全閣僚が靖国神社の参拝を見送る見通しだ。昨年、当時の小泉純一郎首相が参拝したのに対し中国などが反発したのは「8月15日」だからだけではない。A級戦犯がまつられている靖国神社への首相の参拝自体が問題だった。
 日本の一部には先の大戦は真珠湾攻撃で始まったと思っている人もいる。終戦直前に原爆が投下されたため「米国には負けたが、中国には負けていない」と考える人もいる。
 7月7日といえば、日本では七夕かもしれない。しかし、中国人は日中戦争の発端となった盧溝橋事件を思い起こす。今年は日中国交正常化35周年であると同時に、同事件から70周年に当たる微妙な年だ。
 10年前の8月15日に亡くなった孫平化中日友好協会会長は遺稿となった「私の履歴書」でこう書いた。
 「中国と日本との関係では、双方の歴史観の開きが大きくなっているのではないか。特に若い世代ほど距離が広がっている気がする」
 今夏も特攻隊など戦争に関する映画が数多く上映されている。日系三世の米国人、スティーブン・オカザキ監督のドキュメンタリー映画「ヒロシマナガサキ」は、被爆者と原爆投下に関与した米国人らの証言を軸に核戦争の脅威を冷静に描く。
 この映画には日本の若者たちに45年8月6日に何が起きたかを質問するシーンがあるが、誰ひとり答えられない。戦後生まれが人口の4分の3となり、唯一の被爆国でさえ戦争は風化しつつあるのが現状だ。
 戦争がいつ始まり、いつ終わったかを含め国家間に認識のずれがあるのは当然かもしれない。アジア諸国・地域と真の友人になるためにも戦争の歴史を忘れてはならない。 

(07/08/15 北海道新聞)
終戦記念日*憲法が支える非戦の誓い
 どんなにつらい体験でも、時間がたつにつれ、次第に記憶が遠のいていくのは人の常かもしれない。 
 だが、決して忘れられないことや忘れてはいけないことがある。それは国においても同じだろう。 
 日本はかつて台湾や朝鮮半島を植民地とし、多くの兵力を中国やアジアに送り、各地に膨大な犠牲を強いた。 
 それだけではない。国内も米軍機の空襲にさらされ、広島、長崎には原爆が投下され、多くの人々が死んだ。 
 きょう十五日は、そうした人たちを追悼し、二度と戦争はしないとの誓いを新たにする日だ。 
 しかし、私たちはあの大戦から何を学んだのだろうか。昨今の世相を見るにつけ、そんな思いにかられる。戦後日本が大きな岐路に立たされている。 
*戦争体験の風化が心配だ 
 なぜそうした感覚にとらわれるのだろう。昨年九月の安倍晋三政権の発足が影響しているのではないか。 
 首相は「戦後レジームからの脱却」「美しい国」を掲げ、戦後日本を支えてきた教育や防衛などの枠組みに次々と手をつけた。 
 教育基本法の改正、防衛庁の省への昇格。専守防衛を旨とする自衛隊の本来任務に海外での活動が加わった。 
 国民投票法も成立した。自民党結党以来の悲願でもある改憲に道筋がついた。衆参両院に憲法審査会が設けられ改憲が現実問題となってきた。 
 政権内から核保有論議が飛び出し、財界からは「武器輸出三原則」の緩和を求める声が公然と出てきた。 
 いずれも平和国家としてのかじを大きく切ることになりかねない。 
 驚いたのは米国による広島、長崎への原爆投下を「しょうがない」とした久間章生防衛相(当時)発言だった。 
 唯一の被爆国である日本の閣僚として失言ではすまされない。罷免を拒否した首相も含めて核廃絶という国是を本当に理解しているのだろうか。 
 イラク派遣に反対する国民の活動を自衛隊が調査、監視していたことも明るみに出た。 
 前首相の靖国神社参拝を批判した加藤紘一元自民党幹事長の実家が右翼に放火されたのは一年前の今日だった。 
 加藤氏は何ともいえない「時代の空気」を感じるという。 
 戦争体験の風化が進んでいる。 
 戦前を知る世代から「かつての道を歩んでいるのでは」との声がしきりに聞こえてくる。語り継ぐ努力を続けることだ。あの戦争は何だったのか。家庭で学校で考える場を持ちたい。 
*国際貢献に軍服はいらぬ 
 首相のいう改憲の眼目が戦争放棄を定めた九条にあるのは論をまたない。 
 自民党は二○○五年に公表した新憲法草案で、戦力不保持と交戦権の否認を定めた九条二項を削除。代わって自衛軍の保持を明記し、海外での武力行使を認めている。 
 首相が意欲を見せる集団的自衛権行使の容認が加わるとどうなるだろう。 
 米軍と自衛隊の一体化が急速に進む現状と考えあわせると、米国の国際戦略に組み込まれた自衛隊が海外で米軍と戦闘行動を共にすることになる。 
 それを国際貢献のためというのなら国民感情とかけ離れてはいまいか。 
 国連の一員として、また平和を希求する国として医療や福祉、農業や土木建築分野などで日本が世界に貢献できる道はいくらでもあるはずだ。 
 九条のおかげで何度も命拾いをした−。アフガニスタンで長年、かんがい事業や医療奉仕をしてきた医師の中村哲さんがそう記している。 
 九条を知らなくても「戦争を仕掛けなかった平和な国・日本」のイメージが現地で定着しているというのだ。 
 自衛隊は戦後、海外での戦闘行動に加わらず、一人の戦死者も出さず、一人の外国人も殺さずにすんだ。 
 自衛隊のイラク派遣の任務が「人道復興支援」にとどまり、時の首相が「自衛隊の行く所は非戦闘地域だ」と強弁せざるを得なかったのも、九条二項が歯止めになったからだ。 
 戦火やまぬ国際社会で九条が持つ「非戦」の意義が増している。武装部隊を送るのではなく、この国ができる道を模索することが先決ではないか。 
*九条の理念を誇りにして 
 九条を守ろうという動きがいま全国各地に広がっている。 
 二○○四年に作家の大江健三郎さんや哲学者の梅原猛さんらが提唱した「九条の会」は七千団体を超えた。地域や家族、職場単位の多様なグループが映画会や講演会などを開いている。 
 このままでいいのだろうかとの危機感が子を持つ親や、あの時代を知る人たちを行動に駆り立てているという。 
 北海道新聞の世論調査でも九条支持が改憲容認者の中で増えている。 
 中国で終戦を迎えた経済同友会終身幹事の品川正治さんは月刊誌の対談で、復員船の中で憲法の草案を読み、戦友たちとともに泣いたと述べている。 
 「交戦権すら否定しすべての軍備を放棄すると、ここまで思いきって、これからの日本の生き方を決めている。これで自分たちはアジアで生きていける、仕事をしていけると感じた」 
 品川さんはその時の体験が戦後の自分の座標軸となったという。 
 この国は二度と戦争をしないと誓った。戦後六十二回目の終戦記念日。日本が歩んできた道を振り返りたい。

(2007年08月15日 河北新報社)
8月15日/言論の大切さを訴えたい 
 「手前みそだ」との批判を覚悟して、ぜひ紹介したいことがある。
 終戦が迫った1945(昭和20)年8月11、13日に、河北新報は「偽龍を愛し真龍を恐る」「戦争目的の真(しん)諦(てい)」と題した社説を掲げた。
 「偽龍…」は、竜の詩や絵を愛した文人が、実際に現れた竜の姿に驚いたという中国の故事を引いた。国民には必勝の精神を強いながら、戦局が不利になるや、「あはてふためき右往左往するといふやうなものはないではあらうか」と暗に軍部を批判した。
 「戦争目的…」では、「最後まで戦ふ」ということを論じた後、「(勝つという意味の中には)相手から物をとる事にばかりあるのではなく、自ら多くの物を失ふことにもある。要は人類文化をそれを通じて、より高め、より深め、より聖(きよ)めることにある」と結ぶ。戦争の早期終結を訴えたものだ。
 広島、長崎に原爆が投下され、戦況は悪化を極めていたものの、11日の河北新報の1面は、陸相が全軍に対し、「死中に活」と徹底抗戦を命じた記事を大きく扱っている。「1億玉砕」論もあった当時だ。
 終戦に動いている事実を読者にどう伝えるか。「偽龍…」と「戦争目的…」は、社と論説陣が「決意と覚悟」のもとに論陣を張ったものだったのだろう。
 当然のことながら、軍部は激怒した。社説を執筆した編集局長寺田利和は軍部の圧力にもかかわらず、筆を曲げることなく辞表を提出。社は慰留したが、以来出社しなかったとされる。
 関係者によると、寺田は恬淡(てんたん)として気骨があり、視野の広い新聞人だったという。後に、「戦局についての正確な情報を国民に知らせない政府の姿勢に憤りを感じた」と語っていた。
 終戦から62年のきょう、あえて弊社のことを取り上げたのは、言論の自由の大切さをあらためて訴えたいからである。
 満州事変から始まって、日中戦争、太平洋戦争―。ポツダム宣言の受諾で終戦となるまでの約15年。
 世界地図を眺めながら、なぜ小さな島国が、遠い大陸、南方、太平洋の島々まで行って戦争をしなければならなかったのか、と思う。国民的熱狂とでも言おうか、狂気の渦はとどまることを知らなかった。
 その結果、日本人は戦地で、国内で310万人が亡くなり、アジア、太平洋諸国では2000万人が死亡したとされている。
 こんな過ちを2度と繰り返してはならない。河北新報を含む全国の新聞も戦争を肯定、推進する側に回った。そんな中、最後に見せた「社説」の勇気と決断、そして良心をずっと語り継いでいきたい、と考えている。
 戦争が始まると、言論が真っ先に統制されるのは歴史が示している。
 言論の自由は、与えられるものではなく、勝ち取っていくものだろう。言論を日々訓練し、非戦の力を蓄積しておくことは、平和なときこそ重要だ。きょうの日を、一人一人が非戦を深化させる日にしたい。 

(2007年8月15日 東京新聞)
終戦記念日に考える 極限からのメッセージ
 平和は未来を奪う。希望は戦争−。そんな過激な論文が若者の心をとらえ、共感を広げているといわれます。戦後六十二年、ちょっと悲しいものがあります。
 「『丸山真男』をひっぱたきたい」というのですから、タイトルからして刺激的でした。論座一月号に掲載された赤木智弘さんの論文です。
 丸山真男とは輝ける戦後知識人の時代を築いた東大教授。サブタイトルに「31歳フリーター。希望は、戦争。」とありました。参院選で自民党が歴史的大敗をした二〇〇七年のことしを象徴する論文となるかもしれません。
 希望は戦争に深い絶望
 論文での自己紹介によると、赤木さんは北関東の実家で暮らし、月給は十万円強。結婚もできず、親元に寄生するフリーター生活をもう十数年も余儀なくされ耐え難い屈辱を感じています。父親が働けなくなれば生活の保障はなくなります。
 定職に就こうにもまともな就職口は新卒に限られ、ハローワークの求人は安定した職業にはほど遠いものばかり。「マトモな仕事につけなくて」の愚痴には「努力が足りないから」の嘲笑(ちょうしょう)が浴びせられます。事態好転の可能性は低く「希望を持って生きられる人間などいない」と書いています。
 今日と明日とで変わらない生活が続くのが平和な社会なら、赤木さんにとって「平和な社会はロクなものじゃない」ことになります。
 ポストバブル世代に属する赤木さんの怒りは、安定した職業へのチャンスさえ与えられなかった不平等感に発し、怒りの矛先はリストラ阻止のため新規採用削減で企業と共犯関係を結んだ労働組合や中高年の経済成長世代に向けられていきます。
 赤木さんにとって戦争は社会の閉塞(へいそく)状態を打破し、流動性を生み出してくれるかもしれない可能性の一つです。さすがに「私を戦争に向かわせないでほしい」と踏みとどまっていますが、「希望は戦争」のスローガンには多くの若者たちの絶望が隠れています。
 苦悩直視が唯一の救い
 若者が希望と未来を失ってしまったというなら(若者でなくとも)薦めたい一冊があります。
 ビクトル・E・フランクルの「夜と霧=ドイツ強制収容所の体験記録」(みすず書房)です。人間への信頼と内からの勇気が湧(わ)いてくるかもしれないからです。
 フランクルは強制収容所からの奇跡的生還を遂げたユダヤ人心理学者です。毎日のパンと生命維持のための闘いは、あまりにも厳しく、良心の消失、暴力、窃盗、不正、裏切りがあり、最もよき人々は帰ってこなかったと収容所生活を回顧しています。
 フランクルが語るのは英雄や殉教者ではなく、ごく普通の人々の小さな「死」や「犠牲」ですが、著者まずもっての感動は、どんな極限にあっても、人間の尊厳を守り抜く少なからずの人々の存在でした。勇気や誇り、親切や品位が示され、若いブルジョア女性は「こんなひどい目に遭わせてくれた運命に感謝します」と最期まで気高く快活でした。
 著者にも愛の救いがありました。妻の面影のなかに勇気や励ましの眼差(まなざ)しを見たのです。精神の豊かさへの逃げ道をもつことで、繊細な人が頑丈な身体の人よりもよく耐え忍ぶという逆説がありました。
 クライマックスは絶望からの救いの思想です。人生に期待するのではなく、人生がわれわれに何を期待しているかを問うこと、具体的には唯一、一回限りのわれわれ自身の苦悩を誠実に悩み抜くことが結論でした。苦悩の直視と時にはそのための涙が偉大な勇気だともいうのです。
 いかなる人間も未来を知らないし突然、何らかのチャンスに恵まれないとも限らない。未来に落胆し、希望を捨てる必要はないとのフランクルの仲間への励ましは、収容所の内と外で変わるものではないでしょう。
 本日付朝刊の特集面に登場している経済同友会終身幹事の品川正治さんは市場主義全盛に抗して「人間のための経済」を唱え「人間の力」「人間の努力」に期待する心熱き財界人です。その「人間中心の座標軸」が戦場の体験から生まれ、戦後も一貫させてきたことが語られるなど鈴木邦男氏との対談は熟読していただきたい内容です。
 品川流の人間のための政治や経済からすれば、若者を「希望は戦争」との絶望に追い込み、大量の低賃金・不安定労働を生み出してしまった政治や経済は間違っているに決まっています。是正の取り組みに人間の努力が向けられなければならないはずです。新たな大きな課題です。
 何より人間の尊厳
 日本はどこに向かっているのか。国民の不満と不安が噴出したのが先の参院選の結果だったといえるでしょう。富者と貧者、都市と地方の容認できないほどの格差拡大、富める一部が富み、弱者、貧者が切り捨てられる社会は国柄にも反します。何より人間の尊厳は守らなければなりません。

(07/08/15 神戸新聞)
終戦記念日/戦後の原点が揺らいでいないか
 あの日と同じ焼けるような日差しの下、六十二回目の「8・15」が巡ってきた。
 折から、「美しい国づくり」を掲げた安倍首相の主導で戦後体制の見直しが進む。改憲への強い意欲も語られる。日本はどこへ行こうとしているのか。性急とも思える安倍路線を前に、先の見えないもどかしさが、いつもの年以上に募る。
 そんなときだからこそ、平和国家として歩んだ戦後日本の原点である、あの日の誓いを胸にしっかりと刻み直したい。終戦記念日の意義は、そこにある。
         ◇
 米同時多発テロから、もうすぐ六年になる。この間、国際社会の図式は変わった。テロは拡散し、収まる気配はない。日本の立場もまた、ずいぶん違ったものになっている。
 アフガニスタンを攻撃した米国の要請で、海上自衛隊によるインド洋での後方支援が始まった。「ショー・ザ・フラッグ(日本の旗を)」を合言葉にした自衛隊初の「戦時派遣」である。さらに「ブーツ・オン・ザ・グラウンド(地上兵力を)」の声を受け、人道支援を目的に、戦闘が続くイラクの国土に陸上自衛隊が派遣された。
 陸自は任務を終えてイラクから撤収したが、海と空の支援活動はいまも続く。「非戦闘地域」という概念で憲法の枠をすり抜けながら、自衛隊の海外活動は拡大してきた。
思えば、小泉前政権下での変わりようは、驚くばかりだ。
安倍路線の行方は
 その流れは、後継の安倍首相によって、さらに前へ進もうとしている。手続き法を整えた改憲への動きが象徴といえる。ベースとなる自民党の新憲法草案は、最大の論点である九条を見直して「自衛軍」の保持をうたい、国際的な協調活動に加わる形で海外での武力行使に道を開いている。参院選の選挙公約には、三年後に改正案の発議をめざすことを盛り込んだ。
 一方で、集団的自衛権について研究する有識者会議には、行使容認の考えをもつとされるメンバーが多く集められた。いくら国際貢献が求められているとはいえ、日米同盟重視のなかで自衛隊の海外での役割が増していけば、平和国家とは違う方向に進んでしまわないか。安倍カラーで進む「戦後レジーム(体制)からの脱却」路線に、懸念が付きまとう。それを抜きにして、先の参院選で国民が政権与党に下した厳しい審判は語れまい。
 首相は自らの路線の基本にある考え方、歴史認識について、積極的に語ってこなかっただけに、なおさらである。先の大戦の評価は「歴史家に任せるべきだ」と繰り返し、靖国神社の参拝は「行く、行かないは言わない」とあいまいにした。もともと、タカ派的とされた言動は、首相になって封印された感がある。それでも、「公共の精神」を強調し、「国と郷土を愛する態度」などを盛り込んだ改正教育基本法をみても、安倍カラーとされるものはにじみ出ている。
 あの戦争は六十二年前のきょう、終わった。三百万人を超える国民が亡くなり、アジア・太平洋地域の人々にも癒やし難い傷を残した。その痛切な反省に立って「二度と戦争はしない」と誓い合ったのが、戦後のわたしたちの出発点だった。いまの暮らしを可能にする安定や繁栄は、その延長に生まれてきたはずだ。数え切れない人々に苦しみを強いた戦争をどう受け止め、「8・15」の誓いをどう引き継ぐのか。日本の首相として、まず語ってもらわなければならない。参院選惨敗の後、首相の口から「美しい国」はほぼ消え、「新しい国づくり」が取って代わった感がある。だが、原点が抜け落ちたまま別の言葉で見直しや改革を叫んで、国民の心にどこまで響くだろう。
平和の力を信じて
 戦争体験の風化が語られて久しい。いまや戦後生まれが全人口の七割以上を占めており、記憶は薄れ、想像力は働きにくい。歯止めをかけるのは至難といえる。広島、長崎への原爆投下を「しようがない」と言った前防衛相の発言には耳をうたぐったが、より深刻なのは若い世代にうかがえる意識かもしれない。格差にあえぎ、将来の見通しが立たないなかで戦争への抵抗感が薄れてきた。そんな指摘さえ聞かれる。単なる時代の流れでは済まされない変化に、たじろぐ。
 たしかに、北朝鮮の核は現実の脅威といえる。だが、とげとげしい時代にあって、日本がまずよりどころとすべきは、あの惨禍と復興の体験ではないか。 「戦後日本は平和主義に基づいて中流の生活を土台にした豊かな国をつくった。その存在はすごい力なんだ。平和主義に徹することで、世界を変えうる力がある」
 つい先日亡くなった作家の小田実さんが、がんと闘う病床で語った言葉が、本紙に紹介されていた。力だけに頼って問題が片付かないことは、泥沼状態に陥ったイラクをみれば分かる。戦後、わたしたちが体現した「平和力」に、とりわけ若い人は自信をもて。小田さんはそう言いたかったのだろう。体験を引き継ぎ、世代を超えて共有して不戦の誓いを新たにする。いまこそ、そうした姿勢の大切さを再認識したい。

(07/8/15 中国新聞)
終戦記念日 史実を冷静に学びたい
「軍事一色だなあ」とつぶやいた人もいる。JR呉駅から設けられた連絡通路を呉市海事歴史科学館「大和ミュージアム」に向かう。旧海軍が誇った戦艦大和の全容を伝える。西隣には四月、海上自衛隊呉史料館「てつのくじら館」が加わった。こちらは、米国と一体で進めてきた海の守りを紹介している。
 盆で帰省中の人を含め、連日多くの入場者でにぎわう二つの博物館は、戦前・戦後の断絶と連続をありのままに映し出す。以前なら、この種の施設をめぐっては賛否両論が長く激しく渦巻いたことだろう。終戦から六十二年。史実を冷静に学べる時期が来たと受けとめたい。
二者択一でなく
 掛け替えのない平和を守り抜くためにこそ、戦争の歴史を振り返る。
 史実自体がなお論争の的になっている場合も少なくない。六十二年前に終わった戦争の呼称からしてそうだ。当時のまま「大東亜戦争」にこだわるか、戦後広く使われてきた「太平洋戦争」に従うか。ことし七十周年の節目となった盧溝橋事件に始まる日中戦争からのつながりも重視して、近年の戦史研究では「アジア・太平洋戦争」の表記が目立つ。二者択一に陥らず全体像をとらえようとする一つの見識だろう。
 先に米下院本会議が日本政府に公式謝罪を求めて決議した従軍慰安婦問題にしても、教科書の記述が論議になった沖縄の集団自決にしても、軍の強制や関与について「オール・オア・ナッシング」の選択を迫る態度には、疑問がある。結論を下すための判断材料をどう整えるか。戦争中の重大な決定にかかわる極秘資料が今日まで十分な形で保存されているとは信じ難い。関係者の証言からは、主観の「混入」を完全には排除できまい。
 しかし、二者択一を避けるのは、決して結論を先送りしたり責任をあいまいにしたりするためではない。
 専門家であろうとなかろうと、詳細を今後の調査研究に委ねるとしても「これまでのところ」と限定付きで判断を示すことはできるし、しなければならない。ましてや、戦時下で兵士や庶民の、いわば生殺与奪の権を握っていた軍部が、戦闘やそれにまつわる行為について、結果責任を負うのは当然ではないだろうか。
対等な関係必要
 戦争の相手国と、どう和解するかも難問だ。あらためて日付をみる。きょうはポツダム宣言受諾を連合国に伝えた八月十四日でもなく、降伏文書に調印した九月二日でもない。近刊の佐藤卓己/孫安石編「東アジアの終戦記念日」などによれば、昭和天皇の玉音放送があった日が終戦記念日になったのは国内向けの要因が大きい。聖断を通じて戦前と戦後が一つにつながったため、社会の激変にもかかわらず、国民の混乱や分裂を回避できたとの見方もある。
 だが、日本の「終戦記念日」は同時に韓国の「光復節」、北朝鮮の「解放記念日」でもある事実を忘れてはなるまい。小泉純一郎前首相のようにこの日の靖国神社参拝を特別視する姿勢が、いかに旧植民地の人々の神経を逆なでしているか。A級戦犯が合祀(ごうし)されている現状ではなおさらだろう。
 韓国、北朝鮮への態度とは裏腹に、戦後日本はあまりに「親米」的だった。命懸けで戦いながら一転、占領を経て運命共同体に至る。てつのくじら館は、米国の手厚い支援から戦後の国防が始まったと説明する。本来、自衛隊員向けの教育施設でもあると分かっていても、英文が日本文より大書された展示には違和感を抱く人もいるのではないか。
 日本がたびたび戦場としてきた中国との間柄もなお不安定といわざるを得ない。経済を中心に互恵関係はもはや後戻りできないほど緊密になったのに、双方とも排外主義をあおる風潮が強まっているのが気掛かりである。平和な国際環境づくりのため、対等の関係をできるだけ多くの国と築きたい。

(07/08/15 西日本新聞)
「戦後」評価を誤ってはならぬ 62回目の「終戦の日」
 戦後62回目の「終戦の日」がめぐってきた。先の大戦の日本人犠牲者は310万人。途方もない代償であった。私たちは今日、内外の犠牲者の霊を慰め、不戦の誓いを新たにしたい。
 不幸にも、世界では争いごとが絶えない。わが国は戦後、こうした紛争に武力をもってかかわることはせず、非軍事的関与にとどめてきた。
 戦争を憎み、忌避する国民の心が、武力を伴う対外活動を許さず、戦争放棄と戦力不保持を定めた憲法の改正を慎重にさせたからと言える。
 その間、国内的には国土復興と経済成長を達成した。戦後はおおむね順調に歩んできたというのが大方の国民の受け止めだろう。
 ところが、そうした戦後に対する評価が、この1年、大きく揺さぶられ、私たちを不安な気持ちにさせた。
「独立回復」目指す政治
 「戦後レジー厶(体制)からの脱却」。昨年9月、政権を任された安倍晋三首相のキャッチフレーズである。
 言うまでもなく、戦後体制は自民党長期政権の所産である。その継承者であるはずの安倍首相が異を唱えた。
 首相は著書「美しい国へ」で記す。自民党結党の目的の1つは「本当の意味での独立を取り戻すこと」であったのに、これが後回しにされ、経済優先の政治が進められた。その結果、家族の絆(きずな)、故郷への愛着、国に対する想(おも)いが軽視されるようになった‐と。
 そして、安倍首相は「独立の回復」を象徴するものとして、憲法改正を最重要課題に位置付ける。
 首相は就任後、「志ある国民を育て、品格ある国家をつくること」こそ教育の目的とし、教育の憲法とされてきた教育基本法を改正した。
 内閣府の外局だった防衛庁を防衛省に「格上げ」し、自衛隊の任務に周辺事態での活動や国際平和活動を加えた。通常国会では、憲法改正の手続き法である国民投票法を制定した。
 さらに、歴代政府が憲法上できないと解釈してきた集団的自衛権の行使について、憲法解釈を変更すべく、有識者懇談会に検討を委ねている。
 同盟国の一方が攻撃を受ければ、他方も武力支援する集団的自衛権。その行使は、日米同盟を強固にしていくうえで欠かせないという判断である。
 首相は「独立回復」のための戦後の見直しを着実に進めてきたと言える。
 そんな安倍首相に、祖父・岸信介元首相のDNAを指摘する向きがある。
 戦時体制の閣僚であり、戦犯容疑者でもあった岸元首相。戦後は「押しつけ憲法」を不当として、自主憲法制定を主張。とりわけ、戦力保持を禁ずる九条改正の必要性を訴え続けた。
 安倍首相は祖父への敬慕の念を隠さない。思想的類似性も認める。九条改正を含む改憲は、首相の新人議員のときからの政治目標であった。
参院選での厳しい審判
 安倍政治に顕著な「祖父的なもの」への傾倒。そこに戦争体験なきリーダーの「危うさ」を見たのは、私たちだけではなかった。
 6月末、宮沢喜一元首相が世を去った。戦後の自民党政権の中枢を歩み続け、「軽武装、憲法擁護、経済成長」を政治理念に戦後の制度づくりに関与してきた人物である。
 宮沢元首相は一昨年刊行した回顧録で、戦後の「ターニングポイント」の1つに60年安保騒動を挙げている。
 「あの時に起こった国民的エネルギーは、おそらく岸さんという戦前派を代表した人の戦前回帰的な権力主義の政治に対する反発ではなかったか」
 宮沢元首相は、岸退陣をもって戦前回帰が終わり「新しいデモクラシー」が生まれたとも指摘。このときの戦前回帰政治との決別が、戦後の平和と繁栄につながったと確信する。
 安倍首相の登場と宮沢元首相の死。一見、戦後評価の反転を象徴するような出来事とも思える。
 しかし、実際は違う展開となった。
 先月の参院選での与党大敗である。安倍首相にとっては、思いがけない民意の審判であったろう。
 与党の敗因には無論、年金問題や閣僚の不祥事などもあったが、「戦後レジームからの脱却」路線も俎上(そじょう)に載った。民意の共感があれば、また違った結果となったはずである。
 私たちは、戦後体制に手を加え、改憲を目指す安倍首相に、しばしば再考を求めてきた。民意のなかにも、同じ懸念があったのだと思う。
 戦争の反省からスタートした戦後。その戦後に問題がなかったとは言えない。しかし、少なくとも私たちは自由と民主主義を享受し、国内的安定と国際的信頼を得た。
 そこには憲法の役割もあった。世論調査では、改憲論が増えつつあるなかで、九条については今も、国民の多くが改正の必要性を認めていない。
 安倍首相が、戦後体制を全否定しようとしたわけでは無論ない。ただ、戦後をめぐる認識で、国民とずれがあったのは否めない。

(07/08/15/ 琉球新報)
終戦記念日 平和と不戦を誓う日に
 戦後62年の終戦記念日が今年も巡ってきた。去る大戦で犠牲になった多くのみ霊に謹んで哀悼の意を表する。あらためて恒久平和と不戦を誓う日にしたい。
 最近の日本の現状を見ると、過去の過ちに目をつぶり歴史の風化を促すような動きが顕著である。極めて憂慮すべき状況だ。
 今年3月に公表された高校日本史教科書検定で沖縄戦「集団自決」の日本軍の関与が削除・修正されたほか、第2次大戦中の従軍慰安婦問題では安倍晋三首相が「(旧日本軍による慰安婦動員の)強制性について、それを証明する証言や裏付けるものはなかった」などと発言し批判を浴びた。
検定意見の撤回を
 不用意な首相発言が一因となって、7月には米下院が日本政府に慰安婦問題で公式謝罪を求める決議を初めて可決する事態になった。
 教科書検定問題、従軍慰安婦問題などに共通しているのは、旧日本軍の犯した非道な行為を可能な限りぼかし、糊塗(こと)しようとする意図が透けて見える点だ。
 戦後62年が経過し大戦の実相を証言できる人が少なくなってきたのをいいことに、歴史を歪曲(わいきょく)することは絶対に許されない。
 再び過ちを繰り返さないためには、過去の行為を直視して反省し、史実を後世に正しく伝えていくことが不可欠である。
 政府内で、過去の過ちをあいまいにしようとする動きが見られるのは危険な兆候だ。こうした傾向が強まれば、やがては大戦自体を正当化することにもなりかねない。
 沖縄戦の集団自決については、昨年の検定まで、軍の強制を明記した教科書もすべて合格していた。ところが、今年の検定で、唐突に修正意見が付いた。
 教科書を審査するのは教科用図書検定調査審議会だが、検定意見の原案は文部科学省が作成している。何らかの政治的意図が働いたとしか思えない。
 にもかかわらず、伊吹文明文科相は検定意見撤回の要請に対し「政治による教育への介入になるので難しい」と述べ、教科用図書検定調査審議会の結論を尊重する考えを示している。
 審議会に修正を求める検定意見を出させておきながら、抗議を受けると審議会を盾にして撤回を拒む。このような欺瞞(ぎまん)がまかり通っていいはずがない。
 同問題では、県議会と県内全41市町村議会が検定撤回を要求する意見書を可決した。県議会や県子ども会育成連絡協議会、県PTA連合会、県老人クラブ連合会、県高等学校PTA連合会、県遺族連合会、県婦人連合会などによる超党派の県民大会が9月に開催される運びになっている。
 終戦記念日に際し、政府がなすべきことは、歴史の真実に目を向け、検定意見を直ちに撤回し記述を復活させることだ。
住民守らぬ軍隊
 昭和天皇が国民向けのラジオ放送(玉音放送)でポツダム宣言受諾を明らかにした1945年8月15日、沖縄では敗戦を知らずガマに隠れている住民がおり、依然、投降を拒否する日本兵と米軍との間で散発的な戦闘もあった。
 久米島では15日以降も、海軍通信隊(約40人、鹿山隊)によって住民がスパイ容疑で次々と殺される事件が起きている。軍は住民を守るどころか刃(やいば)を向けた。
 20万人余が犠牲になった沖縄戦で、日本兵は住民を壕から追い出したり、食料を奪ったり、スパイの嫌疑をかけて殺害するなどしている。
 こうした悲惨な歴史をありのままに伝えていくことは、後に続く者の務めである。
 憲法9条は「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」とうたっている。
 とりわけ9条2項は「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と明記、戦力の不保持にまで踏み込んでいる。
 戦争の悲劇を二度と繰り返さないためには9条を堅持しなければならない。
 だが、自民党が9条2項を削除し「自衛権」と「自衛軍」の保持を明記した新憲法草案を2005年に決定するなど、改憲に向けた動きも具体化している。
 戦争を防ぐにはどうすればいいのか。皆で考える日にしたい。

(07/08/15 沖縄タイムス)
[8・15と戦後体制]
事態は悪化しつつある
戦場・占領・復興の混在 
 終戦記念日にあえて問い掛けてみたい。「先の大戦が終わった日はいつですか」「沖縄戦が終わったのはいつですか」。 
 「八月十五日=終戦記念日=戦争が終わった日」という認識は、今や国民共通の記憶となっているが、ことは必ずしも単純でない。 
 国民が終戦詔書の玉音放送を聞いたのは八月十五日だが、日本政府がポツダム宣言の受諾を正式に連合国に伝えたのはその前日の十四日。ミズーリ艦上で降伏文書の調印式が行われたのは九月二日のことである。 
 沖縄の慰霊の日に当たる六月二十三日は、沖縄戦が終わった日だとはいえない。六月二十三日以降も一部では日本兵による奇襲攻撃などがあった。逆に六月二十三日以前に収容所に収容され「戦後」の生活を歩み始めた住民も少なくなかった。 
 激しい戦闘と占領生活と戦後復興が混在する形で進行していたのである。 
沖縄で降伏文書の調印式が行われたのは九月七日のことだ。 
 地上戦のあと米軍がそのまま占領軍として駐留し住民を直接統治した沖縄と、ポツダム宣言受諾後に米軍が進駐して間接統治した本土とでは、「終戦」の迎え方、受け止め方が大きく異なる。そしてそれ以上に本土と沖縄の決定的な違いを生んだのは戦後体制であった。 
 本土の一部知識人の中には、四月二十八日を終戦記念日にすべきであるとの意見があったという。 
 四月二十八日はサンフランシスコ講和条約が発効した日である。日本が米軍占領から解放され主権を回復したこの日、沖縄は本土から切り離され、米軍の統治に委ねられた。 
 この日を終戦記念日にしたいと主張する知識人には、沖縄が置かれた戦後の境涯に対する痛覚が働かないのだろうか。 
 安倍晋三首相は就任以来、「戦後レジーム(体制)からの脱却」を訴えてきた。参院選敗北後も、その姿勢を変更する気はないようだ。だが、沖縄の戦後体制は本土とまったく異なっており、一緒くたに論じることはできない。それが議論の前提だ。 
同一制度の異なる現実 
 復帰前、沖縄には憲法が適用されなかった。軍事上の必要性がすべてに優先され、地方自治も人権も大きな制約を受けた。あえて要約すれば、これが沖縄の戦後体制であった。 
 復帰によって憲法が適用され、米軍基地は日米安保条約と日米地位協定の下で運用されることになった。しかし、本土と同一の制度に移行したからといって、本土と同一の現実を保障したわけではなかった。 
 基地外での米軍機事故にもかかわらず、県警さえ近寄れないような米軍の一方的な現場規制。学校敷地への米軍装甲車、車両の度重なる侵入。米軍基地をめぐるさまざまな「理不尽さ」は、沖縄の戦後体制が今なお続いていることを示している。 
 憲法は国の最高法規である。けれども沖縄では、その最高法規の位置に日米安保条約が鎮座していて、憲法の影が薄い。 
 普天間飛行場所属の米軍ヘリが沖縄国際大学に墜落した際、現場規制をした米軍は、地位協定の合意議事録に基づいて、つまり与えられた権利として、県警の検証を拒否した。 
 イラク戦争にのめり込む米国を支援する一方で、国家主権にかかわる事例に対して米軍に強く当たることのできない日本政府とはいったい何なのか。多くの県民が疑問を感じたはずだ。 
進む日米の軍事一体化 
 「戦後体制からの脱却」を言うのであれば、何よりもまず沖縄において基地をめぐる「理不尽さ」の解消に全力を挙げなければならない。 
 残念ながら沖縄の現実は、その方向に向かっているとは言い難い。普天間飛行場の辺野古移設をめぐる最近の政府の対応は、あまりにも強引で度が過ぎるところがある。 
 事前の相談もなく日米で移設案を決め、決まったものに対しては「のむならカネをやるが、のまないならカネはだせない」という露骨な脅し。これが果たして負担軽減のための施策といえるのだろうか。 
 米軍再編に絡んで本島北部への基地の集中化、機能統合が進んでいる。米軍と自衛隊の一体化も急速に進みつつある。その上、集団的自衛権の行使や憲法九条の改正が具体化すれば、沖縄は大きな安全保障上の負担を新たに抱え込むことになるだろう。


最近のマスコミ報道(07/08/14) NHK世論調査 内閣支持率29%
日時:2007814
(07/08/14 8時0分 HHK)
内閣改造は挙党体制で 32%
NHKは、今月10日から3日間、全国の20歳以上の男女を対象に、コンピューターで無作為に発生させた番号に電話をかけるRDDという方法で世論調査を行い、調査対象の59%にあたる1086人から回答を得ました。この中で、安倍総理大臣が今月27日にも行う内閣改造に、期待しているかどうか聞いたところ、▽「大いに期待する」が12%▽「ある程度期待する」が31%だったのに対し▽「あまり期待しない」が37%▽「まったく期待しない」が16%で、「期待しない」と答えた人は、合わせて53%にのぼりました。また、安倍総理大臣が内閣改造で、「挙党体制」と「安倍カラー」のどちらを重視すべきか尋ねたところ、▽「挙党体制を重視すべきだ」が32%▽「『安倍カラー』を重視すべきだ」が16%▽「どちらともいえない」が46%でした。一方、今回の参議院選挙の結果、衆議院とは違って、参議院で野党側が多数となった国会の状況について、利点と弊害のどちらが大きいか質問したところ、▽「利点が大きいと思う」が18%▽「弊害が大きいと思う」が23%▽「どちらともいえない」が52%でした。そして、秋の臨時国会の焦点となる、海上自衛隊がインド洋で行っているアメリカ軍などの艦船に燃料の補給活動を行うための「テロ対策特別法」の延長について聞いたところ、▽「賛成」が24%▽「反対」が31%▽「どちらともいえない」が38%でした。また、衆議院の解散・総選挙の時期について尋ねたところ、▽「年内には解散して総選挙を行うべきだ」が最も多く29%、次いで▽「平成20年度予算案が成立したあと、来年春ごろには行うべきだ」が19%▽「再来年の任期満了まで総選挙を行う必要はない」と「ただちに解散して総選挙を行うべきだ」が、それぞれ17%▽「日本でのサミットが終わったあと、来年夏ごろには行うべきだ」が9%でした。
 
(8月13日 19時26分 NHK)
NHK調査 内閣支持率29%
NHKは、今月10日から3日間、全国の20歳以上の男女を対象に、コンピューターで無作為に発生させた番号に電話をかけるRDDという方法で、世論調査を行いました。調査の対象になったのは1828人で、このうち59%にあたる1086人から回答を得ました。それによりますと、安倍内閣を「支持する」と答えた人は、先月より9ポイント下がって29%となり、去年9月の安倍内閣発足以来、初めて30%を割り込み、最も低い水準となりました。一方、「支持しない」と答えた人は、9ポイント上がって58%となりました。安倍内閣を支持する理由では、▽「他の内閣よりよさそうだから」が34%、次いで▽「人柄が信頼できるから」が25%などとなっています。一方、支持しない理由では、▽「政策に期待が持てないから」が35%、次いで▽「実行力がないから」が29%などとなっています。また、今回の参議院選挙の結果について満足しているかどうか聞いたところ、▽「満足している」が26%、▽「どちらかといえば満足している」が35%、▽「どちらかといえば不満だ」が20%、▽「不満だ」が15%で、「満足だ」と答えた人はあわせて61%に上りました。そして、自民党が大敗した主な原因を尋ねたところ、▽「閣僚の相次ぐ不適切な発言」が24%で最も多く、次いで▽「安倍総理大臣の指導力の問題」が22%、▽「政治とカネをめぐる問題」が20%、▽「年金問題」が18%などとなっています。さらに、安倍総理大臣が続投することについて聞いたところ、▽「賛成」が25%だったのに対し、▽「反対」が40%、▽「どちらともいえない」が31%でした。一方、民主党が大勝した原因を尋ねたところ、▽「政権への不満や不信」が最も多く37%、次いで▽「年金問題」が19%、▽「政権交代への期待」が13%などとなっています。また、将来、民主党の政権を期待するかどうか聞いたところ、▽「期待する」が46%、▽「期待しない」が44%でした。

(8月13日 19時26 NHK) 
NHK世論調査 各党の支持率
NHKが行った世論調査によりますと、各党の支持率は、▽自民党が先月より4ポイント余り下がって27.7%、▽民主党が5ポイント余り上がって26%、▽公明党が1ポイント近く下がって3.5%、▽共産党がやや下がって3.7%、▽社民党が1ポイント上がって2.3%、▽国民新党がやや上がって0.4%、▽新党日本がやや上がって0.4%、▽「特に支持している政党はない」が9ポイント近く上がって30.8%でした。

 (2007年8月14日(火)「しんぶん赤旗」)
憲法審査会
始動先送りでつまずき
 十日に閉会した臨時国会では、衆参両院に設置が決められた憲法審査会の運営規程や委員構成が決まらず、審査会の実体づくりは、秋の臨時国会に持ち越しとなりました。日本共産党は「九条改憲を狙いとする改憲手続きを進めることは許されない」(穀田恵二国対委員長)と主張。参院選での与野党逆転の新たな国会状況も受け、野党は衆参両院での憲法審査会の始動阻止で一致しています。安倍改憲路線が、大きなつまずきを見せています。
 「戦前を肯定するような安倍晋三首相の発言が、国内外にメッセージとして伝わり、この内閣のもとで改憲をすることは危険なのではないかという雰囲気を広げた。それがこの国会で憲法審査会を始動できなかった原因の一つでもある」
 憲法問題に携わる自民党有力議員はこう述べます。
国民は「ノー」と
 安倍首相は「戦後レジーム(体制)からの脱却」を掲げ、戦後初めて「任期内改憲」を表明。内閣も、侵略戦争を正当化し、いまの憲法を壊そうとする「靖国」派で固めました。教育基本法改悪、防衛省格上げ、改憲手続き法など、たてつづけに強行してきました。
 格差・貧困の打開を求める国民の声に耳を傾けず、改憲タカ派路線を突き進み、二〇一〇年の改憲発議を公約のトップで掲げた自民党に、国民は参院選で大きな「ノー」の声を突きつけたのです。
 選挙後には、米下院議会で、「従軍慰安婦」問題で日本政府に謝罪勧告の決議も採択されるなど、安倍「靖国」派政権は国内外でおいこまれることになりました。
総選挙意識して
 「自民党内も“憲法”を口にしにくい雰囲気になっている。解散・総選挙を意識し始めた衆院議員は、自分の“身”のことを第一に考えている」
 自民党憲法審議会関係者はこうこぼします。同党内では「憲法、憲法と言っていたらまた(選挙で)負ける」という声もこぼれているといいます。
 参院選で自民党は片山虎之助参院幹事長が落選し、青木幹雄参院議員会長が大敗の責任をとって辞任。改憲手続き法の採決を強行した関谷勝嗣参院憲法調査特別委員長も落選しました。いまだに党の参院運営体制も定まらず、安倍首相続投への国民の批判も強い状況の中で「憲法審査会どころではない」(自民党関係者)という状況です。
 一方、改憲手続き法の問題では、自民党と共同で成立を目指してきた民主党憲法調査会幹部の一人は、参院選後の同党のスタンスについてこう述べます。
 「通常国会での安倍首相の指示による与党の強硬な審議、採決に対する反発が尾を引き、安倍首相とは一緒に憲法論議はできない。選挙の結果を受けて、生活問題を第一に取り上げていくという流れの中で、『憲法は特別』といって安倍さんと一緒に改憲議論を進めるというわけにもいかない」
 国民新党の憲法問題関係議員も「憲法問題で採決を強行するというのは非常に危険なこと。国民も見ており、強行採決にもとづく憲法審査会の論議には乗れない」と述べます。(中祖寅一)

(2007年8月12日 東京新聞)
『世襲』の弊害が噴出した
 世襲議員の弊害が一挙に露呈した−参院選での自民大敗や後始末を見てそう思う。
 自民党で国会議員の二、三世が三割前後を占め、政権中枢を担ってかなりたつが、その弊害が安倍政権混迷の根底にありそうだ。悪役を演じた「ばんそうこう大臣」の赤城徳彦前農相は偉大な祖父の地盤を受け継ぐ。これをかばって危機管理や人事のまずさを見せた安倍晋三首相は三世、取り巻きにも世襲が多い。
 大敗の象徴は農村や地方都市である。長い間自民党の基盤だったが、いまや「小泉改革」が決定的にした地方格差に苦しんでいる。しかし地方選出の世襲議員の多くは、親の仕事場である東京生まれの東京育ちだ。地方の生活感が薄い中で、住民の悲鳴は耳に届かなかった。
 世襲議員は、本人の資質にかかわらず、議席確保のため担ぎ出される。地盤、看板、カバンが保証されているからだ。カネの問題で細かいことまで説明する必要はない。多少の非難があっても、選挙で落ちることはない。そして数合わせで出てきた議員にとっては数の論理が最優先。かくして選挙直前の国会では強行採決が乱発された。
 民意や議会制民主主義の軽視、こうした世襲議員が陥りがちな弊害が有権者の拒否反応を招いた。こんな調子で憲法を変えられたらたまらないという民意も含めて。それでも続投という安倍政権に、これも世襲議員にありがちな独りよがりとみて、内閣支持率は下がり続けている。
 もっとも大勝した民主党の小沢一郎代表も二世だ。野党での苦労が民意への敏感さを養ったか。与野党逆転の参院を中心とした国会運営が次の試金石になる。(小林一博)



最近のマスコミ報道(07/08/11) 駆けつけ警護に容認論 集団的自衛権、有識者懇で大勢
日時:2007811
(2007年08月11日 朝日新聞)
駆けつけ警護に容認論 集団的自衛権、有識者懇で大勢
 政府が憲法解釈で禁じる集団的自衛権の行使について議論する有識者の「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(座長・柳井俊二前駐米大使)が10日、首相官邸で開かれた。海外に派遣された自衛隊が、共に活動する外国軍が襲われた際に援護に向かう「駆けつけ警護」について、国際的常識で容認すべきとの意見が大勢を占めた。 
 駆けつけ警護は、安倍首相が同懇談会に「憲法との関係の整理」を諮問した4類型の一つ。首相はあいさつで「国際的な平和活動に一層積極的に関与することが必要だ。他国と共通の基準をふまえないと効果的な活動を行えない」と述べ、必要性を強調した。 
 政府は国連平和維持活動(PKO)協力法やテロ特措法、イラク特措法で、武器使用を自身や同じ場所の隊員、宿営地を訪れた他国部隊や国連関係者などの防護に限定。離れた所への「駆けつけ警護」は集団的自衛権の行使と関係はないが、憲法が禁じた海外での武力行使につながりかねないとして認めていない。 
 これに対し委員からは「憲法解釈と国際社会の現状の整合性をとるべきだ」「国際平和活動では他国軍との信頼関係が不可欠。自衛隊に自己防衛しか認めないのは非常識だ」などの発言が出た。 
 政府は自衛隊の海外活動に関する一般法(恒久法)を検討中で、自民党からは「駆けつけ警護」を盛り込むべきだとの提言も昨年に出ている。 

(07/08/11 日経新聞)
集団的自衛権、憲法解釈見直しは不透明に・安全保障懇談会
 政府は10日、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(座長・柳井俊二前駐米大使)の会合を開き、参院選で中断していた集団的自衛権行使の是非を巡る議論を再開した。懇談会は憲法解釈で禁じている集団的自衛権の行使を認めるよう秋に提言する予定だが、参院選惨敗で安倍晋三首相の求心力は低下。与野党双方に根強い慎重論があるなか、解釈見直しまで踏み込めるかは不透明だ。
 会合では、首相が検討を指示した集団的自衛権に関する4類型のうち、国連平和維持活動(PKO)などでともに活動する他国部隊が攻撃を受けた際、自衛隊が現場に駆けつけて救援できるかどうかを議論。現行の基準では、自衛隊員の「管理下」にない他国の隊員を防護するための武器使用は認めていないが、基準を緩和すべきだとの意見が大勢を占めた。
 懇談会はすでに、公海上で攻撃を受けた米艦船の防護や米国に向かう弾道ミサイルの迎撃などについて議論。いずれも日米同盟の観点から集団的自衛権の行使として対応が必要との認識で一致している。

(2007年8月11日 読売新聞)
自衛隊の武器使用「国連基準で」…集団的自衛権有識者懇
 政府は10日、集団的自衛権に関する個別事例を研究する有識者会議「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(座長=柳井俊二・前駐米大使)の第4回会合を首相官邸で開き、国際平和協力活動中に他国部隊が攻撃された際、自衛隊が駆けつけて反撃することの是非などについて集中的に議論した。
 自衛隊の武器使用基準を国連が平和維持活動で運用している基準に合わせ、こうした「駆けつけ警護」を可能にすべきだとの意見が大勢を占めた。
 現行の国連平和維持活動(PKO)協力法やイラク復興支援特別措置法などでは、自衛隊員の武器使用は、隊員と「自己の管理下に入った者」を守る際の正当防衛や緊急避難時などに限られている。同じ活動に従事する他国部隊が攻撃された場合に助ける駆けつけ警護に関しては、「憲法が禁じる海外での武力行使にあたる可能性がある」などの理由で、認められていない。
 会合では、駆けつけ警護などの活動について、集団的自衛権の問題ではなく、国連の枠組みで加盟国が一致して平和回復を図る「集団安全保障」の一環とみなし、認めるべきだとの認識で一致した。メンバーからは、「同じ任務を行っているのに、自分しか守らないのは常識外れだ」「国際的なルールに基づく形で活動するのが基本だ」など、自衛隊の武器使用基準の緩和を求める声が相次いだ。
 懇談会は11月をめどにまとめる提言で、集団的自衛権の行使を禁じた政府の憲法解釈を変更するよう求める方針だ。ただ、自民党の参院選惨敗などで、安倍首相が提言を具体化できるかどうか、不透明な情勢だ。
 首相は10日夕、首相官邸で記者団に「政策を進めていく上においては困難な状況になったと覚悟しているが、私が続投するのはあくまでも政策を前に進めていくためだ」と述べた。

(2007年8月11日 中日新聞)
集団的自衛権、今秋国会での「容認」断念 政府、関連法整備も着手せず
 政府は十日、集団的自衛権行使の一部を容認するための憲法解釈変更を九月召集の臨時国会では行わない方針を固めた。解釈変更に伴う関連法の整備にも当面は着手しない。先の参院選で自民党が惨敗し、参院で与野党逆転した政治状況を踏まえ、憲法解釈を変更するのは事実上、不可能と判断した。
 安倍晋三首相は、昨年九月の就任前から集団的自衛権に関する憲法解釈の見直しに意欲を示してきた。今年四月には有識者による「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(柳井俊二座長)を発足させ、「公海上で自衛艦と並走中の米艦船が攻撃された際の反撃」など具体的な四類型について、解釈変更の可能性を検討している。
 十日夕の懇談会では、国連平和維持活動(PKO)などで海外に派遣された自衛隊が、他国部隊も警護できるよう武器使用権限を拡大すべきかどうか議論された。首相は「他国の要員と共通の基準で緊密に助け合わなければ、各国の信頼を得ることも、効果的な活動もできない」と強調。武器使用権限を見直す方向で意見が一致した。
 懇談会はこうした議論を踏まえ、集団的自衛権行使を認める最終報告を今秋に提出する予定だが、政府は選挙後、強まった公明党の慎重論に配慮し、ただちに解釈変更はしない方針。変更に伴う自衛隊法やPKO協力法の改正も参院の与野党逆転により先送りした。

(2007/08/11 時事通信)
PKOでの他国救援も容認=集団安全保障で対応−有識者懇
集団的自衛権行使の個別事例について検討する政府の「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(座長・柳井俊二前駐米大使)は10日午後、首相官邸で第4回会合を開いた。安倍晋三首相が諮問した4類型のうち、国連平和維持活動(PKO)参加中に攻撃を受けた他国部隊を武器を使用して救援する「駆け付け警護」を容認すべきだとの意見が大勢を占めた。
 会合では、国連の枠組みで行われるPKOでの武器使用の是非は、個別国家の集団的自衛権行使の問題ではなく「集団安全保障」の問題との認識で一致。委員からは「物品は守るが仲間の命は守らない、というのはおかしい」「国際的活動は現場での信頼関係が不可欠だ。国際ルールにのっとることが基本だ」などと容認論が相次いだ。反対意見はなかった。
 会合に先立ち、首相は記者団に、集団的自衛権の行使容認について「(参院選惨敗で)政策を進める上では困難な状況になったと覚悟している。しかし、続投はあくまで前に進めるためだ。その決意で努力していく」と表明。公明党がそのための法整備に反対していることに関しては「当然いろいろな議論があるだろう。責任を果たしていくことが必要だ」と語った。

(07/08/10 中央日報)
崩れる安倍首相の憲法改正への夢
   日本で、安倍晋三首相の夢と同時に保守勢力の求心点として通じてきた憲法改正が実現しなくなる可能性が高くなった。 
  憲法改正が不可能になれば日本は軍隊保有はもちろん集団的自衛権と周辺国に対する侵攻が憲法上今後も禁止される。 
  朝日新聞と東京大学は、参議院現職議員と立候補者を対象に先月、共同世論調査を行った結果、憲法改正に賛成する回答者が通過に必要な定足数を下回る48%にとどまったことがわかったと7日、明らかにした。日本では憲法を改正するためには国会議員定足数の3分の2(67%)が賛成しなければならない。 
  憲法改正論議が本格化した2003年以後に行われた憲法改正関連アンケート調査で、憲法改正賛成派の割合が定足数に満たないことは今回が初めてだ。日本の政界が保守右傾化の道を歩きながら、一時は憲法改正賛成の割合が70〜80%にのぼることもあった。 
  安倍首相はこうした流れに乗って憲法改正に対する国民的同意と勢力拡大を強化した後、2010年に公式発議して憲法改正を実現させるという夢を育んできた。彼の希望どおり憲法が変われば強い軍事力を保有している自衛隊が憲法上軍隊として公式化し、軍隊を国外に派兵して戦闘に加わることができるようになるのはもちろん、先制攻撃まで可能になる。 
  しかし憲法改正論議事項の中、このように軍事力行使と係わる憲法第9条改正問題には今回の調査結果、政界の反対の割合が非常に高いことがわかった。賛成の割合が26%にとどまり、反対の割合は54%に達した。 
  政界の流れがこのように急変し、憲法改正が難しくなると安倍政権はますます窮地に追い込まれる見通しだ。4人の長官が自殺や資金流用などで退いたのに続き、7日には長勢甚遠法務大臣側が不正な金を受け取って返したことがわかり、政権の道徳性まで地に落ちた。安倍政権の支持率は最近20%台水準まで下落した。 
東京=金東鎬(キム・ドンホ)特派員 


原水爆禁止2007年世界大会・長崎決議(07/08/10)  
日時:2007810
原水爆禁止2007年世界大会・長崎決議
長崎からのよびかけ(全文)
 
 原水爆禁止二〇〇七年世界大会・長崎(九日)で採択された「長崎からのよびかけ」(全文)は次の通りです。
 
 一九四五年八月九日、一発の原爆が、国際文化の街―長崎を地獄に変えました。熱線と爆風と放射線は七万余のいのちを奪い、かろうじて生きのびた人々に、六十二年を経てもなお消えることのない深い傷を刻みつけました。
 長崎と広島の惨劇と被爆者の苦しみは教えています。人類は核兵器と決して共存できないと―。長崎出身の防衛大臣の原爆投下は「しょうがない」発言は、この事実に目を閉ざし、核使用の容認につながるものでした。大臣を辞任に追い込んだのは、被爆者はじめ被爆者国民の核兵器の使用はもちろんその存在も許さない強い思いです。
 核兵器廃絶を求める被爆者の叫びは、いま圧倒的多数の政府をふくむ世界の声となっています。二〇一〇年の核不拡散条約(NPT)再検討会議にむけ、草の根の運動、市民社会と政府の連帯した力で、核兵器廃絶の「明確な約束」の実行をせまっていく決意が高まっています。
 「テロと核拡散」を口実に、核をふくむ先制攻撃戦略を推進しているアメリカは、イラク戦争の泥沼化によって、国内外の厳しい非難にさらされ、孤立を深めています。日本では、参議院選挙で安倍政権に厳しい審判が下り、“アメリカとともに戦争する国づくり″をめざす九条改憲のくわだてに、大きな打撃をあたえました。
 いまこそ、「核兵器なくせ!」「非核・平和の日本を!」「憲法九条まもれ!」の声をひろげ、国民的な行動を力強く発展させるときです。私たちは被爆地・長崎からよびかけます。
〇 二〇一〇年のNPT再検討会議にむけ、核兵器廃絶の世論と行動を大きくひろげましょう。国連と諸国政府に核兵器全面禁止条約の協議開始を求めましょう。
〇 国連総会、NPT再検討会議準備委員会を節目に、「すみやかな核兵器の廃絶のために」署名を大きくひろげましょう。6・9行動や地域・職場・学園での日常的なとりくみを強めましょう。
〇 核兵器廃絶と「非核三原則」の厳守を政府に宣言させる「非核日本宣言」運動を、九月議会を皮切りに各地域でひろげましょう。
〇 「憲法九条まもれ!」の国民的な行動と共同をさらに発展させましょう。
〇 沖縄はじめ全国の米軍基地再編・強化反対のたたかい、横須賀の原子力空母母港化反対のたたかいをひろげましょう。イラクやインド洋から自衛隊を撤退させましょう。
〇 原爆症認定集団訴訟の全面解決と認定制度の抜本的改善を強く求めましょう。
〇 エジプト(十月)など世界各地で原爆展にとりくみましょう。被爆者とともに、その体験や願いを受け継ぎ、次の世代と世界に伝える活動をいっそう強めましょう。
 「核兵器のない平和で公正な世界」の実現は可能です。力をあわせ、いまこそ行動に立ちあがりましょう。
 ノーモア・ナガサキ! ノーモア・ヒロシマ! ノーモア・ヒバクシャ!
 二〇〇七年八月九日
 原水爆禁止二〇〇七年世界大会・長崎


自由法曹団 「改憲手続法 国会審議録検討集(論点整理)」 (2007/08/09)
日時:200789
【自由法曹団】
◎「改憲手続法 国会審議録検討集(論点整理)」(2007/08/09)
http://www.jlaf.jp/index.html
http://www.jlaf.jp/menu/pdf/070809_01.pdf

2007年5月14日、自民・公明の与党は、改憲手続き法案を参議院本会議で採決を強行して成立させた。この法案は、改憲を実現させるための国民投票の手続きを定める国民投票法案、国民投票に向けた改憲案を国会で発議するための国会法「改正」案を含むものである。 
 本書では、主な6つのポイントに関して、成立した手続き法に関して付帯決議や国会審議を検討して、これらの問題点や成果、課題を具体的に明らかにした。この法律が成立したことによって、改憲を許さないたたかいがいよいよ真価が問われることになる。今回の改憲手続き法案に対する国民の疑問や反対の声を今後の議論に反映させ、さらに改憲阻止の運動を大きく広げるために、本書がその一助となれば幸いである。(「はじめ」より抜粋)

■対象審議録
 2006年 第164国会 2006年1月20日〜6月15日
 2006年 第165国会 2006年9月28日〜12月14日
 2007年 第166国会 2007年1月25日〜7月5日

■目 次
 1 国民投票運動と公務員・教育者・・・・・4
 2 最低投票率と国民の承認要件・・・・・12
 3 有 料 意 見 広 告 ・・・・・・21
 4 組織的多数人買収罪及び利益誘導罪・・26
 5 発議の区分と投票の対象・・・・・・・33
 6 憲 法 審 査 会 ・・・・・・・・38


最近のマスコミ報道(07/08/09) 集団的自衛権の憲法解釈変更が困難に 公明側、反対明言
日時:200789
(2007年08月09日 朝日新聞)
集団的自衛権の憲法解釈変更が困難に 公明側、反対明言
 安倍首相が意欲を見せる集団的自衛権の行使容認のための憲法解釈の変更が当面、困難な見通しとなった。首相が設置した集団的自衛権を研究する有識者懇談会は、今秋にも行使容認を提言する方向だが、公明党の北側一雄幹事長が8日、憲法解釈の変更に反対する考えを明言したのに加え、参院の与野党逆転により自衛隊法改正など必要な法整備も難しいためだ。 
 公明党の北側幹事長はこの日の記者会見で、憲法解釈の変更について「私どもは元々反対だし、参院で与野党が逆転しているので、そういうことができる状況ではない」として反対する意向を表明、法整備も難しいとの認識を示した。 
 首相は懇談会に、公海上の米艦防護や米国向けミサイル迎撃など4類型に絞って集団的自衛権の行使が可能かどうか検討を指示。5月の国会答弁で「(新たな憲法)解釈にのっとって自衛隊が行動する場合は、根拠となる法律も当然必要だ」と述べ、法整備を前提とする考えも示している。 
 自民党内の議論や内閣法制局によると、集団的自衛権の行使を容認する場合、行使の要件や手続きを定める新規立法のほか、個別的自衛権の行使を前提にしていた自衛隊法に米国向けのミサイル迎撃などを加える法改正が必要になる。 
 だが、公明党が反対している上に、民主党が国会で集団的自衛権の行使のための法整備に協力する可能性はない。小沢代表も7日の会見で、懇談会を設置した首相の手法について「他人の出した結論を公正であるかのごとくやろうという手法そのものが、あまりよろしくない」と批判した。 
 こうした中、懇談会内には4類型の中で法改正が不要なものについて、行使容認を先行させるべきだとの意見もある。政府内には憲法の解釈変更は「首相の国会答弁で足りる」との見方もあったが、首相がこの手法をとれば与党内からも拙速との反発が出るのは必至だ。 

Yahoo!ニュース
Yahoo!は「現行の憲法が原因で、あなたの暮らしに不自由を感じたことがある?」との設問でインターネットによる投票を今年5月1日から15日までおこない、27,723人が投票。
 「憲法が原因で暮らし不自由」が24%、「あまりない」と「まったくない」を合わせ、「憲法が原因で暮らしに不自由を感じていない人」が77%もいました。日本国憲法が自由と人権を保障し、国民に広く定着し受け入れられていることの証明です。
(実施期間:2007年5月1日〜2007年5月15日)計27,723票
◆とてもある  13%   3,524票
◆少しある   11%   2,826票
◆あまりない  20%   5,296票
◆まったくない 57%  15,585票
◆その他     2%     492票



長崎 平和宣言(07/08/09)
日時:200789
  「この子どもたちに何の罪があるのでしょうか」
 原子爆弾の炎で黒焦げになった少年の写真を掲げ、12年前、就任まもない伊藤一長前長崎市長は、国際司法裁判所で訴えました。本年4月、その伊藤前市長が暴漢の凶弾にたおれました。「核兵器と人類は共存できない」と、被爆者とともに訴えてきた前市長の核兵器廃絶の願いを、私たちは受け継いでいきます。
 
 1945年8月9日、午前11時2分、米軍爆撃機から投下された1発の原子爆弾が、地上500メートルで炸裂しました。
 猛烈な熱線や爆風、大量の放射線。
 7万4千人の生命が奪われ、7万5千人の方々が深い傷を負い、廃墟となった大地も、川も、亡骸で埋まりました。平和公園の丘に建つ納骨堂には、9千もの名も知れない遺骨が、今なお、ひっそりと眠っています。

 「核兵器による威嚇と使用は一般的に国際法に違反する」という、1996年の国際司法裁判所の勧告的意見は、人類への大いなる警鐘でした。2000年の核不拡散条約(NPT)再検討会議では、核保有国は、全面的核廃絶を明確に約束したはずです。
 しかしながら、核軍縮は進まないばかりか、核不拡散体制そのものが崩壊の危機に直面しています。米国、ロシア、英国、フランス、中国の核保有5か国に加え、インド、パキスタン、北朝鮮も自国を守ることを口実に、新たに核兵器を保有しました。中東では、事実上の核保有国と見なされているイスラエルや、イランの核開発疑惑も、核不拡散体制をゆるがしています。
 新たな核保有国の出現は、核兵器使用の危険性を一層高め、核関連技術が流出の危険にさらされています。米国による核兵器の更新計画は、核軍拡競争を再びまねく恐れがあります。
 米国をはじめとして、すべての核保有国は、核の不拡散を主張するだけではなく、まず自らが保有する核兵器の廃絶に誠実に取り組んでいくべきです。科学者や技術者が核開発への協力を拒むことも、核兵器廃絶への大きな力となるはずです。
 
 日本政府は、被爆国の政府として、日本国憲法の平和と不戦の理念にもとづき、国際社会において、核兵器廃絶に向けて、強いリーダーシップを発揮してください。
 すでに非核兵器地帯となっているカザフスタンなどの中央アジア諸国や、モンゴルに連なる「北東アジア非核兵器地帯構想」の実現を目指すとともに、北朝鮮の核廃棄に向けて、6か国協議の場で粘り強い努力を続けてください。
 今日、被爆国のわが国においてさえも、原爆投下への誤った認識や核兵器保有の可能性が語られるなか、単に非核三原則を国是とするだけではなく、その法制化こそが必要です。
 長年にわたり放射線障害や心の不安に苦しんでいる国内外の被爆者の実情に目を向け、援護施策のさらなる充実に早急に取り組んでください。被爆者の体験を核兵器廃絶の原点として、その非人道性と残虐性を世界に伝え、核兵器の使用はいかなる理由があっても許されないことを訴えてください。
 
 爆心地に近い山王神社では、2本のクスノキが緑の枝葉を大きく空にひろげています。62年前、この2本の木も黒焦げの無残な姿を原子野にさらしていました。それでもクスノキはよみがえりました。被爆2世となるその苗は、平和を願う子どもたちの手で配られ、今、全国の学校やまちで、すくすくと育っています。時が経ち、世代が代わろうとも、たとえ逆風が吹き荒れようとも、私たちは核兵器のない未来を、決して諦めません。

 被爆62周年の原爆犠牲者慰霊平和祈念式典にあたり、原子爆弾の犠牲になられた方々の御霊の平安をお祈りし、広島市とともに、核兵器の廃絶と恒久平和の実現に力を尽くしていくことを宣言します。

2007年(平成19年)8月9日 
長崎市長 田 上 富 久


原水爆禁止2007年世界大会 広島アピール(全文)
日時:200788
2007年8月7日(火)「しんぶん赤旗」
原水爆禁止2007年世界大会・広島
広島アピール(全文)

 原水爆禁止二〇〇七年世界大会・広島(六日)で決議された「広島アピール」(全文)は次の通りです。
 ちちをかえせ/ははをかえせ
 としよりをかえせ/こどもをかえせ
 わたしをかえせ/わたしにつながるにんげんをかえせ
 にんげんの/にんげんのよのあるかぎり
 くずれぬへいわを/へいわをかえせ
 (峠三吉『原爆詩集』より)
 一九四五年八月六日午前八時十五分。アメリカが投下した一発の原爆は広島の街を壊滅させ、数カ月のうちに十数万人の命を奪いました。かろうじて生きのびた被爆者たちは六十二年の歳月を経たいまもなお、からだ、くらし、こころの深い傷に苦しめられています。「再び被爆者をつくるな」「核兵器をなくせ」―被爆者のこの叫びはいま世界の声となり、圧倒的多数の政府もその実現を求めています。
 被爆国であり、戦争放棄の憲法をもつ日本は、“核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず″の「非核三原則」を厳守し、核兵器廃絶のために国際政治の場でイニシアチブを発揮すべきです。
 あいつぐ核武装発言や、「原爆投下はしょうがない」という発言に、被爆者をはじめ国民の大きな怒りがわきおこり、防衛大臣を辞任に追いこみました。また安倍政権は、過去の侵略戦争の正当化と憲法九条の改悪をねらい、在日米軍基地を再編強化し、アメリカとともに「戦争する国づくり」へとつきすすんでいます。しかし国民は、参議院選挙できびしい審判を下し、こうした動きに大きな打撃をあたえました。
 いまこそ運動をさらに力強く前進させるときです。「核兵器のない平和で公正な世界」「憲法九条が輝く非核・平和の日本」を求め、草の根の行動と共同をさらにひろげましょう。
 二〇一〇年のNPT(核不拡散条約)再検討会議に向けて、核兵器廃絶の運動がさらに高まろうとしています。国連とすべての加盟国政府、とりわけ核保有国にその実行をせまり、国連総会で核兵器全面禁止条約の協議開始を決議するよう強く求めましょう。
 十月の国連総会、来春のNPT再検討会議準備委員会に向け、「すみやかな核兵器の廃絶のために」署名を全国の地域・職場・学園でいっそう強め、世界にひろげましょう。
 日本政府が核兵器の廃絶と「非核三原則」の厳守を世界に宣言することを求める「非核日本宣言」運動を、九月の地方議会を皮切りに全国で一挙にひろげましょう。
 世界の宝・憲法九条を守りぬく国民的な行動と共同をさらに強めましょう。アメリカの先制攻撃・核使用の政策と一体となった米軍基地の再編・強化に反対し、沖縄、岩国、横須賀など住民ぐるみのたたかいに連帯し、支援しましょう。イラクやインド洋に派遣されている自衛隊の撤退を求めましょう。
 原爆症認定集団訴訟の勝利と認定行政の抜本的改善の実現へ、国民的な支援をひろげましょう。被爆体験を聞き取り、受けつぎ、伝えていく活動、原爆展や原爆パネルの普及、映画や演劇、音楽など文化活動にとりくみましょう。被爆の惨禍を伝える原爆遺跡を保存しましょう。
 核兵器も戦争もない平和で公正な世界をめざして、私たちは前進します。
 被爆者とともに、未来をになう若い世代と経験豊かな世代が腕を組んで―。
 ノーモア・ヒロシマ! ノーモア・ナガサキ! ノーモア・ヒバクシャ! ノーモア・ウオー!
 二〇〇七年八月六日
 原水爆禁止二〇〇七年世界大会・広島


最近のマスコミ報道(07/08/08) 憲法審査会始動せず 野党反発、「未設置」の状態
日時:200788
(2007/08/08 産経新聞)
憲法審査会始動せず 野党反発、「未設置」の状態 
 憲法改正手続きを定めた国民投票法で7日召集の国会での設置が定められている衆参両院の「憲法審査会」が、実質的に設置されず始動できない異常事態となっている。民主党など野党側が反対しているためで、憲法改正論議への影響が懸念される。
 憲法審査会は、改憲原案の審査などを行うため国会に常設される重要機関だ。国民投票法の本体が施行される平成22年5月までは改憲案の審査権限は凍結されるが、改正事項を審査していく役割を担っている。
 国民投票法は公布日(5月18日)以後初めて召集される国会で憲法審査会を設置すると規定。これを踏まえ、衆参の議院運営委員会は6日、それぞれの理事会で、審査会の定数や議決要件などを定める「憲法審査会規程」について協議したが合意できなかった。
 民主党側は2日の衆院議運理事会で「首相は憲法改正発言で目立ちすぎだ。行政府の長は現憲法に基づき国務を統率すべきだ」と主張。国民投票法の衆院での強行採決も指摘し、規程の制定は時期尚早だと反対。共産、社民両党は審査会自体に反対している。
 参院議運理事会も6日、「衆院側がまとまっていない」として規程の制定を見送った。この結果、法律上は憲法審査会は存在するが、定数や構成員などの中身が伴わず、実質的には設置されていない状態で7日の国会を迎える。「今国会での規程成立は絶望的」(自民党幹部)だ。
 もともと審査会の実質審議は秋の臨時国会からと想定されていたが、7日召集の国会で始動できないことは改憲論議に影を落とした。参院選で敗北した与党からは「野党が反対なら仕方ない。秋の臨時国会で作ればいい」(自民党筋)と投げやりな声も。民主党には「安倍内閣のうちは(規程制定は)やらせない」(衆院理事)との強硬論まであり、憲法審査会の行方は不透明だ。
 
(2007/08/07 18:17 産経新聞)
志位、福島氏が市民集会出席 憲法審査会設置に反対 
 共産党の志位和夫委員長と社民党の福島瑞穂党首は7日午後、国会内で開かれた市民団体主催の集会に出席、憲法改正につながるとして憲法審査会の設置に強く反対していく考えを示した。
 志位氏は「参院選では戦後レジーム(体制)からの脱却を目指す安倍政権の基本路線そのものに厳しい審判が下った」と指摘、安倍晋三首相の改憲路線も見直すべきだと強調した。
 福島氏も「集団的自衛権行使に関する政府の有識者会議が秋に最終報告を出すかどうかもポイント。解釈改憲に歯止めをかける活動を進める」と訴えた。
 志位氏は当面の課題としてテロ対策特別措置法の延長阻止を挙げた上で、「イラクからの自衛隊の撤兵も参院で決議すべきだ」と強調した。

2007年8月8日(水)「しんぶん赤旗」
改憲暴走内閣退陣せよ
志位委員長訴え 緊急の院内集会
 「改憲暴走安倍内閣は退陣を!」と憲法会議など八団体で構成する「5・3憲法集会実行委員会」は七日、衆院第一議員会館で、緊急院内集会を開きました。
 あいさつにたった日本共産党の志位和夫委員長は、参院選の結果について「戦後レジームからの脱却」をいい「マニフェスト」のトップに憲法改定を掲げた安倍・自公政権に国民が厳しい判断を示したと強調。九条改悪を許さないうえで差し迫ったたたかいは、インド洋から自衛隊を撤退させるためにテロ特別措置法を廃止させることだと力説、「このたたかいのなかで憲法九条を守れという国民の声を大きくしよう」と訴えました。そして、「国民の運動で、安倍内閣の退陣を求めるとともに、解散、総選挙に追い込んでいこう」と呼びかけました。
 社民党の福島瑞穂党首は、国民から不信任を突きつけられた安倍政権の退陣を求め、改憲を許さないたたかいを広げると決意を述べました。
 会場には市民団体の代表や、国会議員など八十人がかけつけました。
 市民団体代表が「憲法九条改悪を許さない運動を大きく広げよう」「安倍内閣の退陣、解散、総選挙に追い込もう」と次々に決意を語りました。
 多数の日本共産党議員、日本共産党推薦の糸数慶子参院議員、社民党議員が出席、それぞれあいさつしました。
 「5・3憲法集会実行委員会」事務局の高田健氏は、臨時国会で憲法審査会が設置できなかったことに確信をもち、「憲法改悪に反対し、第九条をまもり、生かすことを求めます」の署名を広めようと呼びかけました。
からの自衛隊の撤兵も参院で決議すべきだ」と強調した。

2007年8月6日
第93回
自民大敗より大きい「経済不安の種」
経済アナリスト 森永 卓郎氏
 自民党大敗の原因について、世の中ではいろいろなことが言われている。年金問題がいけなかったという人、赤城大臣の問題が決定的だったという人、いや松岡大臣の自殺がすべての始まりだったという人など、さまざまである。そうした議論に共通しているのは、安倍総理自身に責任はあるにせよ、むしろ周囲の人材やタイミングに恵まれなかったという考えだろう。 
 しかし、わたしはやはり、安倍総理本人が戦略をミスしたことが大きく響いていると思う。戦略ミスは今年の初めから起きている。それは、「参議院選挙の争点は憲法改正だ」と言い出したことだ。この発言で民主党との対決は100%決定的となった。 
 というのも、それまでは、憲法改正について自民党と民主党が手を携えてやろうという了解がとれていた。だからこそ、憲法改正の手続法である国民投票法案が採択されたわけだ。その時点では、「手続法は定めるけれども、憲法は大切なものだから、自民党も民主党も垣根を越えていいものを作り、現実を踏まえた憲法にしよう」という方針だったのだ。従来のような、解釈改憲の積み重ねによって、砂上の楼閣を積み重ねていくのを避けようとしていたわけである。 
 もちろん、対象になるのは9条だけではない。憲法全体について理想像を追っていこうとしたのだ。 
 しかし安倍総理は、明言こそしなかったものの、事実上、憲法9条の改定をぶちあげた。そうすれば、意見の一致していない民主党は混乱に陥り、分裂状態になるかもしれないと彼なりに考えたのだろう。 

2007年8月1日
第92回
自民党が破滅への道を進む可能性
経済アナリスト 森永 卓郎氏
 7月29日に行われた参議院議員選挙の結果、安倍総理の率いる自民党の獲得議席は37議席にとどまり、歴史的な惨敗を喫した。わたしは、選挙前の自民党大敗報道により、自民党が最後の底力を見せて多少の揺り戻しがあると思っていただけに、ここまでの惨敗は予想していなかった。おそらく、安倍総理自身も予想していなかったに違いない。 
 自民党の幹部は、たとえ過半数を割っても、40台の後半を獲得すればいいと考えていたのだろう。そうなれば、国民新党や無所属議員を一本釣りして与党は過半数に達する。衆参両院で過半数を維持することで、集団的自衛権や消費税など、国民にとってきつい課題について、一気に結論を出すつもりだったのではないか。 
 ホワイトカラーエグゼンプションも実施するつもりだったのかもしれない。そして、衆議院の任期満了まで2年間総選挙を引っ張り、国民の記憶が薄れたところで勝負に出る。これが安倍総理の戦略だったはずだ。だが、ここまで負けるとそうした戦略がとれない。当面のところ、強いことができなくなったのは確かである。 
 選挙中、安倍総理は「今回の選挙は総理を選ぶ選挙です」と言っていたが、どうやら辞任する意志はまったくないようだ。 
 一部には、安倍総理が突然内閣総辞職をして、次の首班指名選挙で岡田克也元民主党代表を指名、民主党を分裂させる手に出るのではないかといううわさもあるにはある。だが、さすがにそうした自爆テロのようなことしないだろう。 
 こうした状況の下、果たして我が国の政治・経済は今後どのような方向に進んでいくのだろうか。 

2007年08月07日10時00分
Livdoorにユース
もう誰の言うこともきかない…
  「どうやら洋子夫人もサジを投げたらしい」――永田町では、こんな話が飛び交っている。洋子夫人とは岸信介の娘で安倍首相の母親、安倍晋太郎夫人のことだ。安倍家のゴッドマザーとして知られるが、他人の言うことを聞こうともしない安倍にはゴッドマザーも手を焼いているらしいのだ。この調子だと、安倍は内閣改造も好き勝手をやる。自民党議員は「安倍の自爆テロになる」と右往左往だ。
 洋子夫人は安倍について「どうせ言うことは聞かないんでしょ」「一度、首相になれたんだから、(そんなに意地を張らなくても)いいのにね」などと言っているそうだ。
 官邸の関係者も「総理は誰の言うことも聞かない」とこぼしている。それどころか、ヘタなことを進言すると、ブチ切れる。側近たちも距離を置き始めているらしい。そうしたら、森、中川、青木らが退陣を迫ったのに、「オレは辞めない」と突っぱねたという話が流れた。こういう裏話が出てくること自体、周囲が安倍の頑迷に呆れている証拠だ。
 手が付けられない安倍は、内閣改造について、「派閥の推薦を受けずにやる」と明言した。政治資金規正法改正では「すべての政治団体に1円以上の支出は領収書を義務付ける」ことを指示、党内は大騒ぎになっている。
 参院選惨敗の責任も取らず、人事では人の言うことを聞かず、朝令暮改で極端な規正法を押し付けようとしている安倍は、文字通り、手が付けられなくなっているのだ。安倍を若い頃から知っている政界関係者はこう言う。
「首相は幼少期からヘンなコンプレックスがあって、自分は強くあらねばならない、という意識が強すぎる。岸家の名前を汚してはいけないとか、考えるんです。そんな首相だから、追い込まれて辞任するような失態は考えられないんでしょう。しかし、このままではどんどん支持率は低下し、党内からも見放され、孤立無援になっていく。それでも安倍首相は辞めませんよ。辞めるときは、解散・総選挙に打って出る。そうやって、自分で納得しなければ、物事を受け付けない男なんです」
 行き着く先は、自爆テロのような解散というわけだ。そういえば、解散について問われた安倍は「しかるべき時期に」と言った。ふつうの首相は「解散は考えていない」と言うのに異例だ。自民党議員は「このままでは党がなくなる」と慌てている。


最近のマスコミ報道(07/08/07) 参院「改憲派」、3分の2を割る 3年後の発議に壁 / 憲法審査会設置できず
日時:200787
(2007年08月07日 朝日新聞)
参院「改憲派」、3分の2を割る 3年後の発議に壁
 7日召集の臨時国会に登院する参院選の当選者のうち憲法改正に賛成なのは48%と半数を割っていることが、朝日新聞社と東京大学の共同調査で明らかになった。非改選を合わせた新勢力でも53%。政治家の意識を調べるこうした共同調査は03年の衆院選以降、国政選挙のたびに実施してきたが、改憲賛成派が憲法改正の発議に必要な3分の2を割り込んだのは初めて。また、最大の焦点である9条改正については当選者の26%が賛成で、反対は54%。新勢力全体でも賛成31%、反対50%だった。憲法改正の発議には憲法96条の規定で、衆参各院で3分の2以上の賛成が必要。5月に成立した国民投票法では、施行までの3年間は改憲原案の提出・審議ができないが、新議員は6年の任期の間に、憲政史上で初めて憲法改正の発議にかかわる可能性がある。 
 安倍首相は参院選の惨敗後も記者会見で引き続き改憲に意欲を見せている。しかし、自民党内からも「優先順位を取り違えている。それどころではないというのが民意だ」(三役経験者)といった声が上がっている。世論をめぐるこうした受け止めに加え、新議員の政治意識をみる限り、首相が目指す2010年の憲法改正発議への道のりは険しそうだ。 
 今回の当選者では、憲法を「改正すべきだ」と「どちらかと言えば改正すべきだ」を合わせた改憲賛成派は48%。「改正すべきではない」「どちらかと言えば改正すべきではない」の改憲反対派は31%だった。 
 政党別では改憲賛成派は自民(91%)、公明(67%)、国民新(100%)の3党で多数を占めた。これに対し、民主では改憲賛成派の29%を改憲反対派の41%が上回った。共産、社民、1人当選の新党日本の各党では全員が「改正すべきではない」と回答した。 
 04年参院選後の新勢力と比べると、改憲賛成派議員が参院に占める割合は、71%から2割以上減少した。改憲賛成派が9割前後だった自民の大敗が影響している。 
 一方、民主は04年調査の回答では改憲賛成派だった議員の一部が、反対や中立に回った。これまでの調査では衆参を問わず6〜7割の議員が改憲賛成派だったが、今回、改憲賛成派が初めて4割を割った。国民投票法成立を強行した自民への反発などが背景にあるとみられる。 
 調査は参院選の立候補予定者、非改選、引退予定の参院議員を対象に5月下旬から7月にかけて実施した。

<参院議員は憲法改正賛成?反対?>
○今回参院選(当選者+非改選議員)  
賛成 53 反対 31 どちらともいえない 15 その他 6
(当選者)  
 賛成 48 反対 31 どちらともいえない 16 その他 5 
○04年参院選(当選者+非改選議員)
 賛成 71 反対 20 どちらともいえない 7 その他 2
(当選者)  
 賛成 76 反対 17 どちらともいえない 6 その他 1

(2007年8月7日(火)「しんぶん赤旗」)
衆参議運理
憲法審査会設置できず
穀田議員 改憲推進に反対
 改憲手続き法で、この臨時国会から衆参各院に設置するとされていた「憲法審査会」の立ち上げが、六日の与野党協議のなかで合意にいたりませんでした。
 同審査会を各院に立ち上げるためには、同審査会の組織・運営を定める審査会規程を、各院の本会議で議決する必要があります。
 ところが、六日開かれた衆院議院運営委員会理事会で民主党の理事は、改憲手続き法が衆院で与党による強行採決となったことをあげ、「(七日召集の)臨時国会では(規程の議決は)難しいと考える」と表明しました。
 日本共産党の穀田恵二国対委員長は「九条改憲をねらいとする改憲手続きを進めることは許されない」と審査会の立ち上げに反対しました。
 同日の参院議運委理事会では、自民党理事が、参院での「規程」づくりについて「まだ規程案を本会議にはかる段階ではないようだ。召集日の(審査会)設置は見送らざるをえない」とのべ、七日開会の臨時国会での議決を事実上、見送る考えを示しました。
 憲法審査会は、改憲原案を審査・提出する権限をもつ常設機関。自民党は改憲発議に向けた舞台として早期立ち上げを目指していましたが、参院選での自民党大敗を受け、安倍晋三首相の改憲スケジュールは最初からつまずきをみせた格好です。

(2007年8月7日 読売新聞)
安倍内閣支持率27・2%、政党では民主が自民を上回る
 読売新聞社が4、5の両日に実施した全国世論調査(面接方式)で、安倍内閣の支持率は27・2%、不支持率は63・7%だった。
 6月の前回調査と比べて支持率は11・1ポイント減り、不支持率は13・1ポイント増えた。支持率が3割を切ったのは、定例の面接調査では昨年9月の内閣発足以来初めてで、参院選での与党惨敗を反映した厳しい数値となった。
 支持政党別でみると、公明支持層の内閣支持率が前回の6割台から4割台に落ち込み、同党支持層で初めて支持と不支持が逆転した。年代別でも、支持の方が多かった70歳以上で不支持率(50・5%=6月調査比14・0ポイント増)が支持率(41・1%=同13・2ポイント減)を逆転し、全世代で不支持が支持を上回った。
 政党支持率は民主党が26・9%(同12・6ポイント増)で、自民党は25・8%(同7・1ポイント減)だった。
 民主党の支持率は面接調査で過去最高となり、初めて自民党を上回った。支持政党なしは38・7%(同5・7ポイント減)だった。
 続投を表明した安倍首相が今後、実績を上げることができると思うかどうかでは、「そうは思わない」が54%、「そう思う」は18%で、「どちらとも言えない」は25%だった。参院での与野党逆転に加え、自民党内でも首相続投への異論がくすぶる中で、首相の指導力への世論の期待が落ち込んでいることを裏付けた。
 今月下旬にも予定される内閣改造に期待しているかどうかでは「期待していない」が計55%、「期待している」は計42%だった。安倍内閣のこれまでの実績については「評価しない」が計67%に上り、「評価する」は計30%だった。
 
(07/08/06 毎日新聞)
安倍内閣の支持率22%、前回調査から9ポイント下落
【8月6日 AFP】毎日新聞(Mainichi Shimbun)が6日付で発表した最新の世論調査によると、参院選大敗後の安倍内閣の支持率は、選挙直前の31%から9ポイント下落して22%と、これまでで最低となった。一方、不支持率は65%と、参院選直前より12ポイント上昇。与党内では新たな懸念が浮上している。
 毎日新聞は4日、5日の両日、電話による全国世論調査を実施、有権者1165人から回答を得た。内閣支持率は、10か月前の政権発足時(67%)と比べると、3分の1の水準まで落ち込んだ。
 自由民主党(Liberal Democratic Party)は相次ぐ閣僚の不祥事などが響き、前月29日の参院選では改選議席の半数近くを失った。しかし、安倍晋三(Shinzo Abe)首相は、自身の政策は有権者に支持されているとして続投を表明している。
 自民党の山崎拓(Taku Yamasaki)前副総裁は毎日新聞に対し、最新の内閣支持率には「震撼させられる」とし、「もし今、衆院選が行われたら、自民党は政権を失うかもしれない」と語っている。(c)AFP


最近の世論調査(07/08/06) 内閣支持率急落26.9%、発足後最低
日時:200786
(07/08/06 11:30 TBS)
内閣支持率急落26.9%、発足後最低
安倍内閣の支持率が遂に20%台に落ち込みました。内閣支持率は政権発足後、最低の26.9%に急落。半数以上の人が安倍総理は辞めるべきと考えている事がJNNの世論調査で分かりました。
 調査はこの週末の土日に行いました。それによりますと、安倍内閣の支持率は26.9%で、先月、参議院選挙の公示前と比べ10ポイント以上下がり、政権発足以来、最低値を更新しました。
 支持する理由では「特に理由はない」が最も多く、次いで行政改革の手腕を挙げる人が多くなっている一方、支持しない理由では安倍総理個人の能力・資質を挙げる人が34%と、他の理由を引き離して圧倒的1位となっています。
 次に、参議院選挙での自民党惨敗を受けて、安倍総理は「辞めるべき」と考える人は52%に達し、「辞める必要はない」と答えた人、44%を上回りました。
 安倍総理が選挙結果が出る前から退陣しない方針を決めていた事についても、「有権者の考えを無視したものでおかしい」と答えた人が52%に上り、理解できるを上回っています。
 また、選挙結果について、65%の人が年金問題などをめぐる安倍総理の姿勢や対応が「大きく影響した」と考え、「ある程度影響した」を加えると、93%が影響があったと答えました。
 また、選挙後、安倍総理が記者会見で“自分たちの基本路線は、多くの国民の理解を得ていてやり方に批判があった”と発言した事に対しても、74%が「納得できない」と答えました。また、参院選の3日後に赤城農水大臣を更迭したことについても、71%が「評価できない」と答えています。
 また、各政党への支持では、自民党が23.5%に急落したのに対し、民主党が37.3%と14ポイント以上増やし、選挙結果を反映して民主が自民を上回りました。
 衆議院の解散・総選挙の時期については、「ただちに」が12%、「出来るだけ早く、年内に」が43%で、半数以上の人が年内の解散・総選挙を求めています。 

(07/08/03 信濃毎日)
参院選県内連続調査 「首相は早期退陣を」46%
県世論調査協会は2日、参院選に関する県内有権者の動向を探る「連続調査」の第3回(最終)調査結果(7月31日−8月1日実施)をまとめた。惨敗した選挙結果を受け、安倍晋三首相が「今後どのくらい政権を担当することを望むか」との質問では、「早く辞める」が46・2%を占め、「2009年の総裁任期まで」(30・0%)を16ポイント余上回った。
 一方、民主党について「政権担当能力を持っているか」を尋ねたところ「持っていないと思う」の51・1%に対し「持っていると思う」は48・0%。参院第一党となった同党だが、政権交代の力量については有権者の厳しい目も注がれている。
 首相の進退については「早く辞める」、「09年の総裁任期まで」に続き、「特にこだわらない」(16・8%)、「12年(総裁任期2期)まで」(6・2%)、「長く続ける」(0・8%)の順。政党支持別では、公明党支持層の23・8%、自民党支持層でも11・8%が「早く辞める」べきだとした。
 安倍内閣の支持率は、選挙期間中の前回より0・4ポイント高い24・2%。不支持率は0・5ポイント高い75・4%で、不支持率が約3倍に達する状況は変わらない。
次期衆院選の実施時期については「できる限り早めに」が39・1%で、「任期満了(09年秋)で」の23・4%、「時期にこだわらない」の23・2%を上回った。
 政党支持率は民主が34・8%でトップ。自民(21・1%)との差は13・7ポイントで、前回より0・6ポイント縮まった。共産6・0%、公明4・3%、社民と新党日本がともに3・1%、国民新党1・0%と続いた。


最近のマスコミ報道(07/08/06)  自民大敗 憲法審査会は? 与党の思惑通り進まず
日時:200786
(2007年8月6日(月)「しんぶん赤旗」)
自民大敗 憲法審査会は?
与党の思惑通り進まず
 参院選での自民党大敗で、七日から始まる臨時国会での憲法審査会の立ち上げなど憲法改定をめぐる動向が流動化しています。
 憲法審査会は、憲法を調査し、改憲原案を審査・提出する権限をもつ常設機関です。改憲発議に向けた舞台として自公民で合意、五月に成立した改憲手続き法に盛り込まれました。
「規程」議決が必要
 同法成立後、次の国会から衆参各院に設置するとされていましたが、実際に動き出すためには、定数や議決要件などを定める「審査会規程」が必要となります。この「規程」を決めるには、衆参各院の議院運営委員会と本会議で議決しなければなりません。
 しかし、参院では、与野党が逆転し、民主党が議運委などの主導権を握るため、与党の思惑どおりにはいかなくなります。
 「今国会での議決は難しいのではないか」。二日の参院議運委理事会で、民主党の理事は、難色を示しました。自民党理事が「規程」づくりを提案したことに対する答えです。
 民主党理事は、「参議院においては、国民投票法案(改憲手続き法案)の採決の際に混乱はなかったが、衆議院においては混乱もあった」と語り、自民党の提案を持ち帰りました。
共産党は設置反対
 日本共産党はもともと九条改憲をねらいとする改憲手続き法と憲法審査会の設置に反対。同日の衆院議運委理事会でも、穀田恵二議員が、反対の立場を表明しています。
 民主党はもともと、九条改憲を柱とする「憲法提言」を掲げる改憲政党です。
 改憲手続き法についても、昨年の国会で自らも憲法審査会の設置を含む民主党案を提出。与党案との合作、すり合わせをすすめてきました。
 しかし、参院選をにらみ「安倍首相の改憲路線に加担するのか」との批判をさけるため、合作を放棄。今年四月の衆院採決では与党案反対に回りました。また、今回の参院選では、憲法問題の争点化を徹底的に避けました。このため、民主党の今後の憲法問題での対応が注目されています。
 一方の自民党は参院選で百五十五項目のマニフェストのトップに、「平成22年(二〇一〇年)の国会において憲法改正案の発議をめざ(す)」と憲法改定を掲げました。
 その選挙で、国民が自民党を大敗させるという審判を下したことにより、同党がこれ以上、改憲策動を前にすすめることの正当性は失われています。臨時国会での各党の態度が問われています。
 
(07/08/06 日経新聞) 
臨時国会、31日召集へ・前倒しで調整 
 政府・自民党は5日、秋の本格的な臨時国会を31日に前倒しして召集する方向で調整に入った。安倍晋三首相が自民党の中川秀直幹事長に指示した。11月1日に期限が切れるテロ対策特別措置法の延長に民主党が反対していることから、延長のための改正案の審議時間を十分に確保する狙い。会期幅は12月上旬までの100日間程度を想定している。 
 31日に首相の所信表明演説、9月3―5日に各党代表質問、9月6日から2―4日間の日程で衆参予算委員会を開く流れを検討中。31日召集の臨時国会に先立ち参院の正副議長を決める臨時国会は7日から10日の日程で開く。

(07/08/06 中国新聞)
民主から初の参院議長 7日臨時国会召集
参院選を受けた第百六十七臨時国会が七日召集される。会期は十日まで四日間の見通し。惨敗した自民党は参院第一党の座から転落、最大勢力に躍進した民主党から初めて議長が選出される。衆院は与党、参院は野党がそれぞれ多数を握り、国会運営の主導権を争う異例の事態となる。
 七日午後三時からの開会式に先立ち、参院は同日午前の本会議で正副議長選挙を行い、慣例に従って参院第一党の民主党から議長を選出する。議長には江田五月元科学技術庁長官らの名前が挙がっており、自民党は結党直後から守り続けてきた議長ポストを失う。
 民主党は議長とともに議事運営の要となる参院議院運営委員長ポストも要求しており、七日に新議長が民主党議員を指名する方向。
 その他の常任委員長などの人事は、参院選が終わったばかりで各政党の準備が間に合わないとして、今回は引退議員の補充などにとどめ、本格的な調整は次期臨時国会に先送りする。
 また、憲法改正手続きを定める国民投票法が先の通常国会で成立したことを踏まえ、憲法改正論議の場となる憲法審査会が七日からの臨時国会で新たに設置される。与党側は審査会の運営指針を定めた規程案を七日に議決するよう提案しているが、野党側は「国民投票法は衆院で与党が強行採決した経緯がある」と難色を示している。
 与党は七日の召集日だけで人事案件などを処理し、十日に閉会する構え。これに対し、民主党は「参院選のマニフェスト(政権公約)を実行したい」として年金保険料の流用を禁止する法案を参院に提出する方針だ。

(2007年8月5日  読売新聞)
集団的自衛権の行使容認、11月めどに提言…政府有識者懇
 集団的自衛権に関する個別事例を研究している政府の有識者会議「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(座長=柳井俊二・前駐米大使)は、集団的自衛権の行使を禁じた政府の憲法解釈を変更し、行使容認を求める内容の提言を、11月中をめどに安倍首相に提出する方針を固めた。
 参院選での自民党惨敗で政局の行方が不透明となる中、与野党で賛否が鋭く対立する集団的自衛権の議論は避けるべきだとの声もある。しかし、結論の先送りは、議論の勢いや一貫性を損ないかねないとして、「今年秋」の期限ぎりぎりで提言をまとめることにしたものだ。ただ、首相の政権基盤は脆弱(ぜいじゃく)化しており、提言を受けて、首相が実際に憲法解釈の変更に踏み切れるかどうかは微妙な情勢だ。
 懇談会は10日に第4回会合を開き、首相が検討を指示した4類型のうち、同じ国連平和維持活動(PKO)などに従事する他国部隊が攻撃された際、自衛隊が駆けつけて反撃することの是非について議論する。順調に進めば、提言は11月に取りまとめられる見通しだ。
 一方で、首相の判断をめぐっては、厳しい条件が多い。政府は、首相が憲法解釈変更を行う場合には、閣議決定や官房長官談話のような形式でなく、自衛隊法改正や自衛隊海外派遣に関する恒久法制定などを行い、国会論戦を通じて明確にすることを想定している。
 国会では、野党が過半数を占める参院で法案が否決され、行き詰まる可能性が大きい。また、11月から年末にかけては、消費税率の引き上げも含めた税制改革論議など、政局の火種になりかねない課題が集中する。憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を容認することについては、公明党が「絶対認められない」(幹部)と反対しており、首相に同党を説得する余力が残るか不透明だ。
 このため、首相周辺でも「提言後も首相は判断を先送りすべきだ」とする意見と、「提言をきっかけに政界再編、衆参のねじれ解消を目指せばいい」などの主張が交錯している。


8月6日 広島 平和宣言 (07/08/06)  
日時:200786
平和宣言

広島市は毎年8月6日に、原爆死没者への追悼とともに核兵器廃絶と世界恒久平和の実現を願って平和記念式典を行い、広島市長が「平和宣言」を世界に向けて発表しています。広島・長崎の悲惨な体験を再び世界の人々が経験することのないよう、核兵器をこの地球上からなくし、いつまでも続く平和な世界を確立しようと、これからも平和宣言は訴え続けていきます。
 
              平 和 宣 言

運命の夏、8時15分。朝凪(あさなぎ)を破るB-29の爆音。青空に開く「落下傘」。そして閃光(せんこう)、轟音(ごうおん)――静寂――阿鼻(あび)叫喚(きょうかん)。
落下傘を見た少女たちの眼(まなこ)は焼かれ顔は爛(ただ)れ、助けを求める人々の皮膚は爪から垂れ下がり、髪は天を衝(つ)き、衣服は原形を止めぬほどでした。爆風により潰(つぶ)れた家の下敷になり焼け死んだ人、目の玉や内臓まで飛び出し息絶えた人――辛うじて生き永らえた人々も、死者を羨(うらや)むほどの「地獄」でした。
14万人もの方々が年内に亡くなり、死を免れた人々もその後、白血病、甲状腺癌(こうじょうせんがん)等、様々な疾病に襲われ、今なお苦しんでいます。
それだけではありません。ケロイドを疎まれ、仕事や結婚で差別され、深い心の傷はなおのこと理解されず、悩み苦しみ、生きる意味を問う日々が続きました。
しかし、その中から生れたメッセージは、現在も人類の行く手を照らす一筋の光です。「こんな思いは他の誰にもさせてはならぬ」と、忘れてしまいたい体験を語り続け、三度目の核兵器使用を防いだ被爆者の功績を未来(みらい)永劫(えいごう)忘れてはなりません。
こうした被爆者の努力にもかかわらず、核即応態勢はそのままに膨大な量の核兵器が備蓄・配備され、核拡散も加速する等、人類は今なお滅亡の危機に瀕(ひん)しています。時代に遅れた少数の指導者たちが、未だに、力の支配を奉ずる20世紀前半の世界観にしがみつき、地球規模の民主主義を否定するだけでなく、被爆の実相や被爆者のメッセージに背を向けているからです。
しかし21世紀は、市民の力で問題を解決できる時代です。かつての植民地は独立し、民主的な政治が世界に定着しました。さらに人類は、歴史からの教訓を汲んで、非戦闘員への攻撃や非人道的兵器の使用を禁ずる国際ルールを築き、国連を国際紛争解決の手段として育ててきました。そして今や、市民と共に歩み、悲しみや痛みを共有してきた都市が立ち上がり、人類の叡智(えいち)を基に、市民の声で国際政治を動かそうとしています。
世界の1698都市が加盟する平和市長会議は、「戦争で最大の被害を受けるのは都市だ」という事実を元に、2020年までの核兵器廃絶を目指して積極的に活動しています。
我がヒロシマは、全米101都市での原爆展開催や世界の大学での「広島・長崎講座」普及など、被爆体験を世界と共有するための努力を続けています。アメリカの市長たちは「都市を攻撃目標にするな」プロジェクトの先頭に立ち、チェコの市長たちはミサイル防衛に反対しています。ゲルニカ市長は国際政治への倫理の再登場を呼び掛け、イーペル市長は平和市長会議の国際事務局を提供し、ベルギーの市長たちが資金を集める等、世界中の市長たちが市民と共に先導的な取組を展開しています。今年10月には、地球人口の過半数を擁する自治体組織、「都市・自治体連合」総会で、私たちは、人類の意志として核兵器廃絶を呼び掛けます。
唯一の被爆国である日本国政府には、まず謙虚に被爆の実相と被爆者の哲学を学び、それを世界に広める責任があります。同時に、国際法により核兵器廃絶のため誠実に努力する義務を負う日本国政府は、世界に誇るべき平和憲法をあるがままに遵守し、米国の時代遅れで誤った政策にははっきり「ノー」と言うべきです。また、「黒い雨降雨地域」や海外の被爆者も含め、平均年齢が74歳を超えた被爆者の実態に即した温かい援護策の充実を求めます。
被爆62周年の今日、私たちは原爆犠牲者、そして核兵器廃絶の道半ばで凶弾に倒れた伊藤前長崎市長の御霊(みたま)に心から哀悼の誠を捧(ささ)げ、核兵器のない地球を未来の世代に残すため行動することをここに誓います。

2007年(平成19年)8月6日
                      広島市長 秋 葉 忠 利
広島市ホームページ
http://www.city.hiroshima.jp/icity/browser?ActionCode=genlist&GenreID=1000000000883


最近のマスコミ報道(07/08/05) 宇宙基本法案  「戦争する国」づくりの一環だ
日時:200785
(2007年8月5日(日)「しんぶん赤旗」)
主張
宇宙基本法案
「戦争する国」づくりの一環だ
 自民党と公明党が先の国会で駆け込み的に提出した宇宙基本法案について、日本経団連が「一刻も早い成立」をせまっています。
 宇宙基本法案は、宇宙開発の軍事利用を禁止した国会決議や軍事偵察衛星の保有は許されないとする政府見解の制約をすべてとりはらい、アメリカと同じように日本が宇宙開発を戦争に利用できるようにする憲法違反の宇宙軍拡法案です。
「非軍事」抹消の狙い
 宇宙基本法案には、かつての宇宙開発事業団法や現行の宇宙航空研究開発機構法に明記された、宇宙開発は「平和利用に限り」という文言がありません。逆に「国際社会の平和及び安全の確保並びに我が国の安全保障に資する」と規定しています。安全保障の確保を口実に無制限の軍事利用に道を開くねらいです。
 政府や国会が宇宙開発を平和利用に限定し、軍事利用を禁止したのは、なにより憲法九条があるからです。
 「日本における憲法のもとでございますから絶対に平和利用以外にはいたしません。逆に言えば軍事関係のことはいたさないという原則を堅持いたします」(一九六八年四月二十五日参院内閣委員会、鍋島直紹科学技術庁長官)、これが宇宙開発にあたっての政府の基本見解です。戦争放棄と戦力不保持を明記した憲法九条を基礎にする以上、宇宙の軍事利用を禁止するのは当然のことです。
 二〇〇三年以来打ち上げ運用している情報収集衛星を、自衛隊が「わが国の安全の確保」のためといって利用しているのは、本来許されないことです。宇宙航空研究開発機構法に「平和の目的に限り」と規定されており、いまのままでは脱法行為のそしりを常に受けざるを得ません。アメリカと同じように軍事偵察衛星を持ちたくても、保有は「できない」(一九八三年五月十六日参院安保特別委員会、角田禮次郎内閣法制局長官)という政府見解にも阻まれています。宇宙基本法案はこうした制約を根元からくつがえすことがねらいです。
 宇宙基本法案が日本だけでなく「国際社会の平和及び安全の確保」をもちだしたことはさらに重大です。アメリカとともに海外で日本が戦争することへの備えとなっているからです。海外で自衛隊が戦争する場合、戦場と周辺の軍事動向の把握が欠かせません。日本が偵察衛星や早期警戒衛星をもつことは海外でアメリカとともに戦争するための条件をつくることになります。
 宇宙開発の無制限の軍事利用に道を開くことは軍事予算を増大させることにもつながります。宇宙基本法案の制定をせまる日本経団連は七月十七日公表の提言で、「宇宙分野へ必要な額を配分すべき」とか「企業の産業技術基盤維持にも十分配慮すべき」といっています。宇宙開発の軍事利用に道を開いて大もうけするなどとんでもないことです。
国会決議に従え
 「国権の最高機関」である国会が一九六九年に採択した宇宙開発にかんする決議は、「平和の目的に限り」とうたっており、「非軍事」であることが明確です。政府が軍事利用を本格化しようとしてもそれを許さない歯止めとなっています。宇宙基本法案はこの決議を無力化するものです。国会がみずから採択した決議に反する法律を認めるのは自己否定につながります。
 日本を宇宙軍拡に引き込み、国民負担を激増させる宇宙基本法案は葬り去ることが国会の責務です。

(2007年8月5日 中日新聞)
【社説】
「戦後」は継承したい 週のはじめに考える
 「自民惨敗」からさまざまな民意がくみ取れます。安倍晋三首相の政権運営の稚拙さだけでなく、公約である「戦後レジームからの脱却」への危惧(きぐ)もあったのでは。
 「美しい国へ」と国民生活をめぐる厳しい現実との大きい落差−。
 安倍首相率いる自民党は、この深いはざまに落ち込んで、歴史的な惨敗を喫しました。
 「こんなはずではなかった」。激しい選挙から一週間、安倍首相のぼやきが聞こえてきそうです。
 昨年九月の首相就任後初めての全国規模の国政選挙でした。「美しい国」を目指し、「戦後レジームからの脱却」を果敢に進めて、任期中に憲法改正を実現する…。
首相の未熟さを露呈
 自らの高邁(こうまい)な公約を高々と掲げて国民の信任を受ける。こんな選挙戦を描いていたはずです。
 ところが、国民が「小泉・安倍改革」の副作用である所得格差、地方格差に苦しんでいるところへ、でたらめな年金の扱い、閣僚の失言や事務所経費ごまかしの「逆風三点セット」です。
 首相は選挙直前になって対策を連発しましたが、その慌てぶりや側近をかばう姿勢が国民の不信をあおり、自民惨敗を招いたのです。
 選挙後の赤城徳彦農相の更迭も含め相次ぐ不祥事に、安倍首相の「未熟さ」、特に人事の稚拙さ、危機管理のまずさが露呈してしまいました。閣僚一回の経験不足、政策や見識の軽さなどのためです。
 「政府や政治に向けられた不信すら一掃できないようでは、新しい国づくりなんてできないぞ」(内閣メールマガジン)。首相は国民の声をこう解釈しました。
 「大事の前の小事」。目前の「小事」の処理すらうまくできない首相に「新しい国づくり」はしてほしくない。国を誤る恐れすらある。これが民意ではないでしょうか。
「基本路線」への危惧も
 にもかかわらず、首相は「私たちが進めてきた基本路線は理解いただいた」と言いますが、強弁です。
 むしろ「基本路線」に危惧を抱いた有権者の方が多かったのではないか。そうでなければこれほどの惨敗は説明がつきません。
 例えば「戦後レジームからの脱却」…。レジームは一般に政治制度や体制のことです。共産主義体制、独裁体制などと使います。
 日本の戦後レジームは、六十年余で定着した現憲法の基本理念である主権在民、人権尊重、非戦主義に基づく民主主義体制です。
 ここからの「脱却」とはどういう意味なのか。就任当初この言葉を耳にしたとき、まさか戦前の体制に回帰するのではと驚きました。
 その柱になるのが憲法改正です。「占領時代に素人のGHQ(連合国軍総司令部)がいまの憲法をつくった」(安倍首相)からです。
 あまりに短絡的です。GHQ案が基になったのは確かですが、日本人学者らによる「憲法研究会」などの案がかなり採り入れられました。戦争放棄の九条は、当時の幣原喜重郎首相の提案とも言われています。
 当時の為政者は「ポツダム宣言」で敗戦を受け入れ、時に忍び難きを忍んで、この国を存続させました。
 国会での密度の濃い審議を経て、現憲法を成立させ、豊かで平和な六十年余を実現したのです。
 「戦後レジーム」には、数百万人の生命の犠牲、汗と涙が詰まっています。大黒柱である憲法も含め、簡単に切り捨ててほしくありません。歴史に対する謙虚さが必要です。
 安倍首相は参院選で実績として、教育基本法改定、防衛省昇格、憲法国民投票法成立などを挙げました。集団的自衛権行使のために有識者懇談会も発足させました。
 一連の動きには国権強化、国家によるさまざまな分野への関与強化への志向が見られます。
 首相は「現憲法の基本原則は尊重する」と言いますが、なし崩しにされるのではないか。憲法は米国の押しつけと言いながら、米国が望むように協力して武力行使ができる憲法に変えるのではないか。
 「戦後レジームからの脱却」には危うさが透けて見えます。
 また、旗印の「美しい国」は首相以外の自民候補はほとんどが口にしませんでした。有権者の反発を受けるとみてのことです。いわゆる「基本路線」は有権者に呼び掛けられないままでした。
人心一新の民意に鈍感
 「国民の怒りや不信を厳粛に受け止める」「人心を一新せよというのが国民の声だと思う」
 安倍首相は、神妙な面持ちで反省の弁を繰り返しています。しかし、その結論が「続投」では何をかいわんやです。簡単に戦後を切り捨て「美しい国」を目指すという言葉の軽さ、そして民意への鈍感さがここにも表れています。
 「戦後レジーム」は、改革すべきを改革するのは当然ですが、これからも誇りを持って「継承・発展」すべき私たちの財産です。
 戦後日本が出発した八月十五日を前にあらためて思います。

(8月4日 毎日新聞)
河野衆院議長 参院選結果で与党に異例の厳しい注文
河野洋平衆院議長は3日、福岡市で開かれた「毎日・世論フォーラム」(毎日新聞社主催)で講演し、自民党が歴史的惨敗を喫した参院選の結果について「示された民意が何であるかを真剣に考えないといけない。与党の政策が拒否されたと言わざるを得ない。『重く受け止める』と言うだけでは、よく分からない」と語った。
 安倍晋三首相(自民党総裁)が「私の改革の方向性は否定されていない」と述べているのを受けて、与党に対し、政策の転換が必要という議長としては異例の厳しい注文を付けたものだ。
 河野議長は安倍首相が掲げる「戦後レジームからの脱却」路線に言及。「具体的にどういうものなのか。憲法で日本の行く道を示してきたことから脱却するのか。保守の中にも9条に慎重な人々はたくさんいるし、国際社会の反応も考えないといけない」と述べ、憲法改正に前のめりな「安倍路線」に疑問を呈した。【井本義親】

(2007年8月5日 東京新聞)
首相 惨敗でも『続投』の夜 『続けるも引くも地獄』
 自民党が参院選で惨敗しながら、安倍晋三首相が早々と続投を表明した七月二十九日夜。首相の続投表明に至るまで、自民党の実力者たちはどう動いたのか−。 (自民党取材班)
 中川秀直幹事長と青木幹雄参院議員会長、首相の後見人である森喜朗元首相は午後四時半、都内のホテルに集まった。中川氏が幹事長を辞任する意向を明かすと、青木氏も「私も同じだ」と応じた。
 その後、三氏は自民党の獲得議席数に応じて、開票終了後に予想される状況を分析。「四十議席を割れば、政局は相当混乱する。首相の続投は厳しい」との認識で一致した。出席者の一人は「福田康夫政権」まで口にした。中川氏が公邸に首相を訪ね、三人の考えを伝えることになった。
 同じころ「ポスト安倍」の最有力候補とされる麻生太郎外相が首相公邸に招かれた。麻生氏は首相を支え抜いて「禅譲」を待つのが基本戦略だ。しかも「アルツハイマーの人でも分かる」発言の影響が消えない中で決起しても、支持が広がる可能性は低い。政権奪取を目指す機ではないと判断した麻生氏は、首相の続投支持を明言して公邸を去った。
 麻生氏と入れ替わりに公邸に入った中川氏は、「(首相を)続けるのも地獄、引くのも地獄。いばらの道です」と首相に判断を委ねた。既に続投の決意を固めていた首相は「参院には解散がない。基本的に政権選択が行われるべきではない」と述べ、どんな状況になっても続投する考えを強調した。中川氏は「分かりました」と応じた。
 党本部に戻った中川氏から首相の決意を聞いた青木氏は、続投を容認。首相と電話で話した森氏は「これから大変だぞ」と諭したが、首相の決意は変わらなかった。
 続投への根回しを終えた首相は九時半に公邸を出る際、「引き続き政権を担当する考えか」との記者団の質問に「はい」と答え、国民に向けて、続投の意思を初めて明確にした。

(8月5日 産経新聞)
倍流に試金石…集団的自衛権行使容認
≪野党「反対」、公明も「慎重」≫
 安倍晋三首相が3日、派閥推薦人事を否定したことで、内閣改造とその後の政権運営が問われることになる。その試金石の一つが、集団的自衛権の行使容認をめぐる検討作業だ。首相が執念を燃やす「戦後レジーム(体制)からの脱却」の柱となる政策課題だが、公明党は慎重な姿勢で、野党の抵抗も大きい。ここで妥協すれば、「何のための続投だったのか」と首相支持層に失望を与えかねず、議論の行方が注目される。
 政府は今年5月、集団的自衛権と憲法の関係を整理する有識者懇談会「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」を設置。すでに3回の会合を開いたが、集団的自衛権の行使を認めない現行の憲法解釈に批判的な意見が大勢だ。
 このため、懇談会が今秋にまとめる予定の最終報告を受け、首相が行使容認に踏み切るかどうかが焦点となっている。
 塩崎恭久官房長官は3日の記者会見で「参院選の結果が、日本を守ることに大きな影響を与えるわけではない」と強調。首相側近も「首相は本当に強い人だ。ぶれるということはない」と指摘し、従来の方針通り、集団的自衛権の行使容認に踏み切るとの見通しを示している。
 しかし、公明党の反発は必至だ。太田昭宏代表は参院選後、首相に「憲法論議は大事だが、生活関連のことをについて明確に姿勢を示すことが大事だ」と、議論の棚上げを迫る構えも見せている。党内には「せめて懇談会の最終報告を先送りするぐらいのことはすべきだ」(幹部)との声も漏れ始めている。
 首相が集団的自衛権の行使容認という結論を急げば、自公連立にひびが入るのは必至だ。自民党内にも山崎拓元副総裁や谷垣禎一前財務相ら、集団的自衛権をめぐる政府解釈の変更に反対する勢力も少なくなく、政権基盤が弱まっている首相に対し、さらに攻勢を強めることも考えられる。
 共産、社民両党は、もともと行使容認に反対しているほか、民主党の小沢一郎代表は「何となく米国と協力するたぐいのことだ」と有識者懇設置を批判しており、首相は幾重にも反対・慎重論に包囲されている形だ。
 一方、若手議員時代から一貫して行使容認を主張してきた首相がこうした現状にひるみ、集団的自衛権の行使に関する判断を先送りすれば、首相の姿勢を支持してきた党内外の保守層から「続投した意味がない」との批判を招くとみられる。
 首相は昨年9月の党総裁選直前、周囲に「任期中の憲法改正は実際は難しいかもしれないが、集団的自衛権の問題だけは何としてでもやり遂げたい」と漏らしていた。
 初心に立ち返り、真正面から問題に取り組むのか、厳しい政治情勢を見極めながら慎重に議論を進めるのか、岐路に立たされている。


最近のマスコミ報道(07/08/04) 対民主強まる政策要求 社民『憲法9条守って』 国民新『民営化延期を』
日時:200784
2007年8月4日 東京新聞
対民主強まる政策要求 社民『憲法9条守って』 国民新『民営化延期を』
 民主党単独では参院で過半数に届かないことを見越し、社民、国民新両党が民主党へ政策要求を強めている。民主党にとって簡単にのめないものもあるが、さりとて野党共闘に亀裂を生じさせるわけにもいかない。民主党はこの板挟みに苦しむことになりそうな気配だ。
 参院選の結果、民主党は参院で百九議席と躍進したが、単独では過半数の百二十二議席に届かない。共産(七議席)、社民(五議席)、国民新(四議席)各党などと合わせてようやく届く。
 社民党の福島瑞穂党首は記者会見で「(社民党は)参院の過半数のかぎを握っている」と強調した上で、「民主党が憲法九条を変えることがあれば、野党共闘は難しくなる」と警告した。福島氏はかつて民主、共産、社民三党共同で提出した従軍慰安婦問題に関する戦時性的強制被害者問題解決促進法案にも触れ「ぜひ参院で成立させたい」と訴えた。
 国民新党の糸川正晃国対委員長代理も野党国対委員長会談で、十月からの郵政民営化を一年間延期する法案提出を検討していると説明し「(民主党が)のめないと、いろいろ難しいことになる」と迫った。
 民主党は参院で党提出法案を次々に可決しようという戦略を描くが、これにはほかの野党の協力が必要だ。一方的に自分に協力させるのではなく、民主党もわれわれに協力しろ、というのが社民、国民新両党の言い分だ。
 こうした動きに、民主党の鳩山由紀夫幹事長は三日の記者会見で「単独で過半数を握っているわけではないので、国民新党、社民党との共闘関係をさらに深めていく必要がある。郵政の問題も含め、彼らが要求しているテーマをこなしていくことが求められる」と低姿勢を見せた。政権を狙う次期衆院選で両党と協力する必要もあることから、粗略には扱えない。
 とはいえ、憲法九条のように、改憲派も抱える党内事情から、安請け合いはできない。ほかの野党にどこまで配慮するか、頭を悩ます場面が増えそうだ。 (高山晶一)

2007年8月4日 中日新聞
惨敗という民意
 参院選は、自民党の歴史的な惨敗に終わった。世論調査による予測とほとんど寸分たがわぬ結果となり、拍子抜けしたほどである。
 かつての自民党なら、苦しくても土俵際で「逆バネ」を働かせ、少しは盛り返した。ところが今回は、それがまったく効かなかった。小泉前首相は「自民党をぶっ壊す」と宣言したが、支持基盤も「ぶっ壊した」からだろう。
 何よりの証拠が、これまで保守王国と呼ばれた農村部での無残な敗北だ。ことごとく民主党にひっくり返され、四国、東北の一人区で全滅し、石川や富山でも敗れた。
 構造改革で切り捨てられ、地域格差にあえぎ続ける地方が、もう我慢ならぬと安倍政権にノーを突きつけたのだ。「地方の反乱」こそが、大敗の最大の要因だった。
 年金をはじめ、「政治とカネ」、閣僚の失言など不祥事も相次ぎ、安倍政治への不信は嵐となって都市部をも覆った。惨敗は必然だった。
 しかし、それでも安倍首相は続投するという。「惨敗の責任は私にある」と明言しながら、首相の座に居座る。何とも理解に苦しむ。
 公示前に「私と小沢さん、どっちが首相にふさわしいか国民にうかがいたい」と話したのは、ほかならぬ安倍首相本人ではないか。国民の答えは、実に明快だった。
 開票直後のインタビューで首相は「私の基本路線は、多くの国民に理解されている」と繰り返した。この選挙結果の一体どこから、そのような結論が導かれるのか。まったく理解できない。
 首相は「美しい国」を看板に掲げ、憲法改定や教育再生を声高に訴えてきた。その中身に私は決して賛成できないが、政治家が国家百年の計を論じることは必要だろう。
 しかし、現に今、多くの人々が格差に疲弊し、暮らしに不安を抱えている。これを放置しておいて、何が百年の計か。地方の反乱も、年金問題の怒りも、そこにある。
 どうやら、今回の審判で示された民意の在りかを一番分かっていないのは、首相自身らしい。これでは内閣改造でお茶を濁しても、長続きするとはとても思えない。
(名古屋本社編集局長・加藤 幹敏)

2007年8月4日(土)「しんぶん赤旗」
与野党の議席数逆転
国会 様変わりに
共産党 国民の利益擁護に全力
 参院選の結果、与野党の議席数が逆転したことで、今後の国会審議のありようは大きく様変わりしそうです。
 民主党が参院では第一党となり、議長には同党議員が選ばれる見通しです。法案の取り扱いなど、院での運営を決める議院運営委員長も民主党が要求しており、参院の運営の主導権を握ろうとしています。
 なにより、野党がこぞって反対すれば、法案は参院では通りません。日本共産党の七議席を加えれば、無所属の賛成を得なくても過半数を制するからです。
 図のように、一般の法案は、参院で否決されても、衆院で出席議員の三分の二以上で再可決し、成立させることができます(憲法五九条)が、これは参院の存在を否定する“禁じ手”です。自公与党が衆院で三分の二以上の多数を握っているとはいえ、再可決を強行すれば、世論の反発は避けられません。
 民主党は、野党が過半数を占めた参院に、年金保険料の使途を年金給付のみに限定する「年金流用禁止法案」や、日本共産党が主張してきた、すべての政治団体の一円以上の支出に領収書添付を義務付ける「政治資金規正法改正案」など、国民の関心が高い法案を相次いで提出する考えです。参院先議で可決し、衆院に送付すれば、国民世論との関係で与党には政治的な圧力となります。
 来年三月に任期切れを迎える日本銀行総裁など、国会同意が必要な重要人事の行方にも注目が集まっています。国会同意が必要な人事は、日銀総裁のほか、会計検査院検査官、NHK経営委員会委員、公正取引委員会委員、原子力安全委員会委員など計三十五機関、約二百三十人にのぼります。国会同意人事は衆参両院の同意が必要で、法案のような「再議決」の規定はありません。参院で否決されれば人事は白紙に戻ることになります。
 参院選で大勝した民主党ですが、同党としても単独過半数ではなく、他の野党の協力が不可欠です。これに関し、日本共産党の志位和夫委員長は一日放映のCS番組で、「問題に応じて、一致点で政党間の協力もやっていくことに変わりはありません」と表明。「(民主党が出してくる)法案を一つひとつ吟味して、国民の利益にかなうものだったら、当然協力していきたい」として、自衛隊のインド洋派兵の根拠であるテロ特措法を廃止に追い込むことや、「障害者自立支援法の応益負担撤回など、私たちからも積極的な提言をしていきたい」と述べています。

2007年8月3日(金)「しんぶん赤旗」
首相、開き直りメルマガ
 参院選惨敗にもかかわらず居座りを決め込み、世論の厳しい批判にさらされている安倍晋三首相が、あらためて開き直りを宣言しました。
 これは二日配信のメールマガジンでの表明で、選挙結果について、「わたしが進める改革の方向性が否定されたとは思えない。ゼロから出直す気持ちで、新しい国づくりに向けた信念を貫いていきたい」「今後とも新たな国づくりを進めていくことが、私の使命であり、責任である」などと白々しくのべています。
 首相は、惨敗の原因は、もっぱら「消えた年金」や「政治とカネ」問題での対応であり、憲法改定や「経済成長戦略」など「改革」路線にはないとしたいのでしょうが、そうは問屋が卸しません。
 例えば、首相が就任前から「改革」の最大の課題と位置づけてきた憲法改定問題。自民党はマニフェストの第一項目にこれを掲げたわけですから、国民の審判を受けていないという理屈はおよそ通りません。
 これについて首相は、七月三十日の会見で、「この選挙では憲法問題について十分議論できなかった」と逃げました。しかしそれは、喫緊の課題をほうり投げて、国民の多くが望んでいない改憲問題を前面に掲げれば、さらなる批判を浴びるからにほかならず、首相の勝手な都合にすぎません。選挙で堂々と民意を問わず、首相自身、「議論が不十分」だったといわざるを得ない改憲を、選挙後に、さも国民が支持しているかのように装って推進すれば、国民を二重に愚弄(ぐろう)することになります。
 首相の開き直りは、どのような理屈によっても正当化される余地はありません。
 それは、メルマガにある、「政治の空白をつくりだすことは許されない」という脅しまがいのもの言いにもよく表れています。
 今回の選挙で明確になったのは、「成長戦略」などといい、大企業には減税など全面的支援をおこなう一方、庶民には雇用破壊を放置し、大増税を押し付けていることへの国民的批判です。さらに、「戦後レジームからの脱却」などといい、憲法九条を投げ捨て、「海外で戦争する国づくり」を目指す首相の政治路線へのノーの声です。
 新しい政治を求める国民の目には、安倍首相が居座ることこそ、「政治空白」として映っているのではないでしょうか。(小泉大介)

安倍内閣支持率、過去最低の22% FNN世論調査 
 FNN(フジニュースネットワーク)が参院選直後の7月31日から今月1日にかけて実施した「政治に関する世論調査」によると、安倍内閣の支持率は22.0%と内閣発足からの最低記録を更新し、支持しないとの回答も64.8%と、初めて60%を突破した。59.4%が早期の衆院解散・総選挙を望んでおり、安倍内閣が年内に退陣するとの見方も半数を超え、続投を表明した安倍晋三首相は、厳しい数字を突きつけられた。
指導力への不信増大
 安倍内閣は発足直後の支持率が63.9%、不支持率は17.0%だったが、1年もたたずに完全に逆転した。その最大の原因に、安倍首相の指導力が挙げられる。
 指導力への評価は、発足直後は36.8%だったのが、前回のFNN・産経合同調査(7月19〜21日)では15.8%まで下降、今回は8.1%と1ケタ台になった。参院選のひとつの争点だった年金記録紛失問題への対応は21.9%が評価したが、閣僚の相次ぐ不祥事が参院選の結果に影響したとする意見が92.9%にのぼった。安倍首相の不祥事への対応が後手に回ったとみられたようだ。
 安倍内閣の見通しにも厳しい数字が出た。年内に退陣すると回答したのが56.4%で、首相に早期の衆院解散・総選挙を求める意見が56.0%と、政治姿勢や政策を変えるべきだ(25.5%)、今までの通りでよい(14.7%)を大きく上回った。自民党支持者の間でも「衆院解散・総選挙を」「今までの通りでよい」が33.5%で並んでいる。
民主党への期待上昇
 政党支持率も、自民党が23.0%で前回調査より9.6ポイント下がり、逆に参院の第1党に躍進した民主党は32.8%とほぼ倍に跳ね上がった。また、54.3%が民主党に期待すると回答、76.8%が参院は衆院へのチェック機能を強めるべきだとしており、参院での民主党への期待が高まっていることもうかがえた。
 今回の調査結果について、塩崎恭久官房長官は2日の記者会見で「国民が期待する政策、要望にきちっとこたえ、結果を出すことが大事だ。いろいろな批判や評価に謙虚に受け止めたい」とコメントした。
 民主党の菅直人代表代行は2日、都内で記者団に「民主党にチャンスを一度与えてもらった。それにこたえるために、マニフェスト(選挙公約)を軸に、すぐできることは参院に法案を出して実現していきたい」と述べた。
本命不在
 「ポスト安倍」にふさわしいのは誰か、を尋ねたところ、最も多かったのは、民主党の小沢一郎代表。ただ、全体で13.8%、民主党支持者のなかでも26・5%程度で、小沢首相待望論が高まっているとはいえない。
 自民党内では、麻生太郎外相と小泉純一郎前首相が10.8%でトップ。以下、福田康夫元官房長官(8.4%)、谷垣禎一元財務相(4.1%)と続いた。しかし、全体の27.9%、支持政党なし層の54.5%が「ふさわしい人はいない」と回答しており、「ポスト安倍」に名乗りを上げる人物がいないという自民党内の現状を見透かした反応ともいえそうだ。

2007年 8月 3日 (金)TV TOKYO
チーム安倍結束 不満の声も
参議院選挙での惨敗で厳しい政権運営を迫られている安倍総理大臣は昨夜、総理官邸のおもなメンバーと会合し、結束を確認しました。一方、自民党内からは選挙後の安倍総理の対応に不満の声が出ています。会合は塩崎官房長官などの呼びかけで、総理を慰労する主旨で急遽セットされました。会合で安倍総理は、「程度の差はあれ、これだけの経験は初めてだ」「知恵を出し合ってがんばろう」と述べ、政権運営に一致結束してあたっていくことを確認しました。一方、自民党各派はきのう会合を開きましたが、出席した議員たちからは「安倍総理続投で進んだとしても、どこまで党内で支えられるか心配だ」「お友達内閣は解消して、党内の人材を広く充てる人事を行うべきだ」といった厳しい意見が相次ぎました。安倍総理は、早ければ今月下旬にも内閣改造や自民党の役員人事を行い、政権の立て直しを図りたい考えですが、党内からは「予定されている外遊をやめてでも早く人心を一新すべきだ」との声も出ています。

2007年8月4日(土)「しんぶん赤旗」
「対テロ戦争」1兆ドル
今後10年間 議会予算局が試算
米国
 【ワシントン=山崎伸治】イラク、アフガニスタンその他で米国が進める「対テロ戦争」の経費が、二〇〇一年九月からこれまでに六千四十億ドル(七十一兆八千七百六十億円、一ドル=一一九円)にのぼり、二〇一七年までの今後十年間の経費が最大で一兆ドル(百十九兆円)以上にまでふくらむとの見通しを米議会がまとめました。
 これは七月三十一日に開かれた下院予算委員会の公聴会で議会予算局(CBO)が明らかにしたもの。際限のない戦費支出に、一日付の米紙ボストン・グローブは「米国の納税者は少なくとも十年間、戦争による財政的結果を感じるだろう」と指摘しました。
 CBOは、イラクなどへの派遣部隊を(1)二〇一〇年までに三万人まで削減(2)二〇一三年までに七万五千人まで削減―の二つのシナリオで二〇一七年までの十年間の経費を試算。(1)の場合では、四千八百十億ドルから六千三十億ドル、(2)の場合では、九千二百四十億ドルから一兆百億ドルになるとしています。
 米政府の二〇〇八会計年度予算の総額は二兆九千十八億六千百万ドル。最大で国家予算の約三分の一を今後十年間で「対テロ戦争」に支出するという計算になります。CBOはこの試算で財源についてはふれていません。
 国防総省はこうした長期にわたる戦費の見通しについては公にしていません。
 公聴会でスプラット委員長(民主党)はこの試算について、「五年間の実績から推定したもので、根拠のない想定を積み上げたものではない」と指摘。しかし出席したイングランド副国防長官は「今後五年間(の国防費)についてはある程度確かな見通しをもっているが、戦費についてはそれほどの確かな見通しはない」と述べました。

 

全労連第41回評議員会 憲法闘争 「戦後史をかけた正念場のたたかい」
日時:200783
【全労連第41回評議員会・第1号議案】
2007年8月2日
2.重点課題にかかわる情勢の特徴
(1)「改憲手続き法」成立で、憲法闘争は新たな段階に
1)5年以内の明文改憲を主張する安倍首相の思惑もあって、政権与党は07年5月14日に改憲手続きを定める「国民投票法(改憲手続き法)」の成立を強行した。これをうけて自民党は、憲法改正国民運動推進本部(本部長・安倍総裁)を設置して改憲運動を強めている。
 参議院選挙後には、「改憲手続法」に基づく憲法審査会を設置して改憲大綱の準備を進め、同法の凍結期間が解除される2010年にも国民投票を実施する「改憲スケジュール」を描いていることも明らかになっている。
 改憲手続法の成立で、改憲策動は新たな段階に入っており、これを許さないたたかいの再強化が求められている。

2)2月16日の「新アーミテージ報告」にも示されるアメリカからの圧力もあって、明文改憲を先取りし、憲法9条2項を「骨抜き」にする集団的自衛権行使にかかわる憲法解釈の「見直し」が、07年秋に向けて進められている。
 米軍艦船への攻撃があった際の自衛隊の共同行動の実施などは、在日米軍基地再編を含む日米安保条約の再編強化と深く結びついていることは明らかである。北朝鮮の核兵器保有などもあって、北東アジアの軍事的緊張は続いており、集団的自衛権問題は現実的な可能性をもった検討とされている。憲法の平和原則を骨抜きにさせない取り組みが急がれる課題である。

3)6月初旬に日本共産党が明らかにした自衛隊の内部文書で、自衛隊が日常的に労働運動や市民運動を監視していた事実が白日の下にさらされた。戦前の憲兵と同様、自衛隊の活動に批判的な行動を継続的に監視し、抑圧の準備を進めていたことは、結社の自由や表現の自由といった基本的人権が、「戦争をする国」では容易に侵害されることを明らかにした。また、沖縄・辺野古への基地建設の「事前調査」支援目的で、自衛隊艦船が「治安出動」する事態も起きた。
東京都教育委員会での「日の丸・君が代」を強制する意見の通達や、ビラ配布にかかわる公務員の政治活動の弾圧、国民保護法にもとづく「訓練」に名をかりた住民動員、改憲手続法での公務員・教育者の活動制限や有料コマーシャル放任、日本青年会議所の「靖国DVD」作成・配布などは、国益や国家を個々人の人権に優先するものと位置づけている点で共通している。
 安倍首相が強調する「美しい国」ともかかわって、政府文書では国家や国益あるいは「国家計画」といった言葉が踊り、その点は、「御手洗ビジョン」など、財界の文書でも同様である。
 改憲策動と一体で、国家主義の押し付けや基本的人権抑圧の思想攻撃や国の教育への関与が強まっている。自衛隊は、アメリカの世界戦略に積極的に加担して、海外派兵を主任務とした軍隊に変貌しようとしている。

4)「戦争をする国」づくりへの国民の批判と反撃は、目に見える形で強まっている。
 職場・地域、分野別の「9条の会」は07年2月段階で6000を超えて結成された。また、憲法共同センターも320地域に結成されている。これらに見られるように、改憲反対、とりわけ「9条改憲」反対の世論が、草の根の運動とともに広がっている。
 それらのこともあって、国民世論には顕著な変化が出始めており、読売新聞の世論調査で「憲法を改正する必要がある」との回答は04年の65.0%が07年46.2%に減少し、「9条を改正した方がよい」は04年44.4%が07年35.7%に減少している。
 国会の議席では、改憲派が圧倒的多数を占める状況にあるが、それが必ずしも国民世論を反映していない。この「ねじれ状態」が、一気呵成の改憲策動の歯止めとなっている。改憲策動を断念に追い込むためにも、世論形成の取り組みを強化することが最重点課題となっている。

3.重点課題ごとの取り組みの補強
(1)憲法改悪を阻止し、平和を守るたたかい
1)憲法闘争を「戦後史をかけた正念場のたたかい」とし、「すべての課題に優先する運動」と位置づけた大会方針の実践に全力をあげる。
 自民党が描く改憲スケジュールも見据え、当面する1年間、職場と地域で次の取り組みをすすめる。
@あらたな段階に至った改憲策動の状況や改憲派のねらい、「9条改憲」の目的等について認識を深めあうとともに、確固とした運動の意思統一をはかるため、全組合員を対象とする「憲法学習会」を早期に具体化し、取り組む。
A新たな構えで改憲反対署名の展開をはかる。当面、08年通常国会時期までに500万筆集約を目標に、憲法改悪阻止闘争本部を推進体制とした取り組みをすすめる。各単産、地方・地域、各級機関でも署名推進体制を確立し、到達目標を設定し、多くの労働組合への協力要請も強めるなど、署名推進に力を集中する。
B職場のすべての労働者を対象に「職場9条の会」を結成し、9条改憲反対の世論を広げるための行動(学習会、映画などの上映、9条改憲反対署名やアピール賛同署名、宣伝行動など)を具体化する。
C地域「9条の会」などとも協力し、9条改憲反対の世論を広げる取り組みを継続的に実施する。「9の日宣伝」や地域での「9条の会セミナー」、講演会の企画・実施、運動の交流などを取り組む。これらの取り組みをすすめるために、地方・地域組織などが積極的な役割を発揮する。全国で運動を前進させるために、全労連として、統一行動日の設定や連鎖行動の具体化などに努力する。
Dすべての地方での憲法改悪反対共同センターの結成、全自治体をカバーする「地域共同センター」の結成を、民主団体と共同してすすめる。全労連として、憲法改悪反対共同センターの機能と役割強化に努力する。

2)全労連、単産、地方組織が力をあわせ、9条改憲反対の世論を労働運動の分野でも広げる努力をさらに強める。
@労働組合役員OBなどにも呼びかけ、「9条改憲反対アピール」運動を展開することとし、具体化をはかる。改憲反対の共同行動前進に努力する。
A08年8月の原水爆禁止世界大会の時期に、アジア・オセアニア地域のナショナルセンター、労働組合に呼びかけた「平和世界労組会議」(仮称)の開催を追求する。
B08年5月に開催される「9条世界会議」をはじめ、9条改憲反対で一致する共同行動の成功に尽力する。
 
3)改憲につながる悪政、悪法に反対する国民共同の前進に奮闘する。
@07年秋に、改憲反対を課題とする「国民大集会」を開催することで準備をすすめる。
A集団的自衛権行使を容認する有識者会議の議論監視を強め、申し入れ行動などを適宜組織する。
B在日米軍基地の再編強化に反対し、行動、集会、国会行動、政府要請行動などを民主団体などと共同して取り組む。
C自衛隊の国民監視活動の中止を求める行動を組織する。
D「日の丸・君が代」教育や「愛国心」教育の押し付け、侵略戦争の「歴史改ざん」などに対する監視と是正を求める行動を組織する。
あらゆる選挙で、改憲反対を候補者選択基準とした投票行動を行うよう、組合員と世論への働きかけを行う。


最近のマスコミ報道(07/08/03) 「憲法審査会設置に反対」 社民党首、民主をけん制
日時:200783
(2007年08月02 朝日新聞)
「憲法審査会設置に反対」 社民党首、民主をけん制
 社民党の福島党首は1日の会見で、国民投票法の成立により秋の臨時国会から衆参両院に設置される憲法審査会について「参院選で安倍首相は不信任となり、安倍首相がやりたがっていた憲法改悪など国民は望んでいない。憲法審査会を設けて憲法改正案作りをするべきではない」と述べ、憲法審査会の設置に反対する考えを示した。 
 福島氏は参院第1党となった民主党との共闘については「民主党だけでは参議院で過半数にならず、他の野党がいて初めて過半数だ。民主党が憲法改悪へかじを切ることがあれば、野党共闘は難しくなる。憲法改悪につながることをしないことが野党共闘の前提だ」と、民主党にも設置に反対するよう求めていく考えを示した。 


最近のマスコミ報道(07/08/02) 9条改正反対は55% 集団的自衛権行使も否定的
日時:200782
(2007年8月1日 17時41分 東京新聞)
9条改正反対は55% 集団的自衛権行使も否定的
 共同通信社は1日、第21回参院選の公示前に行った全候補者アンケートから当選者を抽出し、政策課題に関する意識を分析した。
 任期中に国民投票法が施行される憲法改正問題では、何らかの改正を支持する「改憲容認派」が64・6%に上ったが、9条改正に限ると55・7%が反対していることが分かった。集団的自衛権行使に関しても48・7%が憲法改正だけでなく、解釈見直しも否定し、「一切認めるべきではない」と答えた。
 自民党は参院選公約に2010年の憲法改正発議を掲げた。しかし発議には衆参両院で3分の2以上の賛成が必要で、今回の参院選惨敗により、自民党の目指す9条を含む改正は一層厳しい状況となってきた。
 政党別では、民主党は「9条以外の部分的改正に賛成」「改正反対」が計68・5%。これに対し自民党は「全面改正」「9条含む部分的改正」が計68・8%と対照的な結果となった。
 集団的自衛権の行使については、自民党が憲法改正または憲法解釈見直しによる容認派が計78・1%に達したが、公明党は逆に当選者全員が「一切認めるべきではない」と答え、自公の見解の違いが明確になった。
(共同)

(2007年8月1日 朝刊 東京新聞)
改憲論議 急ブレーキ 参院審議野党主導に 首相のシナリオ崩壊
 参院選の自民党惨敗で、安倍首相が最重要課題に掲げる憲法改正の議論に急ブレーキがかかりそうだ。改憲より、年金など生活にかかわる問題が重要だと主張した民主党が参院選で圧勝したことで、首相が望むようなスピードで憲法改正の議論が進む可能性が低くなったからだ。
 「今回の選挙は憲法について議論することは残念ながらできなかった。(今後)時間を使ってしっかりと議論したい」
 安倍首相は七月三十日の記者会見で、力なくこう語った。年頭の記者会見で「私の内閣で改正を目指すと(参院選で)訴えていきたい」と明言していたのに比べ、明らかなトーンダウンだ。
 公明党の太田昭宏代表も同日、首相との会談で「憲法はもちろん大事だが、地方の格差というような生活関連の課題について、姿勢を明確に示すことが大事だ」と注文を付けた。
 首相は、改憲を主な争点にして参院選を戦う方針だった。そのために、五月に国民投票法(憲法改正手続き法)を成立させ、三年後の二〇一〇年に改憲案を発議することを可能にした。参院選の公約には、首相の意向を受けて「二〇一〇年の国会で憲法改正案の発議を目指し、国民運動を展開する」などと明記した。
 自民党内では、次の臨時国会で衆参両院に設置される憲法審査会で「改憲案の骨子や要綱をまとめ、一気に改憲の機運を高める」(閣僚経験者)というシナリオも描かれていた。
 しかし、惨敗で空気は一変。与野党の勢力が逆転するため、参院の審査会長のポストは民主党に奪われ、野党主導で議論が進む可能性が高い。民主党の参院は衆院側に比べて護憲派が多いとされており、自民党の狙い通りに議論を進めるのが難しくなる。
 自民党関係者は「議論はスローペースになるだろう。一〇年の改憲案発議は遠のいた。政局絡みで、改憲議論が左右されるのは好ましくないのだが」と嘆いている。 (東条仁史)

(07/31 08:34 北海道新聞)
かすむ「安倍カラー」 野党の攻勢必至 憲法改正や教育再生
 安倍晋三首相が就任以来掲げている「戦後レジーム(体制)からの脱却」に向けた看板政策の行方が、参院選惨敗で不透明感を増している。憲法改正や教育再生などでは、野党側が対決姿勢を強めるのは確実で、与党内での求心力や省庁への指導力低下も必至。八方ふさがりに近い状態の中、官邸主導の「安倍カラー」発揮は停滞を余儀なくされそうだ。 
 首相は三十日の記者会見で、憲法改正について「今回の選挙では残念ながら議論できなかった。国民投票法が成立したが、三年間は憲法改正ができないので、その時間を使って国民とともに広く深く議論していく」と述べるにとどめた。今年四月に自民党新憲法制定推進の集いで「自民党総裁として約束した以上、必ず政治スケジュールに乗せていく」と意気込んだ発言からは、かなりトーンダウンした。 
 改憲発議には、衆参両院でそれぞれ三分の二以上の賛成が必要で、野党勢力を巻き込むことが必須だ。しかし参院では与党が過半数を割り、民主党内の改憲派からは「政権奪取まで自民党に協力することはない」(代表経験者)との声が出ている。協力を取り付けるのは極めて難しい情勢だ。 
 首相の持論である集団的自衛権の行使容認問題も、これまでのように首相ペースで進むかどうかは不透明だ。憲法解釈変更を視野に個別事例を研究している有識者会議は、秋に結論を出すが、首相がこれに基づいて国会答弁で強引に解釈変更に踏み切ろうとしても、民主党が主要ポストを握る参院審議の紛糾は必至だ。 
 首相は三十日の会見で、教育再生と公務員制度改革にも引き続き意欲を示したが、参院は与野党の対決法案の審議が軒並み停滞するのは確実。教育再生関連の法案を提出しても参院で採決されない事態になれば、首相の目指す「教育現場の一新」は失速する。 
 塩崎恭久官房長官は三十日の会見で、来年の通常国会に提出する、公務員制度改革の全体像を盛り込んだ国家公務員制度改革基本法案(仮称)について「議論して、野党のいい考えを取り入れられるならば取り入れる」と民主党などとの妥協を示唆した。法案の取りまとめ段階では、政権弱体化につけ込み、与党内の「骨抜き」を狙う勢力や省庁の抵抗が激化することも予想される。 


安倍首相はただちに退陣を/全労連評議員会/坂内議長「変化への第1歩」
日時:200781
070802・安倍首相はただちに退陣を/全労連評議員会/坂内議長「変化への第1歩」
 全労連の坂内三夫議長は八月一日、都内で開催された全労連評議員会であいさつし、「国政選挙において国民から明確なる不信任の審判が下された以上、ただちに退陣すべきである」として、安倍首相の早期退陣を求めた。
 坂内議長は参院選挙で自民党が歴史的な敗北を喫したことについて、「原因は『戦後レジームからの脱却』『美しい国』の名のもとに、この国に格差と貧困をまん延させ、暴走を続けてきた安倍首相の姿勢そのものにあることは明白」と指摘した。
 首相が続投の意思を示していることについては「一国の指導者として、党利党略・私利私略のあまりにも見苦しい振る舞い」と批判した。
 民主党に対しては、「安倍政権の国民不在のタカ派的暴走が国民の怒りとなっても民主党を参院第一党に押し上げた事実を直視するなら、自民党との安易な妥協は許されない」と述べ、さまざまな課題で国民の意思を真正面から受け止めて対応するよう求めた。
 その上で、早い時期の解散・総選挙も考えられると述べるとともに、「参院選の結果は『政治の新しい前向きの変化』に向けた第一歩であるということもできる」と強調し、全労連組合員に今後の奮闘を訴えた。
 参院選の結果を受けて政府が決断すべき当面する国民的課題として、@格差と貧困の解消、とりわけ最低賃金や労働法制での政策転換A自治体リストラ、医療・福祉・介護、障害者切り捨て政策の見直しB九条をはじめとする憲法改悪の動きの中止――をあげた。
「連合通信・隔日版」

070802・参院選自民惨敗/2大支持基盤が離反/一層必要な政治監視/渡辺治一橋大学教授
 安倍政権は二つの大きな支持基盤をもっていた。一つは大都市部の中間層や上流層で、もう一つは地方や農村部の有権者だが、参院選ではこの両方が政権に愛想をつかした。
 小泉政権の構造改革で地方は疲弊し、都市との格差も大きくなった。このため自民党支持は減っていたが、票は民主党には行かなかった。しかし、安倍政権が構造改革の継続を打ち出したのに対して、民主党が格差に歯止めをかける公約を打ち出したため、地方票が民主党に流れた。
 大都市部の票は小泉政権下では自民党に流れていたが、今回は民主党に戻った。「政治とカネ」の問題や年金の問題などで、古い体質の自民党が復活すると疑ったからだろう。
 選挙結果を受けて安倍政権が構造改革と軍事大国化という従来路線を転換するとは思えない。今回、構造改革への批判はそのまま民主党の票となったが、改革に明確に反対してきた共産党と社民党は伸びなかった。自民と民主の間でのキャッチボール状態が定着したとみることができる。「民主党に裏切られた」と感じた国民は次は自民党に投票するだろう。
 安倍首相自身は二つの離反にどう対処するのか。構造改革をやめたいところだが、現在政権の唯一の支えとなっている財界は構造改革の継続を求めている。その財界は消費税引き上げを要求しており、悩ましい。
 安倍政権は改憲と教育再生という路線に突っ走る可能性がある。今後、集団的自衛権行使についての有識者会議の報告書が出され、恒久的派兵法案も提出される。国会には憲法審査会が設置される。自民党はこの路線に民主党を引きずり込もうとするだろう。したがって、国民の政治監視はますます必要になる。(談)
「連合通信・隔日版」

070802・政治不信の大きさ示す/参院選結果で連合談話
 連合は七月三十日、参院選挙の結果について古賀伸明事務局長の談話を発表した。投票率が前回の参院選を上回ったことや、民主党がこれまで最高の二万三千万票以上を得たことについて、「国民の政治への不安・不信が如何に大きいかを表すもの」「一般市民の生活を顧みようとしない安倍政権に対して、国民は明確にノーを突きつけた」と指摘した。
 比例区の連合組織内候補は七人全員が当選し、選挙区では四十二人の連合推薦候補が当選した。民主党は六十議席を獲得し参院第一党になった。談話は与野党が逆転したことについて、「連合が求めてきた政権交代可能な政治体制の実現に向けて、大きな一歩を踏み出した」と強調。民主党に対しては、選挙結果を謙虚に受け止めつつ、重い責任を負いながら、国民の負託にこたえた政治と国会運営に臨むことを求めた。
「連合通信・隔日版」

070802・安倍首相続投許されず/参院選受け全労協
 全労協は七月三十日、参院選の結果を受けて、「民意を欺き続投をはかる安倍政権は許されない」とする常任幹事会決議を発表。衆院解散・総選挙へと追い込み、安倍自公政権打倒を進めるとの決意を示した。
 選挙結果について、「有権者国民がこの間の安倍内閣・自公与党の政治姿勢に対する批判・不信任を突きつけたのである。その批判票が民主党へに期待として集中したものであり、護憲派候補がその流れに埋没させられてしまった」と指摘。一方、民主党を中心に野党が参院で過半数を制することになったことについて、「安倍内閣・自公与党の暴走を抑制・対決し、新たな政治再編・変革のスタートが始まった」と強調した。安倍首相の続投発言は「厳正に下された有権者国民の審判に対する暴言・暴挙」「明確に批判と不信任を突きつけた民意を欺く独善的対応」と批判した。
「連合通信・隔日版」


最近のマスコミ報道(07/08/01) 「首相は早期辞任を」半数 内閣支持21%に 
日時:200781
(07/08/01 07:09 北海道新聞)
「首相は早期辞任を」半数 内閣支持21%に 道内世論調査
 北海道新聞社は、参院選の結果を受けて三十、三十一の両日、道内有権者を対象に緊急世論調査を実施した。安倍晋三首相にいつまで首相を続けてほしいか尋ねたところ、「できるだけ早く辞めてほしい」と、早期退陣を求める回答が49・0%に上った。内閣支持率も21・0%で、二週間前に行った参院選公示後の調査と比べ、3・2ポイント下落。不支持率は前回比2ポイント増の64・4%になっており、安倍内閣に対する道内有権者の厳しい視線が浮き彫りになった。 
 安倍首相の残余在任期間については、早期退陣のほか、「あと一年くらい」が22・2%。二〇〇九年九月に迎える自民党総裁の「任期切れまで続けてほしい」は26・4%にとどまった。 
 支持政党別の内閣支持率では、自民党支持層の67・6%が「支持する」と答えたが、同じ与党の公明党支持層は32・0%にとどまり、対照的な結果となった。 
 今回の選挙結果については59・4%が「良かった」と回答し、民主党の躍進で野党が参院議席の過半数を占めたことを歓迎。「良くなかった」は11・0%、「どちらとも言えない」が29・6%だった。 
 衆院の解散・総選挙の時期について、39・6%が「今年中」の年内解散を望み、「来年中」も35・0%。衆院議員の任期が切れる「再来年」とする意見は21・2%と少数派だった。 
 今後の望ましい政権のあり方については、41・0%が「民主党中心の政権」と答えて政権交代に期待を示したのに対し、「自民党中心の政権」の継続を望む声は21・4%だった。 
 安倍首相と、民主党の小沢一郎代表のどちらが首相にふさわしいかとの問いでは、小沢代表が20・6%、安倍総裁が18・6%で、拮抗(きっこう)した。 
 また、二大政党制が日本の政治にとって必要かどうかについては、「必要だ」が68・4%に達し、「必要ない」は27・4%にとどまった。

(2007年08月01日00時09分 朝日新聞)
首相は辞任を―47%、続けてほしい―40% 本社調査
 参院選での自民大敗を受け、朝日新聞社が30日夕から31日夜にかけて実施した緊急の全国世論調査(電話)で、安倍首相の進退について「辞めるべきだ」は47%で、「続けてほしい」の40%を上回り、続投を表明した首相に対して厳しい見方が示された。安倍内閣の支持率は26%(前回=21、22日=30%)と、昨年9月の発足以来最低。不支持は60%(同56%)と初めて6割台となった。政党支持率は民主が34%と自民の21%を大きく上回り、選挙結果を反映した形となった。 
 今回の選挙結果を「よかった」と思う人は68%で、肯定的な受け止めが多い。「そうは思わない」は18%。自民支持層でも「よかった」がほぼ4割にのぼり、肯定的な見方が少なくない。 
 自民の大敗について、原因が「安倍首相にある」と答えた人は34%、「そうは思わない」は59%。自民が議席を減らした一番大きな理由を三つの選択肢を挙げて聞くと「年金の問題」44%、「大臣の不祥事」38%、「格差の問題」12%の順だった。最大の争点とされた年金だけでなく、閣僚の「政治とカネ」の問題や失言も大きく影響したことがうかがえる。 
 選挙後に安倍首相が「基本路線は多くの国民に理解されている」と述べたことに対しては、「納得しない」が62%で、「納得する」の26%を大きく上回り、首相と有権者の認識のずれが目立つ。経済成長重視の改革路線については、「賛成」36%に対し、「反対」が43%とやや多かった。 
 一方、民主が議席を増やした理由では、「自民に問題がある」が81%に達した。「政策に期待できる」は9%、「小沢代表がよい」は4%にすぎない。民主そのものへの評価というより、自民に対する批判の受け皿として議席を伸ばした面が強いといえそうだ。 
 民主に何を期待するかでは、「与党の政策を改めさせる」が37%と多く、「政権交代を実現する」は25%、「期待していない」は33%だった。 
 衆院の解散・総選挙の時期を聞くと、「急ぐ必要はない」という人が54%と半数を超えた。「できるだけ早く」は39%で04年の前回参院選直後の42%をやや下回った。 
 自民、民主以外の政党支持率は、公明5%、共産3%、社民2%、国民新1%など。 

(2007年7月31日23時12分  読売新聞)
首相続投に賛否二分、評価44%評価せず45%…読売調査 
読売新聞社は30、31の両日、参院選の結果に関する緊急全国世論調査(電話方式)を実施した。自民、公明の与党が惨敗し、民主党が第1党となった選挙結果について、「良かった」が64%で、「良くなかった」の21%を大きく上回った。
 ただ、安倍首相が続投を表明したことについては、「評価しない」が45%、「評価する」が44%だった。今回の選挙結果を首相に対する不信任とみなす声もあるが、首相の続投を支持する世論と退陣を求める世論は拮抗(きっこう)していることが明らかになった。
 安倍内閣の支持率は31・7%、不支持率は59・9%だった。投票日直前の24〜26日に実施した参院選第6回継続世論調査(電話方式)と比べ、支持率は4・8ポイントの減。不支持率は8・1ポイント増えた。
 今回の選挙で民主、自民両党が獲得した議席数をどう思うかをそれぞれ聞いたところ、「ちょうどよいくらいだ」が民主党については53%、自民党では44%に上り、ともに最多だった。ただ、民主党の議席は「少ない方がよかった」という人が27%、自民党についても「多い方がよかった」と見る人が29%いた。
 自民党が議席を大幅に減らした理由(複数回答)では、「年金」が67%でトップ。次いで「政治とカネ」(58%)、「安倍首相の政治姿勢や指導力」(47%)だった。民主党が議席を大幅に増やした理由(同)では、「安倍首相や自民党への批判」68%が1位で、大躍進の要因を“敵失”とみる人が多いことがうかがえた。「政権交代への期待」が39%で2位だった。
 衆院で与党が、参院では野党が過半数を占める「ねじれ」により、国政が停滞するのではないかという不安を感じるかどうかでは、「感じる」が計51%、「感じない」は計42%だった。
 今回の結果を受けて衆院の解散・総選挙をできるだけ早く行う方がよいと思うかどうかでは、「急ぐ必要はない」が53%、「できるだけ早く行う」は42%だった。国民の多くが選挙結果を冷静に受け止め、今後の首相の対応に注目しているようだ。
 民主党の政権担当能力については、「ない」(46%)が「ある」(36%)を上回った。
 政党支持率は、民主党が31・4%(投票日直前の継続調査比5・8ポイント増)で、自民党の31・3%(同1・3ポイント減)を上回った。無党派層は24・1%(同3・1ポイント減)だった。民主党の支持率は面接調査も含め過去最高となった。

(07/08/01 日経新聞)
「年内に衆院解散を」44%、内閣不支持63%・日経世論調査
 参院選の与党惨敗を受けて日本経済新聞社が30―31日に実施した緊急世論調査で、年内の衆院解散・総選挙を求める声が44%に上った。安倍内閣の支持率は19―21日の調査から1ポイント上昇の28%だった一方、不支持は13ポイントの急上昇で63%となった。安倍晋三首相は早期の内閣改造などで態勢の立て直しを急ぐ考えだが、政権運営への視線は厳しい。
 望ましい衆院解散・総選挙の時期については「ただちに」は14%。「年内には」が最多で30%だった。「来年春には」も15%あり、「急ぐ必要はない」は29%にとどまった。自民支持層に限れば「急ぐ必要はない」が51%と首位で、「年内には」が19%で続いた。(23:12) 

(2007/07/31 21:30 産経新聞)
歴代首相が安倍首相を激励 自民党総務会は紛糾 
 続投を決めた安倍晋三首相は31日、森喜朗元首相ら歴代首相を訪問し、参院選での敗北をわび、今後の政権運営への助言と協力を求めた。首相は同日夜、首相官邸で記者団に「赤城氏を含め人事を一新する。首相補佐官を含め、人事については熟慮していきたい」と述べた。一方、自民党総務会では、首相続投への批判や異論が噴出。自民党内では首相続投容認の声が大勢だが、9月にも予定される内閣改造・党役員人事をにらみ、首相への牽制(けんせい)圧力はますます強まるとみられている。
 首相は、森、中曽根康弘、海部俊樹の元首相3人の都内の個人事務所を訪ね、それぞれ30分間ほど会談した。小泉純一郎前首相との会談は見送られた。
ラグビーに例えて助言
 首相の後見人でもある森氏は「とにかく挙党態勢のしっかりした内閣を作ることだ。『う〜ん』とうならせる人事をやって、やる気をみせろ」と助言。首相が9月1日前後の内閣改造を検討していることについては「1カ月間ボディーブローをたたかれっぱなしになる。あまり延ばさない方がいい」と述べ、党役員人事だけでも前倒しするように勧めた。
 その上で、森氏は内閣をラグビーに例え、「フォワードに吹き飛ばされるような奴は置くな。勘の悪いやつをスタンドオフに置くな」とアドバイス。「これが最後のチャンスになるかもしれない」と念を押した。
勇気を持って
 中曽根氏は「選挙結果は芳しくなかったが、日本は国家的危機にあるので勇気を持って突破しなければならない。困難な時ほど政治家の本領が発揮されるものだ。あなたのおじいさん(首相の祖父の岸信介元首相)もそうだった」と激励。
虚心坦懐
 海部氏は「今は選挙直後でみなカッカしているが、国益の立場を踏まえれば乗り越えられる。虚心坦懐(たんかい)に野党と話し合い、説得してほしい」と助言した。
 一方、自民党総務会は1時間近く紛糾した。
 口火を切ったのは谷垣禎一前財務相。「なぜこれだけ批判を受けたのかしっかり総括すべきだ」と指摘。続いて加藤紘一元幹事長が「中川秀直幹事長、青木幹雄参院議員会長が辞任して、原因を作った側がそのままではおかしい」と首相続投を批判した。
 石破茂元防衛庁長官は「首相が『私か小沢一郎民主党代表の選択だ』と何回も訴えたのに、(続投を)有権者にどう説明するのか」、野田毅元自治相は「首相の道は1つしかない。決断したほうがいい」と首相退陣を求めた。深谷隆司元通産相は赤城徳彦農水相の事務所費問題の参院選への影響に言及し、「迷惑千万だ。(赤城氏は)即刻辞任してほしい」と不満を爆発させた。
 これを受け、丹羽雄哉総務会長は31日午後、首相官邸で総務会の意見を報告。首相は「厳粛に受け止めたい」と述べた。


最近のマスコミ報道(07/07/31) <参院選>高い関心示すも「失速」への同情なし…韓国 
日時:2007731
(7月30日11時13分配信 毎日新聞)
<参院選>高い関心示すも「失速」への同情なし…韓国
 【ソウル中島哲夫】ソウルの主要紙の大部分は、1面と国際面など複数のページで「安倍自民党 歴史的惨敗」「首相辞任拒否」などと報じ、高い関心を示した。
 自民党の敗因として各紙は年金問題、閣僚の自殺や問題発言など不利な条件が重なったことを紹介。有力紙・朝鮮日報は特に「格差」問題を指摘し、小泉改革の部分的副作用が出ているのに改革の継続を叫んだ戦略も失敗だったと分析した。
 また、小沢一郎・民主党代表の巧妙な選挙戦略と政界リーダーとしての「復活」に注目する記事も各紙で目立った。
 韓国世論は安倍首相の改憲志向や、いわゆる従軍慰安婦に関する発言に反発しており、参院選敗北による「失速」への同情は目立たない。北朝鮮に対する強硬政策を嫌う傾向も相当あり、政府寄りのハンギョレ新聞は分析記事で、今後の日朝交渉などを通じた政策変更に期待を示した。 

(7月30日11時23分 毎日新聞)
【中国】朝野逆転、天下大乱、四面楚歌=中国が参院選報道 7月30日17時17分配信 サーチナ・中国情報局
 中国新聞社など中国各メディアは30日までに、自民党が大敗した日本の参院選の結果を「朝野逆転」、「天下大乱」などと大々的に報じ、困難な議会運営を迫られる安倍首相について「四面楚歌」などと表現した。また、自民党の中川秀直幹事長と青木幹雄参院議員会長が安倍首相に辞意を伝えたと報じた。
 30日付同社電は「参議院は野党の勢力下に入り、与党がコントロールする衆議院と対決することになった。また、自民党は結党以来、初めて参議院議長の座を失うことは確実で、自民党の政権運営は困難になった。日本の政壇の情勢は先行きが極めて不透明だ」と分析した。
 30日付新華社電は「今回の参院選が安倍政権の初の信任投票だったが、大多数の有権者は不信任の態度を示した」と報道。「安倍首相の辞職を求める声は党内でも強く、議会運営を困難を増す」とした上で、「平和憲法を改正しようという安倍氏の夢は破れよう」との見方を示した。
 29日付人民日報海外版は「安倍首相は就任以来、小泉時代の日中、日韓関係の行き詰まりを打破し、周辺国との関係を積極的に改善した。しかし、1年もたたず支持率は低迷、信任は危機に直面した」と伝えた。
 中国英字紙、チャイナ・デーリーが運営する「環球在線」は開票に先立つ29日、日本の各世論調査の結果、自民党が勝利の可能性は小さいとした上、安倍首相が下野を迫られる可能性もあると指摘。外電を元に後継首相候補者として麻生太郎、谷垣禎一、福田康夫、町村信孝、小池百合子の5氏の他、小泉純一郎前首相の名前を挙げた。(編集担当:井上雄介)

(7月30日1時1分配信 時事通信)
対北朝鮮政策の行方に注目=敗北で「求心力低下」とメディア−韓国
 【ソウル29日時事】参院選で自民党が大敗する見通しになったことを受け、韓国では安倍政権の対北朝鮮政策の行方などに注目が集まっている。左派系の韓国紙ハンギョレ新聞(電子版)は自民敗北で「安倍政権の強硬一辺倒の対北朝鮮政策は変更せざるを得ない状況となった」と報じた。
 韓国政府内では「歴史認識」で強硬姿勢を示す安倍晋三首相への警戒感が根強い上、北朝鮮核問題をめぐる6カ国協議で日本人拉致問題を優先する安倍政権への反発もある。京郷新聞(同)は「安倍首相の求心力低下で憲法改正など右派志向の政策にも相当な変化が予想される」などと今後の見通しを伝えた。
 
(7月30日1時2分配信 時事通信)
イラク、対テロの協力後退懸念=改憲の行方にも注目−米
 【ワシントン29日時事】米政府は、29日の参院選で与党が過半数を割ったことを受け、今後の日本の政局を注視するとともに、安倍政権の基盤弱体化でイラク支援や対テロ戦争での協力が後退することを懸念している。
 選挙戦の段階から与党の苦戦は米国でも報じられていたため、外交当局は与党敗北を冷静に受け止めている。ただ、衆参のねじれに伴う政局の混乱で、自衛隊によるイラクでの空輸支援やインド洋での給油支援が継続されるかどうかに大きな関心を払っている。
 日米両政府が同盟関係強化のため推進してきたミサイル防衛協力や在日米軍再編などに影響が出ないかどうかも米側にとっては懸念材料だ。また、米政府は、安倍政権が重要課題と位置付ける憲法改正や集団的自衛権行使の検討を好意的にとらえてきたため、これらの行方にも注目している。 
 
(07/07/31 日経新聞)
米、首相の指導力低下懸念・自民と民主の調整注視
 ブッシュ米政権は参院選での自民党大敗を受け、安倍晋三首相の政権運営を注意深く見守る方針だ。インド洋で海上自衛隊が米艦船などに給油支援する根拠となるテロ対策特別措置法が11月1日で期限切れとなるため、国会情勢を慎重に見極める構えだ。
 米政府は、集団的自衛権行使やミサイル防衛強化に積極的な首相の姿勢を好意的に受け止めてきた。それだけに選挙結果が政策決定に与える影響には関心を払わざるを得ない。とりわけ民主党が自衛隊撤退を掲げるイラク問題で、自民、民主両党の調整の行方を注視する。 
(07/07/30 日経新聞)
米メディア「自民敗北」と速報
 【ワシントン=丸谷浩史】米CNN(電子版)は29日、ロイター電を引用して参院選での「自民党敗北」をいち早く報じた上で、安倍晋三首相の続投表明を伝えた。同時に民主党が参院で第一党に躍進したことで「法律の制定は困難になり、政策は行き詰まる」と分析。AP通信も自民党敗北で「法案や予算を成立させるのは難しくなるが、政策論争は活発になる」と伝えた。
 ブッシュ米大統領は安倍首相と4月に会談し、その後も電話での話し合いを重ねてきた。首相は日米同盟の強化を唱え、対テロ戦争への協力やミサイル防衛網強化などに積極的な姿勢を示してきた。参院選の結果が安倍首相の政権基盤に与える影響や政局の動向を注視している。 

(07/07/29 中日新聞)
海外メディアも速報 「自民惨敗」に関心高く
 自民、公明両党の過半数割れが確実となった参院選について、海外主要メディアは29日、相次いで速報、「自民惨敗」への関心の高さをうかがわせた。
 AP通信は投票締め切り直後の日本時間午後8時1分、出口調査結果を伝えた日本のテレビ報道を引用し、「自民党が大敗」と東京発で至急電を打った。
 ロイター通信は午後8時8分に早くも、「安倍晋三首相は辞任を余儀なくされる可能性もある」と分析。APは「非常に厳しい結果だ」との自民党幹部の発言を伝えた。
 タス通信も午後8時13分、「最大野党の民主党が参院で第1党となる見通し」と速報した。(共同)


最近のマスコミ報道(07/07/31)  首相退陣論、自民総務会で相次ぐ・赤城農相にも批判
日時:2007731
(07/07/31 日経新聞)
首相退陣論、自民総務会で相次ぐ・赤城農相にも批判
 31日の自民党総務会で、参院選の惨敗にもかかわらず続投を表明した安倍晋三首相に退陣を促す意見が相次いだ。加藤紘一氏は「割りを食う青木幹雄参院議員会長が辞任して、敗北の原因を作った側がそのままというのはおかしい」と要求。石破茂氏も「『私を選ぶか民主党の小沢一郎氏を選ぶか』と訴え、その結果、小沢氏が勝った。挙党一致では説明にはならない」と続いた。
 野田毅氏は「参院選で政権選択を迫ってしまった。道は一つしかない。ご決断した方がいいのではないか」と首相退陣を求めた。深谷隆司氏も「続投の発表が早すぎる。議論を順序立ててする必要がある」と首相の独断を非難。「赤城徳彦農相は即刻辞めるべきだ」と農相の辞任も迫った。
 谷垣禎一氏は「まず選挙の総括をしっかりやらないと党が結束する形にはならない」と述べるにとどめ、福田康夫氏は発言しなかった。中川秀直幹事長は「参院選の総括は8月中に結論を得たい」と引き取り、政治とカネの問題を巡り党の内規改正の検討に着手する考えを改めて示した。
 
(2007/07/31-13:31 時事通信)
各閣僚、続投に異論なく=「政治空白許されない」と安倍首相
 安倍晋三首相は31日午前の閣僚懇談会で、与党が惨敗した参院選について「厳しい結果だ。しかし政治の空白は許されない」と述べ、続投を決断したことに理解を求めた。その上で「一層緊張感を持って(職務に)当たってほしい」と指示した。敗北の原因については「地方で改革の痛みを感じていることが表れた」と語った。
 閣議後の記者会見では、首相続投に対し、異論を唱える閣僚はいなかった。ただ、渡辺喜美行革担当相は「カド番の認識を持ち続けなければならない」と、緊張感が必要なことを強調。参院広島選挙区から勝ち上がった溝手顕正国家公安委員長は「信頼回復は大変だ」と指摘した。

(2007年7月31日(火)「しんぶん赤旗」)
安倍改憲路線を拒否
「続投」許されるのか
 「基本路線については国民に理解いただいている」―自民党の歴史的惨敗にもかかわらず、安倍晋三首相は、開票後の会見でそうのべ、続投を表明しました。
 しかし、今回の参院選の結果は、「戦後レジームからの脱却」を掲げ、憲法改定の発議を公約のトップにおいた安倍首相の基本路線への痛打です。
 三十日の会見で「この選挙では憲法問題について十分議論できなかった」とみずから認めたように、安倍首相は、国民に向かって改憲の中身について具体的に語ることができませんでした。
 一方で、日本共産党の志位和夫委員長に、改憲のねらいが「海外で戦争すること」にあると追及されて、否定できなかったように、安倍改憲路線の危険性は選挙戦の中で浮かび上がっていました。
 テレビネットワーク・JNN(TBS系)の投票後のネット調査の結果は―。
 ▽「安倍首相が訴える憲法改正に共感できるか」という質問に対し、「できる」22・9%、「できない」61・9%
 ▽「安倍首相が訴える『美しい国』づくりに共感できるか」で「できる」18・3%、「できない」63・1%
 ▽「『戦後レジームからの脱却』に共感できるか」では、「できる」18・3%、「できない」50・8%
安倍首相の基本路線そのものが拒否されたのです。
 「改革を進め、経済を成長させ、格差をなくす」と街頭で叫んだ「構造改革」路線については、一人区での惨敗が、切り捨てられてきた地方の有権者の声を何よりもはっきりと突きつけています。首相自身、選挙結果を受けて「改革の中で痛みを感じている影の部分が表れた」と認めざるをえませんでした。
 これで、なぜ基本路線が支持されたといえるのでしょうか。増税と社会保障の連続切り下げで、現在と将来の貧困の影におびえる国民にとって、また、基本政策以前の安倍首相の政権運営・問題解決能力に疑問を感じている国民にとって、安倍首相の「美しい国」は空疎に響きます。
 新聞各社の出口調査では、安倍首相の退陣を求める人が「朝日」の調査で56%、「東京」で70%にのぼります。
 首相は、「新しい国づくりを約束してきた。この約束を果たしていくことが私に課せられた使命だ」と繰り返します。しかし、「勝手にそんな約束をされても、そんなことはしなくて結構だ」というのが、選挙結果に表れた声です。
 プロポーズを断られても、「君を幸せにすると約束した。それが僕の使命だ」とつきまとうようなもので、安倍政権にノーを突きつけた国民のいらだちは募るばかりでしょう。
 内閣改造などについて問われ、「人心を一新せよというのが国民の声」(三十日の会見)と首相はいいました。ならば、だれよりもまず自分が辞めるべきです。(西沢亨子)

(2007年07月30日08時40分 朝日新聞)
首相、改憲実現に固執 「基本路線、国民は理解」
 首相は29日夜のテレビ番組で「惨敗の責任は私にある」としつつ、「基本路線については多くの国民のみなさまに理解していただいている」と強調した。閣僚の不祥事や年金記録問題などが問われた自民惨敗であり、自らの理念が否定されたわけではない――。首相の発言には、そんな思いがにじんだ。
 首相は昨年9月の自民党総裁選で「戦後レジームからの脱却」「美しい国、日本」という二つのスローガンを掲げた。共通する思想は「戦後保守主義の再構築」だ。
 しかし、今回の選挙戦で「安倍カラー」は確実に色あせた。選挙戦では憲法改正に向けた国民投票法の成立などを必死にアピールしたが、ずさんな年金記録の問題や相次ぐ閣僚の不祥事の逆風にあおられ続けた。
 大敗を喫しても首相が続投に固執するのは、ようやく国民投票法の成立にこぎつけた今、ここで退陣すれば、憲法改正の発議に向けた道筋を固められないという思いがある。また、集団的自衛権の行使を禁じた憲法解釈の変更を視野に入れた有識者懇談会が9月に結論を出す見通しの中、、退陣すれば棚上げにされるとの考えもある。
 さらに、来年7月には北海道洞爺湖で開く主要国首脳会議(G8サミット)で首相が議長を務める。米中印など温室効果ガスの主要排出国を巻き込んだ日本独自の地球温暖化対策を5月に発表した首相は、新たな国際的枠組みづくりに向けて主導的役割を果たしたいという思惑もある。
 首相がこうした目標を抱えていることから、周辺では「(不祥事や失言が続いた)閣僚が悪いのであって、首相自身に失政はない」など首相の責任論を否定する意見が主流で、選挙結果にかかわらず続投すべきだとの声が強かった。
 しかし、首相は問題を起こした閣僚をかばう姿勢に終始し、年金問題では支持率急落を受けて、初めて本格的な対策の検討に入ったのが実情だった。有権者が今回の参院選で首相の政権担当能力に疑問を投げかけたのは間違いないだけに、続投しても自らの思惑通りに進むとは限らない。
 改憲の道筋についても、参院選の大敗で必要な3分の2の議席確保は遠のき、民主党との協調の再構築も難航するのは必至だ。公明党が党立て直しのため、首相の憲法観との違いを鮮明にする可能性もある。参院の与野党逆転の現実のなか、首相が描く10年以降の改憲への道筋は大きく崩れることになった。
 首相は29日夜、「信念を貫きながら、民主党にも耳を傾けながら結果を出していきたい」と語った。国会での法案審議などで民主党と協調する姿勢を示したものだが、首相の行く手は全く見えない状況だ。





最近のマスコミ報道(07/07/31) 米下院が従軍慰安婦決議を採択
日時:2007731
2007年07月31日09時11分 朝日新聞
米下院が従軍慰安婦決議を採択
 米下院は30日の本会議で、従軍慰安婦問題について日本の首相が公式に謝罪するよう求める決議を採択した。同様の決議案は01年から4回提出され、いずれも廃案になっていたが、民主党主導の議会で安倍首相の発言に対する反発が広がり、初めて本会議で採択された。法的拘束力はないものの、採択の回避に向け、訪米の際に米議会幹部に直接説明し、「理解していただいた」とする首相にとって更なる痛手になりそうだ。 
 下院外交委員会は6月26日に39対2の大差で決議案を可決。本会議でも3分の2以上の賛成が見込まれたことから、今回の採決は発声投票で行われた。出席議員から異議は出なかった。 
 決議は、「旧日本軍が若い女性に性的な奴隷状態を強制した歴史的な責任」を日本政府が「明確な形で公式に」認め、日本の首相が謝罪声明を出すよう求める内容。1月末に日系のマイク・ホンダ議員(民主)が提出した。 
 日本政府は「これまで謝罪しており、決議案は不必要で、事実と異なる」と訴えた。だが、安倍首相は3月1日、軍当局の関与と「強制性」を認めた93年の「河野官房長官談話」に関連して「強制性を裏付ける証拠がなかったのは事実ではないか。定義が変わったことを前提に考えなければならない」と発言。自民党内に河野談話を見直す動きもあり、従来の日本政府の謝罪に留保をつけ、修正しようとする発言と受け取られた。 
 決議案の共同提案者は下院(定数435)のうち民主、共和両党の167人に達した。そのうち142人は安倍首相の3月1日の発言後に共同提案者となっている。安倍首相は4月下旬の訪米時にペロシ下院議長(民主)やブッシュ大統領らを前に謝罪を表明。一時は沈静化したが、日本の国会議員らが6月14日付の米紙ワシントン・ポストに、決議案は「現実の意図的な歪曲(わいきょく)だ」とする意見広告を出し、議会内の反発が再燃した。 
 ホンダ議員は30日、決議の採択後に議会内で会見し、「この決議は日本の人々を責めているのではない。日本政府の過去に対する姿勢の問題だ。安倍首相が私たちの言葉に耳を傾けることを期待している」と語った。 
 下院指導部は参院選への影響を避けるため、本会議採決を選挙後に先送りし、日程の公表も投開票後にするなど配慮を見せていた。日米関係への悪影響を懸念する声もあり、31日の下院外交委員会では日米同盟の重要性を評価する決議案も採決される予定だ。 

7月31日5時1分配信 時事通信
米下院、慰安婦決議を採択=本会議で初、日本に謝罪要求−安倍政権に打撃
【ワシントン30日時事】米下院は30日午後(日本時間31日未明)の本会議で、従軍慰安婦問題に関する対日謝罪要求決議案を採択した。慰安婦問題をめぐり、下院本会議で決議が採択されたのは初めて。決議に法的拘束力はないが、参院選の与党惨敗で政権基盤の弱まった安倍晋三首相にとっては大きな打撃で、同盟強化を進めてきた日米関係に影響が出る可能性もある。
 決議の採決は発声投票により実施。出席議員から「異議」は出されず、議会規則が定める「3分の2以上の賛成」が認定され、全会一致に近い形で採択された。

2007年07月31日13時56分 朝日新聞
首相「これからも説明していく」 従軍慰安婦決議
 安倍首相は31日昼、米下院が従軍慰安婦問題に関する決議を採択したことについて「私の考え、政府の対応については4月に訪米した際に説明をしてきた。こうした決議がなされたことは残念だ」と語った。そのうえで「これからもよく米側に対して説明していくことが大切だと思う」と述べ、説明を続ける考えを示した。首相官邸で記者団の質問に答えた。 


今夜 NHKで討論スペシャル 有権者の審判にどうこたえるか・・・ご意見募集集中
日時:2007730
NHKオンライン http://www.nhk.or.jp/special/onair/070730.html

2007年7月30日(月) 午後7時30〜9時 総合テレビ
討論スペシャル
有権者の審判にどうこたえるか

ご意見募集中

きのう行われた第21回参議院議員選挙。
今回の選挙結果をどう受け止めるか、政治は今後何をすべきか、各党幹部が生放送で徹底討論。
そこで番組では、今回の選挙結果についての視聴者のみなさんのご意見を募集します。
選挙結果を受けて、
・各政党への注文
・年金問題や政治とカネの問題など、選挙戦の争点となった政策課題についてのご意見
・政治に望むこと
など、みなさんのご意見をお寄せください。
お寄せいただいたご意見の一部は、番組の中で紹介させていただきます。
ご意見はファックスかメールでお願いいたします。


*FAXの方 03−5455−6070
*メールでも受け付けています。


最近のマスコミ報道(07/07/29) 新聞各紙の社説・主張 
日時:2007729
07/07/29 北海道新聞
参院選*きょう投票*目を開き声を上げよう(7月29日)
 参院選はきょう投開票される。開設六十年の年に実施される二十一回目の選挙だ。 
 各種世論調査では与党の苦戦が伝えられている。参院選は政権選択選挙ではないとされるが、結果次第では安倍晋三政権は困難な道を歩まねばならなくなる。 
 それとも与党は逆風をはね返すことができるか。 
 いずれにしても安倍政権の命運を大きく左右する重大な選挙だ。 
 各調査によると、有権者の最大の関心は最初から最後まで年金記録不備問題に端を発した年金・福祉、社会保障だった。これに景気・雇用対策、政治とカネ、格差などが続く。 
 生活実感に根ざした切実な問題ばかりだ。選挙に関心があると答えた有権者が道内で八割近くに達しているのもこのために違いない。 
 期日前投票も二十七日までの十五日間で三年前の同時期より全国で約53%も増えている。投票日が夏休み前半の日曜日に当たるため、先に投票を済まそうと考える人が多かったのだろう。 
 そうはいっても投票率の行方は気になる。長期の低落傾向に歯止めがかかっていないからだ。二十年前は70%台を記録したのが、過去三回は50%台後半にとどまっている。 
 とくに今年は十二年に一度の亥(い)年選挙だ。春の統一地方選の「選挙疲れ」からか参院選の投票率が極端に落ち込むのが通例だ。前回一九九五年は44・52%で過去最低を記録した。 
 投票率は若い世代ほど低くなる。三年前の参院選で二十代前半の投票率は31・51%だった。三人に二人は投票所に足を運ばなかったことになる。 
 だが考えてみよう。 
 たとえば年金は受給年齢を迎えたお年寄りだけの問題ではない。若い世代こそ身近に感じるべきだろう。 
 収入が少なくて保険料を負担しきれない。将来、年金をもらえる保証がないから保険料を払わない。こういう若い人が増えている。現行制度上はどちらも無年金者になる可能性が高い。 
 それでは不安だ、困るというなら、制度を変えるよう政治に働きかけていくことだ。 
 正規雇用の機会が少ない。最低賃金が安すぎる。改憲の行方が気になる。ふだん友人と話し合っているさまざまな思いを政治に伝えよう。 
 その機会が今回の参院選挙だ。 
 サッカー元日本代表の中田英寿さん(30)は動画投稿サイト「ユーチューブ」で投票を呼びかけている。 
 周囲に目を閉ざさず、自分の意見を表明していく−。そう読み取れる三十秒間のメッセージを、正面から受け止めたい。

07/07/29 河北新報
07参院選を問う 今日投票/選択肢ははっきりしている
 暮らしや国の針路をめぐって有権者に重い問いかけをしてきた参院選が投票日を迎えた。
 与党が非改選を含め議席の過半数を維持できるかどうかが最大の焦点だ。言い換えれば、与党が主張する「政治の安定」と野党が戦略的に目指す「政治の緊張」のいずれを選択するかが問われる政治決戦である。
 「いざなぎ」を抜く戦後最長とされる景気の拡大局面を広げ、個人の消費や所得、家計にまで波及させなければならない。
 過半数の議席獲得が約束する政治の安定はそのために不可欠だと、与党は訴え続けてきた。
 正規社員と非正規社員、大都市と地方、そして新たに生み出される貧困…。政治の安定は、好景気の中の二極分化がもたらしたさまざまな格差を是正するためにも必要だと言う。
 安倍晋三首相は「上げ潮路線」と呼ばれる経済成長戦略を軌道に乗せ、その延長上に、憲法改正や教育再生などを柱とする「戦後レジーム(枠組み)からの脱却」や「主張する外交」の実績を重ねたいところだ。
 与党の過半数割れによる政治の不安定化は、安倍首相が政治・経済の将来像としてもうたう「美しい国」の輪郭を不鮮明にしてしまうことでしかない。
 与党とりわけ自民党のこうしたスタンスは、どこまで有権者の心をとらえただろうか。
 一方、民主党など野党が思い描くのは、参院運営の摩擦係数を一気に高めつつ衆院解散に追い込み、その総選挙で野党が過半数を制して政権交代への道を切り開くという基本戦略だ。
 参院の与党過半数割れに伴う政治の緊張はこうした戦略の実現に不可欠だと訴えてきた。
 参院の与野党逆転は「国対政治」がまかり通っていた1980年代から90年代にかけて例がある。しかし、融通無碍(むげ)な与野党妥協路線の中では野党が首相を窮地に追い込むことなどまれだった。
 「いずれが政権を担うのか」が問われる自民、民主の二大政党化時代での参院の与野党逆転は初めてだ。国対政治は通用しない。初の首相問責決議案可決の可能性さえ出てこよう。
 戦後政治史上まれに見る緊迫した与野党対決の局面では、与野党間調整よりも、民主党を中心とする各野党間の路線協議や政策連携の在り方がより鋭く問われることになるだろう。
 年金の記録不備問題や制度改革、「政治とカネ」の問題、格差、憲法、教育、農政、地方の再生と分権…。各党と各党候補者は選挙期間中、それぞれの立場と公約を示しながら、有権者に支持を呼び掛けてきた。
 党や候補者の訴えに触れる―自分の生活や仕事に照らし合わせる―誰(どの党)を支持するか決める。これが有権者が投票行動を決める際の基本動作だ。
 しかし今回はそれに加え、もう一つの作業が私たちに必要ではないか。一つ一つの争点や課題をじっくりとかみ砕き、それを1枚のモザイク画のように集めて「日本はどこに向かったらいいのか」という自分なりの設計図を心の中に描くことだ。
 私たちの1票はだから重い。
 
2007年7月29日 東京新聞/中日新聞
参院選きょう審判 投票して歴史を刻もう
 参院選はきょう投開票される。安倍政治を“信任”するのか、それとも「ノー」を突きつけるのか。有権者が審判を下す時がきた。一人一人が思いを込めた一票を。
 逆風が伝えられる安倍晋三首相は「負けるわけにはいかない」と絶叫した。小沢一郎・民主党代表は「与野党逆転できなければ、日本に政権交代はありえない」と政界引退をかけ戦った。
 緊張感ある選挙戦だった。年金や「政治とカネ」、憲法など判断材料もある。いよいよ有権者の出番だ。
問われる「安倍政治」
 参院選は安倍政権ができて初めての全国規模の国政選挙だ。この十カ月の安倍政治はよかったのか、悪かったのかが問われる。
 首相は自民党の悲願だった教育基本法の改正や防衛庁の省昇格を実現した。続いて、先の通常国会で改憲の手続きや役人の天下り規制を定めた法律を次々と成立させた。首相の掲げる「戦後レジーム(体制)からの脱却」を形にしたものとされる。
 首相は参院選でこうした「実績」をひっさげて、改憲をはじめ安倍色の強い政策で勝負するはずだった。信任を得て、実現へ弾みをつけたいと考えたのだろう。
 ところが、選挙前に火のついた“消えた年金”記録問題で、風向きが変わった。火消しに追われ「改憲を主要争点に」とはいかなかった。
 それでも首相は三年後の改憲発議を目指そうとしている。参院議員の任期は六年あるから、この選挙で選ばれる人たちは改憲作業に手を染める可能性がある。共産、社民両党は改憲阻止を前面に掲げて支持を訴えた。
 米国向けの弾道ミサイルを撃ち落とすことを可能にするような、集団的自衛権の行使をめぐる憲法解釈の変更も、首相の肝いりで議論されている。安倍政治を考える時、憲法は忘れてはならない課題だ。
政権選択の意味合いも
 最大の争点になった「年金」も有権者の関心は記録漏れにとどまらない。政府が選挙期間中、第三者委員会で二十三人の年金記録を回復し、給付を決めても、国民から「選挙目当てでは」と疑う声が漏れる。
 争点は「百年安心」をうたった政府の年金制度を信じるか、民主党などの抜本改革案に乗るか。議論が深まったとはいえないが、各党の公約を読み比べて投票したい。
 「政治とカネ」の問題も見逃せない。閣僚の不透明な事務所費問題は後を絶たず、投票日直前まで赤城徳彦農相から政治活動費の二重計上という新たな問題が出てくる始末だ。
 ほかにも教育や農業、消費税が議論になった。いずれも生活に直結する。すべてをひっくるめて安倍政治への判断が求められる。
 選挙戦終盤になって、自民党の劣勢が伝えられると、首相周辺から「参院選は政権選択の選挙ではない」との大合唱が起こった。参院選で負けても、首相は辞める必要ないと予防線を張ったものだ。
 確かに参院は首相指名選挙のある衆院と違い、与野党が逆転しても直ちに政権交代につながらない。だが、首相は「私と小沢さん、どちらが首相にふさわしいか、国民に聞きたい」と言っていた。首相の言葉は重い。当然、進退が問われよう。
 野党が参院で主導権を握れば、衆院の優位が認められているとはいえ、政府提出の法案は通りにくくなり、政権運営は難しくなる。早期の衆院解散・総選挙や政界再編につながる可能性もあり、民主党は政権交代への足がかりをつかむ。「政権選択」の意味合いもある選挙だと確認しておきたい。
 政治学者の間では、今回の参院選は「クリティカル・エレクション(決定的選挙)」になるかもしれないといわれている。米大統領選で三、四十年に一度起こり、政党の支持基盤が入れ替わるなど政治の流れを大きく変える選挙をいう。
 地方の疲弊が大きな影を落としている。九州地方のある選挙区では、自民党候補が街頭演説で地元への公共事業の誘致を訴えていた。小泉政権からの公共事業削減などで地方経済は冷え込み、改革継続を叫ぶ首相との矛盾など気にしていられない。
 そうした地方の窮状を小沢氏が突き、農業政策などで揺さぶった。自民党の金城湯池だった「一人区」の苦戦はこうした影響もある。「自民は地方、民主は都市」とされてきた支持基盤が崩れ、地殻変動を起こす可能性をはらむ選挙となっている。
 十二年に一度、統一地方選と参院選が同じ年に行われる「亥年(いどし)の選挙」だ。政党や支持団体が地方選疲れで動きが鈍り、参院選は低い投票率になる傾向がある。
よく吟味して「二票」を
 しかし、今回は様子が違う。世論調査で七割が「必ず投票する」と答え、期日前投票は一千万票に乗る勢いだ。無党派層の関心も高い。
 参院選では有権者一人一人が選挙区と比例代表の計二票を持つ。比例代表は政党名を書いても候補者名を書いてもいい。各党の政策と政治姿勢をよく吟味しよう。そして、私たちの「二票」で歴史を刻もう。

2007/07/28 神戸新聞 
あす投票/国政を左右する重い一票
 第二十一回参院選が、あす二十九日、投開票を迎える。年金記録不備や「政治とカネ」の問題などで有権者の関心は高く、一票の行使が国政の行方に大きな影響を及ぼす選挙となりそうだ。
 この参院選は安倍内閣が初めて受ける国政レベルの審判である。連立与党は衆院で圧倒的勢力を誇るが、それは小泉内閣当時に得た議席であり、いわば前政権の「遺産」といえる。参院選は本来、政権選択につながる選挙ではないが、今回は国民が現内閣を信任しているかどうかを示す選挙といえ、持つ意味は重い。
 安倍内閣としては、強い向かい風で迎える審判である。世論調査では、終盤になっても弱まる気配はうかがえない。
 低迷する内閣支持率が象徴的だ。30%を割ると、政権の基盤が揺らぎかねない「危険水域」とされるが、共同通信社の最新調査では支持率は29・2%にとどまる。こうした険しい逆風が、あすの選挙にどう表れるのだろうか。
 世論の動向に、政府・与党は危機感を募らせる。選挙戦後半では、選挙後の政局をにらんだ発言も相次いだ。しかし、最後まで政見をきちんと伝え、支持を求める姿勢を崩してはならない。
 投票日を前に、この参院選で問われた点をあらためて整理しておこう。
 後々、「年金選挙」と呼ばれる参院選になるだろう。記録不備問題が表面化し、制度そのものへの不安、疑問が噴き出した。政府は対策を打ち出したが、それをどう評価するか。野党の改革案をどうみるか。判断の大きなポイントになる。
 事務所費をめぐる「政治とカネ」の問題、安倍首相が「最重要課題」とする教育改革、さらに、首相が政治日程に乗せると言明した憲法改正、米国との同盟関係を強める安全保障問題…。どれをとっても、暮らしに直結し、あるいは日本の未来にかかわる大事な課題である。
 なにより、「戦後レジーム(体制)からの脱却」をとなえる首相の政治姿勢と、それに対する野党の主張をどう受け止めるか。有権者の見きわめが問われる。
 各党の公約にもう一度目を通し、冷静に比較、検討したいものだ。
 各種世論調査で、「関心がある」と答えた有権者は、おおむね八割前後を占めており、前回参院選を大きく上回る関心度である。期日前投票もかなり増え、投票率は前回より上がりそうだ。
 この一票が日本の針路を決める。これまで以上にそんな思いを強く持ちたい。

07/07/29 中国新聞
参院選きょう投票 「一票」が政治を変える
参院選は直接「政権の選択」を迫る選挙ではない。だが、昨年九月に発足した安倍政権が初めて審判を受ける本格的な国政選挙である。「安倍政治」の信任を国民に問う重要な選挙でもある。
 公示日にも指摘したように、今のまま継続するのか、与野党逆転で変化を求めるのか。有権者の審判が重みを持つ。この意味をあらためて認識し、投票所に足を運んでほしい。
 今回の参院選は「年金」問題に集中した感じである。選挙直前に大量の年金記録漏れが発覚し、各党とも対応策を訴えてきた。生活と深いかかわりを持つ年金に対する国民の関心は高く、不安も強い。その不安解消の道筋や財源を含む年金制度の在り方が、最大の争点になったのは当然だろう。
 共同通信の世論調査でも、ほぼ六割が「年金」を投票で重視するとしている。批判合戦が目立った選挙戦。有権者は不安解消をどの党に託すのだろうか。
 もちろん、争点は年金だけではない。事務所費をめぐる政治とカネの問題や格差問題、消費税、安全保障、地方分権…。中でも、安倍晋三首相の持論である「戦後レジーム(体制)からの脱却」路線をどう評価するかも大きな争点であろう。
 教育基本法改正に続き、憲法改正を掲げて国民投票法を成立させた。今回の参院選で選ばれた議員が、憲法改正の是非を審査することになる。年金問題も大切だが、安倍政治の評価こそが最も重要な選択ともいえるのではないか。
 もう一つ忘れてならないのは、参院の在り方である。二院制の下で参院は「良識の府」と言われてきた。本来、衆院の行き過ぎをチェックし、足りないところを補う位置付けである。
 ところが、参院の政党化が進み、衆院のコピーとやゆされるようになって久しい。選挙戦で参院の在り方の議論がほとんど聞かれなかったのは残念だ。政局とは一歩離れたところで、国益中心に物事を判断するのが参院議員の責務である。そうした参院の在り方も選択肢にして一票を投じよう。
 「投票しても政治は変わらない」「自分の生活と関係ない」という有権者の声を聞くことがある。そんなことはない。見えにくいだけで、日々の生活は政治と深くかかわっている。この国を少しでもよくしたいと思う人は、投票に行くことから始めよう。政治を変えるのは「一票」からである。

2007年07月29日 高知新聞
【きょう投票】 主権者として責任を
安倍政権下で初めての国政選挙である参院選が投票日を迎えた。 
 最大の争点となった年金問題をはじめ、選挙戦で取り上げられた課題はこの国の将来と私たちの暮らしにかかわってくる。 
 参院選は「政権選択の選挙」ではないが、結果は安倍政権の今後にも大きな影響を及ぼす。主権者として責任を持って一票を投じたい。 
 年金問題では記録不備が発覚し、選挙前に矢継ぎ早の対策が打ち出された。幅広い救済措置を講じるのは当然だが、問題はそれにとどまらない。三年前に制度の見直しがあったものの、保険料未納者が多数に上るなど制度の揺らぎは隠せない。 
 医療保険や介護保険にも同じことがいえる。格差問題もからんで、国民を支える社会保障制度が揺らいでいる。現在の「受益と負担」による制度維持が難しいなら、どういう形で再構築していくのか。税制のありようにもかかわる問題だ。 
 閣僚の辞任と自殺を招いた「政治とカネ」も見逃すことはできない。先の通常国会で政治資金規正法が改正されたが、「ザル法」は変わっていない。不祥事と政治不信の悪循環を断ち切るため、有権者の意思表示がますます重要になっている。 
 安倍首相が争点に掲げた改憲問題は、年金問題の陰に隠れた格好ではある。だが、国民投票法の成立によって、今回選ばれる参院議員は任期中に改憲の発議を審議する可能性がある。 
 同時に、首相は有識者会議を設置し、集団的自衛権の行使について解釈の見直しを進めている。こうした手法の是非を含め、憲法問題を判断材料の一つにする必要がある。 
 憲法とともに戦後日本を象徴してきた教育基本法は、「戦後レジーム(体制)からの脱却」を唱える安倍首相の下で既に改正された。さらに教員免許法など教育関連三法も改正されている。教育の国家統制の強化につながる恐れもある一連の動きをどう受け止めるのか。 
 本県を含む多くの地方は、大都市圏との格差とひずみの中であえいでいる。地方経済をどう立て直し、さらに真の地方分権の確立に向けてどう取り組んでいくのか。国政選挙は地方で暮らす私たちの意思を示す絶好の機会であるはずだ。 
 各党のマニフェスト(政権公約)をもう一度点検したい。そして自らの一票が決して「白紙委任」ではないことを確認した上で、投票所に足を運ぼう。

2007/07/28 西日本新聞朝刊
選択結果で政治は変わる あす投票
 参院選は政権の政策実績や政治手法を評価するもので、直接「政権の選択」を迫る選挙ではないといわれる。
 しかし、そこで示された民意はその後の政権運営に少なからぬ影響を与え、政治に変革を促す。
 自民党が大敗した1989年と98年の例が示すように、結果次第では政権党の党首が敗北の責任をとって辞任し、首相が交代することもあり得る。
 言い換えれば、直ちに与野党の政権交代につながらなくとも、有権者が政治の現状を変え、その後の政治の流れを転換させることができる選挙である。
 公示日にも指摘したように、今回の参院選は国政の今を受け入れるのか、修正を求めるのか、私たち有権者がその判断を委ねられた数少ない機会である。
 あすの投票日には、このことをあらためて意識して1票を行使してほしい。
 選挙の争点は「年金」に集中した感がある。各党とも選挙直前に表面化した年金記録漏れ問題への対応策を重点的に訴えてきた。
 年金に対する国民の不安は強く、関心も高い。国民の不安を解消するために問題解決の道筋を示すのが政治の役割であることを考えれば、各党が年金不安への解消策や年金制度のあり方を最大の争点に据えたのも当然だろう。
 年金不安を生じさせた政治の責任を問うと同時に、不安の解消をどの党に託すか。それが今回、有権者の投票行動を決める大きな要因になるのだろう。が、問われているのはそれだけではない。
 忘れてならないのは、今回の参院選が、昨年9月に発足した安倍政権が初めて全国の有権者の審判を受ける国政選挙であるという点だ。「安倍政治」を信任するかどうか、それを初めて国民に問う選挙でもある。
 安倍晋三首相は就任直後に、行き詰まっていた日中、日韓関係を修復し、構造改革などに伴う格差拡大の是正に向けて再チャレンジ支援や成長力底上げ戦略などを重点政策として推進してきた。
 これら小泉前政権の「負の遺産」への対応の是非が、今回の選挙で問われるのは当然だろう。
 その一方で、首相は「戦後レジーム(体制)からの脱却」を掲げ、教育基本法を改正し、憲法改正を政治日程に乗せて、改正手続き法である国民投票法を成立させた。
 この「戦後レジームからの脱却」路線こそ「安倍政治」の本領だろう。歴代政権が手をつけてこなかったこれらの課題への挑戦をどう見るのか。安倍政権の実績と評価する人もいるだろうし、違和感や危うさを感じる人もいるだろう。
 年金問題にかき消されがちだが、この「安倍政治」への評価こそ、今回選挙で問われる最大の「選択の視点」である。私たちはそう考えている。
 対する民主党はどうか。小沢一郎代表は今回の参院選で与野党逆転を果たし、次の衆院選で政権交代を目指すとしているが、政権を託し得る政策能力や政治手法を備えていると見るのかどうか。
 政権与党となって8年の公明党の政策や政治姿勢の是非や、超少数派となった護憲勢力の共産、社民両党の主張をどう評価するのか。
 「安倍政治」への評価と同様に、これらも重要な「選択の視点」である。
 結果次第で政治は変わる。

07/07/29 朝日新聞
若者たちへ―その1票に未来がかかる
 国会に用意された121の議席。そこに、どんな政治家を送り込むのか。 
 参院選の投票日がやってきた。 
 夏休みのまっただ中に投票日がずれ込み、投票率が下がるのではないかと一時は心配された。でも、選挙戦が始まると、有権者の関心は高かった。期日前投票にもたくさんの人が足を運んだ。 
 とはいえ、気がかりなのは、若い人たちだ。 
 残念ながら、若者の投票率はいつも総じて低い。総務省の抽出調査を見ても、前回の参院選で60代後半の投票率が75%を超えたのに対し、20代前半は32%、20代後半でも37%にとどまった。 
 遊びの予定や用事もあるだろう。わざわざ投票所へ出向いても、結果は変わらない。そんな思いがあるかもしれない。 
 だが、選挙の結果は間違いなく、これからの暮らしに跳ね返ってくる。 
 投票の意味を見いだせないという若者には、二つの視点から考えてほしい。 
 一つは、世の中に広がる格差社会の波を、若い世代こそが大きくかぶっているということだ。 
 規制緩和が進んだこの10年で、働く現場はすっかり変わった。かつては専門的な分野に限られていた派遣の仕事が、一気に広がった。正社員が減った代わりにパートや派遣の人たちが増えた。 
 とりわけ、学校を卒業したときに不況だった20〜30代には、正社員の職を得られなかった人が少なくない。景気が回復したいまも、正社員に転じることはむずかしい。 
 なかでも厳しいのは、フリーターだ。多くは、技術が身につくような仕事ではなく、食べるのもやっとだ。 
 こんな現状を変えたいと思うなら、声を上げることだ。仲間同士で愚痴を言い合っても、世の中は動かせない。 
 集会などには参加しにくくても、投票はできるはずだ。将来を見通しながら働ける世の中に、どの政党や政治家なら変えてくれるのか。それを見極めて投票することが現状を変えることにつながる。 
 二つ目は年金問題だ。 
 「年金が争点では、選挙への興味がわかない」「そもそも金がなくて、保険料も払っていない」。そんな声が若い世代から聞こえてくる。 
 だが、蓄えを持ちにくい世代だからこそ、年金はいずれ切実な問題となる。 
 収入が少なくて保険料を払えない若い人たちがいるなら、どんな工夫が必要なのか。その手立てを考えてくれそうな政治家を探してはどうか。 
 これまで政党や政治家の目は、若い世代を素通りしがちだった。その責任は若者にもある。数が少ない上に、投票率が低ければ、政治家の目に「票にならない人たち」と映ってもしかたない。 
 自分たちの抱えている問題を後回しにさせないためには、若者たちの存在を示すしかない。それにはまず、投票所に足を運ぶことだ。 
紛争後の支援―「平和構築隊」をつくろう
 早稲田大学大学院で国際関係論を学ぶ井上浩子さんは、国連ボランティアとして、先月の東ティモール総選挙で現地の支援活動に参加した。 
 インドネシアからの独立闘争を経て02年に建国された東ティモールには、いまも国連平和維持活動(PKO)が展開する。独り立ちに向けての大事なステップである選挙に、国連の主導で約380人のボランティアが派遣された。 
 競争率10倍の難関を突破して、日本からも9人が参加した。うち5人は修士号を持ち、地元のテトゥン語、ポルトガル語を話せる人もいる。「選挙支援を通じて、民主的な国づくりに取り組んでいるという実感が持てた」。現地で会った井上さんは日焼けした顔をほころばせた。 
 選挙支援をはじめ、司法制度づくり、元兵士の武装解除、警察や軍の改革などの仕事は「平和構築」と呼ばれる。紛争解決の段階から復興が軌道に乗るまで対象国の国づくりを支え、紛争へ逆戻りしないようにするのだ。 
 人口約100万の東ティモールは、この平和構築に一度つまずいた。独立を果たしたものの、国軍と警察の対立をきっかけに昨年5月、大規模な騒乱が起こり、国連はいったん任務を終えたPKOを再派遣せざるをえなくなった。 
 PKOと言えば、日本では自衛隊派遣に目が向きがちだ。だが近年は、治安回復と平和の定着を非軍事面で担う文民の専門家へのニーズが高まっている。 
 東ティモールでも、総選挙を踏まえて新政権ができれば、警察官や法律家、行政官などの人材育成が急務となる。議会政治を機能させるために政治家同士の対話を促したり、法律や司法制度を整えたりする必要もある。 
 こうした平和構築の分野で日本はもっと存在感を発揮すべきだ。開発支援ではすでに実績を積んでいるが、平和構築で要請に応えられる人材の層は薄い。東ティモールはアジアなのに欧州からの派遣要員が目立ち、日本人の専門家は国連ボランティアを含め、十数人しかいない。 
 最近、広島大学が平和構築のための人材育成センターを発足させた。日本とアジアから計30人の若者が参加し、9月から1カ月余りの座学の後、東ティモールなどで約5カ月間、研修する予定だ。 
 まだ短期間のプログラムだが、一歩前進だ。卒業した若者が確実にこの分野の仕事につけるよう、外務省などが支援してほしい。 
 旧ユーゴやアフリカなど、国際社会による紛争後支援が長期化する傾向は強まっている。欧米諸国は平和構築の人材育成と登録に力を入れ始めている。 
 政府もそんな前例を参考に、文民の専門家を登録し、必要に応じて迅速に派遣できる「平和構築隊」を構想すべきだ。私たちは、ここにこそ日本が果たすべき大きな役割があると考える。 
 平和構築を通じて、平和国家・日本の新しい姿を示していきたい。 

(7月29日付・読売社説)
参院選投票日 日本の将来見すえた選択を 
第21回参院選は、きょう29日、投票日を迎えた。
 我が国は、内外ともに大きな変化の渦中にある。激動する世界で確かな地歩を占めるため、国力をどう維持・発展させていくのか。少子高齢化、人口減社会にあって国民生活の安定をどう図るのか。
 国家運営の基本方針の策定や国民生活にかかわる難問の解決に挑む、「国民の代表者」としてふさわしい人物を選び出さなければならない。責任ある選挙公約を掲げている政党はどこか。もう一度、公約の中身を吟味したい。
 安倍首相は、中韓両国との関係改善や、教育の憲法とも言われてきた教育基本法の制定以来初めての改正、憲法改正手続きを定めた国民投票法の成立などの実績を訴えた。これらをどう評価するかも、一つの判断材料だろう。
 選挙後は、結果のいかんを問わず、与野党ともに、重要な政策課題に取り組まなければならないことになる。
 経済の安定成長のための基盤構築、巨額の長期債務を抱える財政の再建、年金や医療、介護など社会保障システムの再構築、それを支えるための消費税率引き上げを含む税制改革、国家公務員制度の改革、憲法改正の論点整理にあたる憲法審査会での論議などである。
 北朝鮮の「核」の廃棄と拉致問題の解決、テロ対策特別措置法の延長をはじめ国際テロ対策なども喫緊の課題だ。
 選ばれる参院議員らは、直ちにこうした問題に対処する責務を負う。課題の解決にあたる能力や資質の持ち主なのかどうか、見極める必要がある。
 選挙結果が、今後の政治動向や国会のあり方に重大な影響を及ぼす可能性があることも、留意しておきたい。
 参院は、1989年参院選で自民党が単独過半数割れしてから、政局を混迷させる火種ともなってきた。
 今回、仮に参院の与野党勢力が逆転すれば、参院での法案処理の主導権は、与党から野党側に移る。
 もちろん、首相指名や予算の議決、条約の承認は衆院が優越する。法案が参院で否決されても、与党は、衆院で3分の2以上の多数で再可決して、成立させることができる。
 だが、現実にはそう簡単なことではあるまい。野党の出方次第では、迅速を要する内外の重要政策の遂行に支障が出たり、国民生活関連の法案すら成立せず、政治の無用の混乱や停滞、空白を招いたりすることもありうる。
 日本の政治は、重大な岐路に直面している。日本の将来を選択する貴重な一票の権利をしっかり行使しよう。

2007年7月29日 毎日新聞 
社説:参院選きょう投票 緊張感増す選挙の重い一票
 参院選はきょう29日投開票される。昨年9月に発足した安倍晋三政権には初の本格的国政選挙だけに、「安倍政治」が問われるのは当然だ。第2院の参院だが、政党化も進み、参院選は次期総選挙までの中間選挙と位置づけられてきた。しかし、今回は新たな対立構図も浮き彫りになっている。
 自民、民主両党を柱とする2大政党化が進み、政権選択が一大テーマになった。民主党の小沢一郎代表が「今回は与野党逆転をはかれる最後のチャンス」と仕掛けた。安倍首相も当初は、「私と小沢さん、どっちが首相にふさわしいか問うことになる」と応酬した。だが、「安倍退陣」を招きかねないとの懸念が広がり、政府、与党内での政権選択論は急速に後退した。
 前国会での論点、年金制度や格差問題も争点として浮上した。毎日新聞の直近の調査では有権者の関心は年金が1番だが、次いで格差、「政治とカネ」が続いた。
 記録漏れ問題で最大の争点になった年金制度では、基礎年金部分の財源は保険料プラス税金の与党案に対し、民主党は制度を一本化し、基礎年金部分は税金でまかなう案をマニフェストに盛り込んだ。財源では互いにあいまいさが残るが、政策論争は評価したい。
 安倍首相は「構造改革」の推進を約束、失業率の低下など経済成長の実績を強調した。「景気回復の明るい兆しを地方に、地域に拡大したい」と、地域間格差の解消策を訴えた。さらに、民主党の解消策を「彼らは経済成長、景気回復策を一言もいっていない」と、財源が不明確と指弾した。
 一方、小沢代表は過疎地が多い「1人区」を早くから重視し、選挙行脚を続けた。大半は自民党の金城湯池だった。「自民党の多数を許せば、国民一人一人の生活よりも、トータルとしての国家、効率だけを求める政治が続く」と、格差をテコに切り込もうとした。
 公明党は「未来に責任を持つ政治」と連立与党の立場を一段と鮮明にした。対する共産党は「『たしかな野党』として、くらしと平和をまもりぬきます」、社民党は「9条と年金があぶない」、国民新党は「日本を変えよう!」、新党日本は「おかしいことは、変えていこう」を、メーンスローガンにそれぞれ論陣を張った。
 民主党は参院で与野党逆転を図り、衆院を早期解散に追い込み、政権交代を目指す構えだ。一方、与党は「政治が混乱した90年代に戻っては、経済は低迷してしまう」(安倍首相)と、政権の安定が経済復調のカギと力説した。
 衆院に小選挙区比例代表制が導入されて以来、紆余(うよ)曲折はあったものの、2大政党化は進んだ。政権の安定か、政権交代への道筋作りかは、今後しばらくは、国政選挙では一大テーマになるだろう。それに飽き足らない有権者には独自路線の選択もある。緊張感を増す参院選に、有権者はこぞって参加しよう。

(2007/07/29 産経新聞)
【主張】混乱と停滞に戻すのか 将来見据えた投票行動を 
 この日本をどうするのか。真の改革の担い手にふさわしいのはだれか。安倍内閣10カ月の実績とビジョンに、有権者の審判が下される。
 任期が6年と長く、解散による失職がない議員の選挙でもある。ここ数カ月、世の中を騒がせたテーマに目を奪われ、怒りにまかせて貴重な投票権を行使するわけにはいかない。
 与野党の勢力が激変することも予想されているが、その結果もたらされる政治構造の変化は、日本が向き合う諸課題の解決にとって、ふさわしいものとなるのだろうか。
 ≪「年金」では選べない≫
 改革の立ち遅れは、転換期に立つ日本に重い後遺症をもたらしかねない。長期的視野が必要だ。判断の誤りは重大な結果を有権者に突き付ける選挙であることを、いま一度考えたい。
 今回の参院選への国民の関心が高いことは期日前投票の増加にも表れている。「年金選挙」として醸し出されたムードの影響は大きい。
 年金記録紛失問題は、社会保険庁を舞台に、官僚のずさんな管理と、職員労組の過剰な権利意識の所産であったことを浮き彫りにした。
 それを見過ごしてきた責任は、政治全体にあった。それでも、早急に対応策が整えられ、年金記録問題はひとまず片付いた。この問題だけで与野党の勝ち負けを決めようというのは、どうみても無理がある。
 選挙結果に伴う安倍晋三首相の進退にも関心が向けられている。
 たしかに、平成元年には宇野宗佑首相、10年には橋本龍太郎首相が、それぞれ参院選敗北の責任をとって内閣総辞職した経緯もあった。
 しかし、参院の本来の趣旨は衆院に対する抑制機能にあるはずだ。その選挙が、またもや政局を大きく左右する様相を呈している。政局本位の選挙であってはならない。
 戦後60年を経て、さまざまなシステムにひずみが出てきた。
 安倍首相が目指す憲法改正や教育再生は、新しい国を形作るうえで不可欠だ。公務員制度改革への着手は、官僚主導政治に本格的にメスを入れる試みとなる。税財政のあり方を含む構造改革の推進、少子高齢化対策、地方の再興といった内政課題も急務である。
 核の脅威を振りかざす北朝鮮に、安倍首相は毅然(きぜん)とした姿勢を示し、拉致問題解決を最優先課題としてきた。それだけに、北朝鮮は最近、ことさら安倍首相を批判し、その退陣を心待ちにしているようだ。
 ≪改革の必要性は不変≫
 原則を曲げない対北外交方針は、日米同盟の維持、強化とともに不変でなければならず、いずれも死活的に重要なものである。いまは政治の混乱や停滞が許される状況にはない。
 平成元年の参院選で、自民党の参院過半数割れが生じた後、自民党の下野と細川連立政権の誕生、新進党結成や自社さ政権、自自連立といった政界再編、混乱の時代が続いた。
 首相や政権の枠組みが次々と代わるだけで政治は安定せず、「政界の失われた10年」とも呼ばれた。
 自公連立体制が確立することによって、自民党は参院の過半数割れを意識せずにすんでいた。しかし、この選挙を経て、自公連立でも数が足りない事態が予想されている。
 衆院で与党が圧倒的多数を持っていても、参院で過半数割れすれば、野党が反対する法案はいずれも参院で否決されてしまう。衆院と同様に参院も政党化している現実から、与野党対立の状況は、参院の抑制機能を超えて、法案の成否を決めてしまうのだ。
 野党の賛成も得て成立させようとすれば、政府・与党が思い切った政策を打ち出すことは難しくなる。
 小沢一郎代表が率いる民主党のねらいは、参院を与党過半数割れにしたうえで、安倍首相を衆院解散・総選挙に追い込むことにある。
 その後の政権奪取や政界再編も視野に入れたものだが、日本がどのように改革の道を進んでいくのかについて、シナリオは見えてこない。
 ふさわしい改革とそれを実現できる候補者、政党を見いだすことが、有権者に求められている。

日経新聞社 春秋(7/29) 
 3年に1度で21回目だから、第1回はちょうど60年前になる。参議院は団塊世代の最年長組と同じ1947(昭和22)年に誕生した。投票は4月20日。下位の半数は任期も半分の3年とされ、以後3年ごとに半数を改選しつつ今日に至っている。
▼不正が起こらぬよう占領軍が投票所を監視する中、この月は4つの選挙が立て続いた。5日が知事と市区町村長、20日が参院全国区と地方区、25日が衆院、30日が都道府県・市区町村議会議員。参院全国区トップは星製薬(現テーオーシー)や星薬科大の創始者である星一氏。作家星新一氏のお父さんだ。
▼紙不足の中、投票用紙の調達も簡単ではない。有権者も頭の切り替えが大変で、内務省は記入する名を間違えないよう繰り返し呼びかけた。翌月には現憲法が施行され、貴族院は58年の歴史を閉じた。第1回国会で衆院の第1党、参院でも緑風会に次ぐ第2会派となった社会党首班の片山内閣が発足。まさに激動の時代だった。
▼内外の環境に違いはあれ、自由に「1票」を行使できることの大切さは今も同じ。国民が選んだ代表が、国民のための政治を行う。歴史をひもといても、あるいは世界の国々を見回しても、これが決して当たり前のことではないとわかる。ぜひ投票所に足を運びたい。 


9条改憲許さない確かな一票!
日時:2007729
2007年7月29日(日)「しんぶん赤旗」
主張
参院選きょう投票
 参院選挙の投票日を迎えました。
 十七日間の選挙戦を通じて、安倍政権発足後最初の本格的な国政選挙となったこの選挙の対決軸は、いよいよ鮮明になりました。国民の命と平和を脅かす自民・公明の悪政に正面から立ち向かうたしかな立場、信念、勇気を持つのは日本共産党です。
 全国で議席を争う比例代表の選挙でも、東京、大阪、京都など選挙区の選挙でも、日本共産党は大激戦・大接戦のさなかです。命と平和のかかった一票を、ぜひとも日本共産党に集めてください。
切実な国民の願い
 「がんばって子育てしている母子家庭を救ってください」「弱者は弱者のまま死んでいけということか…『ストップ貧困』の文字を大きく」―。選挙に入って、日本共産党に連日寄せられているメールやファクスの一部です。これまでの選挙ではあまり例がないことでした。
 全国どこでも、国民の命と平和を脅かす安倍自公政権の暴走に不安を募らせ、政治を変えたい、そのためには日本共産党に前進してほしいという国民の願いが広がっています。日本共産党に寄せられた切実な声は、そのあらわれです。
 選挙戦の大きな焦点となった年金問題では、「宙に浮いた」といわれた年金記録で、すべての受給者・加入者に記録を送るなどの日本共産党の建設的な提案が実現へ動きだしました。しかし、年金だけでは暮らせない異常な低年金・無年金の問題は一向に解決しておらず、国民の不安はつのる一方です。
 庶民増税の問題では、六月からの住民税の大幅な増税に加え、安倍晋三首相はこの秋には消費税の増税に踏み出す考えを明らかにしました。増税を考えているなら参院選で国民の信を問うべきだという日本共産党の追及に、安倍首相は「増税しないこともある」とごまかしを続けています。国民の不安にいっそう拍車をかけたのは間違いありません。
 憲法問題でも、自民党の公約は第一番に三年後の国会に改憲を発議すると掲げています。日本共産党の志位和夫委員長がテレビの党首討論で、安倍首相はかつて「アメリカと肩を並べて」海外で戦争をするために改憲すると明言していたではないかと追及し、首相は反論できませんでした。改憲のねらいは明白です。選挙が終われば一気に改憲を進めるつもりではないか―命と平和を脅かされる国民の不安は切実です。
 国民の命まで脅かす自公政権の暴走を食い止めるには、まずこの参院選挙で、自公政治に立ち向かうたしかな立場と勇気を持つ日本共産党が前進することです。国の根幹にかかわる改憲問題で、自公政治に反対する旗印を持たない民主党では、暴走を止めることはできません。「ストップ貧困」「九条守れ」―その願いをこぞって日本共産党に託してください。
政治は変えられる
 日本共産党は創立から八十五年間、命がけで反戦平和をつらぬき国民の暮らしを守り抜いてきました。財界・大企業からは一円の企業献金ももらわず、相手が財界であれアメリカであれ、堂々とものをいってきた政党です。この党だからこそ、国民の立場をまっすぐ国政に届け、現実政治を動かすことができます。
 日本共産党はこれまでもサービス残業の是正や子ども医療費無料化の実現など国民の切実な願い実現に力をつくしてきました。こんどの参院選で日本共産党が前進すれば、必ず政治は変わります。日本共産党の前進に力を寄せてください。

毎日新聞 2007年7月28日 東京朝刊
列島ドキュメント:参院選・あと1日 「9条」もっと議論を 改憲に募る危機感
 安倍晋三首相が強い意欲を示す「憲法改正」。年金や、政治とカネの問題にかすみがちだが、参院選の重要な争点であることに違いはない。改憲手続きを定めた国民投票法も成立した。27日、各地の有権者が憲法への思いを語った。
 ■沖縄県
 米空軍嘉手納基地(嘉手納町など)で戦闘機が離着陸を繰り返す。同町の宮城巳知子さん(81)は午前9時半、朝食を終えて一息ついていた。「憲法9条を変えてはならない。戦争をやってもいい憲法になったら、上に立つ人がやりたい放題する心配がある」
 沖縄戦に「瑞泉(ずいせん)学徒隊」として動員された。本島南部で解散命令が出た時、自決以外にないと思った。その後、壕(ごう)(ガマ)でガス弾攻撃に遭い捕虜になった。「戦争は地獄。上に立つ人は戦争体験者の話を聞くべきだ」。那覇市の蒔(まき)田孝さん(63)は午前11時過ぎ、所用で市役所へ。「防空壕に入った記憶があるだけで、戦争は覚えていない。でも9条は変えるべきではない」
 ■東京都福生市
 米軍横田基地は福生市などにまたがる。午後2時、強い日差しが照りつけていた。上空を米軍のヘリコプターが飛ぶ。基地近くに30年以上住む元都職員、松本潔さん(76)は「9条だけは変えちゃいけない。あんな悲惨な戦争をやろうという方向に、どうして進もうとするのか」と力を込めた。「本音を言えば、米軍には本国へ引き揚げてほしい。簡単にはいかないけどね」と汗をぬぐった。
 午後3時、JR福生駅駅前。基地の滑走路近くに住む主婦、元満京子さん(65)は「絶対に戦争は嫌だけど、他国から攻められたら、そんなことは言っていられないのかな。どの政党も候補も頼りない。憲法より、年金や消費税などの方が身近で切実」と話した。
 ■広島市
 午後5時、会社社長で被爆2世の吉川浩司さん(46)は事務所で仕事の合間に一息ついた。選挙カーから支持を求める声が聞こえる。米国に留学していた18歳のころ、ささいなことから銃を突きつけられたことがあった。ベトナム帰還兵から戦場の様子も聞いた。「9条は1ミリもゆがんではいけない日本の決意。選挙なのに改憲を巡る議論はあまり聞こえてこないな」

(2007年7月27日 中日新聞)
【参院選2007 静岡ニュース】
隠れた争点「憲法9条」  県内の有権者、こう考える
 「戦後レジーム(体制)からの脱却」を掲げる安倍晋三内閣が最重要課題の一つに据える憲法改正。改憲手続きを定めた国民投票法が成立し、今回の参院選で当選した議員は任期中に改憲の是非について判断を迫られる可能性が高い。だが、年金や政治とカネをめぐる不祥事といった問題が前面に出たことで、争点としてかすんだ印象も。静岡県内の有権者に考えを聞いた。(参院選取材班)
 憲法改正の関心は、戦争放棄と戦力不保持を定めた九条のあり方に集中する。
軍隊を持つのは困る/見直すのは当たり前/議論の活性化に期待
 小学校と保育園に通う3人の子どもがいる磐田市平間の主婦寺田志保子さん(39)は「九条を改正することなくいけたらいい」としながらも「子どもたちが大きくなった時に無防備でいいのか」と複雑な思いを口にする。
 磐田市西貝塚の主婦野田奈央さん(60)は「人と人とのかかわりを大切にして平和への道を目指してほしい。子どもたちのため、日本が軍隊を持つようなことになっては困る」と、改正反対の護憲の立場だ。
 一方で「時代に合った内容に見直すのは当たり前」と断言するのは、浜松市浜北区の会社役員後藤浩之さん(46)。「日本が独自の立場で世界平和に貢献する要素を盛り込むべきで、軍備を容認するだけの形式的改憲であってはならない」
 静岡選挙区では、年金問題などの陰に隠れた形の憲法問題に積極的に言及する候補者は多くない。しかし、今だからこそ深い議論が必要との声も。
 静岡市葵区の雑貨店経営中村攝子さん(58)は、安倍首相が憲法改正を焦っているように見えるという。「脅威から日本を守るため今のままがいいとは言い切れないが、戦争を避けるやり方を探していかなければならない」
 三島市東町の民間非営利団体(NPO)職員長谷川浩さん(46)は「年金ばかりを争点にするのではなく、憲法も政治家が先頭に立って国民に知らせるべきだ」と指摘。「あいまいな解釈で済ますのではなく、時代とともに変えなければいけない部分もある」と話した。
 浜松市中区富塚町の大学院生藤井豪平さん(24)は、九条改正には反対の立場だが「現憲法が米国の押し付けという意見も理解はできる」と述べ、国民投票法成立を機に議論が活性化することに期待を込めた。

(7月26日(木) 信濃毎日新聞社)
改憲手続き成立したのに… かすむ憲法論議
終盤を迎えている参院選で、憲法をめぐる議論の盛り上がりが欠けている。「護憲」を主張する共産、社民両党に対し、「改憲」を公約する自民、「国民の自由闊達(かったつ)な議論を」とする民主の両党はほとんど取り上げていない。県区(改選定数2)の4候補は、焦点の9条についていずれも堅持の立場を表明。世論調査でも有権者の関心は年金や税金などが上回る。改憲手続きを定めた国民投票法が成立して初めて迎える国政選挙で、より活発な議論を求める声が出ている。
 25日、県区のある候補が行った街頭演説。8分ほどの中で、憲法問題に対する考えを訴える場面はなかった。近くで広告看板を手に立っていた男性(59)は、今回の投票基準を「年金と医療。まずそれが大事」と話した。
 「今は憲法より、年金がきちんともらえるかの方が心配」。7年前から護憲を訴える会に参加しているNPO法人副理事長の桜井真一さん(55)=上田市=も、生活の切実さが優先する現実を打ち明ける。障害者年金と共同作業所の収入で暮らすが、障害者自立支援法が施行され、サービス利用料の自己負担が家計を圧迫しているという。
 5月の国民投票法成立を受け、参院選後には衆参両院に憲法審査会が設置される見通しだ。3年後から憲法改正案の発議が可能になる。今参院選で選ばれる議員は、6年間の任期中に改憲の是非について問われる場面を迎える可能性がある。
 このため、憲法をめぐる活発な議論を期待する声は、改憲、護憲双方の立場の有権者から聞かれる。自衛隊の活動を支援する商工業者でつくる県防衛協会副会長で会社社長の黒河内靖さん(63)=伊那市=は、改憲を求めている。選挙で国の防衛に関する論戦を期待したが、中盤までの議論は「年金に持っていかれてしまった」と思っている。
 一方、松本市民有志の「憲法九条を守り広げる松本地域連絡会」事務局の戸田俊子さん(60)は護憲の立場から「改憲側はわざと争点から外しており、議論が足りない」とする。憲法改正の発議ができるようになると触れない姿勢を疑問視する。
 憲法論議がかすむ現状は、有権者側にも共通する。中野市の自営業西沢純一さん(48)が5年前から有志と続けている憲法の勉強会も、なかなか参加者が増えない。そんな中、憲法改正発議の権利を認められた国会議員をどう選ぶか。西沢さんは、テレビや新聞を通じて主張を比べているといい、「『得票用の主張』でないかどうか、有権者が見抜く力も問われる」と言った。



最近のマスコミ報道(07/07/28) 東京  5議席めぐる混戦過熱(東京)  京都選挙区、民・自に共産続く(京都) 
日時:2007728
(7月27日 北海道新聞)
参院選*改憲*これでは信を問えない 
改憲をめぐる論議が盛り上がりを欠いたまま、参院選の投開票日を迎えようとしている。 
 安倍晋三首相は年頭記者会見で改憲を参院選の争点にすると明言した。国民投票法の成立直後には「国家ビジョンにかかわる憲法論議を避けることは不誠実と考える」とまで指摘した。 
 ところが、公示前後から首相の口は重くなった。改憲のねらいや道筋を説明するどころか、「国民的な議論は深まっていない」とさえ語り始めた。 
 当初の意気込みは何だったのかと問わずにはいられない。議論の深まりに欠けると認めるのなら、国会を混乱させてまで国民投票法の成立を急ぐ必要などなかったのではないか。 
 年金や格差、政治とカネの問題が争点化するなかで、憲法問題は票につながらないと判断したのだろう。 
 改憲を公言し、自民党の選挙公約に「二○一○年での発議を目指す」と掲げている以上、ご都合主義と言われても仕方あるまい。 
 首相は改憲の内容を問われると「すでに全容を示している」と答える。 
 自民党が○五年にまとめた新憲法草案は、最大の論点である九条二項の戦力不保持と交戦権の否認を削除し、自衛軍の保持を明記した。海外での武力行使にも道を開いている。 
 戦後の平和と繁栄を支えてきた現憲法を根本から変える内容だ。 
 国民の多くが九条改憲に否定的であるにもかかわらず、論議を深めようとの姿勢が首相からは感じとれない。 
 民主党も公明党もこれ幸いとばかり改憲への言及に消極的だ。民主党は党内論議が煮詰まっておらず公明党は九条改憲に反対だ。護憲を掲げる共産、社民両党との落差は際だっている。 
 これでは、この選挙で改憲問題を論じたとは到底言えない。まして国民の信を問うたことにはならない。 
 それだけではない。 
 選挙後の臨時国会では衆参両院に憲法審査会が設けられる。国民投票法が施行となる一○年にも改憲の発議ができるようになる。今回選ばれる議員たちがそれを担う可能性が高い。 
 各候補者はどんな憲法観を持ち、改憲にどういう立場で臨むのか。分かりやすく丁寧に語ってほしい。 
 それなくしては国の最高法規を変える問題を委ねるわけにはいかない。 
 法が施行されるまでの三年間は憲法審査会で改憲案の審議はできないが、与党は改憲案の骨子や要綱案を作ることは可能と見ている。改憲の流れが一気に早まることになりかねない。 
 こうした動きに歯止めをかけることができるのか。この選挙の結果が大きく影響してこよう。じっくりと考えた上で一票の権利を行使したい。

(2007年7月28日 東京新聞)
【東京】’07参院選 5議席めぐる混戦過熱
 参院選は二十九日に投票が行われ、即日開票される。改選数が四から五に増えた東京選挙区には二十人が立候補し、全国でも屈指の激戦を展開している。年金記録の不備問題などが主な争点となった中、都内の有権者はどんな判断を示すのか。首都の政党の勢力図は変わるのか。選挙戦も残すところ一日となった。
 東京選挙区では、国会に議席のある六政党から八人が名乗りを上げ、無所属の著名人らも乱立して混戦模様となっている。
 自民は共倒れした一九九八年以来の二候補擁立で、現職が組織選挙を展開し、新人が浮動票取り込みを図る。民主は計約百九十万票で二人当選した三年前の再現狙いで、現職と新人が奔走。公明の現職と共産の新人は、いずれも議席の死守に全力を注ぐ。社民と国民新はともに新人が巻き返しに懸命。これに、知名度のある無所属の新人らが無党派層に猛アピールしている。
 本紙の世論調査では、民主現職が一歩リードし、民主新人、自民現職、公明現職、共産新人、自民新人、無所属新人が追う展開。無党派層の動向次第で情勢は流動的で、特に最後の五議席目をめぐる争いは予断を許さない状況だ。
 投開票日の二十九日は、一日早く二十八日に繰り上げ投票をする小笠原村・母島を除く都内千八百五十八カ所で、午前七時から一斉に投票が始まる。午後八時に締め切られ、六十二カ所の開票所で午後九時までに順次開票が始まる予定。
 東京選挙区の五議席が確定するのは三十日未明になる見通し。
 同選挙区の投票率は前々回が53・27%、前回が56・08%。投票率の動向も選挙結果に大きく影響しそうだ。
主要12陣営 かく戦った (届け出順)
●無所属新人 ドクター・中松陣営
 世界が認める実績で、ヤワな政治家百人分以上の仕事をする即戦力として、中松の行く先々が笑顔と歓声に包まれた。「あなたを幸せにする」決意とパワーは十分伝わったと確信。「政治の発明」は投票で実現できる。 (花島行男選対本部長代理)
●共産新人 田村智子陣営
 自民・公明による暴走政治に正面から対決するわが党の値打ちを訴えてきた。庶民増税は許さない、年金問題の解決や子育て支援など、くらしと憲法を守り抜く政策を幅広い都民に訴え、大きな手応えを感じている。 (徳留道信選対責任者)
●社民新人 杉浦ひとみ陣営
 「憲法九条を守ろう」「国民を顧みない政治にNOを」と、年金や平和、教育問題への取り組みを訴えた。もともと体力のある候補だが、憲法の大切さを訴えたいという思いで一層元気に。街角では大勢に励まされた。 (野本雄二広報担当)
●自民現職 保坂三蔵陣営
 年金問題など政策を誠実に語り続けた。防災、中小企業、サラリーマン対策、少子高齢化など都市のテーマを都議の経験を踏まえ、熱く語り、多くの共感を集めた。参議院に必要な人材、ぜひ、ご支援をお願いしたい。 (深谷隆司選対本部長)
●無所属新人 東条由布子陣営
 東条英機元首相の孫という知名度を生かし、街頭での訴えを展開、若者や戦争体験者を中心に戦後日本の国家のあり方を問うた。靖国神社のみたままつりに合わせ連日演説。終盤に入り、複数の宗教団体も支持を表明した。 (大塚寿昭選対本部長)
●諸派新人 黒川紀章陣営
 各地で、高齢者の不安をじかに感じ、老後も安心して生活できる年金、医療、福祉を最重点政策として訴えてきた。低所得者向けの住宅対策、税制・年金対策を関連づけて実行することなど、具体的に政策を伝えた。 (黒川・共生新党党首)
●国民新新人 中村慶一郎陣営
 「政治の流れを変えるラストチャンス」と位置づけ、「筋を通したブレない政治」「競争と共生の調和」「人・地方の重視」の三つの基本理念を中心に訴えてきた。その結果、多くの激励を受け、近年にない手応えがあったと感謝する。 (亀井久興幹事長)
●無所属新人 川田龍平陣営
 薬害エイズ裁判を勝利に導いた川田の「生きるって楽しい、と思える日本へ」の訴えに、熱い共感と期待が寄せられている。若いボランティアも増えてきた。既成政党とは違った新しい政治への希望を感じている。 (福士敬子選対共同代表)
●民主現職 鈴木寛陣営
 参院議員としての六年間の実績と「政治は生活と直結」を訴えた。その結果、生活者や働くみなさまとしっかりと顔を合わせることができ、年金や教育、医療等の実績は、幅広い世代にご理解を得ることができた。 (小林正夫選対本部長)
●公明現職 山口那津男陣営
 逆風下の厳しい選挙だったが、連立政権での党としてのさまざまな実績などを訴え、幅広い有権者の理解をいただくことができた。年金記録の問題でも迅速な対応をしたことに評価が得られ、手応えを感じている。 (石井義修選対本部長)
●民主新人 大河原雅子陣営
 子育ての中から政治のおかしさに気付き、問題解決に挑戦してきた思いを訴えた。街頭では「消えた年金、増えた税金」に象徴される与党のデタラメぶりへの国民の憤りと、信頼できる政治への期待を強く感じた。 (加藤公一選対事務局長)
●自民新人 丸川珠代陣営
 日本人でよかった。そう実感してもらえる国を創りたいと、都内数百カ所で訴えてきた。丸川の飾らない人柄、政治にかける熱い思いは伝わり、手応えを感じている。あと一歩の戦い。一層のご支援をお願いしたい。 (平沢勝栄選対本部長)

(07/07/28 京都新聞)
京都選挙区、民・自に共産続く
参院選あす投開票
29日投票、即日開票される第21回参院選の京都選挙区(改選数2)で、松井孝治(民主現)、西田昌司(自民新、公明推薦)、成宮真理子(共産新)、大城戸豊一(維新政党・新風新)の4候補が争っている。先行する松井候補に西田候補が続き、成宮候補が追いかけている。大城戸候補は苦しい戦い。 
 6年前は「小泉ブーム」で西田候補の父吉宏氏が3選、無所属の元民主幹部をかわして松井候補が初当選した。3年前は共産現職が敗れた。 
 議席継承で京都政界の主導権を握り続けたい自民、統一地方選での勢力拡大を定着させたい民主、選挙区議席の奪還を目指す共産が、それぞれ総力を挙げている。 
 再選を目指す松井候補は、連合などの支援で天下り批判や分権を訴えている。府議出身の西田候補は戦後体制からの脱却を主張、支持団体を引き締める。成宮候補は護憲や増税反対、雇用問題を掲げ、無党派層への浸透を図る。大城戸候補は自主憲法の制定を訴える。

(2007/07/22 大阪日日新聞)
参院選 候補の主張
 投開票が1週間後に迫った参院選。大阪日日新聞は、大阪選挙区(改選数3)に立候補した9人を対象に(1)憲法(2)年金(3)政治とカネ(4)格差問題(5)教育再生−についてアンケートを実施した。(大谷義夫候補=無所属・新は無回答)
(1)憲法
憲法改正の手続きを定める国民投票法が成立しました。憲法改正について見解をお聞かせください。

9条は「宝物」、守るべき
宮本岳志候補(共産・現)
 日本国憲法九条はもちろん、すべての条項を守り、生かしていく。
 そもそも憲法制定は「地球規模でのパートナーとしての役割を果たすために、憲法九条が邪魔」(元米国務副長官)というアメリカの要求。そして、日本の中で九条改定の先頭に立っているのは「日本の戦争はアジア解放の正しい戦争だった」と、侵略戦争に無反省な“靖国派”といわれる人たちだ。
 憲法九条は、世界と日本の人々の苦痛の経験の上に立って作られた「宝物」。二十一世紀は、世界でも日本でも、ますます日本国憲法の本領が発揮される時代だと考える。イラク戦争以降、アメリカ一国の暴走を世界が許さず、国と国とのもめ事は戦争ではなく話し合いで解決するという方向で世界は動きだしている。日本でも、全国に六千を超える「九条の会」が保守や無党派の人も参加して作られている。各紙の世論調査でも「九条守れ」の声が日に日に広がっている。

非常に危機的な時代到来
服部良一候補(社民・新)
 憲法を改正する必要はない。私の母は私が小さい時いつも、「もう戦争はこりごりだ」と言っていた。私は、戦後日本の平和の基礎となり、アジア諸国との信頼関係づくりの要となってきた日本国憲法が変えられる時代が来るとは思ってもいなかった。その意味でとても危機的な時代が来たと思う。憲法九条は、日本だけでなく二十一世紀の世界の指針であり、宝だ。憲法改正のための国民投票法は単なる手続き法として成立したのではなく、自民党の「新憲法草案」を前提にした改憲ありきの法律。国民投票法の撤廃、あるいは凍結を目指す。

改正を恐れてはならない
谷川秀善候補(自民・現)
 憲法改正に賛成。自主憲法の制定は、一九五五年わが党立党以来の懸案である。〇五年十一月に、新憲法草案を公表した。日本国憲法が施行されてから六十年がたち、国民誰もが誇ることができる平和憲法としてその役目を担ってきた。
 しかし制定から長い年月がたち、時代に合わなくなっている部分があること、また国民自らの手で新憲法を制定すべきことなどから現行憲法を改正すべきであると考える。
 現行憲法の三大原則(国民主権・基本的人権の尊重・平和主義)を堅持した上で、時代に即して改正することを恐れてはならない。
 第九条については、国民の多数が認めている自衛隊との矛盾を解消する必要があり、自衛隊を憲法上明確に位置付ける。また国民の責務として自由と権利には責任と義務が伴うこと、現行憲法にないプライバシー権や知る権利、環境権を新しく規定すべき。

混迷の時代に即した法に
林省之介候補(無所属・新)
 日本国憲法の制定から六十年以上が経過し、第二次世界大戦終了直後の情勢から、世界情勢は大きく変化を遂げ、九条をはじめとして時代にそぐわないものが目立つ。そもそも占領下に連合国軍最高司令官総司令部が決定した憲法を堅持しなければならない合理性はない。残念ながら世界は資源と食糧の争奪戦という厳しい時代に入り、さらに混迷の度合いを深める。時代に即した憲法に改正すべき。

国民投票法の改正が先決
梅村聡候補(民主・新)
 世論が求めていた「最低投票率」が無視されるなど、問題の多い国民投票法の改正を先にしなければならない。憲法改正への大事な手続き法さえ強行採決する安倍首相のやり方は、何が何でも自分の任期中に日本を戦争のできる国にする憲法にしてしまおうという危険極まりないものだ。
 マスコミの世論調査では九条一項については改正必要なしが80・3%で改正必要が14%、九条二項についても改正必要なしが54・1%で改正必要の38・1%を大きく離している。「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」という憲法の原理は国民に定着しており、戦後の日本で現憲法が果たしてきた役割をしっかり評価した上で、どんな憲法にしたらいいのか、国民的に議論を起こしていけばいい。未来の子どもたちにまで影響を与える大事な問題を安倍内閣に任せるわけにはいかない。改憲を急ぐことはない。

安倍政権下での改憲危険
上田剛史候補(無所属・新)
 独立主権国家として自主憲法制定は断固必要であるが、安倍政権での改憲は危険である。憲法九条は世界的な平和の文化遺産である。専守防衛を貫くべきであり、アメリカの属国から脱却すべきである。日米同盟を見直さなければ、国内に米軍基地が陸海空すべての作戦本部がそろった今、いつミサイルが飛んできて戦場になるか分からない危機にある。そして、現状の憲法は二院制であるが、一院制に改正することで参議院の税金の無駄一千億円以上を省き、十分な審議を尽くすべきである。数の暴力、節操のない連立、参議院の政党不要。

現在の改正議論は強権的
白石純子候補(国民・新)
 戦後六十二年を迎えた今、自主憲法をわたしたち日本人自身が制定することは必要だと思っている。ただし、現在の憲法改正議論はあまりに強権的で、問題ばかりが目立ついびつなもの。憲法改正に必要な国民投票法でさえあいまいな点が多く、憲法改正の方針だけが先走っている。そういう意味で、現時点での憲法改正は拙速で、むしろしない方がよい。
 国家の根幹である憲法の改正は、国民にとって国のありさまを変える重大事件。十分な情報や知識を国民に開示しないまま、憲法改正ありきの議論の上で改正の是非を問うのは、あまりにも乱暴で国民をばかにしている。これではまるで、詳しい内容を一切公表せず国民に是非を問うた郵政民営化解散選挙と全く同じに思えてならない。経済が活性化し、同時に国民の精神が健全化し、躍動していく中で、初めてわたしたち日本人の憲法をわたしたち自らがつくるべきだと思っている。

9条堅持し「加憲」目指す
白浜一良候補(公明・現)
 現在の憲法は国民に定着しており、第九条は堅持し、その上で、環境権やプライバシー権など足らざるものを補強していく「加憲」が公明党の立場だ。党として三年を目途(めど)に、「加憲」の具体案を取りまとめるとともに、国民の中での議論や、衆参両院の憲法審査会で十分に議論を行うべき。従って参院選の争点にすべきではないと考える。


最近のマスコミ報道(07/07/27)  憲法/目立たないままでは困る ・・
日時:2007727
2007/07/25 神戸新聞
憲法/目立たないままでは困る
 国の基本を記した憲法は、国政選挙で論戦を交わすのにふさわしいテーマといえる。とりわけ、こんどの参院選では争点としての重みが違っていたはずだ。
 政権の発足以来、安倍首相が憲法改正を政治日程にのせると繰り返し述べてきたこと。さらに、改正の手続きを定めた国民投票法が先の国会で成立し、問題は新たな段階に入ったことが背景にあった。
 ところが、年金や雇用、景気などに隠れ、憲法論議は熱を帯びないまま選挙戦も終盤を迎えている。候補者によって濃淡はあるが、総じて目立っていない。
 すでに新憲法草案をまとめた自民党は、二〇一〇年に改正発議を目指すとマニフェスト(政権公約)に記した。首相も憲法の争点化に意欲を見せていたが、詳しく触れる場面は少ない。年金などへの対応を優先したにせよ、肩透かしの感は否めない。
 公明党も三年後をめどに「加憲案」をまとめるとした。ただ、共通公約の連立与党重点政策では「幅広い国民的な議論を深めていく」などと、トーンダウンする。
 一方、国民投票法案をめぐって与党と協議した時期もある民主党も、マニフェストの最後に「国民の自由闊達(じゆうかったつ)な憲法論議を」との項目を盛り込んだだけである。
 与党と最大野党がこれでは、「護憲」を掲げた共産党、社民党などが九条の堅持を訴えても、かみ合わないだろう。
 国民投票法によれば、成立後三年間は改憲原案の提出などはできないが、次の国会で両院に憲法審査会が設置され、実質的な論議が始まる可能性がある。そうなると、この参院選で選ばれる議員は任期中、憲法に正面から向き合うことになる。
 現実的な課題になってきた改憲の行方を、今回の一票が左右するかもしれない。それだけに、各党は憲法についてもっと見解を示し、議論を戦わせてもらいたい。
 憲法は今年で施行六十年を迎えた。戦後日本の平和や繁栄の基礎になってきたことは明らかだが、「時代にそぐわなくなっている」との声も高まっている。
 護憲か、改憲か。見直すとすれば、どこをどう見直すのか。あらためて各党の立場を知る格好の機会なのに、選挙期間中、踏み込んだ考えが示されないようでは、有権者は判断のしようがない。とくに、首相には、自らの見解を具体的に示してもらわないと困る。
 投票日が迫っているが、まだ時間はある。暮らしに直結する課題とともに、国の根幹にかかわる憲法について、もっと語るべきだ。


(7月26日(木) 信濃毎日新聞社)
07参院選 安保政策を見極めよう
参院選で論議を深めるべき課題の一つが安全保障だ。安倍晋三首相が掲げる「戦後レジーム(体制)からの脱却」の根幹にかかわる分野である。
 首相は、自衛隊を積極的に活用しようと、着々と手を打ってきた。たとえば防衛省である。
 ことし1月、防衛庁から昇格した。このときに自衛隊の海外派遣も、付随的任務から本来任務に格上げされた。いまもイラクやインド洋で自衛隊が活動中だ。
 ここでとりわけ重要になるのが、集団的自衛権の問題である。公海上で自衛艦近くにいる米艦が攻撃されたとき、自衛艦が米艦と一緒に反撃するケースなどが想定される。日本政府は憲法解釈で、行使は禁じられているとしてきた。
 安倍政権下で憲法解釈を見直す動きが加速している。首相が設置した有識者懇談会だ。もともと行使容認に前向きなメンバーを集め、解釈変更の地ならしを進めている。
 集団的自衛権の問題は、本来なら一部の有識者でなく、国会で議論を尽くすべきテーマだ。行使に道を開くには、憲法改正の手続きが必要だ、と考える人も多い。
 参院選はこの問題を問う絶好の機会である。日本の針路にかかわってくる。各党・候補者は考えを明らかにすべきだ。
 各党のマニフェスト(政権公約)を点検したい。
 自民党は「集団的自衛権の問題を含め、憲法との関係を整理し、安全保障の法的基盤の再構築を行う」と行使容認に前向きだ。
 これに対し、共産、社民の両党はともに、集団的自衛権の行使をめぐる憲法解釈の変更に反対を強調している。戦力不保持をうたう9条は堅持する立場だ。
 野党第一党の民主党はあいまいさを残す。「主体的な外交」をマニフェストにうたうが、集団的自衛権には触れていない。国民新党、新党日本も集団的自衛権の問題に対する姿勢は分かりにくい。
 公明党は、自民党と明らかな溝がある。なし崩し的な集団的自衛権の行使は認めないとの立場を、これまで示している。
 党の基本姿勢にかかわる問題である。連立を組む自民党との政策のずれをどうするか、分かりやすい説明が必要だ。
 県世論調査協会が今月中旬にまとめた調査結果で、集団的自衛権をめぐる憲法解釈の見直しを参院選で重視する、と答えた人は8割を超えた。関心は低くない。
 集団的自衛権行使に道を開くのが適切かどうか、安倍路線の是非を真っ正面から議論したい。


最近のマスコミ報道(07/07/25) 陸軍病院壕跡・九条の碑 志位委員長が訪問 沖縄・南風原
日時:2007725
陸軍病院壕跡・九条の碑
志位委員長が訪問
沖縄・南風原
 日本共産党の志位和夫委員長は二十四日、参院選最終盤の遊説で沖縄県を訪れたのを機に、移動の合間を縫い、那覇空港から東南に車で約四十分、南風原(はえばる)町の陸軍病院壕(ごう)跡を訪ねました。沖縄戦の惨状を今に伝える戦跡で、参院選の最大争点の一つ、憲法九条を守り抜く決意を新たにしました。
 一般公開されたばかりの20号壕の入り口に到着した志位氏は、南風原町の元町長、金城義夫氏に出迎えられました。二人は、「はえばる九条の会」などを中心に壕入り口付近に建立され、六月二十三日に除幕されたばかりの「憲法九条の碑」の前に立ちました。
 「南風原は当時は村でしたが、沖縄戦により、住民の43%が犠牲になりました」。こうのべる金城氏にたいし、志位氏は、「それだからこそ、憲法九条にたいする沖縄県民の思いは極めて深く、特別なのですね」と語りかけます。金城氏は、「本土復帰闘争は、憲法九条のある日本への復帰を願ってのものでした」と応じます。
 碑のすぐ横には、「鎮魂と平和の鐘」と名づけられた鐘も。志位氏はこれを四回、鳴らしました。
 志位氏は、横幅、高さともに二メートル足らずの壕に入り、ベッドが置かれていたとされる場所や、火炎放射器で焼かれたと思われる天井部分や支柱などに目を凝らしました。ひときわ真剣な表情になったのは、天井に刻まれた「姜」という文字を見つけたときで、「朝鮮人兵士が、恐らく望郷の念もあり彫ったのでしょうか」と思いを巡らせました。
 上空で米軍ヘリが騒音を振りまく中、訪問を終えた志位氏は、「『ひめゆり学徒』の方々もここで働いていたとのことです。沖縄の地上戦の惨害、悲惨さがよみがえってくる思いで見ました。あの戦争で日本全国がどこでも大変な被害を受けたけれども、とくに広島、長崎、そしてこの沖縄の体験は、九条を生み出す上での大事な原点の地だということを実感しました」と語りました。
 南風原陸軍病院 約三十の壕からなり、米軍の艦砲射撃が始まった一九四五年三月下旬から使用されました。いわゆる「ひめゆり学徒」二百二十二人と教師十八人も看護補助要員として動員されました。米軍上陸後の同年五月下旬には本島南部への撤退命令が出され、その際、重症患者には青酸カリが配られ、自決の強要がおこなわれたとされます。
 南風原町は陸軍病院壕を文化財に指定し整備をすすめ、今年六月十八日に一般公開を開始しました。

(2007/07/25  西日本新聞)
土俵際社共「護憲」頼み 埋没警戒 民主を批判 野党共闘より生き残り
参院選も終盤に入り、報道各社の世論調査で苦戦が伝えられる社民、共産の両党が「護憲」を前面に打ち出し、同じ野党の民主党批判を強めている。自民、民主の2大政党対決がクローズアップされているうえ、「年金問題だけでは票が民主党に流れる」(社民党の福島瑞穂党首)と判断したためだ。両党は国政選挙で退潮傾向が続くだけに、野党共闘より党の生き残りを優先させた、厳しい戦いとなっている。
 22日昼、夏祭り「小倉祇園太鼓」の見物客らが行き交う北九州市のJR小倉駅に、社民党名誉党首の村山富市元首相(83)が立った。約20分間の演説を淡々とした口調で始めた村山氏だが、憲法に話題が入ると声を張り上げた。
 「この選挙は憲法改正の発議を阻止するための戦いだ。民主党の中には改憲賛成派も多い。自民、民主の改憲反対派と結合して阻止する。社民党はそのための原動力になりうる」
 途中、小雨が降り始めたため支援者が差し出そうとした傘を手で制し、ビール箱の上で訴え続ける村山氏。今回は激戦となっている地元大分選挙区を中心に、公示後は富山、新潟両県へも足を延ばすなど精力的に動き、この日も北九州市内5カ所で演説をこなした。
 だが、村山氏は自社さ政権下で首相だった1994年、「自衛隊は合憲、日米安保は堅持」と、それまでの党方針を転換。党の求心力が低下するきっかけとなった、と指摘する声は多い。
 村山氏の存在は護憲を訴える際のアキレスけんにもなりうるが、社民党福岡県連合関係者は「村山氏の平和への思いは並々ならぬものがある。安倍政権は海外派兵に踏み出すのでは、という危機感を肌で感じている」とその胸中を代弁する。
 福岡選挙区に立候補した共産党新人も22日、福岡市・天神でハンドマイクから訴えた。「自民・公明は憲法改悪の動きを強めている。民主も同じ方向にある」
 選挙戦では「確かな野党」をキャッチフレーズに存在感を示そうとしたが、世論調査を受け、「民主党への票の流れを食い止めるために、民主との違いをもっと訴えたい」(陣営幹部)と戦略を立て直した。ただ、「改憲」は年金問題にかすんでいるうえ、「憲法と民主批判では社民、共産が食い合うだけ」との冷めた見方も。戦略転換が吉と出るか否か‐。「確信はもてないが、とにかく走るしかない」(社民関係者)戦いが続く。

('07/7/24中国新聞)
7参院選
 安保 「専守防衛」が問われる憲法改正と並び、国の針路を大きく左右するはずの安全保障をめぐる論議が、選挙戦終盤になっても盛り上がりを欠いている。今回、最大の争点と位置づけられる「年金問題」は、国民の暮らしに直結するだけに有権者の関心が高いのも当然だが、防衛論議もないがしろにできない。
 沖縄や岩国など、関係自治体で摩擦が絶えない在日米軍再編問題を含め、有権者が国政に直接、意思表示ができる貴重な機会である。これまでにも増して重い一票といえる。
 この参院選で、安保論議を先送りできないのはなぜか。選挙後、防衛政策に関し後戻りのできない安倍晋三首相の決断が下される可能性があるからだ。
 政府の有識者会議「安全保障の法的基盤に関する懇談会」(座長・柳井俊二前駐米大使)が、今秋をめどに集団的自衛権行使について容認する方向で意見を集約しつつある。日米同盟の強化を目指す安倍首相の思いを反映しているとされる。
 歴代政府が禁じてきた集団的自衛権の行使容認に踏み切れば、「専守防衛」の鉄則が有名無実になることもあるのではないか。国民投票で憲法改正の是非を問う前に、「解釈改憲」で最後の一線を越えて平和憲法の命脈が断たれてしまうことはないのか。それでは国民投票をする意味も水泡に帰すことになりかねない。
 首相や自民党幹部は、選挙公約の最初に「新憲法制定の推進」を掲げる以上、選挙期間中に防衛方針をわかりやすく具体的に示す必要があるのではないか。
 「平和の党」を旗印に連立を組む公明党は、なし崩し的な集団的自衛権行使は容認できないとの立場を取っている。選挙後の対応を含め、存在価値が問われそうだ。
 野党第一党の民主党も、意見の分かれる党内事情を反映するように主な争点に据えようとの気構えは見受けられない。政権交代を唱えるのなら、与党との対抗軸をもっと明確にしてもらいたい。
 「九条を守れ」との共産党や社民党の訴えは、どれだけ有権者の心に届いただろうか。国民新党や新党日本の主張は説得力を持ち得るか。
 有権者は、外交方針を含め各党の防衛の在り方を示した選挙公約に目を凝らし、候補の訴えに耳を澄ませたい。「専守防衛」をどう位置づけ、憲法に向き合っているか。それも大切な判断材料だ。

(2007年7月24日 沖縄タイムス)
社説   [参院選の争点]
不安解消の政策論争を
 過半数獲得を目指して与野党が激しくぶつかり合う参院選は、二十九日の投票まで一週間を切った。有権者の関心はかなり高い。 
 共同通信社の全国電話世論調査によると、今回の選挙に「関心がある」と答えた人は81・9%で、参院選としては過去最高を記録。沖縄タイムス社と朝日新聞社が県内の有権者を対象にした調査でも89%の人が「関心がある」と答えている。 
 この数字の背後から聞こえてくるのは、政治の現状に対する有権者の強い怒りと、、将来の生活不安を訴える悲鳴にも似た声である。 
 投票する判断材料として年金問題を「重視する」と答えた人が県内では90%に達した。かつてないほど高まっている怒りや不安にどう答えるかが選挙終盤の大きな論点になりつつある。 
 安倍晋三首相は就任以来、ことあるごとに「戦後レジーム(体制)からの脱却」を訴え、国民投票法の制定、教育基本法の改正、集団的自衛権に関する政府解釈の見直し作業などに力を注いできた。年頭の記者会見では、憲法改正を参院選の争点にしたい、と明確に語っている。 
 だが、首相の思惑は年金問題の急浮上、「政治とカネ」をめぐる疑惑、閣僚の相次ぐ不適切発言などで吹っ飛んでしまった。 
 安倍政権は改憲の争点化に失敗し、民主党が争点化した「国民の生活が第一」という土俵で戦わざるを得なくなったのである。 
 景気回復というけれども、地方の中小企業や零細企業にはその実感がない。企業は儲けたというけれども、低賃金を強いられる非正規雇用の人たちにその恩恵は届かない。 
 地方分権というけれども、地方交付税が減らされただけで、それに見合った税源移譲も権限委譲も進まず、自治体はどこも火の車。医療の現場では患者が高負担に悩んでいる。 
 新自由主義的な経済政策の中でさまざまなひずみがこの社会に生じている。暮らしの現場が疲弊し、制度への信頼が失われ、将来への不安が高まっている。 
 東京のような「勝ち組地域」からは見えにくいが、沖縄のような場所からはこのような社会のゆがみが実感として感じられる。 
 これらの暮らしの問題にどのような政策で対処していくのか。それが「生活の争点化」ということではないか。 
 政策の光と影をぶつけ合うような論争ではなく、まん延する影の部分をどうするかの政策論争が深まることを期待したい。

(7月25日20時39分配信 毎日新聞)
<参院選>「総裁責任論」封印、続投に強い意欲 安倍首相
参院選で劣勢が伝えられる与党で、負けても安倍晋三首相(自民党総裁)の続投を支持する意見が相次ぐなか、首相の遊説にも公示前に言及した「総裁責任論」を封印し、政権維持に意欲をうかがわせる変化が生じている。首相は一貫して勝敗ラインは明示しておらず、逆風を戦い抜き、選挙後も国政を担当する「決意」を前面に打ち出してきた。【佐藤千矢子】
 首相発言は、各報道機関の世論調査で与党の苦境が報じられた先週後半ごろから変わり始めた。
 19日の鹿児島県霧島市の演説で、首相は同市出身の元大関・霧島が引退後に半生をつづった著書「踏まれた麦は強くなる」を紹介しながら、「踏まれた麦は強くなる。私も厳しい逆風の中だが、正々堂々と政策を訴え、戦い抜く覚悟だ」と強調。さらに「たくさんの皆さんにお集まりいただき、厳しい状況なだけに本当にうれしい。国民の意見に真しに耳を傾け、今後の政策に反映させていかなければならない。決意を新たにした」と続投への意欲も表明した。
 以後、「決意を新たにした」は毎回のように演説の前半で語られ、25日の北陸3県の遊説でも首相は「国民の切実な声に耳を傾けながら今後の政策に反映をさせていかなければいけない決意を新たにしている」(福井県)と力説した。首相周辺は、首相の今の心境について「自民党の獲得議席が30議席台でも退陣しない」と解説する。
 もともと首相は、今回の参院選を「政権選択」選挙と位置づけていると受け取れる発言を繰り返してきた。1月4日の年頭記者会見で「私の内閣として憲法改正を目指していきたいということは、当然、参院選でも訴えていきたい」と述べ、憲法改正を参院選の争点に掲げた。首相の意識は、自民党の中川秀直幹事長が「参院選は政権の中間評価の選挙」(6月24日のテレビ朝日の番組)と語ったのとは程遠いものがある。
 7月1日には首相は「参院選で、私と小沢さんとどっちが首相にふさわしいかも国民の考えをうかがうことになる」(21世紀臨調主催の党首討論)と踏み込んだ。だが本来、憲法改正などを問う「正攻法」で戦いたかったという首相の思いは、年金記録漏れ問題や相次ぐ閣僚の不祥事の前に空回り気味だ。12日のNHK番組では、小沢氏と「どっちが首相にふさわしいか」から「どちらが本当のことを言っているか」と言い換えた。首相は政権選択選挙のような意気込みを示しながら、そうかと問われれば、進退に直結するだけに明言を避けざるを得ないという、ジレンマに陥った。
 ついに塩崎恭久官房長官が24日の会見で「参院選は政権選択の選挙ではない」と発言。塩崎長官は同日の街頭演説で「政権を選ぶ選挙の時には、両方がこの国をどうするかをはっきり出してないといけない。『安倍自民党』になって国をどうするかというビジョンも方法論も出しているが、彼ら(民主党)は対処療法だ」と首相の悔しさを代弁しているようだった。



最近のマスコミ報道(07/07/24)  安倍首相続投へ環境整備
日時:2007724
[2007年7月24日20時12分 日刊スポーツ]
安倍首相続投へ環境整備
 政府、自民党は24日、参院選で与党が過半数割れしても安倍晋三首相の引責辞任は必要ないとの判断を固め、党幹部らが退陣不要論を展開するなど、安倍政権継続への「環境整備」を本格化させた。参院選後は首相続投を前提に9月までに内閣の大幅改造と自民党役員人事を断行、人心一新により挙党態勢を確立した上で、秋の臨時国会に臨む方向で調整する。
 敗北でも首相退陣を不要とするのは、全党的な支持を得られる「ポスト安倍」候補が不在であることに加え、首相交代を急いでも「政局混乱を助長するだけ」(党幹部)との見方を強めたためだ。ただ自民党の獲得議席が40台前半から30台まで落ち込めば、党内で退陣論が高まることも想定され、安倍首相は選挙結果や世論の動向を見極めながら進退を最終判断するとみられる。
 党執行部は先週末、各種調査で与党苦戦が伝えられたのを踏まえ、首相周辺に「敗北でも首相続投を支持する」との見解を伝え、続投への環境整備を図ることで一致。
 これを受けて、塩崎恭久官房長官と自民党の中川昭一政調会長は24日、参院選は「政権選択選挙ではない」との観点から、結果にかかわらず退陣は不要との考えを表明。23日には小泉純一郎前首相、渡辺喜美行政改革担当相も同様の認識を示している。
 参院選後の政治日程については(1)8月上旬にも参院の構成を決める臨時国会を召集、3日程度で閉会しお盆休みを挟んだ政治休戦に入る(2)8月下旬〜9月上旬に、安倍首相がインド、東南アジア歴訪や、シドニーでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議出席などの外交日程をこなす(3)9月中旬に人事刷新を行い、秋の臨時国会を召集する−との案が有力だ。

(2007年07月24日 21:21 発信地:東京AFP BBニュース)
官房長官、参院選敗北でも安倍首相続投を示唆
【7月24日 AFP】塩崎恭久(Yasuhisa Shiozaki)官房長官は24日の記者会見で、29日に投票が行われる参議院選挙の結果によって安倍晋三(Shinzo Abe)首相が退陣することはないと明言した。
 塩崎官房長官は、「参院選は政権選択の選挙ではない。今回も例外ではない」と強調した。衆議院で連立与党が過半数を大幅に上回っていることを念頭に置いた発言。
 また、自由民主党(Liberal Democratic Party、LDP)の中川昭一(Shoichi Nakagawa)政調会長も別の記者会見で、今回の選挙について「首相が辞める辞めないというのは別次元だ」とし、首相の進退問題には発展しないと強調した。
 ただし、3年ごとに半数が改選される参院選挙は、与党への信任を問う国民投票とみなされる場合が多い。1998年の参院選では与党が惨敗し、橋本龍太郎(Ryutaro Hashimoto)首相(当時)は退陣に追い込まれたが、それについて塩崎官房長官は「その時々の政権の判断だ」と一蹴した。
■自民敗北なら安倍首相不支持も
 一方、一部の自民党員は、参院選で連立与党が敗北した場合、安倍首相を支持しない意向を示唆している。
 NHKによると、渡辺喜美(Yoshimi Watanabe)行政改革担当相は23日夜に、「最終的に(政権運営が)行き詰まって、にっちもさっちも行かなくなれば政権選択になる」と発言した。
 政治評論家の有馬晴海(Harumi Arima)氏は、今回の選挙で自民党が大敗した場合には、安倍首相たたきに回る自民党議員も出てくると予想。中川政調会長などの首相側近は、選挙結果は安倍政権に影響しないと言い続けているが、衆院議員の間には不安が広がっていると指摘した。
 有馬氏はまた、安倍首相が引責辞任しない場合、次の衆院選で自民党が不利になるだろうとも述べた。
■苦境に立つ安倍首相
 安倍首相は、小泉純一郎(Junichiro Koizumi)前首相の後任として2006年9月に就任。当初は小泉前首相から引き継いだ過半数の議席を武器に、自身の信念に近い保守思考を推し進め、例えば第2次世界大戦以降タブーとなっていた、学校での「愛国心」教育を要求した。
 しかし世論調査では支持率が低下。社会保険庁が「消えた年金問題」の責任を認めたことを受け、選挙戦の焦点を切り替えた。高齢化が急速に進む日本では、年金問題は非常に重要となっている。
 最近の世論調査では、一連の閣僚の問題発言や不祥事を受けて安倍首相の支持率は約30%にまで落ち込んでいる。
 中川政調会長は「この時期に支持率が低いというのは非常に厳しい。しかし、これまでやってきたさまざまな改革については、批判よりも評価の方が高いと思っている」と強調。安倍首相の支持率低下については「問題は別のところにある」とし、閣僚の相次ぐ不祥事が原因だとの見方を示した。
 安倍首相に明確な後継者がいないことから、毎年首相が交代した1990年代のような、不安定な時代に逆戻りするのではないかとの憶測も広まっている。(c)AFP/Kyoko Hasegawa

(2007年7月24日(火)「しんぶん赤旗」)
自衛隊の海外進出
憲法の制約を減らす
NYタイムズ 国民監視言及
【ワシントン=鎌塚由美】米紙ニューヨーク・タイムズ(二十三日付)は、海外進出する自衛隊を取り上げ、米軍との行動が「かつてなく密接」になっていると指摘。米国は日本の「変化を歓迎しつつもさらなる変化を求めている」と伝えました。
 グアムのアンダーセン空軍基地発の記事は、冒頭で六月に同地で実施された航空自衛隊と米軍による空対射爆訓練の様子を紹介。航空自衛隊がファラロン・デ・メディニア島に「五百ポンド爆弾の投下訓練を行った」と伝えています。また、F2戦闘機が初めて「配備」されたことに触れ、今回の訓練は「戦争を放棄し、自衛のみの武力を持つとした憲法の制約がある日本にとっては極めて重大」なものであったと伝えました。
 記事は、「(グアムのある)ミクロネシアからイラクまで、日本の軍隊は、できないことのリストの項目をどんどん線を引いて消していっている」とし、二〇〇一年の9・11同時テロ以降の、インド洋への海上自衛隊の派遣やイラク戦争での派遣は「第二次世界大戦後で最も大きく、かつてなく米軍と密接になった」と指摘。それらが「北東アジア諸国の神経をいら立たせている」とも伝えました。
 防衛省について言及するなかで、「日本国内の反戦世論を懸念した自衛官が、批判的な反戦活動家やジャーナリストをひそかに見張っていたことを認めた」とし、「告発文書は日本共産党が最近入手した」ものであることにも言及しました。


07参院選 憲法を素通りするのか(信濃毎日新聞)  憲法 白紙で委任はできない(中国新聞) (07/07/23)
日時:2007723
(2007年7月23日(月)「しんぶん赤旗」)
首相、街頭で改憲訴え
 自民党の安倍晋三首相は二十二日、都内の街頭演説で、「みんなで議論をして新しい憲法に変えていこうじゃありませんか」と憲法改定を訴えました。
 首相は「通常国会で国民投票法が成立した。新しい日本をつくっていくために、新しい憲法について、国民みんなで議論をしていく。そういう時代がやってきた」と強調しました。
 自民党は参院選のマニフェストの第一項目に「新憲法制定の推進」を掲げていますが、首相自身はこれまでの演説では、改憲手続き法の成立を実績として語るものの、公然と改憲を訴えてはいませんでした。

(2007年7月23日(月)「しんぶん赤旗」)
集団的自衛権「懇談会」
9月にも行使容認提言
首相に「憲法解釈の自由」
 歴代政府が憲法違反と判断してきた集団的自衛権の行使を検討する「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(座長・柳井俊二前駐米大使)は、六月二十九日の第三回会合で前半が終了しました。公表された議事録や関係者の話から、首相に「憲法解釈の自由」を与える狙いが浮き彫りになってきました。(竹下 岳)
 懇談会は安倍晋三首相が示した集団的自衛権の行使に関する四類型のうち、(1)公海で併走中の米艦船が攻撃を受けた場合の自衛艦の応戦(2)米国に向けて発射された弾道ミサイルの迎撃―の検討を終え、九月にも集団的自衛権の行使容認を提言する方針を固めています。
 自民党も参院選政策で「個別具体的な類型に即し、集団的自衛権の問題を含め、憲法との関係を整理し、安全保障の法的基盤の再構築を行う」と公約しています。
 懇談会関係者は、「もともと懇談会は現行憲法下における集団的自衛権の解釈変更を主題にしている」と述べ、「行使容認」を当然視しました。
 「米国に向かう弾道ミサイルを我が国が撃ち落とすことが可能なのに撃ち落とさないことは、我が国の安全保障の基盤である日米安保体制の根幹が揺らぐため絶対に避ける必要がある」(第三回会合議事録)という発言のように、論証抜きに集団的自衛権の行使を主張する出席者が少なくありません。
米戦略に沿い
 日本が集団的自衛権を行使しないという立場を取ってきたのは、これまではよかったが、「安全保障の環境が変わった今日では様々な問題点をもたらしている」(第二回会合、六月十一日)という意見も出ています。
 “米国の戦略が変わったから、それに従うために集団的自衛権の行使を容認すべきだ”という議論が、政治論ではなく法的な議論として行われているのです。
 前出の関係者は、政府解釈の整理などを担当する内閣法制局を「集団的自衛権の行使に反対する最後の抵抗勢力」と位置づけ、こう語ります。「内閣法制局は内閣のための法制局だが、実際は法制局が政策の枠組みをつくり、歴代内閣もそれに従ってきた」
 一九九〇年代以降、政府は米国の要求に沿って自衛隊の海外派兵を進めてきました。内閣法制局も武力行使と一体とならなければ海外派兵も「合憲」とする解釈を示してきました。しかし、集団的自衛権行使の容認までは踏み切ることができず、自衛隊の活動内容は制限されています。
 これを覆し、「米国と肩を並べて海外で武力行使する」(安倍首相)同盟を実現するため、内閣法制局を「抵抗勢力」とみなして攻撃することによって、首相の判断で自由に憲法解釈を変えられるようにしようとしているのです。
法治主義脅かす
 これについて浦田一郎・明治大学大学院教授(憲法学)はこう指摘します。「歴代政権がなぜ、集団的自衛権の行使に踏み切れなかったのかをまともに検証せず、『時代が変わったから』といって過去の蓄積をご破算にするのは、法的な安定性を脅かし、法治主義・立憲主義の根幹を揺るがす考え方です」
 次回の懇談会は参院選終了後の八月八日に開催されます。「安倍首相は今後も毎回、出席する意向」(政府関係者)で、憲法改悪につながる集団的自衛権の行使実現のため、政権維持に執念を燃やしています。
 しかし、集団的自衛権に関する政府解釈は「今のままでいい」と答える人が六割を超える(「東京」四月十四日付)など、国民の大多数は行使容認に反対しています。
 集団的自衛権 集団的自衛権について政府は、「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されてないにも関わらず、実力で阻止する権利」(一九八一年の政府答弁書)との見解を示しています。集団的自衛権は軍事同盟の法的基盤ですが、政府は「日本はこの権利を保持しているが、行使することは憲法上許されていない」(前出の答弁書)という立場にたってきました。米国からは「同盟の障害になっている」(アーミテージ元国務副長官)などの不満が示されています。

(7月22日(日) 信濃毎日新聞)
07参院選 憲法を素通りするのか
自民、民主の二大政党がそろって「争点隠し」に励んでいるかのようである。年金記録の後ろに隠れ、憲法問題の影がまことに薄い。
 「新しい時代にふさわしい憲法をつくるという意思を今こそ明確にしなければならない」。安倍晋三首相は今年の年頭記者会見でこう述べていた。そして「当然、参院選でも訴える」と、憲法改正を争点にする考えも示した。
 そんな発言を忘れたかのように、首相は選挙戦で憲法問題に触れようとしない。年金問題一本やりだ。政府は年金記録ミスを救済するための第三者委員会を大慌てでつくり、与党を支える。
 民主党も五十歩百歩だ。「参院選で憲法問題を掲げる緊急の必要性を認識していない」。小沢一郎代表は日本記者クラブ主催の11日の党首討論会で言い切った。
 二大政党が足並みそろえて避けて通るのでは、選挙で憲法論議が深まるはずがない。
 年金問題の火消しに精いっぱいで憲法どころではない、というのが自民党の正直なところだろう。民主党は党内に改憲賛成、反対両方を抱え、党としてはっきりした方針を打ち出しにくい事情がある。
 憲法改正が議論されなければ、それはそれで結構だ。こんなふうに考える人がいるかもしれない。
 施行から60年。憲法は平和で豊かな暮らしのために、しっかり働いてきた。今も働いている。われわれ国民としては、時代に合わせて憲法を使いこなし、条文に新たな息を吹き込むことを考えればいい…。
  <舞台は整っている>
 ところが、憲法をめぐる状況に目をやると、そんな悠長なことは言っていられないことが分かる。
 改正の手続きを定める国民投票法が先の国会で成立した。改憲案の発議が可能になる2010年5月をにらみ、次の国会には衆参両院に憲法審査会が設置される。参院選が終われば改憲論議はいや応なく進むと考えねばならない。
 そもそも、安倍内閣そのものが「憲法を頂点とする戦後レジーム(体制)の見直し」を掲げて発足した政権である。この選挙をどうにか乗り切れば、2年前の「郵政選挙」で手にした「数の力」を頼みとして、改憲論議を加速させるのは目に見えている。
 反対に与党が数を減らし、護憲政党が伸びれば、憲法問題は別の展開をたどるだろう。
 今度選ばれる議員は、6年の任期の間に改憲論議に具体的にかかわる可能性が高い。憲法論議の今後を左右する選挙になる。選択眼をしっかり働かせたい。
  <各党の違い大きく>
 ここで、憲法改正問題に対する主要政党の政策、姿勢を、おさらいしておきたい。
 改憲姿勢をいちばんはっきりさせているのが自民党だ。参院選公約の1番目に「新憲法制定の推進」を明記。「2010年の国会において改憲案の発議をめざし国民投票による承認を得るべく、国民運動を展開する」と打ち出した。
 国民投票法は、改憲案の投票は「関連する事項ごとに区分して行う」よう定めている。この仕組みだと、自民党が自分の改憲案を丸ごと国民投票にかけるのは不可能だ。新憲法草案のうち、どの部分を国民投票にかけようとするのか、自民党ははっきりさせる必要がある。
 公明党は「加憲」を掲げ、自民党の改憲路線とは一線を画す。基本政策のずれをどうするのか、連立を組む自公両党にはより踏み込んだ説明が求められる。
 野党の民主党は、2年前に党としてまとめた憲法提言を基に「国民と自由闊達(かったつ)に論議する」−との立場だ。憲法を変えるのか変えないのか、九条についてどう考えるのか、はっきりしない。
 衆参両院の憲法審査会で改憲論議が始まろうというこの時点で、こんなあいまいな姿勢しか取れないのでは、民主党は政権担当の覚悟を疑われても仕方ない。
  <関心は低くない>
 共産、社民の両党は、「憲法改正」や「九条改憲」に反対する姿勢を鮮明に打ち出している。
 国民新党は前文、九条の精神を守りつつ「自主憲法」制定を目指す姿勢を掲げる。新党日本は「国際救援隊」を創設し、九条三項に規定すると主張する。
 重視する政策は何ですか−。有権者にこう問い掛ければ、普通はどの選挙でも、暮らしにかかわる分野が上位を占める。信濃毎日新聞が先日行った県内世論調査でも、トップは「年金」、2番目は「介護・高齢者福祉」となっている。
 その次、3番目に挙がったのは「憲法改正」だった。2つ以内の複数回答で、17・8%が「重視する」と答えている。「医師不足」や「教育」よりも多かった。
 憲法改正に県内有権者が寄せる関心は決して低くない。そう受け止めるべきだろう。九条を変えるのか変えないのか、踏み込んだ論戦を各党に認める。
 同じ党の候補者でも、憲法についての考えは違うことも多い。憲法問題は政界再編につながる可能性もはらむ。候補者一人一人の主張に注意深く耳を傾けることも大事になる。

('07/7/22 中国新聞)
’07参院選 憲法 白紙で委任はできない
憲法改正の手続きを定めた国民投票法が先の国会で成立した。施行される二〇一〇年五月以降は、改憲案の提出や審査が解禁となる。この参院選で選ばれる議員は、改憲を本格的に議論する可能性のある初めての顔ぶれである。にもかかわらず選挙戦で憲法の議論が深まらないのが気になる。
 きのうの多くの新聞に、自民党と民主党の意見広告が載った。年金や公務員制度、農業などの訴えが並んだが、いずれも憲法には触れていなかった。
 「戦後レジーム(体制)からの脱却」を掲げる安倍晋三首相は、早くから改憲を参院選の争点にすると表明していた。自民党は公約のトップに「新憲法制定の推進」を据えた。目指す国の姿があいまいなだけに、どんな主張をするのかと興味もあった。
 それが公示後は、年金や政治資金の問題で逆風にさらされ、防戦一方のようだ。憲法論議に関しては肩透かしの感は否めない。
 連立与党として公明党は、憲法に環境権などを加えた「加憲」を打ち出す。「論憲」の民主党は党内に改憲と護憲の主張が混在し、明確な方向は示していない。ただ一時は三党で投票法の修正協議を進めていた経緯も無視できない。
 一方で護憲派の声は大きい。共産党は「九条を守れ、の一点で多数を結集しよう」、社民党は「平和と民主主義を壊し、憲法を変えようとする最悪の内閣打倒を」などと、真っ向から挑む。もっとも相手が応じないままでは、実りある論戦といえるかどうか。
 この選挙後の国会で、衆参両院に憲法審査会を設置し、議論だけは始めようとする動きもある。憲法問題を白紙委任するわけにはいかない。限られた争点で投票した結果がどうなるかは、一昨年の「郵政選挙」で圧倒的な多数を得た与党の、強引な国会運営を見れば明らかだろう。
 中国地方の候補者たちが新聞社のアンケートなどに寄せた回答のなかには、公認や推薦を受けた政党との温度差もうかがえる。無所属候補の訴えはさまざまだ。選ぶ際の参考になろう。
 二度と戦争をしないと誓って六十年前に施行された憲法である。平和と繁栄に大きな役割を果たした。今後も世界に掲げる理想として持ち続けるのか、北朝鮮の核やテロの脅威にさらされる時代にそぐわなくなったのか。議論に時間をかける道もあろう。幅広い視野で考えて一票を投じたい。

(2007年07月21日土曜日 河北新報社)
’07参院選を問う 憲法/各党は争点明確化に努めよ
 憲法問題が参院選の鮮明な争点になっているかというと、そうとは言えない。公示直前から気になっていたが、自民党も民主党も憲法改正をめぐる各党間論争に後ろ向きに見える。
 年金問題などの風圧が強い自民党は「憲法は票にならない」と、自主憲法制定の党是や「憲法を参院選の争点に」とした安倍晋三首相の約束をどこかにしまい込んでしまった観がある。
 民主党の小沢一郎代表も公示前日の党首討論会で「参院選で憲法問題を掲げる必要性を私は認識していない」と述べ、憲法論戦に冷水をかけてしまった。
 こうした憲法問題の争点外しは二つの点で納得がいかない。
 参院選で「年金」に関心が集中しているのは確かだが、有権者は暮らしの問題だけでなく、「政治とカネ」や安全保障・平和の問題を含めて「国の針路をどう取ったらいいのか」「国の形をどうつくるのか」といったトータルな問いかけをしようとしているのではないのか。
 憲法は大事な問いかけの一つのはず。それを欠くことは有権者に目隠しをするのに等しい。これが納得できない一つだ。
 二つ目は、先の国会で成立した国民投票法(憲法改正手続き法)に関係する。安倍内閣は衆参両院のそれぞれ3分の2の同意が要る改憲発議を2010年に目指すので、この参院選は任期中に初の発議にかかわる参院議員を選ぶ選挙になるのだ。
 国民の憲法観は10年以降の国民投票時にいきなり問われるのではない。それは、この参院選を皮切りに国民投票まで行われる何回かの国政選挙を通して3分の2の合意勢力または反合意勢力を選ぶ過程で問われる。
 これだけ国民投票と深くかかわる今回の選挙で憲法を語らないわけにはいかないだろう。
 新憲法草案をたたき台とした「改憲」の自民、不足点や改正
点を補い改める「論憲」の民主、環境権などを重視する「加憲」の公明、争点化に積極的な「護憲」の共産、社民、自主憲法の国民新…。有権者は各党の立場と主張を比較したいのだ。
 その上で、自民、民主の両党にあらためて注文がある。
 安倍政権は衆参両院の3分の2の改憲発議勢力が不可欠な将来の明文改憲とは別に、首相の肝いりでつくった政府の有識者会議「安全保障の法的基礎に関する懇談会」で日米同盟強化に向けた集団的自衛権行使の容認を柱とする解釈改憲の道をこの秋までに開こうとしている。
 少なからぬ世論は解釈改憲路線が暴走しないか危うさを感じている。安倍首相はこれを否定するなら、明文改憲と解釈改憲の関係を整理して示すべきだ。
 民主党の小沢代表は「憲法改正は国民の合意がなければできない」と繰り返し強調する。しかし、これは当たり前のことだ。
 国民投票法成立後にとりわけ政党に求められる役割は、党としての明確な憲法観と方針を持ち、国民的な合意を形成するための先頭に立つことだろう。
 「国民的合意」という言葉は決して党内意見を調整するための隠れみのではないのだから。 

(2007年07月23日 朝日新聞)
年金主役でかすむ改憲論議 参院選
 参院選は22日、選挙戦最後の日曜日を迎えた。安倍首相は選挙前、憲法改正を争点にすると力説したが、年金問題での逆風の中、憲法論議を主導した自民党候補者でさえ「改憲」を強調することはない。一方、護憲を訴える側には、党派を超えた連携の動きもある。 
 「国民投票法が成立した。新しい憲法を書こうじゃありませんか」 
 22日、安倍首相は東京都内での街頭演説でこう訴えた。しかし、自民党が05年に発表した新憲法草案には触れずじまい。選挙前はこの草案を参院選で広める考えを示していた。演説の大半は、年金対策や公務員制度改革の問題で、一緒に立った2人の選挙区候補は憲法自体に触れなかった。 
 今回の参院選では、同党で憲法改正論議をリードしてきた2人が立候補している。党憲法審議会会長代理を務める比例区の舛添要一氏と、参院憲法調査特別委員長として国民投票法案を可決させた、愛媛選挙区の関谷勝嗣氏だ。 
 舛添氏は演説では「自らの国を自らで守っていけるよう(戦力不保持を定める)9条2項を変えよう」と訴えるが、時間を割いて訴えるのは年金問題や子育て対策。関谷氏は街頭では改憲にほとんど触れない。改憲論議は「全く争点にならない」(舛添氏)、「国民の関心事じゃない」(関谷氏)と、ともにもどかしさを募らせる。 
 参院選後の国会では、衆参両院に憲法審査会が設置され、本格的な改憲論議が始まる。同審議会事務局次長の葉梨康弘衆院議員は「憲法審査会の構成を決める重要な選挙だということを、訴えなければならない」と主張してきた。 
 そんな問題意識から、党は「新憲法草案のポイント」と題した33ページの冊子を各候補に配った。しかし、奏功したとは言い難い状況だ。 
 葉梨氏は15日、地元茨城選挙区の党公認候補の応援演説に立った。 
 「憲法の問題をじっくり議論していく」。約5分の演説で、憲法に触れたのはこれだけ。「みんな年金問題で『はしか』にかかったみたいで、それしか頭にない。だから(憲法問題に)触れられない」。肝心の候補も「憲法は、今はしゃべる状況じゃない」と打ち明けた。 
■護憲訴え、超党派で連帯 
 護憲を訴えて連帯しようという動きもある。 
 「安倍政権の中で9条が危ない。なんとしても死守しなければならない」。社民党の比例区候補、上原公子氏は街頭演説は、いつも憲法問題で締めている。 
 元東京都国立市長の上原氏は立候補を打診された時、「9条を守るにはウイングを広げるべきだ」として、党に限定しない幅広い活動を求めたという。今月3日には東京選挙区の無所属、川田龍平氏とともに街頭演説。護憲をともに訴え「息子のような龍平君をよろしく」と呼びかけた。 
 安倍政権の掲げる憲法改正への反対を掲げるミニ政党「9条ネット」は自前の候補者だけでなく、川田氏の支持や愛媛選挙区の無所属、元プロサッカー選手の友近聡朗氏の推薦も決めた。同党事務局は「既存の枠を超えて様々な政党や候補が手を取り合って活動することこそが重要」としている。 
 22日、共産党の東京選挙区候補、田村智子氏は東京・銀座の街頭で「憲法を守り抜く議席を何としても勝ち取らせて下さい」と訴えた。同党の候補も各地で護憲を訴えている。 


最近のマスコミ報道(07/03/28) 参院選 各党公約 憲法
日時:2007723
共同通信ニュース特集:第21回参議院選挙
各党公約のうち、「憲法」部分

(自民党)
 自主憲法の制定は、1955年のわが党立党以来の党是である。わが党は、2005年11月に「新憲法草案」を公表し、今年5月には、「日本国憲法の改正手続に関する法律案」を成立させた。今後は、次期国会から衆参両院に設置される「憲法審査会」の議論を主導しつつ、2010年の国会において憲法改正案の発議をめざし国民投票による承認を得るべく、新憲法制定推進の国民運動を展開する。
(民主党)
国民主権、基本的人権の尊重、平和主義という現行憲法の原理を大切にしながら、真に立憲主義を確立するという観点から、現行憲法に足らざる点を補い、改めるべき点を改めることを責任を持って提案します。国民の皆さんとの自由闊達な憲法論議を深め、国民の多くが改正を求め、かつ、国会内の広範かつ円満な合意形成ができる事項があるかどうか、慎重かつ積極的に検討します。
(公明党)
 次期国会で衆参両院に設置される憲法審査会での議論を深め、国民的な議論を喚起します。また、憲法審査会での3年間の議論を踏まえ、3年後を目途に加憲案をまとめることをめざします。
(日本共産党)
憲法改悪に反対し、9条を守る。9条改定のねらいは海外で戦争する国をつくることにあり、国連憲章の平和のルール確立を求める世界の流れへの逆行である。安倍内閣は、明文改憲の前にも集団的自衛権をめぐる政府の憲法解釈を変更して武力行使に道を開こうとしているが、これにも反対する。日本は憲法にそって平和外交に全力をあげるべきだ。憲法の全条項を完全実施し、国づくりに活かす。
(社民党)
憲法は「不磨の大典」ではないので、国民が望むのであればよりよいものに改正することもありえるが、憲法によって縛られる側である首相・政権党の側から改憲を持ち出すことは許されない。とくに米国のいいなりに第9条を変えようとする自民党の目指す方向には断固反対。戦力の不保持と交戦権の否認を定めた憲法は世界に誇るべき日本の平和主義の象徴であり、なんとしても守りぬきたい。
(国民新党)
 現実との間に大きな乖離が生じるなど、憲法は見直しの時期を迎えており、「新しい人権」や「衆参両院の機能分担」などを加筆し、自主憲法を制定することには賛成である。しかし、憲法改正作業は幅広い国民的な議論と合意を踏まえて慎重に進めるべきものであり、期限を設けたり、政争の具として用いたりすることにはなじまない。なお、第9条に関しては、その精神の堅持を絶対条件とする。
(新党日本)
いかなる日本を目指すのか、その具体的提案も議論も行われぬまま、憲法さえ変えればバラ色の未来が到来するかの如き論法は、ハコモノさえできれば地域が活性化するとの幻想と同根。憲法第9条の第1項、第2項を堅持した上で、地震・津波等の天変地異、戦禍や内乱に巻き込まれた地域での救助活動や医療支援、住宅再建へ駆け付ける、富国強兵とは対極の「国際救援隊」を創設し、平和に貢献する。


最近のマスコミ報道(07/07/20) 民主党 憲法問題 争点化避けるのは 「提言」で海外の武力行使容認へ
日時:2007720
(2007年7月19日(木)「しんぶん赤旗」)
民主党
憲法問題 争点化避けるのは
「提言」で海外の武力行使容認へ
 自民党が政権公約のトップに二〇一〇年の改憲発議を掲げるなか、これに対抗する旗印を立てられる政党はどこかが問われています。
 日本共産党は安倍・自民党の改憲の狙いが「アメリカと肩を並べて武力行使をすることにある」と暴露。「世界の宝」ともいうべき憲法九条を守るため、思想、信条、党派の違いを超えた共同を発展させるために奮闘しています。
 一方、民主党はどうでしょうか。「憲法改正より生活維新」などと年金問題を前面に出して、改憲問題の争点化を避ける姿勢を示しています。
 しかし、決して改憲に消極的な立場ではありません。むしろ、先の通常国会で成立した改憲手続き法をめぐって自公民共同を一貫して主導するなど、自民党と改憲姿勢を競い合い、その立場を深化させた“実績”があります。
 「国民生活が向上するなら憲法改正すればいい」「護憲とか改憲とかいう形式的対立はよくない」。民主党の小沢一郎代表は十一日の日本記者クラブ主催の党首討論でこうのべ、改憲を排除しない姿勢を明確に示しました。同党は、参院選のマニフェストの各論末尾で「2005年秋にまとめた『憲法提言』をもとに…自由闊達(かったつ)な憲法論議を各地で行(う)」と改憲への積極姿勢を示しています。
改憲より改憲的
 民主党にとって改憲の方向を明確にする転機となったのは、〇三年十月の総選挙です。このときのマニフェストに「憲法を『不磨の大典』とすることなく…国民的な憲法論議を起こし、『論憲』から『創憲』へと発展させます」としました。経済同友会から「国家像や政策体系がやや不明確」などとする「提言」を受け、当初マニフェストに記述のなかった「改憲」を盛り込んだのでした。
 「創憲」とは何か―。
二〇〇五年二月に『新憲法試案
 尊厳ある日本を創る』(PHP研究所)を出版した鳩山由紀夫衆院議員(現幹事長)は、明解にその意味を述べています。
 「『創憲』は新しい憲法を創ることを意味するから、実は『改憲』よりも『改憲』的なのである」
 「創憲」が、民主党の「政権公約」に盛り込まれたことは、まさに「改憲政党」への“画期”となりました。
 自民党は、その直後に発表した政権公約「小泉改革宣言」において、「二〇〇五年に憲法草案をまとめ、国民的議論を展開する」としたのです。
九条二項の改定
 民主党「創憲」マニフェストから自民党と民主党の改憲構想づくりでの“競い合い”が始まり、自民党が〇五年十月に「新憲法草案」を発表するのに合わせて、民主党も「憲法提言」をまとめました。
 「提言」は、自民党が「新憲法草案」で九条二項の削除と「自衛軍」の保持を掲げたのに対し、「国連憲章上の制約された自衛権」の明記を主張しました。国連憲章上の自衛権には、海外での武力行使となる集団的自衛権(国連憲章五一条)が含まれます。
 また「提言」は、「国連多国籍軍の活動や国連平和維持活動への参加を可能にする」として、海外での武力行使に道を開いています。
 戦力不保持と交戦権否認を定めた九条二項のもとで海外での武力行使は禁じられ、集団的自衛権の行使も許されないとされてきました。
 「提言」は自民党「新憲法草案」と同様に九条二項の改定を明確に志向するものです。
 安倍流改憲路線をストップさせたいと思って民主党に投票することは、力にならないばかりか、逆に改憲の流れを、少し形を変えて促進することにつながりかねません。(中祖寅一)

(2007年7月19日(木)「しんぶん赤旗」)
「米と肩を並べ武力行使」
安倍発言にみる改憲の目的
 安倍・自民党は参院選公約の冒頭に三年後の改憲案発議を掲げる一方、改憲の狙いについては口をつぐんでいます。海外でアメリカと肩を並べて戦争する国をつくる危険な狙いがあるからです。
 この問題では、日本共産党の志位和夫委員長が、十二日の深夜番組での党首討論で安倍首相に対し、安倍氏が昨年の自民党総裁選で“アメリカと肩を並べて武力の行使をする。それは憲法の解釈ではできない。憲法改定抜きにはできない”と発言をしていたことを指摘。「これは逆を言うと憲法改定の目的がアメリカと『肩を並べた』戦争する国をつくることにあるとしか読み取れない」として、選挙においても明確にするよう迫りました。安倍首相は「勝手に読み取ってもらったら困る」などとのべました。
 志位氏が指摘した安倍首相の発言は、昨年九月十一日の日本記者クラブ主催の自民党総裁選公開討論会でのもの。首相は海外での武力行使を可能とする集団的自衛権の行使について「中核概念と外的な概念がある。実際に(アメリカと)肩を並べてたたかうことは中核的概念。最初からどこかへの武力行使について肩を並べてたたかう、あるいは地球の裏側まで行ってというのは、それは禁じられた解釈だと思う」とのべました。
 これは、地球の裏側まで行ってアメリカと肩を並べてたたかうという「集団的自衛権の中核概念」を、解釈で可能とするのは無理だが、「外的概念」は解釈変更で対応できるはず、というものです。現在進められている集団的自衛権の解釈変更を目指す有識者会議の活動につながるものです。
 これを逆から言えば、「肩を並べて武力行使する」体制は憲法改定で実現するということで、改憲の目的はここにあります。
 「軍事同盟というのは“血の同盟”」(『この国を守る決意』)だと公然とのべる安倍氏は、〇五年十月にも「(日本国民は)海外での紛争に一緒に米国と肩を並べて武力行使をするという意識には至っていない」「その前の段階で、いろんな法的障害を、また憲法の解釈に関する障害を取り除いていく」(都内での講演会)と同様の発言をしています。
 昨年の総裁選マニフェスト「美しい国、日本」では、「『世界とアジアのための日米同盟』を強化させ、日米双方が『ともに汗をかく』体制を確立」と強調していました。
 選挙公約に「改憲発議」という国民主権に直結する重大テーマを掲げた以上、安倍・自民党は改憲の内容と目的を正面から国民に示すことが求められます。

(2007年07月18日 16:04 発信地:東京) 
全国世論調査で、安倍内閣の支持率が27.9%に低下
【7月18日 AFP】読売新聞が18日付けの紙面で発表した全国世論調査によると、安倍晋三(Shinzo Abe)首相率いる連立与党は、29日投票の参院選で苦戦を強いられることになるとみられる。
■安倍内閣の不支持率が5割を超える
 この調査は読売新聞社が14日から16日まで全国の有権者を対象に電話で実施したもので、4万1735人から回答を得た。それによると、安倍内閣の支持率は27.9%、不支持率は51.7%だった。支持率は6月末時点の34.4%から、6.5ポイント低下した。
 同紙は支持率が3割を下回れば危険水域だとし、参院選で自民党主導の連立与党が過半数を割り込む可能性が高いと指摘する。
 参院選で敗北したとしても衆議院での優位性は変わらないため、連立与党が政権を維持することに変わりはない。しかし、手痛い敗北を喫すれば、自民党内部から安倍首相の退陣に対する圧力が高まることは避けられないと見られる。
 読売新聞によると、古くから自民党の支持基盤となっていた九州、四国、本州北部などで特に支持率が低下しており、この背景には、年金記録漏れ問題などに関する有権者の反発があるとみられる。年金問題は急速な高齢化が地方部では、特に深刻な問題となっている。
 しかし、現時点では投票する候補者や政党を決めていない有権者も多数おり、投票日までに情勢が変化する可能性もあると同紙は指摘している。
■首相の被災地視察にも
 今回の調査は、9人の死者、1000人以上の負傷者を出した新潟県中越沖地震と時を同じくして実施された。安倍首相は地震発生後数時間で現地に赴き、柏崎刈羽原子力発電所の放射能漏れについて適切な対応をするよう指示を出した。
 安倍首相は2006年9月の就任以来、安全保障政策などに力を注いできたが、年金記録漏れ問題や相次ぐ閣僚のスキャンダルなどで支持率は急落しており、有権者の中には、この視察も自身の存在を示したい意図があったのではと懐疑的な見方もある。(c)AFP

(2007年07月20日 スポニチ)
麻生外相「アルツハイマーでも分かる」
 安倍内閣の閣僚からまたまた失言が飛び出した。麻生太郎外相は19日午後、富山県高岡市内で講演し、日本と中国のコメの価格差について「(日本では)標準米の1俵は1万6000円ぐらいだが、中国では7万8000円(で売られている)。7万8000円と1万6000円はどちらが高いか。アルツハイマーの人でもこれぐらいは分かる」と発言した。
 漫画好きとして知られる麻生氏はオタクにも人気の特異なキャラクターで街頭遊説には定評があり、“ポスト安倍”の有力候補の1人。今参院選では、失点が多く不人気の安倍内閣の閣僚の中でも、小池百合子防衛相と麻生氏だけは別で、各地の自民党候補者から応援依頼が殺到していた。
 しかし、べらんめえ口調で歯に衣(きぬ)着せぬ物言いが特徴でもあり、常に失言の心配がついて回っていたのも事実。今回の失言は、対中コメ輸出の利点を分かりやすく説明し、奨励する趣旨とみられるが、近年急増しているアルツハイマー病患者や家族に対する配慮を欠いた不適切な発言といえる。
 山間部の農村など、保守的な高齢層に支持者の多い自民党にとって、年金問題や久間章生前防衛相の「しょうがない」発言などで逆風が吹く中で、新たなダメージとなりそうだ。今回の発言をめぐり、野党が閣僚の不適切発言として追及する可能性は大きく、安倍内閣はさらに追い込まれそうだ。
 麻生氏は同日深夜、都内で記者団に「発言の一部に不適切な表現があった。関係者の方々にご迷惑をお掛けした。おわび申し上げたい」と述べた。
 
(2007年7月20日(金)「しんぶん赤旗」)
「慰安婦」決議案
日本の参院選後に採決
米下院 自民苦戦に“配慮”
 【ワシントン=山崎伸治】「従軍慰安婦」問題で日本政府に公式な謝罪を求める決議案の米議会本会議での採決が、参院選で安倍政権与党の“苦戦に配慮”し、選挙後に行われる見通しとなりました。同決議案の提案者であるマイク・ホンダ議員が十八日付の米紙ワシントン・ポストで明らかにしました。
 同紙は「安倍氏の自民党が七月二十九日に投票がある参議院での主導権を失いかねないと示唆する世論調査もある」と指摘した上で、ホンダ氏の言明として「選挙前に安倍氏に恥ずかしい思いをさせたくないので、下院の指導部は慰安婦決議の採択を選挙後に延期することで合意している」と報じています。
 米議会は八月六日から約一カ月の夏季休会に入るため、採決は七月三十日から八月三日までの間に行われるものとみられます。ホンダ氏はロイター通信などに対し、三十日採決との見通しを示しています。
 決議案は六月二十六日、下院外交委員会で三九対二の圧倒的賛成多数で可決。賛同者は七月十六日までに百六十人(下院定数四百三十五人)にまで増えており、本会議での採択は確実とみられています。
 その採決を参院選後にしたことは、この問題が安倍政権にとって重大問題であることを米側が認識していることを改めて裏付けています。
 同紙は、日本の加藤良三駐米大使が六月二十二日付でペロシ下院議長ら五人の下院指導者にあてた書簡を紹介。その中で加藤氏は、決議案が採択されれば「永続的で有害な影響」があると述べたうえで、「日本はこのほどイラク復興への支出を二年間延長したばかりだ」と指摘。米国を応援する財政支出が危うくなりかねないと示唆しているといいます。
 同紙はこのことを、「日本は米国のイラク政策を忠実に支持してきた数少ない国の一つとしての役割を再考するかもしれない」と皮肉を込めて指摘しています。
 この書簡について、マイケル・グリーン前米国家安全保障会議アジア上級部長は同紙に「日本はブッシュ政権の説得に失敗し、下院指導者に対して強引な文言の書簡を書くよう決断したことは明らかだ」と述べています。また、ホンダ氏は「ロビー活動での空威張り」と一蹴(いっしゅう)しました。


最近のマスコミ報道(07/07/19) 参院選「安倍政治」 政権10カ月の是非が評価される
日時:2007719
(07/07/19 愛媛新聞)
参院選「安倍政治」 政権10カ月の是非が評価される
 昨年九月に安倍晋三政権が発足したとき、参院選でこれほど強い逆風にさらされるとは誰も思わなかったろう。自民党にとって大きな誤算のはずだ。 
 この約十カ月の間、安倍首相は終戦直後に制定された法律の見直しを進め、改正教育基本法や防衛省昇格法を成立させた。憲法改正手続きを定めた国民投票法も実現した。これまでの政権には見られないほどの保守回帰傾向で、「安倍カラー」の濃さが際立ったといえる。 
 「戦後レジーム(体制)からの脱却」を推進してきた「安倍政治」を信任するか、それとも待ったをかけるのか―。今回の参院選は「安倍政治」の是非が有権者の審判を受ける。 
 選挙戦では年金記録不備問題が前面に出て、安倍首相の目指す憲法改正問題はかすんだ印象を受ける。今選挙では、三年後の国民投票法施行時から解禁される憲法改正発議にかかわる可能性のある国会議員が初めて選ばれる。有権者にとっても重い意味を持つ選挙と心得ておきたい。 
 自民党は参院選公約の一番目に「新憲法制定の推進」を掲げ「二〇一〇年の国会において改憲案の発議をめざし国民投票による承認を得るべく、国民運動を展開する」と打ち出した。 
 自民党は〇五年十一月に「自衛軍」設置などを盛り込んだ新憲法草案を作成。集団的自衛権行使も容認するとしている。発議の具体的時期を明示することで改憲実現への意欲を示したといえる。 
 これに対し民主党の公約は「国民の多くが改正を求め、国会内の広範な合意形成ができる事項があるか、慎重かつ積極的に検討していく」と述べるにとどまり、改憲問題への明確な方向性は示していない。共産、社民両党はともに護憲の姿勢を鮮明にし、安倍政権との対決色を強めている。改憲派と護憲派が混在する党内事情を反映して、民主党があいまいな表現に終始しているのは物足りない。 
 国民投票法の成立は憲法改正問題が政治日程に上ったことを意味する。参院選後の臨時国会で早くも憲法審査会が設置されることを思えば、選挙戦で憲法問題を積極的に取り上げたい。政党、候補者は基本姿勢を明確に語るべきだ。白紙委任はとてもできない。 
 先の国会で政府、与党は教育改革関連三法案やイラク復興支援特別措置法改正案などの重要法案を野党の抗議を押し切って採決した。強引な運営に「数の横暴」との批判もあった。こうした安倍政権の国会運営を有権者はどう受けとめただろう。審判の目はそこにも及ぶにちがいない。 
 安倍内閣支持率は共同通信社の最新の世論調査で初めて30%を切り、28・1%と最低を更新した。安倍首相はいっそう苦しい状況にある。対する民主党の小沢一郎代表は「与野党逆転を果たし二大政党制を定着させるスタート」と位置付け「政界引退」も懸けた捨て身の構えだ。党首力の真っ向勝負でもあり、有権者の選択眼が試される。

(2007年7月19日 中日新聞)
【参院選2007 富山ニュース】
身近な争点 参院選候補者アンケート(5) 憲法改正
 憲法改正の手続きを定めた国民投票法が成立した。安倍晋三首相は改正に意欲をみせ、今参院選の争点に位置づける。9条が焦点となるが、改憲、護憲について考えを。
新しい考え方の明記を
野上浩太郎候補(自民)
 戦後約六十年たって、日本を取り巻く国際情勢や国内の状況は大きく変わってきました。私は、制定から長い年月がたった憲法を、新しい時代に合う憲法にしていかなければならないと思います。例えば、国際平和への貢献、環境権やプライバシーの権利など時代に即した新たな権利、地方分権の時代における地方自治の項目の充実、公益および公の秩序といった考え方などを明記していくべきです。
 そして、今後は、国民主権・基本的人権の尊重・平和主義の三大原則を堅持し、次期国会から衆参両院に設置される「憲法審査会」の議論を主導しつつ、さらに広範な国民的議論を深めた上で、合意を編み上げていく作業が必要であると考えます。
『世界の宝』9条を守る
泉野 和之候補(共産)
 日本を海外で戦争する国につくり変える憲法改悪に反対します。皆さんと力を合わせて世界の宝ともいうべき憲法九条を守ります。
 同時に、他国のために武力を行使する「集団的自衛権」は憲法上行使できない、としてきたこれまでの政府の憲法解釈を変える動きにも反対します。
 防衛省・自衛隊による憲法違反の情報収集や国民監視活動の全容を明らかにし、ただちに中止することを求めます。
 侵略戦争美化を許さず、首相の靖国神社への参拝は、今後きっぱり中止することを求めます。
 基本的人権や民主主義、男女平等など、戦後培われてきた現行憲法のすべての条項を守ります。
国民の利益を考え議論
森田 高候補(無所属)
 憲法は権力者を縛り、国民のためにあります。権力者がこの国を自分の自由、自分の勝手にさせないために、立憲主義の考えに基づき、現憲法第九十九条に憲法擁護の義務を課しています。
 自民党の改正案は海外での積極的軍事活動などが中心で、イデオロギー的な内容で偏りすぎています。これでは国民に大きな負担を強いるものです。
 国民の利益になる憲法改正ならば十分に論議するべきです。

(2007年7月19日 中日新聞)
身近な争点 候補者紙上討論(5) 憲法改正
 憲法改正の手続きとなる国民投票法が成立した。焦点は九条。スタンスは改憲か護憲か、それとも論憲か。
9条は『世界の宝』
近松美喜子候補(共産)
 憲法改悪には反対。「戦争しない」「軍隊はもたない」と決めた憲法九条は、海外での戦争の最大の歯止め。九条改定の目的は、アメリカと肩をならべて武力を行使することだ。
 今年は憲法施行六十年。日本の自衛隊がただの一人も他国の人々を殺し、殺されることがなかった歴史を根底から覆すことになる。明文・解釈改憲でも加憲でも、憲法改正の発議はいずれも九条改悪が最大の目的だ。
 憲法九条は「世界の宝」。思想信条、党派の違いを超えた草の根の共同が発展し、「九条守れ」の国民世論は急速に広がっている。草の根の運動を網の目に広げ、国民の中で多数派を形成し、憲法九条を守り抜く。
じっくり議論して
矢田富郎候補(自民)
 憲法改正は今回に限らず、今後いつの選挙でも争点になる。今の憲法も施行から六十年が経過し、時代に合わない部分もある。国民主権、基本的人権、平和主義など今の憲法の基本原理を堅持しながら、じっくり議論して改正を考える必要がある。
 九条一項の平和主義は尊い理想として堅持し、九条二項は自衛隊の存在と矛盾している。自衛権と自衛力を書き込むべきと思うが、シビリアンコントロールの歯止めをかけることも必要だ。
 また環境権、プライバシー権、犯罪被害者の権利など、現代的な国民の権利は付け加えたほうが良いと思う。今後、国民的な議論が大切だ。
争点にはならない
一川保夫候補(民主)
 今回の参院選で大きな争点になるとは考えていない。憲法は国のかたちの根本であり、国民の意見を広く聞き、説明責任を果たしながら手続きを進めていくのが筋だ。国民投票法の審議や採決を見ると与党の対応は、国民の意識と乖離(かいり)している。強行採決する法案ではない。
 憲法を争点にするのであれば、主な改正点についてその草案を示すべきだ。私は「憲法は国民とともにある」という観点から国民にしっかり根づいている「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」の原理を大切にしつつ、自由闊達(かったつ)な憲法論議を行い、広範かつ円満な合意形成ができるよう国会でも対応していくべきと考える。大切だが、緊急の課題ではないと思う。
国民議論の徹底を
浜崎茂候補(無所属)
 九条改正の賛成派は現実主義、反対派は理想主義の傾向がある。平和のためには武力行使もやむを得ないと考える人と、武力を使って勝ち取る平和など平和でないと考える人。どちらも正論だが、そのバランスを取るため徹底した国民議論がなされるべきだ。護憲がベストだ。

(2007/07/18 徳島新聞)
07参院選とくしま 争点の現場から】(4)政治スタンス  2007/07/18 
◎思い託せる政党不在
 今年四月十三日朝、郷土史家の湯浅良幸さん(77)=阿南市上中町=は、苦々しい思いで徳島新聞を手に取った。一面に「国民投票法案を可決自公が採決強行」の見出し。採決直前の衆院憲法調査特別委員会の写真に目を移すと、数人の野党議員が委員長に詰め寄っている。今や国会の恒例行事ともいえそうな光景にため息が出た。
 相次ぐ強行採決
 安倍内閣は、教育基本法改正案や教育改革関連三法案といった重要法案の採決を次々に強行。最近も参院委で年金時効撤廃特例法案や社保庁改革関連法案を強行可決した。「自民党に良識派はいなくなったのか。誰も止めようとしない。これはファッショですよ」。政府が政党を解体して大政翼賛会をつくり、太平洋戦争へと突き進んだ昭和十年代をほうふつさせる。
 そんな湯浅さんも、かつては「軍国少年」だった。十三歳の時、両親に黙って海軍特別年少兵を受験。約十倍の競争率を突破し、長崎県佐世保の針尾海兵団の門をくぐった。
 だが、待ち受けていたのは人間性を無視した制裁、リンチがはびこる世界だった。殴るけるは日常茶飯事。樫(かし)のこん棒で尻をぶたれ、二メートルくらいすっ飛んだ。みみず腫れができ、階段もはわないと上がれない。この制裁で友人一人が亡くなった。
 一年後、横須賀の海軍機関学校で二人乗りの特殊潜航艇「海竜」の機関兵として三カ月間の訓練を受け、その卒業式の日に終戦を迎えた。再び佐世保に戻されたが、「勝手に帰れ」とすぐに放り出された。わずか十五歳。無蓋(がい)列車にしがみつき、ホームで野宿しながら四日目にようやく帰郷したときは精も根も尽き果てた。
 「軍隊は言うことは立派だが、いざという時は国民を守ろうともしない」と湯浅さん。その目には、無責任な軍隊と、今の官僚や政治家がだぶって見え、「日本は『いつかきた道』を再び歩もうとしている」と危惧(きぐ)する。
 今は「九条の会徳島」の呼びかけ人でもある。「敗戦後、日本が戦争に巻き込まれなかったのは憲法のおかげ」。自らの戦争体験を交えて憲法の尊さを訴えるため、県内各地へ講演に出向く。「自民だけでなく、民主も公明も憲法に手を付けようとする。今の政治がいかに日本の将来を危うくし、国民生活を駄目にするかを語っています」
 若者は今の政治をどう見ているのだろうか。「国際貢献のためなら、自衛隊が海外に出ていくことにさほど抵抗はない」。徳島文理大総合政策学部三年の高橋侑希さん(21)は、改憲に一定の理解を示す。
 障害者施設の訪問や赤十字活動への協力など、学生ボランティア部での活動を通し、グローバル社会においては国際協力の必要性を強く感じている。ただ、なぜ安倍首相は改憲を急ぐのか理解に苦しむという。
 若者らは無関心
 高校時代から政治に関心を持ってきた。四月の徳島市議選では選挙カーに乗ってウグイス嬢を体験し、選挙の実態を目の当たりにした。だが、周囲の同世代の若者には無関心層が多い。「政治で語られる言葉は難しいし、身近に感じられないのでは」
 高橋さん自身も「『美しい国』といわれても抽象的で、なかなかピンとこない」と言う。テレビで強行採決のシーンを見るたびに、与党も与党だが、野党も強行採決を演出しているように思えてならない。「民主党も憲法については党内がバラバラ。与党も野党も国民をどこに導こうとしているのか、まるっきり見えてこない」
 自分の思いを託せられる政党はなかなか見当たらない。共同通信社が十四、十五両日に実施した参院選のトレンド調査によると、支持政党がないと回答した無党派層は63・9%。二○〇一、〇四年の参院選公示後の調査でも無党派層は60%を超えている。=おわり(社会部・松本真也、武田浩文が担当しました)

07参院選とくしま 争点の現場から】(3)負担増  2007/07/16 
◎医療費など生活圧迫
 「月一回だった受診回数を二、三カ月に一回へと減らせないでしょうか」「代金を支払えないから薬はいらない。処方しないで」。徳島市内の病院には、医療費や税金アップに悩む高齢者の切実な声が連日、寄せられている。
 支払いを恐れ、病院の敷居をまたぐことをためらう人も。一人暮らしの八十代の女性は「かぜ程度ではもったいなくて医者に診てもらえない。所得が少なく家族もいない年寄りは『死ね』ということでしょうか」と、目に涙を浮かべた。
 表情を曇らせる病院職員。「年を取れば誰でも病気をするのが当たり前なのに、医療費を支払えず患者にさえなれない人が少なくない。これでいいのだろうか」。
 年金から天引き
 高齢化の進展で膨らみ続ける医療費。それに伴い増える自己負担。二〇〇八年度からは、七十五歳以上の後期高齢者に負担を求める新たな医療保険制度が始まる。健康保険組合加入者の扶養家族で、これまで保険料を負担していない人も含め全員が保険料を支払う。都道府県ごとの保険料はまだ決まっていないが、厚生労働省の試算では全国平均で年七万四千円。有無を言わさず年金から天引きされる。
 全日本民主医療機関連合会(民医連・東京)が昨年十、十一の両月、全国二万人の高齢者を対象に行った調査では、約40%が月収十万円未満で、「ここ四、五年で暮らし向きが下降している」と回答。医療や介護面での支出に約46%が負担を感じていて、住民税や保険料の引き上げが高齢者を直撃している実態が明らかになった。
 県民医連の吉田泰英事務局長は「国の政策は医療費の削減が基調になっているが、低所得の高齢者らに負担を押し付ける前に税の無駄遣いを正してほしい」と言う。
 相次ぐ制度改正
 新たな負担を強いられているのは高齢者の医療面だけではない。配偶者特別控除の一部廃止(二〇〇三年)、発泡酒・たばこ税引き上げ(同)、年金課税強化(〇四年)、定率減税半減(〇六年)、酒税・たばこ税引き上げ(同)、老年者控除の廃止(同)など、ここ数年、めじろ押し。
 今年に入っても所得税の定率減税全廃(一月)、国民年金保険料引き上げ(四月)、住民税の定率減税全廃(六月)と、相次いで制度が変わった。
 徳島市内の会社員男性(54)の六月の給与明細に記載された住民税の控除額は、定率減税廃止の影響で五月より一万三千円増えていた。「定率減税は、景気対策のための恒久減税と聞いていた。恒久とはずっと続く意味だと理解していたがだまされた気がする」と憤る。
 男性は月六万円の年金で生計を立てる母親(74)のことも気に掛ける。「後期高齢者医療制度の対象となり、介護保険に加えてさらに負担が増す。これだけ負担を押し付ける一方で、年金問題などで国民を裏切り続けている政府には正直嫌気がさしている」。
 「財政再建」の名の下に押し寄せる負担増の波。「取りやすいところから取る」「弱い者いじめ」「格差がますます広がる」。多くの有権者はそう感じている。
 労働時間規制を撤廃するホワイトカラー・エグゼンプションや消費税上げなど、参院選をにらみ、議論が棚上げにされた制度改正も少なくない。負担を伴う政策は、これから先も次々と用意されている。

【07参院選とくしま 争点の現場から】(2)再チャレンジ  2007/07/14 
◎格差解消、変化なし
 「会社の業績と正社員の給料を上げるためだけに働き続けているようなもの。政府が言う再チャレンジなんて無縁の世界だ」
 藍住町内にある自動車部品メーカーの契約社員の男性(42)の年収は約二百万円。手取りで十五万円に届かない月給は、勤め始めた七年前からほとんど変わっていない。独身。もちろん貯金はない。
 高校を中退。五回の転職を繰り返した後、二〇〇〇年八月、派遣会社の請負労働者としてこのメーカーに入った。技術者として一人前になる希望もあったが、目の前の現実に打ち砕かれた。
 仕事内容は正社員と同じだが収入は天と地ほどの開きがある。数日間休んだだけで解雇され、別の労働者と交代させられる仲間を何人も見てきた。「正社員以外は使い捨て。首にならないよう身を粉にして頑張ったが報われたことがない」。
 男性は昨年九月、契約社員として直接雇用された。実態は派遣労働なのにメーカー側が請負契約と装う「偽装請負」をしていたことを徳島労働局に告発したり、労働組合に加入して二年間にわたり待遇の改善を求めて交渉を続けたりした結果だ。しかし、正社員にはなっていない。来年夏までの契約期間中に契約の延長や正式採用されない限り、職場を離れなければならない。
 「仕事の結果に対しては正社員だろうと契約社員だろうと公平に扱ってほしい。懸命に働いても生活保護水準の生活しかできない。世の中ってこんなものだろうか。いつ死んでもいいと思っている」。男性は悔しそうにつぶやいた。
 働いても働いても報われない「ワーキング・プア」と呼ばれる非正規労働者が若年層を中心に増えている。総務省の調査では今年一−三月期の非正規労働者の割合は33・7%。〇二年の調査開始以来、最高に達した。
 若者の中には、引きこもりのほか、職場でのいじめなどが原因で、いったん就職したもののすぐ辞めて自信を失っている人も多い。
 徳島市寺島本町西一の「県若者サポートステーション」。昨年九月、進学も就職もしないニートの自立を支援するため開所した。厚生労働省の委託で、県労働者福祉協議会が運営。臨床心理士らによる相談、心理カウンセリングを中心に業務を続けている。
 今年四月末までに約百三十人が相談に訪れ、十数人が就職できた。しかし、こうした若者はごく一部でしかない。ステーションの推計では県内のニートは五千人余。人口当たりで沖縄、高知、奈良県に次いで全国四番目の多さという。
 京田政好所長は「職探しのレベルまで到達できる人はわずか。何とかステーションを利用してほしい」と切実だ。四月以降、ニート掘り起こしのため民生委員や市町村へ協力依頼を続けている。
 「日本が目指すべきは努力した人が報われ、勝ち組と負け組が固定化せず、チャンスにあふれ、誰でも再チャレンジが可能な社会。格差を感じる人に光を当てるのが政治の役割だ」。昨年九月二十九日、安倍晋三首相は就任後初の所信表明で、内閣の重要課題として再チャレンジ支援策を打ち出した。
 あれから十カ月。正社員を絞って非正規労働者の雇用を増やす企業。規制緩和を進めてそれを後押しする国−。今も変化は見られない。

【07参院選とくしま 争点の現場から】(1)年金  2007/07/13 
◎記録漏れ、不信感強く
 今回の参院選で大きな争点となっている年金、格差、負担増…。県内の状況はどうなっているのか。現場をのぞいてみた。
 公的年金記録の確認のため、連日大勢の加入者が窓口に詰め掛ける徳島北社会保険事務所(徳島市佐古三番町)。「もう怒り心頭やな。こんなん詐欺やないか」。事務所を出るなり、石井町の男性(67)はこう吐き捨てた。夫婦の国民年金の記録を確認に来たら、妻(61)の一九七一年度分の記録がすっぽり抜け落ちていた。
 県内でも次々と
 北島町の主婦(58)は、脳梗塞(こうそく)でリハビリ中の夫(63)の障害年金を受け取りにきた際、夫が約二十年間、会社勤めをしていたときにかけていた厚生年金の記録が見つかった。七年前に再婚し、夫の姓が変わったため宙に浮いていた。「夫は二年前に倒れ、言葉がしゃべれなくなったので、私は厚生年金のことを知らなかった。もし夫が独り身だったら出てこなかったでしょうね」
 妹の国民年金の記録を調べに来た板野町の中年男性も眉をひそめる。「千鶴(チヅ)」を「チズ」と入力されていたために、数年間、記録が飛んでいた。「こっちが領収書を保管していたからよかったけどな。社会保険事務所はどんな仕事をしてきとったんや」。声を荒げ、事務所を足早に去った。
 県内でも次々と見つかる記録漏れ。怒りの矛先は、社会保険事務所に向けられる。
 「キーボードのタッチは一日平均五千以内」「窓口でのパソコン作業は、キーボードを四十五分操作したら十五分休憩」…。オンライン化に反対してきた「自治労国費評議会」(現全国社会保険職員労働組合)が、七九年にこれを受け入れて以降、社保庁と交わしてきた「覚書」「確認事項」だ。
 正午から四十五分間の昼休み時間は、窓口は閉まったまま。二〇〇〇年当時、徳島市保険年金課に籍を置いていた職員は振り返る。「保険の手続きで社会保険事務所に電話したら『昼休みが終わってからにしてほしい』と言われた。連絡会議で改善を申し入れると、管理職で対応するとのことだった」
 昼休みの窓口対応が導入されたのは〇二年。だが、「地域住民のニーズや実情を考慮し、職場で対応できる必要最小限の体制で行う」との条件だった。
 問題を見過ごす
 自治労と全国社会保険職員労組は「社保庁改革がスタートし、〇五年一月までに『覚書』『確認事項』はすべて破棄した」とする。国民不在の社保庁の体質は、年金保険料の流用問題や業務目的外の閲覧をめぐり論議を呼んだ〇四年の年金国会まで表面化せず、記録漏れの問題に火がついたのはさらに三年後の今年になってから。それまで政治家はずっと見過ごしてきた。
 六月二十四日に鳴門市民会館で講演したジャーナリストの田原総一朗さんは、記録漏れ問題に触れ「率直に言うと、安倍晋三首相はかわいそう。今回の問題はずっと前から起きていることで、今起きたわけではない。国民は何を怒っているかというと、自民党が官僚に乗っかり、このでたらめをチェックする能力がなかったからだ」とまくし立てた。
 県内の〇六年度の国民年金納付率は70%。前年度を1・7ポイント下回った。「支払った保険料と同等の金額を将来もらえるとは思えない」と若者世代の年金離れが進む。
 年金相談を受け付ける県社会保険労務士会の米澤和美副会長は「一連の年金問題の背景には少子高齢化の進展、社保庁の体質、不況による失業者の増加といった社会的構造がある。こうした問題に政治が対応できていないと国民は見ている。政治を信頼できるかどうかで年金に対する意識も変わってくる」とみる。

(07/07/19 長崎新聞)
マグカップに憲法前文 佐世保の陶磁器卸商社が発売
 佐世保市木原町の陶磁器卸商社「弥山(やざん)堂」がこのほど、憲法の前文を記したマグカップを売り出した。憲法改正を参院選の“隠れた争点”とみる横石信孝社長(66)は「みんなが日常生活で憲法について考える機会が増えてほしい」と望んでいる。
 横石社長はこれまで平和運動や政治活動とは無縁だったが、このごろの改憲の動きに性急さを感じていた。自身は「日本の戦後復興と平和を支えた六十一年の重みがある」と護憲の立場だが、「国民一人一人が憲法の中身をよく理解し、納得した上で判断してくれればいい」と改憲派にも購入を勧める。
 安倍首相が改憲に意欲を示す中、今回の参院選の当選者は、六年の任期中に判断を迫られる可能性がある。そこで横石社長は選挙に合わせ、「基本に立ち返る」意味で前文をデザインしたマグカップを販売することにした。
 今後は九条や、昨年末に改正される前の教育基本法も取り上げるつもりという。
 販売価格は千円。先着二十人に無料で進呈する。問い合わせは弥山堂(電0956・30・8319)。


最近のマスコミ報道(07/07/18) 参院選 世論調査(読売、共同) 
日時:2007718
(2007年7月18日1時44分 読売新聞)
「参院選に関心」78%、前回比13ポイント増…読売調査
 読売新聞社が14日から16日まで実施した全国世論調査(電話方式)で、29日投票の参院選に「関心がある」と答えた人は、「大いに」「多少は」を合わせて78%に達し、2004年の前回参院選前の世論調査(計65%)から13ポイント上昇した。
 「大いに」(53%)だけを比べると15ポイント増えた。投票に「必ず行く」という人は70%と、04年(73%)を下回り、関心の高さが必ずしも投票意欲に結びつかない面もうかがえた。
 関心度を支持政党別に見ると、最も高いのは民主支持層の計90%で、04年参院選(計82%)から8ポイント増加した。自民支持層は計80%で04年(計67%)比13ポイントの増。支持政党のない無党派層は計65%と、04年(計49%)から16ポイント増えている。投票に「必ず行く」という人を支持政党別に見ると、自民支持層は74%(前回比5ポイント減)で、民主支持層の79%(同5ポイント減)を下回った。無党派層は55%で、04年より3ポイント低くなった。
 安倍内閣の支持率は27・9%と3割を下回った。不支持率は51・7%。04年の前回参院選前の小泉内閣の支持率は35・7%、不支持率は39・1%だった。

(2007年7月17日 中日新聞)
内閣支持率 最低28% 参院選トレンド調査
◆比例投票先、民主27%リード拡大
 共同通信社は十四、十五両日、参院選に向けた有権者の動向を探るため全国電話世論調査(第四回トレンド調査)を実施、安倍内閣の支持率は28・1%で、今月七、八両日の第三回調査よりさらに2・0ポイント下がった。昨年九月の内閣発足以来、支持率が初めて30%の大台を割り込んで最低を更新。十二日の公示後も、安倍政権への「逆風」が収まっていない現状をうかがわせた。不支持は58・8%で前回と同じだった。
 比例代表で投票する政党・候補者に関し、「民主党」と答えた人は27・2%で、前回調査に比べて2・6ポイント増。自民党も0・7ポイント増えて18・3%となったが、両党の差は8・9ポイントで前回(7・0ポイント差)からさらに拡大した。
 また重視する問題(二つまで回答)を尋ねると「年金」は53・6%と前回調査より5ポイント近く減ったが依然トップ。「政治とカネ」が4・2ポイント増えて23・7%になり、前回の四位から二位に急浮上した。これに「格差」(20・2%)、「教育」(19・6%)が続く。赤城徳彦農相の事務所費問題をきっかけに「政治とカネ」への関心が再び高まっていることを裏付けた。
 参院選への関心度は、「大いに関心がある」「少しは関心がある」が計84・5%に達し、前回調査より6・3ポイント増えた。二〇〇四年参院選の投票日約二週間前のトレンド調査時点(71・0%)を大きく上回っている。
 選挙区の投票先は、民主党が26・2%と前回調査より2・9ポイント増えたのに対し、自民党は18・6%と逆に1・2ポイント減り、両党の差は7・6ポイントに拡大。第一回(六月二十三、二十四両日)から四回の調査を通じて、両党の差は比例代表、選挙区の双方で最大となった。
 民主、自民両党以外の比例代表の投票先については、公明党5・0%、共産党4・3%、社民党0・9%、国民新党0・3%、新党日本0・5%、「まだ決めていない」が38・4%だった。
 調査の方法 コンピューターで無作為に発生させた番号に電話をかける方法で実施。今回の第4回調査は14、15日に実施。実際に有権者がいる世帯にかかったのは1773件で、1259人から回答を得た。


最近のマスコミ報道(07/07/17) NHK世論調査  各党の支持率 
日時:2007717
NHK世論調査 各党の支持率 7月16日 19時7分
 NHKが行った世論調査によりますと、各党の支持率は、自民党が先週より6ポイント余り下がって25.7%、民主党がやや下がって20.3%、公明党がやや下がって4.1%、共産党がやや上がって4.3%、社民党が横ばいの1.4%、国民新党がやや上がって0.6%、「特に支持している政党はない」が7ポイント余り上がって29.2%でした。NHK調査 67%が必ず投票
NHKが行った世論調査によりますと、今月29日に投票が行われる参議院選挙について、「必ず行く」と答えた人は67%で、前回・3年前の選挙の同じ時期と比べ11ポイント高くなっています。

(07/17 08:08 北海道新聞)
内閣支持率24・2% 不支持6割 全道世論調査
 北海道新聞社が行った道内世論調査で、安倍晋三内閣の支持率は24・2%にとどまり、不支持率は62・2%に上った。三週間前の前回調査と比べ、支持率が0・8ポイント減る一方、不支持率もわずかに減少した。 
 支持政党との関係でみると、「支持する」と答えたのは自民党支持層でも63・2%にとどまり、前回の73・1%から10ポイント近く低下した。同じ与党の公明党支持層の72・0%よりも低かった。 
 一方、民主党支持層の84・1%、「支持政党なし」の無党派層の68・2%が、いずれも「支持しない」と答えた。 
 不支持の回答は七十代を除くすべての年代で支持を上回り、三十代では七割台半ばに達した。「支持しない」と答えた人にその理由を聞いたところ、「問題処理能力がなく、不安定だから」が34・4%で最も多く、「政策に期待できない」(25・7%)、「リーダーシップがない」(17・0%)と続いた。 
 逆に、支持する理由では「自民党の政権だから」(33・9%)、「政策に期待できる」(19・8%)などが多かった。

2007年07月15日日曜日 河北新報社 
農村部、自民離れ 支持3割に大幅減 東北アンケート
 参院選(29日投開票)で農業政策が主要争点に浮上する中、強固な保守地盤とされてきた東北の農村部で政党支持が流動化していることが、河北新報社が行った農業者アンケートで分かった。自民党への支持が5割強から3割に大幅に下がる一方、民主党は1割から2割に伸びた。農業の将来に、6割を超す農業者が悲観的な見方をしており、農政への不満が「自民離れ」に直結したとみられる。
 これまでの支持政党と、今回の参院選で支持する政党を尋ねたところ、自民党は55.6%から30.0%へと、25.6ポイントの大幅な低下。一方、民主党は10.6%から21.2%に上昇した。参院選での支持を与野党別で見ると、与党が30.9%、野党が24.5%だった。
 「支持政党なし」は27.9%から16.5%に低下したが、参院選での支持を「未定」と答えたのは26.5%に上った。他の政党に大きな変動がないことから「自民離れ」の層は、民主党に移るか、支持政党を決められないでいるとみられる。
 日本の農業の将来に関する見方は、約半数が「やや悲観的」(48.2%)と答え、「絶望的」(18.2%)という回答と合わせると、66.4%が将来に明るい展望を描けずにいる実態が浮き彫りになった。「希望がある」は11.8%、「やや楽観的」は10.3%にとどまった。
 農業の将来について、年代別で見ると、「やや楽観的」「希望がある」という前向きな答えは60代以上で13.2%だったが、20―50代の合計は28.6%と倍以上に上った。「担い手」の30―40代に限ると、前向きな見方がともに3割を超えた。年代が上がるほど、農業の将来に悲観的な見方が強まる傾向がうかがえた。
 参院選への関心は「非常にある」が40.9%で最も多く、「少しはある」(34.7%)と合わせると75.6%が関心を示した。
 参院選での支持政党との関係で関心度を見ると、「非常にある」「少しはある」を足した割合は自民党支持層が71.6%、民主党支持層は93.1%に上った。
 今回の選挙で支持する政党は、自民党30.0%、民主党 21.2%、公明党 0.9%、共産党 1.4%、社民党 1.4%、国民新党 0.3%、その他 1.2%、無回答 0.6%。

[調査の方法]6月中旬から7月上旬にかけ、東北6県の農業者を任意に抽出し、記者による面接方式で実施した。340人から回答を得た。県別内訳は青森30人、岩手35人、宮城151人、秋田52人、山形35人、福島37人。男性268人、女性72人。 

自力で風吹かす…党首直撃《3》共産党・志位和夫委員長(07/07/14 スポーツ報知)
日時:2007717
(07/07/14 スポーツ報知)
自力で風吹かす…党首直撃《3》共産党・志位和夫委員長
◆第21回参院選(7月29日投開票) 与野党逆転の可能性も浮上する今回の参院選。2大政党制の選挙戦が定着しつつある中で、“老舗”の共産党が苦悩している。クリーンな政治姿勢、庶民生活を守る主張は一貫してきたが、必ずしも票と結びついていない。それでも志位和夫委員長(52)は「与党に対抗するには旗印が必要」、「民主党とは政権協力はできない」ときっぱり。時代が変わっても「我が道」を突き進む覚悟だ。
 ―国会をにぎわせた事務所費問題は機関紙「赤旗」が火を付けた。
 「この問題は政界を揺るがし、今も『赤城問題』の形で発展している。我々は国会議員の数は少ないが、現実の政治を動かすという意味で、我が党ならではの仕事をやれたという自負はある。選挙の流れを作れた」
 ―選挙でのアピールを。
 「スローガンは『ストップ貧困』と『9条を守れ』。安倍自公政権は数の暴走をやっている。ブレーキのない欠陥車が右にしか曲がらないハンドルで突っ走っている」
 ―安倍政権の評価できる点をあえて挙げると。
 「就任直後に日中首脳会談を行い、関係改善に一歩前進したところ。でも、安倍首相の従軍慰安婦問題の解釈で物議を醸す発言をしており、この内閣が歴史問題の認識について、まともに切り替えたわけではない」
 ―安倍首相と同い年で、同期当選(93年)。15年足らずで党首同士でやり合うと想像できた?
 「そういう思いは全くありませんでした。同期といっても、他党の人ですからプライベートでも接点はないですよ」
 ―長年、党を率いた不破哲三氏が昨年、第一線から退いた。名実ともにトップとして初の大型選挙に臨むことになるが。
 「本当に責任が重くなった。全体の責任を背負って戦わなければならない。精魂を傾けて何とか勝利をつかみたい」
 ―目標は。
 「6議席プラス・アルファ。現有5議席(比例4、選挙区1)を維持したい。現在の参院の議席は9人だが、10人いると本会議での質問回数が増やせる。衆参で10人ずついれば党首討論もできるが、現状では無理(現在衆院は9議席)。10人いれば面白い場面を提供できますよ」
 ―野党優勢の選挙予想もあるが、野党共闘は?
 「安倍内閣の暴走を止めるには、議席の数が大事というのは分かっている。ただ、立ち向かう上ではきちんとした『旗印』がないとダメ。例えば、党首討論会で『庶民大増税にストップ』と主張したのは私だけ。民主党のマニフェストを見ても庶民増税に反対とはうたっていない。改憲でも9条を守る姿勢はないどころか、むしろ憲法を変えていこうとする姿勢は自民党と同じ旗印だ」
 ―民主党とは組めない?
 「いくら野党協力と言っても、これでは暴走を止める力にならない。一枚岩でなければ、相手の勢いにもっていかれてしまう。民主党とは国会内で政策などの協力は考えられるが、政権協力という形ではあり得ない」
 ―とはいえ、共産党は選挙のたびに議席を減らす。無党派層対策は?
 「うーん…。やはり怒りと要求をいかに国民と共有できるかだと思う。年金、増税、憲法といった課題で、国民の思いに応える政策を届けることをしないといけないのかな。最近、米国のメディアで日本共産党を特集されたが、『日本の大政党は政治的違いを見いだせない。唯一の政治的対決者が共産党である。日本の共産主義は活力を持ち、健全だ』と(笑い)。我々のような野党は必要だと思う」
 ―98年の参院選(15議席)は躍進したが、今回は似た状況はあるか。
 「自民党の『崩れ方』は共通する。当時は橋本内閣の末期で、構造改革を失敗し、減税や財政ばらまきで迷走した。今の自民党がバタついているのは似ている。ただ、最近の選挙は2大政党制のキャンペーンを張られている。これを超えて共産党の支持を得るには相当な力がいる。それには自力で風を吹かせないと」
 ―夏場の選挙に向け、体調管理は。
 「実は今年3月から減量に取り組んでいる。やり方は『キャベツダイエット』。朝夕の食事の前にボール1個分の千切りキャベツを食べて満腹感を得るのだけど、これが驚くほど体重が減る。4か月で6キロ減、ベルトの穴は4個分は動いた。フットワークも軽くなったし、体重が1キロ減れば1議席は増えるんじゃないかな(笑い)」
 ◆志位 和夫(しい・かずお)1954年7月29日、千葉県四街道市生まれ。52歳。73年、東大入学後まもなく日本共産党に入党。79年東大工学部卒業後、同党東京都委員会へ。90年、非議員ながら異例の書記局長に抜てき。93年、旧千葉1区で衆院初当選。2000年党幹部委員会委員長に就任。趣味はクラシック音楽。家族は孝子夫人と1女。血液型O。

(2007年7月15日 中日新聞)
【参院選2007 長野ニュース】
候補者アンケート(上) 「年金」「憲法」
 二十九日の投票日に向け、激戦を繰り広げている参院選。長野選挙区(改選数二)に立候補している現職と新人の四人に、争点になっている年金や憲法、格差社会、さらに就任から間もなく一年を迎える村井仁知事の評価など、六つのテーマについてアンケートで考えを聞いた。=上から届け出順 (参院選取材班)
◆吉田博美候補(58)自現
▽年金…政府対応は最善の策
 年金記録の問題は、基礎年金番号の導入の際、一人一番号へ統合するための作業に問題があったが、方向性には問題はない。政府の一年以内の照合完了、給付保証などの対応は、今できる最善の策だと思う。現行制度は二一〇五年までの百年間の枠組みで六十五歳から現役世代賃金の約50%の年金を受給できる、将来にわたって持続可能な制度であること、安定した制度の運営のためには年金業務の一層の合理化、効率化を図る必要があることなどの説明責任を果たす必要があると思う。
▽憲法…時代に対応し改正も
 現行憲法は日本の平和と安全に貢献しているが、憲法はその時代の国際情勢などに適切に対応できるものでなければならないと思う。現憲法の起草当時には想定できなかったと思われる「プライバシー権」「環境権」「積極的な国際協力」などについては改正すべきだと考える。平和を大切にする気持ちは戦後一貫して変わっていないので、憲法九条は改正する必要がなく、自衛隊の海外活動は、武力行使はしないという現状の歯止めのもとで認めるべきだと思う。
◆羽田雄一郎候補(40)民現
▽年金…「一つ」にして公平に
 今回の「消えた年金」の問題は、あまりにも長過ぎた自民党政権の甘えとおごりの象徴でもある。本質をあいまいにしたまま、その場しのぎの不誠実な対応を断固許してはならない。まずは、消えた年金の補償が最優先。同時に一人たりとも年金被害者を生んではいけない。年金手帳を交付していつでも記録の確認を可能にする。すべての年金を一つにして公平にする。最低限の生活資金を保障する最低保障年金と、払った額に応じてもらえる所得比例年金制度を設ける。
▽憲法…「自衛隊」広く議論を
 憲法は、今年で満六十年。平和憲法の精神が日本の民主主義と平和と繁栄の基盤を築き支えてきた。国民主権、基本的人権の尊重、平和主義。この原理を厳守することが基本。九条についても尊重する。ただ自衛隊の活動も含め、どんどんその解釈が拡大している。国際貢献、平和活動、現実的平和主義等々、もっと広範な議論を深めるべきだと考える。
◆中野早苗候補(59)共新
▽年金…最低保障制度を創設
 歴代の首相と厚労相の共同責任が問われている。社会保険庁の解体には反対した。新しい「日本年金機構」の役員は国会で答弁する義務もなく、国の責任逃れといえる。いますべきは急いで一人残らず救済することを国の責任でやること。無年金者、低年金者をなくすために全額国庫負担による最低保障年金制度の創設を提案したい。当面、すべての国民に月五万円の最低額を保障し、その上に、支払った保険料に応じた一定額を上乗せする年金制度に改善する。
▽憲法…現行法は「世界の宝」
 尊い犠牲のうえに制定された現憲法は「世界の宝」ともいうべき第九条に示されているように、武力に頼らず、平和と対話による外交によって世界の信頼を集めている。恒久平和、主権在民、基本的人権や民主主義、男女平等など現行憲法のすべての条項を守り、暮らしにいかすよう全力をあげる。集団的自衛権の行使は「日本防衛」とはまったく無関係に、他国のために武力を行使するというもの。自衛隊は縮小し、災害救助などの国際貢献は支援する。
◆中川博司候補(49)社新
▽年金…税方式で月額8万円
 政府が原因と責任を明確にしないまま、年金時効撤廃法や社会保険庁解体法を成立させたことは、ますます年金不信を深めるだけ。「消えた年金記録」は、保険料を支払ったという立証責任を国民に押し付けるやり方を改め、国も立証責任を負うべきだ。年金制度の抜本改革のため(1)国民誰もが受け取れる全額税方式で月額八万円の「基礎的暮らし年金」を創設(2)年金加入期間や将来の見込み額が分かる「マイ年金通帳」を国民に配布(3)公的年金制度は国が責任を持って運営管理を。
▽憲法…「九条外交」進めよう
 先の戦争の深い反省から生まれた憲法の平和主義、国民主権、基本的人権の尊重という三原則は、現在もまったく色あせていない。憲法を現実に合わせて改悪するのではなく、現実を憲法が指し示す理想にいかに近づけていくかが問われている。憲法を暮らしや政治にもっと生かす政策が必要だ。特に九条の改正には反対。九条があったおかげで、自衛隊の武力行使に歯止めがかかり、平和な日本が続いてきた。武力なき世界を目指すため、日本は「九条外交」を進めるべきだ。

(2007年7月16日 中日新聞)
<だから1票> (2)憲法 海外派遣、揺れる自衛官
 九条の現場での悩みは深い。
 大津市の藤井敏彦(56)=仮名=は、妻の言葉が忘れられない。二〇〇三年七月にイラク復興支援特別措置法が成立。自衛隊派遣が決まった直後に言われた。
 「良かったね。イラクに行かなくって」。藤井は一九九七年に除隊していた。そして妻は言葉を重ねた。
 「息子は絶対に自衛官にさせない」。その気持ちは痛いほど分かった。
 二十数年前、藤井は北海道の上空にいた。陸上自衛隊のヘリコプターパイロットとして、ある任務を背負っていた。そこへ網走の管制隊から無線が入る。
 「前方に標的」
 飛行場から飛び立つロシア戦闘機が目に入った。ヘリは風でロシアの領空に流されていた。「撃たれる」。とっさに高度を下げる。内臓がせり上がった。
 「死ぬかと思った。こっちは攻撃できないが、向こうは違うから」
 専守防衛。日本の防衛の基本方針だ。藤井は航空自衛隊の例で説明する。緊急発進時には、二機のジェット機が飛び立つが、一番機は「死番」と呼ばれるという。一機がやられなければ、攻撃はできないからだ。
 十五歳の時、自衛隊生徒として入隊し、自衛官として三十年以上過ごした。晩年、自衛隊は次々と海外に行くようになった。
 きっかけは九〇年の湾岸戦争。百億ドル以上を拠出しながらも「人は出せないのか」と批判を浴び、九一年に、機雷除去のためペルシャ湾に海上自衛隊を派遣した。
 国連平和維持活動(PKO)協力法を整備し、カンボジアや東ティモールへも向かった。そして、イラクへ。
 藤井は海外派遣に異を唱える。「海外に行く必要はない。自衛隊法には日本の独立と平和を守るのが自衛隊の使命とある。世界を守るなんてどこにも書いていない」
 だが、海外への動きは加速している。
 自民は〇五年十月に新憲法草案を発表した。九条一項の戦争放棄はそのまま残し、戦力不保持をうたった二項は書き換え、「自衛軍の保持」を明記した。
 任務の一つは、国際社会の平和と安全確保のための活動。明文化はされていないが、海外での武力行使も容認している。
 今年五月には、憲法改正の手続きを定めた国民投票法が成立。自民は施行される一〇年の改憲発議を公約に掲げる。
 参議院議員の任期は六年。選ばれた議員が憲法改正に直面する可能性は高い。
 改憲すべきか否か。藤井は「分からない」と言う。「それは国民が決めること。自衛官は国の命令に粛々と従うのが使命だから」。それゆえ、隊員の気持ちを代弁するかのように付け加えた。
 「隊員にも死んだら悲しむ家族がいる」

(070714「連合通信・隔日版」)
・参院選/公示後も原則自由/機関紙の選挙記事/法定紙か否かで違い
 参議院議員選挙(七月二十九日投開票)は、国民の暮らしと日本のあり方を決める大事な選挙です。労働組合などの機関紙は特定候補や特定政党の支援を訴えないかぎり、原則的に自由な活動ができるので積極的に活用しましょう。
 公職選挙法は「選挙運動の制限に関する規定は、新聞(これに類する通信類を含む)又は雑誌が、選挙に関し、報道及び評論を掲載するの自由を妨げるものではない」(第一四八条)と規定しています。
 機関紙は公選法のいう「新聞」に含まれているので、原則として選挙運動記事も政治宣伝記事も自由に掲載し配布できます。公示前と公示後で違いはなく、本紙や号外の別、発行団体のいかんも問いません。配布方法も自由です。
 ただし、特定候補・特定政党の名前・顔写真を明示し投票や支援を訴えるなどストレートな選挙運動記事
を掲載する場合、機関紙が法定紙か非法定紙かによって規制が少し変わります。
 同法に機関紙の定義規定はありませんが、判例などによって次の四要件をそなえたものと解釈されます。@多数の人に配布されるA特定の名称で定期発行されているB組合費や会費、購読料などで発行されているC「報道・評論」を主としている――。
 〈法定紙〉
 法定紙とは、@毎月三回以上の発行(機関誌は月一回以上)A第三種郵便物認可B公示前までに一年以上継続的に発行――の三要件を満たすものです。
 法定紙は公示前・後を問わず、特定候補・特定政党の名前や顔写真を明示し投票や支援を呼びかけるなど、選挙運動についての記事はすべて掲載できます。
 こうした記事を掲載した場合の配布は、「普段からやりつけている方法」で行うという注意が必要です。
 特定候補・特定政党支援にはあたらない、政治家や政党批判などの政治宣伝記事、さまざまな要求や政策に関する記事、選挙情勢や日程、啓発についての一般記事などは掲載も配布も規制がありません。
 〈非法定紙〉
 非法定紙とは法定紙の要件を欠く機関紙のことで、公示の前と後で規制が変わります。
 ▽公示前=法定紙同様、選挙運動についての記事も政治宣伝記事も掲載できます。配布は「普段からやりつけている方法」で。
 ▽公示後=「選挙に関する報道、評論」はできないと規定されます。特定候補者や特定政党名を明示して投票や支援を訴える記事がこれにあたります。
 ただし、特定候補の支援や推薦を決定したことを組合員に伝える記事は通常の組合活動、内部行為ですから、非法定紙でも掲載・配布は可能。政治宣伝や政策・要求、選挙に関する一般的記事も掲載・配布は自由です。
「連合通信・隔日版」



最近のマスコミ報道(07/07/16) (憲法) 参院選候補者の徹底討論 座談会
日時:2007716
2007年7月16日 中日新聞
<論戦>3候補座談会 (2)憲法
<三重選挙区立候補者>
◆「時代に合う形」必要 高橋候補(民主)
◆派兵反対の立場貫く 中野候補(共産)
◆人権含め話し合いを 小野崎候補(自民)
 −憲法改正についてどう考えますか。
 小野崎 結論から言うと、私は憲法改正すべき派ですね。ただ、改憲か護憲かという単純な二元論ではないと思います。加憲というのもあるし、〇か×かというシンプルなものでもないんです。独立国家たる日本が最高規範の憲法を自分たちで決めるのは当然だし、時代に合わなくなってきた。九条だけじゃない。いわゆる新しい人権、環境権、プライバシー、生命倫理。こういうことを含め、しっかり議論すべきときに来ています。
 高橋 安倍総理は憲法問題を争点にしたいと言うが、このこと自体がおかしな話。憲法は権力である国を抑制させるためのもので、国そのものである安倍さんがそういう言い方をするのは、憲法自体を分かっていないのでは。改正は国民が納得できるような議論がわき起こるのを待ってから争点にするべきです。憲法が時代に合わなくなっているのは事実。環境権や首相の直接選挙の問題などは、時代に合う形に変えることも必要です。
 中野 今の憲法は過去の侵略戦争の反省、日本の植民地化の反省に立って九条をはじめとしてできましたから、すべての条項を守る必要があると考えます。(与党の)一番の狙いは九条だと思うんですね。戦争をしないと決めた九条を変えて、米国が海外で行う戦争に堂々と出掛けていける国づくりを目指すところに狙いがあります。だから、私たちはこれに反対という立場を明確にしています。
 −憲法九条については。
 小野崎 九条については個人的には慎重派なんです。中野さんとはっきり違うところですが、抑止力としての軍隊を最小限持つという基本的な考えに変わりはありません。これをいきなり海外派兵、戦争の国とされちゃうと、ちょっと違和感がある。集団的自衛権は、ずるずると解釈でもっていくのは反対です。
 高橋 日本の平和主義、戦争をしないという宣言は非常に大きな意味を持っています。九条は変えるべきでないと考えます。久間さん(前防衛相)ではないが、トップがあのような考えを持った人の場合、足かせがなければ、そっちに行く心配もされるんではないでしょうか。安倍さんは、今の憲法は米国、GHQ(連合国軍総司令部)が作ったと言いますが、草案は日本の国会議員が承認しているんです。その事実は重い。変えることが目的ではいけません。
 中野 先ほどの九条に対する考えに加えて言いますと、もともと安倍さんは二段階でやるわけですね。集団的自衛権の検討会で解釈改憲をした後、条文で憲法を変える。要はある程度、血を流すのが同盟なんやと。集団的自衛権をやれるようにするところに狙いがありますから、今まで最前線で銃が撃てへんだのが米国と肩を並べて戦争できる。英国軍並みにですね。ああいう形の戦争参加で日本も同じように行くと。反対の声が広がるのは当然です。私たちはその思いを一つにし、九条を守り抜くために頑張ってまいりたい。
 −そのほかの考えや九条以外では。
 小野崎 さっき(自衛隊が)暴走するって話が高橋さんからありましたが、文民統制はちゃんと利きます。その原則は変わっていない。問題は(民主の)鳩山さんや小沢さんは明確な改憲論者なのに、何で今回の参院選で引っ込めてしまうのか。この一貫性のなさが分からない。共産党の言うことは主義主張は違うけれども分かります。野党だ、確かな。民主党にはクエスチョンマークでいっぱいですよ。
 高橋 あのう、私たち民主党は(共産党のような)「たしかな野党」になるつもりはありません。確かな与党になるつもりです。
 小野崎 だったら、もっと大事じゃないですか。
 高橋 そんな拙速にすべきではないと言っているだけです。憲法の論議は十分やっていく必要があります。自民党の中にも改憲論者も護憲論者もいる。そういういろんな意見があっていい。
 中野 私は変えるというより、生存権の二五条のことですね。二五条を生かし、暮らしや社会保障を守る立場でやっていく必要があります。そういう点では壊してきた部分を反省して憲法を守って生かす。これを政治の力でやる必要があるんじゃないかと思います。 =発言者の敬称略

2007年7月15日 中日新聞
徹底討論 (2)憲法
<愛知選挙区立候補者>
 参院選に立候補している主要政党の公認候補による公開討論会では、憲法問題について六氏に基本的な考え方を聞いた後、自由に討論してもらった。主な発言内容は以下の通り。=討論会は順不同、テーマ別はまず主要政党の公認候補を上から届け出順に、次にその他候補を届け出順に。(愛知県政・参院選取材班)
■討論会
 八田(共産) 鈴木さんにお聞きしたい。「原爆投下はしょうがない」と久間章生前防衛相が発言したが、後任の小池百合子防衛相は「核武装については、国際情勢によっては検討すべきだ」と発言している。(こうした発言をする人は)防衛相をすべきではないと思うが。
 鈴木(自民) 国会の答弁でもなく、正式の場所で大臣として表明した訳でもない。そう言われても私も困る。
 八田(共産) 新聞のアンケートに公然と答えている。(小池防衛相の発言は)被爆者の思いとは違うのではないか。
▽久間発言許されぬ
 鈴木(自民) 今の世の中で原爆、核を使うなんて日本人の中で誰一人も思っていませんよ。平和の中でどう生きていくかをみんな考えているんです。久間さんの発言は正直言って言語道断の話です。(自民党の)私だってそう思うんだから。
▽自衛隊の説明必要
 大塚(民主) 当事者(小池氏)がいないところで意図を議論してもあまり建設的ではないとも思いますが…。結局、九条一項、二項は理想だから守りたい。しかし、現実に自衛隊は存在するわけで、この現実を国民あるいは子どもたちにどう説明していくのか。やはり説明能力がない憲法というのは、信頼を得ることにならないのではないでしょうか。
▽理想実現こそ仕事
 谷岡(民主) 同じ民主だけど、そこは異論がある。憲法は理想を書いている。憲法の多くの理想はまだ、実現していない。憲法に現実を合わせていくのが私たちの仕事。憲法を現実に合わせるのは逆転した考え方。憲法の理念は普遍的なものを形にしたもの。六十年で賞味期限が切れるようなものではない。
▽行政を縛る側面も
 山本(公明) 憲法には理想や理念を示すとともに、国家の基本法として行政を縛るという二つの面がある。憲法制定から六十年がたち、素晴らしい理想だったからこそ、日本が戦争をしてこなかったという現実がつくられてきた。これは大事なことだ。
 大塚(民主) 憲法改正は三分の二の国会議員の発議がないとできないわけです。だから、国論を二分してまで、この九条を改正するべきではないという歯止めになっています。そこのところを理解していくと、今の山本さんのような考え方に到達しますので、(谷岡さんと)そう意見の違いはないと思います。
▽政府の施策が悪い
 平山(社民) 憲法のおかげで今の日本の発展がある。今、憲法を変えようとする動きがあるのは、交戦権を認めないという九条二項に手をつけようとする自民党の意図が中心にあるからです。貧困や社会保障の問題は改正論議とは無関係だ。憲法が悪いように言われているが、悪いのは憲法ではなく、きちんと施策をしない政府だ。九条二項が自衛隊員の命を守っている。
▽草の根の声聞いて
 八田(共産) 山本さんが言われたが、自衛隊の海外派遣では、九条二項が武力行使の歯止めになっており、非常に重い。九条一、二項を変えても、(内容を)加えてもいけない。国民を抜きにした国会の議論は許されない。全国では六千、愛知県では六百を超える「九条の会」がつくられている。この草の根の声にきちっと耳を傾けることが大事だ。
■テーマ別
◆平山良平候補
 イラク攻撃が始まった時から一貫して自衛隊の派遣には反対してきた。即時、撤退を求める。五十三年前、国会で自衛隊の海外出動は憲法に照らし、行ってはならないという決議がなされたにもかかわらず、その精神が踏みにじられている。
 戦争を真摯(しんし)に反省しようとする当時の国民感情を無視して、小泉、安倍両政権は自衛隊を重武装させてイラクに派遣してきた。安易な米国追随と言わざるを得ない。いつ、航空自衛隊の輸送機が撃墜されるか分からないという状況が放置されている。憲法を守るという一点において、社民党・平山良平は参議院に乗り込みたい。
◆鈴木政二候補
 今の憲法が施行されて六十年。憲法は占領下という特異な状況の中でつくられ、この間、一度も改正はされてこなかったが、やっとこの間(改正の)手続き法ができた。憲法を直視し、中身を議論して総点検すべき時期に来ている。世界の中でも日本はそういう立場になってきた。
 平和を守るために議論し、憲法を改正すべき点は改正し、新しいプライバシー権などの人権も踏まえ、総合的に日本の形、歩む道を議論すべきだ。決して逃れてはいけない。(改正発議が可能な)三年後は(今回改選される議員の)任期中になるので、議論して合意形成をするのが大事だ。
◆八田ひろ子候補
 現行憲法の全条項を守る。特に平和的、民主的な条項の完全実施を目指す。私は二十年間、九条バッジをつけ、二度と戦争をしてはならないと胸に刻んで活動してきた。武力を使わず話し合いで解決しようという九条は、日本と世界の宝だ。
 九条は今、世界で注目されている。ボリビアなど九条のような条項を憲法に加えようという国もある。九条の精神を世界に広めることが大事だ。イラクへの「自衛隊派兵」では、「サマワは安全。自衛隊は派遣」の結論ありきで、米国軍の物資や米兵を運んでいる。間違った戦争に加担する行為で、九条に反し、絶対に許されない。
◆谷岡郁子候補
 今の憲法の理想、理念をしっかり実現したい。自由、人権、民主主義、三権分立といったものが、ほごにされつつある。国会軽視と形骸(けいがい)化や、弱者の人権が奪われて、国民の言論の自由に制限が加えられようとする今の国家の状況を強く憂いている。
 九条の改正はノー。米国型の産軍共同体に政権が誘導され、戦争が頻発する米国型社会に日本が移行することに、九条が歯止めをかけてきた。自衛隊はイラクから即撤退するべきだ。他国が正当性のない戦争からどんどん撤退している中、日本がその決断をできないのは、国家としての機能を失っている。
◆大塚耕平候補
 改正すべき点はあると考える。財政の健全化を義務づける条項や、新しい基本的人権、環境権などだ。ただし、三分の二の国会議員の発議がなければできないわけだから、国論を二分して改正すべきではないと思う。
 唯一の被爆国として、(戦争放棄や交戦権を認めない)九条一項、二項は日本国憲法の象徴として残すべきだ。ただし、現実に存在し機能している自衛隊をどう位置づけるか、明確化していく必要がある。自衛隊のイラクからの即時撤退は望ましいが、国際的信用もある。撤退期限を国会で決め、内外に知らせたうえで撤退する必要があると思う。
◆山本保候補
 「加憲」の考え方だ。基本的人権の中で、プライバシー権や環境権を加える。教育や福祉も、よりよい生活を保障するために変えていく。
 九条は変えるべきではない。自衛隊の存在意義や海外派遣は、すでに自衛隊法の改正やイラク特措法で話がついている。集団的自衛権については、東アジア情勢に関して米国、中国、北朝鮮、韓国、ロシアとの外交努力をしているが、九条は邪魔になっていない。イラクに派遣された自衛隊を視察したが、憲法の前文にもあるように、世界から戦争をなくすという理想を達成したい。国際的に働き掛けていかなければならない。
◆柘植雅二候補
 今の憲法は米国の押しつけ以外の何物でない。国民の権利を保障しているにもかかわらず、憲法9条で武力行使が全くできず、北朝鮮による拉致問題では何もすることもできないという矛盾を抱えている。すべて破棄し、新しい憲法を作り直さなければならない。米国の雇い兵化している自衛隊のイラク派遣は問題。国を守るための自衛隊であるべきだ。
◆荒川厚太郎候補
 自・公が強引に行おうとしている改憲には反対だ。しかし、今の日本の憲法は、終戦後の占領下でマッカーサーから押し付けられたものだ。時代の変化にも合っていない。国民が合意し、9条を含めて憲法改正を求めるというのなら断行すべきだ。自衛隊のイラク派遣は、日本政府が米国ブッシュ政権のご機嫌を取っているだけ。情けない。断固反対する。
◆兵藤高志候補
 有事対応の法整備が脆弱(ぜいじゃく)なので憲法改正は必要。自衛隊は軍隊として認めるべきだ。総理大臣の権限強化も必要。有事の際は専断できる仕組みを作らないといけない。また、個人や企業の私権より、国家を優先させるべきだと思う。自衛隊のイラク派遣については、派遣目的に武力行使が入っていないので、問題はないと考えている。

2007年7月15日 中日新聞 
争点・私の主張 <2> 改憲問題
<岐阜選挙区立候補者>
第二回のテーマは改憲問題。安倍晋三首相は今選挙後に改憲論議を本格化させたいとしている。年金への関心が高いとはいえ、最大の争点の一つであることに変わりはない。(届け出順)
 質問項目は次の通り。
 <1>第九条の改正についての賛否は。また、自衛隊と集団的自衛権の位置付けに対する考え方は
 <2>改憲論議に対するスタンスは
 <3>自衛隊のイラク派遣への賛否は。また、今後どうするか
◆加藤 隆雄候補(58)<共新>
 (1)「戦争はしない」「武力は持たない」とする憲法九条によって戦後、国民は海外で人を殺すこともなく、平和は経済成長に大きく貢献した。改定は日本を、米国に従って「戦争する国」に変えること。「集団的自衛権は憲法上行使できない」とした政府の憲法解釈を変える動きに反対する。
 (2)安倍内閣の閣僚のほとんどが過去の日本の侵略戦争を「正しい戦争だった」とし、戦後レジーム(体制)からの脱却を掲げ、戦前・戦中の軍国日本を「美しい国」とする「靖国」派。ここに危うさがある。民主党もこれと対決しようとしない。戦争反対を貫いた共産党が伸びてこそ、憲法九条を守る力が大きくなる。
 (3)速やかな撤兵を要求する。自公政権はイラク特措法を二年延長して派兵を継続しているが、英などは撤退、削減を進めている。「米国いいなり」から脱し、国民の利益に立った自主・平和の外交に転換すべきだ。
◆平田 健二候補(63)<民現>
 (1)国の基本が「国土、国民、自治」であるなら対策は必要。国を守ることは国権の最大の責務。拡大解釈ではない対応が必要。専守防衛の権利はすべての国にある。わが国の平和と安全を直接的に脅かす急迫不正の侵害を受けた場合に限り、憲法九条にのっとり自衛権を行使する。また国際平和維持のため国連の要請に基づき、わが国の主権的判断と民主的統制の下に積極的な参加が必要。
 (2)「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」という現行憲法の原理は、国民の確信によりしっかりと支えられている。現行憲法に足らない点があれば補い、改めるべき点があれば改めることを国民の皆さんに責任をもって提案していく。
 (3)イラクに対する多国籍軍による武力行使が正当性を有していない。イラク特措法の法的枠組みは破たんしており、派遣されている自衛隊をただちに撤退させる。政府の判断について検証し、責任を総括すべきだ。
◆藤井 孝男候補(64)<無元・自公推薦>
 (1)わが国の安全保障を確保するために、わが国は「平和立国」であることを宣言した上で、「わが国の独立と安全を守るために自衛力を保持する」というように改める必要があるのではないか。また、集団的自衛権は国際法上で認められた国家の基本権であり、「行使できない」とする政府の解釈を変更すれば良いと考える。
 (2)現憲法も施行後六十年を経過し、世界も変わり日本を取り巻く環境も変化している。三十年後、五十年後の世界や日本を見据えながら、どのような憲法がふさわしいのか国民的議論を積み上げていきたい。国際社会の恒久平和や地球環境の保護といった国際的課題や、公教育に対する国の責任などを新たに加えるべきだと考える。
 (3)イラクに派遣された自衛隊は誠実にその使命を果たしてきたが、これ以上多くを求めても法律上無理がある。状況を判断して撤退すべき時期が近いと思う。

【改憲問題】安倍首相が今年の年頭記者会見で、改憲を参院選の最大の争点にすると宣言。5月14日に憲法改正手続きの前提となる国民投票法が成立したのを受け「2010年の(憲法改正の)国会発議を目指す」と、自民党の参院選公約に盛り込んだ。投票にかけるのを9条をはじめとする条文ごとにするか、全部を一括にするかで将来像はまったく異なるが、自民党の本音は「一括投票」といわれる。


最近のマスコミ報道(07/07/15) 「9条守る」共産党 参院選重大争点 憲法 自民「3年後改憲発議」 民主、9条改憲は同じ
日時:2007715
2007年7月15日(日)「しんぶん赤旗」
「9条守る」共産党
参院選重大争点 憲法
自民「3年後改憲発議」
民主、9条改憲は同じ
 「『9条』『格差』考えて投票を」「今の憲法守り平和つらぬけ」―一般紙にこんな投書が相次いでいます。安倍・自民党が三年後に改憲発議することを参院選公約のトップに掲げるなか、改憲問題が今回の参院選の重要な争点になっているからです。憲法を守る「たしかな一票」をどの政党に託したらいいのか、問われるときです。

 「リーダーシップを発揮しなければこの壁は打ち破れない」。安倍晋三首相は十一日の七党党首討論で、こう述べて改憲にむけた“リーダーシップ”を誇りました。
 自民党は、今回の参院選で『新憲法草案のポイント』『憲法改正国民投票法のすべて』のパンフレットをあいついで作製。「(参院議員の)6年の任期中には、我が国憲政史上はじめての『憲法改正の発議』が予想されます」「憲法論議に重要な影響を与える選挙」と位置づけ、力を注いでいます。
 同パンフを作製した自民党憲法審議会の中山太郎会長は日本会議国会議員懇談会の顧問、石破茂・事務局長は副会長、萩生田光一・副会長は同じく事務局長を務める「靖国」派です。自民党の“改憲司令部”が「靖国」派に牛耳られた形です。
 安倍首相が「海外で米国と肩を並べて武力行使」と述べているように、九条改憲は「海外で戦争する国」づくりをすすめることです。自民党パンフで「『改憲』を明らかにした政党」と評される公明党も、九条「加憲」で「戦争する国」づくりに加担しています。
 参院選の直後に重要になるのが、衆参に設置される憲法審査会でのたたかいです。与党は改憲案づくりへ、「項目抽出」をすすめようとしています。これに対し、九条改憲反対を国民の多数派にし、改憲の発議を許さないとりくみが重要です。
 日本共産党は、改憲手続き法審議で、中山氏に「共産党がいなかったらもっと早くいったのに」と悔しがらせる論戦を展開しました。その議席が一議席でも増えることが求められています。
 日本共産党は、反戦・平和を貫いて八十五年、安倍改憲路線に正面から立ち向かう立場と勇気をもつ政党です。それは「靖国」派の日本会議自身が「改憲を阻止しようとする日本共産党。それに対して、私どもは、自民党や民主党などの『新憲法制定派』議員と連携して…新憲法を制定しようとしている」(同会議首都圏地方議員懇談会)と述べていることでも明らかです。
 民主党の小沢一郎代表は、参院選では改憲問題にふれようとしません。しかし討論会や新聞アンケートに改憲の必要性を主張する候補者が目立ちます。それも、同党が「靖国」派議員を多数抱え、二〇〇五年の「憲法提言」で九条改憲を明確にしたれっきとした改憲政党だからです。この民主党と選挙協力を行う社民党も、その立場が問われます。

■改憲問題格闘の態(参院選公約などにみる)
(共産党) 改憲暴走に正面から立ち向かい、憲法を守りぬく。9条改悪に反対する国民的多数派形成に力を尽くす。
(自民党) 公約冒頭に2010年の国会での改憲発議を明記。全国に「国民投票の会」をつくり国民的運動担う。
(民主党) 争点化避けつつ「改めるべき点は改める」と明記。9条改憲を明確にした「憲法提言」で国民的議論を展開。
(公明党) 9条に自衛隊・国際貢献を明記した3項の「加憲」狙う。公約では3年後に「加憲」案をまとめると明記。
(社民党) 9条改憲を許さないと公約。一方で民主党と選挙協力。
(国民新党) 「自主憲法の制」を公約。

 


最近のマスコミ報道(07/07/14) 市民団体アンケート 自民も民主も「9条改正賛成」
日時:2007714
2007年7月14日(土)「しんぶん赤旗」
市民団体アンケート
自民も民主も「9条改正賛成」
 参院選候補者を対象に政策アンケート実施した市民・法律家七団体が十三日、国会内で会見し、調査結果を発表しました。自民党の“タレント候補”や民主党候補が、憲法九条について「改正賛成」とするなど、政党間での違いが鮮明になりました。
 「憲法九条改正の是非(ぜひ)」の質問に、「改正賛成」を表明した候補は政党別に、民主党七人(回答二十四人)、自民党五人(同六人)、公明党二人(同三人)などです。日本共産党(回答四十九人)、社民党(同十六人)、国民新党(同七人)の三党は、回答した全候補が「反対」でした。
 日本民主法律家協会、日本婦人有権者同盟、日本青年団協議会など七団体が、有権者が候補の政策を知り、投票に役立つようにと実施しました。七団体によるアンケート調査は初めて。
 調査は、七団体が四日までに出馬を把握したうち連絡先が確認できた三百四人にアンケート用紙を送付。「憲法改正」「年金問題」「政治と金」「参議院のあり方」「男女共同参画」の五項目で政策を問いました。十二日午後三時までに百十九人(39・1%)が回答しています。

07/07/13 京都新聞
年金で応酬、憲法は違い鮮明
参院選・京都の4候補
参院選が12日公示された。29日の開票結果は、年金や格差の問題、政治や憲法の在り方など日本が直面する課題の行方と、今後の政局を大きく左右することになるだろう。京都選挙区(改選数2)に立候補した民主党現職の松井孝治、自民党新人の西田昌司、共産党新人の成宮真理子、維新政党・新風新人の大城戸豊一の4候補の訴えなどから、今選挙の争点と意義を探った。 
 社会保険庁による年金記録不備問題、事務所経費に絡む松岡利勝前農相の自殺や、久間章生前防衛相の失言などによる閣僚の相次ぐ交代で、安倍政権の支持率は急落している。5月ごろまで自民党に漂っていた「勝利ムード」は一転、逆風が吹く中での公示となった。 
 京都選挙区の候補者の第一声も、そうした政治情勢を如実に反映した。 
 民主の松井候補は「年金制度がガタガタになっている。直ちに全国民に納付記録を送り、被害者を救済する」とし、共産の成宮候補も「一人残らず年金を保証し、だれもが安心できる年金を取り戻す」と年金の記録不備問題を受けて国民に高まっている「年金不信」の解消策を真っ先に訴えた。 
 これに唯一の与党、自民の西田候補は「年金問題の原因である社会保険庁を解体し、安倍政権のもとで100パーセント解決する」と反論。当初は憲法など戦後体制問題を主に取り上げる予定だったが、年金問題の説明を必ず入れる主張に変えた。そのうえで、「福祉や教育などの問題の背景に地域や家庭の崩壊がある」とし、「日本人の良識と伝統を生かす国づくり」を訴えた。 
 松井候補は「政治とカネ」や中央集権の問題にも言及した。「天下りや族議員、ひも付き補助金の構造にメスを入れる」とし、「地域主権社会」の実現を強調した。成宮候補は地域や所得で広がる格差の問題に比重を置き、「正規雇用を増やし、最低賃金を上げる。そうすれば地域にもおカネが回る」と力を込めた。 
 先の通常国会で国民投票法が成立し、現実味を帯びてきた憲法改正。安倍首相も当初最大の争点としたが、年金問題でかすみがちだ。それでも西田候補は「戦後占領体制のもとでつくられた憲法やさまざまな制度が機能不全を起こしている」と訴え、大城戸候補は「米国が押しつけた憲法は無効だ。破棄して自主憲法を制定する」といずれも現憲法を否定する立場を鮮明にしている。 
 松井候補も公示前の討論会などで憲法について問われると「自衛隊をコントロールするため憲法に規定すべき」などと改憲論を示したが、街頭や演説会では特に触れない構えだ。これに対し、成宮候補は「憲法のすべての条文を守る」と護憲の姿勢を前面に出し、「安倍政権は改憲により海外で戦争ができる国にしようとしている」と警鐘を鳴らす。 
 こうした政策課題とは別に、各候補と並んで演説した党幹部は、今選挙の位置づけや意義を強調した。 
 自民の伊吹文明文科相が「与党が過半数を確保できなければ、すべての法案が参院で止まり、日本の政治は大混乱することになる。極めて重要な選挙だ」としたのに対し、民主の前原誠司前代表は「2年前の衆院選で与党が三分の二を占め、強行採決による暴走政治が続いている。参院の与野党逆転で止めるしかない」とそれぞれの候補当選の意義を訴えた。共産は穀田恵二国対委員長が「二大政党論がいわれているが、自民も民主も変わりない。悪政と対決する共産が伸びないと国民の切実な要求が実現できない」とした。 
 各選対とも「全国で自民が40議席前半にとどまれば安倍退陣が避けられない」と口をそろえる。29日の投開票日に有権者が安倍政権をどう評価するのか、今後の論戦の行方が流れを決めよう。



最近のマスコミ報道(07/07/13) 集団的自衛権「行使容認」報告の意向 懇談会座長が見解
日時:2007713
2007年07月11日 朝日新聞
集団的自衛権「行使容認」報告の意向 懇談会座長が見解
 集団的自衛権の研究を進めている有識者懇談会の柳井俊二座長(前駐米大使)は10日、朝日新聞のインタビューに答え、集団的自衛権の行使容認を安倍首相に求める報告書を今秋まとめる意向を表明した。政府の憲法解釈では集団的自衛権の行使は禁じられているが、柳井氏は「現実に合わない憲法解釈はもうやめるべきではないか」と語り、解釈変更が必要との認識を示した。 
 懇談会は首相の私的諮問機関。首相が検討を指示した4類型のうち、これまで(1)公海上の米艦防護(2)米国向けの可能性があるミサイル迎撃の2点について議論し、いずれも集団的自衛権の行使容認が大勢だった。 
 柳井氏はインタビューの中で冷戦終結後の北朝鮮の核・ミサイル問題や中国の軍拡を指摘。そのうえで「背景が変わったのだから憲法解釈も変わってしかるべきだ。みんなの考え方もそういう方向だ」と語り、懇談会の議論に沿った結論を出す考えを明らかにした。 
 首相は5月の初会合で、4類型を可能だとする場合には「明確な歯止めを国民に示すことが重要」と要請している。柳井氏はこの点について「歯止めは(自衛隊の海外派遣に関する)一般法など基本的政策を法律の形で表す」と述べ、法整備の必要性も報告書に盛り込む考えを示した。 
 また、有識者懇談会の結論について「足して2で割るような結論は出したくない。政治がどこまで採用するかは政策判断の問題」と述べ、参院選後の政治状況にかかわらず行使容認を打ち出す意欲を強調した。 
 首相が示した4類型のうち、国連平和維持活動(PKO)などで行動をともにする他国軍への攻撃に自衛隊が対処することは8月8日に議論する。政府はこれを憲法上禁じている海外での武力行使につながりかねないとしてきた。その後、周辺事態などで行う後方支援の範囲を広げる検討をする予定だ。 
 〈集団的自衛権研究〉 安倍首相は4月に有識者懇談会を設置し、(1)公海上の米艦防護(2)米国向けの可能性があるミサイル迎撃(3)PKOなどで他国軍が攻撃された場合に駆け付けて警護する(4)海外での後方支援活動の拡大――の4類型を示し、憲法上どこまでできるのか、集団的自衛権との関係を含めて検討するよう指示した。集団的自衛権は自国と密接な関係がある他国が攻撃された時に反撃する権利で、日本は憲法解釈で行使を禁じている。(1)と(2)、さらに(4)で周辺事態を想定した場合には米国との関係で集団的自衛権の行使が焦点となる。(3)と(4)は、国連の集団安全保障などの活動にかかわる。 

2007年7月10日(火)「しんぶん赤旗」
衆院比例80削減
改憲の「提言」を踏襲
民主がマニフェスト
 民主党は九日、参院選公約「民主党政権公約 マニフェスト」を正式に発表しました。公約は「3つの約束・7つの提言」として、年金記録問題、子育て、農業対策などを重点に掲げる一方、二〇〇四年の参院選公約と〇五年の総選挙公約の「各論」で一番最初に位置づけていた憲法問題は今回、各論の最後で言及。憲法改定では自民党と違いがないため、憲法問題は回避しながら「二大政党」の「対立」を前面に打ち出しています。
 同公約は、同党が〇五年秋にまとめた「憲法提言」をもとに、国民との憲法論議をおこない、「慎重かつ積極的に検討」すると表明。同「提言」は、「『制約された自衛権』を明確にする」として現憲法九条が規定している戦力の不保持や交戦権の否定を見直し、集団的自衛権まで盛り込んだものです。今回の「マニフェスト」は、憲法改定を前提とする「憲法提言」を踏襲するものです。
 公約は、「効率化」を理由に、衆院比例区の八十議席を削減すると宣言。一方で、財界主導ですすめられてきた自民・民主による「二大政党制」づくりをあからさまに掲げています。
 また、「年金の基礎部分は全額を税で賄うことにし、消費税の全税収をその財源に充てます」と公約。消費税に依存する年金制度づくりをすすめ、不公平税制である消費税の永続化を図ろうとしています。
 年金問題で同公約は、「国税庁のもつ所得情報やノウハウを活用して未納をなくす」ために、社会保険庁を解体し、国税庁と統合して「歳入庁」を創設すると表明。査察権を持つ国税庁の機能を年金保険料の徴収に活用するねらいがあります。

2007年7月13日(金)「しんぶん赤旗」
改憲・消費税増税
公明党の争点そらし
 公明党の山口那津男選挙区候補が十二日、東京・新宿駅西口での第一声でいいました。
 「憲法を争点にしろという人もいる。あわててはいけない。公明党が三年後に『加憲』案をしっかりさせるので、腰をすえて議論すべきだ」「消費税をあわてて議論すれば、役所の人たちが歳出削減を怠ける。今、消費税、消費税と騒ぐ人たちにごまかされてはならない」
 連立政権を組む自民党が参院選マニフェストの第一に「新憲法制定の推進」を掲げ、参院選後に消費税増税を狙っているにもかかわらず、争点にするなとは一体どういうことでしょう。
 そもそも今回の参院選で選出される議員は、改憲勢力が狙う日程に従えば、まさに改憲の発議を議論する人たちです。その代表を選ぶ選挙なのに憲法を争点にするなとは…。
 しかも、導入のときも増税のときも国政選挙で一度も賛否を問われてこなかった消費税の増税について、自民、公明は、またもや隠そうとしています。
 日本共産党は、「憲法九条を守れ」「消費税増税をいうなら、国民の審判をあおげ」と主張しています。公明党はよほどこの焦点課題に触れてほしくないのでしょう。



最近のマスコミ報道(07/07/12)  参院選をめぐる各党の政治姿勢と政策
日時:2007712
(2007年7月12日(木)「しんぶん赤旗」)
参院選をめぐる各党の政治姿勢と政策
【年金】
日本共産党
 「消えた年金」問題で、被害者を一人も残さず、一日も早く解決する立場で、「1億人へのレター作戦」など緊急提案し、政府を動かす。「消えた年金」問題の解決に対する国の責任を放棄する社会保険庁解体・民営化法案に反対。年金受給条件を諸外国なみの10年以上加入に引き下げることや、全額国庫負担の最低保障年金制度(当面月5万円に支払った保険料に応じた金額を上乗せ)を提案。
自民党
 政権党でありながら、「消えた年金」問題の原因をもっぱら社会保険庁の「体質」にすり替え。世論におされ、年金記録の1億人への通知を約束するが、それも来年度から。社会保険庁の解体・民営化を強行し、「消えた年金」問題の国の責任を投げ捨て。給付水準を15%も削減し、保険料は毎年引き上げる2004年年金改悪を推進する。
公明党
 「100年安心」の年金と宣伝していた一方で、同党出身の坂口力厚生労働相は「消えた年金」問題を放置。「消えた年金」問題の国の責任を投げ捨てる社会保険庁解体・民営化法案を強行。給付カット、保険料引き上げを国民に強いる2004年年金改悪を、いまだに「100年を見通す改革」(同党ホームページ)と自画自賛し、反省なし。
民主党
 「最低保障」年金制度を打ち出すが、現在の無年金・低年金の解決には役に立たないもの。しかも「最低保障」年金の財源は全額消費税でまかなうというものであり、年金を改善しようとすると消費税増税が避けられない危険性がある。なお、「消えた年金」問題でも、基礎年金番号導入時に十分な対策をとらなかった厚生大臣は菅直人氏。
【庶民増税】
日本共産党
 庶民大増税に反対し、大企業・大資産家ばかりに減税という不公正をなくす。住民税の大増税は中止し、すでに実施された増税分は「戻し税」方式で国民に返す。最悪の不公平税制である消費税の増税にきっぱり反対。欧米に比べても異常に低い所得税の課税最低限を基礎控除の倍加などにより大幅に引き上げる。無駄遣いにメスを入れ、大企業・大資産家に応分の負担を求め、くらしの予算を確保。大企業の法人税率を10年前に戻し4兆円を生む。
自民党
 定率減税廃止に続き、消費税増税を打ち出す。2007年度をめどに「消費税を含む税体系の抜本的改革を実現する」と公約に明記。安倍首相は「秋に抜本的な税制改正を行う。消費税を上げないとはひと言も言っていない」(5日、民放テレビ)と発言。消費税を増税しようとしながら参院選では「争点にしない」などと国民の審判を受けずに、消費税率を引き上げようとしている。
公明党
 定率減税の廃止と高齢者への増税を真っ先に提案し、推進。増税分は年金の財源として活用するというが、実際には増税額(国税分)の5分の1しか年金財源に回さず。安倍自民・公明内閣が閣議決定した「骨太の方針」に、2007年度をめどに「消費税を含む税体系の抜本的改革を実現する」と明記。
民主党
 「政策10本柱」に「庶民増税中止」の柱なし。いま家計を直撃している定率減税廃止による庶民増税への反対表明もなし。「消費税率は現行のまま行政改革を優先して年金の財源に充てる」としているが、「将来、消費税の増税は不可避だ」(鳩山由紀夫幹事長、6月25日の講演)という立場。大企業・大資産家減税には自民党以上に熱心。
【社会保障】
日本共産党
 貧困と格差を打開するため、国民の生存権をまもる社会保障の拡充をかかげる。「ストップ貧困、いのちをまもる緊急福祉1兆円プラン」として、国民健康保険料の1人1万円値下げ、介護保険料・利用料の減免拡充、子ども医療費を無料化する国の制度の創設、障害者福祉の「応益」負担撤回、生活保護・児童扶養手当の切り捨て中止を公約。医師数の抜本増などによる医師不足の解決、高齢者に過酷な負担と差別医療を押しつける「後期高齢者医療制度」の抜本的見直しを要求する。
自民党
 医療費負担の大幅引き上げ(02年・06年)、介護保険のサービス切り捨てと負担増(05年)、障害者福祉への「応益」負担導入(05年)、生活保護の切りすてなど、貧困を広げる改悪をつぎつぎ強行。さらなる社会保障給付費の削減を打ちだす(「骨太方針2007」)。
 「医師不足問題への早急な対応」(マニフェスト)を公約するが、医師数の抜本増に背をむけ、いっそうの「医療給付費抑制」を計画する。
公明党
 「福祉の党」を自称しながら、医療の窓口・保険料負担増、介護保険法改悪、障害者福祉の「応益」負担、生活保護・児童扶養手当の削減などを自民党と一体に推進。
 これらの改悪を、「安心の医療を構築する改革」「予防重視の介護保険への転換」「障害者福祉の拡大」など“改善”と描く宣伝をつづける。
民主党
 多くの「介護難民」を生みだした介護保険法改悪(05年)に賛成。旧民主党の時代にも、国民健康保険証のとりあげ義務化(97年)、母子家庭への児童扶養手当削減(02年)などのくらし切りすてに賛成した。自公政権の医療改悪を批判し、「医師不足の解消」(マニフェスト)をいうが、財界には「公的医療給付費の抑制」を公約(06年、「日本経団連と政策を語る会」)。一般病床・療養病床などの44万床削減を提唱している(「民主党医療制度改革大綱」)。
【雇用】
日本共産党
 人間らしく働けるルールをつくる。人間を「使い捨て」「モノ扱い」する働かせ方をやめさせ、非正規で働く人たちの雇用と権利を守り、正社員化をすすめる。最低賃金を引き上げ、ワーキングプア(働く貧困層)をつくらない。「サービス残業」を根絶し、異常な長時間労働を是正する。過去5年間だけでも852億円の未払い残業代を支払わせた実績を持つ。
自民党
 選挙公約で「若者の雇用機会の確保」「働く人の公正な処遇」などをかかげるが、雇用を破壊してきたのが自民党。労働法制の規制緩和で、働く人の3人に1人、若者や女性の2人に1人が非正規雇用という低賃金・不安定雇用を生み出す。残業代を横取りし、長時間労働を野放しにする「ホワイトカラー・エグゼンプション」(労働時間規制の適用除外)の導入をあきらめず。
公明党
 重点公約に雇用政策なし。政策集のなかに、「生活を犠牲にしない働き方」「若年者雇用への支援」の項目があるが、自民党とともに雇用破壊をすすめたのが公明党。違法だった労働者派遣を13業種に限り可能にした労働者派遣法の制定(1985年)、労働者派遣の原則自由化(99年)、製造業への労働者派遣の解禁(2003年)や裁量労働制の拡大・導入要件緩和など労働法制の規制緩和をことごとく推進。
民主党
 「政策10本柱」で「雇用を守り、格差と戦う」と公約。しかし、雇用破壊に手を貸し、貧困と格差を広げてきた“実績”への反省なし。民主党や自由党(後に民主党と合併)は、裁量労働制をホワイトカラー全般に広げる改悪(1998年)、労働者派遣の原則自由化(99年)に賛成。企業がリストラ・人減らしをすればするほど減税になる「産業再生」法の改悪・延長(2003年)にも賛成。
【外交】
日本共産党
 「靖国」派の侵略戦争正当化の策動を許さず、首相の靖国参拝中止や供物の奉納中止を要求。「従軍慰安婦」問題でおわびした「河野官房長官談話」や植民地支配と侵略への反省を表明した「村山首相談話」の立場で行動することを要求。日米軍事同盟の再編強化に反対し、アメリカいいなりから抜け出す日本外交の転換を求め、イラクからの自衛隊撤兵を要求。核戦争の防止と核兵器の廃絶のために実効ある措置を要求。北朝鮮問題で6カ国協議などの枠組みを生かした平和的外交的解決を主張。
自民党
 「従軍慰安婦」問題で首相が強制性否定発言を行うなど政府の公式見解にも逆行。同問題で日本に謝罪を要求した米下院決議にも多数の議員が反発し、米紙に広告を出す。久間章生前防衛相はアメリカの原爆投下を「しょうがない」「選択肢としてありうる」と発言。米軍再編などを通じて「日米同盟を強化」するとし、NATOなどとの軍事協力を探る。「国家安全保障会議」の設置や海外派兵恒久法も盛り込む。
公明党
 自衛隊のイラク派兵強行など自らすすめた悪政には公約で何も触れず。首相の靖国参拝では歯止めにならず、「従軍慰安婦」問題での首相発言や官房副長官の暴言にも抗議せず。在日米軍再編も「着実に実施」と公約、ミサイル防衛も「着実な整備に努める」など日米軍事同盟強化の路線をつきすすむ。
民主党
 「靖国」派議員を多数抱え、「従軍慰安婦」問題での米下院決議反対の広告にも13人が名を連ねる。「主体的な外交」を主張するが、日米関係を「外交の基盤」とする点では自民と同じ。米軍再編でも「地元の理解」があれば推進する立場。「自衛隊のイラク派遣終了」を主張するが、海外派兵は否定せず。
【憲法】
日本共産党
 憲法改悪の暴走にストップをかけるもっともたしかな力。「世界の宝」ともいうべき憲法9条を守るために党派の違いを超えた共同を発展させる。海外での武力行使を可能にする集団的自衛権の行使に向けた政府の憲法解釈変更の動きに反対。侵略戦争を正当化する「靖国」派による戦前・戦中の国家体制への逆戻りに反対。基本的人権や民主主義、男女平等など、憲法の全条項を守るために、全力をあげてたたかう。
自民党
 安倍首相は「憲法改正を必ず政治日程にのせていく」とのべ、公約の冒頭で2010年までに「憲法改正の発議をめざ」すことを宣言。同党の「新憲法草案」では、9条2項を撤廃して「自衛軍を保持する」と明記、海外派兵を可能にする規定も盛り込むなど、「米国と海外で肩を並べて武力行使する」ことが狙い。侵略戦争を肯定・美化する「靖国」派が策動の中心に。
公明党
 公約で「3年後を目途に加憲案をまとめることをめざします」と改憲姿勢を宣言。9条に第3項を加え、自衛隊の明記と国際貢献を明記することを検討。同党議員は「(護憲から)改憲の立場に変更したのは公明党だけだ」と自認、自民党からも「『改憲』を明らかにした政党」と指摘される。
民主党
 参院選の主要公約には憲法問題が一言もないなど、憲法論争を徹底して避ける。05年の「憲法提言」では、「自衛権を明確にする」として集団的自衛権の行使に道を開き、国連の軍事活動参加で「武力の行使を含む」と明記するなど、9条改悪では自民党と同じ土俵。マニフェスト各論でも「現行憲法に…改めるべき点があれば改める」と改憲の立場を打ち出す。
【農業】
日本共産党
 農業を国の基幹産業に位置づけ、食料自給率の向上を国政の柱に据える。輸入の自由化一辺倒や価格暴落のばなしの農政を転換し、生産コスト(米では1俵1万7000円以上)をカバーする価格保障を柱に所得補償を組み合わせ実施する。一部の大規模経営だけでなく、続けたい人やりたい人すべて支援。財界やアメリカの横暴をきっぱりと批判し、WTO協定など輸入自由化に唯一反対を貫く。
自民党
 大規模な農業者だけを支援対象とし、大多数の農家を切り捨てる「品目横断対策」を実施。安倍内閣は、農家の猛反対を無視して日豪EPA交渉を開始し、食料の海外依存の拡大、いっそうの輸入自由化などで、残された農業をも一挙に壊滅させかねない事態に。「守るべきは守る」というが、財界いいなりでは“選挙が終われば自由化”になりかねない。
公明党
 小泉・安倍内閣の与党として、「品目横断対策」や価格暴落のばなしの「米対策」など農業つぶしの悪政を推進してきた。米の輸入自由化が大問題になった90年代にいち早く部分開放を宣言、WTO農業協定の批准に賛成した。「都市農業の振興」を掲げるが、農地の宅地並み課税を強化する92年の生産緑地法改悪に賛成した。
民主党
 全販売農家への「戸別所得補償」の創設を公約するが、農産物輸入の全面自由化が前提。関税撤廃で米価は一俵5000円に暴落することも容認。小沢代表や菅直人元代表は「企業参入も自由に」「農地法は『廃止を含めて議論』」などを主張。昨年末の「マグナカルタ」では「米国とのFTA早期締結、あらゆる分野で自由化推進」するとしている。
【政治とカネ】
日本共産党
 政治の不正・腐敗をただし、「清潔な政治姿勢」を貫く。閣僚らの事務所費疑惑も共産党の追及が発端。企業・団体献金と政党助成金制度という、政界の二つの“麻薬”の根絶を主張。それができるのも、日本共産党が双方ともいっさい受け取らないただ一つの政党だから。天下り合法化の「新人材バンク」に反対、全面禁止を要求。
自民党
 佐田玄一郎前行革相、松岡利勝前農水相に続き、赤城徳彦農水相の事務所費疑惑が発覚するなど、「政治とカネ」の問題絶えず。ところが公約では「政治資金の一層の透明化」として、領収書添付5万円以上、資金管理団体のみとした“ザル法”の政治資金規正法「改正」をあげるだけ。企業・団体献金に依存し、政党助成金も二重どり。
公明党
 首相と一緒になって赤城農水相を「違法でない」とかばい立て。政治資金規正法「改正」では、自民と5万円超の領収書添付で合意。同党出身の閣僚の政治資金収支報告がすべて5万円以下となっている事実はほおかむり。選挙公約でも「政治とカネ」には一言もなし。自らも政党助成金を受け、企業・団体献金も復活。
民主党
 事務所費問題では、小沢代表が約4億円もの不動産取得費を計上していた問題が発覚。公約では、「事務所費の透明化」を掲げ、1万円超の領収書添付を打ち出す。党収入の8割以上を政党助成金に依存し、日本経団連の政党通信簿も受け、企業・団体献金も拡大をめざす。「国会議員定数の1割以上削減」を公約、少数政党締め出しを狙う。
社民党
 「9条と年金があぶない」がスローガン。「9条改憲を絶対に許しません」と公約するが、改憲政党の民主党と山形、香川、秋田、富山、愛媛などで選挙協力。社民党推薦で宮崎から無所属で出る民主党支部長はマスコミアンケートで改憲に賛成し、「自衛隊保有を明記」と回答。格差是正では、派遣労働を「一部職種に限定」することや「充実の医療」などを掲げるが、派遣労働の原則自由化や国保証取り上げ義務化に賛成してきた実績にはふれず。
 「国民すべてが受けとれる『基礎的くらし年金』」を公約するが、基礎年金部分の支給を65歳まで繰り延べした年金改悪(1994年)をしたのは社会党の村山内閣。
国民新党
 郵政民営化で造反した元自民党議員らが結成。「正々堂々『抵抗勢力』」を掲げるが、参院選後の態度は「政局判断する」として与党入りの可能性も。幹部のほとんどが日本会議議連の役員など「靖国」派。政策では、「自主憲法の制定」や「道徳教育の充実」など自民党そのもの。「積極財政による内需の拡大」などムダな公共事業推進も示唆。

 (2007年7月12日 朝刊 東京新聞)
9条改正、88%『反対』 護憲グループ候補者調査 『改憲争点』自民答えず
 十二日公示の参院選では、憲法改正が大きな争点の一つ。護憲派の市民グループ「2007参院選憲法9条アンケート実行委員会」が、憲法九条の改正と集団的自衛権の行使への賛否を全国の立候補予定者にアンケートし、結果を十一日、公表した。
 六月末までに立候補を表明した選挙区、比例代表の立候補予定者三百五十四人に文書で質問。百五十四人から回答(回答率43・5%)を得た。質問は「憲法九条を改正し、自衛隊を国防軍として認知し、集団的自衛権を行使できる」ことに対し、「賛成」「反対」「どちらともいえない」の選択肢で聞いた。
 回答したのは、自民六人、公明二人、民主三十二人、共産四十九人、社民二十人、国民新七人、新党日本二人、諸派・無所属三十六人。結果は「反対」が百三十六人と全体の88・3%。一方で「賛成」は九人(5・8%)、「どちらともいえない」は七人(4・5%)。選択肢に当てはまらない回答も二人あった。
 改憲反対を党として明示している共産党と社民党の回答は全員が反対。
 改憲を争点の一つに掲げる自民党で答えたのは六人だけ。そのうち四人が賛成だった。実行委の担当者は「改憲問題で態度を鮮明にすると、票が減ると自覚しているのではないか」と指摘。三十二人の民主党回答者のうち二十八人が反対だった。
 実行委は「イラク派兵違憲訴訟の会・東京」「平和に生きる権利の確立をめざす懇談会」「第9条の会・オーバー東京」などの団体、個人で構成。実行委メンバーの大内要三さん(60)は「『九条を守ろう』というのが国民の声だということを、多くの政治家たちが自覚している表れだ。自民については無回答自体が一つの答えではないか」と話した。

(2007年7月11日 朝刊 東京新聞)
カフェで寄席で平和語る 9条支持草の根ジワリ
 「二〇一〇年に憲法改正が発議される可能性がある。戦争について想像力を付けた方がいい」
 六月末の昼下がり。東京・高円寺のカフェバーでフリーターや学生、会社員ら約二十人の若者がソフトドリンクを飲みながら、熱心に議論していた。憲法を考える「憲法カフェ」。ジャズやソウルが流れる中、講師役の横浜市立大准教授山根徹也さん(41)=西洋史=が力説した。
 「自衛軍の保持」を盛り込んだ自民党の新憲法草案第九条。山根さんは「戦争放棄から攻撃容認になるかもしれない」と話す。草案全体については「国家が個人を掌握し縛り付ける。政府を批判できない仕組みになる」と説明。国民が権力を縛る現憲法との違いを訴えた。参加者からは「自由や権利が規制されるのか」「中学や高校では憲法をきちんと教えない。内容が分からない人が多いのでは」と感想が出た。
 自民党草案が公表され改憲論議が活発になってきた一昨年暮れから、山根さんは隔週火曜日の夕方、講義後の教室を使って憲法カフェを開いている。「『徴兵制にならなければ改憲してもいい』と短絡的に考える学生もいる。戦争を想像させるきっかけが必要だと思った」と話す。
 学外での“出張憲法カフェ”は、教育基本法改正の反対活動で知り合った若者らに請われ、既に二回実施。学習会を発案した一人、世田谷区のフリーター園良太さん(26)は「憲法に無関心の人が多い。こんな論議の場が各地に広がれば」と願う。
 山根さんは「僕は護憲派ではないが、今の改憲の流れには反対。参院選で選ばれた人は、改憲発議にかかわる可能性がある。重要な争点です」。憲法の在り方を考える草の根活動は、確実にすそ野を広げている。
 「おい、大変だよ。隣町のやつらがまた攻めてくるんだよ」。江戸の下町の長屋に住む八つぁんが血相を変えて、妻のお清に伝える。
 「いつ何があるか分からないから、木刀や石ころをそろえておけ。いざとなったら、こっちから火をつけに行こう」。そうあおるのは米屋の若だんな米吉と、その取り巻きで町の世話役の晋公と純公だ。
 その昔、隣町と争いごとがあってから、町内には「けんかはご法度」という決め事ができた。だが、隣町の商売敵が気に入らない米吉はこれを変えたくて仕方ない。米吉の父親と一緒に決め事を作ったという町のご隠居から、それがいかに大切かを教えてもらった八つぁんは、その足で米吉にねじ込みにいく−。
 東京・上野の鈴本演芸場で六月下旬、女性落語家初の真打ち古今亭菊千代さん(50)が、創作落語「たからもの(9条に思いをこめて)」を初めて披露した。「憲法九条を何としても守りたい」と構想を温めてきたものだ。
 朝鮮半島や中国で戦争被害者の話を聞いたこともある。「日本はこれ以上戦争に加担しちゃいけない。九条は謝罪の気持ち。変えたら『謝ったのはうそ』と言うのと同じ」。今後も少しでも大勢の人に「たからもの」を披露したいという。
 草の根運動は護憲派に目立つが、改憲派には少ない。半世紀以上改憲運動をしてきた「新憲法制定議員同盟」の清原淳平事務局長(75)は「保守系議員を通じて集会などを働きかけても、なかなか実現しない。改憲の国民的運動を起こそうとしても、なかなか難しい」と嘆いた。
 「憲法改正」が大きな争点となる参院選は十二日公示を迎える。
 (藤浪繁雄、西田義洋)

(2007年7月10日 中日新聞)
9条守る議席選択を 有識者、共産への支援求める
 共産党県委員会は九日、県庁で会見し、参院選で「改憲の発議を許さない議席を目指す」として、県内の有識者らが同党から出馬する元職の八田ひろ子氏への支援を求める共同アピールをつくり、賛同を呼び掛けていくと発表した。
 年金問題が大きくクローズアップされる中、憲法問題への有権者の意識を高める狙いがあるとみられる。
 共同アピールは、今回の参院選について「戦後初めて、改憲を公然と主張する安倍首相のもとで、憲法に基づく日本の平和への進路が一人ひとりの主権者に問われる最初の選挙」と指摘。愛知選挙区(改選数三)で「憲法九条を守る議席を県民に選択していただく」として、八田氏への支援を呼び掛けている。
 会見では、第一次の「呼び掛け人」として大学教授や市民運動家、弁護士ら三十七人を発表した。
 その一人で、原水爆禁止日本協議会代表理事の沢田昭二・名古屋大名誉教授は「九条は人類全体にとって大切な役割を果たしている。参院選では改憲しないという立場を貫ける人を」と訴えた。
(山本真嗣)



最近のマスコミ報道(07/07/09) 参院選候補者アンケート 改憲容認55%、9条は31%
日時:200779
(07/07/08 中国新聞)
改憲容認55%、9条は31% 参院選、候補者アンケート 
 共同通信社は七日までに、第二十一回参院選の立候補予定者を対象に政策課題に関するアンケートを実施、三百九人から回答を得た。憲法問題では、何らかの改正を容認する候補が55・3%と過半数だったが、九条を含む改憲派は31・7%にとどまった。「九条改憲派」は自民党候補の78・5%に対し、民主党は22・3%で、両党の立場の違いが浮き彫りになった。
 選挙後の最優先課題(三つまで回答)では「年金、医療など社会保障改革」が89・0%で、「景気対策」35・0%、「教育改革」34・6%を大きく引き離した。年金問題が参院選の最大の争点となっていることを裏付けた。
 集団的自衛権の行使では「一切認めるべきではない」が49・5%で、「憲法改正」または「憲法解釈見直し」により容認すべきだとする計38・9%を上回った。ただ自民党候補に限ると憲法改正による容認が57・1%と跳ね上がり、安倍晋三首相が意欲を見せる解釈見直しは24・3%にとどまった。
 格差問題では、大都市圏と地方都市間での格差について「拡大している」が76・1%、「どちらかというと拡大」が21・7%で、与野党とも地域間格差の拡大では認識をほぼ共有。拡大している分野(二つまで回答)では「景気・地域経済」が49・5%、「自治体の財政力」37・2%、「所得」36・2%、「雇用」35・3%と、経済・財政面での格差を問題視する意見が多数を占めた。
 首相が設置した教育再生会議で議論された道徳教育については「教科化しないが拡充すべき」が31・1%、「教科化するが成績評価はしない」も26・9%など、「現状のまま」「廃止」の計15・5%を上回り、充実を求める声が多かった。
 消費税の在り方では、39・5%が「社会保障財政安定化のための目的税化」とした。税率は現状の「5%」が36・9%で最多で、「7%程度」が24・9%と続く。欧州並みの「10%以上」は7・4%だった。
 自衛隊を海外に随時派遣できるようにする恒久法の制定に関しては49・8%が「反対」。「国会の事前承認が条件」は34・0%で、「賛成」は10・4%だった。

07/07/09 中日新聞)
参院選・本社県内世論調査 年金対応『信頼できぬ』78%
 12日の参院選公示を前に、中日新聞東海本社は5−7日、静岡県内の有権者1000人に電話による世論調査をした。年金記録不備問題への政府・与党の対応を、信頼できるとしたのは22%にとどまり、「あまり信頼できない」「ほとんど信頼できない」が78%に達し、年金不信が根深いことをあらためて示した。
 安倍内閣の支持率は「支持する」「どちらかといえば支持する」を合わせて40%で、「どちらかといえば支持しない」「支持しない」の60%を大きく下回った。半面、「支持政党なし」は39%で、前回選(2004年)の公示前調査の37%よりやや増えており、安倍内閣不支持がそのまま野党支持に反映していないことをうかがわせた。
 支持政党をみると、自民28%、民主22%と、両党で半数を占めた。前回選調査が自民30%、民主23%で、ともに微減。他政党は公明5%、共産3%、社民2%と続いた。
 参院選への関心は「非常にある」が41%と前回選調査比13ポイント増で、「少しはある」の同3ポイント減の36%と合わせても、10ポイントも増えた。投票に「必ず行く」「多分行く」と答えた有権者は計89%で、高い関心を寄せているのが分かる。
 しかし、既に投票する立候補予定者を「決めている」のは「大体決めている」と答えた人と合わせ、33%にとどまった。7割弱がまだ決めていないとしており、立候補予定者の今後の動向や、政治情勢によって投票結果は大きく変わる可能性がある。
 ▽調査の方法 県内の世帯を対象に、民間調査会社がコンピューターで無作為に選んだ電話番号にかける方式。つながった20代から70代以上の有権者の有効回答が計1000人になるまで実施した。性別は男性489人、女性511人。




最近のマスコミ報道(07/07/06) 参院選へ 自民が改憲パンフ 海外派兵のため「自衛軍」化
日時:200776
2007年7月6日(金)「しんぶん赤旗」
参院選へ
自民が改憲パンフ
海外派兵のため「自衛軍」化
 自民党が参院選で本格的な憲法論議をするよう改憲問題の解説パンフレット『自由民主党 新憲法草案のポイント』を発行していたことが五日分かりました。その中で改憲手続き法による調査専念期間(三年間)の解除直後に「憲法改正の発議」ができる、自衛隊を「自衛軍」とするのは海外派兵のため、などの本音を盛り込んでいます。
 問題のパンフレットは中山太郎・同党憲法審議会会長が主導して作製したものです。三十三ページにわたり二十三の項目について問答形式で解説。巻頭で中山氏は「我が党のすべての候補者のみなさんに正確にご理解いただくために、取り急ぎ、作成した」とその意図を述べています。
 また冒頭では、今回参院選での選出議員の六年の任期内に改憲発議が可能になるとして、選挙中に本格的な憲法論議をかわす必要を強調しています。
 改憲手続き法では、改憲のための国民投票制度が施行されるのは三年間の「調査専念期間」(いわゆる凍結期間)を経た二〇一〇年五月以後。仮に改憲日程が具体的に進むとしても改憲原案の審議は、その後から始まる、というのが一般的な解釈です。
 ところがパンフレットでは「3年間は、漠然とした憲法論議しかできない期間などでは全くなくて…『改憲の是非とその具体的な項目の抽出』を行う調査期間であり、この『調査専念期間』の解除後は、直ちに憲法改正原案の審査・起草、そして衆参両院の3分の2の議決を経ての『憲法改正の発議』に直結することとなるものなのです」と明記。凍結期間明け即改憲発議へ直結だと宣言しています。
 現行九条の二項を削除し、自衛隊を「自衛軍」と変えた点については「自衛隊は、海外に出ると、世界の常識に照らし合わせて、軍として扱われます」「自衛隊が国際社会の要請に応じて世界でさまざまな活動に従事するようになった現在、この(自衛軍でないこととの)矛盾が、大きな支障となっています」と記述。自衛隊の海外派兵先にありきの九条改悪というねらいが明らかにされています。

2007年7月6日(金)「しんぶん赤旗」
公明=改憲政党 自民パンフ認定
 自民党が作製した改憲問題のパンフレット『新憲法草案のポイント』では、自民党の立場から改憲にたいする各政党の対応姿勢を性格付けています。
 その中で、連立を組む公明党については「公明党も、『加憲』という限定された形ではありますが、21世紀にふさわしい憲法改正を行うべきであるという点では、『改憲』を明らかにした政党ということができます」と記述。公明党=改憲政党というお墨付きを与えています。
 民主党については、「国民を愚弄(ぐろう)した『モラトリアム政党』」だとした上で、「改憲・護憲についての政党としての考え方を、公約の形で明らかにすることが、国民に対する最低限の礼儀ではないでしょうか」と、参院選公約に憲法にたいする基本姿勢を示していない民主党を批判しています。


最近のマスコミ報道(07/07/04)  07参院選 公約を穴のあくほど 
日時:200774
(7月3日(火) 信濃毎日)
07参院選 公約を穴のあくほど
参院選に向けた主要政党の公約が出そろった。
 発足から9カ月余りが過ぎた安倍政権に続投の道を開くかどうかが問われる選挙である。年金、憲法など幅広い分野にわたる政策のチェックが欠かせない。公約にしっかり目を通したい。
 各党の公約で真っ先に気が付くのは、年金に力を入れていることだ。自民党は重点課題の最初に「信頼できる年金制度の再構築」を掲げた。「宙に浮いた」5000万件の年金記録の照合を、1年以内に終わらせることなどを盛り込んでいる。
 記録の速やかな点検、修復を目指す姿勢は、各党に共通する。民主党と新党日本は加えて「年金通帳」の導入をうたう。
 ここで気を付けたいのは、記録ミスの問題に対処するだけでは、安心できる年金制度にならないことだ。各種年金制度の統合や財源にまで踏み込んで、説得力ある道筋を示しているかどうか−。公約を読み比べるときのポイントだ。
 見落とせないテーマの一つに憲法がある。2010年国会での改憲案発議を掲げる自民党から、「改悪反対」の共産党、「九条改正阻止」の社民党まで、隔たりは大きい。国民新党は前文、九条の精神を守りつつ「自主憲法」制定を目指す姿勢を掲げている。
 公明党は「加憲」を掲げ、自民党の改憲路線と一線を画す。基本政策のずれをどうするのか、連立を組む自公両党にはより踏み込んだ説明が求められる。
 選ばれる議員は6年の任期の間に、憲法改正の是非について判断を迫られる可能性が大きい。候補者一人一人の見識、主張を吟味したい。
 公約は「マニフェスト」と呼ばれることも多い。目指す政策を数値目標や財源も含めて提示し、事後の検証もしやすくしたもの。それがマニフェストだとされている。
 各党の公約を見ると依然、総花的な面も目につく。その党が本当に重視しているのはどの項目か、見極める力も大事になる。
 参院は時に「良識の府」ともいわれる。政権と一体化する衆院とは一線を画して、広い視野、長期的視点から政策を点検し、バランスの取れた判断を示す。そんな役割の重要性に着目した言い方である。
 参院はいま「良識の府」どころか、衆院の「カーボンコピー」と揶揄(やゆ)されることも多い。今の選挙制度の中で、参院が衆院に倣って政党化するのはある程度やむを得ないとしても、参院独自の役割を追求する努力は、常に怠れない。
 参院の在り方も、各党公約で目を留めたいテーマの一つだ。

(2007年7月1日 中日新聞)
立候補予定者討論会(中) 憲法問題
 中日新聞東海本社が28日に開いた参院選(7月12日公示、29日投票)の立候補予定者討論会では、2つ目の重要なテーマとして憲法問題を取り上げた。自民新人の牧野京夫(48)、民主現職の榛葉賀津也(40)、共産新人の平賀高成(53)、無所属新人の木部一(42)の4氏は、今後の日本の針路を左右する憲法改正の是非や、自身の憲法観などについて活発な議論を繰り広げた。 (本文中は敬称略)
 −年金問題でかすんだ感もあるが、安倍政権は「憲法改正」を一番の争点に掲げた。当選した場合、次の任期(6年)中に憲法改正が発議される可能性もある。憲法問題に対する考えは。
地方分権の確立を
<牧野> (施行から)既に60年が経過しており、時代に合わなくなっている条文もあると思う。中でも地方自治に関しては、中央が地方を縛る条文になってしまっている。地方分権を確立するためにも、国と地方自治体の役割を明確にするような修正は必要になってくる。(九条を含めた)全体的な部分については、まず中身に踏み込んだ議論が大事だ。
憲法観の議論不足
<木部> 「憲法とは何か」ということ自体が今、あいまいになってしまっている。立憲国家にとって憲法は国家の権力をどう規定するかということであって、国内でこの点の合意が形成されていない。(改正の是非に関する)話し合いを始める前に、行政や国民が憲法観そのものについて考えを示し合わなければ、議論そのものが成り立たないと思う。
争点化は本末転倒
<榛葉> 戦後世代として安倍政権に期待する部分もあったが、憲法の問題で見事に裏切られた。安倍首相は小泉政権での郵政民営化のごとく「憲法改正」を選挙の争点に据えてきた。憲法は国家権力から国民をどう守るかを定義づけるもの。改正するか否かの議論は選挙とは別に慎重に行うべきであって、政争の具に用いて国を割ろうとするのは本末転倒な話だ。
『狙いは9条』 明白
<平賀> 憲法問題の最も大きな焦点は、平和主義を定めた九条の改定。政府の狙いは明確で、米国と肩を並べて「戦争ができる国」になろうとすることだ。自衛隊の活動が制限されていることは、米国にとって不都合な状況。米国の要求に従って九条を憲法から取り外すことになれば、自衛隊が海外で武力を行使することも可能になり、大問題となる。
 −質問をさらに深め、皆さんの憲法観や憲法議論のあり方に関する考えを詳しくうかがいたい。
<牧野> 私は、九条だけが憲法改正の焦点とは思っていない。「自民の議員は、全員が九条を変えるために言っている」という指摘もあるが、それは当てはまらない。憲法問題は、議員個人が独自に考えることであって、私の場合も「自分はこういう意見だ」という言い方しかできない。
<榛葉> 憲法に関する話し合いが封じ込められることは絶対にあってはならない。これからの憲法がどうあるべきか、タブー視せずに議論することが必要。「変える」「変えない」の結論よりもまず、憲法論議を通じて、外交や平和などこの国の全体的な形を考えていく必要がある。
<木部> 九条の問題の陰に隠れているが、(公共の福祉を定めた)一三条などの問題も大きい。自民案には国民を定義づける条項が入ってきており、そのことが議論の対象になっていないことは不思議に思う。こうした条項が立憲国家の原則を逸脱するかどうかも検討すべきだ。
<平賀> 九条以外の、環境権やプライバシー権などの話題は「憲法を変えよう」という議論が起こった際に急に出てきた印象がある。「日米同盟の最大の障壁になっている」という米国の指摘に基づき、安倍政権が戦争放棄を規定した九条を改変しようとしていることは明白だ。

 
2007年7月4日(水)「しんぶん赤旗」
ストップ貧困、 憲法九条を守れ
参院選をたたかう共産党の立場
外国特派員協会で 志位委員長が講演
 日本共産党の志位和夫委員長は三日、東京都内の日本外国特派員協会で、「日本共産党はどういう政党か、参議院選挙をどうたたかうか」と題して講演しました。会場には十台近いテレビカメラが構え、講演後には真剣な質問が相次ぎ、予定の一時間を大きくオーバーするなど、熱気があふれました。
 特派員協会は今回の講演の案内で、日本共産党について、「政治的な不満の結集者」「いまなお軍国主義に断固として反対している。社会主義と民主主義にもとづく社会を掲げ続けていることも、この国で所得と社会格差の拡大に心を痛めている有権者の共感を呼ぶかもしれない」などとしつつ、志位氏を「日本でもっともはっきりと意見をのべる政治家の一人」と紹介しました。
 志位氏は講演でまず、日本共産党の「自己紹介」をおこないました。そこでは、最近、米ニュース週刊誌『タイム』ウェブ版が掲載した「共産主義は日本で活気にあふれ健在」と題した特集記事を「日本共産党のプロフィルをかなり的確に描いてくれている」としてとりあげました。
 志位氏は、同誌が注目する日本共産党の歴史、草の根の力、清潔さ、日本の政党関係のなかでの位置という四つの角度のそれぞれについて、その意味を解説し、こう強調しました。
 「『新自由主義』にたった経済政策でも、憲法九条改定でも、自民党と民主党の政治的な立場の違いがほとんどみられないもとで、自民党政治を根本的に改革する立場をもつ『唯一の真の反対者』――『たしかな野党』としての日本共産党の役割がいよいよ必要とされていると考えています」
 そのうえで、参院選をたたかう基本姿勢について、「消えた年金」問題の解決をはかるとともに、政治的争点としては、「『ストップ貧困、憲法九条を守る』――この願いは『たしかな野党』・日本共産党へ」の訴えを正面に掲げてのぞみたいとのべました。
 「ストップ貧困」では、「格差社会が社会問題になっているが、その本質は貧困の拡大にある」とし、世界第二位の経済力をもつといわれる日本で、「難民」という言葉があちこちで生まれている異常さを指摘。税制、社会保障、雇用の三つの転換を訴え、国民の「命綱」の役割を果たす決意を表明しました。
 「憲法九条を守る」では、自民党が「マニフェスト」で、公約の筆頭に改憲を明記していることもあげ、「危険性はいささかも軽視できない」と強調。「安倍・『靖国』派内閣の改憲策動の暴走をストップするうえで、八十五年の歴史をつうじて反戦平和を貫いた日本共産党が前進することが一番たしかな力になることを訴えて、選挙戦をたたかいたい」と力を込めました。
 質疑では「共産党は草の根でがんばっているが、選挙の結果がどのようになると考えているのか」など、率直な質問が出されました。
 志位氏はこれらの質問に丁寧に答えつつ、「安倍内閣が重大な政治危機に陥っていることは間違いない」「有権者は自民党政治に愛想をつかしながら、進路を模索している。今後一カ月のたたかいで、日本共産党が安倍・自公政権の真の対決者として躍進することが、政治を変える一番の力となると訴え抜きたい」と表明しました。

2007年7月4日(水)「しんぶん赤旗」
主張
久間防衛相辞任
安倍首相の責任こそ問われる
 広島、長崎への原爆投下を、「しょうがない」と発言した久間章生防衛相が閣僚を辞任しました。
 非人道的な大量殺りく兵器である原爆の使用をどんな理由であれ容認することは、被爆国の政府の閣僚として資格がないことを示すものです。久間氏の辞任は当然のことですが、本来ならただちに閣僚から罷免すべきだった安倍晋三首相は、久間氏が言い出してから辞任を了承しただけで、自ら罷免しようとはせず、むしろ“注意”にとどめてかばおうとさえしてきました。首相の責任こそ問われることになります。
罷免して当然の発言
 久間氏の発言が、久間氏自身の“陳謝”や安倍首相による“注意”といった、軽い処分ですむものではなかったことは、久間氏の地元でもある被爆地の長崎をはじめ、全国から引きも切らない抗議を見ても明らかです。任免権を持つ首相が、ただちに罷免して当然でした。
 太平洋戦争末期の広島、長崎への原爆投下は、爆風と熱線、放射能によって、二十万人以上の尊い人命を奪い、いまなお多くの人びとを苦しめています。この原爆投下を「しょうがない」と容認することは、被爆者にとってはもちろん国民全体にとって、とうてい受け入れることのできるものではありません。
 しかも、戦争終結を早めたなどと、国際的に否定されているものを含め、あれこれの理由を持ち出して原爆投下を認めることは、理由のいかんでは再び原爆投下があってもいいと、正当化することにもなりかねません。悲惨な被爆体験から核兵器の廃絶を願い、世界に発信してきた国民の願いを踏みにじるものです。
 「しょうがない」発言で問われなければならないのは、原爆投下にたいする“考え方”そのものです。久間氏が「しょうがない」と原爆投下を容認する考えに立つ以上、久間氏には被爆国の政府の閣僚としてはもちろん、被爆地から選ばれる政治家としても、一日としてその地位にとどまる資格がないことになります。
 実際、久間氏は閣僚の辞任は表明しましたが、その理由は「発言が誤解を与えた」とか「参院選への影響を考えた」ということで、原爆投下は「しょうがない」という考えそのものの誤りを認めたわけではありません。閣僚を辞任したからといって問題がおしまいとはならず、引き続き久間氏の責任とともに、久間氏を閣僚に任命し、発言後もただちに罷免しようとはしなかった安倍首相の責任が問われるのは必然です。
 とくに安倍首相は、久間氏の発言直後には、「アメリカの言い分を紹介しただけだ」とかばい、辞任前日に久間氏と会った際も「誤解を与える発言は慎む」よう“注意”しただけで、「核廃絶のため責任を全うしてほしい」と“激励”する有様でした。安倍首相が久間氏同様、原爆投下は「しょうがない」発言の誤りを理解しているとはとても思えません。この問題での首相自身の責任追及は、決して免れません。
被爆国にふさわしくない
 日本は世界で唯一の被爆国であり、世界に向かって率先して核兵器廃絶を働きかけなければならない立場です。にもかかわらず戦後日本の歴代自民党政府はアメリカの原爆投下を批判せず、「核の傘」に依存して核兵器廃絶に背を向けてきました。
 安倍首相が久間氏の「しょうがない」発言の誤りを認めないなら、いよいよ被爆国にふさわしくない首相だということになります。国民の審判が下されるのは避けられません。

2007年7月4日(水)「しんぶん赤旗」
“憲法守れ”500万署名
貧困打開へ秋に大集会 全労連が提案へ
 全労連の小田川義和事務局長は三日の定例会見で、八月一日から開く評議員会で、来年の通常国会までに憲法改悪に反対する五百万人署名に取り組むことを提案する考えを明らかにしました。
 改憲手続き法の成立で、改憲策動が新たな段階に入る一方で、「戦争をする国」づくりへの国民の批判と反撃は目に見える形で強まっており、憲法を守る世論と運動を今こそ広げるときだと強調しました。
 最低賃金の大幅な引き上げをはじめ、貧困と格差を是正する「国民的な運動」をすすめ、秋には「国民大集会」を計画。政府・財界が狙う労働法制改悪に対抗し、「働くルール」の確立を求める新たな運動を提起したいとのべました。
 また、寺間誠治組織局長は、食肉偽装事件で苫小牧ローカルユニオン・ミートホープ分会が結成され、六月二十九日の最初の団体交渉で解雇を撤回させたことを報告。労働相談を通じて組合結成に至ったことを紹介しながら、労働組合としての役割を発揮していきたいとのべました。


最近のマスコミ報道(07/07/03) 久間防衛相が辞任、「原爆」発言で引責・参院選への影響必至
日時:200773
(2007/07/03 13:57) 日経新聞
久間防衛相が辞任、「原爆」発言で引責・参院選への影響必至 
 久間章生防衛相は3日昼、首相官邸に安倍晋三首相を訪れ、米国による原爆投下を「しょうがない」と発言したことを巡り与野党が批判を強めていることの責任を取り、閣僚を辞任する意向を伝えた。「一つのけじめをつけなければならない」と説明。首相は「いろいろやってもらったが、残念だ。その決意を受け止める」と了承した。 
 安倍政権での閣僚の辞任は昨年12月の佐田玄一郎行政改革担当相に次いで2人目。松岡利勝農相の自殺に続き、政権への打撃は避けられない。29日投票の参院選の結果にも影響を与えるのは必至だ。 
 防衛相は辞任の理由について防衛省で記者団に「参院選への影響を考えた」と述べた。

2007年07月03日14時14分 朝日新聞
久間防衛相辞任「参院選への影響も懸念して決めた」
 広島・長崎への原爆投下を「しょうがない」と発言した久間防衛相が3日午後、ついに辞任した。久間氏は「今日昼ごはんを食べながら自分で(辞任を)決めた。参院選への影響も懸念して決めた」と記者団に語った。発言から3日。辞任の知らせを聞いた被爆者や地元長崎の関係者からは、「辞任は当然」「被爆者にも直接謝ってほしい」との声が上がった。 
 この日午前、久間氏と会談し、原爆投下をめぐる発言に抗議した長崎市の田上富久市長は取材に対し「お会いした直後の辞任表明で大変驚いている。本人の(辞任についての)コメントを直接聞いていないので、何とも言えないが、謝罪と反省の言葉を繰り返し述べられていたので、何らかの考えがあってのことだろう」と話した。 
 自身も長崎で被爆した日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の田中熙巳事務局長(75)は「辞任は当然だ。本当に自分が悪いと思っているのか。発言から日数がかかったことを考えると、悪いと思っているようには思えない。選挙があるからだろう。被爆者に対しても直接謝ってほしい」と話した。 
 自民党長崎県連の末吉光徳幹事長は「しょうがない。本人の問題だろう。選挙に関係しないようにしないと……」と言葉少なに語った。 
 広島県被団協(金子一士理事長)の大越和郎副理事長(67)は「辞任は当然のこと。国民の大きな反感、批判の声が辞任に追い込んだと思う。安倍首相が当初は容認、2度目は注意にとどめたのに辞任を認めたのは、選挙を控えてやむを得なかったのだろう」と話した。 
 民主党の鳩山由紀夫幹事長は3日、党本部で記者会見し、「辞任は当然だが、問題閣僚を多数抱えている安倍首相の任命責任が残る。安倍内閣の本質のような失言だ。本来なら直後に辞めるべきだった」と語った。 

(2007年7月3日14時13分  読売新聞)
防衛相「辞任は当然」と被爆者団体、省内でも「仕方ない」
 米国の原爆投下について「しょうがない」と語った久間防衛相が3日、大臣を辞任した。
発言をめぐっては、公明党や現職閣僚、参院選を目前に控えた改選議員らからも批判が相次いでいた。被爆者団体からは「辞任は当然」との声が聞かれ、急展開に防衛省内には衝撃が走った。
 久間防衛相の辞任が午後1時過ぎにニュース速報で流れると、省内にはどよめきが起こった。大臣官房広報課では、職員が電話での問い合わせに追われ、「報道先行なのでまだ確認してません。事実であることが確認されれば対応します」とあわただしく答えた。
 この日午前、長崎市の田上富久市長から発言撤回を求める要請書を手渡された際に、「本当にご迷惑をかけてすいませんでした」と答えた久間防衛相の声は聞き取れないほど。省内では「元気がないな」という声も上がっていた。
 キャリア組のある課長は「仕方ないんじゃないんですか」と冷めた様子。「いくら長崎(選出)の人とはいえ、柳沢厚労相の『産む機械』発言とは質が違う。辞任もやむを得ないでしょう」と、あきれかえった表情を見せた。また、制服組幹部は「まさかこんなに急展開するとは思っていなかった。これからどうなるのか。正直言って意外です」と驚いた表情を見せた。
 田上長崎市長は「お会いした直後なので大変驚いている。面会したときに謝罪と反省の言葉を何度も言われていたので、何らかの考えを持っていたのだろうかと思っている」と驚きを隠せない様子だった。
 また、長崎県の金子原二郎知事は「反省を込めた陳謝だったので、まさか辞任するとは。非常に驚いている」。久間防衛相の意向を受け参院選長崎選挙区(改選定数1)から出馬を決めた元国見高サッカー部総監督の小嶺忠敏氏の陣営幹部は「初耳なのでなんとも言いようがないが、困ったことになった」と困惑していた。
 広島で被爆し、体験を証言する「語り部」として活動を続けている渡辺美代子さん(77)(広島市西区)は「辞任するのは当たり前。あの発言を聞き、被爆者として怒り心頭だった。ほかの大臣も核を容認するような発言は二度としてほしくない」と話した。
 日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の藤平典代表委員は「当然だと思う。亡くなった被爆者や今も苦しむ被爆者に対し、あってはならない発言で、核兵器を承認することにもつながる。防衛大臣としてふさわしくない」と話している。
 原水爆禁止日本国民会議の福山真劫事務局長は「辞任は当然。参院選を控えて、批判をかわしきれなかったのだろう」と淡々とした口調で述べた。

2007年7月3日 14時52分 中日新聞
久間防衛相が引責辞任 原爆「しょうがない」発言で
久間章生防衛相(66)は3日、先の大戦での米国の原爆投下を「しょうがない」と発言して国民の不信を招いた責任を取り、防衛相を辞任する意向を官邸で安倍晋三首相に伝え、首相も了承した。久間氏の発言をめぐっては野党側が「あるまじき発言」として、首相に罷免を求めるなど一斉に反発、世論の批判も高まっていた。久間氏は記者団に「参院選に影響を与えてはいけないので自分で考えて決めた」と説明し、参院選への影響を最小限に抑えるには早期決着が必要と判断したことを明らかにした。
 安倍首相は久間氏の辞任で、事態の沈静化を図りたい考えだが、任命責任を問われるのは必至。政権運営にとって大きな打撃で、参院選対策の見直しも迫られそうだ。久間氏は首相との会談で「なかなか理解を得られていないようだから、けじめをつけないといけない」と述べた。
 昨年9月発足した安倍政権で閣僚が辞任したのは、佐田玄一郎行政改革担当相に次いで2人目。このほか、農相が松岡利勝氏の自殺により交代している。
 久間氏は6月30日の千葉県柏市での講演で「長崎に落とされ悲惨な目に遭ったが、あれで戦争が終わったんだという頭の整理で、しょうがないなと思っている。それに対して米国を恨むつもりはない」と表明。同時に原爆投下は旧ソ連の対日参戦を米国が阻止する狙いもあったとの見方を示した。
 これに対し、首相は当初「米国の(当時の)考え方を紹介したと承知している」として、問題はないとの認識を示していた。しかし、久間氏の発言をめぐっては、3日に長崎市の田上富久市長が久間氏に直接抗議したほか、公明党の浜四津敏子代表代行が「(問題の大きさを)自覚して身の処し方を決めていただければいい」と述べるなど、自発的辞任を求める声も出ていた。
 久間氏は衆院長崎2区選出。東大卒後、農水省に入り、地元・長崎県議を経て国政に転身。防衛庁長官、自民党幹事長代理、総務会長などを歴任し2006年9月に再び防衛庁長官に就任。今年1月に防衛庁が省に昇格したのに伴い、初代防衛相となった。衆院当選9回。

2007年7月3日 夕刊 東京新聞
『当然』『遅きに失した』 自民内でも声高まり
 久間章生防衛相の米国の原爆投下をめぐる「しょうがない」発言で、被爆地・長崎市の田上富久市長が直接抗議に訪れた三日、久間氏は辞任した。野党からの罷免要求に加え、被爆地からは非難の嵐。自民党内でも辞任を求める声が上がるなど、発言の重さに耐えきれなくなった形だ。参院選が迫る中、安倍内閣は初代防衛相を問題発言で失った。 
 久間氏の辞任の報に、被爆者らからは「当然」と厳しい声が上がった。
 十五歳で被爆し、母親や弟、妹ら五人を亡くした長崎県被爆者手帳友愛会の中島正徳副会長(77)は「アメリカにごますって言ったのかしらないが非常識な発言だった。大臣の資格はない」と怒りをあらわにする。「今後大臣たるものは同じような発言をしないでほしいし、心の中でも思ってほしくない」と話した。
 日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の山口仙二代表委員(76)=長崎県雲仙市=は「参院選を控えており、自民党が負けるといけないので辞めたのだろう」と冷ややかに受け止めた。さらに「大臣ならもっと慎重なものの言い方が求められるはずだ」と、久間氏の発言をあらためて批判した。
 核廃絶運動などに取り組む市民団体「フォーラム平和・人権・環境」の五十川孝事務局次長は「辞任は当然だが、安倍首相が罷免しないのはおかしい」と指摘した。
 原水爆禁止日本協議会(原水協)の高草木博事務局長は「核兵器の現実を認識していないから出てくる発言だったので、辞任も当然だろう。安倍首相も核廃絶を訴えていくと言っているのだから、久間氏もそれを追求すべきだった。唯一の被爆国という認識を強く持ってほしい」と話した。
 東京都原爆被害者団体協議会の飯田マリ子会長は「遅きに失した。久間氏は政治家どころか人間としても失格だ。こういう発言をする人を防衛相に任命し、擁護した安倍首相の責任も追及したい」と批判した。
 被団協の田中熙巳事務局長は「選挙を間近に控えているので、辞任を決めたのだと思うが、当然のことだと思う。辞任にあたっては、被爆者にきちんと謝罪してもらいたい」と求めた。


最近のマスコミ報道(07/07/02) 口べたでも9条守れる 
日時:200772
2007年7月1日(日)「しんぶん赤旗」
口ベタでも9条守れる
非戦を選ぶ演劇人の会 朗読劇で訴え

 平幹二朗さん、草笛光子さんらが憲法九条の大切さを語る朗読劇を披露―「非戦を選ぶ演劇人の会」(実行委員は永井愛さん、渡辺えり子さんら三十人)は三十日、東京・渋谷区代々木の全労済ホール/スペース・ゼロで、十回目のピースリーディング(朗読劇)を開きました。
 劇作家・永井愛さんが九条の問題にしぼって書き下ろした「9条は守りたいのに口ベタなあなたへ…」(作・演出・構成=永井愛)を上演、客席満員の約五百五十人が参加しました。
 朗読劇は、憲法改定をめぐる論議を、ご町内の話として描いたもの。平さんは「世間話研究家」、草笛さんは「横丁のマダム」役に扮(ふん)し、客席を笑わせながら、九条が憲法制定時に日本国民から大歓迎されたことや、戦争に巻き込まれることから国民を守り、世界の信頼を得るうえでいかに役にたってきたかを力説する人を演じました。根岸季衣さん演じる護憲派主婦、渡辺えり子さん演じるパッチワーク教室主宰者らに改憲派が加わって、かんかんがくがくの憲法論議を展開。雄弁な護憲派が優勢になる展開に客席から笑いと拍手がわき起こりました。
 朗読劇には、麻丘めぐみ、大沢健、大塚道子、岡田浩暉、沢田亜矢子、ソニン、永島敏行、西山水木、深浦加奈子、ラサール石井さんらが出演しました。
 朗読劇を聞いた音楽事務所に勤める埼玉県の女性(31)は「『道端の主婦にも九条を守るためできることがある』というせりふが印象的でした。この場限りにせず、継続して自分の言葉で憲法を語っていきたい」と話しました。