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2007年12月24日

日本軍の集団自決強制はまぎれもない歴史的事実

11万人の沖縄県民は怒りに燃えていた

 沖縄県民大会が開催された9月29日早朝、私はレンタカーで那覇市を出発し、沖縄自動車道で一路辺野古に向かった。

 途中立ち寄った伊芸サービスエリアには、マリンブルーが美しい金武湾が見渡せる展望台がある。そこに立つと「パンパンパン」という乾いた音が聞こえた。米軍による実弾演習の音だ。あらためて基地の島であることを実感させられる。

 辺野古に向かったのは、基地建設反対の座りこみを続けるテント村の人々に、激励の「千匹ジュゴン」(折り紙)を手渡すためだ。「千羽鶴」にあやかったこの「千匹ジュゴン」は、8月高尾山で開催されたECOLABOキャンプで多くの親子連れに好評で500近くできていた。残りはグリーンアクションさいたまのメンバーが気持ちを込めて折り足した。

<宜野湾海浜公園を埋め尽くした人々>

 午前11時前にテント村に到着。早速「千匹ジュゴン」を座り込みを続ける人々に手渡した。カップラーメンやドリンクも一緒に差し入れる。

 お昼過ぎにはマイクロバスに乗り込み、テント村の人たちと共に県民大会会場の宜野湾海浜公園に出発。途中で地元のおじぃ、おばぁ達とも合流し総勢約30人となった。満員のバスの中ではおじぃやおばぁがウチナーグチで民謡や反戦歌を歌って盛り上がる。

 会場近くになると自治体がチャーターしたバスが続々と集まっている。徒歩で参加する親子連れや、ユニフォームのまま汗だくで会場向かって走っている高校球児たちもいる。誰もが会場へ向かう姿を見て胸が熱くなる。

 会場に着き、テント村が準備した1万枚のチラシを配ったが、あっという間になくなってしまった。

 午後3時、30度を越える真夏のような日差しの中、いよいよ「教科書検定意見撤回を求める県民大会」が始まった。上空を飛ぶ取材用のヘリコプターやセスナ機の音が響く中、会場は異様なほど静まり返り、緊張感さえ感じられる瞬間だった。

沖縄県民大会

 米兵による少女暴行事件に抗議して開催された95年10月21日の県民大会には9万人が参加した。今回はそれを上回り、復帰後最大の11万人による抗議集会となった。

 なぜこれほどまでに沖縄は怒っているのか。文科省は今年3月、来年度から使用される高校日本史教科書で、沖縄戦の「集団自決」に日本軍の関与があったとする記述の修正を求める検定意見を出した。理由は、「近年、日本軍の命令や強要を否定、疑問視する学説や書籍が出ている」と説明。これを受けて山川出版社、東京書籍、三省堂、実教出版、清水書院の5社はいずれも検定意見に従い記述を修正した。

 山川出版は「日本軍によって(中略)、集団自決に追い込まれた住民もあった」から「自決した住民もいた」に、三省堂は「日本軍に『集団自決』を強いられたり」から「追いつめられて『集団自決』した人や」に、清水書院は「日本軍に集団自決を強制された人もいた」から「なかには集団自決に追い込まれた人々もいた」に修正した。軍の関与をあいまいにし、住民自らの意思で命を絶ったともとれる記述に変更したのだ。

 これに対し沖縄県内全41市町村議会は、沖縄戦の史実をゆがめる検定意見の撤回を求める意見書を可決。県議会も6月定例会中に2度にわたって意見書を全会一致で可決した。7月には、県、県議会、県市長会、県市議会議長会、県町村会、県町村議長会の6団体の代表が、文科省に検定意見の撤回と記述の回復を求めるために上京した。

 まさに島ぐるみの抗議に対して文科省は、「教科用図書検定調査審議会が決めたこと」、「すべての集団自決に軍命があったわけではない」などと突っぱねて撤回を拒否した。ついに沖縄の怒りは頂点に達し、知事が呼びかけ超党派による今回の県民大会開催となったのだ。

<「おじぃやおばぁ達は嘘をついていない」>

 大会では各界、各世代からやむにやまれぬ想いを伝える発言が相次いだ。仲井真弘多知事は、「検定意見に抗議して記述の速やかな復活を要求する」とアピール。

 会場が特に大きな拍手に包まれたのが、高校生代表の挨拶だ。読谷高校3年の津嘉山拡大くんは、「この記述をなくそうとしている人たちは、沖縄戦を体験したおじぃおばぁ達が嘘をついていると言いたいのでしょうか」、「手榴弾を配った日本軍は明らかに自決を強制していると思います」と語った。

 同じく読谷高校3年の照屋奈津実さんが続く。

 「私は将来高校で日本史を教える教師になりたいと思い勉強しています。このまま検定が通れば私が歴史を教える立場になった時、教科書の記述通り事実でないことを教えなければなりません。分厚い教科書の中のたった一文、たった一言かもしれませんが、その中には失われた多くの尊い命があります」

 最後に2人が声を揃えて、「たとえ醜くても真実を知りたい、学びたい、伝えたい」と訴えると、会場から地響きのような拍手が響きわたった。

 会場が静まり返ったのは、「集団自決」の体験者が語った時だ。渡嘉敷島から来た吉川嘉勝さんは、家族8人と親族約20人が円陣を組んで手榴弾を爆発させようとした瞬間を振り返った。

 「(渡嘉敷島で)赤松(隊長)の命令で北山に人々が集められなければ一夜にして200人の人が死ぬはずがない。(中略)軍隊の弾薬、手榴弾が民間人に渡らなければ『集団自決』は決行されない。手榴弾は日本軍から渡された」

 座間味島の宮平春子さんの体験も代読された。

 「当時座間味村の助役だった兄の盛秀は昭和20年3月25日の夜、私たち家族や親類がいた壕にやってきて『米軍が上陸するのは間違いないので、玉砕するよう軍から命令があったので潔く死のう』と父に話していた。(中略)62年がたった今でもあの時を思い出すと涙が止まらず、無念の思いがこみ上げてくる」

 今回の問題で、沖縄の人々がどれほど深く傷つき、怒っているのかが胸に迫ってくる。大会終盤の午後4時半頃、主催者は会場カンパが600万円以上集まり、参加者が10万人を超えたと発表。さらに会場に向かっている人がまだ大勢いるらしい。

 再度大きな歓声と拍手が沸き起こるなか、辺野古から一緒に参加したおじぃは思わず立ち上がって、ウチナーグチで「万歳!」「万歳!」と何度も叫んでいた。

 空前の規模で盛り上がる沖縄の人々の怒りの声を前にしても、未だに文科省は教科書検定に政治的に介入できないなどと本末転倒な主張をしている。琉球新報社などの取材によれば、検定審議会委員には沖縄戦に精通した専門家はおらず、審議会で「集団自決」に関する論議は全く行われていない。

 実は今回の検定意見の原案は、文科省の教科書調査官が作成したのである。まさに文科省こそが審議会に政治的に介入し、検定意見の作成を主導したのだ。福田内閣は教科書会社からの自主的訂正を促しているが、とんでもない責任逃れだ。

 ヤマトに住む私たちは沖縄の怒りを受けとめ、間違った検定意見を撤回させるべく政府を突き動かすことが求められている。

             グリーンアクションさいたま 多賀 実

(1254号 2007年10月25日発行)