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捨てないで

捨てないで:/6止 コンビニ値引きの動き

 ◇期限迫る商品…加盟店主「処分するより売り切る」

 コンビニエンスストア最大手の「セブン-イレブン・ジャパン」本部(東京都千代田区)に対し、公正取引委員会が独占禁止法違反の疑いで調査していることが今年2月、発覚した。売れ残り食品の値引き販売を制限する不公正な取引をしたとの疑いだ。こうした行為は業界内で半ば慣行化し、食品ロスの温床になっていると指摘されてきた。

 「オープンから18年間本部に従ってきたが、この件で経営者として目覚めました」。関東地方に店を出す40代の加盟店主は話す。

 同社では消費期限が切れて廃棄する商品の原価は加盟店が負担するシステムを取っている。この店主は近くに他店が開店したことなどで売り上げが大きく落ち込み、廃棄分の負担が重くなった。このため昨年秋ごろから本部に「値引き販売をしたい」と相談してきたが、止められたという。

 それが「公取委の調査が明らかになって以降、本部は『オーナーの判断で』と対応を変えた」といい、3月から消費期限の2~4時間前の弁当などをすべて定価の半額にした。今では棚に「消費期限を確認してからお買い求めください」と書いた紙を張り、値下げした商品を売っている。

 その結果、原価ベースで月50万円ほど生じていた廃棄食品が半分にまで減った。「食べ物を捨てて損をするぐらいなら、売り切ったほうがいい」と店主は話す。

 ある大手の幹部は証言する。「セブンに限らず、大手の多くは店主が値引き販売をする場合、本部への報告を求めている。だが本部では『コンビニで同じ商品に異なる値段がついているのはなじまず、ブランドイメージが悪くなる』と難色を示すのが一般的だ」

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 閉店時間があるスーパーでは、店じまいの前に売れ残り商品を値下げし、できる限り売り切ることが当たり前だ。一方、24時間営業のコンビニはたとえ売りきれなくても、常にあらゆる商品がそろっていることがビジネスモデルとされている。

 とりわけ弁当やおにぎり、サンドイッチは消費期限が短く、売れ残れば廃棄し、新たな商品を補充する。業界では店頭に品物がないことを「機会ロス(販売のチャンスを失う)」といって嫌い、食品の廃棄を「必要悪」とみなしてきた。

 関東地方の別の店舗。40代の店主は1日9回、店内の食品の消費期限をチェックして回る。朝昼晩と工場から新たな弁当やおにぎりが届くたびに、期限が迫った商品をかごに集め、店の裏に回す。やがて自治体の回収業者の車が来ると、産業廃棄物として渡す。その量、1日に20~25キロ。しかも回収費用は自己負担だ。

 店主は以前、大手スーパーで働いていた。値引きしても残ると従業員が買ってまでして、売り切っていた。「こんなことを続けていたら、ばちが当たる」。コンビニで毎日大量の食品を捨てながら、そう思ったという。

 値引きできなかった4年前、この店主が考え出したのが、店独自のポイント制で廃棄を減らす方法だ。名付けて「温室効果ガス削減ポイントラリー(生ごみ削減)」。販売期限が近付いた調理済み食品に、定価の1~2割のポイントが書かれた紙を張る。ポイントをためると、さまざまな商品と交換できる。割引分は店の負担だが「廃棄するより経済的負担は少ない」。加えて07年には値引き販売にも踏み切り「以前は売り上げの3%強出ていた廃棄ロスが2%程度に減った」という。

 「セブン-イレブン・ジャパン」本部広報担当は公取委の調査に対し「厳粛に受け止め、全面協力している」とコメント。食品ロスについては「食品を売り切る努力を進めており、リサイクルにも力を注いでいる。それでも廃棄はある程度出るもの」と話す。また、他の大手幹部は「コンビニは消費者のライフスタイルに合わせ、24時間常に新しいものを店頭に並べている。そのニーズがある以上、廃棄はなくせない」と強調する。

 多くの食品ロスを生んでいるコンビニ業界に入った公取委のメス。改善の動きは徐々に広がりつつある。だが「24時間営業」に消費者が依存し続ける以上、廃棄量を大きく減らすことは期待できないのだろうか。【佐藤岳幸】=おわり

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 ◇独占禁止法

 公正で自由な競争を促し、消費者の利益を確保するための法律。コンビニ本部が加盟店の販売価格を拘束することは、優越的地位を乱用した不公正な取引方法に当たる可能性があるため、公取委が調査を進めている。また、コンビニ業界の現状を受け、公取委は02年「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」というガイドラインを改定。その中で「本部が加盟者に対して、正当な理由がないのに品質が急速に低下する商品等の見切り販売を制限し、売れ残りとして廃棄することを余儀なくさせること」を禁じている。

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 連載への感想などをお待ちしています。表題を「捨てないで」とし、郵便とメールは欄外のあて先へ。ファクスは03・3212・5177。

毎日新聞 2009年5月28日 東京朝刊

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