【カイロ和田浩明】エジプト政府幹部が、新型インフルエンザの感染予防措置としてイスラム教徒の一大行事「ハッジ(大巡礼)」からの帰国者を隔離する可能性に言及し、波紋を広げている。
ハッジはサウジアラビアのメッカ聖地巡礼などイスラム教徒が可能な限り行うべき義務の一つ。各国から毎年200万人が参加、エジプトからも約50万人が加わるといわれる。今年は11月下旬に「巡礼月」が始まる。
エジプトのガバリ保健相は20日付の独立系地元紙「アルマスリ・アルヨウム」のインタビューで、昨年のハッジに参加したエジプト人数千人がインフルエンザに感染して帰国したと指摘。今年は新型インフルエンザの感染者が出る可能性があり、場合によっては帰国時の隔離も選択肢になると述べた。これに対し、メッカがあるサウジなど他の中東諸国のイスラム教指導者からは「感染リスクが誇張されている」との批判が出ている。
エジプトでは新型インフルエンザの感染報告はないが、政府は4月、国内の豚すべての殺処分を開始した。中東では唯一、鳥インフルエンザの人への感染報告が続いていることもあり、保健当局は新型ウイルスの侵入阻止のため空港などでの検疫を強化している。
毎日新聞 2009年5月30日 20時36分