「これまでの金総書記の判断パターンとは違う。北で、何かが起こっているのは間違いなさそうだ」
公安関係者はこう語る。昨年8月、金総書記が脳卒中で倒れて以降、北の動きを注視してきたが、25日の核実験は中国に了解を得た様子もなく、米国と事前の駆け引きもしておらず、あまりにも拙速だという。
確かに25日といえば、金総書記が韓国の盧武鉉前大統領の遺族に弔電を送ったと伝えられた当日である。
北の現状を分析する情報として、公安関係者は「今回の核実験は、金総書記や義弟で側近とされる張成沢部長ではなく、軍幹部が主導したという情報がある。キーマンは玄哲海、李明秀という大将だと聞いている。これは、北の『壬申の乱』かもしれない」と語る。
玄、李両氏は朝鮮人民軍の最高幹部で、これまで金総書記の地方視察にも同行していた実力者だ。
壬申の乱とは、672年に起きた日本古代で最大の内乱。天智天皇の弟である大海人皇子(後の天武天皇)が地方豪族を味方に付け、天智天皇の子供である大友皇子を首長とする朝廷に反旗を翻して勝利したもの。
現在、北では金総書記の後継者をめぐり、長男の正男氏と次男の正哲氏、三男の正雲氏の名前が取りざたされている。公安関係者が「壬申の乱」に言及したのは、後継者の擁立をめぐり、後ろ盾となる軍の一部が暴走または突出した可能性を示唆したものだ。公安関係者はこう続ける。
「北は、かつての徳川幕府のように、権威の象徴に後継者(=将軍)を据え、擁立した軍などの実力者が権力を握ろうとしているのでは。中国が今回の核実験に猛反発しているのは、同国の思惑と違う展開になっているのかも。ともかく、金総書記の健康状態と無関係ではないだろう」
北の暴走は続くかもしれない。