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きょうのコラム「時鐘」 2009年5月30日
会った途端に、襟を正してしまう人物がいる。怖い顔でにらまれるのではない。穏やかに笑みを浮かべながら、内に気迫を秘める人である
芸術家、職人、土地の古老など、何人もそんな人の顔が浮かぶ。共通するのは、相手の目から視線をそらさずに話を進め、話に耳を傾ける所作である。心地よい緊張感が流れる そんな緊張感とは無縁の、騒然としたヤジの中で進んだ先の党首討論は、まだ記憶に新しい。辞めた小沢前代表と「一心同体」と言っていた鳩山代表を、麻生首相が追及した。「あれ、この前の話と違うではないか」「言葉は極めて大事にしなくちゃいかん」 そう言ったばかりなのに、今度は厚労省の分割に「こだわっていない」という首相発言である。先の批判の言葉が、そっくりわが身に降り掛かるおかしさである。政治家は言葉が大事である。言葉に威厳が備わっていなければ、誰も動かない。軽い言葉には、ヤジがふさわしい 党首討論は続けるそうである。ヤジでなく、場内をシーンとさせる言葉の応酬を見たいと思う。それこそ政治家の本領と推察するのだが、無い物ねだりか。 |