2009-05-29

2009年の5月27日の深夜、私は品川駅からほど近いホテルで
交際を始めたばかりの恋人と初めての交接を試みていた。
幾つかの弦楽器を弾く彼の指先は柔らかく、
私は日付も時間も忘れていた。
精を出し、私の身体にもたれて果てた彼の肩を少しどけ、
時計に目をやったとき、その時刻は私にフラッシュバックを引き起こした。
私に一目惚れしたという彼は、私の人格を完璧に二の次にしているという時点で素敵だ。
私のネガティブさを非常に嫌っているということは、
なぜ、私を愛していると言えるのかという疑問に繋がる。
「俺はもう、君のものだから、いくらでも痕をつけて」
幾つも幾つも身体に赤い内出血を作り上げると、彼は安心したように眠り、
私は小さな声で歌を歌った。
一億と二千年経っても愛してる
あのころ、私は言ったんだ。
「その曲、何かのアニメ?」
彼はすぐに音楽を止め、その曲を聴かせてくれなかった。
だから私はほんの1フレーズしか耳にしなかったし、
彼は死ぬ前にパソコンの中身を綺麗に消去していたけれど、
後日、彼が死ぬ前に繰り返し聴いていた曲が何だかわかることになった。
『創世のアクエリオン』
パチンコのCMで流れていたこの曲を聴いたとき、すぐにわかった。
彼は菅野よう子が好きだった。
この曲を死ぬ前まで聴いていたはずだ。
そして次の世のことを願い、その次の世とは私との世であり、
まだ暗い道を一人歩いていった。
「えっと、東海道線で東京!大丈夫!(本当ならば横須賀線で千葉方面)」
なぜ、私はうそをついたのだろう。
わからない。
品川駅の電光掲示板には「小田原行」とたくさん表示されていた。
彼が生きていた頃、小田原まで向かう道のりは遠く感じたというのに、
品川から小田原は驚くほど近く、私はおそるおそる小田原駅の改札を出た。
そこはもう、知らない場所だった。
そこに座って抱き合ったりキスしたりしていたのに、
そのベンチはもう見当たらない。
駅ビルは私の見知らぬものに変わっている。
それでも駅を出てロータリーに出ると、記憶の奥底にある街だった。
けれども一人で歩く不慣れな街はわかり辛く、
あの背の高い金色の髪の青年がもうどこにもいないことを私に理解させるのに十分だった。
彼がよく行っていたところ、パチスロ…。
あと、そのパチスロの前にあるつけ麺屋さん…。
私は墓参りにふさわしくない、彼に見せるための可愛らしいだけの
彼がよく行っていたはずのパチスロにたどり着いた。
店員に話しかけることにした。
「あの…、少なくとも3年くらい働いている人はいませんか?
このお店に2年前まで背の高い金髪の男性が毎日のように来ていたはずなんです」
そのような店員は二人ほどいた。
明らかに店から浮いていた私をいたわり、彼らは事務所に私を連れて行ってくれ、
「そういうお客様は確かに以前よくいらしてましたけれども、
最近では見かけなくなりましたが、何かあったのですか?」
私はそこで初めて涙が溢れた。
膝を折って嗚咽を上げた。
彼は2年前に亡くなったんです。私、ようやくここまで来れたんです。
お葬式のとき、ここのお店で親しくしていた方々がいらしてたから、
何を話すわけでもないけれど、ただその方々にお会いしたかったんです。
「ああ、同じ年齢くらいの人と一緒にいましたけどねえ、
彼らのような人たちは朝早く着て、あとは夜までいなくなってしまうから、
夜になれば来ると思いますよ。そうですか、亡くなったんですか」
まだ朝の10時半なのに、なのに。
次はラーメン屋さん…。
ここはちょうどお店の人が出勤してきたときだった。
「あ、あの…」
彼を覚えていてくれた人がいた。
私のことまで覚えていてくださって、私はここで彼の食べていたつけ麺をご馳走になった。
本当によくしていただいた。
わざわざ小田原の町に寄ったというのに、彼のことを覚えている人が誰もいなかったら、
私はその後、沼津まで行くことが出来なかったかもしれない。
仏花は寂しいから嫌だ。派手好きだったから、寂しくないものじゃなきゃ嫌だ。
「若い男性なんです」
そう言って、一緒に選んでいただいた。
青紫の小さめなトルコキキョウと薄い黄緑の大輪のトルコキキョウ、
そしてお店の方は値段がしてしまうと言っていたが、ピンク色のカサブランカを入れてもらった。
そしてお墓に鉢植えを置いても良いか訊き、青いアジサイの鉢を購入した。
思ったよりもお金がかかってしまったが、これで全てそろった気がした。
一駅一駅が離れており、トンネルを幾つも抜け、海が輝き、
山肌に張り付くように宿が建っている。
なんでもない旅行だったら簡単に来れるのにな…。
小田原だって思えばそれほど遠くないのに、どうして今まで行けなかったのだろう。
一億と二千年後も愛してる 君を知ったその日から♪
愛したもの全て…今はどこを彷徨い行くの?
愛したもの全て?それは私?
世界が終わる前に 命が終わる前に?
沼津駅には実は彼と一緒に行ったことがある。
彼のふるさとだ。
けれども私はそのとき、とても酷いことをしたのだ。
それはまた後日の話だが。
実は私は納骨まで立ち会ったのだが、寺の名前など教えてもらっていない。
家族らしいことを何一つしてあげなかったくせに、
やはり彼の死の直接の原因になった女は疎ましいのかもしれない。
ただ、告別式のとき、会場の人がかなり私に同情してくれており、
「日蓮宗で沼津でも割りと大きなお寺だからね」と言っていたのを覚えていた。
それだけを頼りに、タクシーの運転手に寺を回ってもらった。
一番目は外れだった。
それもそのはずで法華宗だった。
その寺の人は私の様子があまりにも必死なのを見て、
タクシーに戻り、その寺の名を告げると運転手は言った。
「下河原だけど、わかるかな?」
「下河原!そこで告別式があったんです!とりあえずそこにお願いします!!」
二件目にしてようやく私はたどり着くことが出来た。
僧侶に「最近、Mさんという方が…享年が数えで25歳なんですが…、
その方のお墓で…」
私はここで貧血を起こし、倒れてしまった。
気がつくとタクシーの運転手と僧に抱えられていた。
良かった、良かった、本当に良かった。
もしかしたら彼の家族は彼の命日にすらお墓に来ていないかもしれないと心配していたのだ。
それならば私がもっと早くに来れば良かったのだけれども。
良かった。確かに彼のお母様は非常に後悔していた。
彼が亡くなったのは、そういう思想を抱くようになったのは自分に原因があると泣いていた。
まだ子供だった彼を他人に養子にやっておいて、他の男と再婚した母親だけれども、
それでもやはり彼のお墓にお花の一本も供えられていなかったら悲しすぎる。
土日の休みのどちらかに訪れたのだろう。
枯れている花といかにも仏花といった風情の菊の花を取り除き、
私の買ってきた花を足して、綺麗に生け直すと、
生前、愛されていた人物のような墓であるかのようだった。
私の中の彼の骨が疼いた。
お墓の中には彼の骨と一緒に私の髪の毛が入っているんだよね。
私の髪の毛は毛先以外は切られず、いまだに長く長く伸ばされているよ。
ごめんなさい、はさみを持っていないから、これは君にあげられない。
ごめんなさい、ごめんなさい。
どこのお寺かわかったから、また来ることが出来るようになったよ。
誰よりも私に会いたかっただろうに、ごめんなさい。
遅くなったけれど、会いに来たから。
今日の私は可愛かったのよ。
でも、随分と泣いてしまって、マスカラもつけまつげも何処かに行ってしまって、
それでも今日は暑いけれど、こうしてBABYのワンピースでロリータで来たのよ。
やっと、会えたね。
あなたが亡くなったあと、毎日20錠はお薬を飲むはめになったのに、
あの大量の薬の山は消えた。
あなたはどのクリーチャーに八つ裂きにされているの?
2009-05-28
私を誰だと思ってるの?
私、ウッドベースを弾く指とそれを抱える腕が好きよ。
DCPRGのライブなんか、私、あのウッドベースを見ているだけで濡れてたもの。
弾くならスコット・ラファロのように。
それを格好良いことだと吹聴するようなことはしないでね。
指で弾かれた乳房は緩やかな起動を描いて振動した。
柔らかくかき回された膣は何回も何回もそれを求めた。
細い身体が私の背後から手を回すと
私は、嗚呼、今、見られている。
濡れた股間を弾いては鳴り響く音、
それにしてはずいぶんと高い声で私は調子を取っていた。
わかったら右手がお留守なのをなんとかして。
■

僕を思い出して自分でするといいよ、なんて
私は楽器が弾けないというのに。
華奢な身体には弦が張られていて、まるでバイオリン。
そのアバラの浮いた球体関節人形の絵葉書をプレゼントしたら喜んでくれた。
本当にバイオリンを弾いていたのを見たから。
楽器を弾くように簡単に鳴らせるでしょう、私は。
そんなふうにされたら、もう。
■

幾度も幾度も射精させたとしても、
それを口で受けたとしても、
尽きることのない愛欲をあなたはきっと否定するわ。
勘違いしないで。
私はただ抱かれたいわけじゃない。
性欲などないわ。
私が欲しいのは愛。
その華奢な身体にいくつでも痕をつけて良いというのなら、
インドの性典。
歓喜天のように収まりつかない憤怒のような
私の情熱を後悔するまで受け止め続けなければならない。
ただ愛して。
ただの愛はいらないわ。
尋常ならざる愛で壊して。
私の首を締め付けて。
嫌いだけれどあの人のように首に南京錠をかけても良いというのなら、
私の首をきつくきつく締め付けて。
コルセットで腰を締め上げられる快感のお話はもうしたでしょう?
同じことなの、私の中では。
ただ私の命がいつまで持つか。
命の火に油を注いで、それこそがコイトゥス。
最後には消えて無くなる。
どちらかが死んでしまうまで。
2009-05-26 私は上の空で別れを思った
出会った瞬間に別れへの秒読みが始まることを恐れていては
何も出来っこないでしょう?
だから私はおそるおそる他人に近づいていくの。
さし伸ばされた手は掴むべきものなのか、
理解できなくなる。
「そんな服、やめちゃえばいいのに」
ねえ、リボンなんか外して、髪の毛を下ろしてみてよ。
はい、どうぞ。
「唇が厚くて、エロそうな身体」
私にはわからないわ。
私は薄い乳房と小さな尻、少女のような未熟な肉体が欲しかったけど、
この身体に触れることが愛情につながるというのならば、
どうぞ触って。
私の中の残酷さを理解して。
暗い森の中で底の薄いバレエシューズで走り回ってるの。
足には葉や石で傷だらけよ。
そんな私を後ろから静かに追い回して、
両腕を捕まえたなら、押し倒して
顔も見せずにただ愛だけを囁いて。
■

CHARAの歌を聴くと自分が可愛らしい生き物になれた気がする。
本当は何も変わっちゃいないんだけど。
本当は私に知られないで、知られたとしても、全てが終わってしまった後で知られたかったんだろうと思うの。
でも私は深夜の橋の下にぶら下がる彼を見つけてしまった。
そこで閉ざして彼はまだ冷える朝4時に首を括ってしまった。
私の命をも奪って、私の全てを自分のものにして消えていくことを望んだ彼は、
途中で私からその計画を放り投げられ、もう一人逝くことしかなかったのだろうか。
喪服なんか着ないで、黒いゴシックなドレスにコルセットで腰を締め上げて
告別式に出た私は、その場で髪の毛を一房、といっても50センチくらい切って、
御棺の中に入れてあげた後で、洋服を脱いで、
そのために用意した飛び切りセクシーな下着で彼を送り出してあげて、
でも本当の私は生きている彼を拒絶したのだ。
だから彼は死んだのだ。
彼を殺したあとだから私は泣いたのよ。
私が死んだら泣くの?
あなたは泣くの?
私が死んでもなかなくていいわ。
忘れて構わないわ。
ただ、今、私を泣かさないで。
2009-05-25
■擦り切れるまでやり続けてよ

犯したまま、抜かないで。
この腰を抱いたのなら、その背に爪を立てるわ。
他人に浸食される予感。
奮える太ももにあなたの脚を絡めて。
厭きるほどまでに囁いて
「愛してる」
摩りきれるほどまで貫いて
「感じるのか」と。
引き寄せた腰にまたそのペニスを深く沈め、
残酷な問い掛けを私の意志など無視して続けなさい。
長い髪の毛は振り乱れ、
あなたの細い肩にも巻き付いて、
熱く濡れ滴る子宮は回る回る。
この閨物語を綴るのは私の喘ぎ声。
いくらあなたが私を抱き締めても、
どれだけ奥までそれを入れたとしても、
私はあなたのものにならないでしょうけれど、
それですらあなたは私を…愛してる?
あなたに面倒と窮屈を感じさせるわ。
それでも幾度だって私の内を貫いて頂戴。
そこに生じる苦痛さえ、あなたへの愛なのだ。
足りない足りない、物足りない。
覚悟してね。
あなたの精は吸い尽くされ、私の魔性の粮となる。
■

二冊ともアナイス・ニンについて書かれた本。
矢川澄子という「永遠の少女」でありながら知才溢れる女史が書いたもの故興味があったの。
それだけじゃないわね?
私も「お兄ちゃん」と夫を呼びながら、
二回も堕胎を繰り返し、離別しながらも彼を描き続けるような恋愛がしたいわ。
澁澤龍彦のサングラス越しの華奢な頬から繰り出される眼差しで、
冷酷に彼の子を殺すという快楽を味わいたいわ。
他の男と不倫をしていたといううわさもあるけれどね。
男女だからといって単純に恋愛なんて括りで縛られたくなかった、
彼は私のことを
「アナイス・ニン似のパイオツカイデーなキュレーター」と表現してた。
アナイス・ニンはライフ・ワークとして日記(それは後に外部からの意図的に変更させられた点もあったが)を書いていた。
それはもう、「ニンフェッタ」とされる頃から。
ニンフェッタ?
私が書いていたのはそれ以前からよ。
文字が書けるようになった瞬間、私は創作を始めたの。
『父の娘たち』
読後、今度こそちゃんと客観的でいるようでいて、結局は主観でしかないレビューというものを書いてみよう。
寂しい寂しい、こんなもの!
これがあるから、私たちは常に孤独を携帯するはめになったのよ。
父の娘たちは父親に犯されるために誕生してくる。
誰よりも血の色濃い、しかし異性である分身の内奥へ
ねえ、パパ。
髪の毛は何時切ればいいのかしら?
髪を梳いて。
レースの靴下留めは白じゃないの?
ねえ、パパ、足を開くのは疲れたし、そこをそうされるのはくすぐったいわ。
2009-05-22
http://www.nicovideo.jp/watch/sm3144071
終わらない恋がしたいというのは誰しも望むことだけれども、
残念ながら別れというものは残酷な形で訪れる。
それは自分が納得できるような形式を取らない。
不条理にしか映らない悲劇だ。
原因を双方の至らなさに求める。
でも、それは本当は違う。
ただ、ボタンを掛け違えただけのこと。
私がいない方があなたの生活はスムーズに進む。
あなたがいない方が私の生活に安定が訪れる。
押し付けがましい別れなど必要ない。
本当はそう、思いたい。
別れの悲壮さを感じさせず、それでいて二人がお互いどれだけ好意を抱いていたのかを歌い上げている。
「今はあなたに必要なことは、あなたの思い通りにすること」
相手を責める色を残さずに告げ、いつの日か私も消えていく。
余談;
http://www.nicovideo.jp/watch/sm5612967
似ているようで何だか違う。
いや、全然違う。
感情の起伏が表れ過ぎていて、相手に重荷を与えてしまう。
相手のことを考えて離れていくようでいて、
「離れていく健気な私」を主張して引きとめてもらうことを期待している。
相手から離れる気など感じられない。
そして私はこちら側の女にしかなれないのだろうな。
■

私がどれだけ退屈な女で
あなたにとって都合の悪い嘘を吐くようなことがあったとしても、
私を愛して。
全部、あなたを愛しての行いだから。
全部、許して私に手錠をかけてしまって欲しいの。
いくつもの混乱を生み出しては、
右往左往しながら、結局は頭を抱えるのは自分で、
それに付き合わされたあなたも傷つく。
ねえ、でもそれって幸福なことじゃない?
二人で同時に同じことで傷つくのって幸せじゃないかしら?
二人で協力して片付けたり、
あなたが私を殴ったり、詰ったり、
私はそれを謝って、
二人して仲直りして
一緒の布団に包まり、仲良く抱き合ってまぐわって眠るの。
だから混乱を愛して。
混乱を生む私を愛して。
2009-05-21

有楽町のガード下、狭いくせに安くもない上に値段は高い飲み屋。
不味いモヒートの、ちっとも潰されてないミントの葉を割り箸で崩して飲みながら、
やけにトリスを飲みまくる彼の冷たい視線を受けていた。
「もっと言って。私がどれだけ最低な女かって、もっと言ってよ」
冷ややかな流し目がゾクゾクさせた。
この場で私を殴り付ければ面白いのに。
けれども彼は私を殴らない。
「私は、より一層、私を愛してくれる人のところに行くだけよ。
ただ、愛されたいだけよ」
あなたには理解出来ない愛し方もあるというだけのこと。
さっきの私を軽蔑しきった目線はなかなか素敵だったわよ。
ねえ、殴って、縛り付けて。
私を踏みにじるように愛してよ。
なのにあなたときたら
「愛してるんだ、必要なんだ」
と私を背後から抱き締めるものだから、
私は含み笑いが絶えることない
2009-05-20

どんなに抱き合って、お互いの体液が付着しあったとしても
ここには0.03mmの距離、どうすることも出来ないの。
奥まで入れて、奥に出して、それで私の体がどうなるのか
私の肉体が本当に女なのか証明してみせてよ。
こんな「うすうす」なんて取っ払えない距離が
私たちの間に障害でしかなくって、
怖い、怖い、怖いものを抱きしめて
生みたいの、出来てしまったのなら生んでしまえばいいの。
それだけなの。
私の中に出してでもそれは護謨越しの感触、
物足りなさは私の本能から生じるものなのかしら。
最適な距離が0.03なんて許されない、私は。
無謀なんて言うぐらいなら私の中に突っ込まないでよ。
私をかき回さないでよ。
私の全てを征服する覚悟がないのに?
私は本当に女かしら?
確かめてみてよ、ほら、スカートをたくし上げて
この中に全て見えるわ。
limitedを極限まで0に収束させてよ。
私を微分してしまって。
細切れの私があなたの上で再構築されると出来上がる