男児死亡に因果関係 北島・予防接種、町に一時金支給命令 2009/5/30 10:33
北島町が実施した麻疹(ましん)=はしか=の予防接種を受けた三日後に死亡した男児=当時(1つ)=の父親(39)が、予防接種法に基づく死亡一時金などが支給されなかったとして、町に不支給処分の取り消しを求めた訴訟の判決公判が二十九日、徳島地裁であった。黒野功久裁判長は原告の訴えを全面的に認め、町に不支給処分の取り消しを命じた。町側は控訴する方針。
訴訟の争点は、予防接種と死亡の因果関係の有無だった。原告側は「麻疹ワクチン接種の副作用で髄膜炎などを発症し、心肺停止状態となり死亡した」と主張。町側は「麻疹ウイルス株の感染でも十日程度の潜伏期間がある。ワクチンの弱毒性麻疹ウイルスに感染し、三日間で身体症状が出るとは考えられない」などと反論していた。
判決理由で、黒野裁判長は、一九九四年十月から二〇〇五年三月末までに、麻疹の予防接種の副作用で脳炎・脳症が現れた事例が五件あったことを指摘。「弱毒性麻疹ウイルスの作用で脳幹部に異常を生じさせることに一定の医学的合理性が認められる。予防接種から三日後に死亡することも十分ありうる」などと因果関係を認め、町側の主張を退けた。
判決によると、男児は〇四年五月、町内の病院で予防接種を受けた三日後に死亡した。父親は予防接種法に基づき死亡一時金と葬祭料計約四千三百万円を町に請求。町は厚生労働省に、請求書と「予防接種と死亡の因果関係の可能性は否定できない」とする報告書を送ったが、厚労省が予防接種との因果関係を否認したため、〇五年十二月に不支給処分とした。
判決について、山田昌弘町長は「判決の詳細を確認し、厚労省とも協議して控訴する方針」と述べた。厚労省健康局結核感染症課は「因果関係の認定は専門家の十分な議論や科学的観点から導いた。主張が受け入れられず非常に残念」とした。
父親は「ようやく気持ちの整理がつきそうなので、これ以上、訴訟を長引かせてほしくない」。代理人は「妥当な判決と考えるが、町側がすぐに控訴を検討していることに憤りを感じる。同様に不支給処分となった遺族は相当いるはずで、判決を機に、厚労省が認定基準の見直しに動くことを期待したい」と話した。