嫌われる上司の共通点「事なかれ主義、陰険、保身」
現実の上司(中間管理職)は部下からどのように見られているのであろうか。
立教大学名誉教授 松井賚夫・東京国際大学教授 角山 剛・成城大学教授 都築幸恵=文 ライヴ・アート=図版作成
上司への信頼感は会社への信頼感につながる
今回の調査でわかった、もう1つの重要なことは、上司への信頼感が強い部下ほど、会社幹部への信頼感および今後も引き続きその会社に勤めたいという意欲が強かったことである(r=+0.71)。これは、直属の上司は部下にとっては「会社の顔」であり、その上司への信頼感は、会社への信頼感につながることを意味するといえよう。
人事担当者の間では、753ということがいわれる。中卒者の7割、高卒者の5割、大卒者の3割が3年以内に会社を去っていくという意味である。こうした早期退職の若者たちが挙げる代表的理由は、「仕事が自分に合わない」というものである。これは、若者たちの早期退職が、採用時の仕事と能力のミスマッチに起因するという印象を与えるが、ただそれだけとはいえない。大卒者よりも高卒者、高卒者よりも中卒者というように若年者ほど、早期離職率が高いということは、学校生活から職業生活への移行が若年者ほど困難であり、それだけ多くの支援を必要とすることの表れであろう。
組織の力を引き上げ、次代を担う彼らの職場適応を促進し職場定着を高めるためにも、上司が部下との間に強い信頼関係を築くことが大切である。
(*1)この調査結果の一部は、産業・組織心理学会第23回大会で発表され、またアメリカの学術誌Psychological Reportsに発表予定である。
(*2)バトラーの信頼形成の10条件とは、いつでも連絡できる状態になっているavailability、職務遂行能力があるcompetence、言動が一貫しているconsistency、秘密を守るdiscreetness、公平であるfairness、正直であるintegrity、自分を守ってくれるloyalty、率直であるopenness、約束を守るpromise fulfillment、話を聞いてくれるreceptivityである。
(*3)House, R. J. , & Mitchell, T. R. (1997). Path-goal theory of leadership. In Leadership: Understanding the dynamics of power and influence in organizations, Vecchio, R. P. (Ed.); pp.259-273. University of Notre Dame Press.
(*4)三隅二不二(1984)リーダーシップ行動の科学(改訂版) 有斐閣
(*5)Curran, J.,& Loganbill, C. R. (1983). Factors affecting the attractiveness of a group leader. Journal of College Student Personnel. 24, pp. 350-355.
松井 賚夫
立教大学・駿河台大学名誉教授
まつい・たまお●東京大学文学部卒。人事院勤務後、明治、立教、駿河台大学で産業心理学を講ずる。リーダーシップ、モチベーション、女性のキャリア発達について多くの研究を内外の学術雑誌に発表。著書『リーダーシップ』『モチベーション』。
角山 剛
東京国際大学教授
かくやま・たかし●東京国際大学人間社会学部教授 立教大学大学院修了。立教大学助手を経て、国際商科大学(現東京国際大学)講師、現在にいたる。産業・組織心理学会会長。専門はワークモチベーション研究。著書『組織・職務と人間行動』『産業・組織心理学』『変革時代のリーダーシップ』(いずれも共著)など多数。
都築 幸恵
成城大学教授
つづき・ゆきえ●成城大学社会イノベーション学部教授 コロンビア大学大学院博士課程(カウンセリング心理学専攻)修了。Ed.D(教育学博士)。パーソナリティ心理学、キャリア心理学等の分野で多くの研究を内外の学術雑誌に発表。著書『すぐに役立つ 教師のための心理学講座』、訳書『スーパーカップル症候群』『いじめ こうすれば防げる ノルウェーにおける成功例』など。
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