部課長の基本
2009年 3月 09日

嫌われる上司の共通点「事なかれ主義、陰険、保身」

現実の上司(中間管理職)は部下からどのように見られているのであろうか。

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部下の目にあなたはどんな上司として映っているだろうか

【部下から嫌われる上司とは】

図表1の左半分は、上司の欠陥行動を回答者の評価に基づいて3つのカテゴリーに分類し、それらが部下からの信頼感をどのように損なうかを示したものである。

●事なかれ主義で頼りない

上司のすぐれたリーダーシップが部下からの信頼感に強くプラスに影響していたことを示す右半分の裏返しで、リーダーとしての能力、意欲の欠如は、部下の信頼感を著しく損なう要因になっていた。こうした上司とは、具体的には、事なかれ主義でチャレンジ精神がない上司、やる気がない上司、部下が納得できるような判断や指示ができない上司であったが、これらの上司は、先の「パス・ゴール理論」がいう、リーダーの役割、すなわち、部下に方法・手段を明示して、部下の目標達成を助けることができない上司であり、部下が嫌うのは当然であろう。

●部下の尊厳を傷つける

「おまえは月給泥棒だ!」「目障りだから消え失せろ!」などの上司の暴言によって「うつ」になり、首つり自殺した35歳の男性会社員の死に対して東京地裁は労災と認める判断を下した(朝日新聞07年10月16日)。このように職権を背景にして、部下に対して精神的・身体的苦痛を与え、個人の尊厳を傷つける行為を俗にパワーハラスメントと言っている。先の例の暴言ほど極端ではないにしても、権力を笠に着たものの言い方をしたり、地位を利用して自分の意見を押し付けたり、部下と意見が合わないと声を荒らげるなども、部下の信頼を損なうことになる。

たとえ自分が直接上司からそのようなパワーハラスメント的仕打ちを受けなくても、そのような上司の行為を見聞すれば、職場環境は劣悪なものと感知され、上司に対する信頼感を失うであろう。そもそも、「権力を笠に着て、人を人とも思わない態度」をとる人物は、誰からも信頼されるはずはないが、その人物が「上司」である場合には、部下の迷惑・被害は甚大である。

●保身と出世しか考えていない

下には威張り、上に対しては声まで変わり、臆面もなくペコペコする。わが身の出世しか関心がない。自分の非を絶対に認めようとしない。失敗は部下のせいに成功は自分の手柄にする。自分より有能な者を陥れようとする。自惚れが極端に強く、薄情……。

このように、自分のことしか頭になく、徹底的に自分中心的で、部下の軽蔑を買う上司が、たいていの組織には少数ながらいるものである。会社全体や部下たちの利益や福利には関心がなく、自分の私利私欲で動き、保身に熱心な上司を、部下はめざとく見抜くものである。ところがこうした上司の中には世渡りが巧く、意外にも上層部のおぼえめでたく、出世コースを歩んで、部下たちをがっかりさせ、すっかり会社不信にさせるものもいる。

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プロフィール

松井 賚夫

立教大学・駿河台大学名誉教授

まつい・たまお●東京大学文学部卒。人事院勤務後、明治、立教、駿河台大学で産業心理学を講ずる。リーダーシップ、モチベーション、女性のキャリア発達について多くの研究を内外の学術雑誌に発表。著書『リーダーシップ』『モチベーション』。

角山 剛

東京国際大学教授

かくやま・たかし●東京国際大学人間社会学部教授 立教大学大学院修了。立教大学助手を経て、国際商科大学(現東京国際大学)講師、現在にいたる。産業・組織心理学会会長。専門はワークモチベーション研究。著書『組織・職務と人間行動』『産業・組織心理学』『変革時代のリーダーシップ』(いずれも共著)など多数。

都築 幸恵

成城大学教授

つづき・ゆきえ●成城大学社会イノベーション学部教授 コロンビア大学大学院博士課程(カウンセリング心理学専攻)修了。Ed.D(教育学博士)。パーソナリティ心理学、キャリア心理学等の分野で多くの研究を内外の学術雑誌に発表。著書『すぐに役立つ 教師のための心理学講座』、訳書『スーパーカップル症候群』『いじめ こうすれば防げる ノルウェーにおける成功例』など。

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