「優秀な社員」を会社に繋ぎ止めるコツ
今後はリストラよりも「リテンション」が経営の優先課題となる
会社の将来を担う優秀な社員に「見捨てられ」ないようにするためには。
ポール・マイケルマン=文 翻訳・ディプロマット
クアエロはこの点を認識して、士気を高め、関与(engagement)を深めるための活動をいくつか並行して行っている。1対1のミーティング、コミュニケーションと情報の共有をトップが率先して改善する努力、より柔軟な作業スケジュールへの移行、03年度の四半期ボーナスを、設定された目標純利益を達成することを条件に金銭できちんと支払うなどだ。
これに劣らず重要な活動として、社員の意見や優先事項の明確な基本線を把握するために、全社員に対する社員コミットメント調査を行っているクアエロの場合、ポイントは、経営陣が調査の前に、調査結果を踏まえて必要な行動を取ると公約したことだった。クアエロの社員調査の効果を判定するには、まだ時間が必要だ。しかし、すでにある程度の成果は出ている、とドライズデールは言う。
「われわれは、雇用市場が回復したら重要な人材を失うかもしれないという強い危機感を持っている。会社全体の士気は経済全体と同様、おそらく折り返し点を過ぎたところだろう。上向きに転じてはいるが、まだ緩やかな上昇にすぎない。われわれの課題はそれをもっと急勾配の上昇にすることだ」
リテンションの文化を築く
「市場環境のよしあしにかかわらず、トップクラスの人材には常にチャンスがある」。こう語るのは、プライスウォーターハウス・クーパーズのアシュアランス&ビジネス・アドバイザリー・サービス部門のリーダー、フランク・ブラウンだ。
「本当に重要なことは、すべての社員をつなぎとめる文化を築くことだ」とブラウンは言う。つまり、「『自分の仕事は評価されているか』『自分の意見は重視されているか』『新しいアイデアが歓迎されるか』『社員が敬意をもって遇されているか』『自分はパフォーマンスに応じた評価と報酬を受けているか』『リーダーたちは誠実に行動しているか』等々の問いに、社員が『イエス』と答えられる文化」である。
リテンションの究極のカギ
社員の忠誠心を高めるための企業のさまざまなアプローチ──対象が広いもの、狭いもの、短期的なもの、長期的なもの──について1つの普遍的真実を言うと、社員は誠実に遇されていると感じていれば、厳しい時代を耐え抜く可能性が高いということだ。
「企業が社員の好意的な感情を維持したり取り戻したりすることができない理由はない」とチャレンジャーは語る。「大規模なダウンサイジングを行いながら、残った社員も解雇された社員も今なお会社に好感情を抱いている企業の例はいくらでもある。煎じ詰めれば、社員がどのように遇されているかがポイントなのだ。社員が会社は公平で誠実だと感じていれば、彼らはダウンサイジングにも、給与の凍結にも、諸手当のカットにも、さらにはボーナス・ゼロにも耐えて会社に残るだろう」。
ポール・マイケルマン
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