平成二十一年四月十七日(金曜日)
午前九時三十八分開議
出席委員
委員長 山本 幸三君
理事 大前 繁雄君 理事 桜井 郁三君
理事 塩崎 恭久君 理事 棚橋 泰文君
理事 谷畑 孝君 理事 加藤 公一君
理事 細川 律夫君 理事 大口 善徳君
赤池 誠章君 稲田 朋美君
近江屋信広君 河井 克行君
木村 隆秀君 清水鴻一郎君
杉浦 正健君 平 将明君
萩山 教嚴君 早川 忠孝君
武藤 容治君 森山 眞弓君
矢野 隆司君 柳本 卓治君
石関 貴史君 階 猛君
中井 洽君 古本伸一郎君
神崎 武法君 保坂 展人君
滝 実君
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法務大臣 森 英介君
法務副大臣 佐藤 剛男君
法務大臣政務官 早川 忠孝君
最高裁判所事務総局人事局長 大谷 直人君
最高裁判所事務総局刑事局長 小川 正持君
政府参考人
(警察庁刑事局長) 米田 壯君
政府参考人
(総務省大臣官房審議官) 望月 達史君
政府参考人
(法務省大臣官房長) 稲田 伸夫君
政府参考人
(法務省大臣官房司法法制部長) 深山 卓也君
政府参考人
(法務省民事局長) 倉吉 敬君
政府参考人
(法務省刑事局長) 大野恒太郎君
政府参考人
(法務省矯正局長) 尾崎 道明君
政府参考人
(法務省入国管理局長) 西川 克行君
法務委員会専門員 佐藤 治君
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委員の異動
四月十六日
辞任 補欠選任
保坂 展人君 辻元 清美君
同日
辞任 補欠選任
辻元 清美君 保坂 展人君
同月十七日
辞任 補欠選任
山田 正彦君 階 猛君
同日
辞任 補欠選任
階 猛君 山田 正彦君
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四月十五日
子どもの保護に名を借りた創作物の規制、捜査機関による濫用の危険性が高い児童ポルノの単純所持規制反対に関する請願(吉田泉君紹介)(第一八六三号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件
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○山本委員長 これより会議を開きます。
裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。
この際、お諮りいたします。
各件調査のため、本日、政府参考人として警察庁刑事局長米田壯君、総務省大臣官房審議官望月達史君、法務省大臣官房長稲田伸夫君、法務省大臣官房司法法制部長深山卓也君、法務省民事局長倉吉敬君、法務省刑事局長大野恒太郎君、法務省矯正局長尾崎道明君、法務省入国管理局長西川克行君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○山本委員長 次に、お諮りいたします。
本日、最高裁判所事務総局大谷人事局長及び小川刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○山本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤池誠章君。
○赤池委員 自由民主党の赤池誠章です。
昨今の法務行政を見てみますと、国民の間に不安、そして不安を通り越して、不信感を抱かせているような一面があるのではないかという、そんな懸念を持たれております。
法律を守るというよりも、現状追認型になって、現状が既にこうなっているんだから、それを認めてあげなければかわいそうではないかといった感情論であったり、国際的に現状がこうだから、日本もそうした方がいいのではないかというような一面ですね。また、人道上、人権という名のもとで個人を救うがために、全体がないがしろにされているのではないか、そういった問題が国民の間で不安を抱かせ、また不信につながるのではないかというふうに感じております。
法というものが一体どうあるべきなのか、日本という国家がどうあるべきなのか、どういう方針を持ってどの方向へ進もうというのかという基本的な理念、そういったものが今の法務行政に欠けているのではないかという疑念を国民の間に持たれているということであります。
本日は、そういった懸念を踏まえて、法務行政のあり方について確認をさせていただきたいと思いますし、願わくばそれが懸念であるということを望みたいというふうに思っております。
まず最初に、四月五日に発射されました北朝鮮のミサイルに関連いたしまして、衆議院では四月七日に、我が国の断固たる抗議の意思を国会決議という形で明確にしたわけであります。今回の北朝鮮のミサイル発射問題を踏まえた法務省としての対応についてお聞かせ願いたいと思います。
○西川政府参考人 お答え申し上げます。
法務省関係の対北朝鮮措置につきましてでございますが、平成十八年の七月五日から人の移動に関する制限を実施してきたところでございますが、今般のミサイル発射に係る四月十日の官房長官発表を受け、引き続き北朝鮮籍を有する者の入国の原則禁止、在日の北朝鮮当局職員による北朝鮮を渡航先とする再入国の原則禁止、北朝鮮船舶の乗組員等の上陸の原則禁止等の各措置を維持することとしております。
入国管理局といたしましては、引き続きこれらの措置を着実に実施してまいりたいと考えております。
○赤池委員 これは従来からの措置という形になっているわけでありますが、新たなる措置というものに関して法務省として何を考えているのか、また、しようとしているのか、もう一度確認をさせていただきたいと思います。
○西川政府参考人 お答え申し上げます。
今般のミサイル発射を受けましていかなる措置を講ずるかにつきましては、諸状況を踏まえつつ、政府全体として高度の視点から検討しなければならなかったという問題でございますので、どういう措置という個々の事情については答弁を差し控えさせていただきたいというふうに思います。どうも申しわけございません。
○赤池委員 入国の原則禁止、再入国の禁止、人の移動の制限ということなんですが、一部、北朝鮮への出国までも禁止すべきであるというふうな意見があるわけでありますが、これは今の局長の答弁ですと、個別に入ると、差し控えさせていただきたいということなんですけれども、そういったことも踏まえて検討はされているのか。されているか、されていないかだけで結構ですので、お答えいただきたいと思います。
○西川政府参考人 検討はされておりましたが、個別については差し控えさせていただきたいと思います。
○赤池委員 私は、今回の北朝鮮のミサイル発射というのは、これはもう言うまでもなく、領空を侵犯した、拉致と同様、これは国家主権の侵害だと思っております。当然、北朝鮮への出国禁止となれば、在日の方々に影響を及ぼす。人道的配慮というのは、平時であれば当然だと思いますが、まさにこれが有事だったらどうなのか、そういう認識であれば、出国規制も当然の措置だというふうに思っております。
今後のこともありますので、ぜひ当局としてしっかり検討していただいて、またこれは法務行政の問題のみならず、当然私ども政党としても、また国会としてもしっかり今後とも議論をさせていただきたいというふうに思っております。
次に、入国管理行政についてお伺いをしたいというふうに思います。
入国管理行政の目的というのは、これは「ルールを守って国際化」、入国管理局のスタッフの方々は名刺にも入れて、そういったスローガンを合い言葉にして、出入国管理行政を通じて日本と世界を結んで、人々の国際的な交流の円滑化を図るとともに、我が国にとっては好ましくない外国人を強制的に国外に退去させることにより、健全な日本社会の発展に寄与するというふうにうたっているわけでありますが、局長、これでよろしいですか。
○西川政府参考人 委員御指摘のとおり、入管行政といたしましては、出入国の公正な管理を図るために、法令の規定に従って、ルールを守る外国人の円滑な受け入れを図る一方、不法滞在者等につきましては、基本的には関係機関と連携した強力な摘発の推進等、厳格な対応を通じてその減少に努める、これを使命にしているというふうに思っております。
○赤池委員 いわゆる信賞必罰ではありませんが、ルールを守っていただける方にはしっかり国際交流を図っていただく。しかし、ルールを守らない方にとっては、これは強制的にでも国外退去を含めて厳罰に処する、これが当然だと思っておりますし、国民も、それであればこそ入管行政、ひいては法務行政への信頼が確保されるということであります。
最近、体感治安という言葉があるとおりに、数字だけではなくて、国民の中では治安への不安感というのが出ているということでありまして、それが一体どこから来るものなのかなということを感じたときに、やはり具体的な事例、特に大きくマスコミに報道されることによって不安感が増幅されている部分があるのではないかなということを感じております。
具体的な事例を挙げますと、去る四月十三日に、御承知のとおり、埼玉県のフィリピン人のカルデロン・アランそしてサラ父母が強制退去処分にされました。長女の方が在留特別許可となって日本に残った。その強制退去となった父母は、当然、強制退去になったわけでありますから、法令に従えば通常五年間入国できないにもかかわらず、長女と面会の目的で日本を訪れる場合には、短期間であれば上陸特別許可を付与してもいいという話になっているということであります。
私は、法務当局の今回の対応というのは、ルールを守らない外国人に対してなぜ特別扱いするのか、法の番人として国家を守る上で、このことが国民の不安を増大させて、大変な問題になっているのではないかということを感じております。
そこで、一つずつ事実を確認したいと思うんですが、カルデロン・アラン、サラ父母はフィリピン生まれで、フィリピン時代から恋人関係であった、マニラ市内の大学を中退して、日本で就労して多くの収入を得るために、ブローカーから他人名義でフィリピン旅券を入手して、平成四年に母親となるサラさん、翌年、平成五年に父となるアランさんが相次いで不法入国をした、さらに、それぞれ他人名義で外国人登録までしている、そして、さらに平成七年には長女であるノリコさんが日本で生まれて、入管法の在留資格取得を申請することなく、長女も不法残留となった。
これは三重の罪ということになるわけでありますが、これは間違いないでしょうか、局長。
○西川政府参考人 委員御指摘の今の事実関係については、カルデロン一家についての退去強制取り消し訴訟の第一審の判決の中でも指摘されておりますので、間違いがない事実だと考えております。
○赤池委員 さらに問題なのは、そのアラン、サラ両家の家族でありまして、カルデロン・アランさんの家族は、兄を除いて、両親二人、姉一人が不法残留歴がある、姉は在留特別許可をもらって日本に今現在いらっしゃる、そして、サラさんの、母親の家族は、弟一人を除いて、両親二人、弟、妹の四人に不法残留歴がある、弟、妹の二人は定住者の在留資格取得をして現在日本にいる。
カルデロン父母の両親、家族はほとんどが不法入国、または不法残留したことがあって、現在、日本においても、その二人が入ってきたときに同居もしている、親族関係にある者が感化し合って、集団で入管法違反を繰り返していて、日本の法律を遵守しようとする意識が極めて希薄であるということが判決でも指摘をされているということであります。
これは、入管当局としても事実として認識なさっていますか。
○西川政府参考人 本件に直接関係のない人の不法滞在歴等の詳細について申し上げるのはいかがかと思いますが、今委員御指摘のような事実が退去強制処分取り消し訴訟の判決で指摘されているということは事実でございますので、事実であろうと思います。
○赤池委員 そして、平成十三年、父アランが長女ノリコさんを認知して、平成十八年二月、父母が婚姻をした、その年の七月に母親のサラが入国管理法違反により警察に逮捕された、これは報道があるとおり、職務質問を路上でされて警察に逮捕されたわけですね。次の月、八月には父及び長女が東京入国管理局に出頭して、不法滞在であったことを申告した、九月には母親のサラさんがさいたま地裁において、入管法違反によって懲役二年六カ月、執行猶予四年の判決が言い渡されて、東京入管に収容された、さらに十月、父及び長女が仮放免となって、十一月に正式に一家三名に退去強制令書が発付をされたということですね。
これは間違いないですか。
○西川政府参考人 委員御指摘の事実関係であるというふうに思います。
○赤池委員 そして、十二月になって、一家三名が東京地裁に退去発付処分取り消し訴訟を提訴して、続いて、入管に再審査願いを申し立てる、十九年五月に母親が仮放免となる、平成二十年一月に東京地裁において国側が勝訴したわけですね、一家三名の退去強制令書は適法である、妥当であるということですね。さらに五月に東京高裁においても国側が勝訴判決、六月に一家三名が最高裁に上告及び上告受理申し立てを行ったところ、九月には一家三名、最高裁において上告が棄却されて、上告不受理の決定がなされて、同日、刑が確定した、行政罰だけじゃなくて、裁判でも、最高裁でも、三審やって適法であるということが認定されたわけですね。
東京地裁の判決を読んでみても、子どもの権利条約を初め国際条約の違反に当たらない、日本で生まれ育って現地語ができない長女がフィリピンでは困難に直面するが、それは帰国子女一般にも当てはまることで、両親はフィリピンで生まれ育ち、フィリピンには、両親の家族、父には母と兄二人、母には弟と妹二人がおり、支援が期待できる、長女は子供で、柔軟性、可塑性があり、フィリピンに順応して困難を克服できると指摘していて、年少の長女が自立できるまでの間、両親の扶養を受けて、両親とともに生活する、離れ離れにならないということが福祉にかなうとまで、東京地裁判決が明確に指摘をしているということであります。私は、この場で改正国籍法の最高裁違憲判決は大変おかしいと指摘をしたんですが、この東京地裁の判決を読んで事実確認をしたところ、全く当然の判決だというふうに感じております。
しかし、これからが問題なんです。
今、一つ一つ事実確認をしてきました。ブローカーから他人名義の旅券を入手して相次いで不法入国した入管法違反、外国人登録をした外国人登録法違反、さらに長女も在留資格を申請しない入管法違反で、三重の違反を犯して、その両親、家族それぞれが入国、不法残留歴があって、裁判でも、感化し合って、協力し合って日本に入ってきていると。ぐるみですね。
そして、裁判でも、最高裁でも確定したにもかかわらず、法務当局は、三月十一日の国会答弁でも明らかなとおり、両親の在留は認めがたく、したがって、三人での在留は認められないとの結論に達した、これは当然ですね、しかし、長女については、永住者等の在留資格で在留している三人のおじさん、おばさんがすぐ近所におられることから、これは不法入国、残留歴のあるおじさん、おばさんのことですね、適切な監督保護、養育者のもとで学業を続けさせたいとの理由から在留を希望するのであれば、在留特別許可をしてもいいと考えて、その旨をわざわざ伝えたと。また、長女の在留が特別に許可された場合には、両親については、一定の期間が経過した後、長女と面会の目的で日本を訪れる場合には、短期間であれば上陸特別許可を付与してもいいと考えて、その旨もわざわざ伝えているということを国会で明言なさっているわけなんです。
なぜ法務省の対応が変わってしまったんですか。裁判でも勝訴したのに、なぜ長女だけ特別在留許可を出さなきゃいけなかったんですか。なぜ、国外退去した父母には、短期間であればわざわざ上陸特別許可を付与して、特別扱いをするんですか。私は全く理解できません。
国民にこの事実を踏まえてどう説明なさるのか、局長、御答弁をお願いいたします。
○西川政府参考人 お尋ねのカルデロン一家三名につきましては、今委員のおっしゃられた経過で退去強制令書が発付され、また、同一家が提起した行政訴訟における司法判断においても、処分の適法性は認められたことから、法務大臣の御指示を仰ぎつつ、速やかに本国に帰国すべく求めておりました。
したがって、この事実関係を踏まえれば、両親の側につきまして在留特別許可に付す余地はないというふうに考えましたが、両親の側から、長女については、その時点で中学校一年生になっておって、親族の監護養育のもとでこのまま学業を継続させたいという申し出がございまして、あらゆる事情をしんしゃくする中、監護者の監護意思も確認できたことから、長女の我が国での学業継続に係る強い希望を最大限考慮して、長女については、裁決時と事情が異なるというふうに考えまして、在留を特別に認めてもよいという結論に達し、さきの裁決を取り消して在留を特別に許可するというふうに至ったというものでございます。
次に、両親の再入国についてでございますが、我が国から退去強制された者は、一定期間、我が国に入国できないというふうにされておりますが、当該外国人から上陸拒否期間内に上陸の申請があった場合は、個々人の事情を勘案して、法務大臣が当該外国人について特別に上陸を許可すべき事情があると認めるときには、法務大臣の裁決の特例として、上陸を特別に許可することができるとされております。
お尋ねの父母につきましては、最低五年間、上陸が拒否されるところ、長女はいまだ未成年であること等、人道的観点から配慮すべき点も認められたことから、法務大臣の御指示を得た上で、一定期間が経過した後、長女のもとを訪れるなどの理由であれば、短期間、上陸を特別に許可することも検討する旨伝えているというものでございます。
以上でございます。
○赤池委員 他人名義で日本に入ってくるというのは、大変悪質な不法行為ですよね。その子供に何の罪もないのはもちろんでありますが、これが前例になると、どんな形でも不法入国して子供さえ産んだら子供は日本に残れる。日本に子供が残れば、どんな形で国外退去処分にしても短期間で日本に帰ってこられる。
局長、これは前例にならないんですか。
○西川政府参考人 在留特別許可の許否の判断につきましては、個々の事案ごとに、積極要素、消極要素、諸般の事情を総合的に勘案した上で判断しているということでございます。
本件も一つの処分事例ということではございますが、同様の事案と思われるものも、それぞれ事情が異なりますので、今後も、個々の事案ごとに種々の事情を総合的に考慮して判断していくことになろうというふうに思います。
○赤池委員 結局、積極事由、消極事由、犯罪を犯したら在留特別許可、上陸特別許可は当然おろさないと。であれば、その積極事由の中には、結婚して子供さえ産んだら日本にいられるんだと。
実際、カルデロンの父母は、長女のノリコさんを帰化させて、それによって日本に永住したいという意向が現地のフィリピンの報道機関には流されているということにもなっているわけであります。
以上、このカルデロン一家の入国管理行政について、これは、法務省としては個別の事情をかんがみた上での法務大臣の裁量権だという言い方なんですが、このことが国民に、法務行政、一番水際の入管行政、ルールを守らなくてもいいんじゃないか、そういう発想につながっているというふうにならないんでしょうか。
在留特別許可というのは、法務省の資料によると、去年、二十年で八千五百二十二件あるんですね。これは私も聞いて驚いたんですが、特別じゃなくて普通じゃないですか。二十万人以上いた不法残留を、皆さん五年間一生懸命御苦労なさって、半減プロジェクトで十一万人にした。しかし、この半減プロジェクトで半減した中には、このような形で、日本人と結婚して、個別の事情をかんがみて在留特別許可を出した、そういった方も当然含まれているわけですね。
それによって云々ということは言いたくはないわけでありますが、李下に冠を正さずではありませんけれども、こういった事例、それも大きくマスコミに報道されて、お子さんがかわいそうだというだけで、どう考えても人道的配慮というよりも感情論じゃないかという批判が大変多く私のところにも寄せられているわけでありまして、そういった不安、不信に、法務行政、入国管理行政として、どうきちっと国民の皆様に納得いただくのか。ルールを守らない外国人に対して、なぜこのような温情的措置をとるのか。ルールを守って入ってきた外国人の方々、また、ルールを守って一生懸命働いて、この大変厳しい不況の中でも頑張っていらっしゃる日本人の方々に対して、どう答えるのか。
局長、入国管理行政の基本方針を改めて教えてください。
○西川政府参考人 繰り返しになりますが、冒頭に申し上げました入国管理における基本方針というものは変わりがございません。円滑な受け入れと不法滞在者に対する厳格な対応、こういうことに尽きるのであろうというふうに思っております。
ただ、個々の事案につきましては、やはり在留特別許可の判断については、さまざまな積極要素、消極要素、それを総合考慮して、一番いい解決を探していかなければならない、こういう面はあろうというふうに思います。今回は、そういうさまざまなことを考慮して、長女については、監督者がいて日本に残すという選択肢を選んだということでございますので、このことを十分説明すれば、いろいろなお考えはあろうというふうに思いますが、一つの解決策ということで納得がいただけるのではないかと思いますし、これを拡大して不法滞在に対する助長になるのではないかというのは、それほどの心配はないのではないかというふうに考えております。
○赤池委員 局長、助長にならないだろうと。
そのお子様が一生懸命日本で学業に励まれて頑張っていらっしゃる、それは我々も応援をしたいというふうに思うわけでありますが、しかし、その受け入れ先の御家族、御親族が不法滞在、残留と。当然確認はなさっているとは思いますけれども、それを踏まえて、十分な養育監護、本当に大丈夫なのかという疑念を持たれているわけであります。それも、数字的に言っても、八千件、九千件、一万件と、年によって当然変動があるわけでありますが、すべて法務大臣が見るわけではなくて、当然、現地、現場の局長が確認をしているわけでありますので、そういった積み上げがこの間の数字ということでありますから、これは相当しっかり、今まで以上に、当然なさっているとは思いますが、引き続き、入国管理行政、国民の不安また不信感が相当強いという思いの中でやっていただきたいというふうに思っております。
ちょっと時間が、最後五分になってきたので、もう一点だけ。
これは前回も聞いている話なんですが、昨年の改正国籍法をきっかけにいたしまして、一月一日から施行されました。それによって、既に申請が二百件以上なされている、順次確認をして受理をしているということを聞いております。
その状況の中で、警察庁また法務局含めて連携を強固にしているということは聞いてはいるわけですが、当然、自然と重国籍者がこの改正国籍法によってもふえていくわけですね。お伺いしたところによると、昭和六十年の国籍法の改正以来、両系血統主義のもとで、五十八万人もの方が日本国内において重国籍者だろうと推定をなさっているわけですね。
国籍唯一の原則の中で、日本国籍もしくは外国籍、どちらかを唯一取ってくださいというのが法の趣旨であり、そのために催告制度という制度を設けているわけでありますが、法改正以来二十四年間、一度も催告制度をとらない。自主的な判断に任せるといって何を通知なさっているかといえば、ポスター、リーフレット、パンフレットをつくっていますと。これで果たして、法務行政として、国籍唯一の原則といいながら、そのまま野放しにしていると言われてもおかしくないんじゃないでしょうか。
改めて、民事局長からも重国籍者についての御見解をお伺いしたいと思います。
○倉吉政府参考人 国籍唯一の原則は、これはもう現行国籍法の理念でございます。重国籍についてはこれを解消することが望ましいということで、国籍選択制度等も設けてその解消を図っているところでありまして、法務省としても、その基本的な理念、法の趣旨をきちっと踏まえて、基本的には重国籍を解消することが望ましいと考えております。ここは少しも揺るぎはございません。
重国籍でありながら所定の期限までに国籍の選択をしない者については、今御指摘のとおり、法務大臣が国籍の選択をすべきことを催告することができるとされております。ただいま御指摘のとおり、これまで催告をした実例はございません。
これは、催告を行った場合に、催告を受けた日から一カ月以内に日本国籍を選択しなければ自動的に日本国籍を喪失することと国籍法の十五条三項は明記しているわけでありますけれども、これは重国籍者本人のみならず、その親族等関係者の生活等に極めて重大な影響を及ぼすものであることから、やはり慎重に対処する必要がある、このように考えているためでございます。
前回も同じ答弁をしたかと思いますけれども、国籍選択義務の履行は、重国籍者の自発的な意思に基づいてされるのが最も望ましい。そこで、法務省としては、催告をするまでもなく重国籍が解消されるよう、国籍選択制度の周知に努めているところであります。
ただし、将来的に重国籍の弊害が現実化し、我が国の国益が著しく損なわれる、そのような具体的なケースが生じた場合には催告の必要性を検討しなければならない、これも真摯に考えております。
○赤池委員 国籍選択というのは、個々にとっては当然大変重い選択であります。最近では、有名な事例でいえば、WBCで活躍した日本ハムのダルビッシュ有投手が、イラン人のお父さん、お母さんは日本人ということで、国籍選択をなさったということも報道されているところでありまして、大変重い選択というのは重々承知なわけであります。
ただ、その一方で、法務行政として、国籍唯一の原則、これは、国家というのは自国民を保護するという義務があり、また、国民にとっても、アメリカの国籍法に書かれているとおり、国家に対する永世忠誠義務を負う、そういった関係にあるのではないかというふうに思うわけでありまして、これは平時、まさに平和だからこそ許される部分。しかし、最初に質問させていただきました北朝鮮のミサイル発射事件、これがまさに、拉致問題を初め、有事ということが相当日本国にとっては言われているわけであります。他国の中国やロシアも含めて、反日的な国々に囲まれた日本の中で、こういった懸念というのは全く絵そらごとではないというふうに感じている中で、具体的に、仮に北朝鮮と有事になったら、北朝鮮籍と日本籍、重国籍者の方々はどうなるのか、どう国家が取り扱うのかということは近々の問題だというふうに思っております。
そうなったときにそうするではなくて、やはり日ごろから、今、一万人の方々が重国籍者で、約千人、二千人の方が自発的に選択している、八千人の方がどんどんどんどん積み上がって、その数が五十八万人だと。減りはなく、これはどんどんふえていくわけですね。そういった問題をそのまま放置していくということ自体が、法務行政の不作為、それが、先ほど冒頭からお話ししている現状追認型、法というのは建前で、現状を追認するのみだということで、国民の不信が生まれることにつながってくるような気がして仕方がございません。ぜひ、入管行政、そしてこの重国籍者の問題に関して、当然、自発的に、意思を尊重するといいながら、ただそれだけでいいのかということを踏まえて、法務当局としてきちっと検討をしていただきたいというふうに思います。
最後、局長、一言ございましたらお願いいたします。
○倉吉政府参考人 ただいまの国籍選択制度、その催告制度をどうするのかということも含めて、重国籍の問題に関しては非常に難しい問題が多いわけでございます。
今委員の御指摘になったことは、それぞれ重い問題であるということは私も十分に承知しております。これも委員も御承知のとおりでありますが、この点も含めて、重国籍の問題については、自民党法務部会の国籍問題に関するプロジェクトチームでも御議論をいただいている。しかし、そこでもさまざまな御議論があって、いろいろと深い検討をいただいていると承知しております。
私どもとしては、これまでも国籍法につきましては、その時々の国際情勢に合わせて、それから、日本の国内の国民感情等も考慮しながら、適切に改正をしてきたつもりでございます。今後とも、そういった所要の法改正を行うということも含めて、引き続き対処しなければいけないと思っておりますけれども、そのためにも、この種のことをめぐる議論が一層これからも深まっていくということをぜひ期待したいと思っております。
○赤池委員 時間が参りましたので終わりたいと思いますが、当然、自民党内でもしっかり議論はしていくわけでありますが、現状の法というものが既にあるわけでありますから、であるから、議論が今与党の中で進んでいるからそれを見守るというだけでは、まさにそれこそが法務行政の不作為と言われても仕方がないではないかと思っておりますので、私どもは私どもでしっかり議論をしたいと思いますし、法務当局もしっかり検討していただきたいと思います。
以上です。ありがとうございました。
○山本委員長 次に、大口善徳君。
○大口委員 公明党の大口でございます。
それでは、質問をさせていただきたいと思います。
きょうは、公訴時効の問題と、裁判員制度の中で障害者の皆さんに対する配慮、この二点についてお伺いしたいと思います。
まず、過去二十年間、昭和六十三年から平成十九年、公訴時効を迎えた殺人事件は何件か。これに対応する認知件数、昭和四十八年から平成四年のうちどれくらいの割合になるか。認知件数も含めて、御答弁願いたいと思います。
○大野政府参考人 まず、昭和六十三年から平成十九年までの二十年間におきます、殺人で公訴時効により不起訴になった人員の合計でありますが、九百九十人であります。
それから、先ほど昭和四十八年から平成四年までの二十年間という御指定でございましたけれども、これは公訴時効期間が十五年であるということで、先ほど申し上げた昭和六十三年から平成十九年までの二十年間に公訴時効完成により不起訴になった事件に対応する認知件数、こういう御趣旨かと思いますけれども、その殺人の認知件数の合計は三万四千九十三件になっているというように承知しております。
○大口委員 そうしますと、計算しますと、大体二・九%、認知件数の二・九%が時効を迎えている、これが殺人事件の場合であるということでございます。
当委員会におきましても、昨年の十一月十四日、神崎委員から、殺人罪の公訴時効の廃止問題については質問がありました。そのときに、かなり法務省としては慎重な答弁に終始されたわけでございます。しかしながら、法務省では、本年の一月から公訴時効勉強会を開始し、三月三十一日に「凶悪・重大犯罪の公訴時効の在り方について」という当面の検討課題の取りまとめ、いわば中間報告を出されたわけであります。
この中間報告を見ておりますと、今までの公訴時効制度の改正の必要性について、それぞれの論点、例えば、証拠の散逸や被告人の防御との関係とか、被告人の事実状態の尊重との関係とか、あるいは処罰感情等の希薄化との関係等々で、今までの前提としていたことについての問題提起も含まれていると思います。そういう点で、昨年の十一月から比べて、今回の取りまとめというのは少し前へ進んだ方向性にあるのかな、こういう印象がありますが、この点どうなのか。
それから、この勉強会の今後についてお伺いするわけでありますが、第二ステージはいつごろからスタートするのか、また、本年夏ごろまでを目途に一定の方向性を出すとのことでありますが、いつごろになるのか、お伺いしたいと思います。
○大野政府参考人 公訴時効勉強会をスタートさせました趣旨、きっかけといいましょうか経緯でございますけれども、被害者や遺族を中心といたしまして、殺人等の凶悪重大犯罪の公訴時効制度について見直しを求める声が寄せられたということがございます。また、ただいま委員から指摘がありましたように、当委員会でもその点について検討を求める御意見も承ったところでございます。そうしたことを踏まえまして、本年一月から省内勉強会を開催いたしまして、公訴時効のあり方等について検討を行ってきたものであります。
今回、中間取りまとめを行ったわけでありますけれども、今後さらにこの勉強会を継続いたしまして、被害者団体、学者等の有識者、関係機関などから意見を聞くなどして、さらに検討を進めていきたいと考えております。勉強会の開催日程につきましては、速やかに開催することができますよう現在調整中であります。
また、次の取りまとめを行う時期につきましては、これは今後の検討状況等にもよることでありますので、現段階におきましては夏ごろという以上に具体的なことを申し上げることはできない状況にありますので、御理解いただきたいと思います。
いずれにいたしましても、そうしたいわば第二ステージの検討をいたしまして、その次の取りまとめにおきましては、凶悪重大犯罪の公訴時効のあり方について一定の方向性が出せるように、速やかに検討を進めてまいりたいと考えているところでございます。
○大口委員 この夏ごろに一定の方向性が出た場合、法務省として、そういう法案というふうなことも考えられるわけでありますが、その場合は法制審議会の審議を経る必要があるのではないかなと。そこら辺の、その先についてお伺いしたいと思います。
○大野政府参考人 先日公表いたしました省内勉強会の中間取りまとめ「凶悪・重大犯罪の公訴時効の在り方について」でありますけれども、これは一定の方向性を打ち出したものではございません。現在のところ、これはまだ白紙でありますが、基本的な論点の整理を行うことができましたことから、とりあえずこの段階で国民の皆様にお示しすることとしたものであります。
そして今後、いわゆる第二ステージの検討をいたしまして、先ほども申し上げましたように、この公訴時効のあり方について一定の方向性を得るべく検討を進めてまいりたいと考えておりますけれども、現段階では法制審議会に諮問するのかどうかという点も含めまして、その後の進め方についてまで決めているわけではございません。そうした点につきましては、今後の検討の結果を踏まえて考えていきたいというふうに考えております。
○大口委員 昨年、二〇〇八年の七月十六日に毎日新聞が実施した世論調査があります。殺人事件の時効を、維持すべきだが一五%、なくすべきだが七七%となっています。法務省としても、この勉強会をやっておられるわけでございますけれども、やはり、内閣府の世論調査等、国民の世論というものを、マスコミだけじゃなくて政府としても私はやるべきであると思っておりますが、いかがでございましょうか。
○大野政府参考人 先ほどお答えいたしましたように、省内勉強会の中間取りまとめにつきましては、これは法務省のホームページにも掲載いたしまして、国民の皆様方にお示ししているところでございます。
今後、凶悪重大犯罪の公訴時効のあり方について検討を進めていくに当たりましては、いわゆる世論調査というやり方をとるかどうかはともかくといたしまして、何らかの方法で広く国民の皆様の御意見を伺うことについても検討してまいりたいと考えております。
○大口委員 それから、ヒアリングを行う予定だと聞いております。私は、やはり犯罪被害者団体、例えば全国犯罪被害者の会(あすの会)、あるいは宙の会、また犯罪被害者家族の会Poena、あるいは全国交通事故遺族の会など、広く意見を聞くべきである、こういうふうに考えておりますが、いかがでございましょう。
○大野政府参考人 公訴時効の在り方に関する省内勉強会におきましては、被害者団体の方からヒアリングという形で御意見を伺う方向で考えております。
ただ、具体的にどういった方々から伺うか、あるいはその順序をどうするかというようなことにつきましては、現在なお検討中でございます。
ただいまの委員の御意見も参考にさせていただきまして検討を進め、速やかに調整していきたいと考えております。
○大口委員 それから、ヒアリングの対象の関係機関等という中に日弁連等入っていると思います。それから、警察庁とか最高裁からも聞くことになるわけですね。
それと、私は、マスコミ関係者からも意見を聞くべきだと思っております。この前のヒアリングではその予定はないということだったんですが、ここはやはりマスコミ関係者からも意見を聞くべきだ、こう考えますが、いかがでございましょうか。
○大野政府参考人 関係機関等から御意見を伺うことにつきましては、どういう方法をとるのかということも含めて、現在なお検討中であります。
例えば日弁連などからヒアリングを行うということは十分考えられるというふうに考えております。そのほかの関係機関等につきましては、ただいまの委員の御指摘も参考に検討してまいりたいというふうに考えております。
○大口委員 中間報告では、考えられる方策の利点と、さらに検討する論点。
考えられる方策、これを四つ挙げています。公訴時効の廃止、それから公訴時効期間の延長、それからDNA型情報等により被告人を特定して起訴する制度、検察官の裁判官に対する請求により公訴時効を停止(延長)する制度ということが挙げられています。
さらに検討する論点という中で、捜査資源の適正な配分の要請、捜査人員の維持、記録、証拠物等の保管を考慮する必要というのが挙げられているわけであります。
これは警察庁が大きな関与をしているところでございますので、警察庁において、公訴時効が廃止となった場合にどのような影響があるか、公訴時効の見直しについてどう考えているのか、お伺いしたいと思います。
○米田政府参考人 公訴時効が廃止された場合には、これは被害者あるいは遺族の方々の心情に一層配慮するということになろうかと思います。
一方、捜査の負担ということでございますけれども、もちろん、捜査は進展度合いに応じまして捜査体制は伸縮はいたしますけれども、やはり極めて長期にわたって一定の捜査体制を維持しなければならない。しかしながら、一方で、日々犯罪は起こりますので、それは、ずっとそういう体制を維持するということはやはり負担になるだろうということはございます。
それから、証拠資料を、これは物的証拠等を極めて大量に収集いたします。それをずっと、理論上は永遠に警察において保管をしなければならない。それがどんどんたまっていくということもあろうかと思います。
そういったこともございますけれども、公訴時効の見直しにつきましては、警察といたしましては、被害者の方々の心情等への配慮、あるいは今申しました捜査への負担等、さまざまな観点から慎重な検討を行うべきであるというように現在のところ考えております。
○大口委員 いろいろ工夫をされれば、いろいろな問題はクリアできる、私はこう思っております。
次に、中間報告は、対象犯罪の範囲について、人の死亡を伴う重大犯罪を、殺害について故意がある犯罪、死刑に当たる罪、故意の犯罪行為により人を死亡させた罪、人を死亡させた罪と四つに分類することが可能としていますが、公訴時効が廃止された場合、対象犯罪の範囲によってどのような影響があるのか、警察庁にお伺いします。
○米田政府参考人 対象犯罪範囲による影響、ちょっと一概にお答えすることは困難でございますけれども、対象犯罪が拡大されるということになれば、より多くの被害者の方々、遺族の方々の心情に配慮することができるであろうというように考えます。また、捜査への影響という点では、より広範になるということも言えるかと思います。
○大口委員 主要な論点の一つとして、公訴時効制度を見直す場合、公訴時効が既に完成した後、例えば新法で再び未完成の状態に戻すこと、これはさすがにできないというのが学説の通説だと思います。
ただ、現に時効が進行中の事件への遡及適用については、これは大きな論点になるわけであります。先ほど挙げた毎日新聞の世論調査では、改正までにさかのぼらないのは当然が二一%、発生した年で年数が違うのはおかしいが六八%となっています。
学説では積極説と消極説があるようでございますが、それぞれの学説の主な論拠についてお伺いいたします。
○大野政府参考人 ただいま御指摘がありましたように、現に時効が進行中の事件に対しまして、見直された公訴時効を遡及的に、さかのぼって適用できるかという点については、学説上、見解が分かれております。そして、この問題は憲法の解釈にもかかわると考えられるために、今後、学者等有識者の方から意見を聴取するなどして、さらに検討を進め、深める必要があると考えているわけでございます。
遡及適用、さかのぼって適用することができるとする、いわば積極説の見解の論拠といたしましては、例えば時効期間に関する定めは、公訴時効が持つ安定的機能のもたらす利益と犯罪者の処罰を確保する利益とを比較衡量して、立法者の決すべき事項である、したがって、時効期間の事後的な伸長、伸ばすことも許されるんだという考え方があります。
また、罪刑法定主義は、行為の可罰性の有無と程度を事前に告知すべきものとする原則であって、それ以上の手続的制約、時効等でありますけれども、これは行為の可罰性には影響しないから、さかのぼって変更することは罪刑法定主義に反するものではないというような考え方もあるようであります。
これに対しまして、遡及適用、さかのぼって適用することを認めることができないとする、いわば消極説の論拠といたしましては、例えば公訴時効や挙証責任の転換など、被告人の実質的な地位に直接影響を与える実体法にも密接な訴訟規定については憲法三十九条の趣旨が及ぶという考え方があります。
また、公訴時効が、証拠の散逸、証拠が失われてしまうという訴訟上の理由だけではなく、犯罪の重大さに応じた一定期間の経過によってその可罰性が減少するという実体法上の意味も持っていることは否定できないことからすると、少なくとも現行法のもとでは、公訴時効は常に新法によるべきではなく、刑法六条あるいはその趣旨に従って、軽い方を適用すべきであるというような説もあるというように承知しております。
○大口委員 私も刑法学あるいは刑事訴訟法学を勉強したときに、有名な先生といいますと、松尾浩也先生あるいは団藤重光先生、このお二人の方は積極説、それから田宮裕先生や平野龍一先生は消極説、こういうことでございます。いろいろ学説等あるわけでありますけれども、これは憲法論もありますので、しっかり議論をしてまいりたいと思います。
次に、平成十六年に公訴時効期間延長の刑訴法の改正がありました。十五年を二十五年とかいう形で改正したわけです。同附則の三条で遡及適用について消極とした理由についてお伺いします。
○大野政府参考人 ただいま御指摘のとおり、平成十六年の刑訴法改正による公訴時効期間延長に係る規定につきましては、改正法の施行後に行われた犯罪行為についてのみ適用し、施行前に行われた犯罪行為については適用しないという明文が置かれたわけであります。これは、過去に行われた犯罪行為について事後的に公訴時効期間を延長することは被告人に不利益であると考えられることなどを考慮したものだと承知しております。
○大口委員 次に、裁判員制度と、障害を持つ方が裁判員となる場合の対応についてお伺いしたいと思います。
裁判員法の完全施行も、もう残すところあと一カ月余りとなったわけでありますが、裁判員制度については、当委員会を初めとして、これまで多くの議論が行われました。そして、これからも議論を続けられると思います。
この裁判員制度は、より広くの、そして、より幅広い層の国民が参加することが裁判員制度の成功に必須の要素であります。そのような視点からいえば、障害を持つ方がしり込みすることがなく安心して裁判員の職務を務めていただけるように、体制の整備を行っていくことが欠かせません。この点についてはこれまでもたびたび指摘されておるわけでありますが、今後も不断の検証が必要であります。
そこで、障害を持つ方が裁判員となる場合の対応について、何点かお伺いしたいと思います。
裁判員制度の開始に向けて、社会福祉法人全国社会福祉協議会、障害関係団体連絡協議会が障害者が安心して参加できるよう必要な配慮をまとめたパンフレット、これは法曹関係向けと障害者向けの二種類を作成し、法務省、裁判所等関係各所に配付と伺いました。これを私は手元に持っているわけであります。
この「法曹関係者の皆様へ」という中で、「障害者に配慮した裁判員制度の実現を 広く国民に開かれた裁判員制度を目指して」「障害のある人への配慮は、国民一人一人への配慮につながり、裁判員制度がすべての国民にとって分かりやすく、参加しやすい制度となります。」そして二ページ目の中に「障害のある人の視点や経験、意見を裁判に反映させることは、国民の幅広い視点を裁判に取り入れ、国民にとって分かりやすい裁判を実現するという裁判員制度の趣旨に合致するものであると考えられます。」こういうふうに書かれているわけでございます。その際、障害者の抱える問題を他の裁判官や他の裁判員が理解することが必要という関係者の声があったわけであります。
そこでお聞きしますけれども、障害者の抱える問題を他の裁判員に理解してもらうために最高裁で何か具体的に取り組んでおられることがあるのか、お伺いしたいと思います。
○小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
これまで、複数の裁判所におきまして、障害者の方が参加した模擬裁判を実施したり、障害者団体の方から御意見をお聞かせいただくなどしてまいったところでございます。
こうした取り組みの中で、さまざまな障害やニーズを抱えている障害者の方がいらっしゃるということは十分認識しておりまして、こうした機会に得られました知見や課題を裁判官に周知しているところでございます。
そして、裁判官は、評議などの場で他の裁判員の方にも、障害者の方の抱える問題やそれに対する配慮について、そうした知見や課題を踏まえてお伝えすることになるのではないかと考えております。
○大口委員 視覚障害者の方の御意見の中に、視覚障害者が裁判員になった場合、隣に座る裁判官が口頭で補足説明をしてくれることになっているが、時間が限られる審理で十分な説明を受けられるかが気がかりである、裁判官の説明に頼る余り、その主張に流されるおそれもある、こういう意見があるわけです。
このような視覚障害者の方の不安を払拭するために裁判所の側でどのような配慮をしようと考えておられるか、お伺いしたいと思います。
○小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
まず第一に、審理の場におきましては、当事者が視覚障害者である裁判員の方にも十分わかりやすい主張、立証、これを行うことになると思います。
また、御指摘のとおり、法廷や評議室では、裁判官の隣に障害者の方に着席していただくなどして、視覚障害者である裁判員の方が審理や評議の内容を十分理解していただけるように、適宜裁判官が必要と思われる視覚情報を説明するということを考えておりますけれども、それはあくまで当事者の主張、立証をありのまま説明するというものでございまして、裁判官みずからの見解を説明するというものではございません。
したがいまして、視覚障害者である裁判員の方が裁判官から説明を受けることによって裁判官の主張に流されるというようなことは、そういう心配はないものと考えております。
○大口委員 ここら辺は、裁判官が本当によく、障害者また視覚障害者の特性、また個人差もいろいろありますから、きめ細かくやっていただきたいと思う次第でございます。
次に、聴覚障害者の不安ということでございます。
全国の難聴者の方々でつくる全日本難聴者・中途失聴者団体連合会が三月の四日に最高裁判所に対して要望を提出しているとお伺いしております。この要望書の中で、一つとして、中途失聴、難聴者は裁判員の候補者として呼び出しを受け、選任のための面接のときから情報保障が必要となります、事前質問票に要約筆記、補聴器プラス補聴支援システム、手話通訳、電子速記などの希望を記入する欄を設け、本人が選択できるようにしていただきたい、そして、裁判員裁判を行う裁判所はこういう情報保障を用意していただきたい、こういう要望があるわけですが、これについて最高裁の御見解をお伺いしたいと思います。
○小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
裁判所におきましては、調査票や質問票の送付時に、障害のために何らかのお手伝いを必要とされる方に早目に御連絡をいただけるように呼びかけているところでございます。
また、裁判所では、裁判員候補者の方の御希望に応じて、手話通訳者または要約筆記者の手配を考えているところでございます。
○大口委員 これは、裁判員制度を行う裁判所では十分対応できるということでありますね。ちょっとそこをもう一度確認したいと思います。
○小川最高裁判所長官代理者 裁判員制度を実施する庁におきまして対応をしたいと考えております。
○大口委員 次に、手話使用模擬裁判というのをやっているわけですが、手話を使用できる方ばかりではございません。そこで、文字による情報保障を必要とする中途失聴、難聴者を裁判員とする模擬裁判を行っていただきたい、こういう要請もありますが、これについてどうなのか、お伺いしたいと思います。
○小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
模擬裁判につきましては、各地の法曹三者が手続検証のためのテーマを選択して実施してまいりましたが、施行も迫ってまいりましたので、今後、文字情報を必要とする中途失聴の方や難聴の方を裁判員とする模擬裁判を実施するのはやや難しいというふうに思われます。
裁判所といたしましては、これまで、要約筆記者の団体等から、裁判員裁判において要約筆記をどのように運用していくかといった観点からの説明及び実演をしていただくなどしていますので、そうした機会に得られました知見を裁判所の職員に伝えるなどして、裁判員裁判の実施に備え、障害を持っておられる方に対し、できる限りの配慮をしていきたいと考えております。
○大口委員 それから、要約筆記者のための研修を行ってくださいというのが一つあります。それから、本年八月から全国の地方裁判所に裁判員担当の部署が設けられるわけでありますが、その中に障害者裁判員候補者へのサポート体制などをコーディネートする部門を設けて、障害者が安心して裁判の責務を果たせるようにしていただきたい、そして、この部署には、中途失聴、難聴者による問い合わせが可能なように、電話番号のみではなく、メールアドレスとファクス番号も公開していただきたい、こういう要望でございますが、これについてお伺いしたいと思います。
○小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
要約筆記者の研修についてでございますが、裁判員裁判では、一般の方々が理解しやすいよう、わかりやすい審理が行われて、難解な法律用語が用いられることはなくなりますし、裁判の手続等につきましては、裁判所において依頼した要約筆記者の方にも適切に説明いたします。したがって、現時点において、要約筆記者を対象とした研修の必要は少ないと考えているところでございますが、今後とも、必要性を判断しつつ、検討してまいりたいと考えております。
また、各地方裁判所の裁判員裁判担当の部署などにおきましては、障害者の方が不自由なく裁判員等として参加できるよう、できる限り配慮を行いたいと考えております。
また、ことしお送りする名簿記載通知には各裁判所のファクス番号を記載して、聴覚に障害をお持ちの方にもファクスにより各裁判所にお問い合わせをいただき、個別の事情に応じて対応することを予定しております。
○大口委員 広く国民に開かれた裁判員制度を目指して、これからもしっかり体制を整備していただきたいと思います。
以上で、私の質問を終了させていただきます。ありがとうございました。
○山本委員長 次に、細川律夫君。
○細川委員 民主党の細川でございます。
きょうは、まず最初に、定額給付金のことについて質問をいたします。
この定額給付金については、既に国会でいろいろ議論がありまして、今、多くの地方公共団体では既に給付が始まっております。そこで、私のところに一件苦情が寄せられましたので、この苦情を御紹介しながら御質問をさせていただきたいと思います。
私のところに参りました苦情といいますのは、ある奥さんでありますけれども、これをAさんといたしますと、そのAさんの御主人、夫が、四月の五日に同じ町の介護施設で亡くなられました。定額給付金の基準日というのは二月一日でありますから、夫の分もその人は受給できるだろう、こう思っておりましたら、同一世帯ではないと言われて、受給できない、こういうふうに言われたそうであります。
その理由とするところは、この夫は介護施設に入所されまして、これは町役場の勧めもあって、入所した際に住民票を介護施設に移しておりまして、そこで、単身の世帯ということでありましたから、世帯ごとに給付をするというので給付はできない、こういうふうに言われたそうでございます。同一世帯にいて亡くなられた場合でしたら、御相談されたAさんが亡くなられた御主人の定額給付金を受け取る、こういうことになるわけなんですけれども、この場合は、同じ町のところの介護施設に入られて、住民票を移しているから、そこで亡くなられた場合はもらえない、こういうことのようでございます。
そこで、私は、こんなことはちょっとおかしいなと思いまして、総務省にお聞きをいたしましたら、やはり世帯ごとに給付をするので、単身世帯の世帯主が死亡した場合にはもらえない、あるいは、複数世帯であっても、全員死亡したら、当然基準日以降に死亡した場合、こういう場合ももらえない、給付されないという答えでありました。
そこで、まず総務省にお尋ねいたしますけれども、同じように亡くなっても、単身世帯かそうでないかによってどうして異なるのか、あるいはまたその根拠もお聞かせいただきたいと思います。
○望月政府参考人 定額給付金でございますが、家計への緊急支援を趣旨として行うものであることを踏まえまして、その給付につきましては、居住と生計をともにする社会生活上の単位でございます住民基本台帳におけます世帯を単位とし、また、申請及び受給は、その世帯を主宰する者でございます世帯主が行うということにいたしております。
二月一日の基準日以降に世帯主が死亡した場合につきましては、他の世帯構成者がいる場合には、原則として、新たに当該世帯の世帯主となりました者が申請・受給者となると定めております。一方、単身世帯の方が亡くなった場合につきましては、申請・受給者となり得る者がおらず、そもそも申請が行われないということになります。この場合、支援の対象であります世帯そのものがなくなるということになりまして、給付は行われないということになるものでございます。
○細川委員 そうしますと、定額給付金の給付の申請をして、そしてそれが認められると受給権が発生する、その権利というのはだれに所属をするんですか。
○望月政府参考人 申請に基づきまして市町村の方で決定をいたしますと、その決定に基づきまして、世帯主は受給権を得るということになろうかと思います。
○細川委員 それは、世帯を構成するお一人お一人がこの給付金をもらう権利ができて、それを世帯主が代理してもらう、受給する、本来こういうことでなければおかしいんじゃないでしょうか。
○望月政府参考人 いろいろな御議論があろうかと存じますが、今回の給付金の整理といたしましては、世帯主がいわば代表いたしまして、世帯全員の者につきまして受給をするということの整理にいたしております。
その世帯でございますが、単身世帯の場合、お一人である場合には、お亡くなりになったという場合には、決定の以前につきましては受給はかなわないということになろうかと思います。
○細川委員 もう一度確認いたしますけれども、受給権は世帯主にあるんですか。それとも、それぞれの世帯を構成する個人に受給権があって、それを世帯主が代理をしてもらう、そういうことなんでしょうか。どっちでしょうか。
○望月政府参考人 世帯主が受給権を持つ。代理という関係はないというふうな整理をいたしております。
○細川委員 世帯主が受給権を持って、世帯を構成する個人個人は、受給する、もらうという権利はない、こういう構成で、そういう御答弁なんですけれども、どうも私はその点が合点がいかないのでありまして、一般の国民の皆さんも、自分たちはそれぞれ、お一人お一人、一万二千円あるいは二万円もらえる、こういうふうに思っているのではないかと思います。
そこで、例えば私が相談を受けたAさんは、御主人を在宅で看護していた場合にはもらえる、しかし、施設へ入っていて亡くなられた、この場合はもらえない。私は、どうもこれは市民感情からいたしましても合点がいかないんじゃないか。これはやはり、基本的に言えば、日本国憲法のもとにおける法のもとの平等あるいは個人の尊厳、そういうことから考えれば、当然お一人お一人に受給権があって、そしてそれを世帯主が代理をして請求する、こういう構成が本来の国がやる行政ではないかというふうに私は思います。
したがって、私は、世帯主個人が世帯構成員全部の受給権を持っておるというのは、どうも日本国憲法としての個人の尊厳あるいは法のもとの平等にもとるものではないかというふうに考えるんですけれども、大臣はどのようにお考えでしょうか。
○森国務大臣 既に総務省から御答弁があったところでございますけれども、細川委員の何か合点がいかないというのもわかるような気もするんですけれども、ただ、要するに、家計への緊急支援という側面、定額給付金給付事業の趣旨を踏まえて、世帯単位で給付を定めたというところがポイントなんだと思うんです。ですから、基準日後、また決定前に世帯主が死亡した場合において、単身世帯の方が亡くなられた場合と他に世帯構成員がいる場合とで結論が異なったとしても、これはなお合理性は認められるというふうに思います。
ただ、定額給付金事業の目的には、家計への緊急支援に加えて消費喚起といった面もありますので、そういう観点からは、確かにできるだけ広く住民に給付した方がいいと思いますけれども、他方で、給付手続に要する費用や時間ということも考慮に入れて、基準日、申請・受給者、申請方法など具体的な実施方法をいずれにしても定めなきゃならないでしょうから、これらの点を含めてさまざまな観点から検討を重ねられまして、実施方法について定めたものと推察をしております。
さらに、定額給付金を申請、受給する資格を相続の対象とすれば、単身世帯主が亡くなられても、その相続人によって申請、受給できるという考え方もございますけれども、市区町村による給付決定がなされていない場合には、いまだその具体的な金銭債権は発生していないと解されますので、民法上、相続財産と認めることは困難ではないかというふうに考えるわけでございます。
いずれにいたしましても、現在の景気後退下において、定額給付金の給付事業は家計への緊急支援あるいは消費喚起という重要な意義を持っておりまして、その意義に照らしましても、速やかに住民の皆様に給付金が行き渡ることが求められていますので、いろいろと若干の御疑問があるのは理解しつつも、何とぞ御協力を賜りたいと存じます。
○細川委員 私は、経済的な、家計を助ける、そういうこれまでの政府の言っておられることが理解できないわけではないんですけれども、しかし、そこを権利構成するときに、世帯主に権利があってほかの者にはない。したがって、昔の戸主制度といいますか、戦前は戸主制度というものがあって、戸主がすべて権限があって、まさに世帯を代表するような、そんな法的な地位も認められておりましたけれども、何かそういうような感じがするので、私は、できるだけ個人単位でいろいろ仕組みを考えていくべきではないか。
未成年の子供とその親との関係では、親がもちろん代表するような形で認めるというような場合も当然あってもいいと思いますけれども、今回のような場合での理論的な構成というのは、個人個人に権利がある、それを世帯主が代理をして権利を行使する、こういうような構成がよかったのではないかというふうに今思うところでございます。
次に、今度は裁判所の問題についてお聞きをいたします。
昨年、裁判所の方で不祥事が起こりました。宇都宮地裁の判事がストーカー事件で有罪判決を受けまして、十二月二十四日には弾劾裁判で罷免をされました。その記憶が薄れない、ことしになっての二月八日、今度は福岡高裁の宮崎支部の判事が準強制わいせつ罪で逮捕され、起訴されました。
この件では、この判事について最高裁判所の方は訴追をいたしましたけれども、しかし、この判事が、四月十日、たまたま裁判官の任期満了ということになりまして、本人が再任を求めないために弾劾裁判は行われない、こういうことになりました。その結果、本来、通常ならば弾劾裁判によって罷免判決を受ける、それによって法曹資格を失う、今回はそういうことにならないということで、この件については、どうも国民の皆さんには納得を得られないのではないかというふうに思います。
こうした場合、裁判官の再任の時期であっても、事が決着するまでは裁判官の地位にとどめるというような、そんな方法があってもしかるべきではないかというふうに思われるわけでありますけれども、この点、どのようにしたらこうした今回のような事態を防止することができるのか、何かいい方法はないか、これについて最高裁の方にお聞きをしたいと思います。
○大谷最高裁判所長官代理者 先日も細川委員の方からお尋ねがあった際に申し上げたことでありますけれども、まずもって、今御指摘のありましたように、わずか一年弱の間に現職裁判官が二人も逮捕そして起訴された、最高裁が裁判官訴追委員会に対して罷免の訴追を求める事態を招いたということでありまして、この点についてはまことに遺憾であり、国民の皆様にも深くおわびするところでございます。
その上で、今御指摘のあった点でございますが、これは法改正の問題に絡むことではないかと存じまして、法改正によって今お話のあったような制度を導入することの是非につきましては、これは司法府である裁判所としては意見を申し上げる立場にございませんので、申しわけありませんが、お答えを差し控えさせていただきたいと存じます。
○細川委員 今お答えのように、不祥事が起こって、反省はされておる、しかし、この問題は立法の問題だという話でありまして、このことについては立法府も当然考えなければならないものであります。
先ほど最高裁の方から、法による解決、こういうことも言われましたけれども、これについて法務大臣はどのようにお考えなのか、御意見をお聞かせいただきたいと思います。
○森国務大臣 委員御指摘のとおり、今回の事例のように、任期満了によって裁判官でなくなった者に対しては、現行法上、弾劾裁判を行うことはできないこととされておりまして、それが何とかならないかという御質問だと思います。
ただ、裁判官の任期が満了しても弾劾裁判所による裁判が終わらない限り裁判官の身分が継続するというふうな法改正を行うことについては、憲法第八十条第一項が裁判官の任期を十年と定めていることとの関係で、これはやはり慎重な検討が必要だろうというふうに思います。
○細川委員 確かに、憲法では、裁判官の任期が十年、こういうことになって、再任の規定もあるわけなんですけれども、一方で、裁判官に対しての弾劾裁判もこれまた憲法上認めている、こういうようなこともありまして、国民にかわって国会の中の弾劾裁判所が罷免手続を行う弾劾裁判を行う、こういうことの規定もありますので、私は、この問題は何らかの形で、こういう問題が今後起こった場合に対処できるようなことを立法府も考えていかなければならないのではないかというようなことを考えております。
いずれにいたしましても、裁判所の方では、裁判官のこういう不祥事、それから京都の家裁の書記官の問題も起こりまして、裁判所自体が規律が非常に緩んでいるのではないかというふうに思います。ぜひとも緊張感を持ってやっていただきたいというふうに思います。
そこで、今度は、法務省でもいろいろな不祥事が起こっておりますから、これについてまた御質問したいと思います。
けさの新聞の一部報道でありました、広島少年院での被収容少年に刑務官が暴行を行った、こういうことが報道されておりましたけれども、これについてちょっと詳しく概要を説明してください。
○尾崎政府参考人 委員御指摘の事案につきましては、広島少年院におきまして、複数の法務教官が収容中の少年に対して暴行を加えるなどの不適正な処遇を行ったという事実が判明しております。現時点までの調査におきまして、数十名の少年に対する被害が判明しております。
現在、広島矯正管区及び当矯正局におきまして、その詳細について鋭意調査を進めております。また、並行いたしまして、被害を受けた少年及び保護者に対しまして謝罪を進めております。
現在、事実の全容を解明するための調査を鋭意継続中でございまして、この事案につきましては厳正に対処いたしますとともに、しかるべき時期にはその概要を公表したいと考えております。
以上でございます。
○細川委員 一昨年の秋には、徳島の刑務所におきまして、収監されている人たちが集団で暴力事件を起こすというような大変な事態も発生をいたしました。どうも法務省の方での管理監督が十分ではないのではないかというふうに大変危惧をいたしております。
そこで、ちょっと質問通告のところでは詳しく申し上げておりませんでしたけれども、法務省における懲戒処分数の推移というもののペーパーを私はいただいておりますが、その中で、平成十七年、十八年、十九年、二十年、この間に、四年間で免職が三十五人、停職が七十二人。これは多いです。ほかの省庁とちょっと比較ができませんけれども、免職が四年間で三十五人というのは非常に多いのではないかと思いますけれども、これは一体どういうような内容で懲戒処分で免職になるのか。詳しくわかりますか、ちょっと聞かせていただけますか。
○稲田政府参考人 申しわけございません、ちょっと突然のお尋ねでございますので、今手元に免職者のリスト等はございますが、具体的な内容までちょっと手元にございませんので、現時点ではお答えを差し控えさせていただきます。
○細川委員 済みません、突然であったので。
少年院の事件も報道されて、それについての調査もしてもらわなきゃいけませんけれども。
平成十七年には懲戒処分数が百四十三件、平成十八年には二百三件、平成十九年百五十五件、平成二十年には百三件。内容は後で御報告いただきたいと思いますけれども、免職、停職が四年間で百人を超すような、これは本当に重要なことで、一体どういう内容でこういう問題が起こっているか。法のいわば番人といいますか、法の執行をする、非常に国民にとっては信頼されるべき官庁であります、そういうところの職員にこういう懲戒事件が多数発生しているというふうなことについては、私は本当にゆゆしき問題だというふうに思っております。
法務省の方では、岐阜の地方法務局で、首席登記官が公電磁記録の不正作出、同供用の罪、こういうものに問われて、これはもちろん起訴され、そして第一審で懲役三年を求刑された。この事件なんかも、三十九平米の土地を、五万九千二百五十三平米、そういう全く虚偽の広い面積に登記官が更正登記を行っているという、これはゆゆしき事件が発生をして、とんでもないことだというふうに私は思っております。
せんだっても、加藤公一議員の方から、法務省が不祥事についての公表をしていなかったという事件を取り上げて、この委員会で議論をいたしました。やはり法務省全体として、先ほどの裁判所ではありませんけれども、どうも綱紀が緩んでいるのではないかというようにも思いますので、この点については、大臣、しっかり大臣が指導していただきますように強くお願いをいたしまして、私の質問をこれで終わります。
○山本委員長 次に、保坂展人君。
○保坂委員 社民党の保坂展人です。
裁判員制度について伺っていきたいと思います。
裁判員候補者にこれから質問票などが送られていくということになっていくと思いますが、裁判員候補者並びに裁判員あるいは元裁判員に対するかなりの罰則があるんですね。その罰則の中で、裁判員候補者の虚偽記載罪、百十条、及び過料、百十一条。質問票に虚偽の記載をしたということで過料になる、質問票に虚偽の記載をして裁判所に提出をしたということで罰金になる、その両者はどのように違うのかということはいかがですか。
○大野政府参考人 まず、百十条の罰金になる刑事罰則の方でありますけれども、これは、犯罪構成要件を定めるということで、その明確性の要請から、虚偽の記載をして、そして裁判所に提出をしたというように規定しているわけであります。
これに対しまして百十一条の過料の方でありますけれども、これは別の機会にも御答弁申し上げましたように、裁判員候補者に課された義務の履行を担保するための秩序罰であるというようにとらえられております。
その義務につきましては、裁判員法三十条の三項に「裁判員候補者は、質問票に虚偽の記載をしてはならない。」というように記載されているわけでありますので、その義務に違反した場合ということで、この三十条三項の義務に対応した記載ぶりにしたというように考えております。
もっとも、実際のところは、百十条の罰金も、また百十一条の過料の方も、質問票に虚偽の記載をして実際に裁判所に提出されないと実際にこれが適用になるということはない、実際上は考えにくいのではないかということで、適用においては実質的な差はないというように考えております。
○保坂委員 これは、この法律どおりに読めば、虚偽の記載をした、それに対して過料が発生して、提出をしたということで刑事罰も、これは両方が併科されるということもあるんですか、ないんですか。
○大野政府参考人 理屈の上では両方が併科されることは禁じられておりません。
実際に、過料が科せられたということで、それを起訴、不起訴の判断の際に考慮するということはあり得るかもしれませんけれども、理屈の上では双方が併科されることはあり得るということでございます。
○保坂委員 刑事局長、これはやはり理屈が通らないんですよ。
過料と刑事罰が併科される、実際にはないだろうという顔をしながら今答弁されていますけれども、虚偽陳述もそうでしょう、過料があって刑事罰があって、両方とも併科されるという答弁ですよね。確かに裁判員法はそういうふうに書かれていますが、これはちょっと入り組み過ぎているし重過ぎると私は指摘しておきます。
ちょっとほかの論点もあるので、進みたいと思います。
次に、百十二条、不出頭に対する過料の関係ですが、宗教上あるいは自己の信念上、私は人を裁くことを行うことはできないのだ、こういう理由で出頭しないというときは、これは正当な理由と解するのか、あるいは解さないのか。ここはどうですか。
○大野政府参考人 具体的にどのような場合が裁判員法百十二条に言う正当な理由に該当するのか、これは、裁判所において個別の事案に照らし判断される事項ですので、一概には申し上げられないというふうに考えております。
一般論として申し上げますと、裁判員法の趣旨は広く国民の司法参加を求めるということでありまして、そうしたことから、裁判員となることを国民の義務とする一方で、国民の負担を過重にしないという観点や義務負担の公平を図る観点から一定の辞退事由を認めているわけであります。
そうした制度の趣旨からいたしますと、辞退が認められればもちろんよろしいわけでありますけれども、辞退が認められていないのに、そうした辞退が認められるという判断を待たずに、人を裁きたくないという理由で、出頭が可能であるのに出頭しない場合には、一般的に申し上げて、正当な理由があるとは言いがたいのではないだろうかというふうに考えております。
○保坂委員 大変わかりにくい答弁でしたね。
裁判所はどうですか。人を裁くことはできませんというのは辞退理由として認めないという見解ですか。
○小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
辞退理由については、個別にいろいろと申し出を伺って、個別のケースにおいて裁判体が判断せざるを得ないところですので、今御指摘の言葉だけで、さあ、ではどうなるんだというのは、それは一概に言えないというふうに思います。
○保坂委員 実施も迫る中で、こういう基本的なところで明解な基準が示されない。
大野刑事局長と前回、七日の法案審議のときに、いわゆる内心の自由を定めている憲法十九条との関係で、裁判員候補に対する質問が事例えば死刑などに及んだときに、私は憲法十九条で保障されている思想、良心の自由に従って、あえてこの問題については沈黙を守りたい、こういうふうに言ったときにどうでしょうかと。大野局長は、確かに、正当な理由なく陳述を拒むことはいけないというふうにあるけれども、これに対する罰則はありませんと。しかし、三十万円以下の過料はあるんですね。これはもうちょっと踏み込んで答弁してもらえませんか。
憲法と裁判員法との関係は、当然憲法は最高法規である。憲法の規範のもとに裁判員法は位置づけられている。裁判員候補者が憲法十九条をもって、このことについて私は言えませんと言ったときに、それは正当な理由じゃないと。まさにそこを聞きたいんだ。例えば、検察官からの求めがあって、裁判長が死刑について聞いてくれと言うそのときに拒否をしたというのは、私は認められてしかるべきだと思いますけれども、それはいかがですか。憲法との関係も整理してお答えください。
○大野政府参考人 もちろん憲法は最高法規でありますから、裁判員法もまた裁判員法に基づく運用も、憲法に反するような形で行われてはならないことは言うまでもないところであります。
辞退事由について質問をする中で、その判断に必要な限度で質問をすることはあり得るわけでありまして、これが直ちに思想、信条の自由等を侵害することにはならないだろうというふうに考えるわけであります。
例えば、死刑につきまして前回先生から御指摘がございましたけれども、現在、例として想定されております質問のイメージですけれども、死刑の適用が問題となる事件の裁判員選任手続で、当事者の求めがある場合には、裁判長は口頭で、起訴されているこれこれの罪については法律は死刑、無期または何年以上の懲役に処すると定めていますけれども、今回の事件で有罪とされた場合に、この法律で定まった刑を前提に量刑を判断できますかという質問をしまして、これに対して、積極的に裁判員候補者から異論が出た場合には、今回の事件の裁判で、証拠によってどのような事実が明らかになったとしても、評議においては絶対に死刑を選択しないと決めているのですかという質問をすることによって、不公平な裁判をするおそれの有無等を判断するとされているわけであります。
決して、死刑制度に対する考え方等を聞くということではないわけでありまして、したがいまして、このような質問に答えることが思想、信条の自由を害するというようには考えられない。したがって、そうした質問には、選任手続を適切に運用していく上で、ぜひお答えをしていただきたいということでございます。
○保坂委員 刑事局長、それはすりかえなんですよ。そうじゃなくて、もうちょっとシンプルに考えてください。
裁判員候補が面接を受ける、まあ短い時間でしょうね。事が死刑に及んできた、今言われたような質問を全部裁判長がしないまでも、死刑ということに話題が及んできたとき、その点については自分は言いたくないんだ、これは十九条で保障されている思想、良心の自由に触れてくる、だから私は黙りたいと言った場合に、これは認められるのは当然じゃないかと。しかし一方には、裁判員法には過料があるわけですね、正当な理由なく陳述を拒むとき。それは該当しませんねと言っているわけですよ。該当するんですか、どっちなんですか。これは重要ですよ。
○大野政府参考人 該当するかどうかは、個別、裁判所がそのときの状況を見て適切に判断されることだろうというふうに考えております。
なお、そうした点についてお答えを拒むということ自体も、これはまた選任の際の一つの要素になるんだろうというふうに考えております。
○保坂委員 裁判所に聞きますけれども、これは個々の裁判体の判断じゃ困るんですよ。裁判長の質問が、候補者に対して死刑に係る領域に差しかかったときに、十九条で保障されている思想、良心の自由に触れることなので私は沈黙を選びますと言ったら、これは個々の裁判体ごとに過料を科したり科さなかったりするんですか。どうなんですか。これは原則をしっかり示すべきでしょう。
○小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
死刑について、選任手続の中で裁判所が何か聞くというような場合というのは、規則制定諮問委員会の場で議論された、先ほどちょっと法務省の方からお答えになったと思いますが、そういう場合だろうと思います。あとは、裁判員候補者の方からそういう点についてお話をされるという場合はあるかもしれません。
ですから、そういう場合に、今委員が御指摘になったようなお答えになるという場合に、それをどういうふうにそのときに判断するのかというのは、困るとおっしゃられましたけれども、それは個別の事情がありますので、個別のケースによって判断するということになると思います。
○保坂委員 では、個々の裁判体においては、裁判員法が憲法の上位にも来る、こういうことであってはならないわけですね。
では、もう一問裁判所に聞きます。
この裁判員制度の中で、ここはちょっと欠けているなというのが、やはり説示というものがないということですね。アメリカの陪審員制度などでは、刑事裁判とはどういうものなのかという基本の基本の原則を陪審員に説示する。この説示の内容は、個々の裁判体ごとに違っていてはいけないわけですね。刑事裁判とはこういうものだということは、アメリカじゅうどこの裁判所も一緒でなければならないと思うんですが、これまで最高裁は説示は個々の裁判体に任せる、こう言っています。これはまずいのではないか。しっかり、どこの裁判所でも、同一内容でわかりやすい説示が必要だという点。
それと同時に、この裁判員裁判の中で、裁判官が自分の意見を言うということは当然ありますね。それと今の説示、刑事裁判とはこういうものだという基本的な骨格を示す発言と、個々の裁判官の意見というのは峻別されなければいけない。この辺の評議のルールというのがもっと整備されてしかるべきではないか。特に、説示というものが統一していないということはたびたび指摘されていると思うので、認識はどうですか。
○小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
今おっしゃった説示というのは、裁判員法の三十九条で、裁判員に権利義務等あるいは証拠裁判主義等を説明するということになっておりまして、どういう内容で説明するかというのは、これは規則制定諮問委員会の場で議論されていて、これは周知されていると思います。
それから、評議の中では、説示というか、あるいは裁判官がいろいろな法律制度の説明をすることになると思います。裁判員法の六十六条の五項によれば、裁判長は、評議において、裁判員に対して必要な法令に関する説明を丁寧に行う、それから、評議を裁判員にわかりやすいものとなるように整理する、裁判員が発言する機会を十分に設けるなど、裁判員がその職責を十分に果たすことができるように配慮しなければならないとされておりますし、裁判員規則五十条では、「構成裁判官は、評議において、裁判員から審理の内容を踏まえて各自の意見が述べられ、合議体の構成員の間で、充実した意見交換が行われるように配慮しなければならない。」こうされているわけでございまして、裁判所としましては、こうした規定を踏まえて、裁判員が誤解することのないように、個々の事案に応じて適切に対処するということになると思います。
○保坂委員 多くの模擬裁判では、どうしてもやはり裁判官の意見で判決の流れが変わってくるということは指摘されています。その原因の一つとして、やはり、刑事裁判とはこうだ、そういった説明がありますね、説示でもいいんですけれども。そういうものと、自分の意見はここからだよ、ここからは皆さんと同じ対等の裁判官としての意見ですよという切り分けがないという問題が指摘をされているんですね。
そこで、最後に一つ伺いますが、最高裁のDVDを見ていて、私、大変違和感を持ったのは、この人、殺意があるでしょうかというふうに裁判長が問いかけたときに、少ない人数しか手を挙げなかったんですね。その後、裁判官が、殺意というのは、必ず人を殺してやるという強い意思ではなく、もしかしたら、この人はあるいは死ぬかもしれないなというぼんやりとした想像でも、一応これは殺意という枠になるんですと言って、さあ、皆さん、どうですかと言ったら、全員が手を挙げた。これは最高裁のDVDですよ。つまり、そういうやり方の評議だと、何度も評決できるんですね。個々の裁判体の自由なんでしょう。何回もできるんじゃないですか。
だから、どうもこれは、この模擬裁判の評議の中で、しっかり、ここが刑事裁判の原則だという説示の部分と、九人の裁判員、裁判官が対等、平等だというふうに運営ができていないんじゃないかという指摘をしたいと思いますが、どうですか。
○小川最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
殺意とかそういったものは、私ども、いわゆる難解な法律概念というふうに呼んでおりますけれども、こういう概念を裁判員にどのように説明するかということにつきましては、まず、公判前整理手続において、事案に即した説明方法を法曹三者で協議して、できる限り共通認識を形成するということになります。
その上で、審理では、検察官、弁護人がこれに基づいた主張、立証、冒頭陳述も行います。こうして、難解な法律概念については、基本的に当事者の冒頭陳述で説明されることになります。
また、もちろん、評議においても、それに基づいた説明を裁判所の方からするということになると思います。
○保坂委員 評決は何回もできるんですか。
○小川最高裁判所長官代理者 評決は何回もできるかというのは、どういう意味でございましょうか。
○保坂委員 殺意があるかないかをDVDの中で聞いているわけですね。ないんだと言ったら、これは例えば過失の罪というふうになり、殺人を意図した事件なのか、重要なところですね。
だから、そこが、最高裁がつくっているDVDで、あるんですかと聞いたら、ある人は少数。また説明して、全員なる。つまり、何度も問うことはできるんですね。
○小川最高裁判所長官代理者 評決は、最後の段階で、最終的に意見表明をして、決をとるということでございますから、評議の過程でいろいろな意見が出ていて、その評議の経過で、ある方は、一時的にはいろいろな意見をおっしゃる、また、ほかの裁判員の意見を聞いたりして、意見を交換していく中で、自分の意見も変わるというようなことはある。そういうことだと思います。
○保坂委員 そういうところは非常に不明確なので、また質疑を続けたいと思います。
終わります。
○山本委員長 次に、階猛君。
○階委員 民主党の階猛でございます。
きょうは、法務委員会の方で質疑の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
早速なんですが、きょうは政治資金規正法の解釈を中心にお聞かせ願いたいと思います。
まず、基本的な考え方として、企業、団体については、個人と同様、国や政党の特定の政策を支持、推進し、または反対するなどの政治的行為をなす自由があること、そして政治資金の寄附もその自由の一環であること、これが最高裁判例、八幡製鉄献金事件によって認められているわけでございます。
そういう考え方の中で、政治資金規正法の解釈に当たっては、今申し上げたような政治的行為をなす自由という憲法上の人権行使を萎縮させないように、文言に沿った明確な解釈が求められるはずだというふうに考えますが、この点について、法務大臣、間違いないか、御確認させてください。
○森国務大臣 お尋ねの政治資金規正法については、法務省において所管しているものではありませんので、法務省として有権解釈をお示しできかねるということを御理解いただきたいと思います。
なお、一般論として申し上げれば、検察当局においては、御指摘の政治資金規正法違反の事件についても、政治資金の寄附の自由の重要性等も念頭に置きつつ、法と証拠に基づいて適切に対処しているものと承知をいたしております。
○階委員 もう一つ、基本的な考え方。これは刑罰に関することなので、法務省の所管ということでお答えしていただけると思うんですが、憲法三十一条には、罪刑法定主義という定めがあります。あらかじめ法律で定められていない理由でもって国民に刑罰を科すことは許されない。しかも、みずからの行為が刑罰に当たらない、それは明確にあらかじめ判断できなくてはならない、予見可能性を確保する必要がある、そういった見地から、刑罰法規には一層の明確性が要求されるはずでございます。その点について御確認させてください。
○森国務大臣 御指摘のとおり、罪刑法定主義とは、ある行為を犯罪として処罰するためには、その行為の実行以前に法律でその行為が定められ、かつ、科される刑罰の種類と量が定められていなければならないとする原則でありまして、不明確な刑罰の規定は、実質的にこの原則に反することになるものと承知をいたしております。
○階委員 以上を踏まえた上で、個別の論点に入っていきたいと思います。
政治資金規正法二十五条一項三号、虚偽記載罪に関してでございますが、虚偽記載の内容として、今話題になっております西松建設関連の事件におきましては、寄附をした者という部分の記載が虚偽であるかどうかというのが問題になっているわけでございます。
この寄附をした者の解釈についてお聞きしたいわけですが、そもそも、寄附をした者というのは、資金を出した者、拠出した者という意味なのか、あるいは、自分の名前で振り込みや金銭の交付など外形的行為を行った者を意味するのか。どちらであるのか、教えてください。
○大野政府参考人 政治資金規正法は、法務省の所管外の法律ですので、有権解釈権があるわけではございませんけれども、お尋ねですのでお答えいたしますと、政治資金規正法十二条一項の収支報告書には、寄附をした者の氏名や寄附の金額等を記載することとされております。
この寄附と申しますのは、「金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付で、党費又は会費その他債務の履行としてされるもの以外のものをいう。」とされているわけでありますけれども、そうした寄附の行為をした者が寄附をした者に該当するわけであります。
ただいま、資金を出した者なのか、自分の名前で振り込みや金銭の交付などの外形的な行為を行った者なのかという点についてお尋ねでありましたけれども、これは、寄附した者をいかに認定するのかという事実認定、当てはめのことになるわけでございます。
今、資金を出した、あるいは自分の名前で外形的な行為を行ったということを二つ挙げられたわけですけれども、実際にだれが寄附をした者なのかという認定をするに当たっては、金銭交付に至った経緯やその意図、金銭交付に関与した者の状況等、諸般の事情を個別具体的な事案に応じて判断することになりますので、今言われたその二点のみでお答えすることは困難であるというふうに考えております。
○階委員 そうすると、先ほどの罪刑法定主義の見地からすると、その行為者としては、寄附をした者という部分を書くときに、あるときは資金の拠出者を書かなくてはならない、そしてまた、あるときは直接資金を振り込んだ人の名前を書かなくてはいけないということで、国民の立場、この行為をする者の立場としては、何をどういうふうにして寄附をした者を判断するのかどうかというのは全くはっきりしないわけですね。明確性を欠くんじゃないかというふうに思うわけです。
そこで、具体的な事例を挙げさせていただいて、その場合に虚偽記載罪が成立するかどうかをちょっとお尋ねします。
仮に政党支部Xというものがあったとして、前年まで三年連続してA社というところの口座から振り込みで毎年百万ずつ政治資金の寄附が行われたとします。そして、その会計責任者は毎年A社を寄附者として収支報告書に記載していたとします。ところが、ある年、A社からの寄附が入金されていないということがわかったものですから、この会計責任者は担当者に電話して、ことしは寄附をしていただけないのですかというふうに尋ねたとします。そうすると、ことしはA社の子会社Bに資金を送って同社から送金させたので、B社名義の寄附で処理をしてください、それをもって私どもA社の寄附だと考えてください、このようにA社の担当者から言われたとします。
この場合に、政党支部Xの会計責任者は、収支報告書に寄附者として子会社であるBを記載すると虚偽記載罪になるのかどうか、この点について、刑事局長、お聞かせ願えますか。
○大野政府参考人 先ほど罪刑法定主義との関係について御指摘をいただいたわけでありますけれども、政治資金規正法の虚偽記入罪も含めまして、刑罰規定につきましては、立法の過程で国会でも十分に審議を尽くした上で成立しているわけでありまして、明確性は明らかであるというふうに考えているわけであります。
むしろ、難しいのは当てはめの問題だということでございます。例えば詐欺にしろ横領にしろ、構成要件自体は極めて明確でありますけれども、具体的な事案がそれに当たるかどうかという、そこの当てはめのところが極めて難しいということになるわけでございます。
そこで、今委員が御指摘になったケースでどうかという点でありますけれども、これは一定の状況を仮定して犯罪の成否を問われているものであります。
一般論として申し上げるならば、収支報告書の虚偽記入罪は、収支報告書に虚偽の記入をしたと認められる場合に成立するわけでありますけれども、それでは、今お尋ねの場合に虚偽記入罪が成立するかどうかといいますと、直ちに今言われただけでは判断できないということでございます。つまり、その点につきましては、担当者のA社における具体的な地位や職務、発言の意図やその背景、A社とB社の具体的関係、B社関係者の関与の有無やその程度、担当者の発言についての理解、認識、収支報告書の具体的記載内容等々に関しまして、収集した証拠を総合考慮して判断されるべきでございます。
結局、そうした犯罪の成否につきましては、司法手続において収集された証拠に基づいて判断されるべき事柄であるというように考えるわけでございます。
○階委員 それでは、普通の、一般の人には自分の行為が罪に当たるかどうかとなかなか判断できないですね。今のこの事例、明らかな具体的なケースでもはっきりしないということであれば、これは一般人は自分が虚偽記載をしているのかどうかなかなか判断できない。こういうことで処罰されるというのは非常に問題なのではないかと思うわけです。
念のため聞きますけれども、今申し上げた事例では、A社の担当者が子会社Bに資金を送って、B社から送金させたというふうに言ったわけでございますけれども、資金の点は触れないで、B社はうちの連結子会社ですから当社の寄附と考えてくださいというふうに言っただけであれば、これはどうなるのか。資金をB社に送ったとは言っておりません、ただ、B社は連結子会社だから、B社の寄附を当社の寄附と考えてください、こういうふうに言ったとした場合、これは虚偽記載になるのかどうか。
○大野政府参考人 これも先ほどの御答弁と同じようなことになってまことに恐縮なのでありますけれども、担当者のA社における具体的な地位や職務、発言の意図や背景、A社とB社の具体的関係、B社関係者の関与の有無等、個別事情を踏まえないと犯罪の成否については判断が難しいように思います。
なお、そういうことであれば一般人にわからないじゃないかという御指摘でありましたけれども、その行為に及ばれる方は事情を御存じなわけであります。私が申し上げているのは、客観的に言って、あるいは裁判手続等でそれが罪に問えるかどうかという点についてはそれだけではわからないということを申し上げているのでありまして、その場に置かれた方については、それはおのずと明らかなことではないだろうかというふうに考えているわけでございます。
○階委員 客観的事情が全部ここに今申し上げたとおりであるとして、そして当事者の認識もそのとおりであるとして、それで犯罪が成立するかどうかというのを聞いているわけです。ほかに付随事情はないという前提でお聞きしますけれども、どうですか。これだけの事情で、かつ、それを全部認識していたという前提でお聞きします。
○大野政府参考人 先ほど御答弁申し上げたのは、それだけの事情では判断ができないということでございます。それ以外の、先ほども申し上げた、A社における担当者の具体的な地位や職務、発言の意図や背景、A社とB社の具体的関係等々、繰り返しませんけれども、そうしたことを踏まえない限りは、今言われたことだけで判断することは困難であるということを申し上げたいと思います。
○階委員 それでは、もう一つ、政治資金規正法二十二条の六というところに、本人の名義以外の名義あるいは匿名による寄附、こういったものについても、寄附を受けた者に犯罪が成立する規定が置かれています。
これについて、具体的なケースに即して聞きますけれども、まず、本人が第三者に資金を供与して、その第三者名義で政治団体、政党支部などに対して送金など資金の受け渡しを行わせたという場合を想定します。これが本人の名義以外の名義による寄附に当たるのかどうか、この点について見解を聞かせてください。
○大野政府参考人 先ほども申し上げましたように、犯罪の成否は収集された証拠に基づいて司法手続の中で判断されるべき事柄でありますので、答弁は差し控えさせていただきたいと思うわけですが、一般論で、いわゆる他人名義の寄附やその受領の禁止に違反する罪でありますけれども、これは、本人の名義以外の名義あるいは匿名で政治活動に関する寄附をした場合やこれを受領した場合に成立し得るわけであります。
お尋ねに関連する形であえて申し上げるといたしましても、そもそも、供与したのに、そのお金がさらに、送金など資金の受け渡しを行わせるということがどういう事態を想定されているのか、必ずしも十分に理解しているわけじゃございませんけれども、いずれにいたしましても、本人と第三者の関係あるいは資金の受け渡しをするいきさつやその意図等、諸般の事情を個別具体的な事案に応じて判断すべき事柄であって、そこを捨象して、今言われたことだけでお答えするということは困難であるというように考えております。
○階委員 匿名寄附についても事例に即してちょっと聞きたいんですけれども、さっき言った、仮にA社としますが、A社が政党支部であるXに百万円の寄附を現金で行うに際して、A社の担当者が、当社の名前が収支報告書に出ないように裏でお願いします、領収書は結構です、要りませんというふうに言った場合、これは匿名による寄附に該当するのかどうか、教えていただけますか。
○大野政府参考人 冒頭に、犯罪の成否は収集された証拠に基づいて司法手続で判断されるべき事柄であるということをまず申し上げた上で、ただ、今お伺いしたような、寄附する者が自分の氏名あるいは名称を表示しないで寄附したと認められるような場合については、匿名による寄附に当たり得るのではないだろうか。
もちろん、それは事情によりまして違うことはありますので、一概にこうだと申し上げるわけにはまいらないわけですけれども、匿名による寄附に当たる余地もあるのではないだろうかというふうに思います。
○階委員 当たる余地があるということで、ただ、匿名寄附の禁止のこの規定は、演説会などの千円以下の寄附には適用しないという条文が二十二条の六の第二項にあるわけでございます。こことの整合性はどういうふうに理解したらいいのか、教えていただけますか。
○大野政府参考人 済みません、御質問の趣旨が必ずしも理解できていないと思いますけれども、今言われているのは、立証上の問題のことをあるいは御指摘になっているのかな、抽象的に犯罪が成立するかどうかということと、実際上、例えば弁解と申しましょうか、いろいろなそれに対する反対、主張が可能な場合にどこまで立証ができるかという、そのあたりの御指摘かなという感じもいたしますが、済みません、正しく質問の趣旨を理解していない御答弁だったかもしれません。
○階委員 要するに、演説会などの寄附では、多分、一々相手とかわからないから、それは禁止の例外というふうにされているんだと思いますけれども、今回のように相手がわかっているものについては匿名による寄附に該当するということで、そういう理解でいいのかどうか。
つまり、相手がわかっているけれども名前を出さないというものが匿名寄附の趣旨であるという理解でいいのかどうか、確認させていただけますか。
○大野政府参考人 冒頭申しましたように、有権解釈権がございませんので、法務省から答弁するのが適切かどうかあれですけれども、しかし、仮に相手方にわかっていたとしても、対世間といいましょうか、社会に対して名を伏せるということになれば、匿名の寄附に該当し得ることもあるのではないかというふうに考えております。
○階委員 匿名寄附に関して言えば、やはり、相手がわからないような態様、受け手の側からいうとだれのお金かわからないような態様の寄附が匿名寄附だというふうに思っていまして、だからこそ、例外規定というのが演説会などの場合に置かれているのかなというふうに思っております。
だから、要するに寄附者というのは、直接の相手方、直接寄附を行った相手方、外形的な資金を渡してくれた相手方、こういう者を指すのではないかと思うわけでございますけれども、外形的な行為を行った者を寄附者と考えるべきではないかという最初の話にも絡むんですけれども、そこについてはいかがお考えでしょうか。
○大野政府参考人 資金を出した者と外形的な行為を行った者について先ほど御質問がありまして、その際にお答えいたしましたように、要はだれが寄附をした者に該当すると認定されるかということでございまして、それはさまざまな事情を個別具体的な事案に応じて判断すべきことになりますので、この場で一概にこうだと申し上げることは避けたいということでございます。
○階委員 少し政治資金規正法から離れますけれども、法務省の業務の一般論についてお伺いしたいんです。
法務省設置法において「刑事に関すること。」が法務省の所管事務に挙げられています。そこからの帰結として、法務省は罰則規定について解釈を示すことのできる唯一の官庁ということでいいのかどうか、確認させてください。これは法務大臣にお尋ねすることになっています。
○森国務大臣 法務省設置法第四条は、法務省の所掌事務として、第二号として「刑事法制に関する企画及び立案に関すること。」第七号として「検察に関すること。」第八号として「司法警察職員の教養訓練に関すること。」第九号として「犯罪人の引渡し、国際捜査共助その他の刑事に関する国際間の共助に関すること。」第十号として「犯罪の予防に関すること。」そして、今申し上げた「第二号及び第七号から前号までに掲げるもののほか、刑事に関すること。」を第十一号に定めております。
お尋ねは、この第四条第十一号に「刑事に関すること。」という文言があることを踏まえてのものと思われますが、同号に該当する事務の具体例は、第一に犯罪対策の国際的な取り組みに関する事務、第二に刑事に関する条約その他の国際約束の実施に関する事務、第三に刑事司法全般に関する啓蒙活動の企画及び立案並びにその実施事務などであり、およそ罰則の解釈全般を指しているものではありません。
御指摘の、罰則について解釈を示すということの趣旨が明らかではありませんが、犯罪の成否はあくまでも収集された証拠に基づいて司法手続によって判断がなされるべき事柄であって、個別具体的事件を前提として罰則が適用されるか否かについては、法務省が判断すべき事項ではないというふうに理解をしております。
○階委員 そうはいっても、先ほどのようなケースで、一般国民が判断に迷うケースがあるわけでございます。そういった場合に、法務省は、一般人であるとか、あるいは団体、企業などから罰則の適用や解釈について質問を受けた場合というのは回答していただけるのかどうか。これは回答してもらわないと一般人としては非常に困るんですけれども、その点はいかがでしょうか。
○大野政府参考人 法務省に対しまして刑罰法令の構成要件についてお尋ねがあるような場合には、法律の条文を御説明するということは当然あるわけでございます。
しかし、それを超えまして罰則の解釈ということになりますと、そもそも法務省は罰則の解釈権をいわば専権的に有しているというところではございません。確かに、他省庁が罰則つきの法案を立案する際に、刑罰法令全体の整合性を保つという観点から協議にあずかっていることはございますけれども、しかし、それを超えて、各省庁が所管される法律の罰則について法務省が解釈権を持っているというふうにはされておりません。
さらに、犯罪の成否に係るような話になりますと、先ほど来申し上げておりますように、これは収集された証拠に基づいて司法手続において判断されるべき事柄でありますので、具体的な事情を前提に、一体罰則が適用されるのかどうかというお尋ねがあっても、法務省としてはお答えをしていないところであります。
また、この関係で、いわゆるノンアクションレターというんでしょうか、法令適用事前確認手続というのがございますけれども、これはあくまでも許認可等に関する法務省所管法令について照会に応じているものであります。これに対しまして、刑法を初めといたしまして罰則の適用に関する照会につきましては、法務省においては、その照会に応じていないということでございます。
○階委員 法務省設置法の中には「検察に関すること。」というのも挙げられております。
これについてちょっと聞きたいんですが、まず、個別具体的な事件の捜査であるとか処分について、法務省が検察に対して助言をしたり意見を言ったりすることはあるのかどうか。
それから、もう続けて質問しますけれども、個別事件に関連して、検察から法令解釈について質疑を受けた場合は、法務省は回答するのか。
この二点について、お願いします。
○大野政府参考人 検察権につきましては、その独立性、中立性を尊重するという観点から、御案内のとおり、法務大臣の具体的事件における指揮権も一定程度制限されているところでございます。したがいまして、個別具体的な事件の処分につきまして、法務省が検察に対して介入するというようなことは、いわゆる指揮権発動というような事態にならない限り、ないわけでございます。あくまでもそれは検察官の権限に属する事柄であるというように理解しているところでございます。
ただ、一方、法令解釈についての質疑であります。これにつきましては、先ほど委員が指摘されました、法務省の所管事務の中で「検察に関すること。」というのがございます。したがいまして、検察がその検察権を適正に行使し得るよう、その捜査、処分の権限行使そのものにわたらない範囲で、法令解釈等につきまして、検察側の求めに応じて資料の提供や参考となる考え方をお示しするということはあるわけでございます。
ただ、これも、あくまでもそうした法令解釈についての資料、考え方も参考でありまして、判断するのはあくまでも検察が判断するというように整理しているところでございます。
○階委員 検察からの質疑には答えていただける、一般人から法令の解釈を聞かれても、それはなかなか厳しいという話だったと思います。
それでは、検察からの質疑に対しては、法務省はどのような姿勢で回答をするのか。より具体的に言えば、検察の捜査、公判に有利になる方向で回答するのか、客観的に中立的な立場で回答するのかというのが一点。
もう一点、一般人から質問された場合に、検察への回答と異なることは当然あり得るというふうに今の回答から思うんですけれども、そういったことで、一般人から同じことを聞いても、法令解釈については異なる回答が返ってくるという前提で考えておいてよろしいのかどうか。
その二点、お願いします。
○大野政府参考人 法務省が検察に関することを所掌しており、そこで、検察の権限行使が適正になされるよう、法令解釈についての資料提供等を行うというふうに申し上げたわけであります。
検察庁の業務でありますけれども、検察庁法四条に、法律の関係で申しますと、「裁判所に法の正当な適用を請求」するというように規定されております。したがいまして、当然、法務省が検察庁に資料等の提供を行うに際しまして、それは曲がったといいましょうか、へんぱなものであっては裁判所で通らないわけであります。当然、裁判所でも受け入れられるような、そうした法の正当な適用に資するような情報提供を行うということでございます。
それからもう一点、検察に対する情報提供と一般人に対する情報提供と中身が違ってくることがあるのかということでありましたけれども、先ほど申し上げましたように、検察に対する情報提供というのは、所掌事務の中の「検察に関すること。」に基づくわけであります。したがいまして、検察に対して、踏み込んだといいましょうか、詳しい資料提供をすることはあるのに対して、先ほどもちょっと申し上げましたように、一般の方に対して、例えば具体的な事実関係を前提にした質問についてはお答えできない、そういう違いが生ずるのは当然のことではないだろうかというふうに考えております。
○階委員 そこで、大臣にお尋ねしたいんですが、実は、民主党は先日、政治資金問題第三者委員会というものを設置して、外部の独立した機関において、今回の西松建設関連の事件に関して、検察のあり方、メディアのあり方、それから小沢代表の説明責任のあり方、こういったことについて検討を始めているわけでございますけれども、その第三者委員会の方から、法務省刑事局の刑事課の方に、政治資金規正法の罰則の解釈についてヒアリングに出席してもらいたいという要請を、私ども民主党の細川ネクスト法務大臣からさせていただいたのでございますけれども、出席を拒否されたということだそうです。
なぜ出席を拒んだのか、この点について、法務大臣、理由をお聞かせください。
○森国務大臣 今委員が言及されました委員会は、民主党から独立した第三者委員会として、民主党の党外に設置されたものであると仄聞をいたしておりますが、その目的は、民主党小沢代表秘書の政治資金規正法違反事件に関する小沢代表及び民主党の対応等について御議論をなさるということであると承知をいたしております。具体的刑事事件がその設置の背景にあるものと思われるわけです。
民主党小沢代表秘書の政治資金規正法違反事件については、当該秘書やその他の関係者が起訴されており、現在公判係属中でありますが、起訴に係る犯罪は虚偽記入の罪や他人名義の寄附の罪などであって、今後、その成否が公判において判断されることになると考えられます。
犯罪の成否については、法と証拠に基づいて司法が判断すべき事柄であるわけでございまして、検察当局を所管する法務省が、具体的な事件に関する議論を行うことを目的とした委員会に参加し、公判を離れた場で、かつ公判を先取りする形で、いかなる場合に犯罪が成立するかについて言及することは、公判の審理に支障を生じかねず、不適当であると考えております。そのような点を勘案し、同委員会への参加を御遠慮させていただいた次第です。
○階委員 でも、きっかけは西松関連の事件でございますけれども、この委員会自体は、そのような事件を離れて、一般論として政治資金規正法の解釈について御議論されているわけでございまして、別にそんな、個別事件とは必ずしもかかわりなく、法務省として、刑事局、ふだん業務でいろいろと御議論されている中身を報告していただければいい話でございまして、御懸念のようなことは当たらないと思うんですけれども、これは担当者に出席してもらうわけにはいかないんでしょうか。
○森国務大臣 一般的な議論というふうなことでございますけれども、少なくとも西松の事件を契機として持たれた委員会というふうに拝察を申し上げますし、そういった委員会に参加し、公判を離れた場で、かつ公判を先取りする形で、いかなる場合に犯罪が成立するかについて言及することは、先ほど申し上げましたように、公判の審理に支障を生じかねず、不適当であると判断をいたします。
また、出席いたしましても、お答えできることはありません。
○階委員 そうすると、今、法務省あるいは検察に対して国民からいろいろな疑惑の声が、疑念の声が上がっておりますけれども、そういったものに対してちゃんと説明責任を果たしていこうという場としてこういう機会を利用されればいいと思うんですけれども、その説明責任はどのような形で果たしていかれるのか。
はっきり言って、小沢代表の方の説明責任はいろいろ取りざたされるわけでございますけれども、検察、法務省については何も説明責任ということが果たされていないというふうに思うわけでございます。せめてこういう個別の事件を離れた法解釈については、法務省としては中立的な立場から説明されてもいいんじゃないかと思うわけです。これぐらいはやってもいいんじゃないかなと思うんですけれども、いま一度お願いできますでしょうか。
○森国務大臣 いずれ公判活動において事が明らかになると思います。
○階委員 最後に、ちょっと私、あるブログを見ていましたら、佐久間特捜部長と司法クラブが今月九日の夜に飲み会を開いたというような記載があったわけです。こういう事実は本当にあったのかどうか、大臣。
○森国務大臣 今お尋ねの件は、個々の検察官の勤務外の行為であって、法務大臣として把握をしておりません。
○階委員 それでは、こういう行為はふだんあるかどうかというのは全く把握していない、そして、それについて、仮にあったとしてもそれは問題ないというお立場でしょうか、大臣。
○森国務大臣 そのことが国家公務員法の信用失墜行為などに該当するというようなことならともかく、御指摘のような話だけではそのような事情は全くうかがわれませんので、個々の検察官のプライベートな行動について、法務大臣として私がコメントすることはいたしません。
○階委員 しかし、もし本当に特捜部長、これは東京地検の次席検事のようなスポークスマン的な地位にある人なら別ですけれども、特捜部長というのはまさに事件の捜査の中心的な役割を果たしているわけで、こういう方が司法クラブと飲み会を開いて懇親を深めていたということであれば、当然のことながら、飲んだ勢いでいろいろな情報が漏れたりするわけでございまして、今言ったような懲罰事由に当たる可能性もあるかと思います。
この点について、ちゃんと懲罰事由に当たらないかどうかを判断するためにも、しっかりとこれは調査する必要があるんじゃないでしょうか、大臣。
○森国務大臣 個々の検察官の勤務外の行為にかかわる事柄であって、法務大臣としてそのようなことは把握をするつもりはございません。
いずれにいたしましても、検察当局においては、従来から捜査上の秘密の保持について格別の配慮を払ってきたところであり、プライベートな場であっても、捜査情報や捜査方針を外部に漏らすことはあり得ないと信じているところであります。
○階委員 信じているだけでは国民は納得しない、ちゃんと説明責任を果たしてもらいたいということを申し上げまして、私の質問を終わります。
どうもありがとうございました。
○山本委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時十四分散会