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麻生首相:展望なき解散先送り 与党内に危機感

 09年度補正予算が29日成立し、今国会の最大の焦点は衆院解散・総選挙の時期をめぐる与野党攻防に移った。麻生太郎首相は過去最大規模の補正予算成立をバネに政局の主導権を握る構えだったが、民主党の代表交代を機に与野党の攻守は逆転。衆院議員の任期満了を迎える9月10日まで100日余りとなる中、政権浮揚の切り札は見当たらず、与党内には「展望なき解散先送り」に危機感が募っている。【中村篤志、白戸圭一】

 自民党の細田博之幹事長は29日夕、国会内で記者団に対し、補正予算の成立について「景気対策として、迅速な処理が必要な実態があり、極めて喜ばしい」と評価した。公明党の太田昭宏代表も、国会内で「景気・経済へのてこ入れがしっかりできる」と述べ、補正の景気浮揚効果を強調した。

 こうした「公式見解」に反し、自民党で高まるのは「補正予算の発信力が足りない」(谷川秀善参院幹事長)とのいら立ちだ。29日の党総務会では、津島雄二党税調会長が「『補正は無駄』という野党の主張の方が、国民に浸透している。細田幹事長から、政府にもっとPRするよう申し入れてほしい」と注文をつけた。

 政府・与党は今国会会期を大幅に延長し、補正関連法案や海賊対処法案など重要法案の成立に全力を挙げる構え。自民党の菅義偉選対副委員長は29日夜、東京都内のホテルで麻生首相と会食し「(選挙までの期間が)長ければ長いほど、支持率も上がる」と、衆院解散をできるだけ先送りするよう進言した。

 ただ、延長国会で法案成立を重ねても、政権への風向きが変わる保証はない。「後になるほど、状況が悪くなる」(若手)との見方もあり、解散戦略を描けないのが実情だ。

 29日夕、河野洋平議長が補正成立を宣告した衆院本会議場の与党席に高揚感はなく、自民党若手は同僚議員と「任期満了日の衆院解散で、10月選挙しかない」など悲観的な会話を交わした。「あれだけ経済対策を重ねたのに、なぜ内閣支持率が上がらないのか。やはり麻生首相では戦えない」。党内に募る徒労感は、再び首相批判へと向かっている。

 ◇民主、解散追い込み狙う

 民主党は09年度補正予算成立を受け「重要法案はほとんどなくなった。早く衆院を解散して国民に信を問おう」(鳩山由紀夫代表)と攻勢を強めている。衆院で審議中の補正予算関連法案についても意図的な審議引き延ばしをしない方針を強調。法案処理を進めることで与党が大幅延長を決めた後半国会に「政治的空白」を作り出し、早期の衆院解散・総選挙に追い込む構え。小沢一郎前代表の秘書逮捕で失いかけた党勢の回復に自信を深めている。

 「補正関連法案は、上がらなくても予算が実施できる仕組みに政府が細工している。何でそんなに長い会期延長が必要なのか」。小沢一郎代表代行は29日、長崎県諫早市内で記者団に語り、「結局、サミット(主要国首脳会議)出席まで延ばすというだけの話か」と切り捨てた。岡田克也幹事長も同日の記者会見で「延長して何を議論するのか分からないまま、日にちの議論が先行しているのは極めて遺憾」と批判した。

 鳩山新体制発足で世論の支持を回復し勢いづく党内には、多数を握る参院で麻生首相の問責決議案を提出すべきだとの声もあがり始めた。鳩山氏は29日、国会内で記者団に「国対委員長、幹事長に判断を委ねたい」と決議案提出の可能性に含みを残した。

毎日新聞 2009年5月29日 22時13分(最終更新 5月30日 0時29分)

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