2009年5月29日23時18分
ソウルで29日、韓国の盧武鉉(ノ・ムヒョン)・前大統領のひつぎを乗せた車を見送る市民たち=ロイター。盧氏の国民葬が同日営まれ、市民とのお別れの場となったソウル市庁前の広場には約18万人が訪れた
「前大統領の自殺」という衝撃的なニュースが伝わった途端、世論の流れは一変した。大手紙には「保革を問わず、全国民が哀悼している。前大統領を失った我々の社会が対立と分裂に陥るならさらに大きなものを失う」(中央日報社説)などと、和解を呼びかける論調が目立つようになった。テレビ局も、あぜ道で幼い子を乗せて自転車をこいだり、ギターを奏でたりする人間味あふれる盧氏の姿を繰り返し放送。手のひらを返すような報道ぶりに批判の声も出ている。
盧氏の死をめぐる世論の変化について、カトリックの神父でもある西江大の朴弘(パク・ホン)・元総長は地元ラジオに出演し、「韓国人は、どんなに批判していても、その人が死ねばともに悲しみ、許し、冥福を祈る。いま国民は盧氏を身近に感じている」と分析した。
政治との関係を指摘する声もある。康元沢(カン・ウォンテク)・崇実大副教授は「バカ盧武鉉は確かに新しい政治への期待を背負っていた。自殺した盧氏に対する同情心に加え、盧氏は少なくとも社会的弱者の代弁者だった、という政治的価値が再評価されている」と話す。