不妊の原因にもよるが、一般には提供された卵子を用いる場合の方が妊娠率は高い。だが、それでも体外受精を1回すれば妊娠・出産できるわけではない。とすると、卵子提供者に強い排卵誘発を生じさせる必要が生じ、排卵誘発剤による副作用の可能性が高くなる。また、卵巣から採卵する際のリスクがないとはいえない。その金銭的な保障だけではなく、精神的なサポートは誰が、どのように責任を持つのだろうか。そういった技術的な議論も、もっと深められる必要がある。
提供精子や卵子による妊娠・出産は不妊カップルの福音となるのか
最後に、卵子の提供をうけることを望んでいる人の側から見てみよう。
卵子提供が必要になる理由はさまざまである。まずは先天的な理由だ。たとえば卵巣がなかったり卵子が形成されないなどだ。もちろん後天的な理由もある。病気などで卵巣を切除したり、病気や加齢によって卵子が形成されなくなった場合、さらに遺伝子や染色体の状態を考慮して提供卵が選択されることもある。不妊治療を続けるうちに卵子が採取できなくなる例もある。最初から精子や卵子が採取できないカップルは、なにもせずにあきらめることしかできない。これだけ技術が発展している社会で、何もできない、何もせずにあきらめることは、ものすごい苦痛である。だから医師も「患者様のため」に何かをしないではいられなくなる。
日本では、まさにこれからルールが作られようとしているわけだが、いまのところ妻の年齢は45歳までに限定されそうだ。米国では提供卵子によって50代女性が妊娠し、まもなく出産することが注目を集めている。キャリアを確立してから子どもをもつ事例、再婚でパートナーとの子どもを望む事例など、かの国ではさまざまな理由で「超高齢出産」が行なわれている。
その是非は別にしても、少なくとも米国では「結婚している男女の夫婦で、生殖年齢にある」といった日本のような条件はないのだ。州の法律による違いはあるが、原則としてお金さえ払えれば、シングルでも、同性のカップルでも、50歳以上でも技術を使うことはできる。